(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231021
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】内燃機関用のピストンリング
(51)【国際特許分類】
F16J 9/00 20060101AFI20171106BHJP
F02F 5/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
F16J9/00 Z
F02F5/00 301D
F02F5/00 B
F02F5/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-557804(P2014-557804)
(86)(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公表番号】特表2015-508875(P2015-508875A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2013026304
(87)【国際公開番号】WO2013123301
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】61/600,163
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェネス,ブレア・マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ペディゴ,マシュー・ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥンゼル,ロナルド・ネルソン
【審査官】
杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0319661(US,A1)
【文献】
特開昭51−046654(JP,A)
【文献】
特開平06−249341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 9/00
F02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ壁をピストン本体にシールするためのピストンリングアセンブリであって、
互いに当接して軸方向に積層された複数のリングを備え、前記リングの各々は内面および外面を有し、前記ピストンリングアセンブリはさらに、
積層された前記リングを実質的に円周方向に囲み、前記リングの前記外面に当接し、積層された前記リングを径方向内向きに付勢して、前記リングの前記内面を上記ピストン本体に接してシールするばねを備え、
前記リングの各々は、全体的に平坦な上面および全体的に平坦な下面を有し、隣接するリングの前記上面および前記下面は互いに当接関係にある、ピストンリングアセンブリ。
【請求項2】
前記リングの各々の前記内面は丸みを帯びている、請求項1に記載のピストンリングアセンブリ。
【請求項3】
前記リングの各々はギャップを有し、隣接するリングの前記ギャップは互いに円周方向に食い違い配置されている、請求項1に記載のピストンリングアセンブリ。
【請求項4】
前記複数のリングは4つのリングとしてさらに定義される、請求項1に記載のピストンリングアセンブリ。
【請求項5】
前記ばねは全体的に蛇行形状を有する、請求項1に記載のピストンリングアセンブリ。
【請求項6】
パワーシリンダアセンブリであって、
チャネルが形成されたシリンダ壁を備え、前記チャネルは前記シリンダ壁の周りに実質的に円周方向に延在しており、前記パワーシリンダアセンブリはさらに、
スカートを有するピストン本体を備え、前記スカートの外面の少なくとも一部は周囲に実質的に連続的に延在しており、前記パワーシリンダアセンブリはさらに、
前記シリンダ壁の前記チャネルの内部に配置されたピストンリングアセンブリを備え、
前記ピストンリングアセンブリは、互いに当接して軸方向に積層された複数のリングを有し、前記リングの各々は内面および外面を有し、
前記ピストンリングアセンブリはさらに、積層された前記リングを実質的に円周方向に囲み、前記外面に当接し、積層された前記リングを径方向内向きに付勢して、積層された前記リングの前記内面を前記ピストン本体の前記スカートの円周方向において連続的な部分に接してシールするばねを含み、
前記リングの各々は、全体的に平坦な上面および全体的に平坦な下面を有し、隣接するリングの前記上面および前記下面は互いに当接関係にある、パワーシリンダアセンブリ。
【請求項7】
前記リングの各々の前記内面は丸みを帯びている、請求項6に記載のパワーシリンダアセンブリ。
【請求項8】
前記リングの各々はギャップを有し、隣接するリングの前記ギャップは互いに円周方向に食い違い配置されている、請求項6に記載のパワーシリンダアセンブリ。
【請求項9】
前記複数のリングは4つのリングとしてさらに定義される、請求項6に記載のパワーシリンダアセンブリ。
【請求項10】
前記ばねは、前記シリンダ壁と当接する複数の山部および前記リングの前記外面と当接する複数の谷部を含む全体的に蛇行形状を有する、請求項6に記載のパワーシリンダアセンブリ。
【請求項11】
前記シリンダ壁は、互いに間隔を空けられて前記チャネルを提供する端を有する少なくとも2片からなる、請求項6に記載のパワーシリンダアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2012年2月17日に出願された出願連続番号第61/600,163号の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は概して、シリンダの内部に少なくとも1つの往復ピストンを有する内燃機関に関し、特に、往復ピストンとシリンダ壁との間のシールに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
典型的な内燃機関には、エンジンブロックのシリンダの内部を往復運動する少なくとも1つのピストン本体が設けられる。一般に、各ピストン本体は複数のリング溝を含み、リング溝の各々がピストンリングを受けて作動可能に支持する。作動時、ピストンリングはリング溝の中にとどまり、各自のピストン本体とともにエンジンブロックのシリンダの内部を往復運動する。とりわけ、ピストンリングは、ピストン本体の上方の燃焼室内に燃焼ガスをシールしてピストン本体からシリンダ壁に熱を伝達することによって、クランクケースから燃焼室へのオイルの通過を制限するように、かつ全体的に均一な油膜をシリンダ壁に提供するように機能する。そのようなピストンリングは、典型的に、ばね力によって径方向外向きにシリンダ壁に接して付勢されて、ピストン本体とシリンダ壁との間にシールを確立する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要約
本発明の一局面は、シリンダ壁をピストン本体にシールするためのピストンリングアセンブリを提供する。ピストンリングアセンブリは、互いに当接して軸方向に積層された複数のリングを含み、リングの各々は内面および外面を有する。ピストンリングアセンブリはさらに、積層されたリングを実質的に円周方向に囲み、かつリングの外面に当接するばねを含む。ばねは、積層されたリングを径方向内向きに付勢して、リングの内面をピストン本体に接してシールする。
【0005】
ピストンリングアセンブリはシリンダ壁のチャネル内に着座して、ピストン本体のスカートに接してシールされ得る。したがって、ピストンリングは、エンジンの作動時に通常は静止し続け、シリンダ壁に対して動かない。この位置によって、スカートの長さを損なうことなく、ピストン本体がエンジンのシリンダ内を往復運動する際にピストン本体の安定性を高めることができ、すなわち、スカートは、ピストン本体が下死点位置にある時、シリンダ壁を通り過ぎて下向きに延在し得る。ピストンリングは耐ブローバイ性も有する。
【0006】
本発明の別の局面は、パワーシリンダアセンブリを提供する。パワーシリンダは、実質的に円周方向に延在するチャネルが形成されたシリンダ壁を含む。パワーシリンダアセンブリはさらに、スカートを有するピストン本体を含み、スカートの外面の少なくとも一部は周囲に実質的に連続的に延在する。さらに、パワーシリンダアセンブリは、シリンダ壁のチャネルの内部に配置されたピストンリングアセンブリを含む。ピストンリングアセンブリは、互いに当接して軸方向に積層された複数のリングを含み、リングの各々は内面および外面を有する。ピストンリングアセンブリはさらに、積層されたリングを実質的に円周方向に囲むばねを含む。ばねは、積層されたリングの外面に当接し、積層されたリングを径方向内向きに付勢して、積層されたリングの内面をピストン本体のスカートの円周方向において連続的な部分に接してシールする。
【0007】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、添付の図面と関連して考慮されると以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるため、容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ピストンリングアセンブリの例示的な実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1のピストンリングアセンブリを含むパワーシリンダアセンブリの例示的な実施形態の断面図であって、上死点位置にあるピストン本体を示す図である。
【
図3】
図1のピストンリングアセンブリを含むパワーシリンダアセンブリの例示的な実施形態の別の断面図であって、下死点位置にあるピストン本体を示す図である。
【
図4】シリンダ壁のチャネル内に配置されてピストン本体とシール係合している
図1のピストンリングアセンブリを示す横断面部分図である。
【
図5】
図1のピストンリングアセンブリの上面図である。
【
図6】
図1のピストンリングアセンブリの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施可能な実施形態の説明
いくつかの図面全体にわたって同様の番号は対応する部分を示す図面を参照して、内燃機関のパワーシリンダアセンブリ26のシリンダ壁24にピストン本体22をシールするためのピストンリングアセンブリ20の例示的な実施形態を
図1に全体的に示す。次に
図2および
図3の横断面図を参照して、例示的なピストンリング20は、エンジンブロック28と二片式シリンダライナ30とを有する内燃機関のパワーシリンダアセンブリ26内に取付けられた状態で示されており、二片式シリンダライナ30はともに、軸方向に延在するシリンダ壁24を提供し、シリンダ壁24は、シリンダ壁24の周りに実質的に円周方向に延在するチャネル32を有する。具体的には、例示的な実施形態では、ピストンリング20は、軸方向に互いに間隔を空けられて上述のチャネル32を提供するシリンダライナ30片の端同士の間に配置される。しかし、チャネル32はさまざまな異なる態様でシリンダ壁24に形成され得ることを認識すべきである。たとえば、チャネル32は、シリンダライナ30をまったく用いずにエンジンブロック28に直接形成されてもよい。例示的なピストンリング20はディーゼル燃料圧縮点火エンジン内に取付けられた状態で示されているが、ピストンリング20は代わりに、たとえばスパーク点火エンジンまたは水平対向2ピストン/シリンダエンジンを含む、さまざまな異なる種類の内燃機関において用いられ得ることを認識すべきである。
【0010】
引続き
図2および
図3を参照して、例示的なパワーシリンダアセンブリ26のピストン本体22は、ピストン本体22の外壁に形成された関連のリング溝内に保持される1つ以上の上部ピストンリング34(例示的な実施形態では複数が示される)を含む。ピストン本体22はさらに、ピストンリング20領域から垂下し、かつエンジンの作動時のシリンダ内の往復運動の際にピストン本体22を導くのに有用なスカート36を有する。スカート36の少なくとも一部は全体的に円筒形状であり、周囲に連続的に延在する外面を有する。スカート36のこの部分は、シリンダ壁24との間に作動ギャップ38が存在するように、シリンダ壁24の内径とほぼ同じであるが相対的により小さいようにサイズ決めされる。ピストン本体22はリストピン(図示せず)または同様の種類の接続装置によって接続ロッド40に結合され、接続ロッド40は次いでクランクシャフト(図示せず)または同様の機構に結合される。
【0011】
引続き
図2および
図3を参照して、例示的なピストンリング20は、シリンダ壁24のチャネル32内の位置において、エンジンブロック28に対して固定装着され、ピストン本体22のスカート36の外面に接してシールされることによって、シリンダ壁24とピストン本体22との間に気密および液密シールを確立する。ピストンリングアセンブリ20は内面44(
図4にもっとも良く示される)を有し、この内面は、エンジンの作動時にピストン本体22のスカート36と走行接触して、ピストン本体22の一方の側で燃焼室内に燃焼ガスをシールし、ピストン本体22の他方の側で、たとえばクランクケース(図示せず)または任意の他の油室内にオイルをシールする。エンジンの作動時、ピストン本体22は、シリンダ壁24の内部で、
図2に示される上死点位置と
図3に示される下死点位置との間を上下に動く。図示されるように、例示的なピストンリングアセンブリ20はスカート36の円周方向において連続的な部分とシール係合し続け、ピストン本体22の移動範囲全体にわたって気密および油密シールを維持する。シリンダ壁24のチャネル32内のピストンリングアセンブリ20の位置によって、スカート36の長さを損なうことなく、ピストン本体22がエンジンのシリンダ内を往復運動する際にピストン本体22の安定性を高めることができ、すなわち、スカート36は、ピストン本体22が下死点位置にある時、クランクケース(図示せず)内へ下向きに延在し得る。
【0012】
次に
図4を参照して、例示的な実施形態のピストンリングアセンブリ20は、互いに当接して軸方向に積層された、複数の個別の別々に形成されたリング42を含む。例示的なリング42の各々は、丸みを帯びた内面44と、丸みを帯びた外面46と、全体的に平坦な上下面とを有し、隣接するリング42の上下面は互いに当接関係にある。したがって、ピストンリングアセンブリ20の内向きの面は、シリンダ壁24とピストン本体のスカート36の外面との間にオイルシールおよびガスシールを提供する複数のシール面をむ。例示的な実施形態では、ピストンリングアセンブリ20は4つのリング42を含む。しかし、2つ以上の任意の数のリング42が用いられ得ることを認識すべきである。
【0013】
次に
図6の分解図を参照して、各リング42は、リングギャップ48によって互いに分離された端を有し、隣接するリング42のリングギャップ48は、互いに円周方向に食い違い配置されている。これによって、ピストン本体22の周りに円周方向において連続的なシールを提供することにより、ピストンリングアセンブリ20のオイル収集およびガスシール性能が向上する。リング42は好ましくは、互いに取付けられていない。
【0014】
再び
図1を参照して、ピストンリングアセンブリ20はさらに、積層リング42を実質的に円周方向に囲み、かつ積層リング42の外面46に当接して積層リング42を径方向内向きに付勢するばね50を含む。これは、リング42の内面44をピストン本体22に接してシールする効果を有する(
図2および
図3に示す)。例示的な実施形態のばね50は、ばね鋼などの金属からなる帯状片で作られ、山部および谷部を有する全体的に蛇行パターンで延在する。
図4に示されるように、蛇行ばね50は、積層リング42の外面との係合と、シリンダ壁24のチャネル32の後壁との係合とを交互に繰返す。蛇行ばね50は、積層リング42とシリンダ壁24との間に挿入されると、自身の停止状態に向かって歪むことによって積層リング42を径方向内向きに付勢し、シリンダ壁24とピストン本体22との間に気密および油密シールを確立する。図示されるように、積層リング42の内面44と外面46との間の距離は、ピストン本体22のスカート36の外面との間の作動ギャップ38よりも大きいため、オイルおよびガスが蛇行ばね50のギャップを通ってピストンリングアセンブリ20を流れ過ぎることを実質的に防止する。
【0015】
リング42および蛇行ばね50は任意の所望の製造工程で形成されてもよく、たとえば、鋳鉄および鋼を含む任意の所望の材料で作られてもよい。リング42はさらに、コーティングされていなくてもよいし、耐摩耗性コーティング(クロム、酸化アルミニウムセラミックを含むクロム[CKS[登録商標]]、ミクロダイヤモンドを含むクロム[GDC[登録商標]]等)が少なくとも自身の内面44に塗布されていてもよい。
【0016】
実施形態の例示的な説明は説明的であることが意図されており、発明を限定することは意図されていない。開示された実施形態に対する変形および修正が当業者にとって明らかになり、発明の範囲内にあり得る。