【実施例】
【0138】
[実施例1]
陽イオン交換(CEX)表面修飾膜の調製
この実験では、各種の密度の結合基を有する一連のCEX表面修飾膜を調製したが、結合基はこの場合、負に荷電したスルホン酸残基である。陽イオン交換基の密度は、表面修飾に用いた反応性溶液の配合(formulation)により制御した。より低い密度を達成するために、非荷電反応性単量体N,N−ジメチルアクリルアミドを種々の量で加えた。
【0139】
0−4.8重量%の範囲の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、0−4.8重量%の範囲のN,N−ジメチルアクリルアミド、および0.8重量%のN,N’−メチレンビスアクリルアミドを含有する一連の水溶液を調製した。0.65umの孔径評定および0.125mmの厚さを有する親水性超高分子量ポリエチレン膜を14cm×14cmの正方形断片に切断し、各断片を溶液の1つに30秒間沈めて、完全な濡れを確保した。過剰な溶液を除去し、膜を不活性雰囲気下で2MRadの電子線照射に曝露した。その後、膜を脱イオン水ですすぎ、風乾した。
【0140】
表2に調製したCEX表面修飾膜の変形形態を示す。リチウムイオン交換を用いて、陰イオン基密度が膜8(DMAM無添加)について0.13mmol/g、膜7(1:1AMPS:DMAM重量)について0.08mmol/gであったことが確認され、これらは、それぞれ34および21mMのリガンド密度に対応している。
【0141】
[実施例2]
静的容量測定を用いた凝集体結合選択性の分析
この実験では、実施例1で調製した様々な密度の結合基を有するCEX膜を、タンパク質単量体およびタンパク質凝集体に結合するそれらの選択性について試験した。
【0142】
約15%の凝集体を含有する、MAbIと呼ぶ部分的に精製したモノクローナル抗体の2g/L溶液を50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.0に溶解して調製した。14mmの膜ディスクを酢酸緩衝液に前浸漬し、次に0.5mLの抗体溶液に移した。溶液バイアルを15時間にわたって緩やかに振とうし、溶液中に残った分子量種をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。結果を表2に示す。
【0143】
MAbの一般的に低い収率は、この実験において膜に容量以下で負荷されたことを示すが、変形形態の1つである膜7は、二量体および高分子量(HMW)凝集体の事実上完全な除去を示した。このことは、強い凝集体結合選択性を達成することができることを示す。
【0144】
【表2】
【0145】
[実施例3]
部分的に精製したモノクローナル抗体(MAbI)のフロースルー式での凝集体の除去
代表的な実験において、フロースルー式でモノクローナル抗体を含有する試料からのタンパク質凝集体を除去するための本発明による膜の良好な使用が実証された。
【0146】
実施例1の膜7の5つの層を排出口付きポリプロプレン装置に封じ込め、前面膜ろ過面積を3.1cm
2、膜容積を0.2mLとした。この種の装置を以下で「マイクロ」装置と呼ぶ。4.5g/Lの精製MAbIをpH5.0の50mM酢酸緩衝液中に透析した。得られた物質は、部分的に精製したMAbIと呼び、これを約3.0mS/cmの伝導度を有するpH5の50mM酢酸で5%凝集体を含む1g/L MAbIの濃度に希釈した。次いで、物質(約80−100mL)を実施例1の膜7若しくは8を含有する0.2mL装置、またはPall Mustang(登録商標)S膜(Thermo Fisher Scientific,Inc.、Waltham、MAから市販されている)を含有する0.18mL Acrodisk装置に約1CV/minで通した。Mabを通す前に、膜装置を18mΩ水で濡らし、50カラム容積(CV)の50mM酢酸ナトリウム、pH5.0で平衡化した。MAb溶液のフロースルー物質を分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた分析のために収集した。結果を
図3A−3Cに示す。実施例1で立証されたように膜8と比較して低い密度のAMPS結合基を有する膜7が凝集体に結合する優れた選択性を示すことは、明らかである。
【0147】
表3に約20%凝集体破過で測定した3種の膜の凝集体結合能を要約する。示したように、膜7は、市販の膜、例えば、Pall Mustang(登録商標)S膜並びに膜8と比べて凝集体結合能のほぼ3倍の増加を示す。
【0148】
【表3】
【0149】
[実施例4]
部分的に精製したモノクローナル抗体(MAbII)のフロースルー式での凝集体の除去
他の実験において、異なるモノクローナル抗体を含有する試料からのタンパク質凝集体の除去における本発明による膜の良好な使用を実証する。
【0150】
プロテインA精製MAbIIを1Mトリス塩基を用いてpH5.0に、5M NaCl溶液を用いて3.4mS/cmの伝導度に調整した。部分的に精製したMabIIと呼ぶ、得られた物質は、6g/Lの濃度を有し、2.4%の凝集体を含んでいた。次いで、物質(約18mL)を実施例1の膜7若しくは8を含有する0.2mL装置に通した。Mabを膜に通す前に、膜を18mΩ水で濡らし、50カラム容積(CV)の50mM酢酸ナトリウム、pH5.0で平衡化した。MAb溶液のフロースルー物質を分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた分析のために収集した。最初の2画分は、それぞれ約4.5mLであったが、残りの10画分は、それぞれ0.85mLであった。MAb処理の後、膜を20CVの50mM酢酸ナトリウム、pH5.0で洗浄した。結合タンパク質を50mM酢酸ナトリウム、pH5.0+1M NaClを用いて30CVで溶出した。膜に負荷したMAbIIの総量は、531mg/mlであった。MAb単量体収率は、フロースルー物質中の単量体の量と膜を通過した全単量体との比較に基づいて計算した。
【0151】
図4Aに示すように、約13g/Lまでの凝集体負荷で膜7の破過プールに非常にわずかな凝集体(プール中0.1%未満)が認められたが、膜8については凝集体破過が収集された最初の画分においてさえ認められ、膜7の優れた凝集体結合能が示唆される。膜8の破過プール中の凝集体の量は、0.8%であった。約13g/Lの凝集体負荷において、単量体収率は、膜8および膜7でそれぞれ93および86であった。収率はわずかに低かったが、凝集体の破過は、膜7については認められなかった。凝集体のより遅い破過は、より高い凝集体結合能の兆候である。これらの破過曲線は、分取規模の凝集体除去プロセスまたは装置の指針とするために用いることができる。例えば、膜7を含有する装置は、0.1%未満の凝集体のプール純度を達成するために少なくとも500g/Lまで負荷することができる。一般的に、単量体の収率を増加させ、プロセスに関連する総費用を低減するために、より高い負荷が非常に望ましい。さらに、より高い収率は、凝集体の破過が認められるまで負荷を増加させることまたは溶液の状態を変化させることにより達成することができる。フロースルーデータは、凝集体の除去に関する膜7の優れた性能を明確に示している。
【0152】
図4Bに膜7の2種のロットを用いた2回の異なる実験における破過プール中の単量体収率および凝集体レベルを示す。実験2では530mg/mlの実験1と比べて700mg/mlまで負荷した。溶液の状態(pHおよび伝導度)は、両実験で同様であったが、MAb濃度は、異なっていた(実験1:6g/L;実験2:4.4g/L)。プール中の凝集体の量は、両実験で同様であったが、収率の多少の差があった(しかし、収率の差は、MAb濃度を測定するために用いた分析技術の一般的な変動に起因する可能性がある)。興味深いことに、700g/mLのMAb負荷においてさえ、プール中の凝集体の量は0.25%にすぎず(実験2;
図4B)、これにより、凝集体に対する結合能が15g/Lを超えることがわかる。
【0153】
[実施例5]
高pH誘導凝集体を含有する部分的に精製したモノクローナル抗体(MabIII)のフロースルー式での凝集体の除去
他の実験において、さらに他のモノクローナル抗体MAbIIIを含有する試料からのタンパク質凝集体の除去における本発明による膜の良好な使用を実証する。
【0154】
部分的に精製したモノクローナルIgG原料(MAbIII)の溶液を、3.5mS/cmの伝導度を有するpH5の50mM酢酸緩衝液に6g/Lに溶解して調製した。3.1cm
2のろ過面積および0.2mlの容積を有するマイクロろ過装置を5層の膜7を用いて前成形した。Mab溶液を通す前に、膜を18mΩ水で濡らし、50カラム容積(CV)の50mM酢酸ナトリウム、pH5.0で平衡化した。MAb溶液の流速は、2.5CV/minであり、分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた分析のために画分を収集した。膜上に負荷したMAbIIIの総量は、930mg/mlであった。単量体収率は、フロースルー物質中の単量体の量と膜を通過した全単量体との比較に基づいて計算した。
【0155】
MAbIおよびIIについての実施例3および4と同様に、膜7は、
図5に示すようにMAbIII凝集体に対して高い選択性および高い結合能(>10mg/mL)を示した。
【0156】
[実施例6]
タンパク質単量体およびタンパク質凝集体の精製
この実験において、膜7のさらなる特徴付けのために純抗体単量体および凝集体の製剤を分取SECを用いて得た。
【0157】
単量体および凝集体は、Sephacryl S−300HR(GE Healthcare)樹脂を用いて混合物から精製した。4.5mLの部分的に精製した4.5−6g/LのMAbを330mLカラムに通した。MAbの注入の前に、カラムを1カラム容積(CV)のPBSで平衡化した。2つの溶出画分、すなわち、凝集体および単量体画分を収集した。凝集体画分は、3000MWカットオフAmicon UF膜を用いて10倍に濃縮し、分析SECを用いて分析した。凝集体含量は、約0.5g/Lの濃度を有するこれらの画分中70%を超えていた。
【0158】
[実施例7]
立体質量作用(SMA)モデルパラメーター:特性電荷(v)およびSMA平衡定数(K
SMA)の測定
以下の実験は、本発明による膜について観測された凝集体結合選択性のメカニズムを解釈するためにデザインした。立体質量作用(SMA)モデル(例えば、Brooks C.A.およびCramer S.M.、Displacemnent profiles and induced salt gradients、AIChE Journal、38巻、1969−1978頁、1992年参照)を用いて、表面との凝集体相互作用の数(v)並びに表面に対する単量体および凝集体の親和性を反映する、単量体および凝集体の親和定数(K
SMA)を測定した。
【0159】
SMAモデルを用いて非線型性イオン交換相互作用の複雑性の一部を説明するのに成功した。モデルは、直接的なタンパク質−リガンド相互作用に起因して「失われる」(例えば、または結合に利用できない)部位およびタンパク質障害に起因して立体的に「失われる」部位の両方を考慮することによって、タンパク質分子に利用できない部位を考慮に入れている。立体障害に起因して「失われた」部位の量は、結合タンパク質濃度に比例すると仮定する。単一成分系のSMA式は、以下によって与えられる。
【0160】
【数1】
ここで、QおよびCは、それぞれ結合および遊離タンパク質濃度である。Kは、SMA平衡会合定数であり、vは、特性電荷であり、σは、立体因子であり、C
saltは、遊離塩濃度であり、Q
saltは、イオン交換に利用できる結合塩濃度であり、Λは、樹脂の総イオン容量である。特性電荷は、イオン性相互作用によりタンパク質により占有された修飾固体担体上の部位の平均数であり、立体因子は、吸着剤への結合時にタンパク質により立体的に障害される部位の数である。
【0161】
吸着等温式の線型領域(Qが非常に小さい場合)については、Λ>>(σ+v)Qであり、我々は上式を以下に近似することができる。
【0162】
【数2】
【0163】
項Q/Cは、分配係数(K
p)と定義され、分配係数の比は、選択性(S)と定義される。分配係数の決定の代替方法は、線型領域における吸着等温式の勾配を計算することによるものである(例えば、米国特許第8,067,182号に記載されている)。
【0164】
1つの実験において、0.2mL膜マイクロ装置(膜7または8を含有する)を水を用いて濡らし、20CV(4mL)の50mM酢酸ナトリウム、pH5.0(緩衝液A)で平衡化した。100μlの0.5g/L精製単量体または凝集体(実施例に記載の精製プロセスによる)を注入した。結合タンパク質を緩衝液Aおよび緩衝液A+500mM NaClの20CV勾配を用いて溶出した。無勾配ランのための塩濃度は、タンパク質が溶出する塩濃度(伝導度)範囲に基づいて選択した。無勾配ランは、100μlのタンパク質を膜上に負荷することにより実施した。ランニングバッファーは、緩衝液A+塩(上述のように用いられるタンパク質溶出範囲に基づく種々の塩濃度)であった。溶出クロマトグラムは、UV280またはUV230シグナルを用いてモニターし、タンパク質ピークでの保持容量を記録した。SMAパラメーターは、Pedersenら(Pedersenら、Whey proteins as a model system for chromatographic separation of proteins、J.Chromatogr.B、790巻、161−173頁、2003年)に記載されているような無勾配溶出方法を用いて測定した。
【0165】
表4に膜8および7におけるMAbIのSMAパラメーターを要約する。表4に膜8および7におけるMAbIIのSMAパラメーターを要約する。K
SMAは、それぞれ膜8および7のイオン容量を34および21mMと仮定して求めた。78%の膜気孔率を用いた。
【0166】
【表4】
【0167】
【表5】
【0168】
両MAbについて、単量体および凝集体の特性電荷の差が膜7についてより高いことが認められ、単量体より凝集体で多数の相互作用が示唆される。さらに、親和性(K
SMAからわかるように)が膜8より膜7に対して高い。
【0169】
図6Aおよび6Bに示すように、凝集体の分配係数(親和性の尺度)が膜8および7の両方の場合に単量体について観測されたものより高いことが認められ、それにより、単量体より凝集体に対する強い結合が示唆される。その効果が膜7の場合に膜8と比べてより顕著であることも認められ、凝集体除去に関する前者の優れた性能が実証されている。
【0170】
図7に示すように、膜7は、すべての塩濃度においてpH5.0で2種のMAb(MAbIおよびMABII)に対して膜8より高い選択性(S=凝集体のKpと単量体のKpとの比)を有する。特に、選択性は、両膜について塩濃度が低下するにつれて増加する。そして、興味深いことに、選択性の増加は、膜8より膜7ではるかに高く、結合基のより低い密度でさえより高い選択性を実現できたことがわかる。また、
図7に示すように、最大の性能の恩恵(より高い単量体収率およびより高い凝集体除去)がより低い塩濃度(またはより高い選択性)でさえも実現された。
【0171】
[実施例8]
膜7の操作ウインドウの決定
代表的な実験において、実験計画法(DoE)アプローチを用いて、実際的なプロセスウインドウ、すなわち、溶液pH、イオン伝導度および本発明による膜上へのタンパク質負荷の組合せを達成することができることが示された。実験計画法(DoE)アプローチは、信頼できる操作条件を明らかにするための広く受け入れられたエンジニアリングツールである(例えば、Anderson M.J.およびWhitcomb P.J.、2010 Design of Experiments.Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、1−22頁参照)。
【0172】
操作ウインドウを決定するために3要因を用いたDoEアプローチを用いた中心複合応答局面を実施した。検討したパラメーターは、pH、伝導度および凝集体負荷であった。様々な量の部分的に精製したNAbI(0.5−2.1mL)を様々な条件(表5)で13μlの膜とともに20時間インキュベートした。次いで、上清を分析SECを用いて凝集体および収率について分析した。
【0173】
【表6】
【0174】
このDoE試験により、収率および凝集体除去に関する膜性能を測定するうえでの3つの重要な操作パラメーター、すなわち、負荷、pHおよび伝導度が強調され、所望の操作ウインドウを定義する簡単な手順が示唆された。結果を
図8および9にプロットする。
【0175】
[実施例9]
熱誘導凝集体を含有する原料流を用いた抗体精製時の下流ウイルスフィルターの保護における本発明による膜の使用
この実施例では、本明細書で述べる1つまたは複数の陽イオン交換基を含む膜を良好に用いて、精製プロセスにおける下流ウイルスフィルターの処理量を増加させることができることを示す。
【0176】
一般的に、抗体原料を前処理するための表面修飾膜をウイルスろ過の前に用いることができることが以前に報告された(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,118,675号およびPCT公開番号WO2010098867参照)。ウイルスろ過の費用は高いため、フィルターの処理量の増加は、タンパク質製品の最終価格に直接的な影響を及ぼす。EMD Millipore Corporationから入手できるもの、例えば、Viresolve(登録商標)PrefilterおよびViresolve(登録商標)Pro Shieldを包含するウイルスフィルターの処理量を特に増加させるための多くの市販製品が現在販売されている。しかし、本明細書で示すように、本発明による膜は、従来技術で記載または現在市販されているものと比較して、下流ウイルスフィルターを保護する点がはるかに優れている。
【0177】
ウイルスフィルターの保護の試験用の熱ショックポリクローナルIgG原料は、以下の手順により、SeraCare Life Sciences(Milford、MA)製のIgG(8.1または16.0mS/cm(NaClを用いた)のpH5、50mM酢酸塩中ヒトガンマグロブリン5%溶液、カタログ番号HS−475−1L)を用いて0.1g/Lで調製した。1リットルの0.1g/L溶液(8.1または16.0mS/cmの)を65°セ氏に設定した恒温水浴中で達温後1時間にわたって加熱しながら170rpmで撹拌した。溶液を熱および撹拌から除去し、3時間にわたって室温に冷却し、次いで4℃で一夜冷蔵した。翌日、熱ショックポリクローナルIgGを室温まで加温した。適切な無菌化ろ過済みpHおよび伝導度緩衝液(8.1または16.0mS/cm)中0.1g/LポリクローナルIgGの新鮮な溶液を調製した。
【0178】
処理量試験用の最終溶液は、9容量%の熱ショックポリクローナルIgG保存溶液および新たに調製した0.1g/LポリクローナルIgG溶液を用いて調製した。最終pHおよび伝導度の調整は、10M HCl、NaOHまたは4M NaClを用いて行った。3.1cm
2のろ過面積を有するマイクロろ過装置を3層の膜を用いて前成形し、Viresolve(登録商標)Pro装置(EMD Millipore Corp.、Billerica、MA)と1:1の面積比で直列に配置した。両装置を緩衝液のみ(pH5、50mM酢酸塩、8.1または16.0mS/cm)を用いてあらかじめ濡らし、排出して空気を除去した。30psiの一定圧力下で、緩衝液mL/min単位の処理量の初期の流束を15分間の期間にわたり質量により測定して、初期の定流束値を求めた。原料を30psiの熱ショックポリクローナルIgG原料に切り替え、流束が初期の緩衝液のみの流束の25%に減衰するまで、体積処理量を測定し、時間に対してプロットした。熱ショックポリクローナルIgGの総処理量をV75においてL/m
2単位で測定し、ポリクローナルIgGのkg/m
2膜に換算した。表7からわかるように、膜7は、ウイルス除去フィルターに対して膜8より優れた保護(より大きい体積処理量)を提供した。
【0179】
【表7】
【0180】
[実施例10]
モノクローナル抗体原料流を用いた下流ウイルスフィルターの保護における本発明による膜の使用
部分的に精製したモノクローナルIgG原料(MAbIII)の溶液は、8.5mS/cm(添加NaClを用いた)の伝導度を有するpH5、50mM酢酸緩衝液中6g/Lに調製した。MAbIIIは、高pH(11)であらかじめショックを加えて、約4%の総凝集体(SEC−HPLCにより測定)を発生させた。3.1cm
2のろ過面積を有するマイクロろ過装置を3層の膜を用いて前成形し、Viresolve(登録商標)Pro装置(EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)と1:1の面積比で直列に配置した。両装置を無菌化ろ過済み緩衝液のみ(pH5、50mM酢酸塩、8.5mS/cm)を用いてあらかじめ濡らし、排出して空気を除去した。ウイルス膜も30psiの一定背圧を発生させた一定流量で10分間前処理した。次いで、MAbIII溶液を直列の装置に200L/(m
2−時間)の定流量で供給し、背圧対時間を測定した。実測背圧が30psiに到達したエンドポイントで総体積処理量を測定した。30psiカットオフにおけるL/m
2処理量を膜1m
2当たりのMAbのkg量に換算した。
【0181】
下の表8からわかるように、膜7は、ウイルス除去フィルターに対して膜8より優れた保護(より大きい体積処理量)をもたらした。
【0182】
【表8】
【0183】
[実施例11]
膜7と流体連通しているウイルスフィルターの性能に対する滞留時間の影響
この代表的な実験において、ウイルスろ過の性能に対する滞留時間の影響を検討する。ここで、ウイルスフィルターは、フロースルー精製プロセスにおける膜7の下流に配置されている。膜7を含有する装置およびウイルスろ過ステップへのより低い流速がウイルスフィルターのより高い処理量をもたらすことが認められる。
【0184】
膜面積3.1cm
2および膜容積0.12mLを有する膜7を含有する3層装置を3.1cm
2の膜面積を有するウイルスろ過装置に直列に接続する。20mM酢酸ナトリウムpH5.0緩衝液中約3mg/mLのポリクローナルヒトIgG(Seracare)を2つの接続した装置により処理する。実験は、2種の別個の流速100および200LMHで実施する。0.22μm無菌化フィルターを陽イオン交換クロマトグラフィー装置とウイルスろ過装置との間に配置する。
【0185】
種々の流量におけるアセンブリを通しての圧力を測定するために圧力センサーを用いる。通常、約50psiの圧力は、ウイルスろ過膜の汚染または閉塞の兆候である。
図10に示すように、実験をより低い流速(すなわち、100LMH)で実施する場合、試料をより高い流速(すなわち、200LMH)で処理する場合と比べて、より多くの試料容積をウイルスろ過膜により処理することができる(すなわち、より高い処理量)。これは、高分子量IgG凝集体の結合の改善をもたらし、それにより、ウイルスフィルターの早期の閉塞を予防し得る、陽イオン交換クロマトグラフィー装置における試料のより長い滞留時間に起因すると思われる。
【0186】
[実施例12]
いくつかのフロースルー不純物除去ステップを1つに接続する
この代表的な実験において、純度および収率目標を満たしながら、いくつかの不純物除去ステップを1つの簡単な操作に接続する実現可能性を示す。これは、個々の装置、すなわち、活性炭、陰イオン交換クロマトグラフィー装置(例えば、ChromaSorb(商標))、pH変更用インラインスタティックミキサーおよび/またはサージタンク、本明細書で述べる凝集体除去用陽イオン交換フロースルー装置並びにウイルス除去装置(例えば、Viresolve(登録商標)Pro)を接続することによって行う。
【0187】
据付け、平衡化および手順は、以下に述べる。
【0188】
フロースルー精製トレインは、5つの主要な単位操作、すなわち、活性炭(前面に任意選択のデプスフィルター付き)、陰イオン交換クロマトグラフィー装置(例えば、ChromaSorb)、インラインpH調整用インラインスタティックミキサーおよび/またはサージタンク、凝集体除去用陽イオン交換フロースルー装置並びにウイルスろ過装置(例えば、Viresolve(登録商標)Pro)からなる。
【0189】
図11にこれらの単位操作を接続する順序を示す。
【0190】
必要なポンプ、圧力、伝導度およびUVセンサーをさらに包含することができる。
【0191】
すべての装置は、異なるステーションで個別に濡らし、次いで組み立てる。装置は、製造業者のプロトコールに従って濡らし、前処理する。手短に述べると、デプスフィルター(AIHCグレード)を100L/m
2の水と続いて5容積の平衡化緩衝液1(EB1;1Mトリス塩基pH11でpH7.5に調整したプロテインA溶出緩衝液)で洗い流す。0.55kg/LのMAb負荷を得るために、参照により本明細書に組み込まれる2011年8月19日に出願した同時係属米国仮特許出願第61/575,349号に記載のように2.5mLの活性炭を2.5cm Omnifitカラムに充填する。カラムを10CVの水で洗い流し、次いでpHがpH7.5に安定化するまで、EB1で平衡化する。4.3kg/Lの抗体負荷を得るために2つのChromaSorb装置(0.2および0.12mL)を直列に接続する。装置を水で12.5CV/minで少なくとも10分間、その後、5DVのEB1で濡らす。12のエレメントを有するディスポーザブルらせん状スタティックミキサー(Koflo Corporation、Cary、IL)を用いてインラインpH調整を行う。膜7を含有する2つの1.2mL装置を並列に接続して凝集体を除去する。したがって、それらは、約570mg/mLの抗体まで負荷することができる。
【0192】
それらを10DVの水と続いて5DVの平衡化緩衝液2(EB2;1M酢酸を用いてpH5.0に調整したEB1)で濡らす。装置を5DV(装置容積)のEB2+1M NaClでさらに処理し、次いで、5DVのEB2で平衡化する。3.1cm
2のVireSolve(登録商標)Pro装置を30psiに加圧した水で少なくとも10分間濡らす。次いで、流速が連続3分間一定になるまで、流速を1分毎にモニターする。すべての装置が濡れ、平衡化した後、上記の図に示すようにそれらを接続する。すべての圧力表示およびpH表示が安定化するまで、EB1を全系に流す。平衡化の後、原料(pH7.5に調整したプロテインA溶出液)をフロースルートレインに通す。ラン中、IgG濃度および不純物レベル(HCP、DNA、浸出PrAおよび凝集体)をモニターするために試料をサージタンクの前およびViresolve(登録商標)Proの後で採取する。原料を処理した後、システムを3死容積のEB1で洗い流して、装置内および配管内のタンパク質を回収する。
【0193】
接続フロースループロセスの原料は、回分式プロテインAプロセスで生成したMAbIVのプロテインA溶出液である。このMAb中の凝集体の自然レベルは1%を超えず、そのため、凝集体のレベルを増加させるための特殊な処置を開発した。緩やかに撹拌しながら水性NaOHで溶液のpHを11に上昇させ、1時間保持した。次に緩やかに撹拌しながら水性HClでpHを徐々にpH5に低下させた。pHサイクルをさらに4回反復した。凝集体の最終レベルは、SECにより測定したとき、約5%であり、主としてMAbIV二量体および三量体からなっている。次いで、原料をpH7.5、伝導度が約3mS/cmのトリス−HCl緩衝液中に透析した。
【0194】
このランで処理したMAb原料は、0.6mL/minの流速の102mLの13.5mg/mL MAbIVである。
【0195】
ChromaSorb後の装置負荷の関数としてのHCP破過は、10ppmの上限を下回っている(
図12)。凝集体は、CEX装置により5%から1.1%に減少する(
図13)。接続プロセスのMAbIVの収率は、92%である。Viresolve(登録商標)Pro装置における処理量は、>3.7kg/m
2であった。
【0196】
実施例13−19は、陽イオン交換樹脂または膜の代わりの固体担体としての翼状繊維を用いてフロースルー式で凝集体を除去するための組成物を製造する実現可能性を実証している。
【0197】
[実施例13]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾したポリマー強陽イオン交換(CEX)樹脂の調製
この代表的な実験において、グラフトAMPS/DMAMコポリマー表面を有し、負に荷電したスルホン酸残基である各種密度の結合基を有する一連の陽イオン交換(CEX)樹脂(強CEX)を調製した。強陽イオン交換基のリガンド密度および組成は、表面の修飾に用いた反応性溶液の組成により制御した。強陽イオン交換基の密度を変化させるために、AMPSおよびDMAMを様々なモル比で添加した。
【0198】
機械的攪拌機および滴下漏斗を備えた1000mL三頚フラスコに830mLの規定の容積に印しを付ける。このフラスコ中で、8.25gの水酸化ナトリウムを429.34gの脱イオン水に溶解する。溶液を0℃に冷却し、撹拌しながら13.68gのAMPSを数回に分けて徐々に加える。その後、26.22gのDMAMを加える。65%硝酸および/または1M水酸化ナトリウムの添加により、溶液のpH値を6.0−7.0に調整する。50ミクロンの平均粒径を有する400mLの沈降性ポリマーベースのビーズ樹脂を緩やかに撹拌しながら(120rpm)溶液に加える。反応混合物の総容積は、脱イオン水の添加により830mLに調節する(印しに従って)。混合物のpH値を65%硝酸の添加により再び6.0−7.0のpHに調整する。混合物を緩やかに撹拌し(120rpm)、40℃に加熱する。6.75gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)および2.96gの65%硝酸の15gの脱イオン水中溶液を激しい撹拌(220rpm)のもとで速やかに加える。次いで、反応混合物を40℃で120rpmで3時間撹拌する。
【0199】
その後、反応混合物をガラスフリット(多孔度P3)上に注ぎ、上清を吸引により除去する。残留樹脂を次の溶液で連続的に洗浄する:3x400mL脱イオン水、10x400mL 1M硫酸+0.2Mアスコルビン酸、3x100mL脱イオン水、10x400mL熱脱イオン水(60℃)、2x400mL脱イオン水、2x400mL 1M水酸化ナトリウム、2x100mL脱イオン水(脱イオン水による2回目の洗浄ステップ中に25%塩酸でpHを6.5−7.0に調整する)、2x400mL 70%エタノール/30%脱イオン水、2x100mL脱イオン水および2x100mL 20%エタノール/80%脱イオン水+150mM NaCl。
【0200】
上記の洗浄操作を完了した後、樹脂を20%エタノール、80%脱イオン水および150mM NaClの溶液中1:1(v/v)懸濁液として保存する。
【0201】
表9にこの実施例に従って調製した各種モル比のAMPSおよびDMAMを有する合成スルホン酸含有強CEX樹脂を示す。
【0202】
【表9】
【0203】
[実施例14]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾したポリマー強陽イオン交換(CEX)樹脂を用いたモノクローナル抗体原料からの凝集体の除去
樹脂試料ロット番号12LPDZ119、12LPDZ128および12LPDZ129を6.6mmの内径を有するOmnifit(登録商標)クロマトグラフィーカラムに3cmの層高まで充填して、約1mLの充填樹脂層を得た。AKTA Explorer 100(クロマトグラフィーシステム)を装着し、フロースルークロマトグラフィーについてこれらのカラムをスクリーニングするのに適する緩衝液で平衡化した(表10)。樹脂試料12LPDZ119、12LPDZ128および12LPDZ129を含有するクロマトグラフィーカラムを平衡化緩衝液を有するクロマトグラフィーシステム上に装着した。原料は、ProSep(登録商標)Ultra Plusアフィニティークロマトグラフィー媒体を用いて精製し、2Mトリス塩基でpH5.0に調整したIgG1(MAbB)であった。プロテインAプールの最終MAbB濃度は、13.8mg/mLであり、2.05%の凝集生成物を含有し、伝導度は、約3.5mS/cmであった。樹脂に3分の滞留時間で、414mg/mLの負荷密度まで負荷した。
【0204】
【表10】
【0205】
フロースルー物質を2mL画分で収集し、NanoDrop2000分光光度計で総タンパク質濃度について分析し、凝集体含量をサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)により定量した。凝集体定量試験は、0.2Mリン酸ナトリウムpH7.2の平衡化緩衝液を用いてTosoh Bioscience TSKGel G3000SWXL、7.8mmx30cm、5μm(カタログ番号08541)カラムで実施した。結果は、mAbB単量体タンパク質が凝集生成物より比較的にはるかに低い累積タンパク質負荷でフロースルー画分に高濃度で収集されることを示している。
【0206】
ロット#12LPDZ119については、414mg/mLの累積タンパク質負荷で368.1mgまたは約88.9%のタンパク質が回収され、凝集体レベルは、2.05%からフロースルー画分における0.39%に低下し、ストリッププールは、21.2%の凝集体を含有しており、凝集体を選択的に保持する樹脂の能力が示唆される。
【0207】
ロット#12LPDZ128については、414mg/mLの累積タンパク質負荷で357.9mgまたは約86.4%のタンパク質が回収され、凝集体レベルは、2.05%からフロースルー画分における0.14%に低下し、ストリッププールは、13.4%の凝集体を含有しており、凝集体を選択的に保持する樹脂の能力が示唆される。
【0208】
ロット#12LPDZ129については、414mg/mLの累積タンパク質負荷で359.9mgまたは約86.9%のタンパク質が回収され、凝集体レベルは、2.05%からフロースルー画分における0.52%に低下し、ストリッププールは、16.8%の凝集体を含んでおり、凝集体を選択的に保持する樹脂の能力が示唆される。
【0209】
図14にロット#12LPDZ119についてのmAbB単量体および凝集体の破過を示し、
図15にロット#12LPDZ128についてのMAbB単量体および凝集体の破過を示し、
図16にロット番号12LPDZ129についてのMAbB単量体および凝集体の破過を示す。
【0210】
図14に示すように、ロット#12LPDZ119の樹脂について、フロースルー画分に収集されたMAbBの濃度は、110mg/mLの累積タンパク質負荷によりその最初の負荷濃度の90%を超える値に達する。これに反して、凝集体レベルは、414mg/mLの累積タンパク質負荷でわずか0.56%または最初の負荷濃度の27.8%であった。これにより、樹脂が、タンパク質単量体(MAb)がその総初期質量の88.9%で回収されることを可能にすると同時に凝集種を高タンパク質負荷に選択的に保持することが示唆される。
【0211】
図15に示すように、ロット#12LPDZ128の樹脂について、フロースルー画分に収集されたmAbBの濃度は、138mg/mLの累積タンパク質負荷によりその最初の負荷濃度の90%を超える値に達する。これに反して、凝集体レベルは、414mg/mLの累積タンパク質負荷でわずか0.42%または最初の負荷濃度の20.9%であった。これにより、樹脂が、タンパク質単量体がその総初期質量の86.4%で回収されることを可能にすると同時に凝集種を高タンパク質負荷に選択的に保持することが示唆される。
【0212】
図16に示すように、ロット#12LPDZ129の樹脂について、フロースルー画分に収集されたmAbBの濃度は、110mg/mLの累積タンパク質負荷によりその最初の負荷濃度の90%を超える値に達する。これに反して、凝集体レベルは、414mg/mLの累積タンパク質負荷でわずか0.99%または最初の負荷濃度の49.2%であった。これにより、樹脂が、タンパク質単量体がその総初期質量の86.9%で回収されることを可能にすると同時に凝集種を高タンパク質負荷に選択的に保持することが示唆される。
【0213】
[実施例15]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾したポリマー強陽イオン交換(CEX)樹脂の調製
250mLガラスジャー中に、Toyopearl HW75−Fクロマトグラフィー樹脂の64ml湿潤ケーキを加えた。次に、115gの5M水酸化ナトリウム、18.75gの硫酸ナトリウムおよび4mLのアリルグリシジルエーテル(AGE)を樹脂を含有するジャーに加えた。次いで、ジャーを50℃のハイブリダイザー中に入れ中速度で一夜回転させた。翌日、樹脂を焼結ガラスフィルターアセンブリ(EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)でろ過排液し、湿潤ケーキをメタノールで洗浄し、次いで、脱イオン水ですすいだ。ガラスバイアル中に、AGE活性化樹脂の10mLの湿潤ケーキを加えた。ガラスバイアルに、0.2gの過硫酸アンモニウム、0.3gのAMPS、1.2gのDMAMおよび48gの脱イオン水を加え、バイアルを60℃に16時間加熱した。翌日、樹脂を焼結ガラスフィルターアセンブリ(EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)でろ過排液し、湿潤ケーキをメタノールおよび脱イオン水の溶液で洗浄し、樹脂をロット#1712とラベル表示した。
【0214】
[実施例16]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾したポリマー強陽イオン交換(CEX)樹脂を用いたモノクローナル抗体原料からの種々の滞留時間での凝集体の除去
実施例14からの得られた樹脂ロット#1712を6.6mmの内径を有するOmnifit(登録商標)クロマトグラフィーカラムに3cmの層高まで充填して、約1mLの充填樹脂層を得た。AKTA Explorer 100(クロマトグラフィーシステム)を装着し、フロースルークロマトグラフィーについてこれらのカラムをスクリーニングするのに適する緩衝液で平衡化した(実施例14と同様)。樹脂試料を含有するクロマトグラフィーカラムを平衡化緩衝液を含むクロマトグラフィーシステム上に装着した。原料は、ProSep(登録商標)Ultra Plusアフィニティークロマトグラフィー媒体を用いて精製し、2Mトリス塩基でpH5.0に調整したIgG1(mAb5)原料であった。プロテインAプールの最終濃度を4mg/mLに希釈し、5.5%の凝集生成物を含有し、伝導度は、約3.2mS/cmであった。樹脂に1、3または6分の滞留時間で、144mg/mLの負荷密度まで負荷した。3分の滞留時間のストリップピーク画分は、95.6%の凝集体を含有しており、凝集種に対する高いレベルの選択性が示唆される。結果を下の表11に示す。
【0215】
表11にpH5.0における6、3または1分の滞留時間でのMAb5を含むロット#1712における単量体および凝集体の保持を示す。表11に示すように、大抵は、試験したすべての滞留時間について単量体種を凝集種と比較して比較的早期に原料濃度に近い濃度で収集することができ、これは、選択性が流速に対して比較的に鈍感であることを示唆するものである。
【0216】
【表11】
【0217】
図17にpH5および3分の滞留時間におけるMAb5を含むロット番号1712のクロマトグラムを示す。
図17に示すように、生成物の大部分がフロースルーで収集され、これは、タンパク質のUVトレースの比較的に速やかな破過によって示されている。ストリップピークサイズは、一般的に条件および負荷された総質量によって異なるが、わずか5.5%の凝集体を有する負荷材料と比較して、95.6%と凝集体種に比較的富んでいた。
【0218】
[実施例17]
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用い、その後、クロマトグラフィー樹脂を用いたモノクローナル抗体の精製
本明細書で述べる代表的な実験において、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用い、その後、本発明によるクロマトグラフィー樹脂を用いて、モノクローナル抗体を精製した。この実験の結果は、フロースルー式で行う場合に、本方法が伝導度の増加または希釈の使用を必要としなかったという予期しない所見を示すものである。
【0219】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の細胞培養においてIgG1(MAb5)を発現させた。細胞培養は、2段階デプスろ過とそれに続く無菌化ろ過により清澄化した。0.5mg/mLのmAb5を含有する清澄化細胞培養をProSep(登録商標)Ultra Plusアフィニティークロマトグラフィー媒体(プロテインA)を用いて最初に精製した。用いたプロテインAクロマトグラフィー溶出緩衝液は、100mM酢酸であった。プロテインA溶出プールを2Mトリス塩基を用いてpHを5.0に調整し、得られた溶液は、約3.5mS/cmの伝導度を有していた。樹脂ロット番号1712は、3分の滞留時間で本明細書で述べた方法によりフロースルー式で操作し、フロースルー画分を収集し、小分割量を分析のために留保した。
【0220】
フロースルー画分をプールし、pH7.5に調整し、塩耐性陰イオン交換膜吸着剤であり、5kg/Lに負荷したChromaSorbまたは陰イオン交換樹脂であり、150mg/mLに負荷したFractogel TMAEのいずれかを用いてフロースルー式で流した。各画分についてタンパク質濃度、凝集体レベル、浸出プロテインAおよびチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)を分析した。結果を下の表12に示す。
【0221】
【表12】
【0222】
一般的に、クロマトグラフィー精製プロセスは、陰イオン交換クロマトグラフィーの前のステップとして伝統的な結合および溶出陽イオン交換クロマトグラフィーを含み、伝導度を陰イオン交換フロースルークロマトグラフィーに適するレベルに低下させるために希釈ステップまたは緩衝液交換ステップをさらに必要とする。しかし、表12に示すように、本発明による陽イオン交換媒体を用いる本明細書で述べたプロセスは、機能するために伝導度の増加を必要とせず、したがって、精製ステップの前の希釈ステップまたは緩衝液交換ステップを必要としない。
【0223】
[実施例18]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾した強陽イオン交換(CEX)翼状繊維の調製
この代表的な実験において、陽イオン交換翼状繊維を固体担体として用いた。
【0224】
1Lガラスジャー中で、20gの乾燥ナイロン多葉状または翼状繊維を400gの4M水酸化ナトリウム、24gの硫酸ナトリウムおよび160mLのアリルグリシジルエーテル(AGE)と混合した。次いで、ジャーを50℃のハイブリダイザー中に入れ中速度で一夜回転させた。翌日、繊維を焼結ガラスフィルターアセンブリでろ過し、次いで、繊維をメタノールで洗浄し、Milli−Q水ですすいだ。一日後、繊維を水で、続いてメタノールで、次いで再び水で洗浄し、吸引して乾燥ケーキとし、真空オーブン中で50℃で1日間乾燥した。得られた試料を試料#1635とラベル表示した。3つの別個のガラスバイアルにおいて、試料#1635の2g乾燥ケーキ(AGE活性化繊維)を秤取し、グラフトによるさらなる修飾のためにガラスバイアルに加えた。ガラスバイアルに、過硫酸アンモニウム、AMPS、DMAMおよび脱イオン水を表13に指定した量で加え、バイアルを連続的に回転しながら60℃に16時間加熱した。翌日、繊維試料を焼結ガラスフィルターアセンブリでろ過し、湿潤ケーキを脱イオン水の溶液で洗浄した。繊維を含むバイアルをロット#1635−1、1635−2および1635−5とラベル表示した。次に、ロット#1635−5は、約28μmol/mLであることが認められた小イオン容量のために滴定した。次いで、試料#1635−1および1635−2も28μmol/mL未満の小イオン容量を有していたことが推測された。
【0225】
【表13】
【0226】
[実施例19]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾した強陽イオン交換(CEX)翼状繊維を用いたモノクローナル抗体原料からの凝集体の除去
実施例17から得られた修飾翼状繊維ロット#1635−1、#1635−2および#1635−5を6.6mmの内径を有するOmnifit(登録商標)クロマトグラフィーカラムに3cmの層高まで充填して、約1mLの充填繊維層を得た。AKTA Explorer 100(クロマトグラフィーシステム)を装着し、フロースルークロマトグラフィーについてこれらのカラムをスクリーニングするのに適する緩衝液で平衡化した(実施例13と同様)。翼状繊維試料を含有するクロマトグラフィーカラムを平衡化緩衝液を含むクロマトグラフィーシステム上に装着した。原料は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製し、2Mトリス塩基でpH5.0に調整したIgG1(mAb5)原料であった。プロテインAプールの最終濃度は、4mg/mLであり、5.5%の凝集またはHMW生成物を含有していた。繊維ロット#1635−1およびロット#1635−2を充填したカラムに64mg/mLの質量負荷まで負荷し、繊維ロット1635−5を充填したカラムに80mg/mLの質量負荷まで負荷した。結果を下の表14に示す。
【0227】
【表14】
【0228】
本明細書は、参照により組み込まれる、本明細書内で引用した参考文献の教示に照らして最も十分に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明における実施形態の実例を提供するものであり、その範囲を限定するものと解釈すべきでない。当業者は、多くの他の実施形態が本発明により含まれることを容易に認識する。すべての刊行物および発明は、参照によりそれらの全体として組み込まれる。参照により組み込まれる資料が本明細書と矛盾または不整合である限りにおいて、本明細書は、任意のそのような資料に優先する。本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを容認するものではない。
【0229】
特に示さない限り、特許請求の範囲を包含する本明細書で用いた成分、細胞培養の量を表すすべての数、処理条件などは、すべての事例において「約」という語により修飾されると理解すべきである。したがって、特に反対の明示がない限り、数値パラメーターは、近似であり、本発明により得ようとする所望の特性によって変化し得る。特に示さない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という語は、該系列におけるすべての要素を指すと理解すべきである。当業者は、本明細書で述べた本発明の特定の実施形態の多くの同等物を認識する、または常用の域を出ない実験を用いて確認することができる。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲によって含まれるものとする。
【0230】
当業者には明らかなように、本発明の多くの変更および変形は、その精神および範囲から逸脱することなく、行うことができる。本明細書で述べた特定の実施形態は、例としてのみ記載するものであって、限定的であることを意味するものでない。明細書および実施例は、例示的なものとしてのみみなすものとし、本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。