(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記経路制御部は、前記経路制御装置の稼働可能性が前記前ホップ装置の稼働可能より低い場合であっても、前記前ホップ管理部が前記第一制御信号を受信してから所定時間経過するまでに、前記無線メッシュネットワーク内の装置であって前記第一制御信号を受信した装置が前記送信経路のうち前記装置から前記宛先装置までの部分を構築するための第三制御信号を受信しない場合には、前記第二制御信号を外部に送信する
請求項1又は2に記載の経路制御装置。
前記第一情報は、前記第一バッテリ残量に基づいて算出され、前記前ホップ装置が将来に稼働できる時間である第一稼働可能時間であって、前記第一稼働可能時間が長いほど、より高い稼働可能性を示す第一稼働可能時間を含み、
前記稼働管理部は、前記第二バッテリ残量に基づいて算出され、前記経路制御装置が将来に稼働できる時間である第二稼働可能時間であって、前記第二稼働可能時間が長いほど、より高い稼働可能性を示す第二稼働可能時間を含む前記第二情報を管理する
請求項4に記載の経路制御装置。
前記第一情報は、前記第一スリープ周期に基づいて算出される前記前ホップ装置の第一稼働率であって、前記第一稼働率が大きいほど、より高い稼働可能性を示す第一稼働率を含み、
前記稼働管理部は、前記第二スリープ周期に基づいて算出される前記経路制御装置の第二稼働率であって、前記第一稼働率が大きいほど、より高い稼働可能性を示す第一稼働率を含む前記第二情報を管理する
請求項6に記載の経路制御装置。
前記第一情報は、前記前ホップ装置の過去の単位時間当たりのデータ通信時間の累積値である第一累積送信時間であって、前記第一累積送信時間が長いほど、より低い稼働可能性を示す第一累積送信時間を含み、
前記稼働管理部は、前記経路制御装置の過去の単位時間当たりのデータ通信時間の累積値である第二累積送信時間であって、前記第二累積送信時間が長いほど、より低い稼働可能性を示す第二累積送信時間を含む前記第二情報を管理する
請求項1〜7のいずれか1項に記載の経路制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した、無線メッシュネットワークにおける経路選択手法に関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0015】
無線メッシュネットワークにおける複数の無線通信装置は、メッシュトポロジーを構成し、互いに接続することでネットワークを構築する。メッシュネットワーク内で発生した通信パケットは、メッシュネットワーク内にて経路制御装置(Router)として機能する装置により転送され、宛先まで届けられる。無線メッシュネットワークは、ワイヤレスセンサネットワーク、スマートメータユーティリティネットワーク、又は、家電機器の制御若しくはモニタリングを行うホームネットワーク等、多くの用途のために推進されている。
【0016】
無線メッシュネットワークでは、一般的に、ネットワーク内の各端末が経路制御装置の役割をもっている。以降、端末は、ルータとしての機能を搭載しているものとする。
【0017】
従来の無線メッシュネットワークにおける経路制御方法には、AODV方式、又は、RPL等がある(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。
【0018】
AODV方式では、通信データが発生した端末(送信元)は、無線メッシュネットワーク内に経路要求パケットを送信し、送信した経路要求パケットに対する応答である経路応答パケットを当該端末が受信することで、当該通信データの宛先までの経路を確立する。送信元と宛先との中間に位置する経路制御装置は、経路要求パケットを転送する。宛先もしくは宛先までの経路情報(ルーティングテーブル)を保有している経路制御装置は、経路要求に対する応答である経路応答パケットを送信元まで転送する。
【0019】
AODV方式は、宛先までのホップ数をメトリックとして用いて、最短ホップ経路を獲得する。AODV方式では、主に2種類の経路制御メッセージである、経路要求RREQ(Route Request)、及び、経路応答RREP(Route Reply)が端末によりやり取りされる。
【0020】
RPLは、ルーティングに無閉路有効グラフ(DAG:Directed Acyclic Graph)を用いる。DAGを構築するために、RPL制御メッセージと呼ばれる3種類の経路制御信号である、DIO(DAG information object)、DIS(DAG Information Solicitation)、及び、DAO(Destination Advertisement Object)をやり取りする。各端末は、DIOを無線メッシュネットワーク内に送信する。DIOを受信した端末は、必要に応じてDIO情報を更新して転送する。各端末は、DIOを収集してDAGを構築し、経路を確立する。DISは、DIOの送信を要求するために用いる。DAG構築後、DAGルートにおける下りデータに関しては、DAOを用いて経路を確定する。RPLでは、宛先までの情報を中間ノードから取得することで経路を構築する。
【0021】
このような経路制御方法を用いる無線メッシュネットワークを利用するアプリケーションの例として、テレメータ用又はテレコントロール用の無線局が挙げられる。
【0022】
一方、電波を利用する無線設備の標準的な仕様が一般社団法人電波産業会により定められている(例えば、非特許文献4参照)。例えば、920MHz帯を利用した特定小電力無線局の仕様が定められており、また、1時間あたりの送信時間の総和の上限が規定されている。
【0023】
また、無線メッシュネットワークを構成する通信装置の物理層、MAC層を規定する標準規格として、IEEE802.15.4がある。さらに、近年では、省電力化のため、通信装置がルータとして機能する場合にも省電力モード(スリープモード)で稼働することができるよう拡張した標準規格IEEE802.15.4eがある(例えば、非特許文献5参照)。
【0024】
特許文献1は、無線メッシュネットワークにおける経路要求の転送に関する技術を開示する。具体的には、無線メッシュネットワークにおける送信経路の中間のルータが経路要求を受信した場合に、送信元装置との間の送信経路のリンクコストを経路要求のメトリックに付加することでメトリックを更新する。そして、更新後のメトリックが、上記中間ルータが保有するルーティングテーブルにおけるメトリックよりも小さい場合に、ルーティングテーブルにおける送信元装置への経路情報を更新する。
【0025】
しかしながら、上記技術によれば、各端末は、送信元から中間ルータまでの送信経路のメトリックと、中間ルータが保有するルーティングテーブル上のメトリックとを比較して経路要求信号の転送可否を判断する。そのため、送信元装置から中間ルータに届くまでに稼働状態の悪いルータが存在する場合であっても、その送信経路上のその他のルータの稼働状態が良い場合には、その送信経路が選択される可能性がある。その場合、送信元装置から何ホップも中継した後のルータの稼働状況に起因する経路切断が発生し得る。このようなケースでは、経路切断が発生したルータは、経路修復のための信号を数ホップ経由して送信元装置に届ける必要があるので、経路損失時のコストが増大するという問題がある。
【0026】
また、上記従来の方式では、経路選択の際に、ルータがスリープモードとアウェイクモードとを繰り返しながら動作する省電力モードで稼働すること、及び、ルータが単位時間に送信できる総送信時間が制限されることが考慮されていない。そのため、スリープモードで稼働する時間が多いルータ、又は、送信禁止期間の多いルータを含む送信経路を選択した場合に、転送遅延が大きくなってしまうという問題がある。
【0027】
そこで、本発明は、無線メッシュネットワークにおいてより少ない制御通信量で安定した送信経路を構築する経路制御装置等を提供する。言い換えれば、本発明は、上記問題を解決するものであり、ルータとして機能する経路制御装置の動作状況を考慮し、直前ホップ(Previous Hop)となる経路制御装置の動作状況よりも自身の動作状況がよい場合に経路制御装置として動作することで、送信元から遠い経路制御装置にて経路損失の発生や遅延量が増大する可能性を抑制し、安定的な経路を構築する経路制御方法を提供することを目的とする。
【0028】
このような問題を解決するために、本発明の一態様に係る経路制御装置は、無線メッシュネットワークにおいて通信データを送信元装置から宛先装置に送信するために送信経路を構築する経路制御装置であって、前記送信経路のうち前記送信元装置から前記経路制御装置までの部分を構築するための第一制御信号を受信し、受信した前記第一制御信号の送信元である前ホップ装置が将来に動作している可能性である稼働可能性を示す第一情報を管理する前ホップ管理部と、前記経路制御装置の稼働可能性を示す第二情報を管理する稼働管理部と、前記第一情報と前記第二情報とを比較し、前記経路制御装置の稼働可能性が前記前ホップ装置の稼働可能性より高い又は等しい場合に、前記送信経路のうち前記部分を除く残部を構築するための第二制御信号を送信する経路制御部とを備える。
【0029】
本構成によって、前ホップ装置の経路制御装置と同等以上の稼働状態を有する経路制御装置が、送信経路の一部として選択される。送信経路が断絶する場合には、その断絶箇所は、送信元により近い経路制御装置となる可能性が高くなる。これにより、経路損失を通知するための制御信号を転送するコストを抑えることができる。また、本構成により、前ホップ装置と同等以上の稼働状態を有する経路制御装置が送信経路の一部として選択されるので、次ホップへの転送が成功したデータをより安定した経路にて転送でき、より安定的な経路を構築することができる。そして、送信経路の上流から下流へ向かって稼働状態が良い装置を選択しながら送信経路を構築することができる。よって、経路制御装置は、より少ない制御通信量で安定した送信経路を構築することができる。
【0030】
例えば、前記前ホップ管理部は、前記第一情報を含む前記第一制御信号を受信し、受信した前記第一制御信号から前記第一情報を取得し、取得した前記第一情報を管理する。
【0031】
本構成によって、経路制御装置は、制御信号によって前ホップ装置から前ホップ装置の稼働情報を取得することができる。よって、前ホップ装置との間で制御信号だけをやり取りすることで効率よく送信経路を構築することができる。
【0032】
例えば、前記経路制御部は、前記経路制御装置の稼働可能性が前記前ホップ装置の稼働可能より低い場合であっても、前記前ホップ管理部が前記第一制御信号を受信してから所定時間経過するまでに、前記無線メッシュネットワーク内の装置であって前記第一制御信号を受信した装置が前記送信経路のうち前記装置から前記宛先装置までの部分を構築するための第三制御信号を受信しない場合には、前記第二制御信号を外部に送信する。
【0033】
本構成によって、経路制御装置は、前ホップ装置より稼働状態が良い装置が存在しない場合にも、適切な経路を構築することができる。経路制御装置は、上記のように上流から下流へ向かって稼働状態が良い装置を選択しながら送信経路を構築するが、下流にある装置の稼働状態が良くない場合には、送信経路が構築されない。このような場合には、経路制御装置は、稼働状態が良くない装置を用いることで、送信経路が構築されない状況を回避することができる。
【0034】
例えば、前記前ホップ装置及び前記経路制御装置のそれぞれは、バッテリによる電力供給により稼働し、前記第一情報は、前記前ホップ装置の第一バッテリ残量であって、前記第一バッテリ残量が大きいほど、より高い稼働可能性を示す第一バッテリ残量を含み、前記稼働管理部は、前記経路制御装置の第二バッテリ残量であって、前記第二バッテリ残量が大きいほど、より高い稼働可能性を示す第二バッテリ残量を含む前記第二情報を管理する。
【0035】
本構成によって、前ホップ装置と同等以上のバッテリ残量を有する経路制御装置が送信経路の一部となるので、送信元からより遠い経路制御装置に起因する経路損失の発生が抑制され、より安定的な経路を構築することができる。
【0036】
例えば、前記第一情報は、前記第一バッテリ残量に基づいて算出され、前記前ホップ装置が将来に稼働できる時間である第一稼働可能時間であって、前記第一稼働可能時間が長いほど、より高い稼働可能性を示す第一稼働可能時間を含み、前記稼働管理部は、前記第二バッテリ残量に基づいて算出され、前記経路制御装置が将来に稼働できる時間である第二稼働可能時間であって、前記第二稼働可能時間が長いほど、より高い稼働可能性を示す第二稼働可能時間を含む前記第二情報を管理する。
【0037】
本構成によって、前ホップ装置と同等以上の稼働可能時間を有する経路制御装置が送信経路の一部となるので、送信元からより遠い経路制御装置に起因する経路損失の発生が抑制され、より安定的な経路を構築することができる。
【0038】
例えば、前記前ホップ装置及び前記経路制御装置のそれぞれは、スリープ周期ごとにスリープモードへの遷移と通常モードへの遷移とを行い、前記第一情報は、前記前ホップ装置の第一スリープ周期であって、前記第一スリープ周期が長いほど、より高い稼働可能性を示す第一スリープ周期を含み、前記稼働管理部は、前記経路制御装置の第二スリープ周期であって、前記第二スリープ周期が長いほど、より高い稼働可能性を示す第二スリープ周期を含む前記第二情報を管理する。
【0039】
本構成によって、前ホップ装置と同等以上のスリープ周期を有する経路制御装置が送信経路の一部となるので、送信元からより遠い経路制御装置に起因する経路損失の発生が抑制され、より安定的な経路を構築することができる。
【0040】
例えば、前記第一情報は、前記第一スリープ周期に基づいて算出される前記前ホップ装置の第一稼働率であって、前記第一稼働率が大きいほど、より高い稼働可能性を示す第一稼働率を含み、前記稼働管理部は、前記第二スリープ周期に基づいて算出される前記経路制御装置の第二稼働率であって、前記第一稼働率が大きいほど、より高い稼働可能性を示す第一稼働率を含む前記第二情報を管理する。
【0041】
本構成によって、前ホップ装置と同等以上の稼働率を有する経路制御装置が送信経路の一部となるので、送信元からより遠い経路制御装置に起因する経路損失の発生が抑制され、より安定的な経路を構築することができる。
【0042】
例えば、前記第一情報は、前記前ホップ装置の過去の単位時間当たりのデータ通信時間の累積値である第一累積送信時間であって、前記第一累積送信時間が長いほど、より低い稼働可能性を示す第一累積送信時間を含み、前記稼働管理部は、前記経路制御装置の過去の単位時間当たりのデータ通信時間の累積値である第二累積送信時間であって、前記第二累積送信時間が長いほど、より低い稼働可能性を示す第二累積送信時間を含む前記第二情報を管理する。
【0043】
本構成によって、前ホップ装置と同等以上の過去の単位時間当たりのデータ通信時間の累積値を有する経路制御装置が送信経路の一部となるので、送信量が多い経路制御装置および送信が禁止されている経路制御装置を含む経路が除外され、転送遅延の増大が抑制される。
【0044】
例えば、前記前ホップ装置及び前記経路制御装置のそれぞれは、単位時間内のデータ送信時間の上限値が予め定められており、前記第一情報は、前記前ホップ装置の将来の単位時間内のデータ送信時間の上限値である第一送信可能時間であって、前記第一送信可能時間が長いほど、より高い稼働可能性を示す第一送信可能時間を含み、前記稼働管理部は、前記経路制御装置の将来の単位時間内のデータ送信時間の上限値である第二送信可能時間であって、前記第二送信可能時間が長いほど、より高い稼働可能性を示す第二送信可能時間情報を含む前記第二情報を管理する。
【0045】
本構成によって、前ホップ装置と同等以上の単位時間当たりの送信可能時間を有する経路制御装置が送信経路の一部となるので、送信量が多い経路制御装置および送信が禁止されている経路制御装置を含む経路が除外され、転送遅延の増大が抑制される。
【0046】
例えば、前記第一情報は、前記前ホップ装置の稼働可能性を示す複数の種別の情報を含み、前記第二情報は、前記経路制御装置の稼働可能性を示す複数の種別の情報であって、前記第一情報に含まれる情報の種別と同一の種別の情報を含み、前記前ホップ管理部は、前記第一情報に含まれる複数の種別の情報のうち、1つの特定種別の情報に基づいて前記前ホップ装置の稼働可能性を算出し、前記稼働管理部は、前記第二情報に含まれる複数の種別のうち、前記特定種別の情報に基づいて前記前ホップ装置の稼働可能性を算出し、前記経路制御部は、さらに、前記経路制御装置の稼働可能性が前記前ホップ装置の稼働可能性より低い場合であっても、前記前ホップ管理部が前記第一制御信号を受信してから所定時間経過するまでに、前記無線メッシュネットワーク内の装置であって前記第一制御信号を受信した装置が送信する制御信号を受信しない場合には、前記前ホップ管理部及び前記稼働管理部における算出に用いられる情報の種別を前記特定種別から他の種別に切り替える切替部を有する。
【0047】
本構成によって、経路制御装置は、送信元装置又は宛先装置が取り扱うデータの特性に応じて適切な条件の経路制御装置を含む経路を選択し、より安定的な経路を構築することができる。
【0048】
例えば、前記第一情報は、前記前ホップ装置の稼働可能性を示す複数の種別の情報を含み、前記第二情報は、前記経路制御装置の稼働可能性を示す複数の種別の情報であって、前記第一情報に含まれる情報の種別と同一の種別の情報を含み、前記前ホップ管理部は、前記第一情報に含まれる複数の種別の情報のうち、複数の特定種別の情報の組み合わせに基づいて前記前ホップ装置の稼働可能性を算出し、前記稼働管理部は、前記第二情報に含まれる複数の種別のうち、前記特定種別の情報の組み合わせに基づいて前記前ホップ装置の稼働可能性を算出し、前記経路制御部は、さらに、前記経路制御装置の稼働可能性が前記前ホップ装置の稼働可能性より低い場合であっても、前記前ホップ管理部が前記第一制御信号を受信してから所定時間経過するまでに、前記無線メッシュネットワーク内の装置であって前記第一制御信号を受信した装置が送信する制御信号を受信しない場合には、前記前ホップ管理部及び前記稼働管理部における算出に用いられる情報の組み合わせを、前記特定種別の情報の組み合わせから他の組み合わせに切り替える切替部を有する。
【0049】
本構成によって、経路制御装置は、送信元装置又は宛先装置が取り扱うデータの特性に応じて適切な条件の経路制御装置を含む経路を選択し、より安定的な経路を構築することができる。
【0050】
また、本発明の一態様に係る経路制御方法は、無線メッシュネットワークにおいて通信データを送信元装置から宛先装置に送信するために送信経路を構築する経路制御装置における経路制御方法であって、前記送信経路のうち前記送信元装置から前記経路制御装置までの部分を構築するための第一制御信号を受信し、受信した前記第一制御信号の送信元である前ホップ装置が将来に動作している可能性である稼働可能性を示す第一情報を管理する前ホップ管理ステップと、前記経路制御装置の稼働可能性を示す第二情報を管理する稼働管理ステップと、前記第一情報と前記第二情報とを比較し、前記経路制御装置の稼働可能性が前記前ホップ装置の稼働可能性より高い又は等しい場合に、前記送信経路のうち前記部分を除く残部を構築するための第二制御信号を送信する経路制御ステップとを含む。
【0051】
これによれば、上記の経路制御装置と同様の効果を奏する。
【0052】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、上記に記載の経路制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0053】
これによれば、上記の経路制御装置と同様の効果を奏する。
【0054】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0055】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0056】
(実施の形態)
図1A〜
図12は、本実施の形態における経路制御装置および経路制御方法の実施の形態を示したものである。
【0057】
図1Aは、本実施の形態の経路制御装置の構成を示すブロック図である。
【0058】
図1Aに示されるように、経路制御装置1は、無線通信処理部101と、直前ホップ状態抽出部102と、直前ホップ状態管理部103と、稼働状態比較部104と、経路制御処理部105と、稼働状態管理部106と、稼働状態抽出部110とを備える。
【0059】
また、本経路制御装置は、ルータとして機能するために必要なルーティングテーブルや、近隣テーブル、ルートオーバー(Route−Over)にて経路制御を行う場合には、IP(Internet Protocol)等のIP層以上のレイヤの機能を有している。
【0060】
無線通信処理部101は、電波を送受信するRF回路、及び、RF回路で扱うアナログ信号とデジタル信号との変換を行うことで通信規格に従ったベースバンド処理を行う処理部を含む。無線通信処理部101は、物理層の処理、および、メディアアクセス制御又はロジカルリンク制御等の規定のプロトコルに準じた制御を行う。
【0061】
より具体的には、無線通信処理部101は、IEEE802.15.4、IEEE802.15.4g、又は、IEEE802.15.4eにて規定される方式に従って無線信号の送受信処理を行う。無線通信処理部101は、受信した無線信号を復号してデジタルデータに変換し該当データ列を必要に応じて上位層(図示せず)あるいは経路制御処理部105に渡す処理と、経路制御処理部105から受け取った経路制御信号および上位層(図示せず)から受け取ったデータ列に所定の変調方式を施して適切なタイミングで無線メディアに送出する処理とを行う。
【0062】
直前ホップ状態抽出部102は、無線通信処理部101が受信した信号から直前ホップの稼働状態情報を抽出する。
【0063】
直前ホップ状態抽出部102は、具体的には、直前ホップ(Previous Hop)となる近隣の経路制御装置から受信した経路制御信号もしくは近隣通知信号等の通信パケット内から、直前ホップ経路制御装置の稼働状態情報を抽出して直前ホップ状態管理部103に渡す処理を行う。
【0064】
ここで、近隣通知信号とは、特定経路制御装置のアドレスを解決するための要求NS(Neighbor Solicitation)、又は、NSに対する応答を通知するNA(Neighbor Advertisement)である。
【0065】
また、直前ホップとは、無線メッシュネットワークにおける通信データの送信元装置から宛先装置に至る送信経路上において、経路制御装置1の上流側の隣接端末のことであり、直前ホップ装置、又は、前ホップ装置ともいう。なお、送信経路において、送信元装置から宛先装置へ向かう方向を送信方向、又は、下流方向といい、宛先装置から送信元装置へ向かう方向を上流方向ともいう。
【0066】
直前ホップ状態管理部103は、抽出した直前ホップ稼働状態情報を記憶して管理する。
【0067】
直前ホップ状態管理部103は、具体的には、直前ホップ状態抽出部102から受け取った直前ホップの稼働状態情報を、直前ホップの識別子とともに、ストレージ(例えば、
図1BにおけるRAM203、又は、記憶装置204)に記憶して管理する。また、直前ホップ状態管理部103は、管理している直前ホップの稼働状態情報を稼働状態比較部104に渡す。なお、直前ホップ状態管理部103は、直前ホップの稼働状態情報を、近隣テーブル又はルーティングテーブルと紐付けて管理してもよい。
【0068】
稼働状態比較部104は、直前ホップの稼働状態情報と、自装置の稼働状態情報とを比較する。ここで、稼働状態情報とは、将来の稼働可能性を示す情報のことであり、具体例は後で説明する。
【0069】
稼働状態比較部104は、具体的には、経路制御信号を受信した際に経路制御処理部105からの稼働状態比較要求を受け付ける。稼働状態比較部104は、直前ホップ状態管理部103に格納されている直前ホップの稼働状態情報のうち、受け付けた稼働状態比較要求により指定される直前ホップの稼働状態情報(第一情報に相当)と、稼働状態抽出部110を介して抽出した経路制御装置1の稼働状態情報(第二情報に相当)とを比較する。稼働状態比較部104は、その比較結果を経路制御処理部105に通知する。
【0070】
経路制御処理部105は、稼働状態を比較した結果に基づき経路制御信号の処理を行う。
【0071】
経路制御処理部105は、具体的には、無線通信処理部101から受け取った経路制御信号もしくは近隣通知信号内の稼働状態情報を直前ホップ状態抽出部102に渡す。また、経路制御信号を無線通信処理部101から受け取った場合、稼働状態比較部104に稼働状態情報の比較要求を行う。経路制御処理部105は、比較の結果を稼働状態比較部104から受け取り、受け取った比較の結果に基づいて、無線通信処理部101から受け取った経路制御信号に対する処理を行うか否かを決定する。上記処理を行う場合には、後に行われる経路制御信号の応答もしくは転送のために、経路制御処理部105は、RPL又はAODVなどのルーティング方式に従った経路制御信号を作成し、作成した経路制御信号を無線通信処理部101に渡す。
【0072】
稼働状態管理部106は、経路制御装置1の稼働状態情報を管理する。稼働状態管理部106は、稼働状態情報を提供する機能ブロックを有する。具体的には、稼働状態管理部106は、バッテリ残量管理部107と、スリープ周期管理部108と、累積送信時間管理部109とのうちの少なくとも1つを有する。そして、稼働状態管理部106は、稼働状態情報を提供するこれらの機能ブロックから提供される稼働状態情報を稼働状態抽出部110に渡す。
【0073】
バッテリ残量管理部107は、経路制御装置1がバッテリによる電力供給により稼働する場合、つまりバッテリ駆動である場合に、そのバッテリ残量を記録して管理する。
【0074】
スリープ周期管理部108は、経路制御装置1がスリープモード(省電力モード)とアウェイクモード(通常モード)とのいずれかで稼働することができる場合に、スリープ周期や次のスリープ開始までの残り時間を管理する。スリープモードとは、経路制御装置1が外部からの通信データを受信することができるが、送信することはないモードのことである。スリープモードでは、経路制御装置1、通常モードよりも情報処理量を抑制することで消費電力を低減して(省電力で)動作することができる。
【0075】
スリープ周期管理部108は、例えば、管理対象の情報をストレージに記憶して管理する。スリープ周期管理部108は、経路制御装置1のスリープモードとスリープ解除モード(アウェイクモード)とのモード遷移を管理する。そして、スリープ周期管理部108は、スリープ周期に対するアウェイク期間の平均値を算出し、ストレージに記憶して管理する。
【0076】
累積送信時間管理部109は、経路制御装置1の送信時間制限が規定される無線通信システムである場合に、無線通信処理部101における無線送信の所要時間情報を受け取り、単位時間当たりの累積送信時間情報を記録して管理する。
【0077】
稼働状態抽出部110は、稼働状態管理部106から稼働状態情報を抽出する。そして、稼働状態抽出部110は、抽出した稼働状態情報を、比較のために稼働状態比較部104に渡す。
【0078】
稼働状態抽出部110は、稼働状態比較部104からの要求を受けて該当する自端末状態情報を稼働状態管理部106から抽出して稼働状態比較部104に渡す。稼働状態管理部106が複数種類の稼働状態情報を所有している場合には、抽出する状態情報を、稼働状態比較部104からの要求に基づき切り替えてもよいし、稼働状態比較部104からの要求に基づき組み合わせを変更してもよい。
【0079】
図1Bは、本実施の形態における経路制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0080】
図1Bに示されるように、経路制御装置1は、CPU201(Central Processing Unit)と、ROM202(Read Only Memory)と、RAM203(Random Access Memory)と、記憶装置204と、WNIC205(Wireless Network Interface Card)とを備える。
【0081】
CPU201は、ROM202に格納された制御プログラムを実行するプロセッサである。
【0082】
ROM202は、制御プログラム等を保持する読み出し専用記憶領域である。
【0083】
RAM203は、CPU201が制御プログラムを実行するときに使用するワークエリアとして用いられる揮発性の記憶領域である。
【0084】
記憶装置204は、制御プログラム、又は、データなどを保持する不揮発性の記憶領域である。
【0085】
WNIC205は、外部の無線通信装置と無線リンクを確立し通信を行う無線通信インタフェースである。無線通信インタフェースの種別は限定されない。つまり、WNIC205は、IEEE802.11a、b、g規格等に適合する無線LANインタフェースであってもよいし、他の無線通信インタフェースであってもよい。
【0086】
なお、
図1Aにおける無線通信処理部101、直前ホップ状態抽出部102、直前ホップ状態管理部103、稼働状態比較部104、経路制御処理部105、稼働状態管理部106、及び、稼働状態抽出部110のそれぞれは、例えば、それぞれの動作を実現するためのプログラムをストレージに記憶しておき、CPU(
図1BにおけるCPU201)がそれぞれのプログラムを実行することにより、機能する構成としても良い。
【0087】
なお、図示はしていないが、経路制御装置1は、さらに、ユーザインタフェースを備えてもよい。ユーザインタフェースは、ユーザが経路制御装置1の動作を選択して実行するためのものであり、例えば、キー、タッチパネル、ディスプレイ、コーデック、マイク、スピーカ、カメラ、バイブレータを含む。
【0088】
図2は、バッテリ残量管理部107における管理情報の一例を示している。
【0089】
図2に示される管理情報T21は、バッテリ残量情報、および、バッテリ残量を基にした稼働可能推定時間情報を有する。稼働可能推定時間情報は、バッテリ残量に基づいて算出され、バッテリを充電することなく経路制御装置1が今後(将来に)稼働できる時間を示す情報である。
【0090】
図2の例では、経路制御装置1のバッテリ残量が65%であることと、これまでの電力消費状況から見て経路制御装置1があと26時間32分17秒の稼働をすることができると推定されることが示されている。バッテリ残量情報に関しては、残りの電流量等により管理してもよい。また、これらの値は、経路制御信号を受信した時に更新されるが、定期的に読み取られるバッテリ情報により更新されてもよく、また、一定量のバッテリを消費した時に割り込みをあげるようにしておき当該割り込みに基づいて更新されてもよい。
【0091】
図3は、スリープ周期管理部108における管理情報の一例を示している。
【0092】
図3に示される管理情報T31は、スリープ周期情報、次回のアウェイクまでの時間情報、1回のアウェイクモードにおける平均稼働時間情報を有する。ここで、「次回のアウェイクまでの時間情報」とは、現在時刻より後で次にスリープモードからアウェイクモードに遷移するまでの時間を示す情報のことである。
【0093】
図3の例では、スリープ周期が10msであること、現在時刻より2ms後にスリープモードからアウェイクモードに遷移すること、及び、アウェイクモードにて平均400usだけ稼働することが示されている。これらの値は、経路制御信号を受信した時に更新されるが、定期的に更新されてもよく、また、一定時間経過した時に割り込みをあげるようにしておき当該割り込みに基づいて更新されてもよい。
【0094】
図4は、累積送信時間管理部109における管理情報の一例を示している。
【0095】
図4に示される管理情報T41は、直前1時間の総送信時間情報、1時間当たりの送信時間制限情報、および、送信可能最大時間情報を有する。送信可能最大時間情報は、現在送信可能な最大時間を示す情報である。
【0096】
図4の例では、直前1時間の総送信時間が120.541秒であること、1時間当たりの送信時間制限が360秒であること、及び、これらの差分により送信可能最大時間が239.459秒であることが示されている。これらの値は、無線通信処理部101が送信処理を実行するたびに更新する。
【0097】
管理情報T21、T31及びT41は一例であり、これらに準ずるものであれば、その他の形態の情報で管理してもよく、また、これらの一部でもよい。
【0098】
上記のように構成された経路制御装置にて構成される無線メッシュネットワークにおける経路構築フローおよび経路制御装置の動作について説明する。
【0099】
図5、
図6及び
図7は、経路制御装置1を含んで構成される無線メッシュネットワーク500において経路が構築される様子を示したものである。経路制御装置501〜510は、それぞれ、上記の説明における経路制御装置1と同等である。無線メッシュネットワーク500において、データの送信元となる経路制御装置に対応する送信元経路制御装置501、宛先となる経路制御装置に対応する宛先経路制御装置510の間の経路が構築される。
【0100】
図5は、経路制御装置501から経路制御装置510までの送信経路がまだ構築されていない状態の無線メッシュネットワーク500を示している。送信元経路制御装置501、経路制御装置502〜507、宛先経路制御装置510について、直接に無線通信可能なもの同士が破線で結ばれて示されている。すなわち、送信元である送信元経路制御装置501は、経路制御装置502及び503とは直接に通信可能であるが、その他の経路制御装置とは直接に無線通信できない。宛先である宛先経路制御装置510は、経路制御装置507、508及び509のそれぞれと直接に通信可能であるが、その他の経路制御装置とは直接に無線通信できない。
【0101】
図6は、送信元経路制御装置501から宛先経路制御装置510まで経路制御信号が伝播される様子を示している。また、
図7は経路制御信号伝播の結果として確立される経路を示している。
【0102】
図6において、経路制御信号601が示されている。経路制御信号601は、最初に経路制御装置501により送信される。経路制御信号601を受信した各経路制御装置は、受信した経路制御信号を、反応可能条件に従って、マルチキャスト、ブロードキャスト又はユニキャストのいずれかにより直接に通信可能な近隣の経路制御装置に転送する。
【0103】
具体的には、まず、経路制御装置501から宛先経路制御装置510までの経路を確立するために、経路制御装置501が経路制御信号601を送信する。経路制御信号601には、宛先経路制御装置を特定する情報として、経路制御装置510の識別子が記述されているとする。この経路制御信号を受信した経路制御装置502及び503は、自身が宛先経路制御装置510ではなく、かつ、経路制御装置501の次ホップであるので、経路制御信号601を転送する。
【0104】
経路制御装置502を経由して転送された経路制御信号601を受信した経路制御装置504及び505と、経路制御装置503を経由して転送された経路制御信号601を受信した経路制御装置506とのそれぞれは、自身が宛先経路制御装置510ではなく、かつ、送信元経路制御装置501の次ホップでもないので、自身が経路制御信号601に反応すべきか否かを判定する。
【0105】
判定の結果、経路制御装置505の稼働状態が直前ホップとなる経路制御装置502の稼働状態と同等以上である場合に、経路制御装置505は、受信した経路制御信号601をさらに転送する。また、経路制御装置504及び506はそれぞれ直前ホップとなる経路制御装置502、503の稼働状態よりも悪い場合に、経路制御信号601に反応しない。また、経路制御装置508は、経路制御装置505と同等以上の稼働状態である場合に、経路制御信号601を転送し、宛先経路制御装置510に経路制御信号を届ける。
【0106】
このようにして経路制御信号601を送信元経路制御装置501と宛先経路制御装置510との間でやりとりすることで、
図7に示す通信経路701が確立される。
【0107】
なお、既に受信した経路制御信号に対する応答である経路制御信号の送出を検知した経路制御装置502〜509は、経路制御信号601の転送又は応答は行わなくともよい。なぜなら、上記経路制御信号601は、既に受信した経路制御信号に対して他の(自身でない)経路制御装置が送信したものであるので、自身が経路制御信号601の転送又は応答を行わなくても、上記他の経路制御装置が送信経路を構築すると考えられるからである。
【0108】
図8は、本実施の形態の経路制御装置における経路制御方法を示すフローチャートである。
【0109】
ステップS800において、経路制御装置1(無線通信処理部101)は、経路制御信号601を受信する。経路制御装置1は、経路制御信号601を受信したら、スリープモードを有効にしている場合には、一旦スリープモードを解除する。
【0110】
ステップS801において、経路制御処理部105は、ステップS800で受信した経路制御信号601の内容を直前ホップ状態抽出部102に渡す。直前ホップ状態抽出部102は、経路制御処理部105から受け取った経路制御信号により通知される稼働状態情報を抽出する。経路制御信号内により通知される稼働状態情報については後で詳しく説明する。
【0111】
ステップS802において、直前ホップ状態抽出部102は、ステップS801で抽出した直前ホップ状態管理部103に渡して記録する。
【0112】
ステップS803において、経路制御処理部105は、自装置が通信データの宛先である経路制御装置510であるか否かを判定する。
【0113】
ステップS803において自装置が宛先経路制御装置510でないと判定された場合(ステップS803でNo)、ステップS804において、自装置が送信元経路制御装置501と直接通信可能か否かを判定する。
【0114】
ステップS804において自装置が送信元経路制御装置501と直接通信可能であると判定された場合、ステップS807において、経路制御処理部105は、ステップS800で受信した経路制御信号に自装置の稼働状態情報を付加又は更新した経路制御信号を再構成し、再構成した経路制御信号を転送するために無線通信処理部101に渡す。無線通信処理部101は、対応する無線通信規格に準拠した処理を実施して無線通信路に経路制御信号を送出する。なお、自装置が送信元経路制御装置501と直接通信可能であると判定されるのは、例えば、送信元経路制御装置501の近隣に位置している場合である。ただし、経路制御装置と送信元経路制御装置501との間に電波を遮蔽する遮蔽物が存在する場合など、自装置と送信元経路制御装置501とが近隣に位置していても直接通信可能でない場合もある。
【0115】
ステップS804において自装置が送信元経路制御装置501と直接通信可能でないと判定された場合、つまり、自装置が他の経路制御装置による中継を介して送信元経路制御装置501と通信可能であると判定された場合、ステップS805において、経路制御処理部105は、稼働状態比較部104に稼働状態の比較要求を行う。比較要求を受けた稼働状態比較部104は、稼働状態抽出部110を介して稼働状態管理部106から比較対象となる該当情報を選択する。
【0116】
このとき選択する情報はシステムによって固定的でもよく、また、経路制御信号に含まれる該当情報に従って切り替えて一つのみを抽出してもよい。また、稼働状態比較部104は、経路制御信号に複数の稼働状態情報を含んでいる場合は、一つ以上の稼働状態情報の組み合わせを抽出することもできる。さらに、稼働状態比較部104は、一つ以上の稼働状態情報の組み合わせを適宜切替(変更)してもよい。
【0117】
ステップS806において、ステップS805で抽出した稼働状態情報と、直前ホップの稼働状態情報とに基づいて、自装置と直前ホップとの稼働状態を稼働状態比較部104が比較し、比較結果を経路制御処理部105に通知する。抽出した情報がバッテリ残量情報、スリープ周期情報、及び、累積送信時間情報のいずれかである場合、稼働状態比較部104は、そのいずれかの情報のみで判定する。
【0118】
例えば、抽出した情報がバッテリ残量情報である場合、稼働状態比較部104は、
図2又は
図12にて示されるバッテリ残量情報を比較する。装置識別子がIP1である直前ホップのバッテリ残量が55%であり、装置識別子がIP2である自装置のバッテリ残量が65%である場合、稼働状態比較部104は、直前ホップの経路制御装置よりも自装置の稼働状態の方が良い、と判定する。なお、残量情報ではなく、稼働推定時間同士を比較してもよい。
【0119】
例えば、抽出した情報がスリープ周期情報である場合、稼働状態比較部104は、
図3又は
図12にて示されるスリープ周期情報を比較する。直前ホップ(IP1)のスリープ周期が50msであり、自装置(IP2)のスリープ周期が10msである場合、稼働状態比較部104は、直前ホップの経路制御装置よりも自装置の稼働状態の方が良い、と判定する。また、スリープ周期情報ではなく、次回起動するまでの時間(次にアウェイクモードに遷移するまでの時間)、又は、1回当たりの平均稼働時間情報(1回のアウェイクモードの稼働時間)を比較してもよい。次回起動するまでの時間が短いほど、また、1回当たりの平均稼働時間が長いほど、状態が良いと判断する。
【0120】
例えば、比較対象が累積送信時間情報である場合、稼働状態比較部104は、
図4又は
図12にて示される累積送信時間情報を比較する。直前ホップ(IP1)の直前1時間の総送信時間が121.550sec、自装置(IP2)の総送信時間が120.541secであるから、自装置のほうが送信制限に達するまでより多くの時間送信できる。よって、稼働状態比較部104は、自装置の稼働状態の方が良い、と判定する。また、稼働状態比較部104は、直前1時間の総送信時間ではなく、送信可能最大時間を比較して送信可能最大時間が長いほど、状態が良いと判断してもよい。
【0121】
抽出した情報が複数である場合、稼働状態比較部104は、それらの個々の情報の優先度に従って組み合わせて判断したり、それぞれを組み合わせて算出されるメトリックを比較したりしてもよい。優先度は、システムにて事前定義されていてもよいし、
図9〜
図11に示したメッセージフォーマットそれぞれに優先度情報が設けられ、その優先度に従って定められてもよい。
【0122】
ステップS806の判定において、自装置の稼働状態が、直前ホップの稼働状態と同等又はより良いという比較結果である場合、ステップS807において経路制御処理部105は、受信経路制御信号に含まれる稼働状態情報の内容を自装置の稼働状態情報に更新することで経路制御信号を再構成する。そして、経路制御処理部105は、再構成した経路制御信号を転送するために無線通信処理部101に渡す。無線通信処理部101は、対応する無線通信規格に準拠した処理を実施して無線通信路に経路制御信号を送出する。
【0123】
ステップS806の判定において、経路制御処理部105は、自装置の稼働状態が直前ホップの稼働状態より悪いという判定結果を受け取ると、ステップS808において、経路制御信号転送待ちのタイマを起動する。このタイマは、直前ホップと直接通信可能な経路制御装置の全てが直前ホップよりも稼働状態が悪い場合に、経路が一切構築できなくなることを回避するために利用する。
【0124】
ステップS809において、経路制御処理部105は、タイマが満了しているか否かを判定する。
【0125】
ステップS809において、タイマが満了していないと判定された場合(ステップS809でNo)、ステップS811において周囲の経路制御装置からの経路制御信号の転送もしくは応答があったか否かを経路制御処理部105にて監視する。なお、S811の判定はタイマが満了するまで繰り返し行われる。
【0126】
ステップS811において、周囲から経路制御信号を検出した場合、すなわち、経路制御信号に対する他経路制御装置からの応答もしくは転送を検出した場合(ステップS811でYes)、経路制御処理部105は、ステップS812において受信した経路制御信号を破棄し、転送処理を行わない。
【0127】
ステップS809において、該当経路制御信号に対する他経路制御装置からの応答もしくは転送を検出せずにタイマの満了を検出した場合(ステップS809でYes)、ステップS810において、経路制御処理部105は、所定のフラグを経路制御信号内に付加し、所定のフラグが付加された経路制御信号を転送するために無線通信処理部101に渡す。ここで、所定のフラグとは、自装置の稼働状態が直前ホップの経路制御装置の稼働状態より悪いが経路制御信号に反応したことを示す情報のことである。
【0128】
その際、ステップS800で受信した経路制御信号に含まれる稼働状態情報を、自装置における稼働状態情報に変更したものを、新たな経路制御信号として転送してもよい。無線通信処理部101は、対応する無線通信規格に準拠した処理を経路制御信号に施した上で無線通信路に送出する。
【0129】
ステップS803において、自装置が宛先経路制御装置510であると判定された場合(ステップS803でYes)、ステップS813で、経路制御処理部105は、ステップS800で受信した経路制御信号に応答するため、経路確立ができたことを示す経路制御信号を生成し、無線通信処理部101に渡す。無線通信処理部101は、対応する無線通信規格に準拠した処理を経路制御信号に施した上で無線通信路に送出する。
【0130】
図9、
図10及び
図11は、経路制御信号に含まれる稼働状態情報の一例を示している。
【0131】
図9は、バッテリ残量情報を含むメッセージフォーマットの例であり、非特許文献3にて定義されているノードエネルギーサブオブジェクト(NE sub−object)情報と同等である。バッテリ残量情報901を格納しているフィールドはE_Eフィールドとして定義され、バッテリ残量をパーセンテージで示している。また、オプションフィールド(Optional TLVs)には稼働推定時間情報を付加してもよい。
【0132】
図10は、スリープ周期情報を含むメッセージフォーマットの例であり、次起動時間情報1001、スリープ周期情報1002、及び、稼働率情報1003を含んでいる。これらの情報は一部のみを含むようにしてもよい。次起動時間情報1001は、次にアウェイクモードに遷移するまでの時間を示す情報を格納する。また、次起動時間情報1001には、IEEE802.15.4e標準規格におけるCSL(Coordinated Sampled Listening) Phase情報を格納してもよい。この場合、直前ホップ状態管理部103には時刻情報に変更して記録する。スリープ周期情報1002は、スリープ周期を格納する。あるいは、IEEE802.15.4e標準規格におけるCSL Period情報を格納してもよい。
【0133】
図11は、累積送信時間情報1101を含むメッセージフォーマットの例である。累積送信時間情報1101には、直近1時間あたりに無線通信路に信号を送信した時間を示す情報を格納する。この情報と、システムで定義される送信制限情報とに基づいて、送信可能最大時間を算出し、累積送信時間情報1101とともに直前ホップ状態管理部103に記録する。
【0134】
図12は、
図9、
図10、及び、
図11に記載された各種情報を抽出して格納した直前ホップ稼働状態の例を示している。それぞれの情報は、直前ホップとなる経路制御装置の識別子(IP1)と、自装置の識別子(IP2)とのそれぞれについて、該当情報を取得した時刻(Time1、Time2)を合わせて格納して管理する。
【0135】
なお、自装置が送信元になる場合は、
図9、
図10、及び、
図11に記載した各種情報を適宜経路制御情報に格納して送信する。
【0136】
このような処理によって、直前ホップと同等以上の稼働状態を有する経路制御装置を経由した送信経路を構築することができるので、より安定的な経路を構築することができる。
【0137】
また、このような処理によって、直前ホップと同等以上の稼働状態を有する経路制御装置を経由した送信経路を構築することができるので、仮に送信経路が切断される場合には比較的上流側の経路制御装置間における通信で切断される確率が高くなる。そのため、比較的下流側の経路制御装置間における通信で切断される場合と比較して送信元への通知コストを抑制することができる。
【0138】
また、このような処理によって、省電力モードで稼働することのできる経路制御装置にて構成されるメッシュネットワークにおいても発生する遅延量を抑制した安定的な経路を構築することができる。
【0139】
また、このような処理によって、総送信時間の制限を有する経路制御装置にて構成される無線メッシュネットワークにおいても発生する遅延量を抑制した安定的な経路を構築することができる。
【0140】
本実施の形態では、反応するか否かの対象となる経路制御メッセージを経路制御信号として記載したが、経路制御信号は、例えば、AODV方式のRREQ若しくはRREP、又は、RPL方式のDIO、DIS若しくは、DAOのいずれかであってよい。
【0141】
また、本実施の形態では、自装置の稼働状態が、直前ホップの稼働状態と同等以上である場合に経路制御信号を転送すると記載したが、直前ホップの稼働状態を数段階にレベル分けし(例えば、良/普通/悪の3段階)そのレベルに基づいて判定してもよい。つまり、稼働状態が「普通」であるより、「良」であるほうが稼働状態が良いと判定され、また、稼働状態が「悪」であるより、「普通」であるほうが稼働状態が良いと判定されるようにしてもよい。
【0142】
なお、稼働状態を数値で示した評価値(例えば、稼働性)を導入してもよい。例えば、10段階の数値で稼働状態を示す稼働性を用いて、上記「良」を稼働性10に、「普通」を稼働性5に、「悪」を稼働性1にそれぞれ対応付けてもよい。このようにすれば、数値の大小比較により稼働状態を評価することができるので、より利便性が向上する。
【0143】
また、本実施の形態では、自装置の稼働状態が、直前ホップの稼働状態と同等以上である場合に経路制御信号を転送すると記載したが、直前ホップの稼働状態に対して、劣化度が10%以内まで許容するというように、経路制御信号を転送する条件の許容範囲を設けてもよい。また、これらの許容範囲は、ステップS809の判定にてタイムアウトが発生した場合のみに適用してもよい。また、これらの許容範囲は、ステップS809の判定にてタイムアウトが発生した場合などに拡大するようにしてもよい。
【0144】
また、本実施の形態では、送信元から宛先までの順方向経路を送信元から探索する場合の方法を開示しているが、逆方向経路を探索する場合には、判定条件を反転し、同等以上ではなく、同等未満とすることで対応可能である。
【0145】
また、本実施の形態では、AODVにおけるRREQにように、送信経路の上流から下流に向かう方向の制御パケットを転送するか否かを、自装置と前ホップ装置との稼働状態に基づいて決定する技術を示したが、当該RREQに対する応答であるRREPを返すか否かを上記稼働状態に基づいて決定するようにしても同様の効果を奏する。
【0146】
以上のように、本実施の形態における経路制御装置によれば、前ホップ装置の経路制御装置と同等以上の稼働状態を有する経路制御装置が、送信経路の一部として選択される。送信経路が断絶する場合には、その断絶箇所は、送信元により近い経路制御装置となる可能性が高くなる。これにより、経路損失を通知するための制御信号を転送するコストを抑えることができる。また、本構成により、前ホップ装置と同等以上の稼働状態を有する経路制御装置が送信経路の一部として選択されるので、次ホップへの転送が成功したデータをより安定した経路にて転送でき、より安定的な経路を構築することができる。そして、送信経路の上流から下流へ向かって稼働状態が良い装置を選択しながら送信経路を構築することができる。よって、経路制御装置は、より少ない制御通信量で安定した送信経路を構築することができる。
【0147】
なお、本実施の形態において、経路制御装置はIEEE802.15.4、IEEE802.15.4g、又は、IEEE802.15.4e方式を使用していることを前提に述べたが、データ中継を行う装置であれば、その限りではなく、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、ZigBeeIP、WiMAX、特定小電力無線局等の無線システムにも適用可能である。
【0148】
なお、無線通信処理部101、直前ホップ状態抽出部102、直前ホップ状態管理部103、稼働状態比較部104、経路制御処理部105、稼働状態管理部106、バッテリ残量管理部107、スリープ周期管理部108、累積送信時間管理部109、稼働状態抽出部110は、集積回路であるLSIとして典型的には実現される。これらは個別に1チップ化されても良いし、一部、または全てを含むように1チップ化されても良い。
【0149】
ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0150】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。
【0151】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【0152】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の経路制御装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0153】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、無線メッシュネットワークにおいて通信データを送信元装置から宛先装置に送信するために送信経路を構築する経路制御装置における経路制御方法であって、前記送信経路のうち前記送信元装置から前記経路制御装置までの部分を構築するための第一制御信号を受信し、受信した前記第一制御信号の送信元である前ホップ装置が将来に動作している可能性である稼働可能性を示す第一情報を管理する前ホップ管理ステップと、前記経路制御装置の稼働可能性を示す第二情報を管理する稼働管理ステップと、前記第一情報と前記第二情報とを比較し、前記経路制御装置の稼働可能性が前記前ホップ装置の稼働可能性より高い又は等しい場合に、前記送信経路のうち前記部分を除く残部を構築するための第二制御信号を送信する経路制御ステップとを含む経路制御方法を実行させる。