特許第6230897号(P6230897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230897
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】筒状ストレッチラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/06 20060101AFI20171106BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G09F3/06
   B32B27/32 E
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-258071(P2013-258071)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-114593(P2015-114593A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀尾 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】永島 崇平
(72)【発明者】
【氏名】疋田 英司
【審査官】 櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−225118(JP,A)
【文献】 特開2003−136653(JP,A)
【文献】 特開平10−207373(JP,A)
【文献】 特開平10−100343(JP,A)
【文献】 特開2003−208099(JP,A)
【文献】 特表2012−504685(JP,A)
【文献】 特開2002−132160(JP,A)
【文献】 特許第3197131(JP,B2)
【文献】 特開2010−234660(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102328484(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
G09F1/00−5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材と、
前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された印刷層と、
を備え、前記フィルム基材が筒状体に成形された筒状ストレッチラベルにおいて、
前記フィルム基材は、
線状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合樹脂であって前者よりも後者の混合比率が高い混合樹脂を主成分として構成された基部層と、
前記基部層の少なくとも内面に形成され、低密度ポリエチレンを主成分として構成された前記基部層以上の密度を有する表面層と、
を有し、前記フィルム基材の総厚みに対する前記表面層の厚みが2〜25%である、筒状ストレッチラベル。
【請求項2】
前記基部層を構成する線状低密度ポリエチレンの密度が0.885〜0.925g/cm3であり、前記基部層を構成する低密度ポリエチレンの密度が0.910〜0.940g/cm3である、請求項1に記載の筒状ストレッチラベル。
【請求項3】
前記表面層の密度が、0.910〜0.945g/cm3である、請求項1又は2に記載の筒状ストレッチラベル。
【請求項4】
前記表面層を構成する低密度ポリエチレンの密度が0.920〜0.945g/cm3である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の筒状ストレッチラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状ストレッチラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
筒状ストレッチラベルは、他のラベルと同様に、商品名やデザイン、商品説明等を表示する印刷層を備え、商品の購買意欲を高めるといった役割を果たす。筒状ストレッチラベルは、筒状体の周方向に引っ張られて伸張した状態で商品容器に被嵌され、その後引っ張り力が取り除かれると弾性力によって収縮して容器に装着される。このため、筒状ストレッチラベルには、伸張性及び復元性(これらを総称して、ストレッチ性という)に優れることが要求される。筒状ストレッチラベルの一例として、特許文献1には、低密度ポリエチレンからなる基材の両面にエチレン酢酸ビニル共重合体からなる内外面層を有するラベルが開示されている。
【0003】
ところで、筒状ストレッチラベルは、印刷層等が形成された長尺状のフィルム基材を筒状体に成形した後、当該筒状体(以下、「筒状長尺体」という)を個々のラベルサイズにカットして製造される。筒状長尺体のカットに使用される装置としては、固定刃及び固定刃に対して進退移動可能な可動刃を備えるギロチンカッターや、図4,5に示すロータリーカッターが挙げられる。なお、筒状長尺体は、ストレッチラベラー(ラベル装着機)において容器等に装着される前にカットされるのが一般的である。
【0004】
図4(筒状長尺体200の幅方向一方側から見た図)に示すロータリーカッター100は、固定刃101と可動刃である回転刃102を備える。ロータリーカッター100は、例えばストレッチラベラーの上流側に配置される。筒状長尺体200は、扁平状に折り畳まれてロール状に巻き取られた状態でラベラーに供給され、繰り出しローラー103等により固定刃101と回転刃102との間に通される。ロータリーカッター100では、回転刃102が筒状長尺体200を下流側へ繰り出すように回転しており、回転刃102の刃先が固定刃101と近接するときに2つの刃に挟まれた筒状長尺体200が押し切られるようにカットされる。
【0005】
図5(筒状長尺体200の長手方向一方側から見た図)に示すロータリーカッター150は、軸152を中心にして自転しながら経路153上を公転する円盤状の回転刃151を備える。筒状長尺体200は、図4に示す例と同様に、扁平状に折り畳まれた状態でラベラーに供給され、回転刃151が公転する経路153の近傍を通るように繰り出される。そして、自転する回転刃151は、筒状長尺体200を幅方向に横切って移動し、筒状長尺体200をカットする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3197131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、筒状ストレッチラベルは筒状長尺体200をカットして製造されるが、当該カット時において、ラベルの内面同士が接合する所謂カット融着が発生する場合がある。特に、ギロチンカッターや図4に示すロータリーカッター100を用いた場合には、例えばカット時の摩擦熱や押圧の影響等により、カット融着が発生し易い。例えば、図4に示すロータリーカッター100では、筒状ストレッチラベルの上流側の開口部にカット融着が発生し易い。
【0008】
上記カット融着の発生を抑制するために、剛性が高く硬いフィルム基材を用いることが考えられるが、この場合は、容器への装着時(ラベルを伸張した際)に、ラベルの折り位置における印刷層の割れや、フィルム基材の裂けが発生し易くなる。かかる不具合は、特に気温が低いときに顕著に発生する。
【0009】
即ち、本発明の目的は、カット融着の発生を抑制することができ、且つラベルの折り位置における印刷層の割れや、フィルム基材の裂けが発生し難い筒状ストレッチラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る筒状ストレッチラベルは、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された印刷層と、を備え、前記フィルム基材が筒状体に成形された筒状ストレッチラベルにおいて、前記フィルム基材は、線状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合樹脂であって前者よりも後者の混合比率が高い混合樹脂を主成分として構成された基部層と、前記基部層の少なくとも内面に形成され、低密度ポリエチレンを主成分として構成された前記基部層以上の密度を有する表面層と、を有し、前記フィルム基材の総厚みに対する前記表面層の厚みが2〜25%であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る筒状ストレッチラベルにおいて、前記基部層を構成する線状低密度ポリエチレンの密度を0.885〜0.925g/cm3とし、前記基部層を構成する低密度ポリエチレンの密度を0.910〜0.940g/cm3とすることが好適である。
【0012】
本発明に係る筒状ストレッチラベルにおいて、前記表面層の密度を0.910〜0.945g/cm3とすることが好適である。
【0013】
本発明に係る筒状ストレッチラベルにおいて、前記表面層を構成する低密度ポリエチレンの密度を0.920〜0.945g/cm3とすることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カット融着の発生を抑制することができ、且つラベルの折り位置における印刷層の割れや、フィルム基材の裂けが発生し難い筒状ストレッチラベルを提供することができる。また、本発明に係る筒状ストレッチラベルによれば、カット融着が発生した場合であっても、融着状態を容易に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の一例である筒状ストレッチラベルの斜視図である。
図2】本発明の実施形態の一例である筒状ストレッチラベルの断面図である。
図3】本発明の実施形態の一例である筒状ストレッチラベルの長尺体を示す図である。
図4】ロータリーカッターの一例を示す図である。
図5】ロータリーカッターの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態の一例である筒状ストレッチラベル10について詳細に説明する。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0017】
図1及び図2は、フィルム基材11と、当該基材の少なくとも一方の面に形成された印刷層12とを備え、フィルム基材11が筒状体に成形された筒状ストレッチラベル10を示す。筒状ストレッチラベル10において、フィルム基材11は、線状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合樹脂であって前者よりも後者の混合比率が高い混合樹脂を主成分として構成された基部層20と、基部層20の少なくとも内面に形成され、低密度ポリエチレンを主成分として構成された基部層20以上の密度を有する表面層とを有し、フィルム基材11の総厚みに対する表面層の厚みが2%〜25%である。
【0018】
本明細書において、低密度ポリエチレンの「低密度」とは、0.850〜0.945g/cm3を意味する。
【0019】
ここで、表面層の厚みとは、基部層20の少なくとも内面に形成された1つの表面層の厚みを意味する。即ち、表面層が基部層20の両面に形成される場合は、各表面層の厚みがフィルム基材11の総厚みの2%〜25%である。
【0020】
本明細書では、フィルム基材11の表面のうち、筒状体の内側に向いた面を「内面」、筒状体の外側に向いた面を「外面」という。内面、外面の用語は、フィルム基材11だけでなく、後述する基部層20等についても使用し、基部層20の表面のうち、筒状体の内側に向いた面を「内面」、筒状体の外側に向いた面を「外面」という。また、「内面、外面に層を形成する」との表現は、特に限定する場合を除き、内面、外面に層を直接形成する場合だけでなく、内面、外面と当該層との間に別の層が介在する場合も含む意図である。
【0021】
筒状ストレッチラベル10は、上記のように、フィルム基材11と、印刷層12とを備える。印刷層12は、フィルム基材11の内面、外面のいずれに形成されてもよく、両面に形成されてもよい。図2に示す例では、印刷層12の損傷抑制等の観点から、フィルム基材11の内面に印刷層12が形成されている。また、印刷層12は、フィルム基材11の内面に所望のパターンで形成されてもよく、内面の略全域に形成されてもよい。
【0022】
筒状ストレッチラベル10は、印刷層12が形成されたフィルム基材11の端縁同士を重ね合わせて接合し、シール部13を形成することで筒状体とされる。シール部13は、フィルム基材11を筒状にして一方の端縁を他方の端縁の外側に重ね合わせたときに、当該重ね合わせ部の外側に位置するフィルム基材11の一方の端縁の内面と、内側に位置するフィルム基材11の他方の端縁の外面とを接着剤で接合して形成できる。シール部13は、接着剤による接合の他に、ヒートシールによる接合や、超音波による接合によっても形成することが可能である。また、シール部13を形成する場合は、接着性を向上させるため、シール部13に印刷層12等の他の層を介在させないで、フィルム基材同士を直接接合することが好適である。なお、シール部13は、フィルム基材11の一方の端縁の内面と他方の端縁の外面とを接合する所謂封筒貼りの接合形態に限られず、フィルム基材11の一方の端縁及び他方の端縁の内面同士、又は外面同士を接合する所謂合掌貼りの接合形態であってもよい。
【0023】
フィルム基材11は、ストレッチ性を有する基材であって、基部層20と、表面層とを有する。表面層は、フィルム基材11の最表面を構成する層である。本実施形態では、表面層として、基部層20の内面に形成された内面層21と、基部層20の外面に形成された外面層22とを有する。フィルム基材11は、基部層20と内面層21のみを有する2層構造であってもよいが、好ましくは、基部層20を中心層とし、その両面に内面層21と外面層22とを有する少なくとも3層構造である。フィルム基材11は、本発明の目的を損なわない範囲で、基部層20と表面層との間に他の層を設けてもよい。
【0024】
フィルム基材11の厚みは、特に限定されないが、50〜200μmであることが好ましく、より好ましくは60〜150μm、特に好ましくは65〜120μmである。
【0025】
基部層20は、フィルム基材11に良好なストレッチ性を付与すると共に、後述の折り位置(折り目線31:図3参照)における印刷層12の割れや、フィルム基材11の裂けを抑制する役割を果たす。基部層20は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)との混合樹脂であって前者よりも後者の混合比率が高い混合樹脂を主成分として構成される。当該混合樹脂の含有率は、基部層20を構成する全成分の総重量に対して、少なくとも50重量%であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、上限値は100重量%であってもよい。線状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合比率(重量比)は、前者:後者=5:95〜45:55が好ましく、6:94〜40:60がより好ましく、7:93〜30:70が特に好ましく、10:90〜25:75が最も好ましい。
【0026】
基部層20における線状低密度ポリエチレンの含有率は、基部層20を構成する全成分の総重量に対して、5〜35重量%が好ましく、6〜30重量%がより好ましく、7〜25重量%が特に好ましく、10〜20重量%が最も好ましい。基部層20における低密度ポリエチレンの含有率は、基部層20を構成する全成分の総重量に対して、60〜95重量%が好ましく、65〜94重量%がより好ましく、70〜93重量%が特に好ましく、75〜90重量%が最も好ましい。なお、各ポリエチレンとして2種以上を併用する場合は、併用したポリエチレンのトータルがこの範囲内であればよい。
【0027】
基部層20は、線状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合樹脂を主成分として構成される単層構造である。また、基部層20は、混合樹脂を主成分とする層を複数含む多層構造としてもよい。基層部20が多層構造の場合、線状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンの混合比率を変更した複数の層を含む多層構造としてもよいし、これら2つのポリエチレンと他の樹脂成分を用いて、複数の層を含む多層構造としてもよい。基部層20の厚みは、特に限定されないが、30〜150μmであることが好ましく、より好ましくは40〜110μm、特に好ましくは50〜100μmである。基部層20の厚みは、フィルム基材11の総厚みに対して、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、特に好ましくは65%以上である。
【0028】
基部層20を構成する線状低密度ポリエチレンは、チーグラー系触媒、クロム系触媒、メタロセン触媒等の各種触媒を使用して中低圧下又は高圧下で重合される低密度ポリエチレンであって、直鎖状のポリエチレンに短い側鎖が多数導入された構造を有する。線状低密度ポリエチレンは、エチレンと、炭素数が3〜20のαオレフィンとの共重合体である。当該αオレフィンは、1‐ブテン、1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテン等の炭素数4〜8のαオレフィンが特に好ましい。αオレフィン成分の含有量は、単量体成分の総重量に対して、好ましくは1〜20重量%であり、より好ましくは2〜15重量%であり、特に好ましくは5〜10重量%である。また、線状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒を用いて重合されたものが特に好適である。これら線状低密度ポリエチレンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記線状低密度ポリエチレンの密度は、0.885〜0.925g/cm3であることが好ましく、0.890〜0.920g/cm3であることがより好ましく、0.900〜0.920g/cm3であることが特に好ましい。2種以上の線状低密度ポリエチレンを用いる場合は、全ての線状低密度ポリエチレンのトータル密度がこの範囲内であればよい。密度がこの範囲内であれば、さらに良好なストレッチ特性が得られると共に、折り位置における印刷層12の割れを抑制し易くなる。
【0030】
上記線状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2.16kg)は、1〜30g/10分であることが好ましく、1〜20g/10分であることがより好ましく、1〜10g/10分であることが特に好ましい。2種以上の線状低密度ポリエチレンを用いる場合は、全ての線状低密度ポリエチレンのトータルMFRがこの範囲内であればよい。MFRがこの範囲内であれば、生産性が良好になる。
【0031】
上記線状低密度ポリエチレンは、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン及び上記αオレフィン以外の単量体成分、例えば、酢酸ビニル(VA)等のカルボン酸ビニル、アクリル酸(AA)等の不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチル(MMA)等の(メタ)アクリル酸エステルなどを含有していてもよい。但し、上記線状低密度ポリエチレンは、エチレン及び上記αオレフィン以外の単量体成分を含まないことが好ましい。
【0032】
上記線状低密度ポリエチレンには、市販品を用いることができる。適用可能な市販品としては、例えば、宇部丸善ポリエチレン(株)製の「715FT,0540F,1540F,2540F」、住友化学(株)製の「FV201,FV203,FV401,FV405」、日本ポリエチレン(株)製の「UF240,UF442」等が挙げられる。
【0033】
基部層20を構成する低密度ポリエチレンは、過酸化物等を触媒として高圧下で重合される低密度ポリエチレンであって、高圧法ポリエチレンとも呼ばれる。低密度ポリエチレンは、不規則な側鎖が多数導入された分岐構造を有する。低密度ポリエチレンは、エチレンの単独重合体、又は線状低密度ポリエチレンと同様に、エチレンと炭素数が3〜20のαオレフィンとの共重合体である。これら低密度ポリエチレンは、単独で用いてもよいが、好ましくは互いに密度が異なる2種以上を併用する。
【0034】
上記低密度ポリエチレンの密度は、0.910〜0.940g/cm3であることが好ましく、0.915〜0.935g/cm3であることがより好ましく、0.920〜0.930g/cm3であることが特に好ましい。2種以上の低密度ポリエチレンを用いる場合は、全ての低密度ポリエチレンのトータル密度がこの範囲内であればよい。密度がこの範囲内であれば、より良好なストレッチ特性が得られると共に、折り位置における印刷層12の割れを抑制し易くなる。
【0035】
2種類の低密度ポリエチレンを用いる場合、一方の密度が0.920g/cm3以上0.930g/cm3未満であることが好ましく、他方の密度が0.930〜0.940g/cm3(0.930g/cm3以上0.940g/cm3以下)であることが好ましい。
【0036】
上記低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2.16kg)は、1〜30g/10分であることが好ましく、1〜20g/10分であることがより好ましく、1〜10g/10分であることが特に好ましい。2種以上の低密度ポリエチレンを用いる場合は、全ての低密度ポリエチレンのトータルMFRがこの範囲内であればよい。MFRがこの範囲内であれば、生産性が良好になる。(後述の内面層21を構成する低密度ポリエチレンについても同様)
【0037】
上記低密度ポリエチレンは、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン及び上記αオレフィン以外の単量体成分、例えば、酢酸ビニル(VA)等のカルボン酸ビニル、アクリル酸(AA)等の不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチル(MMA)等の(メタ)アクリル酸エステルなどを含有していてもよい(後述の内面層21を構成する低密度ポリエチレンについても同様)。但し、基部層20に用いられる低密度ポリエチレンは、エチレン及び上記αオレフィン以外の単量体成分を含まないことが好ましい。
【0038】
上記低密度ポリエチレンには、市販品を用いることができる。適用可能な市販品としては、例えば、宇部丸善ポリエチレン(株)製の「F234,F222NH,F522N,Z372」、住友化学(株)製の「F200,F412−1」、日本ポリエチレン(株)製の「SF941,SF8402」等が挙げられる。
【0039】
基部層20の全体の密度は、0.900〜0.935g/cm3であることが好ましく、0.910〜0.935g/cm3であることがより好ましく、0.915〜0.930g/cm3であることがさらに好ましく、0.920〜0.930g/cm3であることが特に好ましい。基部層20には、本発明の目的を損なわない範囲で、低密度ポリエチレン及線状低密度ポリエチレン以外の樹脂成分や、可塑剤、滑剤、ワックス、帯電防止剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0040】
内面層21は、基部層20の内面に形成されたフィルム基材11の最内面を構成する表面層であって、カット融着を抑制する役割を果たす。内面層21は、低密度ポリエチレンを主成分として構成され、適度なストレッチ性を有する。低密度ポリエチレンの含有率は、内面層21を構成する樹脂成分の総重量に対して、少なくとも50重量%であり、好ましくは55重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、上限値は100重量%であってよい。2種以上の低密度ポリエチレンを用いる場合は、全ての低密度ポリエチレンのトータルがこの範囲内であればよい。
【0041】
内面層21は、後述のカット位置32(図3参照)だけに形成されてもよいが、生産性等の観点から、好ましくは基部層20の内面の全域に形成される。内面層21の厚みは、フィルム基材11の総厚みに対して、2〜25%であり、好ましくは3〜20%、より好ましくは5〜17%である。例えば、内面層21の厚みは、2〜25μmであることが好ましく、より好ましくは3〜20μm、特に好ましくは5〜18μmである。
【0042】
内面層21を構成する低密度ポリエチレンは、基部層20を構成する低密度ポリエチレンと同様に、過酸化物等を触媒として高圧下で重合される低密度ポリエチレンであって、不規則な側鎖が多数導入された分岐構造を有する。当該低密度ポリエチレンは、エチレンの単独重合体、又はエチレンと炭素数が3〜20のαオレフィンとの共重合体である。これら低密度ポリエチレンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
内面層21を構成する低密度ポリエチレンは、内面層21の密度が基部層20の密度以上になるのであれば、基部層20を構成する低密度ポリエチレンと同じ密度の樹脂や基部層20のものより低密度の樹脂であってもよいが、好ましくは基部層20の低密度ポリエチレンより高密度の樹脂を用いる。内面層21を構成する低密度ポリエチレンの密度は、0.920〜0.945g/cm3であることが好ましく、0.925〜0.940g/cm3であることがより好ましく、0.930〜0.940g/cm3であることが特に好ましい。2種以上の低密度ポリエチレンを用いる場合は、全ての低密度ポリエチレンのトータル密度がこの範囲内であればよい。密度がこの範囲内であれば、比較的良好なストレッチ特性が得られると共に、カット融着を抑制し易くなる。
【0044】
内面層21は、低密度ポリエチレン以外に他の樹脂を含有していてもよい。例えば、内面層21に用いられる低密度ポリエチレンは比較的硬い樹脂であるため、低密度ポリエチレンと共に内面層21を構成する他の樹脂として好適なものは、低密度ポリエチレンよりも柔軟性の高い樹脂である。当該柔軟性の高い樹脂は、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン・イソプレン−スチレンブロック共重合体(SBIS)等のスチレン−ジエン系共重合体や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられ、特にEVAが好ましい。内面層21として低密度ポリエチレンとEVAとを併用する場合、筒状ストレッチラベル10の内面同士がカット融着した場合でも、弱い力でその融着を剥離できるため好ましい。なお、内面層21は、本発明の目的を損なわない範囲で線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有してもよいが、柔軟性を付与する目的で多量にLLDPEを用いると、カット融着が発生しやすくなり、融着する力も強くなる傾向にあるため、内面層21は、LLDPEを含有していないか、含有する場合であってもその含有量は少量(例えば5重量%未満)であることが好ましい。
【0045】
内面層21が低密度ポリエチレンとEVAとで構成される場合、EVAの含有率は、内面層21を構成する樹脂成分の総重量に対して、0重量%を超え50重量%以下であり、好ましくは1〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。内面層21を構成する樹脂全体に対する酢酸ビニル成分の含有量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜6重量%がより好ましい。
【0046】
内面層21を構成する樹脂には、市販品を用いることができる。適用可能な市販品としては、例えば、低密度ポリエチレンとして、宇部丸善ポリエチレン(株)製の「F234,F222NH,F522N,Z372」、住友化学(株)製の「F200,F412−1」、日本ポリエチレン(株)製の「SF941,SF8402」等が挙げられる。EVAとしては、宇部丸善ポリエチレン(株)製の「V206」、日本ポリエチレン(株)製の「LV1511」等が挙げられる。
【0047】
内面層21の全体の密度は、基部層20の密度以上であり、好ましくは基部層20の密度よりも高い。具体的には、0.910〜0.945g/cm3であることが好ましく、0.915〜0.940g/cm3であることがより好ましく、0.920〜0.935g/cm3であることがさらに好ましく、0.920g/cm3を超え0.935g/cm3以下であることが特に好ましい。内面層21には、可塑剤、滑剤、ワックス、帯電防止剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0048】
外面層22は、任意で基部層20の外面に形成されたフィルム基材11の最外面を構成する表面層であって、製造時及び使用時における耐久性(耐損傷性)を向上させる役割を果たす。外面層22は、フィルム基材11のストレッチ性を損なわない範囲で、どんな材料を使用してもよいが、より好ましくは低密度ポリエチレンを主成分として構成され、適度なストレッチ性を有する。低密度ポリエチレンの含有率は、外面層22を構成する樹脂成分の総重量に対して、少なくとも50重量%であり、好ましくは55重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、上限値は100重量%であってよい。2種以上の低密度ポリエチレンを用いる場合は、全ての低密度ポリエチレンのトータルがこの範囲内であればよい。
【0049】
外面層22は、基部層20の外面の全域に形成されることが好適である。外面層22の厚みは、フィルム基材11の総厚みに対して、2〜25%であり、好ましくは3〜20%、より好ましくは5〜17%である。例えば、外面層22の厚みは、2〜25μmであることが好ましく、より好ましくは3〜20μm、特に好ましくは5〜17μmである。
【0050】
外面層22を構成する低密度ポリエチレンには、内面層21を構成する低密度ポリエチレンに例示されるものと同様の樹脂を用いることができる。また、内面層21と同様に、低密度ポリエチレンと、スチレン−ジエン系共重合体や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との混合樹脂を用いて外面層22を形成してもよく、低密度ポリエチレンとEVAとの混合樹脂を用いて外面層22を形成することが好ましい。本実施形態では、内面層21と外面層22とを同じ樹脂組成で形成し、物性(密度、厚み等)が略同一である。
【0051】
印刷層12は、例えば、商品名やイラスト、商品説明等を表示するための層であって、フィルム基材11の内面若しくは外面、又は内面及び外面の両面に所望のパターンで形成される。本実施形態では、フィルム基材11の内面層21の内面に印刷層12が形成されている。印刷層12の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10μmである。印刷層12には、折り位置で割れが発生し易いが、基部層20の機能により当該割れが抑制される。
【0052】
印刷層12は、フィルム基材11の一方の面を内面として筒状体に成形する前に、フィルム基材11の一方の面若しくは他方の面又は両方の面に印刷インキを塗布し、乾燥等によって塗布したインキを固化することで形成される。印刷層12の形成には、例えば、所望の顔料や染料等の色材、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂等のバインダ樹脂、有機溶剤、及び各種添加剤(例えば、可塑剤、滑剤、ワックス、帯電防止剤)等を含む溶剤型インキが印刷インキとして用いられる。そして、この印刷インキを用いて、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、又は凸版輪転印刷法等の公知乃至慣用の印刷方法によって印刷を行なうことで印刷層12を形成することができる。印刷層12は、例えばアクリル系樹脂やウレタン系樹脂等のバインダ樹脂中に所望の顔料や染料等の色材が分散してなる層、又はバインダ樹脂により色材を結着してなる層であって、任意の添加剤を含有していてもよい。
【0053】
筒状ストレッチラベル10には、ストレッチ性に影響を与えない範囲で、印刷層12以外の層を設けてもよい。例えば、印刷層12上に保護層を設けてもよい。また、フィルム基材11の外面に印刷層12を形成したときには、保護層を当該印刷層上に設けてもよい。また、印刷層12がフィルム基材11の外面に形成されていない場合であっても、フィルム基材11の外面には、滑り性の付与や傷付き防止等を目的として透明なオーバーコート層を設けてもよい。保護層やオーバーコート層は、公知乃至慣用のインキを用いて公知乃至慣用の印刷法によって形成でき、例えば、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂等のバインダ樹脂、有機溶剤、及び各種添加剤(例えば、可塑剤、滑剤、ワックス、帯電防止剤)等を含む溶剤型透明インキ、又は透明性を損なわない色材をさらに含有する透明インキを用いて形成できる。保護層やオーバーコート層は、例えばアクリル系樹脂やウレタン系樹脂等のバインダ樹脂からなる層であって、任意の添加剤や透明性を損なわない色材を含有していてもよい。フィルム基材11の外面に形成される場合には、保護層やオーバーコート層は透明であることが好ましい。
【0054】
ここで、筒状ストレッチラベル10の製造方法を例示する。
【0055】
筒状ストレッチラベル10の一連の製造工程は、フィルム基材11の長尺体である第1長尺体を作製する工程(以下、工程(a)とする)、第1長尺体に印刷層12を形成して第2長尺体を作製するする工程(以下、工程(b)とする)、第2長尺体を筒状体に成形して筒状長尺体を作製する工程(以下、工程(c)とする)、及び筒状長尺体を個々のラベルサイズにカットして筒状ストレッチラベル10を作製する工程(以下、工程(d)とする)とを含む。
【0056】
まず初めに、工程(a)について説明する。
第1長尺体は、従来公知のフィルム形成方法、例えば溶融押出し法により作製できる。溶融押出し法では、基部層20、内面層21となる第1表面層、及び外面層22となる第2表面層を構成する原料樹脂を押出機に投入して溶融し、溶融した樹脂をTダイに供給し、薄膜状の溶融樹脂をダイスリットから冷却したキャスティングドラム上に押出して冷却固化しフィルム化する。押出し温度は、特に限定されないが、180℃〜240℃程度が好ましく、200℃〜220℃がより好ましい。各層を積層する方法は、例えば、Tダイの直前にフィードブロックを設置して各溶融樹脂を層流状態でTダイに供給するフィードブロック法、多層のマニホールドを用いるマルチマニホールド法のいずれを適用してもよい。こうして、第1表面層/基部層20/第2表面層の積層構造を有する第1長尺体(例えば、ロール状に巻き取られた第1長尺体)が作製される。
【0057】
なお、第1長尺体は、内面層21となる第1表面層と基部層20からなり、外面層22となる第2表面層を有さない層構造としてもよい。また、上記第1長尺体は、無延伸フィルムであるが、ストレッチ性を損なわない範囲で延伸処理されてもよい。また、第1長尺体(又は第2長尺体)に対して、コロナ処理やフレイム処理等の表面処理を行ってもよいし、帯電防止コート層や保護層、オーバーコート層など、表面層及び基部層20以外の層を設けてもよい。
【0058】
次に、工程(b)について説明する。
工程(b)では、第1長尺体をロールの形態で印刷機等に供給してMD方向(長尺体の長手方向)に連続搬送しながら、第1長尺体の一方の面若しくは他方の面又は両方の面に印刷層12を形成する。印刷層12は、上記のように、グラビア印刷法等により形成できる。このようにして、第1長尺体の一方の面若しくは他方の面又は両方の面に印刷層12が形成された第2長尺体(例えば、ロール状に巻き取られた第2長尺体)を作製する。なお、本実施形態では、第1表面層上に印刷層12が形成される。
【0059】
次に、工程(c)について説明する。
工程(c)では、印刷層12が形成された第2長尺体を筒状長尺体に成形する。第2長尺体は、TD方向(長尺体の幅方向)が周方向となるようにTD方向両端同士を重ね合わせてシール部13を形成することで筒状長尺体とされる。シール部13は、例えば、接着剤シールやヒートシールによって形成できる。シール部13は、筒状体の周方向に0.5〜5mm程度の長さとなるように形成される。なお、第2長尺体は筒状に成形する前に、TD方向に所定幅となるようにMD方向にスリットを行い、筒状長尺体の周方向の長さを調整することが好適である。
【0060】
図3は、工程(c)により作製される筒状長尺体30を示す。筒状長尺体30は、第1表面層が筒状体の内側を向くようにしてシール部13を形成することで作製される。シール部13は、筒状長尺体30のMD方向に沿って形成される。こうして、第1表面層が内面層21となる。また、印刷層12は第1表面層上に形成されているから、印刷層12が筒状体の内側に設けられることになる。
【0061】
筒状長尺体30は、保管性や搬送性等の観点から、扁平状に折り畳まれることが好適であり、例えばシール部13を形成して筒状にされた後に折り畳まれる。このため、筒状長尺体30には、シール部13と略平行な2つの折り目線31が形成される。折り目線31で折り畳まれた扁平状の筒状長尺体30は、例えばロール状に巻き取られて、ロール形態で保管、搬送される。
【0062】
次に、工程(d)について説明する。
工程(d)では、筒状長尺体30を個々のラベルサイズにカットして筒状ストレッチラベル10を作製する。筒状長尺体30は、上記ロール形態でストレッチラベラー(ラベル装着機)に供給され、当該ラベラーおいてカットされるのが一般的であり、例えば容器等に装着される前に点線で示すカット位置32でカットされる。こうして、筒状長尺体30は、複数の筒状ストレッチラベル10に分割される。筒状長尺体30は、MD方向に連続搬送されながら、ギロチンカッターやロータリーカッターにより個々のラベルサイズにカットされる。なお、筒状ストレッチラベル10には、慣用の方法でミシン目線を形成してもよい。
【0063】
ここで、筒状ストレッチラベル10(筒状長尺体30)の作用効果について説明する。
【0064】
筒状長尺体30には、上記のように、扁平状に折り畳まれることで折り目線31が形成されている。筒状長尺体30は、折り目線31が形成された部分においてフィルム基材11及び印刷層12に大きなストレスが加わっているが、所定の組成を有する基部層20を設けたことにより、拡径した際の折り位置における印刷層12の割れやフィルム基材11の裂けが抑制される。
【0065】
筒状長尺体30は、上記のように、ギロチンカッターやロータリーカッター等種々のカッターを用いて個々のラベルサイズにカットされる。このとき、例えば、カット時の摩擦熱や押圧の影響等により、筒状長尺体30の内面同士が接合するカット融着が発生し易い状況となる。特に、押し切りされるようなギロチンカッターや図4に示される機構のロータリーカッターはカット融着し易い傾向にある。筒状長尺体30は、所定の組成を有する内面層21が設けられているため当該カット融着の発生を抑制することができる。また、カット融着が発生したとしても融着の程度が小さく、容易に引き離すことが可能である。このため、筒状長尺体30は、カット融着しにくいカッターを搭載したストレッチラベラーだけでなく、比較的カット融着しやすいカッターを搭載したストレッチラベラーにも使用でき、汎用性に優れる。
【0066】
つまり、特定の基部層20と特定の内面層21とを有するフィルム基材11(第1長尺体)を用いることにより、カット融着の発生を抑制することができると共に、ラベルの折り位置における印刷層12の割れや、フィルム基材11の裂けを抑制することが可能になる。
【0067】
なお、筒状ストレッチラベル10は、例えば、ストレッチラベラーを用いて容器等の被着物に装着される。ストレッチラベラーは、ストレチャー(拡径装置)で筒状ストレッチラベル10を周方向に引っ張って伸張させた状態(例えば、容器等のラベル装着箇所の最大周長よりも若干大きくなる程度にラベルを拡径させた状態)とし、拡径された筒の内側に被着物を嵌挿する。筒状ストレッチラベル10の内側に被着物が嵌挿された状態で、ストレッチャーを除去して引っ張り力を取り除くと、ラベルが弾性的に収縮し容器等に追従して装着される。なお、筒状ストレッチラベル10は、少なくとも2%程度周方向に伸張した状態で装着されていることが好適である。
【0068】
ここで、筒状ストレッチラベル10のストレッチ特性について説明する。
【0069】
筒状ストレッチラベル10のストレッチ特性は、引っ張り応力や、瞬間歪みにより表すことができる。引っ張り応力とは、引っ張り試験機によって評価サンプルを所定の試験速度で引っ張って所定量伸張させたときに、引っ張り試験機に作用する引っ張り抵抗力である。即ち、伸張に抵抗する力であり、引っ張り応力が小さいほど、ラベルは伸ばし易く伸張性が高いことを意味する。瞬間歪み(%)は、所定の試験速度で所定量伸張させた引っ張り試験後に所定の試験速度で引っ張り抵抗力がゼロになるまで戻した際の評価サンプルが元の長さに戻らずに変形した度合い(変形量/評価サンプルの元の長さ)である。なお、引っ張り試験における所定の試験速度は、50mm/分である。瞬間歪みが小さいほど、ラベルの復元性が高いことを意味する。即ち、引っ張り応力、瞬間歪みともに小さい方が、ストレッチ特性に優れる。
【0070】
筒状ストレッチラベル10は、少なくとも周方向に対して25%以上の伸張が可能であることが好ましい。筒状ストレッチラベル10は、周方向に25%伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、5%以下が特に好ましい。なお、瞬間歪みの下限は、理想的では0%であるが、実際に0%という場合は少ない。
【0071】
筒状ストレッチラベル10は、少なくとも周方向に対して10%伸張させたときの引っ張り応力(以下、F10値とする)が、好ましくは3〜12N/mm2、より好ましくは5〜10N/mm2、特に好ましくは6〜8N/mm2である。F10値の下限値が低すぎると伸張した状態で容器の締め付け力が弱くなりすぎ、見栄えの良い装着状態が得られない場合がある。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
<実施例1>
フィルム基材の作製には、合流方式がフィードブロック2種3層型の押出し機を用いた。210℃に加熱した2台の押出し機に下記原料樹脂(基部層原料、内面層及び外面層原料)を投入し溶融した後、基部層原料の両側に内面層及び外面層原料を積層し、Tダイに供給して、そのスリットから25℃に冷却したキャスティングドラム上に2種3層で押出して急冷固化し、内面層/基部層/外面層の3層構造のフィルム基材の長尺体(第1長尺体)を得た。基部層は、密度が0.923g/cm3、厚みを90μmとした。内面層及び外面層は、それぞれ、密度が0.923g/cm3、厚みを5μmとした。フィルム基材(第1長尺体)の全体の密度は、0.922g/cm3、厚みは100μmとした。表1に、各層の厚み、密度、原料樹脂等を示す。
【0074】
[原料樹脂]
基部層原料:密度が0.913g/cm3の線状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製のFV203)20重量%、密度が0.921g/cm3の低密度ポリエチレン(住友化学(株)製のF412−1)50重量%、密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)25重量%、滑剤(アミド系、密度0.922g/cm3)5重量%
内面層及び外面層原料:密度が0.924g/cm3の低密度ポリエチレン(住友化学(株)製のF200)70重量%、密度が0.920g/cm3のエチレン−酢酸ビニル共重合体(宇部丸善ポリエチレン(株)製のV206)30重量%
【0075】
次に、グラビア印刷機によって、上記第1長尺体の一方の面(内面層の内面)に該長尺体をMD方向に搬送しながらメジウムインキ(透明)と溶剤型インキ(墨、藍、赤、黄のカラー4色、銀、白)を用いて厚みが3μmの印刷層(フィルム基材/カラー/メジウム/銀/白/白、カラーでデザイン形成した後、メジウム、銀、白、白を順に全面ベタ印刷)を形成して第2長尺体を得た。次に、内面層が筒状体の内側を向くように第2長尺体のMD方向に沿った端縁同士を重ね合わせ、接着剤を用いてシール部を形成することにより、筒状に成形して筒状長尺体A1を得た。筒状長尺体A1は、扁平状に折り畳んでロール状に巻き取った。これにより、筒状長尺体A1には、MD方向に沿って2つの折り目線が形成された。
ロータリーカッター(図4に示すカット機構)を有するストレッチラベラー((株)フジアステック製のSTS−1916)を用いて、筒状長尺体A1をカットすることで筒状ストレッチラベルB1を得た。
【0076】
筒状長尺体A1、筒状ストレッチラベルB1について、以下の測定方法により、ストレッチ特性、カット融着、装着適性、及び印刷層割れ(印刷層割れについては、上記第1長尺体を用いて評価した)の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0077】
<ストレッチ特性の評価>
筒状ストレッチラベルB1から軸方向に長さ15±0.1mm、周方向に長さ200mm(標線間距離100±2mm)の長方形のサンプル片を作製した。このサンプル片の長辺方向(筒状ストレッチラベルの周方向)を測定方向として、25%の引っ張り試験を行い、瞬間歪み(%)を測定した。25%の引っ張り試験とは、クロスヘッド速度一定型又は振子型引張試験機(試験速度:50±5mm/分)を用いて、所定の荷重(N)を加えてサンプル片の標線間距離が25%となるまで伸ばす試験であり、伸ばした後に同じ試験速度で0(N)に戻したときの標線間距離を読み取って、以下の計算式で瞬間歪み(%)を算出した。
瞬間歪み(%)=100×ΔL2/L2
L2:試験前のサンプル片の標線間距離(mm)
ΔL2:試験後のサンプル片の標線間距離の増加(mm)
【0078】
上記引っ張り試験において、引っ張り応力とサンプル片の伸び(歪み)との関係を示す応力歪み曲線が得られる。得られた応力歪み曲線から、サンプル片が10%伸びたとき(伸ばしていく際の値)の引っ張り応力であるF10値を求めた。
【0079】
<カット融着の評価>
上記ストレッチラベラーでカットして得られた筒状ストレッチラベルB1の軸方向一方(下流側)から筒状体の中に指を閉じた手を入れ、3秒経ってから手を開き、筒状ストレッチラベルB1の軸方向他方(上流側)の開き具合について官能評価で確認した。
○(カット融着なし):容易に開いた
×(カット融着あり):開く際に大きな抵抗があった
【0080】
<装着適性の評価>
上記ストレッチラベラーでカットして得られた筒状ストレッチラベルB1を、上記ストレッチラベラーを用いて300枚/分の速度で容器に装着させて、ラベルの折れ込み、カット融着によるラベル開口不良を確認した。
○:ラベルの折れ込み、開口不良は確認されず
×:ラベルの折れ込み、開口不良が確認された
【0081】
<印刷層割れの評価>
上記第1長尺体からMD方向に長さ70mm±0.1mm、TD方向に長さ15mm±0.1mmの長方形のサンプル片を作製した。当該サンプル片について、以下の手順で評価を行った。
(1)サンプル片の印刷面同士が重なるよう扁平状に折り畳み、プレス機(テスター産業(株)製のヒートシールテスター TP−701−B)を用いて、常温・0.3MPa・3秒間踏み、折り目を付けた。
(2)折り目を中心にして、5℃環境下に設定したオートグラフにチャック間20mmでサンプルをセットし、設定温度になるまで放置し、1000m/分の速度で5mm(伸び率25%相当)引っ張った。
(3)引っ張った後、オートグラフから取り外したサンプルについて、折り目における印刷層の状態を、目視とCCDカメラ(倍率100〜200倍)で印刷面を観察することにより確認した。
○:印刷層の割れは確認されず
×:印刷層の割れが確認された
【0082】
<実施例2>
基部層原料、表面層(内面層及び外面層)及び基部層の厚みを、下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして、第1長尺体、筒状長尺体A2、筒状ストレッチラベルB2を作製した。
基部層原料:密度が0.913g/cm3の線状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製のFV203)10重量%、密度が0.922g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のF222NH)75重量%、密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)10重量%、実施例1と同じ滑剤(アミド系)5重量%
基部層の厚みを70μm、内面層及び外面層の厚みをそれぞれ15μmとした。
また、実施例1と同様にして、ストレッチ特性、カット融着、及び印刷層割れの評価を行った(実施例3〜5についても同様)。
【0083】
<実施例3>
基部層原料、内面層及び外面層原料を、下記のように変更した以外は、実施例2と同様にして、第1長尺体、筒状長尺体A3、筒状ストレッチラベルB3を作製した。
基部層原料:密度が0.913g/cm3の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の715FT)20重量%、密度が0.922g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のF222NH)45重量%、密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)20重量%、実施例1と同じ滑剤(アミド系)5重量%
内面層及び外面層原料:密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)70重量%、密度が0.920g/cm3のエチレン−酢酸ビニル共重合体(宇部丸善ポリエチレン(株)製のV206)30重量%
【0084】
<実施例4>
基部層原料、内面層及び外面層原料を、下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして、第1長尺体、筒状長尺体A4、筒状ストレッチラベルB4を作製した。
基部層原料:密度が0.913g/cm3の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の715FT)20重量%、密度が0.922g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のF222NH)5重量%、密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)70重量%、実施例1と同じ滑剤(アミド系)5重量%
内面層及び外面層原料:密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)70重量%、密度が0.920g/cm3のエチレン−酢酸ビニル共重合体(宇部丸善ポリエチレン(株)製のV206)30重量%
【0085】
<実施例5>
基部層原料を、下記のように変更した以外は、実施例4と同様にして、第1長尺体、筒状長尺体A5、筒状ストレッチラベルB5を作製した。
基部層原料:密度が0.904g/cm3の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の0540F)20重量%、密度が0.922g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のF222NH)45重量%、密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)30重量%、実施例1と同じ滑剤(アミド系)5重量%
【0086】
<比較例1>
第1長尺体の層構造(フィルム基材)を、基部層のみの単層構造(厚み100μm)とした以外は、実施例5と同様にして、第1長尺体、筒状長尺体X1、筒状ストレッチラベルY1を作製した。
また、実施例1と同様にして、カット融着、装着適性、及び印刷層割れの評価を行い、評価結果を表2に示した。なお、ストレッチ特性については評価していない(比較例2〜6についても同様)。
【0087】
<比較例2>
基部層原料を、下記のように変更した以外は、実施例4と同様にして、第1長尺体、筒状長尺体X2、筒状ストレッチラベルY2を作製した。
基部層原料:密度が0.922g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のF222NH)55重量%、密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)40重量%、実施例1と同じ滑剤(アミド系)5重量%
【0088】
<比較例3>
基部層原料、表面層(内面層及び外面層)及び基部層の厚みを、下記のように変更した以外は、比較例2と同様にして、第1長尺体、筒状長尺体X3、筒状ストレッチラベルY3を作製した。
基部層原料:密度が0.913g/cm3の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の715FT)20重量%、密度が0.922g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のF222NH)45重量%、密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)30重量%、実施例1と同じ滑剤(アミド系)5重量%
基部層の厚みを33μm、内面層及び外面層の厚みをそれぞれ33μmとした。
【0089】
<比較例4>
基部層原料、表面層及び基部層の厚みを、下記のように変更した以外は、比較例2と同様にして、第1長尺体、筒状長尺体X4、筒状ストレッチラベルY4を作製した。
基部層原料:密度が0.913g/cm3の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の715FT)60重量%、密度が0.922g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のF222NH)30重量%、密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)5重量%、実施例1と同じ滑剤(アミド系)5重量%
基部層の厚みを60μm、内面層及び外面層の厚みをそれぞれ20μmとした。
【0090】
<比較例5>
基部層原料、内面層及び外面層原料を、下記のように変更した以外は、比較例4と同様にして、第1長尺体、筒状長尺体X5、筒状ストレッチラベルY5を作製した。
基部層原料:密度が0.913g/cm3の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の715FT)20重量%、密度が0.922g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のF222NH)70重量%、密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)5重量%、実施例1と同じ滑剤(アミド系)5重量%
内面層及び外面層原料:密度が0.934g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製のZ372)30重量%、密度が0.920g/cm3のエチレン−酢酸ビニル共重合体(宇部丸善ポリエチレン(株)製のV206)70重量%
【0091】
【表1】
【表2】
【符号の説明】
【0092】
10 筒状ストレッチラベル、11 フィルム基材、12 印刷層、13 シール部、20 基部層、21 内面層、22 外面層、30 筒状長尺体、31 折り目線、32 カット位置
図1
図2
図3
図4
図5