特許第6231027号(P6231027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231027フロースルー式での生物製剤からのタンパク質凝集体の除去
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231027
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】フロースルー式での生物製剤からのタンパク質凝集体の除去
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/10 20060101AFI20171106BHJP
   C07K 1/16 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   C08F265/10
   !C07K1/16
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2015-657(P2015-657)
(22)【出願日】2015年1月6日
(62)【分割の表示】特願2013-27361(P2013-27361)の分割
【原出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2015-110786(P2015-110786A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2015年1月8日
(31)【優先権主張番号】61/609,533
(32)【優先日】2012年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/666,578
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル・コズロフ
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアム・カタルド
(72)【発明者】
【氏名】アジシユ・ポテイ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ガリポー
(72)【発明者】
【氏名】ジエームズ・ハムジク
(72)【発明者】
【氏名】ホアキン・ウマーナ
(72)【発明者】
【氏名】ラルス・ピーク
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−176556(JP,A)
【文献】 特開2002−293848(JP,A)
【文献】 特開2009−084694(JP,A)
【文献】 特開2009−127035(JP,A)
【文献】 特表2010−528271(JP,A)
【文献】 特表2011−529508(JP,A)
【文献】 特開2011−149024(JP,A)
【文献】 特表2013−532829(JP,A)
【文献】 特表2013−535683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00 − 299/08
C08F 2/00 − 2/60
C08J 5/00 − 5/02
C08J 5/12 − 5/22
C08J 7/00 − 7/06
C08J 7/12 − 7/18
C07K 1/00 − 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学構造
【化1】
[化学構造中、Rは、−CH(=O)NHC(CH−CHSOHで表されるアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の残基であり、Rは、−CH(=O)N(CHで表されるジメチルアクリルアミドの残基であり、Rを有する繰り返し単位とRを有する繰り返し単位は1:1の重量比で存在し、xおよびyは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xである。]
を含むポリマーであって、固体担体上に共有結合によりグラフトされている担持ポリマー。
【請求項2】
以下の化学構造
【化2】

[化学構造中、xおよびyは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xである。]
を含むポリマーであって、2つ以上の単量体を含み、多糖、アクリレート、メタクリレート、ポリスチレニクス、ビニルエーテル、制御多孔ガラスまたはセラミックから製造されたクロマトグラフィー媒体上に結合によりグラフトされている、担持ポリマー。
【請求項3】
媒体がビニルエーテルを含む、請求項2に記載の担持ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、それぞれがその全体として参照により本明細書に組み込まれる2012年3月12日に出願した米国仮特許出願第61/609,533号および2012年6月29日に出願した米国仮特許出願第61/666,578号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、フロースルー式で対象の生成物を含有する生物製剤からタンパク質凝集体を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質凝集体は、対象の生成物、例えば、治療用タンパク質または抗体分子を含有する生物製剤から除去する必要がある重要な不純物の1つである。例えば、タンパク質凝集体および他の混入物質は、生成物を診断、治療または他の応用に使用することができる前に対象の生成物を含有する生物製剤から除去しなければならない。さらに、タンパク質凝集体は、ハイブリドーマ細胞系から収集した抗体製剤においてもしばしば見出され、その意図した目的のための抗体製剤の使用の前に除去されなければならない。これは、治療応用の場合に、また食品医薬品局の承認を得るために特に重要である。
【0004】
タンパク質凝集体としばしば単量体分子である生物製剤中の対象の生成物との物理的および化学的性質の間にしばしば類似性があるので、タンパク質凝集体の除去は、困難なものであり得る。例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーを包含する生物製剤からのタンパク質凝集体の除去のための多種の方法が当技術分野に存在する。
【0005】
対象の生成物からのタンパク質凝集体の分離のためのいくつかの結合および溶出クロマトグラフィー方法が公知である。例えば、ヒドロキシアパタイトは、タンパク質、核酸並びに抗体のクロマトグラフィー分離に用いられている。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにおいて、カラムを通常平衡化し、試料を低濃度のリン酸緩衝液に加え、次に吸着されたタンパク質をリン酸緩衝液の濃度勾配下で溶出させる(例えば、Giovannini、Biotechnology and Bioengineering、73巻、522−529頁(2000年)参照)。しかし、いくつかの事例において、研究者らは、ヒドロキシアパタイトから抗体を選択的に溶出することができず、またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーが十分に純粋な生成物をもたらさないことを見出した(例えば、Jungbauer、J.Chromatography、476巻、257−268頁(1989年);Giovannini、Biotechnology and Bioengineering、73巻、522−529頁(2000年)参照)。
【0006】
さらに、市販のクロマトグラフィー樹脂であるセラミックヒドロキシアパタイト(CHT)が樹脂の形態でのタンパク質凝集体の除去のために使用されてある程度の成功をおさめた(BIORAD CORP、例えば、米国特許公開番号WO/2005/044856も参照)が、それは、一般的に高価であり、タンパク質凝集体に対する低い結合能を示す。
【0007】
結合および溶出陽イオン交換クロマトグラフィー方法も記載され、これは、凝集体の除去のために時折産業に用いられている(例えば、米国特許第6,620,918号参照)が、単量体の収率と凝集体の除去との好ましくない相殺を行う必要があることがしばしば認められる。モノクローナル抗体の溶液からの凝集体の除去方法の最近のレビューにおいて、結合および溶出クロマトグラフィー式に関して、「陽イオン交換クロマトグラフィーは、凝集体と単量体を分離する有用な方法であり得るが、高生産能力を有する高収率ステップを開発することは困難であり得る」ことが指摘された。例えば、Aldingtonら、J.Chrom.B、848巻(2007年)、64−78頁を参照のこと。
【0008】
結合および溶出方法および当技術分野で公知のサイズ排除クロマトグラフィー方法と比べて、フロースルー式でのタンパク質精製は、より良好な経済的側面、単純さ、時間および緩衝液の節約のため、より望ましいとみなされている。
【0009】
従来技術において疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)媒体に基づくフロースルー凝集体除去を実施する試みがなされた(例えば、米国特許第7,427,659号参照)。しかし、HICに基づく分取法は、一般的に困難なプロセス開発、狭い操作ウインドウおよび緩衝液に要求される高い塩濃度のため、狭い適用可能性を有する。
【0010】
弱分配クロマトグラフィー(WPC)は、他の方式のクロマトグラフィー操作であり、生成物の結合が結合および溶出クロマトグラフィーの場合より弱いが、フロースルークロマトグラフィーの場合より強い(例えば、米国特許第8,067,182号参照)。しかし、WPCは、結合および溶出方法と比較して不純物除去に関する狭い操作ウインドウおよびより低い結合能力を包含する関連する特定の欠点も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2005/044856号
【特許文献2】米国特許第6,620,918号明細書
【特許文献3】米国特許第7,427,659号明細書
【特許文献4】米国特許第8,067,182号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Giovannini、Biotechnology and Bioengineering、73巻、522−529頁(2000年)
【非特許文献2】Jungbauer、J.Chromatography、476巻、257−268頁(1989年)
【非特許文献3】Aldingtonら、J.Chrom.B、848巻(2007年)、64−78頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術において記載されたフロースルー方法の一部のものは凝集体に結合すると報告されたが、対象の生成物と比べた凝集体への結合の特異性は、低いと思われる。さらに、例えば、二量体、三量体および四量体などの低次のタンパク質凝集体への結合の高い特異性を示す従来技術における公知の方法は存在しないと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、生物医薬組成物中のタンパク質凝集体から対象の生成物、例えば、治療用抗体または単量体タンパク質を分離するための新規且つ改善された組成物並びにそのような組成物を用いるフロースルー方法を提供する。本明細書で述べる組成物および方法は、例えば、単量体タンパク質から分離することが一般的に困難である、二量体、三量体および四量体などの低次のタンパク質凝集体から対象の単量体タンパク質を分離するのに特に有用である。
【0015】
本発明は、フロースルー式で対象の生成物(すなわち、単量体分子)と比べて表面へのタンパク質凝集体の結合の選択性を高め、それにより対象の生成物からタンパク質凝集体を分離することに少なくとも部分的に基づいている。本発明は、特定の密度の陽イオン交換結合基を有する表面の固有の設計と、それにより、単量体分子と比較して、より多数のタンパク質凝集体が表面に結合することを促進することにより、これを達成することができる。
【0016】
本発明によるいくつかの実施形態において、試料中のタンパク質凝集体から対象の単量体タンパク質を分離するフロースルークロマトグラフィー方法であって、試料を、約1−約30mMの密度で1つまたは複数の陽イオン交換結合基が結合した固体担体と接触させるステップを含み、固体担体は、タンパク質凝集体に選択的に結合し、それにより、タンパク質凝集体から対象の単量体タンパク質を分離する、フロースルークロマトグラフィー方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明による方法に用いる固体担体は、クロマトグラフィー樹脂、膜、多孔性モノリス、織布および不織布から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、固体担体は、クロマトグラフィー樹脂または多孔質ビーズを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、固体担体は、多孔質ポリビニルエーテルポリマービーズまたは多孔質架橋ポリメタクリレートポリマービーズである。
【0020】
様々な実施形態において、クロマトグラフィー樹脂または多孔質ビーズは、約50ミクロン、約10から約500ミクロン、または約20から約140ミクロン、または約30から約70ミクロンの平均粒径を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、固体担体は、平均粒径が10ミクロンから500ミクロン、または20から200ミクロン、または20から90ミクロンである、クロマトグラフィー樹脂または多孔質ビーズから選択される。特定の実施形態において、クロマトグラフィー樹脂または多孔質ビーズは、約50ミクロンの平均粒径を有する。一般的に、選択性は、粒径を減少させることにより改善し得る。当業者は、平均粒径は、個別の応用またはプロセスの必要に基づいてタンパク質凝集体を結合するためにあるレベルを選択的に維持しながら調節することができることを理解すると思われる。
【0022】
いくつかの実施形態において、タンパク質凝集体は、例えば、二量体、三量体および四量体などの低次のタンパク質凝集体である。
【0023】
他の実施形態において、タンパク質凝集体は、例えば、五量体および高次のものなどの高次のタンパク質凝集体である。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明による方法に用いる陽イオン交換基は、スルホン酸基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基およびカルボキシル基からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態において、単量体タンパク質は、抗体である。特定の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。他の実施形態において、単量体タンパク質は、組換えタンパク質、例えば、Fc融合タンパク質である。さらに他の実施形態において、単量体タンパク質は、非抗体分子である。
【0026】
本発明によるいくつかの実施形態において、試料中のタンパク質凝集体から対象の単量体タンパク質を分離するフロースルークロマトグラフィー方法であって、試料を、約1−約30mMの密度で1つまたは複数の陽イオン交換結合基が結合した固体担体と接触させるステップを含み、固体担体は、単量体と比べて約10を超える選択性でタンパク質凝集体に結合して、それにより、タンパク質凝集体から対象のタンパク質を分離する、フロースルークロマトグラフィー方法を提供する。
【0027】
他の実施形態において、試料中のタンパク質凝集体の濃度を低下させるフロースルークロマトグラフィー方法であって、(a)対象のタンパク質および約1−約20%のタンパク質凝集体を含む試料を用意するステップと、(b)試料を、約1−約30mMの密度で1つまたは複数の陽イオン交換結合基が結合した固体担体と接触させるステップと、(c)試料のフロースルー流出物を収集するステップとを含み、流出物中のタンパク質凝集体の濃度を(a)における凝集体の濃度と比べて少なくとも50%低下させ、それにより、試料中のタンパク質凝集体の濃度を低下させる、フロースルークロマトグラフィー方法を提供する。
【0028】
本発明の方法によるいくつかの実施形態において、流出物中の対象のタンパク質の濃度は、(a)における対象のタンパク質の濃度の少なくとも80%である。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記固体担体と接触させる凝集体を含有する試料のイオン伝導度は、約0.5−約10mS/cmの範囲内にある。
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書で述べる対象のタンパク質(例えば、モノクローナル抗体)の精製のためのプロセスは、結合および溶出陽イオン交換クロマトグラフィーステップを必要としない。したがって、そのようなプロセスは、溶出溶液への塩の添加および後の希釈ステップの使用の必要をなくすものである。
【0031】
いくつかの実施形態において、伝導度の増加を必要としない、対象のタンパク質(例えば、モノクローナル抗体)の精製のためのプロセスを提供する。したがって、そのようなプロセスは、後のフロースルー陰イオン交換ステップを実施する前に伝導度を低下させるために陽イオン交換ステップ後の希釈を必要としない。
【0032】
固体担体上に結合されている、陽イオン交換基を含むポリマーも本発明により含まれる。
【0033】
いくつかの実施形態において、そのようなポリマーは、以下の化学構造を含む。
【0034】
【化1】
ここで、Rは、陽イオン交換基であり、Rは、荷電基を含まない任意の脂肪族または芳香族有機残基であり、Rは、2つ以上のポリマー鎖間の任意の非荷電脂肪族または芳香族有機リンカーであり、x、yおよびzは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xであり、記号mは、リンカーの他端に結合している類似のポリマー鎖を示す。
【0035】
他の実施形態において、本発明によるポリマーは、以下の化学構造を含む。
【0036】
【化2】
ここで、x、yおよびzは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xであり、記号mは、リンカーの他端に結合している類似のポリマー鎖を示す。
【0037】
さらに他の実施形態において、本発明によるポリマーは、ポリマーが固体担体上に共有結合によりグラフトされている、以下の化学構造を含む。
【0038】
【化3】
ここで、Rは、陽イオン交換基であり、Rは、荷電基を含まない任意の脂肪族または芳香族有機残基であり、xおよびyは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xである。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明によるポリマーは、以下の化学構造を含む。
【化4】
ここで、xおよびyは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xであり、ポリマーは、クロマトグラフィー樹脂上に結合によりグラフトされている。
【0040】
様々な実施形態において、ポリマーは、固体担体に結合されている。
【0041】
本発明による様々な実施形態において、対象の生成物を含有する流出物を1つまたは複数の分離方法に供し、ここで、流出物は、20%未満、または15%未満、または10%未満、または5%未満、または2%未満のタンパク質凝集体を含有する。
【0042】
本発明によるいくつかの実施形態において、本発明の方法および/または組成物は、プロテインAクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外ろ過、ウイルス除去ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィーの1つまたは複数のものと組み合わせて用いることができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、本明細書で述べる組成物により選択的に除去されるタンパク質凝集体は、より高い分子量の凝集体、すなわち、タンパク質五量体および高次のものである。
【0044】
いくつかの実施形態において、本明細書で述べる組成物により選択的に除去されるタンパク質凝集体は、タンパク質二量体、三量体および四量体などの低次の凝集体種を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、本明細書で述べる1つまたは複数の陽イオン交換結合基を含む固体担体は、精製プロセスにおけるフロースルー精製プロセスステップに用い、ここで、フロースルー精製プロセスステップ並びに全精製プロセスは、連続式で行うことができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、本明細書で述べる固体担体は、固体担体の上流および下流の他の種類の媒体と流体連通した状態で接続されている。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書で述べるような1つまたは複数の陽イオン交換結合基を含む固体担体は、上流の陰イオン交換クロマトグラフィー媒体および固体担体から下流のウイルスろ過媒体と接続されている。特定の実施形態において、試料は、活性炭に、続いて陰イオン交換クロマトグラフィー媒体に、続いて1つまたは複数の陽イオン交換結合基を含む固体担体に、続いてウイルスフィルターに流れる。いくつかの実施形態において、pHの変更を行うために、スタティックミキサーおよび/またはサージタンクを陰イオン交換媒体と1つまたは複数の陽イオン交換結合基を含む固体担体との間に配置する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】当技術分野で公知の組成物と比較して低密度の陽イオン交換結合基を有する組成物を用いた凝集体選択性の向上の概略図である。
図2A】本発明により含まれる種々の組成物の代表的な化学構造を示す図である。固体担体上に固定化した架橋ポリマー構造を示す図である。
図2B】本発明により含まれる種々の組成物の代表的な化学構造を示す図である。固体担体上に固定化した架橋ポリマー構造を示す図である。
図2C】本発明により含まれる種々の組成物の代表的な化学構造を示す図である。固体担体上に固定化した架橋ポリマー構造を示す図である。
図2D】本発明により含まれる種々の組成物の代表的な化学構造を示す図である。固体担体上に固定化した架橋ポリマー構造を示す図である。
図2E】本発明により含まれる種々の組成物の代表的な化学構造を示す図である。固体担体上に共有結合したグラフトポリマー構造を示す図である。Rは、例えば、スルホン酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸またはカルボキシル基などの陽イオン交換基であり、Rは、荷電基を含まない任意の脂肪族または芳香族有機残基であり、Rは、任意の2つ以上のポリマー鎖間の任意の非荷電脂肪族または芳香族有機リンカーであり、x、yおよびzは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xであり、記号mは、リンカーの他端に結合している類似のポリマー鎖を示し、Rは、NHまたはOであり、Rは、−CH−、−C−、−C−、−C(CH−CH−、−C−などの線状または分枝脂肪族または芳香族基であり、Rは、ポリマー鎖へのNH、OまたはSリンカーを含有する線状または分枝脂肪族または芳香族非荷電基であり、RおよびRは、1つまたは複数の中性脂肪族および芳香族有機残基からなる群から独立に選択され、O、N、S、P、F、Clおよび同類のものなどのヘテロ原子を含有していてもよい。
図2F】本発明により含まれる種々の組成物の代表的な化学構造を示す図である。固体担体上に共有結合したグラフトポリマー構造を示す図である。Rは、例えば、スルホン酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸またはカルボキシル基などの陽イオン交換基であり、Rは、荷電基を含まない任意の脂肪族または芳香族有機残基であり、Rは、任意の2つ以上のポリマー鎖間の任意の非荷電脂肪族または芳香族有機リンカーであり、x、yおよびzは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xであり、記号mは、リンカーの他端に結合している類似のポリマー鎖を示し、Rは、NHまたはOであり、Rは、−CH−、−C−、−C−、−C(CH−CH−、−C−などの線状または分枝脂肪族または芳香族基であり、Rは、ポリマー鎖へのNH、OまたはSリンカーを含有する線状または分枝脂肪族または芳香族非荷電基であり、RおよびRは、1つまたは複数の中性脂肪族および芳香族有機残基からなる群から独立に選択され、O、N、S、P、F、Clおよび同類のものなどのヘテロ原子を含有していてもよい。
図2G】固体担体上に共有結合したグラフトポリマー構造を示す図である。Rは、例えば、スルホン酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸またはカルボキシル基などの陽イオン交換基であり、Rは、荷電基を含まない任意の脂肪族または芳香族有機残基であり、Rは、任意の2つ以上のポリマー鎖間の任意の非荷電脂肪族または芳香族有機リンカーであり、x、yおよびzは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xであり、記号mは、リンカーの他端に結合している類似のポリマー鎖を示し、Rは、NHまたはOであり、Rは、−CH−、−C−、−C−、−C(CH−CH−、−C−などの線状または分枝脂肪族または芳香族基であり、Rは、ポリマー鎖へのNH、OまたはSリンカーを含有する線状または分枝脂肪族または芳香族非荷電基であり、RおよびRは、1つまたは複数の中性脂肪族および芳香族有機残基からなる群から独立に選択され、O、N、S、P、F、Clおよび同類のものなどのヘテロ原子を含有していてもよい。
図2H】固体担体上に共有結合したグラフトポリマー構造を示す図である。Rは、例えば、スルホン酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸またはカルボキシル基などの陽イオン交換基であり、Rは、荷電基を含まない任意の脂肪族または芳香族有機残基であり、Rは、任意の2つ以上のポリマー鎖間の任意の非荷電脂肪族または芳香族有機リンカーであり、x、yおよびzは、ポリマー中の各モノマーの平均モル分率であり、y>xであり、記号mは、リンカーの他端に結合している類似のポリマー鎖を示し、Rは、NHまたはOであり、Rは、−CH−、−C−、−C−、−C(CH−CH−、−C−などの線状または分枝脂肪族または芳香族基であり、Rは、ポリマー鎖へのNH、OまたはSリンカーを含有する線状または分枝脂肪族または芳香族非荷電基であり、RおよびRは、1つまたは複数の中性脂肪族および芳香族有機残基からなる群から独立に選択され、O、N、S、P、F、Clおよび同類のものなどのヘテロ原子を含有していてもよい。
図3A】膜7、膜8または市販の膜(Pall Mustang(登録商標)S膜)を含有する3種の膜装置を通過したモノクローナル抗体(MAbI)の割合のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果を示すグラフである。x軸上に、膜へのMAbIの総負荷をg/L単位で示し、y軸上に、出発濃度と比較したMAbI単量体の相対的濃度(収率%により表す)を示す。
図3B】膜7、膜8またはPall Mustang(登録商標)S膜を含む3種の膜装置を通過したMAbIの割合のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果を示すグラフである。x軸上に、膜へのMAbIの総負荷をg/L単位で示し、y軸上に、出発濃度と比較したMAbI二量体の相対的濃度(収率%により表す)を示す。観測されたように、二量体の破過は、膜7について膜8並びにPall Mustang(登録商標)S膜と比較して著しく遅い。
図3C】膜7、膜8またはPall Mustang(登録商標)S膜を含む3種の膜装置を通過したMAbIの割合のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果を示すグラフである。x軸上に、膜へのMAbIの総負荷をg/L単位で示し、y軸上に、出発濃度と比較したMAbI高分子量(HMW)凝集体の相対的濃度(収率)を示す。観測されたように、HMWの破過は、膜7について膜8並びにPall Mustang(登録商標)S膜と比較して著しく遅い。
図4A】MAb負荷の関数として膜7(白三角として示す)および膜8(白四角として示す)における抗体プールのSECにより測定した凝集体破過(右y軸上に示す)を示すグラフである。膜7(黒三角として示す)および膜8(黒四角として示す)におけるプールにおける単量体(すなわち、対象の生成物)の収率も示す。
図4B】MAb負荷の関数としての2回の別個の実験(実験1:白丸により示す;実験2:白ひし形により示す)での膜7における抗体プールの凝集体破過(右y軸上に示す)を示すグラフである。膜7における抗体プールにおける単量体の収率(実験1:黒丸により示す;実験2:黒ひし形により示す)も示す。
図5】MAbIII負荷(mg/mLとしてx軸に示す)の関数としての膜7における抗体プールの凝集体破過(右y軸上に示す)を示すグラフである。膜7におけるプールにおける単量体の収率(左y軸上に示す)も示す。
図6A】膜8へのMAbI単量体(白四角)および膜8へのMAbI凝集体(白三角)、膜7へのMAbI単量体(黒四角)および膜7へのMAbI凝集体(黒三角)の結合のNaCl濃度の関数としてのpH5.0における分配係数を示すグラフである。
図6B】膜8へのMAbII単量体(白四角)および膜8へのMAbII凝集体(白三角)、膜7へのMAbII単量体(黒四角)および膜7へのMAbII凝集体(黒三角)の結合のNaCl濃度の関数としてのpH5.0における分配係数を示すグラフである。
図7】pH5.0におけるそれぞれ膜7および8へのMAbIおよびMAbIIの結合の選択性プロットを示すグラフである。MAbIに対する膜8の選択性を白四角により示し、MAbIに対する膜7の選択性を黒四角により示し、MAbIIに対する膜8の選択性を白三角により示し、MAbIIに対する膜7の選択性を黒三角により示す。
図8】10および15g/L凝集体負荷における単量体百分率を示す等高線図である。
図9】5、10および15g/L凝集体負荷における最適操作領域(白で示す)を示す等高線図である。最適は、単量体の収率が88%を超え、凝集体が総タンパク質の2%未満を占めることと定義した。灰色の領域は、これらの基準を満たさない。
図10】ウイルスろ過装置の処理量に対する流量の影響を検討するための実験の結果を示すグラフである。Y軸は圧力降下(psi)を示し、X軸はウイルスろ過装置の処理量(kg/m)を示す。
図11】本明細書で述べた組成物を用いる接続(connected)フロースルー精製プロセスの概略図である。活性炭含有装置が陰イオン交換装置に直接接続されている。陰イオン交換装置からの流出物は、スタティックミキサーに通り、そこで水性酸が加えられて、pHを低下させ、次いで、本発明による陽イオン交換フロースルー装置およびウイルスフィルターを通過する。
図12】陰イオン交換クロマトグラフィー媒体(ChromaSorb(商標))後のHCP破過を測定するための実験の結果を示すグラフである。X軸はHCP濃度(ppm)を示し、Y軸はAEX負荷(kg/L)を示す。
図13】フロースルー精製プロセスステップにおけるウイルスろ過装置の負荷の関数としてのMAb凝集体の除去を測定するための実験の結果を示すグラフである。X軸はウイルスろ過負荷(kg/m)を示し、Y軸はウイルスろ過後の試料中のMAb凝集体の百分率を示す。
図14】本明細書で述べた陽イオン交換樹脂(ロット#12LPDZ119)を用いた、累積タンパク質負荷の関数としてのMAb凝集体の除去を示すための実験の結果を示すグラフである。X軸はmg/ml単位の累積タンパク質負荷を示し、左Y軸はmg/ml単位の抗体MAbの濃度を示し、右Y軸は試料中のMAb凝集体の百分率を示す。
図15】本明細書で述べた陽イオン交換樹脂(ロット#12LPDZ128)を用いた、累積タンパク質負荷の関数としてのMAb凝集体の除去を示すための実験の結果を示すグラフである。X軸はmg/ml単位の累積タンパク質負荷を示し、左Y軸はmg/ml単位の抗体MAbの濃度を示し、右Y軸は試料中のMAb凝集体の百分率を示す。
図16】本明細書で述べた陽イオン交換樹脂(ロット#12LPDZ129)を用いた、累積タンパク質負荷の関数としてのMAb凝集体の除去を示すための実験の結果を示すグラフである。X軸はmg/ml単位の累積タンパク質負荷を示し、左Y軸はmg/ml単位の抗体MAbの濃度を示し、右Y軸は試料中のMAb凝集体の百分率を示す。
図17】pH5および滞留時間3分におけるMAb5を含む樹脂ロット#1712のクロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
一般的に対象の生成物である、単量体タンパク質からタンパク質凝集体を分離する目的で、いくつかの従来技術の結合および溶出方法並びにフロースルー方法が報告されている。
【0049】
結合および溶出方法は、一般的に時間のかかるものであり、相当のプロセス開発を必要とし、単量体タンパク質の高い収率を維持しながら単量体タンパク質から凝集体、特に低次の凝集体を効果的に分離することに時として成功しない。従来の多孔質樹脂および膜の両方を用いた、特定の陽イオン交換フロースルー方法が当技術分野で記載された。しかし、それらは、凝集体を結合する媒体の低い能力、二量体に対する低い選択性および対象の生成物、すなわち、単量体タンパク質のしばしば低い収率による問題を有すると思われる(例えば、Liuら、J.Chrom.A.、1218巻(2011)、6943−6952頁参照)。
【0050】
さらに、タンパク質を分離するために固体担体上の陽イオン交換基を用いると思われる方法が従来技術において記載された。例えば、2つのモデルタンパク質の最善のクロマトグラフィー分解能を得るために固体担体上に高密度の陽イオン交換基を有することを述べている、Wuら(Effects of stationary phase ligand density on high−performance ion−exchange chromatography of proteins、J.Chrom.、598巻(1992年)、7−13頁)を参照のこと。しかし、最近、凝集体除去に対する陽イオン交換結合基密度の効果が具体的に検討された(例えば、Fogleら、Effects of resin ligand density on yield and impurity clearance in preparative cation exchange chromatography.I.Mechanistic evaluation、J.Chrom.A.、1225巻(2012年)、62−69頁参照)。単量体および高分子量抗体形の分解能は、結合基の密度に対して著しく非感受性であることが報告された。
【0051】
不純物除去を用いるためのWPCも記載された(例えば、Sudaら、Comparison of agarose and dextran−grafted agarose strong ion exchangers for the separation of protein aggregates、J.Chrom.A.、1216巻、5256−5264頁、2009年参照)。弱分配クロマトグラフィー(WPC)の場合、分配係数Kpは、0.1−20の範囲にあり、Kp>20は、結合および溶出クロマトグラフィーに関連し、Kp<0.1は、フロースルークロマトグラフィーに関連する。WPCには、少なくとも2つの深刻な欠点がある。第一は、フロースルークロマトグラフィーと結合溶出クロマトグラフィーとの間になければならない、狭い操作領域(0.1<Kp<20)である(例えば、米国特許第8,067,182号参照)。この操作領域内では、効率的な分離のために生成物と不純物との間の選択性は、大きくなければならない。一般的にイオン交換媒体について、生成物と不純物との間の選択性は、Kpが増加するにつれて増加し、結合および溶出条件下で選択性が最高である。第二は、不純物に対する容量は、結合および溶出モードの場合より低い。Kp値がより低いので、不純物濃度が生成物の濃度より小さい一般的な操作条件下で容量が低い。
【0052】
本発明は、当技術分野で記載された様々な方法と比較して、タンパク質凝集体と単量体タンパク質の優れた分離を達成することができる。従来技術において記載されたものと本発明の重要な差異は、固体担体上の低密度の陽イオン交換基の使用並びに単量体とサイズおよび表面特性が近いために除去することが一般的により困難である低次のタンパク質凝集体、例えば、二量体、三量体および四量体の除去の高い特異性である。
【0053】
本発明をより容易に理解することができるために、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳細な説明を通して示す。
【0054】
I.定義
「クロマトグラフィー」という用語は、本明細書で用いているように、生物製剤における混入物質および/またはタンパク質凝集体から対象の生成物(例えば、治療用タンパク質または抗体)を分離するあらゆる種類の技術を意味する。
【0055】
「フロースループロセス」、「フロースルー式」および「フロースルークロマトグラフィー」という用語は、本明細書において同義で用い、対象の生成物を含有する生物製剤が材料をフロースルーすることを意図する生成物分離技術を意味する。いくつかの実施形態において、対象の生成物が材料を流れ、望ましくない物質が材料に結合する。特定の実施形態において、材料は、特定の密度の陽イオン交換結合基(すなわち、従来技術の組成物より低い)を含有し、タンパク質凝集体から単量体タンパク質を分離するために用いられ、この場合、単量体タンパク質が材料を流れるが、タンパク質凝集体が材料に結合する。
【0056】
「アフィニティークロマトグラフィー」という用語は、標的分子(例えば、Fc領域を含有する対象のタンパク質または抗体)が標的分子に対して特異的であるリガンドに特異的に結合するタンパク質分離技術を意味する。そのようなリガンドは、一般的に生物特異的リガンドと呼ばれる。いくつかの実施形態において、生物特異的リガンド(例えば、プロテインAまたはこれらの機能変異体)は、適切なクロマトグラフィーマトリックス材料に共有結合しており、溶液がクロマトグラフィーマトリックスと接触するとき、溶液中の標的分子に接近できる。標的分子は、一般的にクロマトグラフィーステップ中に生物特異的リガンドに対するその特異的結合親和性を保持しているが、他の溶質および/または混合物中のタンパク質は、感知できるほどにまたは特異的にリガンドに結合することはない。固定化リガンドへの標的分子の結合により、混在タンパク質および不純物がクロマトグラフィーマトリックスを通過するが、標的分子は、固相材料上の固定化リガンドに特異的に結合したままである。次いで、特異的に結合した標的分子は、適切な条件(例えば、低pH、高pH、高塩、競合リガンド等)のもとでその活性形で固定化リガンドから除去し、以前にカラムを通過させた混在タンパク質および不純物を実質的に含まない溶出緩衝液とともにクロマトグラフィーカラムに通す。任意の適切なリガンドは、その各特異的結合タンパク質、例えば、抗体を精製するために用いることができることは理解される。本発明によるいくつかの実施形態において、プロテインAを、Fc領域を含有する標的タンパク質のリガンドとして用いる。標的分子(例えば、Fc領域含有タンパク質)の生物特異的リガンド(例えば、プロテインA)からの溶出のための条件は、当業者により容易に決定することができる。いくつかの実施形態において、プロテインGまたはプロテインLまたはこれらの機能変異体を生物特異的リガンドとして用いることができる。いくつかの実施形態において、プロテインAなどの生物特異的リガンドを用いるプロセスは、Fc領域含有タンパク質への結合のために5−9のpH範囲を用い、その後、生物特異的リガンド/標的分子結合体を洗浄または再平衡化し、その後、それを少なくとも1つの塩を含有する約4または4以下のpHを有する緩衝液で溶出する。
【0057】
本明細書で同義に用いる「混入物質」、「不純物」および「デブリ」という用語は、DNA、RNAなどの生物学的巨大分子、1つまたは複数の宿主細胞タンパク質、エンドトキシン、脂質、タンパク質凝集体を包含する、任意の外来または好ましくない分子並びに1つまたは複数の外来または好ましくない分子から分離される対象の生成物を含有する試料中に存在し得る1つまたは複数の添加物を意味する。さらに、そのような混入物質は、分離プロセスの前に行われ得るステップに用いられる任意の試薬を包含し得る。特定の実施形態において、本明細書で述べる組成物および方法は、対象の生成物を含有する試料からタンパク質凝集体を選択的に除去することを意図する。
【0058】
「免疫グロブリン」、「Ig」または「抗体」(本明細書で同義に用いる)という用語は、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる基本的4ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を意味し、前記鎖は、例えば、抗原に特異的に結合する能力を有する鎖間ジスルフィド結合により安定化される。「単鎖免疫グロブリン」または「単鎖抗体」(本明細書で同義に用いる)という用語は、重および軽鎖からなる2ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を意味し、前記鎖は、例えば、抗原に特異的に結合する能力を有する鎖間ペプチドリンカーにより安定化される。「ドメイン」という用語は、例えば、βひだ状シートおよび/または鎖内ジスルフィド結合により安定化されたペプチドループを含む(例えば、3−4ペプチドループを含む)重または軽鎖ポリペプチドの球状領域を意味する。ドメインはさらに、「定常」ドメインの場合の種々のクラスメンバーのドメイン内の配列の変化の相対的欠如または「可変」ドメインの場合の種々のクラスメンバーのドメイン内の著しい変化に基づいて、本明細書において「定常」または「可変」を意味する。抗体またはポリペプチド「ドメイン」は、しばしば当技術分野で同義に抗体またはポリペプチド「領域」を意味する。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域または「CL」ドメインと同義に意味する。抗体重鎖の「定常」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域または「CH」ドメインと同義に意味する。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域または「VL」ドメインと同義に意味する。抗体重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖可変領域」、「重鎖可変ドメイン」、「VH」領域または「VH」ドメインと同義に意味する。
【0059】
免疫グロブリンまたは抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよく、単量体または多量体で存在する、例えば、五量体で存在するIgM抗体および/または単量体、二量体若しくは多量体で存在するIgA抗体であり得る。「断片」という用語は、そのまままたは完全な抗体または抗体鎖より少数のアミノ酸残基を含む抗体または抗体鎖の一部または一部分を意味する。断片は、もとのままのまたは完全な抗体または抗体鎖の化学または酵素処理により得ることができる。断片は、組換え手段によっても得ることができる。具体例としての断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fcおよび/またはFv断片などを包含する。
【0060】
「抗原結合断片」という用語は、抗原に結合するまたは抗原結合(すなわち、特異的結合)についてもとのままの抗体(すなわち、それらが得られたもとのままの抗体)と競合する免疫グロブリンまたは抗体のポリペプチド部分を意味する。結合断片は、組換えDNA技術により、またはもとのままの免疫グロブリンの酵素的若しくは化学的切断により生産することができる。結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単鎖および単鎖抗体を包含する。
【0061】
「生物製剤」という用語は、本明細書で用いているように、対象の生成物(例えば、通常単量体である、治療用タンパク質または抗体)並びにタンパク質凝集体(例えば、低次タンパク質凝集体および対象の生成物の高分子量凝集体)などの不要な成分を含有する任意の組成物を意味する。
【0062】
特に断らない限り、本明細書で用いている「試料」という用語は、標的分子を含有する任意の組成物または混合物を意味する。試料は、生物源または他の源から得ることができる。生物源は、植物および動物細胞、組織および器官などの真核生物および原核生物源を包含する。試料は、標的分子と混合された状態で見出される希釈剤、緩衝剤、界面活性剤並びに混入種、デブリおよび同類のものも包含し得る。試料は、「部分的に精製する」ことができ(すなわち、ろ過ステップなどの1つまたは複数の精製ステップにかける)、または標的分子を産生する宿主細胞若しくは生物から直接得ることができる(例えば、試料は、収集細胞培養液を含み得る)。いくつかの実施形態において、試料は細胞培養原料である。いくつかの実施形態において、本明細書で述べるフロースルー精製プロセスにかける試料は、結合および溶出クロマトグラフィーステップ、例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーからの溶出液である。
【0063】
「タンパク質凝集体」または「複数のタンパク質凝集体」という用語は、本明細書で同義に用いているように、対象の生成物、例えば、治療用タンパク質または抗体の少なくとも2つの分子の会合を意味する。対象の生成物の少なくとも2つの分子の会合は、共有結合、非共有結合、ジスルフィドまたは非還元性架橋を包含するが、これらに限定されない任意の手段により生じ得る。
【0064】
凝集体濃度は、当技術分野で周知であり、広く受け入れられている方法である、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いてタンパク質試料中で測定することができる(例えば、Gabrielsonら、J.Pharm.Sci.、96巻、(2007年)、268−279頁参照)。種々の分子量の種の相対濃度は、UV吸光度を用いて溶出物中で測定し、一方、画分の分子量は、カラム製造業者の指示に従ってシステム校正を行うことにより決定する。
【0065】
「二量体」、「二量体(複数)」、「タンパク質二量体」または「タンパク質二量体(複数)」という用語は、本明細書で同義に用いているように、2つの単量体分子を含有する凝集体から主としてなるが、若干の三量体および四量体も含有し得るタンパク質凝集体の低次画分を意味する。この画分は、主単量体ピークの直前のSECクロマトグラムにおける第1の分解可能ピークとして通常観測される。
【0066】
「高分子量凝集体」または「HMW」という用語は、本明細書で同義に用いているように、タンパク質凝集体の高次画分、すなわち、五量体およびそれ以上のものを意味する。この画分は、二量体ピークの前のSECクロマトグラムにおける1つまたは複数のピークとして通常観測される。
【0067】
「結合基」または「リガンド」という用語は、本明細書で同義に用いているように、溶液から単量体タンパク質またはタンパク質凝集体を引きつけることができる、固体担体(例えば、多孔性表面)上に固定化された特異的な化学構造を意味する。結合基に対するタンパク質の引力は、イオン性、極性、分散性、疎水性、親和性、金属キレート化またはファンデルワールスを包含する任意の種類のものであり得る。
【0068】
「陽イオン交換結合基」という用語は、本明細書で用いているように、負に荷電した結合基を意味する。特定の実施形態において、結合基は、負に荷電したスルホン酸基である。
【0069】
「固体担体」という用語は、一般的に結合基が結合している任意の材料(多孔性または非多孔性)を意味する。固体担体への結合基の結合は、グラフティングの場合のような共有結合によるもの、またはコーティング、付着、吸着および同様な機構によるものであり得る。本明細書で述べる方法および組成物に用いる固体担体の例は、膜、多孔性ビーズ、翼状繊維(winged fibers)、モノリスおよび樹脂を包含するが、これらに限定されない。
【0070】
「密度」という用語は、本明細書で用いているように、多孔質媒体1リットル当たりのリガンドのモル数の濃度として一般的に表される、固体担体上の結合基またはリガンドの濃度を意味する。イオン交換リガンド密度の広く受け入れられている単位は、1リットル当たりのミリ当量またはmeq/L(μeq/mLに相当する)であり、これは、媒体の所定の容積中のイオン交換性基のモル量に相当する。単一イオン化部分を有する荷電基については、meq/L単位のリガンド密度は、mmol/LまたはmM単位で表されるこれらの基の密度に相当することとなる。
【0071】
「選択性」という用語は、本明細書で用いているように、移動相と固定相との間の2つの種の分配係数の無次元の比率を意味する。分配係数(Kp)は、Q/C比であり、ここで、QおよびCは、それぞれ結合および遊離タンパク質濃度である。
【0072】
「プロセスステップ」または「単位操作」という用語は、本明細書で同義に用いているように、精製プロセスにおける特定の結果を達成するための1つまたは複数の方法または装置の使用を意味する。用いることができるプロセスステップまたは単位操作の例は、清澄化、結合および溶出クロマトグラフィー、ウイルス不活化、フロースルー精製および配合(formulation)を包含するが、これらに限定されない。プロセスステップまたは単位操作のそれぞれは、プロセスステップまたは単位操作の意図する結果を達成するために複数のステップまたは方法または装置を使用し得ることが理解される。例えば、いくつかの実施形態において、清澄化ステップおよび/またはフロースルー精製ステップは、当該プロセスステップまたは単位操作を達成するために複数のステップまたは方法または装置を使用し得る。いくつかの実施形態において、プロセスステップまたは単位操作を実施するために用いられる1つまたは複数の装置は、1回使用装置であり、プロセスにおける任意の他の装置を交換するまたはプロセスの稼働を停止する必要なしに、除去および/または交換することができる。
【0073】
本明細書で用いているように、「プールタンク」という用語は、一般的にプロセスステップの間で使用され、プロセスステップからの生産物の全容積の収集を可能にするサイズ/容積を有する、任意のコンテナ、容器、貯蔵容器、タンクまたはバッグを意味する。プールタンクは、プロセスステップからの産出物の全容積を保持し、または貯蔵し、またはその溶液の状態を操作するために用いることができる。本発明による種々の実施形態において、プロセスは、1つまたは複数のプールタンクを使用する必要性を除去する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書で述べるプロセスは、1つまたは複数のサージタンクを使用し得る。
【0075】
「サージタンク」という用語は、本明細書で用いているように、プロセスステップ間またはプロセスステップ内(例えば、単一プロセスステップが複数のステップを含む場合)で用いる任意のコンテナまたは容器またはバッグを意味し、1つのステップからの産出物は、次のステップにおけるサージタンクに流入する。したがって、サージタンクは、ステップからの産出物の全容積を保持または収集することを意図するものではなく、代わりに1つのステップから次への産出物の連続的な流れを可能にする点がプールタンクと異なっている。いくつかの実施形態において、本明細書で述べるプロセスまたはシステムにおける2つのプロセスステップ間またはプロセスステップ内で用いるサージタンクの容積は、プロセスステップからの産出物の全容積の25%以下である。他の実施形態において、サージタンクの容積は、プロセスステップからの産出物の全容積の10%以下である。いくつかの他の実施形態において、サージタンクの容積は、標的分子が精製される出発物質を構成する、バイオリアクター中の細胞培養の全容積の35%未満、または30%未満、または25%未満、または20%未満、または15%未満、または10%未満である。
【0076】
本明細書で述べるいくつかの実施形態において、サージタンクは、本明細書で述べる固体担体を用いるステップの上流で用いる。
【0077】
「連続プロセス」という用語は、本明細書で用いているように、1つのプロセスステップからの産出物がプロセスにおける次のプロセスステップに中断することなく直接流入するように、2つ以上のプロセスステップ(または単位操作)を包含する、標的分子を精製するプロセスを意味し、ここで、2つ以上のプロセスステップは、それらの継続時間の少なくとも一部にわたって同時に実施することができる。言い換えれば、連続プロセスの場合、本明細書で用いているように、次のプロセスステップの前にプロセスを完了する必要はなく、試料の一部が常にプロセスステップに通っている。「連続プロセス」という用語は、プロセスステップ内のステップにも適用され、その場合、複数のステップを包含するプロセスステップの実施中に、試料は、当プロセスステップを実施するために必要である複数のステップに連続的に流れる。本明細書で述べるそのようなプロセスステップの1例は、連続的に実施される複数のステップを含むフロースルー精製ステップ、例えば、フロースルー活性炭、続くフロースルーAEX媒体、続く本明細書で述べる固体担体を用いるフロースルーCEX媒体、続くフロースルーウイルスろ過である。
【0078】
「陰イオン交換マトリックス」という用語は、例えば、第四級アミノ基などのこれに結合する1つまたは複数の正に荷電したリガンドを有する、正に荷電したマトリックスを意味するために本明細書で用いる。市販の陰イオン交換樹脂は、DEAEセルロース、QAE SEPHADEX(商標)およびFAST Q SEPHAROSE(商標)(GE Healthcare)を包含する。本明細書で述べるプロセスおよびシステムに用いることができる他の具体例としての材料は、Fractogel(登録商標)EMD TMAE、Fractogel(登録商標)EMD TMAE highcap、Eshmuno(登録商標)QおよびFractogel(登録商標)EMD DEAE(EMD Millipore)である。
【0079】
「活性炭(active carbon)」または「活性炭(activated carbon)」という用語は、本明細書で同義に用いているように、その細孔構造を向上させるためのプロセスにかけた炭素質材料を意味する。活性炭は、非常に高い表面積を有する多孔質固体である。それらは、石炭、木材、やし殻、堅果の殻および泥炭を包含する様々な源から得ることができる。活性炭は、制御された雰囲気下での加熱に伴って生ずる物理的活性化または強酸、塩基若しくは酸化剤を用いた化学的活性化を用いてこれらの材料から製造することができる。活性化プロセスは、活性炭に不純物の除去の高い能力をもたらす高表面積を有する細孔構造を製造する。活性化プロセスは、表面の酸性度を制御するように修正することができる。本明細書で述べるいくつかの実施形態において、活性炭は、一般的に、結合および溶出クロマトグラフィーステップに続くまたは次に結合および溶出クロマトグラフィーステップに続くウイルス不活化ステップに続く、フロースルー精製ステップに用いられる。いくつかの実施形態において、活性炭は、例えば、カラムまたはある種の他の適切な装置中のセルロース媒体内に組み込まれている。
【0080】
「スタティックミキサー」という用語は、2つの流体物質、一般的に液体を混合するための装置を意味する。この装置は、一般的に円筒状(管)ハウジングに含有される混合要素(非可動要素)からなる。全体的なシステム設計は、流体の2つの流れをスタティックミキサー内に供給する方法を組み込んでいる。流れが混合器に通るとき、非可動要素が物質を連続的に混合する。完全な混合は、流体の特性、管の内径、混合要素の数およびそれらの設計等の多くの変数に依存する。本明細書で述べるいくつかの実施形態において、1つまたは複数のスタティックミキサーを明細書で述べるプロセスに用いる。特定の実施形態において、スタティックミキサーは、本明細書で述べるように、陰イオン交換クロマトグラフィーの後、試料を陽イオン交換固体担体と接触させる前に、所望の溶液の変化を達成するために用いられる。
【0081】
II.具体例としての固体担体
本発明は、通常対象の生成物であるタンパク質の単量体より有利にタンパク質凝集体に結合する、固体担体に結合した特定の密度の結合基またはリガンドを有する固体担体を提供する。理論により拘束されることを望むものでないが、任意の適切な固体担体を本発明の場合に用いることができることが考えられる。例えば、固体担体は、多孔性若しくは非多孔性であり得、または、モノリス若しくは膜の形態などの連続性であり得る。固体担体はまた、粒子、ビーズまたは繊維の形態などの不連続性であり得る。いずれの場合(連続性または不連続性)においても、固体担体の重要な特徴は、それらが高表面積、機械的完全性、水性環境における完全性および結合基の接近可能性を保証するための流速分布をもたらす能力を有することである。
【0082】
具体例としての連続性多孔質固体担体は、すなわち、約0.05ミクロンから10ミクロンの孔径を有する微細孔膜を包含する。本発明による組成物および方法に用いることができる多孔質膜は、膜の厚さにわたるまたは中空繊維の場合には繊維の微細孔壁にわたる孔径の均一性に関連して、対称性または非対称性に分類することができる。本明細書で用いているように、「対称性膜」という用語は、膜の断面にわたり実質的に均一な孔径を有する膜を意味する。本明細書で用いているように、「非対称性膜」という用語は、平均孔径が膜の断面にわたり一定でない膜を意味する。いくつかの実施形態において、非対称性膜の場合、孔径は、一様にまたは膜の断面全域の位置の関数として不連続的に変化し得る。いくつかの実施形態において、非対称性膜は、1つの外表面における孔径と反対側の外表面における孔径との実質的に1より大きい比率を有し得る。
【0083】
様々な材料製の様々な微細孔膜を本明細書で述べる組成物および方法に用いることができる。そのような材料の例としては、多糖、合成および半合成ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック、ガラスおよびそれらの組合せなどがある。
【0084】
本明細書で述べる組成物および方法に用いることができる微細孔膜を製造するのに用いることができる具体例としてのポリマーは、置換または非置換ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリメタクリルアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリビニル親水性ポリマー、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、コポリマーまたはスチレンおよびジビニルベンゼン、芳香族ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、過フッ化熱可塑性ポリマー、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、超高分子量ポリエチレン、二フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエステル並びにそれらの組合せを包含するが、これらに限定されない。
【0085】
具体例としての市販の微細孔膜は、EMD Millipore Corp.(Billerica、MA)から入手できるDurapore(登録商標)およびMillipore Express(登録商標)、Pall Corp.(Port Washington、NY)から入手できるSupor(登録商標)、並びにSartorius Stedium Biotech S.A.(Aubagne Cedex、France)から入手できるSartopore(登録商標)およびSartobran(登録商標)である。
【0086】
他の具体例としての連続固体担体は、BIA Separations(Villach、Austria)から入手できるCIM(登録商標)モノリス材料などのモノリスである。
【0087】
具体例としての不連続固体担体は、多孔質クロマトグラフィービーズを包含する。当業者により容易に認識されるように、クロマトグラフィービーズは、多糖、アクリレート、メタクリレート、ポリスチレニクス、ビニルエーテル、制御多孔ガラス、セラミックおよび同類のもののような多種多様なポリマーおよび無機材料から製造することができる。
【0088】
具体例としての市販のクロマトグラフィービーズは、EMD Millipore Corp.製のCPG、GE Healthcare Life Sciences AB製のSepharose(登録商標)、Tosoh Bioscience製のTOYOPEARL(登録商標)およびLife Technologies製のPOROS(登録商標)である。
【0089】
他の具体例としての固体担体は、繊維マットおよびフェルトなどの織および不織布材料、並びに適切なハウジング、例えば、クロマトグラフィーカラム、ディスポーザブルプラスチックハウジングおよび同類のものに充填された繊維である。具体例としての固体担体は、翼状繊維も含む。
【0090】
III.具体例としての結合基
多種多様の結合基またはリガンドを固体担体に結合させ、本明細書で述べたように、試料からのタンパク質凝集体の効果的な除去のために用いることができる。一般的に、結合基は、溶液中のタンパク質凝集体を引きつけ、結合することができるべきである。結合基に対するタンパク質の引力は、イオン性(例えば、陽イオン交換基)、極性、分散性、疎水性、親和性、金属キレート化またはファンデルワールスを包含する任意の種類のものであり得る。
【0091】
具体例としてのイオン性結合基は、硫酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、カルボン酸、第一級、第二級、第三級アミンおよび第四級アンモニウム、ピリジン、ピリミジン、ピリジニウム、ピペラジンおよび同類のものなどのヘテロ環式アミンを包含するが、これらに限定されない。
【0092】
極性基は、C−O、C=O、C−N、C=N、C≡N、N−H、O−H、C−F、C−Cl、C−Br、C−S、S−H、S−O、S=O、C−P、P−O、P=O、P−Hのような分極性化学結合を含む様々な化学物質を包含する。具体例としての極性基は、カルボニル、カルボキシル、アルコール、チオール、アミド、ハロゲン化物、アミン、エステル、エーテル、チオエーテルおよび同類のものである。
【0093】
疎水性結合基は、疎水性相互作用の能力がある。具体例としての疎水性基は、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、フルオロアルキル、アリールおよび同類のものである。
【0094】
親和性結合基は、標的タンパク質との高度に特異的な相互作用を一致してもたらすいくつかの結合官能基の配列である。具体例としての親和性結合基は、プロテインAおよびプロテインGおよびドメインおよびそれらの変異体を包含する。
【0095】
いくつかの実施形態において、好ましい結合基は、イオン性基である。特定の実施形態において、結合基は、負に荷電したスルホン酸基である。一般的に、負に荷電したスルホン酸基は、いくつかの利点を有する。例えば、それらは、溶液中の正に荷電したタンパク質に結合する広い適用可能性を示す;化学は、容易に利用できる多くの合成製造方法により、費用がかからず、簡単である;結合基とタンパク質との相互作用は、十分に理解されている(例えば、Steinら、J.Chrom.B、848巻(2007年)、151−158頁)、並びに相互作用は、溶液の状態を変化させることにより容易に操作することができる、およびそのような相互作用は、他の相互作用から分離することができる。
【0096】
IV.結合基を固体担体に結合させ、固体担体上の結合基の密度を制御する方法
本明細書で述べる組成物および方法において、適切な結合基を固体担体に結合させ、対象の生成物と比べてタンパク質凝集体に結合するより大きい能力を提供するように、固体担体上の結合基の密度を制御する。
【0097】
本明細書で述べる組成物および方法は、従来技術が高密度の結合基を有することが望ましいことを示唆しているように思われるにもかかわらず、固体担体上のより低密度の結合基がフロースルー式でのタンパク質凝集体の除去においてより効果的であるという驚くべき且つ予期しない発見に基づいている。本明細書で述べる組成物および方法は、例えば、五量体およびより高次のものなどの高次凝集体と比較してタンパク質の単量体から分離するのが一般的により困難である、例えば、二量体、三量体および四量体などの低次タンパク質凝集体のフロースルー式での除去において特に効果的である。
【0098】
当技術分野で公知の様々な方法および本明細書で述べるものは、本明細書で述べる方法に用いる固体担体に結合基を結合させるために用いることができる。一般的に、結合の成功の基準は、所望の結合基密度および結合基の脱離の低い率(すなわち、結合基の低い浸出)の達成を包含する。結合基は、固体担体に直接結合させることができ、またはポリマー分子に組み込むことができ、それを次に、固体担体に結合させることができる。或いは、結合基は、コーティングと固体担体の間の化学結合の形成を伴うまたは伴わない状態で、固体担体上に施された架橋コーティングに組み込むことができる。
【0099】
固体担体に結合基を結合させるための多くの方法が当技術分野で公知である(例えば、Ulbricht M.、Advanced Functional Polymer Membranes、Polymer、47巻、2006年、2217−2262頁参照)。これらの方法は、適切なカップリング化学による結合基による固体担体の直接修飾、ポリマー分子の吸着および結合を包含するが、これらに限定されない。後者は、「への」グラフティング(表面との反応の前にポリマーがあらかじめ調製されている場合)および「からの」グラフティング(表面基を用いて重合が開始される場合)により達成することができる。
【0100】
本明細書で述べたように、固体担体の表面上の結合基の密度を制御する能力は、タンパク質凝集体と対象の生成物の良好な分離を達成するために極めて重要である。mole/L多孔性媒体、またはMで表される結合基の密度は、当技術分野で公知の方法を用いて好都合に測定することができる。例えば、スルホン酸基の密度は、リチウムイオン交換分析を用いて測定することができる。この分析において、スルホン酸基の水素をリチウムイオンと完全に交換し、水で洗浄し、その後リチウムイオンを濃酸溶液中で洗い落とし、酸洗い溶液中のリチウム濃度をイオンクロマトグラフィーを用いて測定する。
【0101】
タンパク質クロマトグラフィーにおいて、より高い密度のリガンド(結合基)が通常望ましいものであった。その理由は、一般的にそれがより高い結合能力を提供するからである(例えば、Fogleら、J.Chrom.A.、1225巻(2012年)、62−69頁参照)。大部分の市販の陽イオン交換(CEX)樹脂の一般的なリガンド密度は、一価リガンドについて少なくとも100ミリ当量/L、またはmMである。例えば、SP Sepharose Fast FlowおよびCM Sepharose Fast Flow(両方がGE Healthcareから入手できる)は、製品文献にそれぞれ180−250mMおよび90−130mMの陽イオン交換基濃度を有することが示されている。
【0102】
固体担体上の結合基の密度を制御するために用いることができる多くの方法が当技術分野に存在する。結合基を固体担体上に直接結合させる場合、密度は、反応の時間の長さ、触媒の種類および濃度、試薬の濃度、温度並びに圧力により制御することができる。例えば、部分酸化または加水分解による、固体担体の表面の前処理(活性化)が必要である場合、前処理の程度によっても、そのような前処理済み表面に結合する結合基の密度が制御される。
【0103】
結合基を、固体担体上に吸着、付着、グラフトまたはコーティングされるポリマー構造に組み込む場合、結合基の密度は、当ポリマー構造の組成により制御することができる。制御された密度の結合基を有するポリマー構造を構築する1つのアプローチは、共重合、すなわち、単一ポリマー構造内への2種以上の単量体の重合である。結合基は、ポリマー構造を構築するために用いる単量体の種類の1つの一部であってよいが、他の中性単量体を加えて、結合基の密度を低下させることができる。
【0104】
結合基を含むポリマーを構築する際に用いる単量体の選択は、単量体の反応性によって決定づけられる。様々な種類の単量体の反応性およびポリマー組成に対する影響は、十分に研究され、実証されている(例えば、Polymer Handbook、第3版、John Wiley & Sons、1989年、II頁参照)。ポリマーの組成およびその構造を予測するモノマーの十分に受け入れられているパラメーターは、単量体の反応性比である(例えば、Odian、J.、Principles of Polymerization、第4版、John Wiley & Sons、2004年、466頁参照)。
【0105】
固体担体に結合基を結合させる好ましい方法は、固体担体上に施される架橋コーティングに結合基を組み込む原位置(in situ)重合反応である。この方法は、米国特許第4,944,879号および第4,618,533号並びに公開済み米国特許公開番号US2009/208784に開示されている。この方法は、経済的であるだけでなく、容易でもある。荷電コーティングは、荷電アクリル単量体、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)をN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミド(MBAM)などの適切な架橋剤と共重合することにより構築することができる。参照により本明細書にその全体として組み込まれる、米国特許公開番号US2009208784は、高分子量タンパク質凝集体の除去のためおよびナノ細孔ウイルスフィルターの容量を増大させるために用いることができるAMPSおよびMBAMの混合物で修飾された微細孔膜を開示している。しかし、前述の特許公開は、タンパク質凝集体および特に、二量体、三量体、四量体等の低次タンパク質凝集体の選択的除去を達成するための本明細書で述べたようなリガンド密度を制御することを述べていない。
【0106】
荷電結合リガンドの密度を低下させるために用いることができる中性単量体は、例えば、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸ヒドロキシエチルなどのアクリル、メタクリルおよびアクリルアミド単量体の大群から選択することができる。好ましい単量体は、ジメチルアクリルアミド(DMAM)である。AMPSおよびDMAM単量体の反応性の比(r=0.162、r=1.108)(例えば、Polymer Handbook、第3版、John Wiley & Sons、1989年、II/156頁参照)は、これらの単量体を包含するポリマーが、ポリ(DMAM)の短いブロックが個々のAMPS単位によって間隔をあけられ、それにより、結合基の密度を低下させる傾向を有することを予測する。したがって、反応溶液中のDMAMとAMPSの比を選択することは、結合基の密度の制御を達成するための重要な方法である。
【0107】
固体担体上に被覆される、結合基含有ポリマーの代表的な化学構造を図2Aに示す。ポリマーを被覆するために、それを一般的に他のポリマーに架橋させる。図2Aに、Rが例えば、スルホン酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸またはカルボキシル基などの陽イオン交換基を含有する脂肪族または芳香族有機残基であり、Rが荷電基を含まない脂肪族または芳香族有機残基であり、Rが2つ以上の任意のポリマー鎖間の非荷電脂肪族または芳香族有機リンカーであるポリマー構造を示す。
【0108】
図2Aに示すポリマー構造において、y>xであり、これは、中性基(「R」によって表される)が荷電基(「R」によって表される)より大きい数で存在することを意味する。ここで、x、yおよびzは、ポリマー中の各単量体の平均モル分率であり、独立に約0.001−0.999の範囲にある。記号mは、架橋剤の他端に結合している類似のポリマー鎖を単に示す。
【0109】
いくつかの実施形態において、結合基を含有するポリマーは、1つの種類の単量体(例えば、中性または荷電結合基を含有する)の長い連なりまたはブロックとそれに続く異なる種類の単量体(例えば、第1のブロックが中性である場合には荷電、第1のブロックが荷電されている場合には中性)の長い連なりまたはブロックを包含することを意味する、ブロックコポリマーである。
【0110】
他の実施形態において、結合基を含有するポリマーは、単量体をランダムな順序で含有する。
【0111】
さらに他の実施形態において、結合基を含むポリマーは、各単量体がいずれかの側の異なる種類の2つの単量体に常に隣接している、交互コポリマーである。
【0112】
いくつかの実施形態において、結合基を含有するポリマーの代表的な化学構造を図2Bに示し、図中、Rは、NHまたはOであり、Rは、−CH−、−C−、−C−、−C(CH−CH−、−C−および−C−のような線状若しくは分枝脂肪族または芳香族基であり、Rは、ポリマー鎖へのNH、OまたはSリンカーを含む線状若しくは分枝脂肪族または芳香族非荷電基である。
【0113】
他の実施形態において、結合基を含有するポリマーの代表的な化学構造を図2Cに示す。RおよびRは、1つまたは複数の中性脂肪族および芳香族有機残基を含有する群から独立に選択され、O、N、S、P、F、Clおよび他のものなどのヘテロ原子を含有してもよい。
【0114】
さらに他の実施形態において、結合基を含有するポリマーの代表的な構造を図2Dに示す。
【0115】
固体担体にグラフトされている、結合基を含有するポリマーの他の代表的な化学構造を図2Eに示す。固体担体を長方形として示す。図2Eに、Rが例えば、スルホン酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸またはカルボキシル基などの陽イオン交換基を含有する任意の脂肪族または芳香族有機残基であり、Rが荷電基を含有しない任意の脂肪族または芳香族有機残基であるポリマー構造を示す。図2Eに示すポリマー構造において、y>xであり、これは、中性基(「R」によって表される)が荷電基(「R」によって表される)より大きい数で存在することを意味する。
【0116】
いくつかの実施形態において、結合基を含有するグラフトポリマーは、1つの種類の単量体(例えば、中性または荷電結合基を含有する)の長い連なりまたはブロックとそれに続く異なる種類の単量体(例えば、第1のブロックが中性である場合には荷電、第1のブロックが荷電されている場合には中性)の長い連なりまたはブロックを包含することを意味する、ブロックコポリマーである。
【0117】
他の実施形態において、結合基を含有するポリマーは、単量体をランダムな順序で含有する。
【0118】
他の実施形態において、結合基を含有するポリマーは、各単量体が異なる種類の2つの単量体に常に隣接している、交互コポリマーである。
【0119】
いくつかの実施形態において、結合基を含有するポリマーの代表的な化学構造を図2Fに示し、図中、Rは、NHまたはOであり、Rは、−CH−、−C−、−C−、−C(CH−CH−、−C−および−C−のような線状若しくは分枝脂肪族または芳香族基であり、Rは、ポリマー鎖へのNH、OまたはSリンカーを含有する線状若しくは分枝脂肪族または芳香族非荷電基である。
【0120】
他の実施形態において、結合基を含有するポリマーの代表的な化学構造を図2Gに示す。RおよびRは、1つまたは複数の中性脂肪族および芳香族有機残基を含有する群から独立に選択され、O、N、S、P、F、Clおよび他のものなどのヘテロ原子を含有してもよい。
【0121】
さらに他の実施形態において、結合基を含有するポリマーの代表的な構造を図2Hに示す。
【0122】
図2B−2Dおよび2F−2Hにおけるスルホン酸基は、示すようにプロトン化された形並びにナトリウム、カリウム、アンモニウムおよび同類のものなどの適切な対イオンを含有する塩の形であり得る。
【0123】
IV.本明細書で述べる組成物を組み込む装置
いくつかの実施形態において、本明細書で述べたように、結合基が結合した固体担体を装置に組み込む。微細孔膜などの固体担体用の適切な装置は、ろ過カートリッジ、カプセルおよびポッドを包含する。具体例としての装置は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開番号US20100288690A1およびUS20080257814A1に開示された積層プレートろ過カートリッジも包含する。これらの装置の場合、固体担体がポリマーハウジングに永久的に結合され、装置は、液体入口、出口および通気開口部を有し、保持される液体の容積をさらに最小限にする。他の具体例としての装置は、ひだ状フィルターカートリッジおよびらせん状フィルターカートリッジを包含する。さらに他の具体例としての装置は、クロマトグラフィーカラムである。クロマトグラフィーカラムは、ガラス、金属、セラミックおよびプラスチックなどの多くの適切な材料から製造することができる。これらのカラムは、最終使用者により固体担体を充填することができ、または製造業者によりあらかじめ充填され、充填された状態で最終使用者に輸送することもできる。
【0124】
V.本明細書で述べる組成物および装置を使用する方法
結合基(例えば、陽イオン交換結合基)が結合した固体担体を含む装置は、フロースルー式でのタンパク質凝集体の除去のために用いることができる。分取規模に分離の適用の前に、プロセスを開発し、pHおよび伝導度などの溶液条件について開発およびバリデートしなければならず、装置へのタンパク質負荷の範囲を決定しなければならない。プロセス開発およびバリデーションの方法は、産業界において広く公知であり、日常的に実施されている。それらは、本明細書における実施例に示す実験計画(DoE)アプローチを通常含む。
【0125】
装置は、一般的に使用前に洗い流し、消毒し、適切な緩衝液と平衡化する。タンパク質溶液は、望ましい伝導度およびpHに調整し、その後、一定圧力または一定流量でポンプにより装置に通す。流出物を収集し、タンパク質収率および凝集体濃度について分析する。
【0126】
いくつかの実施形態において、凝集体除去のための装置は、本明細書で述べるように、例えば、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,118,675号に教示されているようにウイルス粒子のサイズに基づく除去を保証するために設計されているウイルスろ過装置に直接接続する。
【0127】
本明細書で述べる組成物および装置を用いるフロースルー凝集体除去ステップは、タンパク質精製プロセス、例えば、抗体精製プロセスにおいてどこにでも配置することができる。表1に肉太文字で強調されている、1つまたは複数の中間ステップとしてフロースルー凝集体除去を組み込んでいるタンパク質精製プロセスの例を示す。これらのプロセスの多くの変形形態を用いることができることが理解される。
【0128】
「タンパク質捕捉」ステップは、本明細書で述べるように、少なくとも以下の2つのステップを実施することにより清澄化または非清澄化細胞培養液試料から対象のタンパク質を単離することを含むタンパク質精製プロセスにおけるステップを意味する:(i)クロマトグラフィー樹脂、膜、モノリス、織または不織媒体上への対象のタンパク質の吸着;沈殿、凝集、結晶化、可溶性小分子またはポリマーリガンドへの結合の1つまたは複数から選択されるステップに細胞培養液を供し、それにより、例えば、抗体などの対象のタンパク質を含むタンパク質相を得るステップ;および(ii)溶出または適切な緩衝液中へのタンパク質の溶解により対象のタンパク質を再構成するステップ。
【0129】
結合および溶出精製は、対象のタンパク質を適切なクロマトグラフィー媒体に結合させるステップと、結合タンパク質を場合によって洗浄し、それを適切な緩衝液で溶出するステップとからなる任意選択プロセスステップである。
【0130】
フロースルーAEXポリシング(polishing)は、対象のタンパク質の媒体への著しい結合を伴わずに対象のタンパク質の溶液を適切なAEXクロマトグラフィー媒体に流すステップからなる任意選択プロセスステップである。
【0131】
活性炭フロースルーは、参照により本明細書に組み込まれる同時係属仮特許出願第61/575,349号に記載されているような、様々なプロセス関連不純物を除去するために設計された任意選択の精製ステップである。
【0132】
ウイルスろ過は、ウイルス粒子を高度のLRVに保持するが、実質的にすべての対象のタンパク質が通過するフラットシートまたは中空繊維の形であり得る多孔質膜にタンパク質溶液を流すステップからなる。
【0133】
【表1】
【0134】
上の表1において、抗体捕捉並びに結合/溶出精製のステップは、次の3つの方式のいずれかで操作することができると理解される:(1)回分式、捕捉媒体に標的タンパク質を装入し、装入を止め、媒体を洗浄し、溶出し、プールを収集する;(2)半連続式、装入を連続的に行い、溶出を間欠的に行う。例えば、2つ、3つまたはそれ以上のカラムを用いる連続多カラムクロマトグラフィー操作の場合;(3)完全な連続式、装入と溶出の両方を連続的に行う。
【0135】
本明細書で述べるフロースルー陽イオン交換固体担体について用いる最適の流量は、固体担体の凝集体除去性能に時として影響を及ぼすことがあり得、また固体担体がウイルスフィルターの上流に配置されている場合、ウイルスフィルターの性能にも影響を及ぼすことがあり得る。最適の流量は、対象のタンパク質溶液を用いる一連の簡単な実験で容易に決定することができる。一般的な流量は、約0.05−10CV/minの範囲内にある。
【0136】
表1に示すいくつかの具体例としてのプロセス、特にプロセスE、プロセスHおよびプロセスIは、本明細書で述べる方法を用いる凝集体除去を保証するが、結合および溶出陽イオン交換クロマトグラフィーステップを含まない。結合および溶出陽イオン交換クロマトグラフィーステップが除外されることにより、下流の精製プロセスに対して多くの重要な利点、すなわち、プロセス所要時間の節約、プロセス開発の単純化、浄化および浄化バリデーションの除外等がもたらされる。他の顕著な利点は、高伝導度溶出の除外であり、それにより、塩の添加なしに、ひいては後の希釈なしに全下流プロセスの実施が可能となる。
【0137】
本発明は、限定的であると解釈すべきでない以下の実施例によりさらに説明する。本明細書を通して引用したすべての参考文献、特許および公開特許出願並びに図は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0138】
[実施例1]
陽イオン交換(CEX)表面修飾膜の調製
この実験では、各種の密度の結合基を有する一連のCEX表面修飾膜を調製したが、結合基はこの場合、負に荷電したスルホン酸残基である。陽イオン交換基の密度は、表面修飾に用いた反応性溶液の配合(formulation)により制御した。より低い密度を達成するために、非荷電反応性単量体N,N−ジメチルアクリルアミドを種々の量で加えた。
【0139】
0−4.8重量%の範囲の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、0−4.8重量%の範囲のN,N−ジメチルアクリルアミド、および0.8重量%のN,N’−メチレンビスアクリルアミドを含有する一連の水溶液を調製した。0.65umの孔径評定および0.125mmの厚さを有する親水性超高分子量ポリエチレン膜を14cm×14cmの正方形断片に切断し、各断片を溶液の1つに30秒間沈めて、完全な濡れを確保した。過剰な溶液を除去し、膜を不活性雰囲気下で2MRadの電子線照射に曝露した。その後、膜を脱イオン水ですすぎ、風乾した。
【0140】
表2に調製したCEX表面修飾膜の変形形態を示す。リチウムイオン交換を用いて、陰イオン基密度が膜8(DMAM無添加)について0.13mmol/g、膜7(1:1AMPS:DMAM重量)について0.08mmol/gであったことが確認され、これらは、それぞれ34および21mMのリガンド密度に対応している。
【0141】
[実施例2]
静的容量測定を用いた凝集体結合選択性の分析
この実験では、実施例1で調製した様々な密度の結合基を有するCEX膜を、タンパク質単量体およびタンパク質凝集体に結合するそれらの選択性について試験した。
【0142】
約15%の凝集体を含有する、MAbIと呼ぶ部分的に精製したモノクローナル抗体の2g/L溶液を50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.0に溶解して調製した。14mmの膜ディスクを酢酸緩衝液に前浸漬し、次に0.5mLの抗体溶液に移した。溶液バイアルを15時間にわたって緩やかに振とうし、溶液中に残った分子量種をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。結果を表2に示す。
【0143】
MAbの一般的に低い収率は、この実験において膜に容量以下で負荷されたことを示すが、変形形態の1つである膜7は、二量体および高分子量(HMW)凝集体の事実上完全な除去を示した。このことは、強い凝集体結合選択性を達成することができることを示す。
【0144】
【表2】
【0145】
[実施例3]
部分的に精製したモノクローナル抗体(MAbI)のフロースルー式での凝集体の除去
代表的な実験において、フロースルー式でモノクローナル抗体を含有する試料からのタンパク質凝集体を除去するための本発明による膜の良好な使用が実証された。
【0146】
実施例1の膜7の5つの層を排出口付きポリプロプレン装置に封じ込め、前面膜ろ過面積を3.1cm、膜容積を0.2mLとした。この種の装置を以下で「マイクロ」装置と呼ぶ。4.5g/Lの精製MAbIをpH5.0の50mM酢酸緩衝液中に透析した。得られた物質は、部分的に精製したMAbIと呼び、これを約3.0mS/cmの伝導度を有するpH5の50mM酢酸で5%凝集体を含む1g/L MAbIの濃度に希釈した。次いで、物質(約80−100mL)を実施例1の膜7若しくは8を含有する0.2mL装置、またはPall Mustang(登録商標)S膜(Thermo Fisher Scientific,Inc.、Waltham、MAから市販されている)を含有する0.18mL Acrodisk装置に約1CV/minで通した。Mabを通す前に、膜装置を18mΩ水で濡らし、50カラム容積(CV)の50mM酢酸ナトリウム、pH5.0で平衡化した。MAb溶液のフロースルー物質を分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた分析のために収集した。結果を図3A−3Cに示す。実施例1で立証されたように膜8と比較して低い密度のAMPS結合基を有する膜7が凝集体に結合する優れた選択性を示すことは、明らかである。
【0147】
表3に約20%凝集体破過で測定した3種の膜の凝集体結合能を要約する。示したように、膜7は、市販の膜、例えば、Pall Mustang(登録商標)S膜並びに膜8と比べて凝集体結合能のほぼ3倍の増加を示す。
【0148】
【表3】
【0149】
[実施例4]
部分的に精製したモノクローナル抗体(MAbII)のフロースルー式での凝集体の除去
他の実験において、異なるモノクローナル抗体を含有する試料からのタンパク質凝集体の除去における本発明による膜の良好な使用を実証する。
【0150】
プロテインA精製MAbIIを1Mトリス塩基を用いてpH5.0に、5M NaCl溶液を用いて3.4mS/cmの伝導度に調整した。部分的に精製したMabIIと呼ぶ、得られた物質は、6g/Lの濃度を有し、2.4%の凝集体を含んでいた。次いで、物質(約18mL)を実施例1の膜7若しくは8を含有する0.2mL装置に通した。Mabを膜に通す前に、膜を18mΩ水で濡らし、50カラム容積(CV)の50mM酢酸ナトリウム、pH5.0で平衡化した。MAb溶液のフロースルー物質を分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた分析のために収集した。最初の2画分は、それぞれ約4.5mLであったが、残りの10画分は、それぞれ0.85mLであった。MAb処理の後、膜を20CVの50mM酢酸ナトリウム、pH5.0で洗浄した。結合タンパク質を50mM酢酸ナトリウム、pH5.0+1M NaClを用いて30CVで溶出した。膜に負荷したMAbIIの総量は、531mg/mlであった。MAb単量体収率は、フロースルー物質中の単量体の量と膜を通過した全単量体との比較に基づいて計算した。
【0151】
図4Aに示すように、約13g/Lまでの凝集体負荷で膜7の破過プールに非常にわずかな凝集体(プール中0.1%未満)が認められたが、膜8については凝集体破過が収集された最初の画分においてさえ認められ、膜7の優れた凝集体結合能が示唆される。膜8の破過プール中の凝集体の量は、0.8%であった。約13g/Lの凝集体負荷において、単量体収率は、膜8および膜7でそれぞれ93および86であった。収率はわずかに低かったが、凝集体の破過は、膜7については認められなかった。凝集体のより遅い破過は、より高い凝集体結合能の兆候である。これらの破過曲線は、分取規模の凝集体除去プロセスまたは装置の指針とするために用いることができる。例えば、膜7を含有する装置は、0.1%未満の凝集体のプール純度を達成するために少なくとも500g/Lまで負荷することができる。一般的に、単量体の収率を増加させ、プロセスに関連する総費用を低減するために、より高い負荷が非常に望ましい。さらに、より高い収率は、凝集体の破過が認められるまで負荷を増加させることまたは溶液の状態を変化させることにより達成することができる。フロースルーデータは、凝集体の除去に関する膜7の優れた性能を明確に示している。
【0152】
図4Bに膜7の2種のロットを用いた2回の異なる実験における破過プール中の単量体収率および凝集体レベルを示す。実験2では530mg/mlの実験1と比べて700mg/mlまで負荷した。溶液の状態(pHおよび伝導度)は、両実験で同様であったが、MAb濃度は、異なっていた(実験1:6g/L;実験2:4.4g/L)。プール中の凝集体の量は、両実験で同様であったが、収率の多少の差があった(しかし、収率の差は、MAb濃度を測定するために用いた分析技術の一般的な変動に起因する可能性がある)。興味深いことに、700g/mLのMAb負荷においてさえ、プール中の凝集体の量は0.25%にすぎず(実験2;図4B)、これにより、凝集体に対する結合能が15g/Lを超えることがわかる。
【0153】
[実施例5]
高pH誘導凝集体を含有する部分的に精製したモノクローナル抗体(MabIII)のフロースルー式での凝集体の除去
他の実験において、さらに他のモノクローナル抗体MAbIIIを含有する試料からのタンパク質凝集体の除去における本発明による膜の良好な使用を実証する。
【0154】
部分的に精製したモノクローナルIgG原料(MAbIII)の溶液を、3.5mS/cmの伝導度を有するpH5の50mM酢酸緩衝液に6g/Lに溶解して調製した。3.1cmのろ過面積および0.2mlの容積を有するマイクロろ過装置を5層の膜7を用いて前成形した。Mab溶液を通す前に、膜を18mΩ水で濡らし、50カラム容積(CV)の50mM酢酸ナトリウム、pH5.0で平衡化した。MAb溶液の流速は、2.5CV/minであり、分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた分析のために画分を収集した。膜上に負荷したMAbIIIの総量は、930mg/mlであった。単量体収率は、フロースルー物質中の単量体の量と膜を通過した全単量体との比較に基づいて計算した。
【0155】
MAbIおよびIIについての実施例3および4と同様に、膜7は、図5に示すようにMAbIII凝集体に対して高い選択性および高い結合能(>10mg/mL)を示した。
【0156】
[実施例6]
タンパク質単量体およびタンパク質凝集体の精製
この実験において、膜7のさらなる特徴付けのために純抗体単量体および凝集体の製剤を分取SECを用いて得た。
【0157】
単量体および凝集体は、Sephacryl S−300HR(GE Healthcare)樹脂を用いて混合物から精製した。4.5mLの部分的に精製した4.5−6g/LのMAbを330mLカラムに通した。MAbの注入の前に、カラムを1カラム容積(CV)のPBSで平衡化した。2つの溶出画分、すなわち、凝集体および単量体画分を収集した。凝集体画分は、3000MWカットオフAmicon UF膜を用いて10倍に濃縮し、分析SECを用いて分析した。凝集体含量は、約0.5g/Lの濃度を有するこれらの画分中70%を超えていた。
【0158】
[実施例7]
立体質量作用(SMA)モデルパラメーター:特性電荷(v)およびSMA平衡定数(KSMA)の測定
以下の実験は、本発明による膜について観測された凝集体結合選択性のメカニズムを解釈するためにデザインした。立体質量作用(SMA)モデル(例えば、Brooks C.A.およびCramer S.M.、Displacemnent profiles and induced salt gradients、AIChE Journal、38巻、1969−1978頁、1992年参照)を用いて、表面との凝集体相互作用の数(v)並びに表面に対する単量体および凝集体の親和性を反映する、単量体および凝集体の親和定数(KSMA)を測定した。
【0159】
SMAモデルを用いて非線型性イオン交換相互作用の複雑性の一部を説明するのに成功した。モデルは、直接的なタンパク質−リガンド相互作用に起因して「失われる」(例えば、または結合に利用できない)部位およびタンパク質障害に起因して立体的に「失われる」部位の両方を考慮することによって、タンパク質分子に利用できない部位を考慮に入れている。立体障害に起因して「失われた」部位の量は、結合タンパク質濃度に比例すると仮定する。単一成分系のSMA式は、以下によって与えられる。
【0160】
【数1】
ここで、QおよびCは、それぞれ結合および遊離タンパク質濃度である。Kは、SMA平衡会合定数であり、vは、特性電荷であり、σは、立体因子であり、Csaltは、遊離塩濃度であり、Qsaltは、イオン交換に利用できる結合塩濃度であり、Λは、樹脂の総イオン容量である。特性電荷は、イオン性相互作用によりタンパク質により占有された修飾固体担体上の部位の平均数であり、立体因子は、吸着剤への結合時にタンパク質により立体的に障害される部位の数である。
【0161】
吸着等温式の線型領域(Qが非常に小さい場合)については、Λ>>(σ+v)Qであり、我々は上式を以下に近似することができる。
【0162】
【数2】
【0163】
項Q/Cは、分配係数(K)と定義され、分配係数の比は、選択性(S)と定義される。分配係数の決定の代替方法は、線型領域における吸着等温式の勾配を計算することによるものである(例えば、米国特許第8,067,182号に記載されている)。
【0164】
1つの実験において、0.2mL膜マイクロ装置(膜7または8を含有する)を水を用いて濡らし、20CV(4mL)の50mM酢酸ナトリウム、pH5.0(緩衝液A)で平衡化した。100μlの0.5g/L精製単量体または凝集体(実施例に記載の精製プロセスによる)を注入した。結合タンパク質を緩衝液Aおよび緩衝液A+500mM NaClの20CV勾配を用いて溶出した。無勾配ランのための塩濃度は、タンパク質が溶出する塩濃度(伝導度)範囲に基づいて選択した。無勾配ランは、100μlのタンパク質を膜上に負荷することにより実施した。ランニングバッファーは、緩衝液A+塩(上述のように用いられるタンパク質溶出範囲に基づく種々の塩濃度)であった。溶出クロマトグラムは、UV280またはUV230シグナルを用いてモニターし、タンパク質ピークでの保持容量を記録した。SMAパラメーターは、Pedersenら(Pedersenら、Whey proteins as a model system for chromatographic separation of proteins、J.Chromatogr.B、790巻、161−173頁、2003年)に記載されているような無勾配溶出方法を用いて測定した。
【0165】
表4に膜8および7におけるMAbIのSMAパラメーターを要約する。表4に膜8および7におけるMAbIIのSMAパラメーターを要約する。KSMAは、それぞれ膜8および7のイオン容量を34および21mMと仮定して求めた。78%の膜気孔率を用いた。
【0166】
【表4】
【0167】
【表5】
【0168】
両MAbについて、単量体および凝集体の特性電荷の差が膜7についてより高いことが認められ、単量体より凝集体で多数の相互作用が示唆される。さらに、親和性(KSMAからわかるように)が膜8より膜7に対して高い。
【0169】
図6Aおよび6Bに示すように、凝集体の分配係数(親和性の尺度)が膜8および7の両方の場合に単量体について観測されたものより高いことが認められ、それにより、単量体より凝集体に対する強い結合が示唆される。その効果が膜7の場合に膜8と比べてより顕著であることも認められ、凝集体除去に関する前者の優れた性能が実証されている。
【0170】
図7に示すように、膜7は、すべての塩濃度においてpH5.0で2種のMAb(MAbIおよびMABII)に対して膜8より高い選択性(S=凝集体のKpと単量体のKpとの比)を有する。特に、選択性は、両膜について塩濃度が低下するにつれて増加する。そして、興味深いことに、選択性の増加は、膜8より膜7ではるかに高く、結合基のより低い密度でさえより高い選択性を実現できたことがわかる。また、図7に示すように、最大の性能の恩恵(より高い単量体収率およびより高い凝集体除去)がより低い塩濃度(またはより高い選択性)でさえも実現された。
【0171】
[実施例8]
膜7の操作ウインドウの決定
代表的な実験において、実験計画法(DoE)アプローチを用いて、実際的なプロセスウインドウ、すなわち、溶液pH、イオン伝導度および本発明による膜上へのタンパク質負荷の組合せを達成することができることが示された。実験計画法(DoE)アプローチは、信頼できる操作条件を明らかにするための広く受け入れられたエンジニアリングツールである(例えば、Anderson M.J.およびWhitcomb P.J.、2010 Design of Experiments.Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、1−22頁参照)。
【0172】
操作ウインドウを決定するために3要因を用いたDoEアプローチを用いた中心複合応答局面を実施した。検討したパラメーターは、pH、伝導度および凝集体負荷であった。様々な量の部分的に精製したNAbI(0.5−2.1mL)を様々な条件(表5)で13μlの膜とともに20時間インキュベートした。次いで、上清を分析SECを用いて凝集体および収率について分析した。
【0173】
【表6】
【0174】
このDoE試験により、収率および凝集体除去に関する膜性能を測定するうえでの3つの重要な操作パラメーター、すなわち、負荷、pHおよび伝導度が強調され、所望の操作ウインドウを定義する簡単な手順が示唆された。結果を図8および9にプロットする。
【0175】
[実施例9]
熱誘導凝集体を含有する原料流を用いた抗体精製時の下流ウイルスフィルターの保護における本発明による膜の使用
この実施例では、本明細書で述べる1つまたは複数の陽イオン交換基を含む膜を良好に用いて、精製プロセスにおける下流ウイルスフィルターの処理量を増加させることができることを示す。
【0176】
一般的に、抗体原料を前処理するための表面修飾膜をウイルスろ過の前に用いることができることが以前に報告された(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,118,675号およびPCT公開番号WO2010098867参照)。ウイルスろ過の費用は高いため、フィルターの処理量の増加は、タンパク質製品の最終価格に直接的な影響を及ぼす。EMD Millipore Corporationから入手できるもの、例えば、Viresolve(登録商標)PrefilterおよびViresolve(登録商標)Pro Shieldを包含するウイルスフィルターの処理量を特に増加させるための多くの市販製品が現在販売されている。しかし、本明細書で示すように、本発明による膜は、従来技術で記載または現在市販されているものと比較して、下流ウイルスフィルターを保護する点がはるかに優れている。
【0177】
ウイルスフィルターの保護の試験用の熱ショックポリクローナルIgG原料は、以下の手順により、SeraCare Life Sciences(Milford、MA)製のIgG(8.1または16.0mS/cm(NaClを用いた)のpH5、50mM酢酸塩中ヒトガンマグロブリン5%溶液、カタログ番号HS−475−1L)を用いて0.1g/Lで調製した。1リットルの0.1g/L溶液(8.1または16.0mS/cmの)を65°セ氏に設定した恒温水浴中で達温後1時間にわたって加熱しながら170rpmで撹拌した。溶液を熱および撹拌から除去し、3時間にわたって室温に冷却し、次いで4℃で一夜冷蔵した。翌日、熱ショックポリクローナルIgGを室温まで加温した。適切な無菌化ろ過済みpHおよび伝導度緩衝液(8.1または16.0mS/cm)中0.1g/LポリクローナルIgGの新鮮な溶液を調製した。
【0178】
処理量試験用の最終溶液は、9容量%の熱ショックポリクローナルIgG保存溶液および新たに調製した0.1g/LポリクローナルIgG溶液を用いて調製した。最終pHおよび伝導度の調整は、10M HCl、NaOHまたは4M NaClを用いて行った。3.1cmのろ過面積を有するマイクロろ過装置を3層の膜を用いて前成形し、Viresolve(登録商標)Pro装置(EMD Millipore Corp.、Billerica、MA)と1:1の面積比で直列に配置した。両装置を緩衝液のみ(pH5、50mM酢酸塩、8.1または16.0mS/cm)を用いてあらかじめ濡らし、排出して空気を除去した。30psiの一定圧力下で、緩衝液mL/min単位の処理量の初期の流束を15分間の期間にわたり質量により測定して、初期の定流束値を求めた。原料を30psiの熱ショックポリクローナルIgG原料に切り替え、流束が初期の緩衝液のみの流束の25%に減衰するまで、体積処理量を測定し、時間に対してプロットした。熱ショックポリクローナルIgGの総処理量をV75においてL/m単位で測定し、ポリクローナルIgGのkg/m膜に換算した。表7からわかるように、膜7は、ウイルス除去フィルターに対して膜8より優れた保護(より大きい体積処理量)を提供した。
【0179】
【表7】
【0180】
[実施例10]
モノクローナル抗体原料流を用いた下流ウイルスフィルターの保護における本発明による膜の使用
部分的に精製したモノクローナルIgG原料(MAbIII)の溶液は、8.5mS/cm(添加NaClを用いた)の伝導度を有するpH5、50mM酢酸緩衝液中6g/Lに調製した。MAbIIIは、高pH(11)であらかじめショックを加えて、約4%の総凝集体(SEC−HPLCにより測定)を発生させた。3.1cmのろ過面積を有するマイクロろ過装置を3層の膜を用いて前成形し、Viresolve(登録商標)Pro装置(EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)と1:1の面積比で直列に配置した。両装置を無菌化ろ過済み緩衝液のみ(pH5、50mM酢酸塩、8.5mS/cm)を用いてあらかじめ濡らし、排出して空気を除去した。ウイルス膜も30psiの一定背圧を発生させた一定流量で10分間前処理した。次いで、MAbIII溶液を直列の装置に200L/(m−時間)の定流量で供給し、背圧対時間を測定した。実測背圧が30psiに到達したエンドポイントで総体積処理量を測定した。30psiカットオフにおけるL/m処理量を膜1m当たりのMAbのkg量に換算した。
【0181】
下の表8からわかるように、膜7は、ウイルス除去フィルターに対して膜8より優れた保護(より大きい体積処理量)をもたらした。
【0182】
【表8】
【0183】
[実施例11]
膜7と流体連通しているウイルスフィルターの性能に対する滞留時間の影響
この代表的な実験において、ウイルスろ過の性能に対する滞留時間の影響を検討する。ここで、ウイルスフィルターは、フロースルー精製プロセスにおける膜7の下流に配置されている。膜7を含有する装置およびウイルスろ過ステップへのより低い流速がウイルスフィルターのより高い処理量をもたらすことが認められる。
【0184】
膜面積3.1cmおよび膜容積0.12mLを有する膜7を含有する3層装置を3.1cmの膜面積を有するウイルスろ過装置に直列に接続する。20mM酢酸ナトリウムpH5.0緩衝液中約3mg/mLのポリクローナルヒトIgG(Seracare)を2つの接続した装置により処理する。実験は、2種の別個の流速100および200LMHで実施する。0.22μm無菌化フィルターを陽イオン交換クロマトグラフィー装置とウイルスろ過装置との間に配置する。
【0185】
種々の流量におけるアセンブリを通しての圧力を測定するために圧力センサーを用いる。通常、約50psiの圧力は、ウイルスろ過膜の汚染または閉塞の兆候である。図10に示すように、実験をより低い流速(すなわち、100LMH)で実施する場合、試料をより高い流速(すなわち、200LMH)で処理する場合と比べて、より多くの試料容積をウイルスろ過膜により処理することができる(すなわち、より高い処理量)。これは、高分子量IgG凝集体の結合の改善をもたらし、それにより、ウイルスフィルターの早期の閉塞を予防し得る、陽イオン交換クロマトグラフィー装置における試料のより長い滞留時間に起因すると思われる。
【0186】
[実施例12]
いくつかのフロースルー不純物除去ステップを1つに接続する
この代表的な実験において、純度および収率目標を満たしながら、いくつかの不純物除去ステップを1つの簡単な操作に接続する実現可能性を示す。これは、個々の装置、すなわち、活性炭、陰イオン交換クロマトグラフィー装置(例えば、ChromaSorb(商標))、pH変更用インラインスタティックミキサーおよび/またはサージタンク、本明細書で述べる凝集体除去用陽イオン交換フロースルー装置並びにウイルス除去装置(例えば、Viresolve(登録商標)Pro)を接続することによって行う。
【0187】
据付け、平衡化および手順は、以下に述べる。
【0188】
フロースルー精製トレインは、5つの主要な単位操作、すなわち、活性炭(前面に任意選択のデプスフィルター付き)、陰イオン交換クロマトグラフィー装置(例えば、ChromaSorb)、インラインpH調整用インラインスタティックミキサーおよび/またはサージタンク、凝集体除去用陽イオン交換フロースルー装置並びにウイルスろ過装置(例えば、Viresolve(登録商標)Pro)からなる。
【0189】
図11にこれらの単位操作を接続する順序を示す。
【0190】
必要なポンプ、圧力、伝導度およびUVセンサーをさらに包含することができる。
【0191】
すべての装置は、異なるステーションで個別に濡らし、次いで組み立てる。装置は、製造業者のプロトコールに従って濡らし、前処理する。手短に述べると、デプスフィルター(AIHCグレード)を100L/mの水と続いて5容積の平衡化緩衝液1(EB1;1Mトリス塩基pH11でpH7.5に調整したプロテインA溶出緩衝液)で洗い流す。0.55kg/LのMAb負荷を得るために、参照により本明細書に組み込まれる2011年8月19日に出願した同時係属米国仮特許出願第61/575,349号に記載のように2.5mLの活性炭を2.5cm Omnifitカラムに充填する。カラムを10CVの水で洗い流し、次いでpHがpH7.5に安定化するまで、EB1で平衡化する。4.3kg/Lの抗体負荷を得るために2つのChromaSorb装置(0.2および0.12mL)を直列に接続する。装置を水で12.5CV/minで少なくとも10分間、その後、5DVのEB1で濡らす。12のエレメントを有するディスポーザブルらせん状スタティックミキサー(Koflo Corporation、Cary、IL)を用いてインラインpH調整を行う。膜7を含有する2つの1.2mL装置を並列に接続して凝集体を除去する。したがって、それらは、約570mg/mLの抗体まで負荷することができる。
【0192】
それらを10DVの水と続いて5DVの平衡化緩衝液2(EB2;1M酢酸を用いてpH5.0に調整したEB1)で濡らす。装置を5DV(装置容積)のEB2+1M NaClでさらに処理し、次いで、5DVのEB2で平衡化する。3.1cmのVireSolve(登録商標)Pro装置を30psiに加圧した水で少なくとも10分間濡らす。次いで、流速が連続3分間一定になるまで、流速を1分毎にモニターする。すべての装置が濡れ、平衡化した後、上記の図に示すようにそれらを接続する。すべての圧力表示およびpH表示が安定化するまで、EB1を全系に流す。平衡化の後、原料(pH7.5に調整したプロテインA溶出液)をフロースルートレインに通す。ラン中、IgG濃度および不純物レベル(HCP、DNA、浸出PrAおよび凝集体)をモニターするために試料をサージタンクの前およびViresolve(登録商標)Proの後で採取する。原料を処理した後、システムを3死容積のEB1で洗い流して、装置内および配管内のタンパク質を回収する。
【0193】
接続フロースループロセスの原料は、回分式プロテインAプロセスで生成したMAbIVのプロテインA溶出液である。このMAb中の凝集体の自然レベルは1%を超えず、そのため、凝集体のレベルを増加させるための特殊な処置を開発した。緩やかに撹拌しながら水性NaOHで溶液のpHを11に上昇させ、1時間保持した。次に緩やかに撹拌しながら水性HClでpHを徐々にpH5に低下させた。pHサイクルをさらに4回反復した。凝集体の最終レベルは、SECにより測定したとき、約5%であり、主としてMAbIV二量体および三量体からなっている。次いで、原料をpH7.5、伝導度が約3mS/cmのトリス−HCl緩衝液中に透析した。
【0194】
このランで処理したMAb原料は、0.6mL/minの流速の102mLの13.5mg/mL MAbIVである。
【0195】
ChromaSorb後の装置負荷の関数としてのHCP破過は、10ppmの上限を下回っている(図12)。凝集体は、CEX装置により5%から1.1%に減少する(図13)。接続プロセスのMAbIVの収率は、92%である。Viresolve(登録商標)Pro装置における処理量は、>3.7kg/mであった。
【0196】
実施例13−19は、陽イオン交換樹脂または膜の代わりの固体担体としての翼状繊維を用いてフロースルー式で凝集体を除去するための組成物を製造する実現可能性を実証している。
【0197】
[実施例13]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾したポリマー強陽イオン交換(CEX)樹脂の調製
この代表的な実験において、グラフトAMPS/DMAMコポリマー表面を有し、負に荷電したスルホン酸残基である各種密度の結合基を有する一連の陽イオン交換(CEX)樹脂(強CEX)を調製した。強陽イオン交換基のリガンド密度および組成は、表面の修飾に用いた反応性溶液の組成により制御した。強陽イオン交換基の密度を変化させるために、AMPSおよびDMAMを様々なモル比で添加した。
【0198】
機械的攪拌機および滴下漏斗を備えた1000mL三頚フラスコに830mLの規定の容積に印しを付ける。このフラスコ中で、8.25gの水酸化ナトリウムを429.34gの脱イオン水に溶解する。溶液を0℃に冷却し、撹拌しながら13.68gのAMPSを数回に分けて徐々に加える。その後、26.22gのDMAMを加える。65%硝酸および/または1M水酸化ナトリウムの添加により、溶液のpH値を6.0−7.0に調整する。50ミクロンの平均粒径を有する400mLの沈降性ポリマーベースのビーズ樹脂を緩やかに撹拌しながら(120rpm)溶液に加える。反応混合物の総容積は、脱イオン水の添加により830mLに調節する(印しに従って)。混合物のpH値を65%硝酸の添加により再び6.0−7.0のpHに調整する。混合物を緩やかに撹拌し(120rpm)、40℃に加熱する。6.75gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)および2.96gの65%硝酸の15gの脱イオン水中溶液を激しい撹拌(220rpm)のもとで速やかに加える。次いで、反応混合物を40℃で120rpmで3時間撹拌する。
【0199】
その後、反応混合物をガラスフリット(多孔度P3)上に注ぎ、上清を吸引により除去する。残留樹脂を次の溶液で連続的に洗浄する:3x400mL脱イオン水、10x400mL 1M硫酸+0.2Mアスコルビン酸、3x100mL脱イオン水、10x400mL熱脱イオン水(60℃)、2x400mL脱イオン水、2x400mL 1M水酸化ナトリウム、2x100mL脱イオン水(脱イオン水による2回目の洗浄ステップ中に25%塩酸でpHを6.5−7.0に調整する)、2x400mL 70%エタノール/30%脱イオン水、2x100mL脱イオン水および2x100mL 20%エタノール/80%脱イオン水+150mM NaCl。
【0200】
上記の洗浄操作を完了した後、樹脂を20%エタノール、80%脱イオン水および150mM NaClの溶液中1:1(v/v)懸濁液として保存する。
【0201】
表9にこの実施例に従って調製した各種モル比のAMPSおよびDMAMを有する合成スルホン酸含有強CEX樹脂を示す。
【0202】
【表9】
【0203】
[実施例14]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾したポリマー強陽イオン交換(CEX)樹脂を用いたモノクローナル抗体原料からの凝集体の除去
樹脂試料ロット番号12LPDZ119、12LPDZ128および12LPDZ129を6.6mmの内径を有するOmnifit(登録商標)クロマトグラフィーカラムに3cmの層高まで充填して、約1mLの充填樹脂層を得た。AKTA Explorer 100(クロマトグラフィーシステム)を装着し、フロースルークロマトグラフィーについてこれらのカラムをスクリーニングするのに適する緩衝液で平衡化した(表10)。樹脂試料12LPDZ119、12LPDZ128および12LPDZ129を含有するクロマトグラフィーカラムを平衡化緩衝液を有するクロマトグラフィーシステム上に装着した。原料は、ProSep(登録商標)Ultra Plusアフィニティークロマトグラフィー媒体を用いて精製し、2Mトリス塩基でpH5.0に調整したIgG1(MAbB)であった。プロテインAプールの最終MAbB濃度は、13.8mg/mLであり、2.05%の凝集生成物を含有し、伝導度は、約3.5mS/cmであった。樹脂に3分の滞留時間で、414mg/mLの負荷密度まで負荷した。
【0204】
【表10】
【0205】
フロースルー物質を2mL画分で収集し、NanoDrop2000分光光度計で総タンパク質濃度について分析し、凝集体含量をサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)により定量した。凝集体定量試験は、0.2Mリン酸ナトリウムpH7.2の平衡化緩衝液を用いてTosoh Bioscience TSKGel G3000SWXL、7.8mmx30cm、5μm(カタログ番号08541)カラムで実施した。結果は、mAbB単量体タンパク質が凝集生成物より比較的にはるかに低い累積タンパク質負荷でフロースルー画分に高濃度で収集されることを示している。
【0206】
ロット#12LPDZ119については、414mg/mLの累積タンパク質負荷で368.1mgまたは約88.9%のタンパク質が回収され、凝集体レベルは、2.05%からフロースルー画分における0.39%に低下し、ストリッププールは、21.2%の凝集体を含有しており、凝集体を選択的に保持する樹脂の能力が示唆される。
【0207】
ロット#12LPDZ128については、414mg/mLの累積タンパク質負荷で357.9mgまたは約86.4%のタンパク質が回収され、凝集体レベルは、2.05%からフロースルー画分における0.14%に低下し、ストリッププールは、13.4%の凝集体を含有しており、凝集体を選択的に保持する樹脂の能力が示唆される。
【0208】
ロット#12LPDZ129については、414mg/mLの累積タンパク質負荷で359.9mgまたは約86.9%のタンパク質が回収され、凝集体レベルは、2.05%からフロースルー画分における0.52%に低下し、ストリッププールは、16.8%の凝集体を含んでおり、凝集体を選択的に保持する樹脂の能力が示唆される。
【0209】
図14にロット#12LPDZ119についてのmAbB単量体および凝集体の破過を示し、図15にロット#12LPDZ128についてのMAbB単量体および凝集体の破過を示し、図16にロット番号12LPDZ129についてのMAbB単量体および凝集体の破過を示す。
【0210】
図14に示すように、ロット#12LPDZ119の樹脂について、フロースルー画分に収集されたMAbBの濃度は、110mg/mLの累積タンパク質負荷によりその最初の負荷濃度の90%を超える値に達する。これに反して、凝集体レベルは、414mg/mLの累積タンパク質負荷でわずか0.56%または最初の負荷濃度の27.8%であった。これにより、樹脂が、タンパク質単量体(MAb)がその総初期質量の88.9%で回収されることを可能にすると同時に凝集種を高タンパク質負荷に選択的に保持することが示唆される。
【0211】
図15に示すように、ロット#12LPDZ128の樹脂について、フロースルー画分に収集されたmAbBの濃度は、138mg/mLの累積タンパク質負荷によりその最初の負荷濃度の90%を超える値に達する。これに反して、凝集体レベルは、414mg/mLの累積タンパク質負荷でわずか0.42%または最初の負荷濃度の20.9%であった。これにより、樹脂が、タンパク質単量体がその総初期質量の86.4%で回収されることを可能にすると同時に凝集種を高タンパク質負荷に選択的に保持することが示唆される。
【0212】
図16に示すように、ロット#12LPDZ129の樹脂について、フロースルー画分に収集されたmAbBの濃度は、110mg/mLの累積タンパク質負荷によりその最初の負荷濃度の90%を超える値に達する。これに反して、凝集体レベルは、414mg/mLの累積タンパク質負荷でわずか0.99%または最初の負荷濃度の49.2%であった。これにより、樹脂が、タンパク質単量体がその総初期質量の86.9%で回収されることを可能にすると同時に凝集種を高タンパク質負荷に選択的に保持することが示唆される。
【0213】
[実施例15]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾したポリマー強陽イオン交換(CEX)樹脂の調製
250mLガラスジャー中に、Toyopearl HW75−Fクロマトグラフィー樹脂の64ml湿潤ケーキを加えた。次に、115gの5M水酸化ナトリウム、18.75gの硫酸ナトリウムおよび4mLのアリルグリシジルエーテル(AGE)を樹脂を含有するジャーに加えた。次いで、ジャーを50℃のハイブリダイザー中に入れ中速度で一夜回転させた。翌日、樹脂を焼結ガラスフィルターアセンブリ(EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)でろ過排液し、湿潤ケーキをメタノールで洗浄し、次いで、脱イオン水ですすいだ。ガラスバイアル中に、AGE活性化樹脂の10mLの湿潤ケーキを加えた。ガラスバイアルに、0.2gの過硫酸アンモニウム、0.3gのAMPS、1.2gのDMAMおよび48gの脱イオン水を加え、バイアルを60℃に16時間加熱した。翌日、樹脂を焼結ガラスフィルターアセンブリ(EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)でろ過排液し、湿潤ケーキをメタノールおよび脱イオン水の溶液で洗浄し、樹脂をロット#1712とラベル表示した。
【0214】
[実施例16]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾したポリマー強陽イオン交換(CEX)樹脂を用いたモノクローナル抗体原料からの種々の滞留時間での凝集体の除去
実施例14からの得られた樹脂ロット#1712を6.6mmの内径を有するOmnifit(登録商標)クロマトグラフィーカラムに3cmの層高まで充填して、約1mLの充填樹脂層を得た。AKTA Explorer 100(クロマトグラフィーシステム)を装着し、フロースルークロマトグラフィーについてこれらのカラムをスクリーニングするのに適する緩衝液で平衡化した(実施例14と同様)。樹脂試料を含有するクロマトグラフィーカラムを平衡化緩衝液を含むクロマトグラフィーシステム上に装着した。原料は、ProSep(登録商標)Ultra Plusアフィニティークロマトグラフィー媒体を用いて精製し、2Mトリス塩基でpH5.0に調整したIgG1(mAb5)原料であった。プロテインAプールの最終濃度を4mg/mLに希釈し、5.5%の凝集生成物を含有し、伝導度は、約3.2mS/cmであった。樹脂に1、3または6分の滞留時間で、144mg/mLの負荷密度まで負荷した。3分の滞留時間のストリップピーク画分は、95.6%の凝集体を含有しており、凝集種に対する高いレベルの選択性が示唆される。結果を下の表11に示す。
【0215】
表11にpH5.0における6、3または1分の滞留時間でのMAb5を含むロット#1712における単量体および凝集体の保持を示す。表11に示すように、大抵は、試験したすべての滞留時間について単量体種を凝集種と比較して比較的早期に原料濃度に近い濃度で収集することができ、これは、選択性が流速に対して比較的に鈍感であることを示唆するものである。
【0216】
【表11】
【0217】
図17にpH5および3分の滞留時間におけるMAb5を含むロット番号1712のクロマトグラムを示す。図17に示すように、生成物の大部分がフロースルーで収集され、これは、タンパク質のUVトレースの比較的に速やかな破過によって示されている。ストリップピークサイズは、一般的に条件および負荷された総質量によって異なるが、わずか5.5%の凝集体を有する負荷材料と比較して、95.6%と凝集体種に比較的富んでいた。
【0218】
[実施例17]
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用い、その後、クロマトグラフィー樹脂を用いたモノクローナル抗体の精製
本明細書で述べる代表的な実験において、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用い、その後、本発明によるクロマトグラフィー樹脂を用いて、モノクローナル抗体を精製した。この実験の結果は、フロースルー式で行う場合に、本方法が伝導度の増加または希釈の使用を必要としなかったという予期しない所見を示すものである。
【0219】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の細胞培養においてIgG1(MAb5)を発現させた。細胞培養は、2段階デプスろ過とそれに続く無菌化ろ過により清澄化した。0.5mg/mLのmAb5を含有する清澄化細胞培養をProSep(登録商標)Ultra Plusアフィニティークロマトグラフィー媒体(プロテインA)を用いて最初に精製した。用いたプロテインAクロマトグラフィー溶出緩衝液は、100mM酢酸であった。プロテインA溶出プールを2Mトリス塩基を用いてpHを5.0に調整し、得られた溶液は、約3.5mS/cmの伝導度を有していた。樹脂ロット番号1712は、3分の滞留時間で本明細書で述べた方法によりフロースルー式で操作し、フロースルー画分を収集し、小分割量を分析のために留保した。
【0220】
フロースルー画分をプールし、pH7.5に調整し、塩耐性陰イオン交換膜吸着剤であり、5kg/Lに負荷したChromaSorbまたは陰イオン交換樹脂であり、150mg/mLに負荷したFractogel TMAEのいずれかを用いてフロースルー式で流した。各画分についてタンパク質濃度、凝集体レベル、浸出プロテインAおよびチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)を分析した。結果を下の表12に示す。
【0221】
【表12】
【0222】
一般的に、クロマトグラフィー精製プロセスは、陰イオン交換クロマトグラフィーの前のステップとして伝統的な結合および溶出陽イオン交換クロマトグラフィーを含み、伝導度を陰イオン交換フロースルークロマトグラフィーに適するレベルに低下させるために希釈ステップまたは緩衝液交換ステップをさらに必要とする。しかし、表12に示すように、本発明による陽イオン交換媒体を用いる本明細書で述べたプロセスは、機能するために伝導度の増加を必要とせず、したがって、精製ステップの前の希釈ステップまたは緩衝液交換ステップを必要としない。
【0223】
[実施例18]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾した強陽イオン交換(CEX)翼状繊維の調製
この代表的な実験において、陽イオン交換翼状繊維を固体担体として用いた。
【0224】
1Lガラスジャー中で、20gの乾燥ナイロン多葉状または翼状繊維を400gの4M水酸化ナトリウム、24gの硫酸ナトリウムおよび160mLのアリルグリシジルエーテル(AGE)と混合した。次いで、ジャーを50℃のハイブリダイザー中に入れ中速度で一夜回転させた。翌日、繊維を焼結ガラスフィルターアセンブリでろ過し、次いで、繊維をメタノールで洗浄し、Milli−Q水ですすいだ。一日後、繊維を水で、続いてメタノールで、次いで再び水で洗浄し、吸引して乾燥ケーキとし、真空オーブン中で50℃で1日間乾燥した。得られた試料を試料#1635とラベル表示した。3つの別個のガラスバイアルにおいて、試料#1635の2g乾燥ケーキ(AGE活性化繊維)を秤取し、グラフトによるさらなる修飾のためにガラスバイアルに加えた。ガラスバイアルに、過硫酸アンモニウム、AMPS、DMAMおよび脱イオン水を表13に指定した量で加え、バイアルを連続的に回転しながら60℃に16時間加熱した。翌日、繊維試料を焼結ガラスフィルターアセンブリでろ過し、湿潤ケーキを脱イオン水の溶液で洗浄した。繊維を含むバイアルをロット#1635−1、1635−2および1635−5とラベル表示した。次に、ロット#1635−5は、約28μmol/mLであることが認められた小イオン容量のために滴定した。次いで、試料#1635−1および1635−2も28μmol/mL未満の小イオン容量を有していたことが推測された。
【0225】
【表13】
【0226】
[実施例19]
AMPS/DMAMグラフトコポリマーで修飾した強陽イオン交換(CEX)翼状繊維を用いたモノクローナル抗体原料からの凝集体の除去
実施例17から得られた修飾翼状繊維ロット#1635−1、#1635−2および#1635−5を6.6mmの内径を有するOmnifit(登録商標)クロマトグラフィーカラムに3cmの層高まで充填して、約1mLの充填繊維層を得た。AKTA Explorer 100(クロマトグラフィーシステム)を装着し、フロースルークロマトグラフィーについてこれらのカラムをスクリーニングするのに適する緩衝液で平衡化した(実施例13と同様)。翼状繊維試料を含有するクロマトグラフィーカラムを平衡化緩衝液を含むクロマトグラフィーシステム上に装着した。原料は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製し、2Mトリス塩基でpH5.0に調整したIgG1(mAb5)原料であった。プロテインAプールの最終濃度は、4mg/mLであり、5.5%の凝集またはHMW生成物を含有していた。繊維ロット#1635−1およびロット#1635−2を充填したカラムに64mg/mLの質量負荷まで負荷し、繊維ロット1635−5を充填したカラムに80mg/mLの質量負荷まで負荷した。結果を下の表14に示す。
【0227】
【表14】
【0228】
本明細書は、参照により組み込まれる、本明細書内で引用した参考文献の教示に照らして最も十分に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明における実施形態の実例を提供するものであり、その範囲を限定するものと解釈すべきでない。当業者は、多くの他の実施形態が本発明により含まれることを容易に認識する。すべての刊行物および発明は、参照によりそれらの全体として組み込まれる。参照により組み込まれる資料が本明細書と矛盾または不整合である限りにおいて、本明細書は、任意のそのような資料に優先する。本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを容認するものではない。
【0229】
特に示さない限り、特許請求の範囲を包含する本明細書で用いた成分、細胞培養の量を表すすべての数、処理条件などは、すべての事例において「約」という語により修飾されると理解すべきである。したがって、特に反対の明示がない限り、数値パラメーターは、近似であり、本発明により得ようとする所望の特性によって変化し得る。特に示さない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という語は、該系列におけるすべての要素を指すと理解すべきである。当業者は、本明細書で述べた本発明の特定の実施形態の多くの同等物を認識する、または常用の域を出ない実験を用いて確認することができる。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲によって含まれるものとする。
【0230】
当業者には明らかなように、本発明の多くの変更および変形は、その精神および範囲から逸脱することなく、行うことができる。本明細書で述べた特定の実施形態は、例としてのみ記載するものであって、限定的であることを意味するものでない。明細書および実施例は、例示的なものとしてのみみなすものとし、本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17