【文献】
MITHIEUX,S.M. et al,In situ polymerization of tropoelastin in the absence of chemical cross-linking,Biomaterials,2009年,Vol.30,p.431-435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本明細書におけるあらゆる先行技術に対する参照は、該先行技術がオーストラリアまたはあらゆる他の権威の一般常識の一部を形成するか、または該先行技術が、当業者に関連があると確認させ、理解させ、見なさせることを合理的に予期させることを承認または示唆するものではなく、そのように解釈すべきではない。
【0003】
加齢および組織損傷は、組織構造および/または機能の損失をもたらす細胞外マトリックスの変性と関連がある。弛緩皮膚、緩和皮下組織、細胞外マトリックスの密度低下、しわ、皮膚線条、および線維症は、退行変性の身体的発現である。関連する組織に応じて、弾性機能の損失は、肺容量または心臓容量の減少や、種々の弁および括約筋の弾性および/またはコンプライアンスの減少として現れる。
【0004】
約20年前、組織構造および機能の損失を治すための種々の臨床的および美容的介入に種々の細胞外マトリックス分子を用いる研究努力がなされた。興味がもたれた重要な分子は、関連細胞外マトリックス線維の基質である分子、すなわちコラーゲンおよびエラスチンであった。一般的に、該アプローチは、これらの生体
材料を、組織の間隙を充填
することにより、または組織を膨らますか
もしくは充填することにより組織の外観を向上させるためのインプラントもしくは充填剤として用いるか、またはこれらの
線維を、機能障害を改善するためのインプラントもしくは充填剤として用いるものであった
。
【0005】
エラスチンは、コラーゲンと異なり弾性インプラントおよび充填剤を形成するのに用いることができるので、この研究には幾分有利であると考えられた。初期の研究は、弾性インプラントまたは充填剤が、組織間隙の充填もしくは組織の増加または再形成のためにex vivoまたはin vivoで形成されるように、組換え型のトロポエラスチンを合成し、次いで個体に送達する前または後にコアセルベーションし、化学的または酵素的に架橋することに集中した。例えば、WO1994/14958;WO1999/03886;WO2000/04043参照のこと。WO2010/102337は、注射可能な架橋生体材料の形成における
固体濃度の関連性に言及している。
【0006】
酵素的架橋をin vivoで用いる
場合組換えまたは他の外因性リシルオキシダーゼを用いた。USSN 09/498,305は、外因性リシルオキシダーゼおよびトロポエラスチンモノマーを含む組成物の投与によるin vivoトロポエラスチンモノマーの酵素的架橋に対するあるアプローチについて記載している。
【0007】
架橋トロポエラスチンとある特性が似た
材料の形成に対する別のアプローチがWO2008/058323に開示されており、非架橋トロポエラスチンからなる弾性
材料がアルカリ性条件下で形成されている。
【0008】
上記のそれぞれの例では、外因性トロポエラスチンおよび架橋剤またはアルカリ性条件を、インプラントまたは充填剤の形成を行うのに利用する。弾性最終製品の形成までの時間は、トロポエラスチンの濃度、架橋剤、および関連条件に応じ、該最終製品は無細胞プロセスから生じる。
【0009】
以下のものを含む、トロポエラスチンの他の多くの使用も予期される:(i)創傷密閉剤として(WO94/14958);(ii)生物分解性または生物解離性(biodissociable)徐放性製剤を提供する活性成分の送達ビークルとして(WO94/14958);(iii)GAGs用の結合試薬
として(WO99/03886);(iv)エラスチン沈着に干渉するため(WO99/03886);および(v)セリンプロテアーゼが一般的に見いだされる受傷部位、組織損傷の位置、およびリモデリングにおいて(WO00/04043)。
【0010】
初期の研究は、トロポエラスチン
の複数の型が上記適用のいずれにも用いることができることを示唆した。例えば、WO94/14958(ドメイン26Aを含むヒトトロポエラスチンの合成型に関する)参照のこと。WO94/14958は、医薬組成物に用いる
ための哺乳動物型およびトリ型について記載し、WO99/03886は、ドメイン26A、C末端ドメイン、およびその他を欠くものを含む多くの合成型のヒトトロポエラスチンに関する。WO99/03886は、医薬適用に用いるためのヒト型および非ヒト型について記載している。特定の型のSHELδ26Aは、GAG結合活性の欠如について検討されている。WO00/04043は、セリンプロテアーゼ、特に、トロンビン、プラスミン、カリクレイン、ゼラチナーゼAおよびB、およびマトリックスメタロエラスターゼに対して低感受性のトロポエラスチンの型に関する。WO00/04043は、部分長型および完全長型および異種型を含むこれらの適用に有用な低感受性のトロポエラスチンの関連型(「低(reduced)トロポエラスチン誘導体」という)について記載している。
【0011】
この初期研究の各実施例において、弾性特性を有するインプラントは組織に供給することができたが、該インプラントの性質およびその弾性特性は、該組織に通常
起因することを示唆しなかった。例えば、皮膚または皮下組織に対するこの初期研究に記載の充填剤またはインプラントによりもたらされる弾性特性は、該組織の正常な弾力性とは明らかに異なると理解されるかもしれない。言い換えれば、弾力性は、弾力性を含む特性を有する
材料の移植によって組織にもたらすことができるが、正常に似た身体的外観や機能に戻ることはできないかもしれない。
【0012】
過去5〜10年間のより最近の研究から、特定組織の弾性
プロファイルがリシルオキシダーゼおよびトロポエラスチンに加えて複数の因子が関与する複雑な過程(「弾性
線維形成」として知られる)によって生じることがわかってきたので、結果的に、この結果はおそらく驚くに値しない。弾性
線維形成は、一般的に、胎児期後半から出生後早期に生じる生理学的プロセスをいうと理解され、弾性
線維は、
線維芽細胞、平滑筋細胞などを含む細胞によりトロポエラスチンモノマーおよび他の関連因子からde novoで生成される。因子の共通セットを用いて出発し、関連組織は、関連組織に対して天然であり、組織の弾性
プロファイルを生じる弾性
線維の合成、組織化、および分布を生じるこれら因子の組織特異的相互作用をもたらす(Cleary E.G and Gibson M.A. Elastic Tissue、Elastin and Elastin Associated Microfibrils in Extracellular Matrix Vol 2 Molecular Components and Interactions (Ed Comper W.D.) Harwood Academic Publishers 1996 p95)。この組織化および付随する
プロファイルは初期の研究が提唱するようにex vivoまたはin vivoで異種性トロポエラスチンを外因性リシルオキシダーゼで架橋することで簡単に再構築することはできないということが明らかになった。
【0013】
成体組織における弾性
線維形成などのプロセス(すなわち、該組織が因子の共通セットからde novoで弾性
線維を合成するもの)は組織の弾性
プロファイルを回復させると考えられるので、該プロセスの開始は望ましい目標である。例えば、加齢組織の弾性
プロファイルは、
組織のプロファイルが若年組織の
プロファイルに類似するように回復しうる。残念ながら、該目標は、主として成体のde novoにおける弾性
線維の形成がわずかであるため把握しにくい。弾性
線維の修復は、ある種の循環器疾患および肺疾患で生じうるが、修復メカニズムによって生じる弾性
線維の完全性と組織化は弾性
線維形成によって生じるものとは異なる(Akhtar et al. 2010 J. Biol. Chem. 285: 37396-37404)。
【0014】
この問題は、最近10年間に多く
の研究グループが集中的に研究している(Huang R et al.、Inhibition of versican synthesis by antisense alters smooth muscle cell phenotype and induces elastic fiber formation in vitro and in neointima after vessel injury. Circ Res. 2006 Feb 17;98(3):370-7;Hwang JY et al.、Retrovirally mediated overexpression of glycosaminoglycan-deficient biglycan in arterial smooth muscle cells induces tropoelastin synthesis and elastic fiber formation in vitro and in neointimae after vascular injury. Am J Pathol. 2008 Dec;173(6):1919-28.;Albertine KH et al.、Chronic lung disease in preterm lambs: effect of daily vitamin A treatment on alveolarization. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2010 Jul 299(1):L59-72;Mitts TF et al.、Aldosterone and mineralocorticoid receptor antagonists modulate elastin and collagen deposition in human skin. J Invest Dermatol. 2010 Oct;130(10):2396-406;Sohm B et al.、Evaluation of the efficacy of a dill extract in vitro and in vivo. Int J Cosmet Sci. 2011 Apr;33(2):157-63;Cenizo Vet al.、LOXL as a target to increase the elastin content in adult skin: a dill extract induces the LOXL gene expression. Exp Dermatol. 2006 Aug;15(8):574-81)。成体におけるde novoでの弾性
線維形成の欠如を説明するために広く考えられている仮説は、成体細胞またはそれが含まれる関連組織が、弾性
線維形成に必要な因子とプロセスの1またはそれ以上を欠くことである(Shifren A & Mecham R.P. The stumbling block in lung repair of emphysema: Elastic fiber assembly. Proc Am Thorac Soc Vol 3 p 428-433 2006)。該仮説によれば、成体組織に合成トロポエラスチンを供給しても成体細胞は合成トロポエラスチンから弾性
線維を合成することはできない。
最近の研究は、若年期の弾性
線維形成を支持するメカニズムおよび因子を理解すること、およびそれらが成人期に存在するかどうかを検討することに集中している(Wagenseil JE & Mecham RP. New insights into elastic fiber assembly. Birth Defects Res C Embryo Today. 2007 Dec;81(4):229-40.)。
【0015】
一般に、トロポエラスチンタンパク質の発現直後に該タンパク質はコアセルベートして約200〜300nmの球体のアセンブリとなり、次いでさらに融合して約1ミクロンの粒子となる
と考えられている。次いで該粒子は、細胞外マトリックス中の微小
線維の長さに沿って組み立てられる(Kozel BA et al.、Elastic fiber formation: a dynamic view of extracellular matrix assembly using timer reporters. J Cell Physiol. 2006 Apr;207(1):87-96)。このプロセスにおける種々のさらなる因子の関与が検討され続けている。
【0016】
種々の分子的工程のin vitro研究は、ヒトおよび非ヒトトロポエラスチン基質および種々の異なるトロポエラスチンアイソフォームを試験する傾向があった(Davidson JM et al.、Regulation of Elastin synthesis in pathological states. Ciba Found Symp. 1995;192:81-94;discussion 94-9)。この研究により、少なくとも34の異なる分子が弾性
線維と結合することが明らかとなったが、そのうちのいくつかだけが
線維生成に構造的に関与することが示されている。これらには、トロポエラスチン、フィブリリン-1、フィブリリン-2、リシルオキシダーゼ、リシルオキシダーゼ様-1 (LOXL1)、エミリン、フィブリン-4、およびフィブリン-5が含まれる(Chen et al. 2009 J. Biochem 423: 79-89)。あるグループは、ある種の成体組織において重要な欠損分子であるLOXファミリーのメンバーであるLOXL1について検討した(US2004/0258676、US2004/0253220、およびUS20100040710参照)。他のグループは、リシルオキシダーゼまたは他の分子との相互作用によりフィブリン4および他の分子を同定している(Yanagisawa H & Davis EC. Unraveling the mechanism of elastic fiber assembly: The roles of short fibulins. Int J Biochem Cell Biol. 2010 Jul;42(7):1084-93)。
【0017】
要約すると、弾性
線維形成における因子の相互作用に関する概念は完全ではないが、最新の研究は、成体細胞および組織は1またはそれ以上の因子を欠くので弾性
線維形成のようなプロセスが完了しないことを示す。弾性
線維形成に必要な関連因子がなければ成体組織は弾性
線維を形成するためにトロポエラスチンを利用することができないため、成体組織にトロポエラスチンのみを提供してもそれ自体では該組織の弾性
プロファイルを
回復するのに充分ではない。
【0018】
組織の弾性
プロファイルを
回復または再構築するか、または組織の弾性
プロファイル線維の分解を最小限にする必要性が依然としてある。
加齢組織の弾性プロファイルを、幼年期の組織のプロファイルにより良く似るように改善する必要がある。
例えば、弛緩皮膚、緩和皮下組織、細胞外マトリックスの密度低下、しわ、および皮膚線条を最小限にするために光老化組織を含む加齢組織の外観を改善する必要がある。
【0019】
瘢痕化組織または線維性組織の弾性
プロファイルを、組織損傷前の瘢痕または線維性組織を含む関連組織の
プロファイルにより良く似るように改善する必要もある。
【0020】
加齢組織または損傷組織の弾性機能を、幼年期または損傷前の関連組織の弾性機能により良く似るように改善する必要もある。
【0021】
上記要求は、上記関連先行技術における
ものと同様な
組織を架橋トロポエラスチンで充填するためのインプラントまたは充填剤、
およびそれらの使用による取り組みとは異なる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(態様の詳細な説明)
本発明の重要な知見は、本発明者らが開発し、本明細書に実施例
の例示した新規アッセイシステムから得られる
と考えられる。該アッセイシステムは、成人ヒト細胞を用い、in vitroで弾性
線維を形成する。該システムは、弾性
線維形成の各工程の分析を可能にし、弾性
線維形成に必要な成分とプロセスを確認するために操作することができる。
【0032】
このアッセイシステムは、本発明より以前に理解されていたものと異なる弾性
線維合成経路をみいだした。重要な知見は、
線維形成は以前に考えられていたよりはるかに細胞の相互作用に依存するということである。
【0033】
重要な知見は、該システムでは外因性トロポエラスチンモノマーを該システムに加えないかぎり弾性
線維の実質的または有意な合成が生じないことである。これは、in vivoの弾性
線維合成にトロポエラスチンが重要であることを示す。
【0034】
さらに、該システムは、該システムにヒトトロポエラスチンモノマーと非ヒト細胞を用いると弾性
線維形成が効率的に起きないことを示す。
【0035】
さらに、該モノマーは、一般的に1またはそれ以上の天然のアイソフォームの形をとるのに必要である。該モノマーは、組換えで合成することができるが、ヒトの生理学において存在しない配列または構造を有する組換え型は、内因性トロポエラスチンと外因性トロポエラスチンの配列の違いは約65%相同より低くなく、
線維形成はある程度可能であるが、効率的に弾性
線維を形成することができない
ことが見出された。
【0036】
さらに、該システムに対するトロポエラスチンの反復投与は、継続して弾性
線維を形成する能力を示し、トロポエラスチンが弾性
線維形成の制限因子であることを示唆する。
【0037】
ヒト成人細胞および天然のヒトトロポエラスチンアイソフォームの使用は、該アッセイシステムを他のシステムから区別すると考えられ(例えば、Sato F et al.、Distinct steps of cross-linking、self-association、and maturation of tropoelastin are necessary for elastic fiber formation. J Mol Biol. 2007 Jun 8;369(3):841-51参照)、これは、これらの関連研究グループが、ヒト成人細胞はトロポエラスチンに暴露すると弾性
線維形成に似たプロセスで弾性
線維を合成する可能性があることを理解していないためであろう。
【0038】
さらなる研究において、本明細書に記載の臨床実験は、細胞がトロポエラスチンと接触するのに充分な時間、組織中にトロポエラスチンを維持することが重要であることを証明した。これは、処置した領域のトロポエラスチン濃度が非処置領域より高くなるように選択した時間、処置する組織の領域のトロポエラスチンの濃度を確立し、維持することにより達成することができる。トロポエラスチンが細胞と接触するのに必要な充分長い時間、組織中に維持されるか、または組織の細胞が少ないと、細胞のリクルートメントおよび接触のために、組織の
線維形成および弾性
プロファイルの
回復をもたらす弾性
線維形成様プロセスが
成体組織において生じうると考えられる。
組織中のトロポエラスチンの持続性または維持性についての例示的な時間は、以下にさらに記載されている。
本発明に従って形成された弾性線維は、天然で観察されるものと同じ分子構造を有し得るが、いくつかの態様において線維の分子および/または物理的構造が異なり得ると理解されよう。ある態様において、該弾性
線維は、本発明の目的をまだ達成するが、処置した組織と異なる物理構造を有しうる。
【0039】
特定の態様において、本発明の方法によって合成されるエラスチンは、組織、細胞、および/または細胞外マトリックスと統合することにより、弾性
プロファイルは
回復または再生され、物理的外観を改善し、または他の臨床評価項目を達成する。これらの態様において、合成エラスチンは、該組織に通常観察される弾性
線維に比べて異なる物理学的構造または分子構造を有しうるので、エラスチンと
関連組織の他の成分
との間の相互作用またはエンゲージメントから評価項目を得ることができる。
【0040】
ある態様において、本発明により形成された弾性
線維は水和型で提供され、それにより
線維弾性潜在力を有する
線維を埋め込ませる。
【0041】
本発明の基礎を形成する研究は、成体細胞、例えば
線維芽細胞、平滑筋細胞等はエラストジェニック(elastogenic)潜在力を有するので、成体細胞では弾性
プロファイルの
回復または再生が可能であり、弾性
線維形成のようなプロセスに関与する可能性があり、該組織
に関連弾性
プロファイルを
戻すことを示す。さらに、成体細胞にトロポエラスチンモノマーの潜在的組織関連アイソフォームおよび種が提供されると、該潜在力が実現する。さらに、本発明者らは、かなりの濃度の不純物を含む組換えヒトトロポエラスチンは効率的なエラスチン
線維の形成を生じないこともみいだした。ある態様において、該トロポエラスチンは、投与用組成物中のトロポエラスチンの量に関して、該組成物中の他のタンパク質または分子の量に比べて特定の純度を有する。ある態様において、トロポエラスチンは、組成物中、少なくとも75%
の純度、好ましくは85%
の純度、より好ましくは90または95%
超の純度を有する。ある態様において、該トロポエラスチンは、トロポエラスチン、好ましくはトロポエラスチンの完全長アイソフォームからなるかまたは実質的にそれらからなる組成物の形で提供
され得ると理解されよう。最終的に、トロポエラスチンがすでに実質的に分子内で架橋していると、細胞はトロポエラスチンを利用して弾性
線維を形成することができない。
【0042】
本発明によれば、治療計画は、細胞が投与したトロポエラスチンと結合し、それを利用して弾性
線維を形成することができる充分な時間、トロポエラスチンを組織の限定した治療領域内に維持するものである。組織の特定治療領域内でのトロポエラスチンモノマーの半減期は、一般的に関連細胞が弾性
線維を形成するのに必要とされるより短いと考えられるので、適切な計画は、トロポエラスチン
モノマーの単回投与以上、または純粋なモノマーの投与以上を含みうる。より詳細には、細胞と結合しないトロポエラスチンモノマーは、治療領域で代謝されるか、または治療領域から分散すると考えられる。その結果、適切な治療計画を選択しないと、投与したトロポエラスチンは、細胞が弾性
線維を形成するのに利用する前に、特定治療領域から表面上枯渇することになるかもしれない。
【0043】
さらに以下に記載する治療計画の1工程は、トロポエラスチンを投与する部位がかなり多くの細胞を有することが解っている場合はトロポエラスチンの単回投与を含みうる。細胞数または密度の知見は、組織の以前の組織学的知見から得られるかもしれない。あるいはまた、投与部位には、治療部位に細胞増殖または補充を誘導する処置を予め施していてもよい。
【0044】
多くの治療計画が、投与したトロポエラスチンを治療領域の組織に必要な時間維持するのに適合するかもしれない。これらは大まかに以下の通りである。
【0045】
(i)一定期間にわたりトロポエラスチンを徐々に放出する持続放出製剤でトロポエラスチンの投与。
必要な組織部位におけるトロポエラスチンの持続放出は、トロポエラスチンを非分解性または分解性送達ビークル中に組み込むことにより達成することができる。当業者は、多くのそのような持続放出アプローチを用いることができよう。好ましくは、トロポエラスチンが送達されるとビークルを除去する必要がないように、分解性持続放出製剤を用いる。そのような送達ビークルは、ポリラクチド(PLA)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)などのポリマーからなる。他の持続送達ビークルは、ヒアルロン酸、キサンタンガム、またはキトサンなどの多糖類から形成されるポリマーを含み得る。さらに、ある態様において、該送達ビークルは、インプラントが分解するとトロポエラスチンのみが放出されるように、インプラント中にイオン結合または共有結合によりトロポエラスチンを結合するように化学修飾することができる。
【0046】
ある態様において、トロポエラスチンは、必要な治療部位に1〜90日間放出される。ある態様において、トロポエラスチンは、必要な治療部位に1〜180日間放出されうる。ある態様において、トロポエラスチンは、インプラントの適用後遅れて、例えば10〜90日間または10〜180日間放出されるように製剤化することができる。他の適切なトロポエラスチン送達時間には、1〜30日間、1〜60日間、10〜60日間、30〜60日間、30〜180日間、または1〜>180日間が含まれる。
【0047】
送達されるトロポエラスチンの量と濃度は、治療する組織の面積と容積、通常組織中に存在する典型的内因性エラスチンレベル、および必要なエラスチン
線維合成レベルに依存する。典型的にはトロポエラスチンは、1μg〜1mg/cm
3組織の量で組織に送達される。皮膚では、これは1μg〜1mg/cm
2として計算してよい。送達することができる他の量には、0.1μg〜10mg/cm
3組織、1mg〜20mg/cm
3組織、または1mg〜100mg/cm
3組織が含まれる。ある態様において、送達される量は、0.1μg/cm
3組織以下または100mg/cm
3組織以上であり得る。治療部位に適用するインプラント中のトロポエラスチンの濃度は、トロポエラスチンの必要量を送達することができるように変更することができる。ある態様において、インプラント中のトロポエラスチンの濃度は1μg/ml〜100mg/mlで変更することができる。ある態様において、製剤中のトロポエラスチン濃度は、0.5mg/ml〜200mg/ml、1mg/ml〜50mg/ml、5mg/ml〜50mg/ml、または1mg/ml〜25mg/mlである。製剤中に組み込まれるトロポエラスチンは、治療する組織中に天然に存在するトロポエラスチンのアイソフォームと実質的に等価であるべきである。さらに、トロポエラスチンは、実質的に不純物を含まない形で提供されるべきである。トロポエラスチンの断片、すなわち、トロポエラスチンの製造において非意図的に生じるトロポエラスチンアイソフォームの切断(トランケーテッド)型はこの文脈で不純物とみなされ
得る。ある態様において、治療用製剤中に組み込まれるトロポエラスチンは、関連完全長トロポエラスチンアイソフォームの少なくとも65%、より好ましくは関連完全長トロポエラスチンアイソフォームの80%である。他の態様において、トロポエラスチンは、完全長の85%以上、90%以上、または95%以上である。本明細書に記載のトロポエラスチン中のある配列は他のものより重要であり、例えば、トロポエラスチンのアミノ酸の最終C末端配列の約4残基が関連組織の内因性トロポエラスチン配列と相同性または同一性がある場合は
線維形成効率が増加する。
【0048】
弾性
線維を形成するために組織に
おいて必要
とされる細胞の活性化を助けるために、製剤中にさらなる成分が含まれてもよい。例えば、皮膚の治療では、治療部位における
線維芽細胞の補充または増殖を助けるさらなる成分を製剤に組み込むことができる。そのような成分には、上皮成長因子ファミリー、トランスフォーミング成長因子βファミリー、
線維芽細胞成長因子ファミリー、血管内皮成長因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、血小板由来成長因子、結合組織成長因子、インターロイキンファミリー、および腫瘍壊死因子αファミリーが含まれる。
【0049】
ある態様において、該治療には、治療部位へのトロポエラスチンを有する細胞の送達も含まれうる。皮膚治療の例として、治療部位における弾性
線維の合成を助けるために
線維芽細胞を治療用製剤または治療手順に含めることができる。
線維芽細胞は、同種(allogeneic)供給源、例えば新生児包皮由来または非可視皮膚部位の生検由来であり得、自己治療として用いることができる。
【0050】
(ii)プロテアーゼ感受性領域が組織に存在する酵素からブロックされているかまたは除去されている、トロポエラスチンの投与。
【0051】
該治療に用いるトロポエラスチンはプロテアーゼ分解を減少させるよう修飾することができる。例えば、タンパク質種は、治療する組織中に天然にみられる実質的完全長トロポエラスチン種のままであるようにWO2000/04043に記載のごとく選ぶことができる。あるいはまた、治療用製剤は、プロテアーゼ阻害剤またはプロテアーゼの発現を増加させることが知られている情報伝達経路をブロックする分子を含みうる。そのような分子には、セリンプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、ガラクトシド、例えばラクトース、阻害抗体、およびエラスチン情報伝達の
小分子阻害剤が含まれる。
【0052】
(iii)予め決定した時点でのトロポエラスチンの反復投与。
【0053】
ある態様において、弾性
線維を構築するための基質として細胞が利用することができる形でトロポエラスチンを送達し、これが生じるのに充分な時間治療部位に
とどまるのを保証するため、該治療を該部位に反復して適用する。
【0054】
ある態様において、治療する各組織部位に、該製剤を1〜24、または2〜12、または3〜6週間間隔で3回処置する。該処置は、治療する領域に碁盤目状にそれぞれ約10mm間隔で複数注射することからなるかもしれない。該処置は、27G、29G、30G、または31Gなどのハイゲージ針を用いて投与することができる。該針は、傾斜角度と方向、注射の深さ、および投与する
材料の量を考慮して組織に挿入する。該処置は、組織にボーラスで、例えば各注射部位にインプラントする製剤を10〜100μl、10〜50ul、好ましくは20〜30uLの量で注射することができる。各注射が完了した後、針をゆっくり抜いてよい。すべてのインプラントが完了したら、インプラント
材料を周囲組織の輪郭となじませる必要がある場合は、処置した領域を静かにマッサージしてよい。処置回数、処置間隔、および各治療部位に送達するトロポエラスチンの量は、処置する組織
領域および
回復する弾力性のレベルに基づいて調整する。
【0055】
これらアプローチのいずれかを単独または組み合わせて実施することにより組織中のトロポエラスチンの持続性を増加させることができる。
【0056】
該アプローチのそれぞれにおいて、投与工程は、可逆的組織または細胞損傷を生じ、該損傷に反応して生じる種々の炎症カスケードを開始する可能性を有する侵襲性手順であると認識される。本発明者らは、この種の身体的処置を可逆的細胞損傷の条件をもたらすように適用することができ、そのような条件は
線維芽細胞の活性化および/または増殖を刺激するであろうと認識する。該身体的処置は線維症を誘導するには十分でないことが重要である。
【0057】
本明細書に記載しているように、特定の治療方法の選択に導く検討項目には、組織の性質、エラスチン
プロファイルの低下または変性の程度、および望む結果が含まれる。また、本発明の重要な局面は、細胞が、提供されたトロポエラスチンから弾性
線維を形成、修復、または合成する機会を与えられることである。持続放出、分解からの保護、または連続的供給により、トロポエラスチンは組織中に長期間有効に存続する機会が増える。一般的には、弾性
プロファイルの損失が大きくなり、組織がより無細胞的になると、治療方法が組織中のトロポエラスチンのより長期間の持続性をもたらすことがより適切である。
【0058】
より詳細には、若い皮膚の身体的外観を改善するためには老齢皮膚の改善に比べてより短い持続時間が適切かもしれない。この点で、上記(iii)および/または(i)では、予め決定した時点でのトロポエラスチンの反復投与がより適切かもしれない。
【0059】
組織が瘢痕化または線維性および実質的に無細胞性である場合はより長い持続時間が必要かもしれない。この点で、関連組織への細胞の走化性のために充分な時間を与えることが重要である。(ii)および/または(i)の方法がより適切かもしれない。
【0060】
記載したように、結果も適切な方法を選択するガイドとなる関連検討項目である。結果が弾性機能を増加または改善する場合は、細胞が、該機能に特異的な必要な弾性
線維配列を構築することができるはるかに長い持続時間が必要かもしれない。この点で、上記(i)に記載の持続放出型がより適切かもしれない。
【0061】
適切な治療方法の選択に関連する検討項目の例をより詳細に記載する。
(i)皮膚の身体的外観を改善。
(ii)線維性および瘢痕化組織のエラスチン含有量の増加。
(iii)軟骨質または血管系の弾力性の改善。
【0062】
ほぼすべての哺乳類の弾性組織がその中に含まれる弾性
線維から生じるエラスチン
プロファイルを有する。種々の弾性組織はそれぞれ異なる機能を有するので、弾性
プロファイルは組織毎に同じではない。例えば、左側血管系の血流の回復力は、気管支組織の吸気の回復力と同じではない。下記表は、本発明が指向する組織の例、およびそれぞれの弾性
プロファイルを測定し、表現する方法を記載する。
【表1】
【表2】
【0063】
典型的には、本発明により治療する個体はヒトである。
【0064】
好ましくは、組織は皮膚組織、特に、少なくとも20歳、好ましくは20〜50歳、より好ましくは30〜60歳の個体の皮膚組織中の組織である。
【0065】
皮膚組織は、真皮と上皮の接合部の弾性
線維の破壊または断片化を特徴としうる。
【0067】
皮膚組織は下記特徴の1またはそれ以上を示しうる:弛緩皮膚、緩和皮下組織、細胞外マトリックスの密度低下、しわ、および皮膚線条。
【0068】
皮膚組織は、好ましくは、顔、首、または上肢もしくは下肢に局在する。
【0069】
好ましくは、該組織は、治療計画の開始時に創傷を含まない。例えば、投与が注射または皮膚の他の物理的操作による場合は、選択した治療計画に従ってトロポエラスチンの投与完了時に組織に小さな創傷がある可能性がある。
【0070】
個体がヒトである場合は、トロポエラスチンは、ヒトに発現するトロポエラスチンアイソフォームの配列を有する。この態様において、該アイソフォームは、SHEL (WO1994/14958参照)およびSHELδ26A (WO1999/03886参照)、およびこれらアイソフォームのプロテアーゼ耐性誘導体 (WO2000/0403参照)からなる群から選ばれうる。
典型的には、トロポエラスチンアイソフォームは、組織がヒト皮膚組織である場合はSHELδ26Aである。
【0071】
該トロポエラスチンアイソフォームは、組織におけるトロポエラスチンの持続放出に適合する組成物の形で提供することができる。組織がヒト皮膚組織である場合は、該組成物は、SHELδ26A、ならびにヒアルロナン、グリコサミノグリカン、コラーゲンタイプIからなる群から選ばれる、組成物からトロポエラスチンを持続放出させるための成分を含むことが好ましい。
【0072】
典型的には、トロポエラスチンを含む投与用組成物は、弾性
線維形成のための外因性因子、特にリシルオキシダーゼを含まない。
【0073】
ある態様において、トロポエラスチンは、治療計画に従って実質的にモノマーの形で提供される。
【0074】
ある態様において、トロポエラスチンは、治療計画に従って実質的に分子内架橋がない形で提供される。
【0075】
ある態様において、トロポエラスチンは、治療計画に従ってトロポエラスチンおよびトロポエラスチンの溶媒、例えば水性溶液からなる組成物で提供される。好ましくは、トロポエラスチンはSHELδ26Aである。
【0076】
ある態様において、トロポエラスチンは、治療計画に従って実質的にトロポエラスチンからなる組成物で提供される。ある態様において、トロポエラスチンはSHELδ26Aである。
【0077】
ある態様において、治療は、トロポエラスチンおよびヒアルロン酸を含む。
【0078】
ある態様において、該組成物中のトロポエラスチンは、誘導体化ヒアルロン酸 (HA)と架橋しうる。トロポエラスチンのヒアルロン酸などの分子との架橋は、本発明に従ってインプラント部位にトロポエラスチンを維持するのを助けるかもしれない。該組成物は、5〜100mg/ml トロポエラスチン+0.1%〜2%HA架橋剤、好ましくは10〜50mg/mlトロポエラスチンおよび0.25%〜1%HA架橋剤を有するかもしれない。本発明の適切な製剤は、0.25%〜1%HA架橋剤と架橋した10〜30mg/ml トロポエラスチンを含むかもしれない。
【0079】
重要なことは、トロポエラスチンのヒアルロン酸などの多糖との架橋は、分子内トロポエラスチン架橋(例えばリシルオキシダーゼを用いて生じるもの)を生じないか、または含まないかもしれない。より詳細には、ヒアルロン酸がヒアルロニダーゼ(皮膚酵素)により溶解すると、トロポエラスチンはモノマーの形で放出されうる。
【0080】
ある態様において、該治療は、トロポエラスチンの利用を増加させる化合物を含みうる。例には以下のものが含まれる。
・ジクロフェナク:抗炎症(および光線角化症の減少と関連する、例えばSolaraze参照)
・リスラスチン:弾性
線維形成を促進。
・アミノ酸Gly、Val、Ala、Pro:トロポエラスチン残基の75%に相当。
・ビタミンC、E:ビタミンCは新規コラーゲン形成を助ける。両ビタミンとも抗酸化剤である。
・日焼け止め:日差しによるタンパク質加水分解を制限。
・化学増強剤:成分の角質層を横切る移動を助ける。
・加湿柔軟剤によるpH調整:皮膚にpHを送達。加湿は老化皮膚に関連する。
【0081】
組織が皮膚である場合は、典型的には、治療計画は特定時点でのトロポエラスチンの投与を含む。あらゆる時点で、トロポエラスチンを同時投与してよい。
【0082】
好ましくは、トロポエラスチンは注射により投与される。
【0083】
組織が皮膚である場合は、トロポエラスチンを真皮に投与することが好ましい。
【0084】
ある態様において、治療計画は、さらに弾性
線維の形成を増加させることができる物質の局所適用を含みうる。そのような物質は、当業者によく知られており、限定されるものではないがリシルオキシダーゼの発現を促進するイノンド(dill)抽出物(Cenizo et al 2006 Exp. Dermatol. 15:574-81)および弾性
線維の分解を減少させる銅および/または亜鉛ベースのクリーム(Mahoney et al 2009 Exp. Dermatol.18:205-211)が含まれよう。
【0085】
ある態様において、個体の皮膚に弾力性を与える以下の工程を含む方法を提供する。
・個体を得、
・個体の皮膚の治療領域を限定し(ここで、該治療領域は弾力性を与えるべき皮膚の領域である)、
・治療領域内のトロポエラスチンの量が治療領域外の皮膚に比べて増加するように、治療領域にトロポエラスチン組成物を注射し、
・予め決定した期間、治療領域中のトロポエラスチンの量を維持することにより、個体の皮膚の弾力性を得る。
【0086】
下記実施例で述べるように、該方法は、皮膚の弾力性を維持または改善しながら皮膚の厚さを増加させるのを可能にする。該方法は、皮膚の滑らかさ(すなわち、固化を避ける)と自然な外観を保持しながら皮膚の弾力性、または弾性
プロファイルの
回復もしくは回復を改善することもできる。
【0087】
典型的には、個体は、本明細書に記載の皮膚の健康状態を失った成人個体である。例えば、皮膚の治療領域は、光による老化、弛緩皮膚、緩和皮下組織、細胞外マトリックスの密度低下、しわ、および皮膚線条により特徴付けられよう。成人は、20〜70歳、例えば20〜35歳、または40〜70歳でありうる。
【0088】
本明細書に記載するように、本発明に従って治療するのが好ましい皮膚は、顔、首、または上肢もしくは下肢に局在しうる。治療領域は、関連位置の皮膚のすべてまたは部分を含みうる。例えば、皮膚が上肢に局在する場合は、該治療領域は、上肢のすべてまたはその部分、例えば上肢の内側表面を含みうる。皮膚が顔に局在する場合は、治療領域は頬、瞼、顎などの皮膚のすべてまたは部分を含みうる。
【0089】
本発明によれば、治療領域は、弾性
プロファイルが不十分であるか、および/または改善もしくは
回復を必要とする皮膚の領域である。この領域は、当業者に知られたあらゆる方法で限定することができる。そのうち最も簡単な方法は、治療する領域の境界(limitsまたはboundaries)を示すことにより治療が必要でない皮膚と治療が必要な皮膚の領域を区別することである。これは、例えば、治療が必要でない領域と治療が必要な領域を区別するマーカー、指標、指針、または特徴、例えば、治療する領域を選択的に同定するか、または治療する必要がない領域を選択的に同定するマーカーを用いて行うことができる。ある態様において、治療する領域は、治療領域の境界を関連的に確立する1またはそれ以上のコーディネートを同定することにより定義することができる。
【0090】
治療領域を限定したら、トロポエラスチン組成物を治療領域内に局在する皮膚に皮内注射することができる。該注射の目的は、治療領域に通常存在しないトロポエラスチンの量を治療領域に提供し、または確立することである。この文脈において、治療領域に確立されたトロポエラスチンの量は、治療領域の外側に局在する皮膚の隣接または近傍領域におけるトロポエラスチンの量より大きい。
【0091】
該組成物は、治療領域がどこに局在するかに応じて真皮の中層〜深層部に注射することができる。例えば、深部への注射は、首、デコルタージュ、または目周辺などの皮膚が薄い治療領域より、顔の頬などの皮膚が厚い治療領域により適しているかもしれない。
【0092】
場合により、目的とする結果は、皮下組織へのインプランテーション、およびインプランテーションまたは注射部位へのエラストジェニック細胞のリクルーティングにより達成することができると理解される。
【0093】
送達する組成物の容量は、治療する皮膚の位置にある程度依存する。皮膚が顔より肢または首に局在する場合はより大きな容量が適切または可能である。各1回注射の容量は、10〜100uL、好ましくは約20〜50uLである。ある治療の全容量は注射回数に依存し、同様に、治療する皮膚領域の大きさおよび適切であると決定された各注射間の距離に依存する。
【0094】
本発明の特に好ましい態様では、治療領域にトロポエラスチンを反復投与することにより、トロポエラスチンの望ましい量が治療領域に予め決定した期間維持される。これは、表面的には、治療領域外ではみられないin situで弾性
線維を形成するためのトロポエラスチンの閾値レベルが治療領域で維持されるように、治療領域の組織へのトロポエラスチンの連続供給をもたらす。これによって(下記のように)治療経過にわたり注射したトロポエラスチンによる細胞と因子の結合の確率を増加させることにより弾性
線維を形成させることができると考えられる。
【0095】
ある態様において、該処置は、トロポエラスチン組成物を微細針注射により真皮の中〜深部に注射することにより行われる。該注射は、25G(ゲージ)、好ましくは、27Gまたはそれ以下、より好ましくは30Gまたは31Gの皮下注射針を用いて行うことができる。該注射は、単一シリンジおよび針を用いて皮膚に処置を手動適用することにより行うことができる。
【0096】
ある態様において、単一処置には、治療領域への複数回注射が含まれうる。各処置に複数回注射が必要な場合は、該注射は1mm〜3cm間隔でありうる。
【0097】
ある態様において、該注射は、真皮に自動注射を可能にする装置、例えばメソセラピー(Mesotherapy)銃、または補助注射装置、例えばArtistet注射装置(http://www.nordsonmicromedics.com/se/google/en/artiste-assisted-injection-system.html)、またはAnteis注射装置(http://www.anteis.com/AestheticDermatology/injectionsystem.php)を用いて行うことができる。ある態様において、シリンジまたは自動注射装置は、2以上の注射を一度に適用することができるように複数の針を取り付けることができるアダプターと共に用いることができよう。ある態様において、該処置は、ソリッドニードルシステム、例えばDermal RrollerまたはDermapenニードルシステム(例えばKalluri、H. et al 2011、AAPS Journal 13:473-4841に記載されている)を用いて適用することができよう。
【0098】
各処置間には約3〜168日間の期間がありうる。典型的な各処置間の間隔には、3〜7日間、3〜21日間、14〜28日間、21〜84日間、および3〜84日間が含まれうる。合計1〜24、または3〜6処置でありうる。一般的には、治療期間は、約1年以下、好ましくは3週間〜6カ月間、好ましくは約1〜3カ月間である。
【0099】
好ましい処置部位には、頬、目、首、デコルタージュ、手、瘢痕化組織、皮膚線条の近く、ほぼその部位、その中もしくはその隣接部が含まれる。文脈がそうでないことを求める場合を除き、本発明で用いている用語「含む(comprise)」および該用語の変化型「comprising」、「comprises」および「comprised」は、さらなる付加物、成分、整数、または工程を排除するものではない。
【0100】
本発明のさらなる局面、および先の段落に記載の局面のさらなる態様は、例として示した下記記載から、添付の図面を参照して明らかになるであろう。
【0101】
本明細書に開示し、定義した本発明は、明細書または図面に記載されているかそれらから明らかな個々の特徴の2またはそれ以上のすべての選択肢の組み合わせに及ぶと理解される。これら種々の組み合わせのすべては、本発明の種々の選択肢の局面を構成する。
【実施例】
【0102】
実施例1 弾性線維合成のin vitroアッセイ系
材料と方法
a) 細胞
【表3】
【0103】
b) 細胞培養
細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS;Invitrogen)および1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)含有Dulbecco改変Eagle培地高グルコース(DMEM;Invitrogen)中で培養した。培地を2〜3日間ごとに交換した。細胞を37℃および5%CO
2で培養した。細胞のエラスチン
線維形成能を評価するため、1 x 10
5細胞を12ウェル培養プレート中のガラスカバースリップ上に播種した。播種後10〜17日間に、PBS中の完全長トロポエラスチン(Elastagen)または代替エラスチン由来タンパク質を、ろ過滅菌し、細胞培養に加えた。代替エラスチン由来タンパク質は、ヒト皮膚エラスチンペプチド (Elastin Products Company;HSP72)、C末端トロポエラスチン欠失構築物ΔRKRK (Weiss lab)およびRGDS含有C末端トロポエラスチン置換構築物 (Weiss lab)を含んでいた。
線維形成も、50μM ブレビスタチン (Sigma)存在下で評価した。反復トロポエラスチン添加の効果を評価する実験では、該タンパク質を播種後10、17、および24日に加えた。細胞マトリックス厚は、無作為に選んだ10視野中の試料の最上部核から底部を画像化するのに必要な0.41μm zスライス数を平均することにより測定した。
【0104】
トロポエラスチン添加後の所定の時点で、細胞を3%(w/v)ホルムアミドまたは4%(w/v)パラホルムアルデヒドで20分間固定し、0.2Mグリシンで減衰させた。細胞を0.2%(v/v) Triton X-100で6分間インキュベーションし、5%ウシ血清アルブミンで4℃一夜ブロックし、1:500 BA4 (Sigma)マウス抗エラスチン一次抗体で1.5時間、1:100抗マウスIgG-FITC二次抗体(Sigma)で1時間染色した。次に、カバースライドをDAPI含有ProLong Gold antifade(アンチフェード)試薬(Invitrogen)でガラススライド上にマウントした。
【0105】
c) 蛍光画像化
試料をOlympus FluoView FV1000共焦点顕微鏡で可視化した。本明細書に示す画像はz-スタック投影により構築した。
【0106】
結果および考察
a)種々の年齢群由来のヒト皮膚
線維芽細胞によるエラスチン
線維形成
トロポエラスチン(SHELδ26A (すなわち、ドメイン26Aを含まない合成ヒトエラスチン))添加後のヒト皮膚
線維芽細胞のエラスチン
線維およびネットワーク形成能を評価した。
図1は、新生児、10、31、51、92歳のドナー由来の皮膚
線維芽細胞に250μg/ml トロポエラスチンを添加後7日のエラスチン形成を示す。すべての細胞株はエラスチン
線維形成を示した。トロポエラスチンを添加しなかったコントロール細胞培養ではエラスチン形成はみられなかった(データ示さず)。より若いドナー細胞は、核(青色)数の増加が示すようにより広範に増殖した。より若いドナー細胞は、トロポエラスチンを添加すると広範なエラスチンネットワークを形成した。より高齢のドナー細胞も、トロポエラスチン添加によりかなりのエラスチン
線維を形成することができたが、そのネットワークはややまばらであった(
図1)。
【0107】
b) 動物細胞によるエラスチン
線維形成
250μg/ml トロポエラスチン添加後のブタ(ブタ10-10)およびウサギ(RAB-9)皮膚
線維芽細胞のエラスチン
線維およびネットワーク形成能を評価した。
図2に示すように、これら動物細胞では、それぞれ該マトリックス中にトロポエラスチンが沈着した。しかしながら、ウサギ細胞のみがエラスチンネットワークを生成することができた。ヒトと動物種間のトロポエラスチンのアミノ酸配列の違いは、動物細胞によるトロポエラスチンの利用が様々であり効率が低いことの原因でありうる(
図2)。
【0108】
c) 気道平滑筋細胞によるエラスチン
線維形成
トロポエラスチン添加後の病的肺由来の初代ヒト気道平滑筋細胞のエラスチン
線維形成能を評価した。
図3は、250μg/ml トロポエラスチン添加後7日のエラスチン形成を示す。これら細胞では、最小量のトロポエラスチン小球沈着〜エラスチン
線維ネットワークと
線維形成の程度が異なった(
図3)。結果は、
図1で見られた
線維芽細胞同様に平滑筋細胞が、血管などの他の組織由来の平滑筋細胞のように外因性トロポエラスチンから弾性
線維を形成する能力を有することを示す。
【0109】
d)トロポエラスチン誘導体を用いたときのエラスチン
線維形成
3種の代替エラスチン由来タンパク質を用いて初代ヒト新生児
線維芽細胞 (NHF8909)のエラスチンネットワーク形成能を評価した。これらタンパク質は、成人皮膚エラスチンをヒト唾液エラスターゼで酵素的加水分解して製造したエラスチン皮膚ペプチドおよび2種のトロポエラスチンアイソフォームであった。トロポエラスチンは、本発明者らが示した細胞とα
vβ
3インテグリンとの結合を指示するC末端にモチーフGRKRKを含む。トロポエラスチンアイソフォームΔRKRKではこのモチーフのRKRK配列は除去されている。アイソフォーム+RGDSでは、RKRK配列が除去され、標準的細胞結合ドメインRGDSで置換されている。すべての場合において播種後12日に125μg/mlタンパク質を初代ヒト新生児皮膚
線維芽細胞に加えた。
【0110】
図4は生じたエラスチンネットワークを示す。完全長トロポエラスチンを培養に加えるとエラスチン
線維形成がみられた。これに対し、トロポエラスチン誘導体を培養に加えると
線維形成は著しく損なわれた。皮膚エラスチンペプチドの該マトリックスへの沈着はなかった。ΔRKRKおよび+RGDS型のそれぞれで
線維より小球の沈着がみられた。
【0111】
e) 細胞の収縮力が損なわれたときのエラスチン
線維形成
トロポエラスチン添加と同時に細胞培養にブレビスタチンを添加することにより、細胞収縮力に対するエラスチン
線維形成の必要性を検討した。ブレビスタチンは、細胞の収縮力および細胞の移動を変化させる非筋肉ミオシンIIの阻害剤である。
図5は、エラスチン
線維形成がブレビスタチン存在下で実質的に害されることを示す。
【0112】
f) 反復トロポエラスチン添加後のエラスチン
線維形成
反復トロポエラスチン添加による初代新生ヒト皮膚
線維芽細胞 (NHF8909)のエラスチンネットワーク形成能を評価した。播種後10日、10および17日、ならびに10、17、および24日にトロポエラスチン (250μg/ml)を培養に加えた。全試料を播種後31日に固定した。
図6は、エラスチンネットワーク形成が反復トロポエラスチン処置により実質的に増加したことを示す。これは細胞マトリックス厚の増加をもたらし、播種後31日のトロポエラスチン無添加試料の細胞マトリックス厚が13.4±2.2μm厚であるのに対し、1および2回トロポエラスチン添加した試料ではそれぞれ15.3±1.2μmおよび16.9±0.8μm厚であり、3回トロポエラスチン添加した試料は19.0±2.2μm厚であった。
【0113】
g) in vitro形成
線維の弾力性
ヒト皮膚
線維芽細胞を、10%(vol/vol)ウシ胎児血清および1%(vol/vol)ペニシリン/ストレプトマイシン添加DMEM (Invitrogen、11995)中20,000細胞/cm
2の密度でWillCoガラス底ディッシュに播種した。播種後12日に、PBS中の250μg/mLトロポエラスチンを
線維芽細胞培養に加えた。培養液を2日間毎に交換した。播種後19日に試料をBioScope Catalyst原子間力顕微鏡で分析した。成熟エラスチン
線維の内因性自己蛍光を用いて培養内のその位置を示した。時間一致トロポエラスチン無添加コントロール試料は自己蛍光を示さなかった(
図7)。トポグラフィー/弾性係数マッピングは、弾性
線維の形成に一致したYoung係数〜600kPaの細胞間
材料主要領域により示される、トロポエラスチン添加後の培養弾性力の変化を示した(
図8、黄色領域)。
【0114】
h) 弾性
線維形成の時間経過
ヒト皮膚
線維芽細胞を、10%(vol/vol)ウシ胎児血清および1%(vol/vol)ペニシリン/ストレプトマイシン添加DMEM中20,000細胞/cm
2の密度でガラスカバースリップに播種した。播種後10〜12日にPBS中250μg/mLトロポエラスチンを
線維芽細胞培養に加えた。培養液を2日間毎に交換した。所定の日、一般的にはトロポエラスチン添加後1、3、および7日に細胞を4%(wt/vol) パラホルムアルデヒドで20分間固定し、0.2Mグリシンで減衰させた。細胞を0.2%(vol/vol) Triton X-100と6分間インキュベーションし、5%ウシ血清アルブミンで4℃一夜インキュベーションし、1:500 BA4マウス抗エラスチン抗体で1.5時間、1:100抗マウスIgG-FITC抗体で1時間染色した。次に、カバースリップをDAPI含有ProLong Goldアンチフェード試薬を用いてガラススライド上にマウントした。試料をOlympus FluoView FV1000共焦点顕微鏡を用いて可視化した。Zスタックを得、圧縮投影像に変換した。
【0115】
このin vitro細胞培養モデル系は、トロポエラスチン添加後の該タンパク質がECM中に小球として沈着することを示す(
図9a)。次に、
線維形成は初めは細胞の方向に整列し(
図9b)、次いで広範な分岐した弾性ネットワークが生じる(
図9c)。
【0116】
i) リシルオキシダーゼの関与
この系におけるリシルオキシダーゼ阻害剤BAPNの弾性
線維形成に対する効果を試験した。
【0117】
ヒト皮膚
線維芽細胞を、記載のごとくトロポエラスチン添加前12日間増殖させた。細胞をトロポエラスチン添加後さらに72時間培養した。BAPNをトロポエラスチン添加から種々の時点で加えた。上記のごとく試料のエラスチンおよび核を染色した。BAPNを含むと、ECM中にいくらかの小球沈着がみられるが、
線維形成は抑制され(
図10)、トロポエラスチンから弾性
線維を形成中に細胞がリシルオキシダーゼを利用することを示す。
【0118】
j) 小球の整列
超解像顕微鏡を用いてさらにin vitroモデル系における弾性
線維形成を観察した。ヒト皮膚
線維芽細胞を記載のごとく培養し、トロポエラスチン添加後3日に固定した。細胞を1/500 BA4マウス抗エラスチン抗体で1.5時間、1/100抗マウスIgG-AlexaFluor 488抗体で1時間染色した。試料をLeica SP5 cwSTED顕微鏡で可視化した。
【0119】
小球の整列は12日齢皮膚
線維芽細胞培養にトロポエラスチン添加後3日にみられた(
図11)。小球は、抗体による点状デコレーションを示す。平均小球直径は605±97nmである。
【0120】
k) 小球の処理
透過型電子顕微鏡を用いて、実質的に記載のごとくin vitroモデル系における弾性
線維形成をさらに観察した。試料を12日齢皮膚
線維芽細胞培養にトロポエラスチン添加後3日に処理した。エラスチンを用いて増殖させた細胞をPBS緩衝液中2%グルタルアルデヒドで4℃1時間後固定し、次いで、0.1%四酸化オスミウムで暗所中、4℃で10分間後固定し、速やかにそれぞれ蒸留水で5分間2回洗浄した。次に、試料をエタノールの勾配列(すなわち、70、80、および90%、ならびに100%2回)で各10分間脱水した。試料へのEpon(樹脂)の浸透は、以下の混合物を用い、室温でエタノール中25%Epon4時間、エタノール中50%Epon一夜、および100%Epon8時間(2回交換)のインキュベーション時間で行った。樹脂の浸透が完了したら、試料をKobayashi K.、et al. (2012)の二重重合法を用いて包埋した。得られた包埋細胞を含むブロック面をトリミングし、超薄切片をウルトラミクロトーム(Leica、Ultracut-7)を用いて作製し、約70nmの切片を得、これを200メッシュの銅グリッドにマウントした。切片を2%水性酢酸ウラニルおよびReynoldsクエン酸鉛で各10分間染色し、染料の沈着を最小限にするため工程間に水で完全に洗浄した。切片をJEOL 2100 TEM (JEOL、Japan)にて200 kVで画像化した。
【0121】
3つの異なるエラスチン含有構造を示す(
図12)。
(1)平均直径615±153 nmの高密度シェルに取り囲まれた小球。この小球は細胞と直接接触している。
(2)破裂し、内容物があふれ出した小球。
(3)合体した破裂小球から形成された弾性塊。
【0122】
弾性
材料と細胞および細胞突起の密接な結合は、機械的力が小球を破壊することを示唆する。
【0123】
l) 動物モデル
エラスチン
線維形成に対する薄く裂いた皮膚の移植とトロポエラスチン含有皮膚テンプレートの影響を試験した。ブタ2頭を試験に用いた。下記の皮膚置換を第0日に適用した。
1.コントロール:架橋コラーゲンテンプレートのみ
2.試験A:10%トロポエラスチン存在下で架橋した架橋コラーゲンテンプレート
3.試験B:修飾HAと架橋したトロポエラスチンマトリックスの上部に適用した架橋コラーゲンテンプレート。
【0124】
第0日に、4つの切除創(直径5cm)を各ブタの上背部に設けた。片側の2つの創傷をコントロールとした。他の側の1つの創傷を試験Aで処置し、その他の創傷を試験Bで処置した。第7日(第1週)にすべての創傷の包帯を交換した。第14日(第2週)に創傷の端から数mm離して4mmの生検を回収した。第21日(第3週)に薄く裂いた皮膚の移植をすべての創傷に実施し、包帯を交換した。第28日(第4週)にすべての創傷の包帯を交換した。第35日(第5週)に動物を安楽死し、創傷組織と正常皮膚を回収した。生検をホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した。
【0125】
エラスチン
線維形成を、切片のVerhoeff van Gieson染色(エラスチン
線維は紫色/黒色に染まる)により評価した(
図13)。エラスチン
線維が正常ブタ皮膚の毛包周囲に見られる(丸で囲んでいる)。
【0126】
簡単には、コントロール試料の皮膚に散発的に観察される
線維が散見された。
【0127】
試験Aの試料の生検後、創傷部位由来の組織は、
線維および
線維集積物の形のde novo エラスチンを表現した(例えば、黒丸で強調した領域)。
【0128】
試験Bの試料の生検後、創傷部位由来の組織は、修飾HAと架橋した持続的トロポエラスチンマトリックス(例えば黒丸で強調した領域)およびde nove
線維形成(例えば白丸で強調した領域)を表現した。
【0129】
実施例2. エラスチン注射可能皮膚再生製剤を用いるヒト皮膚の治療を評価するための臨床試験
方法:
臨床試験は、誘導体化ヒアルロン酸と軽く架橋したトロポエラスチン製剤(PCT/AU2011/001503、特に実施例3および実施例6に記載)を用い、Restylane Vital Light (RVL:12mg/ml BDDE架橋ヒアルロン酸、Q-Med、Australia)との比較により行った。参加者の上腕内側の皮膚に、微細針注射により皮膚内に該製剤をインプラントすることにより処置した。本試験に上腕を選んだのは、通常、太陽光に晒されていない、健康な損傷のない皮膚組織として存在する皮膚領域であるからである。本試験の目的は、皮膚厚および弾力性を含む質感に対する該製剤の効果を評価し、処置した皮膚側の外観、自然さ、および滑らかさに対する対象患者の評価を収集することであった。
【0130】
健康対象を試験のために募集し、スクリーニング期間後、登録必要条件を満たした16人の対象を登録し、一方の腕に種々のトロポエラスチン製剤(ELAPR002: 10〜30mg/ml 誘導体化ヒアルロン酸架橋トロポエラスチン)の1つを、他方の腕にコントロールRestylane Vital Light (RVL:12mg/ml BDDE架橋ヒアルロン酸)を処置するものに無作為に振り分けた。すべての対象は3週間間隔で同じ処置部位に3回該処置を受けた。各処置は、上腕領域に約1cm間隔で格子を形成するように30G1/4”針を用いて20〜30ulの製剤を送達する複数回注射からなった。
【0131】
各外来時に、対象は、処置部位の皮膚の滑らかさ、自然さ、および外観に関する質問を受け、視覚的アナログスケール(VAS)による評価を0〜100のスケール(0は全く滑らかでも自然でもなく、外観も悪い。100は非常に滑らかかつ自然で、外観も良好である。)に線を引いて行うよう求められた。皮膚弾力性および皮膚厚の測定は、それぞれ皮膚粘弾性測定装置(DTM)および皮膚キャリパーを用いて行った。生検切片の組織病理学検査は、インプラントの持続と、処置部位のエラスチン含有量レベルを評価するためにVerhoff Van Giesen (VVG)染色により3および6カ月に実施した。
【0132】
結果:
インプラント部位の組織病理学分析:
VVGにより評価した皮膚部位は、RVLで処置した皮膚領域が
図14Aの大半を占める無染色細胞外スペースにより示されるインプラント
材料によりばらばらに広がる伸張した皮膚コラーゲン
線維を含む皮膚の変化を示すことを明らかにした。対照的に、ELAPR002で処置した皮膚領域は、VVG染色でインプラント
材料が青色から紫色〜黒色に変化することにより示されるインプラント
材料のエラスチンへの再構築を示すインプラント
材料の皮膚組織への統合を示した。したがって、トロポエラスチンの投与は、弾性
線維形成(elastogenesis)においてみられるものと酷似した弾性
線維のin situでの組み立てと沈着をもたらすことは明らかである(
図14B)。
【0133】
皮膚厚および固化の測定
処置部位の皮膚厚は、臨床医が皮膚キャリパーを用いて測定した。表1は、ベースラインおよび3カ月におけるRVLおよびELAPR製剤で処置した部位の平均皮膚厚測定値を示す。皮膚厚の増加は、RVLおよびエラスチン製剤共に有意であることがわかった(p<0.001)。
【表4】
【0134】
本試験の16人の患者のうちRVLで処置した16腕すべてに、3カ月で観察者の目で見え、触ることができるしこりがみられた。これに対し、ELAPR002製剤で処置した16腕の1つのみに、3カ月でいくらかのしこりがみられた。したがって、RVLにおける皮膚厚の測定値は、主として皮膚のRVLのしこりの測定値であるが、ELAPR002処置部位の測定値は、処置領域を横切る全体的皮膚厚の増加をより正確に反映する。
【0135】
皮膚弾力性の測定値
皮膚の弾性伸張の測定値Ueは、臨床試験期間を通して各検査外来時にDTMを用いて処置皮膚部位から得た。
【0136】
ベースラインおよび6カ月の平均UeスコアをRVLおよびELAPR002iについて表2に示す。表のデータが示すように、RVLで処置した皮膚部位は弾性伸張能の低下(処置後のUeの低下)を示し、RVL処置から得られる皮膚厚の増加は皮膚がより硬化していることを示す。これに対し、トロポエラスチンインプラントで処置した皮膚領域は弾性伸張能を維持し(Ueは比較的安定したままである)、皮膚の弾性特性を維持したまま皮膚厚の増加が達成されることを示す。
【表5】
【0137】
患者の評価
処置皮膚領域の滑らかさ、自然さ、および外観の患者の視覚的アナログ評価の平均スコアをRVLおよびELAPR002iiで処置した皮膚部位について表3に示す。データは、患者が、トロポエラスチン製剤で処置した皮膚部位の滑らか、自然さ、および外観がRVL処置群に比べて良いと評価したことを示す(より高いスコアは肯定的評価を示す)。
【表6】