(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230812
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】燃料電池用マニホールドの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20160101AFI20171106BHJP
H01M 8/0202 20160101ALI20171106BHJP
H01M 8/2484 20160101ALI20171106BHJP
B29C 65/06 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
H01M8/02 R
H01M8/02 B
H01M8/24 M
B29C65/06
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-94604(P2013-94604)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-116281(P2014-116281A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0143263
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】513105982
【氏名又は名称】友信工業株式会社
【氏名又は名称原語表記】WOOSHIN INDUSTRIAL CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドク ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム,セ フン
(72)【発明者】
【氏名】クム,ヨン ボム
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン テ
(72)【発明者】
【氏名】イ,チャン ジュン
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第2011−0062257(KR,A)
【文献】
特開平04−208435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
B29C 65/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別マニホールドを上下積層構造で接合するために、一側個別マニホールドの融着山と他側個別マニホールドの融着ガイドとの間に均一なギャップを維持して互いにかみ合わされるように配置した後、前記他側個別マニホールドを加圧すると共に前記他側個別マニホールドの左右方向に振動を与えることにより2つの個別マニホールドを接合し、
この際、前記一側個別マニホールドは、融着山のうち、その長手方向が個別マニホールドの振動方向と一致しない非水平融着山の高さが、前記個別マニホールドの振動方向と前記非水平融着山の長手方向との間の角度に応じて可変的に形成され、
前記非水平融着山は、前記個別マニホールドの振動方向と前記非水平融着山の長手方向との間の前記角度が徐々に減少する場合、前記角度が最も大きな一端から前記角度が最も小さな他端まで融着山の高さが徐々に低くなるように可変形成され、
前記非水平融着山の高さは、前記個別マニホールドの振動方向と前記水平非融着山の長手方向との間の前記角度に応じて変化する振動量及び振動方向に基づいて決定されることを特徴とする燃料電池用マニホールドの製造方法。
【請求項2】
前記一側個別マニホールドは、融着山のうち、その長手方向が個別マニホールドの振動方向と一致する水平融着山は、高さを可変せずに一定の高さを有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用マニホールドの製造方法。
【請求項3】
前記非水平融着山のうち、長手方向の全区間にわたって一側個別マニホールドの振動方向に対して一定の角度を形成する融着山は、高さを可変せずに一定の高さを有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用マニホールドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用マニホールドの製造方法に関するものであって、より詳細には単層の個別マニホールドを積層接合して多層構造で結合する燃料電池用マニホールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、燃料電池用マニホールドは、電気発生源のスタック側に供給するための水素、空気、冷却水の入力端の経路と出力端の経路を含む多くの内部経路(あるいは流路)で構成される。
【0003】
これら内部経路を統合するために、いくつかの構造では互いに積み重ねるか、接合した内部経路を有する。
【0004】
図1は、従来の燃料電池用個別マニホールドを示す模式図であり、
図2は、従来の燃料電池用マニホールドを示す模式図である。
【0005】
従来、燃料電池用マニホールドを多層構造として形成するために、
図1のように上下面に個別経路11aを有する個別マニホールド11を複数加工し、それぞれの個別マニホールド11の経路加工面(個別経路11aが形成された上下面)に接着剤を塗布した後、圧着ボンディングして結合し、前記接着剤が硬化されると、マニホールド10の外側に突出された接着剤を除去して
図2のように製作する。
【0006】
しかし、上記のような従来の燃料電池用マニホールドの製作方法は次のような問題がある。
【0007】
1.マニホールドの材質と接着剤の材質の物性が異なることにより、実際、車両の環境条件下で異種材質間の体積変化の差が発生し、このような体積変化の差により接着力が低下する問題があり、そのため、長時間の運転時に接着部の気密が保持できなくなってマニホールドの耐久性が低下してマニホールドの内部経路(
図2の12参照)に異質物が流入される問題がある。
【0008】
それによって、冷却水の流れ経路に沿って移動するイオン不純物が電気伝導度を増加させて絶縁問題や、内部経路12を塞いで性能低下などの問題をもたらす。
【0009】
2.個別マニホールドのボンディングに用いられた接着剤は、圧着ボンディングした後、マニホールドの外面に分布された接着剤を除去し、超音波で洗浄したにもかかわらず、実際の環境下で時間経過により接着異質物の発生量が徐々に増加する。
【0010】
3.従来の燃料電池用マニホールドは、エポキシガラス(epoxy glass)という材質を用いて製作されるが、前記材質の特性上、高速回転、低速移動が必須加工条件であり、このような加工条件と共に複雑な経路形状を有するため、1つの燃料電池用マニホールドを製作する時、20日以上が必要となるなど、製作時間がたくさんかかる問題がある。
【0011】
すなわち、従来の燃料電池用マニホールドは、経路加工に必要とする時間が非常に長いため、重量低減のための追加加工が不可能であり、時間制限条件を排除しても材質の特性上、脆性が強いため重量低減に限界がある。
【0012】
4.エポキシガラス材質の特性上、水分吸収率の問題により湿式加工が不可能であるため、乾式加工製作において多量の微細粉が発生して作業者の健康を害する有害環境の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−0198588号公報(2008年8月28日公開)
【特許文献2】特開2009−0220341号公報(2009年10月1日公開)
【特許文献3】韓国特許出願10−2011−0060357号公報(2011年8月6日公開)
【特許文献4】特開2006−0252889号公報(2006年9月21日公開)
【特許文献5】特開2007−0283677号公報(2007年11月1日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような点を改善するために考案したもので、融着山と融着ガイドを有するそれぞれの個別マニホールドを射出形成した後、振動融着工法により結合して多層構造で製作する燃料電池用マニホールドの製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、複数の個別マニホールドを上下積層構造で接合するために、上側個別マニホールドの融着山と下側個別マニホールドの融着ガイドとの間に均一なギャップを維持して互いにかみ合わされるように配置した後、前記下側個別マニホールドを上方に加圧すると共に前記上側個別マニホールドの左右方向に振動を与えることにより上側及び下側個別マニホールドを接合し、この際、前記上側個別マニホールドは、融着山のうち、その長手方向が個別マニホールドの振動方向と一致しない非水平融着山の高さが可変的に形成されることを特徴とする燃料電池用マニホールドの製造方法を提供する。
【0016】
一例として、前記非水平融着山は、個別マニホールドの振動方向との間の角度が徐々に減少する場合、前記角度が最も大きな一端から前記角度が最も小さな他端まで融着山の高さが徐々に低くなるように可変形成される。
【0017】
そして、前記上側個別マニホールドは、融着山のうち、その長手方向が個別マニホールドの振動方向と一致する水平融着山は、高さを可変せずに一定の高さを有する形態で形成される。
【0018】
また、前記非水平融着山のうち、長手方向の全区間にわたって上側個別マニホールドの振動方向に対して一定の角度(例えば、直角)を形成する融着山は、高さを可変せずに一定の高さを有する形態で形成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明による燃料電池用マニホールドの製造方法は次のような利点がある。
【0020】
1.それぞれの個別マニホールドを接着剤を使用せずに振動融着を用いて結合することで、同一母材の結合方式で温度変化による体積変化率が同じであるため、耐久性が向上し、運転時間の経過による異質物が排出されることがない。
【0021】
2.個別マニホールドに可変高さを有する非水平融着山を適用することで、個別マニホールドの振動方向と融着山の長手方向の不一致による品質低下を防止し、それと共に気密な融着により融着強度を確保して耐久性を増大することができる。
【0022】
3.個別マニホールドの射出成形時に個別経路が同時に成形されることにより、製作期間が画期的に短縮されて量産性を確保することができる。
【0023】
4.経路加工のための既存の機械加工工程及び手作業により行われる接着工程が不要であるため費用低減が可能となり、微細粉が発生しないため作業環境が改善される。
【0024】
5.マニホールドの最小厚さの維持及び重量低減が可能であり、それによって、燃料電池の性能改善の効果がある。
【0025】
6.多層マニホールド部に個別マニホールドあるいは別途の多層マニホールド部をさらに積層した後、振動融着により結合させることができるため、設計自由度が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来の燃料電池用個別マニホールドを示す図面である。
【
図2】従来の燃料電池用マニホールドを示す図面である。
【
図3】本発明により製作した燃料電池用マニホールドを示す図面である。
【
図5】本発明による燃料電池用マニホールドの製造方法を示す図面である。
【
図7】本発明による個別マニホールドの平面構造を示す図面である。
【
図8】本発明による振動融着時に個別マニホールドの振動方向と融着山の長手方向との関係を概略的に例示する図面である。
【
図9】本発明による個別マニホールドにおいて、非水平融着山の一端から他端までの長手方向による可変高さを例示する図面である。
【
図10】本発明により融着接合したマニホールドの断面構造を概略的に例示する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を該当技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施するように説明する。
【0028】
本発明は、燃料電池用マニホールドの製造方法に関するもので、マニホールドを構成する個別マニホールドをそれぞれ射出成形した後、振動融着により多層構造で結合させるが、特に射出成形時に個別マニホールドに形成される融着山に可変高さを適用して融着山の延長経路(あるいは長手方向)にかかわらず、上下の個別マニホールド間に気密な融着が行われることにより、融着強度を確保して耐久性を改善する。
【0029】
図3は、多層構造を有する燃料電池用マニホールドを示す図面で、中央に積層された個別マニホールドの構造が示されている。
図4は、
図3のマニホールドを示す側面図で、個別マニホールドの隆起部が部分拡大されて示されている。
【0030】
図3に示すように、燃料電池用マニホールド100は複数の個別マニホールド110を多層構造で積層して接合した形態として製作される。
【0031】
前記個別マニホールド110は、プラスチック素材を用いて射出成形されたもので、射出成形時に上下両面あるいは上下一面に多数の個別経路111を形成する隆起部112が突出された形態のものが使用され、
図4に示すように、前記隆起部112には融着山113や融着ガイド114が形成されている。
【0032】
前記融着山113と融着ガイド114は、個別マニホールド110の射出成形時に隆起部112と一体成形されたもので、個別マニホールド110の少なくとも一面に融着山113と融着ガイド114のうち1つを形成してもよく、または個別マニホールド110の両面にそれぞれ融着山113と融着ガイド114のうち1つを形成してもよく、または両面に融着山113と融着ガイド114を1つずつ形成してもよい。
【0033】
図4に示すように、前記融着山113は隆起部112から一定の高さをもって突出された形態であり、前記融着ガイド114は隆起部112から一定の深さをもって陥没された形態である。
【0034】
ここで、2つの個別マニホールド間の振動融着について説明する。
【0035】
図5は、本発明によるマニホールドの製造方法を示す図面で、振動及び加圧を用いて上側の個別マニホールドと下側の個別マニホールドを接合する工程が示されており、
図6は、
図5のA部位を拡大して示す図面で、融着山が融着ガイド内に一定間隔をおいて挿入された形態が示されている。
【0036】
以下、上側の個別マニホールドと下側の個別マニホールドをそれぞれ図面符号「115」と「116」と表記して説明する。
【0037】
図5に示すように、本発明ではマニホールドの製造時に2つの個別マニホールド115,116を上下に積層して配置した後、振動及び加圧による摩擦熱を用いて上側及び下側の個別マニホールド115,116を接合させる。
【0038】
この際、前記個別マニホールド115,116を上下に配置するに当たって、
図6に示すように、上側の個別マニホールド115の融着山113と下側の個別マニホールド116の融着ガイド114が互いに一定の間隔を維持するようにして配置されるが、言い換えれば、融着山113と融着ガイド114が相互間に均一なギャップを維持して互いにかみ合わされるように配置した後、
図5に示すように、下部ジグ2を用いて下側の個別マニホールド116を上方に加圧して上側の個別マニホールド115に密着させ、それと共に上部ジグ1を用いて上側の個別マニホールド115に振動を加えて左右方向(横方向)に繰り返し往復させる。
【0039】
このように下側の個別マニホールド116が上方に加圧された状態で、上側の個別マニホールド115が左右に往復しながら振動することにより、その間に摩擦熱が発生し、その摩擦熱により融着山113と融着ガイド114が適切に溶融し、2つの個別マニホールド115,116が互いに接合される。
【0040】
具体的には、下側の個別マニホールド116が上方に加圧されることにより、下側の融着ガイド114が上側の融着山113側に移動して前記融着山113と融着ガイド114との間のギャップが除去されると共に、摩擦熱により融着山113が適切に溶融されて上側の個別マニホールド115の隆起部112と下側の個別マニホールド116の隆起部112との間に融着及び面着が行われて上側及び下側の個別マニホールド115,116が互いに緊密に接合されて結合される。
【0041】
一方、
図7は、本発明による個別マニホールドの平面構造を示す図面で、個別マニホールドの一面に隆起部の延長経路が示されている。すなわち、
図7には個別マニホールドの一面に様々な個別経路を形成している隆起部が示されている。
【0042】
図7に示すように、個別マニホールド110には所定の個別経路を備えるために多数の隆起部112が様々なルートを有するように形成されている。
【0043】
このような隆起部112には、隆起部112と同じルートを形成する融着山113が形成されているが、以下、
図7で図面符号「113a」、「113b」、及び「113c」が示されているものは隆起部112上の融着山であると仮定して説明する。
【0044】
図8には振動融着時に個別マニホールドの振動方向と融着山の延長経路(個別マニホールドの一面上に設けられた融着山が形成する経路)との関係が概略的に例示されている。
図7及び
図8に示すように、融着山113a,113b,113cは、振動融着時に個別マニホールド110の振動方向(あるいは往復方向)と一致する融着山113aと個別マニホールド110の振動方向に反する(あるいは一致しない)融着山113b,113cと、で大きく分けられる。
【0045】
ここで、個別マニホールド110の振動方向と一致する融着山とは、融着山の延長経路(あるいは融着山の長手方向)が振動方向と一致する水平融着山113aであり、個別マニホールド110の振動方向と一致しない(あるいは異なる)融着山とは、融着山の延長経路(あるいは融着山の長手方向)が振動方向と一致しない非水平融着山113b,113cである。
【0046】
図7に示されている融着山113aは、個別マニホールド110の振動方向と一致するルート(あるいは長手方向)を有する水平融着山113aで、
図7に「振動方向と一致する融着山」と表記して示した融着山は何れも前記水平融着山113aのように個別マニホールド110の振動方向と一致するルートを有する。
【0047】
このような水平融着山113aは、上述したような個別マニホールド110の振動融着過程で、言い換えれば、下側の融着ガイド114が上側の融着山113側に加圧され、前記融着山113と融着ガイド114との間のギャップが除去されて前記融着山113が溶融され、上側及び下側の隆起部112の間が融着される過程で、振動方向と融着山113aの長手方向が一致することにより、振動方向と融着山113aの長手方向の不一致による振動量が減少することがなく、したがって、融着時に要求される摩擦温度と溶融量を達成する。
【0048】
それによって、前記水平融着山113aは、その長手方向の全区間にわたって、高さを可変することなく同じ高さを持つように形成される。
【0049】
図7に示されている融着山113bは、個別マニホールド110の振動方向と一致しないルート(あるいは長手方向)を有する非水平融着山113bで、
図7に「振動方向に反する融着山」と表記して示した融着山は何れも前記非水平融着山113bのように個別マニホールドの振動方向と一致しないルートを有する。
【0050】
このような非水平融着山113bは、上述したような個別マニホールド110の振動融着過程で、振動方向と融着山113bの長手方向が一致しないため、所望する方向と異なる方向に振動が発生し、それによって、振動量が減少(振動方向と融着山の長手方向が一致する水平融着山に比べて振動量が減少する)して融着時に要求される摩擦温度と溶融量を達成しにくくなる。
【0051】
そのため、前記非水平融着山113bは、その長手方向の全区間にわたって、その高さが可変的に形成される。
【0052】
図7に示すように、非水平融着山113bは、個別マニホールド110の振動方向に反する曲線形態の曲がっているルートを形成し、それによって、前記振動方向に対して一定の角度をなすようになって、振動融着時にその長手方向に沿って融着山113bに作用する振動方向及び振動量が変わる(可変される)。
【0053】
したがって、前記非水平融着山113bの長手方向の各地点ごとに(あるいは区間ごとに)作用する振動方向及び振動量に応じて融着山の高さを可変的に適用して非水平融着山113bの高さを長手方向に沿って可変的に形成する。
【0054】
具体的には、非水平融着山113bは、個別マニホールド110の振動方向と融着山の長手方向との方向差により一定でない方向に振動が加えられ、それによって、非水平融着山113bに作用する振動量が水平融着山113aに比べて相対的に減少して振動融着時に到達する摩擦温度と溶融量が水平融着山に比べて減少するが、これは個別マニホールド110の振動方向と融着山の長手方向との間に形成される角度に起因したことであるから、非水平融着山113bの各区間あるいは各地点で、融着山113bの長手方向と個別マニホールド110の振動方向との間に形成される角度に応じて非水平融着山113bの高さを長手方向に沿って可変適用することにより、振動融着時に融着山113bと融着ガイド114との間に発生する摩擦熱が所定の摩擦温度に到達し、溶融樹脂が適正量となるようにし、結果的に融着品質を改善することができる。
【0055】
このように可変高さを有する非水平融着山113bを適用すると、個別マニホールド110の振動方向と融着山113の長手方向が一致しないことによる品質低下を予防できるが、例えば融着山113と融着ガイド114との間の摩擦熱が所定の摩擦温度に到達しない場合や、融着山の溶融量の不足による不完全な接合を防止することができる。
【0056】
すなわち、本発明では個別マニホールド110に可変高さを有する非水平融着山113bを適用することにより、振動方向と融着山の長手方向の不一致による品質低下を防止し、それと共に気密な融着により融着強度を確保して耐久性を増大することができる。
【0057】
また、
図9には非水平融着山の一端から他端まで長手方向による融着山の可変高さが例示されている。
【0058】
非水平融着山113bの可変高さは、個別マニホールド110の振動方向に対して融着山の長手方向の各地点で発生する角度(個別マニホールドの振動方向と非水平融着山の長手方向との間の角度)により変わる振動量及び振動方向を考慮して選定することができる。
【0059】
例えば、個別マニホールド110の振動方向と非水平融着山113bの長手方向との間の角度が非水平融着山113bの長手方向に徐々に減少する場合、
図9に示すように、非水平融着山113bの高さは一端から他端まで減少するように適用される。
【0060】
具体的には、前記非水平融着山113bは、その長手方向に個別マニホールド110の振動方向との間の角度差が発生することがあるが、この際、非水平融着山113bの長手方向において、個別マニホールド110の振動方向との間の角度が徐々に減少する区間では、角度差が最も大きな一端から角度差が最も小さな他端までその高さが徐々に低くなるように可変形成される。
【0061】
図7に示されている融着山113cは、「振動方向に反する非水平融着山」であるが、このような非水平融着山113c、すなわち、振動方向に直角をなす非水平融着山113cは振動方向に対して約90°の角度を有するが、長手方向の全区間にわたって振動方向と直角をなすことで、融着山113cの全区間にわたって振動量及び振動方向が同一であり、したがって、融着山113cの長手方向に可変せず、全区間にわたって同じ高さを形成することができる。
【0062】
ただし、振動方向に直角をなす非水平融着山113cは、水平融着山113aと同じ振動が加えられる時、水平融着山113aに比べて最小の振動量が発生するため、個別マニホールド110の融着山113のうち相対的に最大高さを有するように形成される。
【0063】
すなわち、個別マニホールド110の融着山113において、水平融着山113aは相対的に最小高さを有し、全区間にわって振動方向に直角をなす非水平融着山113cは最大高さを有するようになる。
【0064】
一方、
図10は、2つの個別マニホールドを1次融着させた後、さらに他の個別マニホールドを積層して2次及び3次融着させた形態を示す例示図である。
【0065】
本発明でマニホールドの各層を構成する個別マニホールド110は、それぞれ両面に融着山113と融着ガイド114のうち何れか1つあるいは両方ともを有するものが使用可能であるため、上述したように振動融着により上側及び下側の個別マニホールド115,116を接合して結合した後、
図10の(a)に示すように、前記下側の個別マニホールド116の下部に第1個別マニホールド117を振動融着により接合させて3層構造のマニホールドを製作でき、また、
図10の(b)に示すように、前記第1個別マニホールド117の下部に第2個別マニホールド118を振動融着により接合させて4層構造のマニホールドを製作するなど、振動融着により多層構造のマニホールドを製作することができる。
【0066】
さらに、
図10の(c)に示すように、一次に振動融着して2つの個別マニホールドを接合した2つの多層マニホールド部M1,M2を2次に振動融着させることにより、4層構造のマニホールドを製作してもよい。
【0067】
上記のような方式で繰り返し振動融着することにより、複数の個別マニホールド及び多層マニホールド部を積層接合することで、多層構造のマニホールドを容易に製作することができる。
【0068】
このように本発明では多層マニホールドに個別マニホールドあるいは別途の多層マニホールドをさらに積層した後、振動融着で結合させることができるため、設計自由度が増加する。
【0069】
また、本発明ではマニホールドを構成するそれぞれの個別マニホールドを従来のエポキシガラスではなく、プラスチック材質を用いて射出成形すると共に振動融着のための融着山(a)と融着ガイド(b)、そして個別経路(c)などが形成されるため、マニホールドの製作期間が短縮されて生産性が増大する効果が得られ、また、接着剤がなくても振動融着による結合構造で製作されるため、温度変化による体積変化率の差により耐久性が低下することを防止でき、それによって、結合性、耐久性、及び気密性を確保でき、個別経路への異質物の流入が抑制されて燃料電池の性能を改善することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 マニホールド
110 個別マニホールド
111 個別経路
112 隆起部
113 融着山
113a 水平融着山
113b 非水平融着山(曲線形態に曲がった融着山)
113c 非水平融着山(振動方向に直角をなす融着山)
114 融着ガイド
115 上側個別マニホールド
116 下側個別マニホールド