特許第6231023号(P6231023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥールの特許一覧

特許6231023パワーブリッジを制御するための方法、並びに、対応する制御装置、パワーブリッジ、および、回転電気機械システム
<>
  • 特許6231023-パワーブリッジを制御するための方法、並びに、対応する制御装置、パワーブリッジ、および、回転電気機械システム 図000002
  • 特許6231023-パワーブリッジを制御するための方法、並びに、対応する制御装置、パワーブリッジ、および、回転電気機械システム 図000003
  • 特許6231023-パワーブリッジを制御するための方法、並びに、対応する制御装置、パワーブリッジ、および、回転電気機械システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231023
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】パワーブリッジを制御するための方法、並びに、対応する制御装置、パワーブリッジ、および、回転電気機械システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20171106BHJP
【FI】
   H02M7/48 F
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-560430(P2014-560430)
(86)(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公表番号】特表2015-509699(P2015-509699A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】FR2013050452
(87)【国際公開番号】WO2013132182
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年3月2日
(31)【優先権主張番号】1252075
(32)【優先日】2012年3月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100179338
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル、シュマン
【審査官】 戸次 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−171768(JP,A)
【文献】 特開2003−189668(JP,A)
【文献】 特表2004−500791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M7/42−7/98
H02P21/00−25/03
25/04
25/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアーム(B,B,B,B)を備えるパワーブリッジ(3)を制御するための方法であって、前記各アームは、共通電圧源(2)の第1および第2の端子(B,B)と並列に接続されるようになっている上側および下側半導体スイッチ(4)を直列に備え、前記アーム(B,B,B,B)のそれぞれの少なくとも1つの中間点は、電気負荷(1)の少なくとも1つの相にそれぞれ接続されるようになっており、前記方法は、前記電気負荷(1)の基準端子に対する第1の設定相電圧(V,V,V,V)と、前記上側および下側半導体スイッチ(4)のスイッチング損失(21)を制御する前記第1または第2の端子(B,B)のうちの一方に対するコモンモード電圧(V)とにしたがって決定される設定デューティサイクル(RC,RC,RC,RC)を伴うパルスを用いて相補的態様で前記上側および下側半導体スイッチ(4)を制御することから成るタイプのものである、方法において、前記コモンモード電圧(V)は、前記上側および下側半導体スイッチ(4)間で前記スイッチング損失(21)および通流損失(19)の釣り合わせ(13)を得るように決定され、前記釣り合わせ(13)は、前記設定デューティサイクル(RC,RC,RC,RC)を変調する電気的な周波数が所定の閾値に等しいあるいは所定の閾値よりも低いときにだけ実施され
前記釣り合わせ(13)は、以下の方程式を実質的に検証するように釣り合わせデューティサイクル(RC,RC,RC,RC)を選択する(15,22)ことによって得られ、
RC’×RonH×Iph+Pcomm=(1−RC’)×RonL×Iph
ここで、RonHおよびRonLはそれぞれ、前記上側および下側半導体スイッチ(4)の通流抵抗(20)であり、Pcommは前記スイッチング損失(21)を表し、Iphは、前記相内で循環する相強度を表し、その場合、前記釣り合わせデューティサイクル(RC’,RC’,RC’,RC’)が第1の釣り合わせ相電圧をもたらして、第2の釣り合わせ相電圧と比べた前記第1の釣り合わせ相電圧の相間電圧差が前記第1の設定相電圧(V,V,V,V)と第2の設定相電圧(V,V,V,V)との間の初期の差と同一であるという制限内で前記釣り合わせデューティサイクルが選択され、
前記釣り合わせ(13)は、前記相強度(Iph)が前記アーム(B,B,B,B)の中で最も大きい(14,18)基準アームにおいてのみ行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コモンモード電圧(V)は、前記電気的な周波数が前記所定の閾値よりも高いときに前記スイッチング損失(21)を最小限に抑えるように決定されることを特徴とする請求項1に記載のパワーブリッジ(3)を制御するための方法。
【請求項3】
前記釣り合わせ(13)は、前記アーム(B,B,B,B)のそれぞれに対応する前記設定デューティサイクル(RC,RC,RC,RC)を、設定デューティサイクル(RC,RC,RC,RC)の基準値(RC)と前記基準アームで決定された(16,24)釣り合わせデューティサイクル(RC’,RC’,RC’,RC’)の釣り合わせ値(RC’)との間のデューティサイクルの差(ΔRC)だけ変える(12,26)ことによって得られることを特徴とする請求項に記載のパワーブリッジ(3)を制御するための方法。
【請求項4】
電気負荷(1)に接続されるようになっており且つ請求項1からのいずれか一項に記載の方法の実施に適したパワーブリッジ(3)を制御するための装置(5)であって、前記装置(5)は、前記方法を表す制御論理を実行するプログラム記憶し、または、前記装置(5)は、前記方法を表す命令を実行するプログラムを記憶するコンピュータメモリを備えることを特徴とする装置(5)。
【請求項5】
それぞれが上側および下側半導体スイッチ(4)を直列に備える複数のアーム(B,B,B,B)を備える、請求項に記載の制御装置(5)によって制御され得るパワーブリッジ(3)であって、前記上側および下側半導体スイッチ(4)がそれぞれ並列を成す半導体スイッチング素子(7)とフリーホイールダイオード(6)とから成ること特徴とするパワーブリッジ(3)。
【請求項6】
前記フリーホイールダイオード(6)がMOSFETタイプのトランジスタの真性ダイオードであることを特徴とする請求項に記載のパワーブリッジ(3)。
【請求項7】
多相電気負荷(1)と、
電圧源(2)と、
下流側で前記電気負荷(1)に接続され且つ上流側で前記電圧源(2)接続される請求項または請求項のいずれかに記載のパワーブリッジ(3)と、
請求項に記載の制御装置(5)と、
を備える回転電気機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相電気負荷または多相電気負荷に給電するパワーブリッジを制御するための方法、および、対応する制御装置に関する。
【0002】
また、本発明は、関連するパワーブリッジ、および、特に自動車用の回転電気機械システムに対するパワーブリッジの適用に関する。
【背景技術】
【0003】
広い範囲の電力レベルおよび速度で生産される回転電気機械は、環境保護の配慮の結果として、現在では、自動車産業において益々使用されている。
【0004】
これらの回転電気機械は、全ての電気タイプの車両において、および、いわゆるマイルドハイブリッド型およびフルハイブリッド型の低CO排出車両において用途を有する。
【0005】
マイルドハイブリッド用途は、一般に、約8〜10kWの電気機械、例えば、熱機関の前面に取り付けられて駆動ベルトによって熱機関に結合される電気モータに関連する。このタイプの電気モータを用いると、特にエンジン回転数を上げている最中に更なる電力を供給する電気トルク補助を与えることによって、熱動力化能力を減らすことができる(エンジン小型化)。また、この同じ電気モータにより、例えば都会の環境における低速での牽引も確保できる。
【0006】
フルハイブリッド型の用途は、一般に、車両のトラクションチェーンへの電気モータのより高度なレベルの組み込みを伴う直列型および/または並列型の構成における30〜50kWモータに関連する。
【0007】
これらの機械は、異なる相電流を生成できるようにするインバータによって車載バッテリにより給電される多相機械である。
【0008】
最も一般的に使用されるインバータは、2つのレベルを伴うインバータである。すなわち、これらのインバータは、複数のアーム(一般的には相ごとに1つのアーム)を備えるパワーブリッジから成り、各アームは、切り換えで機能する2つのパワー半導体を備える。各対の中間点は、回転電気機械の1つの相に接続される。
【0009】
パワー半導体は、フリーホイールダイオードと関連付けられるバイポーラトランジスタであり、または、その真性ダイオードが電流の2方向での循環を可能にするMOSFETタイプのトランジスタである。
【0010】
これらの半導体スイッチは、パルス幅変調(PWM)の良く知られた技術にしたがって電気機械を機能させるために必要な相電圧を生成するように電子制御ユニットによって相補的態様で制御される。
【0011】
これらの機械により達せられる高い電力レベルは、スイッチング損失および通流損失を制限することによって、関連するインバータの性能を向上させようとすべく製造業者を導いている。
【0012】
仏国特許第2895597号では、スイッチング損失を制限することが提案される。この目的のため、コモンモード電圧は、相電圧のうちの1つが強い電流を通す方に優先順位を与えつつアースまたは+BATに接続されように調整される。したがって、切り換わらないアームが常に存在し、そのため、インバータにおける損失を減らすことができる。
【0013】
PWM技術では、スイッチング周波数が一般に固定されるが、相電圧の波形(例えば正弦波)は、デューティサイクルを機械の回転速度に依存する電気的な周波数に変調することによって得られる。
【0014】
一般に、電気的な周波数は数百ヘルツである。(損失を反映する)MOSFETの接合部温度はこの瞬時変化に追従しない。これは、瞬時変化がチップ−ケース−基板アセンブリの熱キャパシタによってフィルタリングされるからである。
【0015】
しかしながら、回転電気機械の始動の段階、または、ロータがブロックされた状態では、電気的な周波数が非常に低いあるいはゼロである。アセンブリの熱フィルタリングはもはや作用しない。すなわち、考慮に入れられるべき損失は、瞬時損失であり、中位の期間における損失ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、パワーブリッジのアームにおける瞬時損失を最小限に抑えて、低い電気的周波数でアームの熱散逸の制限内において許容できる電流を最大にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
その主題は、具体的には、複数のアームを備えるパワーブリッジを制御するための方法であって、各アームが、共通電圧源の第1および第2の端子と並列に接続されるようになっている上側および下側半導体スイッチを直列に備え、アームのそれぞれの少なくとも1つの中間点が、電気負荷の少なくとも1つの相にそれぞれ接続されるようになっている方法である。
【0018】
当該方法は、
電気負荷の基準端子に対する第1の設定相電圧と、
上側および下側半導体スイッチのスイッチング損失を制御する第1または第2の端子のうちの一方に対するコモンモード電圧と、
にしたがって決定される設定デューティサイクルを伴うパルスを用いて相補的態様で上側および下側半導体スイッチを制御することから成るタイプのものである。
【0019】
本発明に係る方法は、このコモンモード電圧が上側および下側半導体スイッチ間でスイッチング損失および通流損失の釣り合わせを得るように決定されるという点において区別される。
【0020】
本発明によれば、この釣り合わせは、有利には、設定デューティサイクルを変調する電気的な周波数が所定の閾値に等しいあるいは所定の閾値よりも低いときにだけ実施される。
【0021】
好ましくは、このコモンモード電圧は、他方では、電気的な周波数がこの所定の閾値よりも高いときにスイッチング損失を最小限に抑えるように決定される。
【0022】
また、本発明に係るパワーブリッジを制御するための方法は、この釣り合わせが、以下の方程式を実質的に検証するように釣り合わせデューティサイクルRC’を選択することによって得られ、
RC’×RonH×Iph+Pcomm=(1−RC’)×RonL×Iph
【0023】
ここで、RonHおよびRonLがそれぞれ、上側および下側半導体スイッチ4の通流抵抗20であり、Pcommがスイッチング損失を表し、Iphが、関連する相内で循環する相強度を表し、その場合、釣り合わせデューティサイクルが第1の釣り合わせ相電圧をもたらして、第2の釣り合わせ相電圧と比べた第1の釣り合わせ相電圧の電流差が第1の設定相電圧と第2の設定相電圧との間の初期の差と同一であるという制限内で釣り合わせデューティサイクルRC’が選択される、という点においても区別される。
【0024】
釣り合わせは、相強度がパワーブリッジアームの中で最も大きい基準アームにおいてのみ行われることが好ましい。
【0025】
釣り合わせは、パワーブリッジのアームのそれぞれに対応する設定デューティサイクルを、設定デューティサイクルの基準値とこの基準アームで決定された釣り合わせデューティサイクルの釣り合わせ値との間のデューティサイクルの差だけ変調することによって得られることが非常に有益である。
【0026】
また、本発明は、電気負荷に接続されるようになっており且つ前述した方法の実施に適したパワーブリッジを制御するための装置にも関連する。
【0027】
この制御装置は、それが本発明に係る方法を表す制御論理を備えあるいはこの方法を表す命令を備えるコンピュータメモリを備えるという点において区別される。
【0028】
本発明の文脈内で、前述した制御装置によって制御され得るパワーブリッジは、一般に、それぞれが上側および下側半導体スイッチを直列に備える複数のアームを備える。
【0029】
これらの上側および下側半導体スイッチはそれぞれ、好適には、並列を成す半導体スイッチング素子とフリーホイールダイオードとから成る。
【0030】
好ましくは、フリーホイールダイオードがMOSFETタイプのトランジスタの真性ダイオードである。
【0031】
利点は、
多相電気負荷と、
電圧源と、
この電気負荷の下流側で且つ電圧源の上流側で接続される前述した特徴を有するパワーブリッジと、
既に説明した制御装置と、
を備える本発明に係る回転電気機械システムから得られる。
【0032】
これらの数少ない不可欠な仕様は、従来技術と比べた本発明により与えられる利点を当業者に明らかにする。
【0033】
本発明の詳細な仕様が、添付図面と関連して以下の説明で与えられる。なお、これらの図面は、説明の本文を単に図解する目的を果たし、決して発明の範囲の限定を成すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る方法によって制御されるパワーブリッジを備える回転電気機械システムのプロセス図である。
図2】本発明に係るパワーブリッジを制御するための方法を表す一般的なフローチャートである。
図3】本発明に係るパワーブリッジのアームにおける損失の釣り合わせを概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の好ましい実施形態は、バッテリ2から多相回転電気機械1に給電するインバータに対応する。
【0036】
一般に、回転電気機械は、図1に表されるように数がn個の相巻線が半導体パワーブリッジ3のアームB,B,B,Bの中間点に接続される機械1である(nは好ましくは3に等しい)。
【0037】
既知の構成によれば、パワーブリッジ3は、制御され得る半導体スイッチ4をそれぞれが備えるアームB,B,B,Bを有し、半導体スイッチ4は、第1に、相巻線をバッテリ2の陽極Bに接続し(ハイ側の上側半導体スイッチHS,HS,HS,HS)、第2に、相巻線をバッテリ2の陰極Bに接続する(ロー側の下側半導体スイッチLS,LS,LS,LS)。
【0038】
電子制御ユニット5が、相内の電流Iph,Iph,Iph,Iphを調整するために、インバータ3の良く知られた動作モードにしたがって、ハイ側およびロー側のスイッチ4を交互に開閉する。
【0039】
上側スイッチ/下側スイッチ通流率はデューティサイクル(RC)として知られる。バッテリ電圧2がUbatであると、機械に印加される相電圧Uphは以下のようになる。
【0040】
Uph=RC×Ubat
【0041】
デューティサイクルRCの変調は、機械1に印加される相電圧Uphを変調し、その結果、相電流Iphを変調する。
【0042】
使用される半導体スイッチ4は、その真性ダイオード6が二方向電流を有するという特性を確保するMOSFET型のパワートランジスタであることが好ましい。
【0043】
あるいは、半導体スイッチ4は、バイポーラパワートランジスタ7などのスイッチング素子7と、フリーホイールダイオード6とから成る。
【0044】
MOSFETにおける損失は、2つのタイプ、すなわち、通流による損失Pcondと、切り換えによる損失Pcommとからなる。
【0045】
アームBにおける通流損失Pcondは、デューティサイクルRCにかかわりなく、Ron×Iph(Ronは、通電状態におけるMOSFETの抵抗である)に等しい。これは、相電流Iphが上側スイッチHS内または下側スイッチLS内で循環し、したがって、常に単一のMOSFET内で循環するからである。
【0046】
スイッチング損失Pcommは、切り換えられる電圧および電流によって決まる。これらの損失は、相電流の方向にしたがって下側または上側である単一のMOSFETでのみ散逸される。
【0047】
序文で述べたように、コモンモード電圧Vを変えることにより切り換え動作の数を制限することによってスイッチング損失Pcommを減らすことが特に仏国特許第2895597号から知られている。
【0048】
この方策は、以下の2つの数値例により示されるように、特に電気機械1のロータがブロックされるときに不都合を有する。
【0049】
実施例1
システム1,2,3,4,5は、100Vの電圧Ubatを有するバッテリ2と、そのロータがブロックされる三相機械1とを備える。
【0050】
電子制御ユニット5は、以下の3つの設定デューティサイクルを生み出し、
RC=0.60 RC=0.45 RC=0.45
これらは(接地端子B−に対して)以下の3つの設定相電圧をもたらす。
=60V V=45V V=45V
コモンモード電圧Vは、(V+V+V)/3=50Vである。
【0051】
相巻線に印加される電圧は、
−V=15V V−V=0V V−V=−15V
であり、これらは以下の相強度を生み出す(任意のユニットにおいて)。
【0052】
Iph=+1 Iph=−1/2 Iph=−1/2
アームBの上側MOSFET HSにおける損失は、
通流損失:Pcond=RC×Ron×Iph
スイッチング損失:Pcomm=1/3×Ron×Iph(簡略化による)。
【0053】
したがって、上側MOSFET HSにおける全損失は、
Pcond+Pcomm=(RC+1/3)×Ron×Iph、すなわち、0.93×Ronである。
【0054】
アームBの下側MOSFET LSにおける損失は通流損失のみである。これは、スイッチング損失が既に上側MOSFET HSによって耐えられてしまったからである。
【0055】
したがって、下側MOSFET LSにおける全損失は、
Pcond=(1−RC)×Ron×Iph、すなわち、0.40×Ronである。
【0056】
したがって、アームの全体の損失は、
(0.6+1/3)×Ron+0.40×Ron=4/3×Ronである。
【0057】
実施例2
限られた数の切り換え動作によって損失を減らすという方策は、相強度が最も大きいアーム、この場合にはアームBをブロックすることを意味する。
【0058】
この目的のため、設定デューティサイクルRCは、RCop=1となるように最適化デューティサイクルRCopになる。
【0059】
2つの他の設定デューティサイクルRC,RCは、以下のように、コモンモード電圧を増大させることにより、同じ相間電圧差を維持するべくRCop−RCだけ増大される。
RCop=1 RCop=0.85 RCop=0.85
Vop=100V Vop=85V Vop=85V
最適化コモンモード電圧は、Vop=90Vである。
【0060】
機械1は、以下のように、依然として同じ相電圧を有する。
Vop−Vop=15V Vop−Vop=0V Vop−Vop=−15V
この場合、損失は通流損失のみである。これは、アームBがもはや切り換わらないからである。したがって、全損失は、
Pcond=RCop×Ron×Iph、すなわち、Ronとなる。
【0061】
したがって、最小化の既知の方策から得られる上側MOSFET HSにおける損失は、実際には、最適化を伴わないPWM制御から得られる損失よりも7%高い。
【0062】
本発明に係るパワーブリッジ3を制御するための方法は、他方では、図2および図3と関連して以下で明らかにされるように、機械1が始動されるとき、および、ロータがブロックされるときに、これらの状況でインバータ3の全体の性能の僅かな低下を受け入れることによって、このタイプのMOSFETにおける損失を制限するようになっている。
【0063】
本発明に係る方法は、最初は、予備的なステップ8において、従来の態様で、入力9に供給される機械1のベクトル制御の設定相電圧V,V,V,Vに対応する設定デューティサイクルRC,RC,RC,RCを生み出すことから成る。
【0064】
検査10は、これらの設定デューティサイクルRC,RC,RC,RCを変調する電気的な周波数と所定の閾値とを比較することによって、あるいは、同等な態様で、機械1の回転速度Ωを基準回転速度Ωとを比較することによって、機械1が始動のプロセスの状態にあるかどうかあるいは機械1がそのロータをブロックされるかどうかを決定できるようにする。
【0065】
回転速度ΩがΩよりも大きい場合には、機械1が始動のプロセスの状態になく、あるいは、ロータがブロックされず、本発明に係る方法は、好ましくは、出力12と同一の態様で転送される設定デューティサイクルRC,RC2,RC,RCに対して何ら変更11を行なわない。
【0066】
あるいは、設定デューティサイクルRC,RC,RC,RCは、コモンモード電圧Vがスイッチング損失Pcommを最小限に抑えるように変更される(プロセスは表わされない)。
【0067】
回転速度ΩがΩよりも小さいあるいはΩに等しい場合には、機械1が始動のプロセスの状態にあり、あるいは、ロータがブロックされ、本発明に係る方法は、アームB,B,B,Bの半導体スイッチ4損失の釣り合わせ13のプロセスを進める、あるいは、より大きな相強度Iph,Iph,Iph,Iphを循環させる。
【0068】
したがって、この釣り合わせプロセス13の第1のステップ14は、相強度Iph,Iph,Iph,Iphがより大きな値Iphを有するパワーブリッジ3の基準アームを選択することから成る。
【0069】
この釣り合わせプロセス13の第2のステップ15は、この基準アームにおいて上側半導体スイッチHSと下側半導体スイッチLSとの間でスイッチング損失Pcommおよび通流損失Pcondを釣り合わせることから成る。
【0070】
スイッチング損失Pcommは、デューティサイクルから独立しており、電流の方向にしたがって、上側HSまたは下側LSの半導体スイッチ4のうちの一方のみによって散逸される。
【0071】
通流損失Pcondは、機械1によって直面される釣り合わせ相電圧差が設定相電圧差V,V,V,Vと同一のままであるという制限内で適切な釣り合わせデューティサイクルRC’,RC’,RC’,RC’を選択することによって、上側HSおよび下側LSの半導体スイッチ4間で分配される。
【0072】
基準アームにおいては、この第2のステップ15中、釣り合わせデューティサイクルRC’,RC’,RC’,RC’の釣り合わせ値RC’を選択して、以下の方程式を検証する。
【0073】
RC’×Ron×Iph+Pcomm=(1−RC’)×Ron×Iph
【0074】
この方程式は、基準アームの上側半導体スイッチHSと下側半導体スイッチLSとの間の損失の等式を表す。これは、以下の形式で書き表すことができる。
【0075】
f(RC’)=(2×RC’−1)×Ron×Iph=Pcomm=0
【0076】
なお、ここでは、先の方程式は、上側半導体スイッチHSおよび下側半導体スイッチLSがほぼ等しい通流抵抗Ronを有する場合に対応する。これらの通流抵抗が、上側半導体スイッチHSに関してRonHとして知られ、下側半導体スイッチLSに関してRonLとして知られる、異なる値を有するときには、検証されるべき先の方程式は、
RC’×RonH×Iph+Pcomm=(1−RC’)×RonL×Iph
となる。
【0077】
以下、説明では、上側半導体スイッチHSおよび下側半導体スイッチLSがほぼ等しい通流抵抗Ronを有すると見なされ続ける。
【0078】
スイッチング損失Pcommの計算のために選択されるモデリングによれば、釣り合わせ値RC’は、バッテリ電圧Ubatおよび切り換えられた電流Iphにしたがって変化し得る。
【0079】
この釣り合わせプロセス13の第3のステップ16は、基準値RCとして解釈される基準アームにおけるこの釣り合わせ値RC’と設定デューティサイクルRCとの間のデューティサイクル差ΔRCを計算することから成る。
【0080】
このデューティサイクル差ΔRCは、全ての設定デューティサイクルRC,RC,RC,RCに加えられることにより、本発明に係る方法の出力12で、基準アームを釣り合わせつつコモンモード電圧Vを変えることによって相間の電圧差を維持する釣り合わせデューティサイクルRC’,RC’,RC’,RC’を生み出すことができるようにする。
【0081】
釣り合わせプロセス13の更なるステップ17は、全ての釣り合わせデューティサイクルRC’,RC’,RC’,RC’が0〜1の区間内に含まれるようにデューティサイクル差ΔRCを制限する。
【0082】
この図3と関連して、半導体スイッチ4により形成されるパワーブリッジの場合における以下の数値例が図3に詳細な態様で表される。三相電気負荷は、本発明に係るパワーブリッジを制御するための方法をうまく理解できるようにする。
【0083】
本発明に係る実施例
従来技術において知られるパワーブリッジ3を制御するための方法を表す先の実施例1,2の場合と同じ方法で、この実施例は、100Vの電圧Ubatを有するバッテリ2と、そのロータがブロックされる三相機械1とを備えるシステム1,2,3,4,5に基づく。
【0084】
電子制御ユニット5は、以下の3つの設定デューティサイクルを生み出し、
RC=0.60 RC=0.45 RC=0.45
これらは(接地端子Bに対して)以下の3つの設定相電圧をもたらす。
=60V V2=45V V=45V
【0085】
コモンモード電圧Vは、(V+V+V)/3=50Vである。
【0086】
相巻線に印加される電圧は、
−V=15V V−V=0V V−V=−15V
であり、これらは以下の相強度を生み出す(任意のユニットにおいて)。
Iph=+1 Iph=−1/2 Iph=−1/2
【0087】
パワーブリッジ3の電子制御ユニット5におけるソフトウェアモジュールの形態で実施されることが好ましい釣り合わせプロセス13は、相強度Iphが3つの相強度Iph,Iph,Iphの中で最も強いアームの選択18から始まる。この場合、これは、強度がIph=1=Iph(任意のユニットにおいて)であるアーム番号1である。
【0088】
釣り合わせプロセス13は、その後、以下を行う。
【0089】
第1のアームの釣り合わせデューティサイクルRC’1にしたがった、上側HS MOSFETおよび下側LS MOSFETにわたる抵抗Ron20に係る通流損失RC’×Ron×Iphおよび(1−RC’)×Ron×Iphのそれぞれの第1の計算19;
(このアームにおける)スイッチング損失Pcomm=1/3×Ron×Iph(この実施例では簡略化による)の第2の計算21;
以下の方程式、すなわち、
f(RC’)=(2×RC’−1)×Ron×Iph=Pcomm=0
を満たす、
言い換えると、スイッチング損失Pcommの簡略化された式、すなわち、
(2×RC’−1)×Ron×Iph+1/3×Ron×Iph=0、すなわち、RC’=1/3
を使用することによる、釣り合わせ値RC’の決定22。
【0090】
その後、釣り合わせプロセスは、選択18中に決定される基準アームに対応する設定デューティサイクルの基準値RCの取得23を行う。すなわち、RC=RC=0.6である。
【0091】
この取得23は、以下のデューティサイクル差の評価24を可能にする。
ΔRC=RC’=RC=0.33−0.60=−0.27
【0092】
このデューティサイクル差ΔRCは、マイナスであるとともに、絶対値が設定デューティサイクルRC=0.60,RC=0.45,RC=0.45よりも小さいため、制限機能25は、このデューティサイクル差が第3の計算26により供給されるデューティサイクルを釣り合わせる範囲に適合すると決定する。すなわち、
RC’=RC+ΔRC=0.60−0.27=0.33
RC’=RC+ΔRC=0.45−0.27=0.18
RC’=RC+ΔRC=0.45−0.27=0.18
である。
【0093】
釣り合わせ相電圧は以下の通りである。
V’=33V V’2=18V V’=18V
コモンモード電圧Vは、V’=23Vとなる。
【0094】
以下のように、機械1によって直面される相電圧差が変化しなかったことが検証される。
V’−V’=33V−18V=15V
V’−V’=18V−18V=0V
V’−V’=18V−33V=−15V
【0095】
この釣り合わせプロセス13の完了時、上側および下側のMOSFET4の全損失は以下の通りである。
上側MOSFET HS:RC’×Ron×Iph+1/3×Ron×Iph、すなわち、2/3Ron
下側MOSFET LS:(1−RC’)×Ron×Iph+(1−1/3)×Ron×Iph、すなわち、2/3Ron
【0096】
先の第1および第2の実施例の結果と比べると、本発明に係る方法によるアームにおける損失の釣り合わせは、上側MOSFET HSにより散逸されるべき損失を、従来の制御と比べて27%減少させることができるとともに、切り換えによる損失の最小化の方策と比べて33%減少させることができる。
【0097】
アームアセンブリに関しては、損失が4/3×Ronとなる。すなわち、損失は、従来のPWM制御(実施例1)により生み出される損失と同一であるが、切り換えによる損失の最小化の方策(実施例2)と比べると33%増大してしまった。
【0098】
しかしながら、インバータの性能の向上は、接続される回転電気機械1の始動段階中にあるいはロータがブロックされる場合に求められるものではない。他方で、構成要素の熱散逸の制限内で許容できる電流の最大化が、特に対象の回転電気機械1が自動車用途に関連するシステムに組み込まれて多くの停止/再始動サイクルに晒されるときに、より重要な基準となる。
【0099】
本発明は、前述した好ましい実施形態だけに限定されないことが理解されよう。
【0100】
特に、与えられた数値は、単に、本発明に係るパワーブリッジ3を制御するための方法の利点を具体的に明らかにするようになっている実施例を構成するにすぎない。
【0101】
本発明に係る方法は、制御装置5においてマイクロプログラムを用いて実施されることが好ましい。しかしながら、もう一つの方法として、この制御装置5は有線制御論理に基づくことができる。
【0102】
また、言及されたMOSFETタイプのトランジスタ4に限定されるものではなく、すなわち、当業者は、必要に応じて、本発明に係る制御装置5により制御され得るパワーブリッジにおいて同じ切り換え機能を果たすことができるバイポーラトランジスタ、他のタイプの電界効果トランジスタ、または、サイリスタなどの任意の他のタイプの半導体素子を実施することがきる。
【0103】
したがって、本発明は、以下の特許請求項により規定される範囲内にとどまる全ての想定し得る変形実施形態を組み込む。
図1
図2
図3