(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
[重合体粒子]
本発明に係る重合体粒子は、例えば、拡散板、光拡散フィルム、防眩フィルム等の光学用部材として表示装置の分野に用いられている。本発明に係る重合体粒子は、下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される水酸基含有単量体に由来する構成単位と、単官能(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位と、単官能スチレン系単量体に由来する構成単位と、架橋性単量体等のビニル系単量体に由来する構成単位とを含む。
【0023】
一般式(1)
【化5】
(一般式(1)において、RはH又はCH
3を表し、mは0〜50の数を表し、nは0〜50の数を表し、m及びnは、同時に0にはならない。また、m及びnは、いずれも1〜30が好ましい。)
一般式(2)
【化6】
(一般式(2)において、Rはそれぞれ独立してH又はCH
3を表し、pは1〜50の数を表す。また、pは1〜30が好ましい。)
【0024】
上記単量体のうち、一般式(1)で表される水酸基含有単量体の市販品としては、例えば、日油株式会社製の「ブレンマー(登録商標)」シリーズが挙げられる。さらに、前記「ブレンマー(登録商標)」シリーズの中で、「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」(前記一般式(1)で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH
3、mが平均して約3.5、nが平均して約2.5のもの)、「ブレンマー(登録商標)70PEP−350B」(前記一般式(1)で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH
3、mが平均して約5、nが平均して約2のもの)、「ブレンマー(登録商標)PP−1000」(前記一般式(1)で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH
3、mが0、nが平均して約4〜6のもの)、「ブレンマー(登録商標)PP−500」(前記一般式(1)で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH
3、mが0、nが平均して約9のもの)、「ブレンマー(登録商標)PP−800」(前記一般式(1)で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH
3、mが0、nが平均して約13のもの)、「ブレンマー(登録商標)PE−90」(前記一般式(1)で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH
3、mが平均して約2、nが0のもの)、「ブレンマー(登録商標)PE−200」(前記一般式(1)で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH
3、mが平均して約4.5、nが0のもの)、「ブレンマー(登録商標)PE−350」(前記一般式(1)で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH
3、mが平均して約8、nが0のもの)等が本発明に好適である。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
一般式(2)で表される水酸基含有単量体の市販品としては、例えば、株式会社ダイセル製の「プラクセル(登録商標)FM」シリーズが挙げられる。前記「プラクセル(登録商標)FM」シリーズの中で、プラクセル(登録商標)FM2D(前記一般式(2)で表される化合物であって、RがCH
3であり、pが2であるもの)、プラクセル(登録商標)FM3(前記一般式(2)で表される化合物であって、RがCH
3であり、pが3であるもの)等が本発明に好適である。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
単官能(メタ)アクリル系単量体は、エチレン性不飽和基を一つ有する(メタ)アクリル系単量体である。単官能(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル系単量体等が挙げられる。なお、本出願書類において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを意味するものとする。
【0027】
上記単官能(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部として、25℃の水に対する溶解度が0.45重量%以下の単官能(メタ)アクリル系単量体を使用すると、一般式(1)で表される水酸基含有単量体が重合体粒子内部に取り込まれにくく表層に存在しやすくなるため、アルコール系溶剤分散性の点で好ましい。25℃の水に対する溶解度が0.45重量%以下の単官能(メタ)アクリル系単量体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸n−ブチル(25℃の水に対する溶解度が0.04重量%)、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルが挙げられ、これらの中でも、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルを使用することが特に好ましい。
【0028】
なお、本明細書において、水への溶解度は、次の方法で測定されるものとする。
(水に対する溶解度の測定方法)
水と単官能(メタ)アクリル系単量体とを重量比1:1で混合し、25℃で30分間攪拌する。次いで、分液ロートを用いて水相と油相とを分離し、水相中に溶解した単官能(メタ)アクリル系単量体の量(重量%)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定する。
【0029】
また、上記単官能(メタ)アクリル系単量体は、単官能(メタ)アクリル系単量体及び単官能スチレン系単量体の合計量に対し、30〜95重量%含まれることが、アルコール系溶剤分散性の点から、好ましい。
【0030】
単官能スチレン系単量体は、エチレン性不飽和基を一つ有するスチレン系単量体である。単官能スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等が挙げられるが、これらの中でも、アルコール系溶剤分散性及び重合反応性の点でスチレンが好ましい。
【0031】
架橋性単量体は、複数のエチレン性不飽和基を有する多官能の単量体であり、架橋剤としての機能を有する。架橋性単量体としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、デカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能(メタ)アクリル系単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のジビニル系単量体が挙げられる。
【0032】
上述した単量体を構成単位とする本発明に係る重合体粒子は、構成単位として、水酸基含有単量体を3〜15重量%含むことが望ましく、また、架橋性単量体を3〜35重量%含むことが望ましい。水酸基含有単量体が3重量%より少ない場合、アルコール系溶剤等の親水性の有機溶剤中での分散性が不足し、塗工の作業性が低下する場合があり、15重量%より多い場合には、上記分散性が過剰になり、塗工、乾燥後に所望の凝集具合が得られない場合がある。架橋性単量体が3重量%より少ない場合、樹脂粒子の架橋度が低くなる、その結果、樹脂粒子をバインダーに分散させて分散液として塗工する場合に、樹脂粒子が膨潤して分散液の粘度上昇が起こり塗工の作業性が低下する虞がある。また架橋性単量体が35重量%より多い場合、上記架橋性単量体の使用量に見合った効果の向上が認められず、生産コストが上昇する場合がある。
【0033】
また、本発明に係る重合体粒子は、体積平均粒子径が、5μm以下となる様に合成される。なお、体積平均粒子径は、例えば、コールターカウンター法にて測定することができる。
【0034】
重合体粒子は、体積平均粒子径を5μm以下とすることにより、塗布及び乾燥を行って薄膜に加工されたときに、適当な数量で凝集して好ましい凸部を形成する。更には、1μm以上、5μm以下とすることにより好ましい凸部を形成する。
【0035】
なお、重合体粒子の体積平均粒子径が5μmより大きい場合、例えば、表示装置の表面の防眩フィルムとして用いたときに、重合体粒子が凝集して形成された凸部が急峻となるため、外光を散乱し過ぎることになり、表示面が白っぽくなる虞がある。また、重合体粒子の体積平均粒子径が1μmより小さい場合、例えば、表示装置の表面の防眩フィルムとして用いたときに、重合体粒子が凝集して形成された凸部が平坦になるため、外光を散乱させることができず、表示面への映り込みを抑えることができなくなる虞がある。
【0036】
上記重合体粒子の粒子径の変動係数(CV)は、15%以下であることが好ましい。これにより、防眩フィルムや光拡散フィルム等の光学部材に重合体粒子を使用したときに、光学部材の防眩性や光拡散性等の光学特性を向上させることができる。
【0037】
また、本発明に係る重合体粒子は、水酸基価が、5.0mgKOH/g以上、15mgKOH/g以下となるように合成される。なお、水酸基価は、例えば、水酸基価定量分析方法(JIS K 0070)にて測定することができる。
【0038】
重合体粒子は、水酸基価を、5.0〜15mgKOH/gとすることにより、バインダーと共にアルコール系溶剤等の親水性の有機溶剤中に分散させた場合に、親水性の有機溶剤内で適度に分散させることができる。即ち、本発明に係る重合体粒子は、凝集することなく均一に分散させることが可能であるとともに、塗布及び乾燥させたときに、分散し過ぎて凝集不良を起こすことがない。
【0039】
親水性の有機溶剤中で均一に分散することにより、例えば、防眩フィルム等の光学用フィルムを形成する場合に、ムラの無い均質な薄膜を形成することが可能となる。また、凝集不良を防止することにより、微細な凹凸を形成することができ、外部の蛍光灯から発せられる光等の外光を散乱させて映り込みを防止する防眩性を向上させることができる。
【0040】
さらに、重合体粒子は、体積平均粒子径を5μm以下とすることにより、塗布及び乾燥を行って薄膜に加工されたときに、適当な数量で凝集して好ましい凸部を形成する。
【0041】
なお、重合体粒子の体積平均粒子径が5μmより大きい場合、例えば、表示装置の表面の防眩フィルムとして用いたときに、重合体粒子が凝集して形成された凸部が急峻となるため、外光を散乱し過ぎることになり、表示面が白っぽくなる虞がある。
【0042】
重合体粒子中における各単量体に由来する構成単位の定量及び定性は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)等の分析方法を用いることにより、確認することができる。なお、単量体混合物中における各単量体の重量比と、重合体粒子中における各単量体に由来する構成単位の重量比とは略同一である。
【0043】
[重合体粒子の製造方法]
以下に、本発明に係る重合体粒子の製造方法について説明する。
本発明に係る重合体粒子は、シード重合にて製造することが好ましい。シード重合にて製造することにより、粒子径のバラツキを抑えることができる。粒子径のバラツキを抑えることにより、防眩フィルム、光拡散フィルム等の光学用フィルムとして使用した場合に、防眩性、光拡散性等の光学特性を向上させることが可能である。ただし、本発明に係る重合体粒子の製造は、必ずしもシード重合に限らず、乳化重合、懸濁重合等の重合方法にて行うことも可能である。
【0044】
本発明に係る重合体粒子の製造方法は、ビニル系単量体を重合させて重合体粒子を製造する重合体粒子の製造方法であって、前記ビニル系単量体は、前記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される水酸基含有単量体と、単官能(メタ)アクリル系単量体と、単官能スチレン系単量体と、架橋性単量体とを含み、前記水酸基含有単量体は、前記ビニル系単量体の全量に対し、3〜15重量%含まれ、前記ビニル系単量体の重合は、水性媒体中で、シード粒子に前記ビニル系単量体を吸収させて行うシード重合である。
【0045】
シード重合は、ビニル系単量体等の単量体を重合させた重合体からなるシード(種)粒子を用いて重合を行う方法であり、具体的には、シード粒子を作製し、水性媒体中で作製したシード粒子に他の単量体を吸収させ、シード粒子内で吸収させた単量体を重合させる方法である。
【0046】
シード重合では、まず、シード重合用の単量体と水性媒体と界面活性剤とを含む乳化液(懸濁液)にシード粒子を添加する。
【0047】
シード重合用の単量体としては、ビニル系単量体、例えば、単官能(メタ)アクリル系単量体、単官能スチレン系単量体、単官能(メタ)アクリル系単量体及び単官能スチレン系単量体の混合物等が挙げられる。
【0048】
水性媒体としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルコール(炭素数5以下のアルコール);水と低級アルコールとの混合物等が挙げられる。
【0049】
また、上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両イオン性界面活性剤の何れをも用いることができる。
【0050】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ石鹸等の脂肪酸石鹸;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;アルケニルコハク酸塩(ジカリウム塩);アルキルリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル等が挙げられる。
【0051】
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、アルキレン基の炭素数が3以上であるポリオキシアルキレントリデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック重合体等が挙げられる。
【0052】
上記カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0053】
上記両イオン性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル系界面活性剤、亜リン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。上記界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
シード重合における界面活性剤の使用量は、シード重合用の単量体100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲内であることが好ましい。界面活性剤の使用量が上記範囲より少ない場合には、重合安定性が低くなる虞がある。また、界面活性剤の使用量が上記範囲より多い場合には、界面活性剤分のコストが悪化する。
【0055】
添加する乳化液は、公知の方法により作製できる。例えば、単量体及び界面活性剤を水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により分散させることで、乳化液を得ることができる。上記水性媒体としては、水、又は、水と有機溶剤(例えば、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール))との混合物を用いることができる。
【0056】
シード粒子は、そのままで乳化液に添加されてもよく、水性媒体に分散された形態で乳化液に添加されてもよい。シード重合用のシード粒子が乳化液へ添加された後、シード重合用の単量体がシード粒子に吸収される。この吸収は、通常、乳化液を、室温(約20℃)で1〜12時間攪拌することにより行うことができる。また、シード粒子へのシード重合用の単量体の吸収を促進するために、乳化液を30〜50℃程度に加温してもよい。
【0057】
シード粒子は、単量体を吸収することにより膨潤する。吸収するシード重合用の単量体とシード粒子との混合比率は、シード粒子1重量部に対して、吸収する単量体が5〜300重量部の範囲内であることが好ましく、100〜250重量部の範囲内であることがより好ましい。吸収するシード重合用の単量体の混合比率が上記範囲より小さくなると、重合による粒子径の増加が小さくなるので、製造効率が低下する。一方、吸収するシード重合用の単量体の混合比率が上記範囲より大きくなると、シード重合用の単量体が完全にシード粒子に吸収されず、水性媒体中で独自に懸濁重合して、異常に粒子径の小さい重合体粒子が生成されることがある。なお、シード粒子へのシード重合用の単量体の吸収の終了は、光学顕微鏡の観察で粒子径の拡大を確認することにより判定することができる。
【0058】
そして、シード粒子に吸収された単量体を重合させることにより、本発明に係る重合体粒子を得ることができる。なお、単量体をシード粒子に吸収させて重合させる工程を複数回繰り返すことにより、本発明に係る重合体粒子を得るようにしても良い。
【0059】
重合させるシード重合用の単量体には、必要に応じて重合開始剤を添加しても良い。重合開始剤は、重合させる単量体に混合した後、得られた混合物を水性媒体中に分散させてもよいし、重合開始剤と重合させるシード重合用の単量体との両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた乳化液中に存するシード重合用の単量体の液滴の粒子径は、シード粒子の粒子径よりも小さくなるようにした方が、単量体がシード粒子に効率よく吸収されるので好ましい。
【0060】
重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、o−クロロ過酸化ベンゾイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、(2−カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物等が挙げられる。重合開始剤は、単量体100重量部に対して、0.1〜1.0重量部の範囲内で使用されることが好ましい。
【0061】
上記シード重合の重合温度は、重合させるシード重合用の単量体の種類及び必要に応じて用いられる重合開始剤の種類に応じて適宜決定することができる。シード重合の重合温度は、具体的には、25〜110℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましい。また、シード重合の重合時間は、1〜12時間であることが好ましい。シード重合の重合反応は、重合に対して不活性な不活性ガス(例えば窒素)の雰囲気下で行ってもよい。なお、シード重合の重合反応は、重合させる単量体及び必要に応じて用いられる重合開始剤がシード粒子に完全に吸収された後に、昇温して行われるのが好ましい。
【0062】
上記シード重合においては、重合体粒子の分散安定性を向上させるために、高分子分散安定剤を重合反応系に添加してもよい。上記高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、上記高分子分散安定剤と、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物とが併用されてもよい。これら高分子分散安定剤のうち、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンが好ましい。上記高分子分散安定剤の添加量は、シード重合用の単量体100重量部に対して1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。
【0063】
また、上記重合反応における水性媒体中での乳化粒子(粒子径の小さすぎる重合体粒子)の発生を抑えるために、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を水性媒体に添加してもよい。上記重合禁止剤の添加量は、ビニル系単量体100重量部に対して0.02〜0.2重量部の範囲内であることが好ましい。
【0064】
このようにして、シード粒子に吸収されたシード重合用の単量体を重合させることにより得られた重合体粒子は、重合完了後、必要に応じて遠心分離されて水性媒体が除去され、水及び/又は溶剤で洗浄された後、乾燥、単離される。シード重合により得られる重合体粒子の水性媒体からの単離方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレードライヤーに代表される噴霧乾燥法、ドラムドライヤーに代表される加熱された回転ドラムに付着させて乾燥する方法、凍結乾燥法等の方法が挙げられる。
【0065】
なお、シード粒子を得るべくシード重合用の単量体を重合するための重合法については、特に限定されるものではないが、分散重合、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合、懸濁重合等を用いることができる。シード重合によって略均一な粒子径の重合体粒子を得るためには、最初に略均一の粒子径のシード粒子を使用し、これらのシード粒子を略一様に成長させることが必要になる。原料となる略均一な粒子径のシード粒子は、単官能(メタ)アクリル系単量体、単官能スチレン系単量体等のビニル系単量体をソープフリー乳化重合(界面活性剤を使用しない乳化重合)及び分散重合等の重合法で重合することによって作ることができる。したがって、シード粒子を得るための重合法としては、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合及び分散重合が好ましい。
【0066】
シード粒子を得るための重合においても、必要に応じて重合開始剤が使用される。前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、o−クロロ過酸化ベンゾイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。上記重合開始剤の使用量は、シード粒子を得るために使用するシード重合用の単量体100重量部に対して0.1〜3重量部の範囲内であることが好ましい。上記重合開始剤の使用量の加減により、得られるシード粒子の重量平均分子量を調整することができる。
【0067】
シード粒子を得るための重合においては、得られるシード粒子の重量平均分子量を調整するために、分子量調整剤を使用してもよい。前記分子量調整剤としては、n−オクチルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;α−メチルスチレンダイマー;γ−テルピネン、ジペンテン等のテルペン類;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等を使用できる。上記分子量調整剤の使用量の加減により、得られるシード粒子の重量平均分子量を調整することができる。
【0068】
本発明の重合体粒子は、防眩フィルムや光拡散フィルム等の光学用フィルム等の光学部材用として好適であり、また、バインダーに分散させて分散液として使用するのに好適である。
【0069】
[光学用フィルム及びその製造方法]
本発明に係る光学用フィルムは、本発明の分散液を基材フィルム上に塗布してなり、本発明の分散液は、重合体粒子とバインダーとを含み、前記重合体粒子が分散質として分散されている。
【0070】
続いて、本発明に係る重合体粒子を用いた光学用部材の製造方法を説明する。ここでは光学用部材として、防眩フィルム等の光学用フィルムを製造する例について説明する。本発明に係る光学用フィルムの製造には、本発明に係る重合体粒子等の分散質をバインダー等の分散媒に分散させた本発明に係る分散液が用いられる。具体的には、重合体粒子等の分散質を、バインダー等の分散媒に分散させたコーティング用の分散液を基材フィルム上に塗工し、乾燥させることにより、基材フィルム上に塗膜として形成することにより本発明に係る光学用フィルムが得られる。
【0071】
バインダーとしては、透明性、重合体粒子分散性、耐光性、耐湿性及び耐熱性等の要求される特性に応じて、当該分野において使用されるものであれば特に限定されるものではない。バインダーとしては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂;(メタ)アクリル−ウレタン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;メラミン系樹脂;スチレン系樹脂;アルキド系樹脂;フェノール系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリエステル系樹脂;アルキルポリシロキサン系樹脂等のシリコーン系樹脂;(メタ)アクリル−シリコーン系樹脂、シリコーン−アルキド系樹脂、シリコーン−ウレタン系樹脂、シリコーン−ポリエステル樹脂等の変性シリコーン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテル重合体等のフッ素系樹脂等のバインダー樹脂が挙げられる。
【0072】
バインダー樹脂は、コーティング用の分散液の耐久性を向上させる観点から、架橋反応により架橋構造を形成できる硬化性樹脂であることが好ましい。硬化性樹脂は、種々の硬化条件で硬化させることができる。硬化性樹脂は、硬化のタイプにより、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、温気硬化性樹脂等に分類される。
【0073】
熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレ重合体とからなる熱硬化型ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0074】
電離放射線硬化性樹脂としては、多価アルコール多官能(メタ)アクリレート等のような多官能(メタ)アクリレート樹脂;ジイソシアネート、多価アルコール、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等から合成されるような多官能ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0075】
電離放射線硬化性樹脂としては、これらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用できる。
【0076】
バインダー樹脂として、上述した硬化性樹脂以外に、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニルの単独重合体及び共重合体、塩化ビニルの単独重合体及び共重合体、塩化ビニリデンの単独重合体及び共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂;アクリル酸エステルの単独重合体及び共重合体、メタクリル酸エステルの単独重合体及び共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;線状ポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0077】
また、バインダーとして、上述したバインダー樹脂の他に、合成ゴム、天然ゴム等のゴム系バインダー、その他無機系結着剤等を用いることもできる。ゴム系バインダー樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0078】
上記コーティング用の分散液は、有機溶剤をさらに含んでいてもよい。後述する基材フィルム等の基材に上記コーティング用の分散液を塗工する場合、上記有機溶剤を含むことによって、基材へのコーティング用の分散液の塗工が容易になるものであれば、有機溶剤は特に限定されるものではない。上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセタート、酢酸2−エトキシエチルアセタート(セロソルブアセタート)、2−ブトキシエチルアセタート、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート等のグリコールエーテルエステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタン、塩化メチレン等の塩素系溶剤;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶剤;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤等を用いることができる。これら有機溶剤は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これら有機溶剤の中でも、分散液中での重合体粒子の均一分散性、及び乾燥後の重合体粒子の凝集性の点から、炭素数が5以下のアルコール系溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノールがより好ましい。
【0079】
基材フィルムは、透明であることが好ましい。透明の基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系重合体、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系重合体等の重合体を用いたフィルムが挙げられる。また、透明の基材フィルムとして、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系重合体、塩化ビニル系重合体、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系重合体等の重合体を用いたフィルムも挙げられる。さらに、透明の基材フィルムとして、イミド系重合体、サルホン系重合体、ポリエーテルサルホン系重合体、ポリエーテルエーテルケトン系重合体、ポリフェニルスルフィド系重合体、ビニルアルコール系重合体、塩化ビニリデン系重合体、ビニルブチラール系重合体、アリレート系重合体、ポリオキシメチレン系重合体、エポキシ系重合体、これらの重合体のブレンド物等の重合体を用いたフィルム等も挙げられる。上記基材フィルムとして、特に複屈折率の少ないものが好適に用いられる。また、これらフィルムに更に(メタ)アクリル系樹脂、共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂等の易接着層を設けたフィルムも上記基材フィルムとして用いることができる。
【0080】
基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には、強度、取り扱い等の作業性、薄層性等の点より10〜500μmの範囲内であり、20〜300μmの範囲内であることが好ましく、30〜200μmの範囲内であることがより好ましい。また、基材フィルムには、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、屈折率調整剤、増強剤等の添加剤を加えるようにしても良い。
【0081】
コーティング用の分散液を基材フィルム上に塗布する方法としては、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法等の公知の塗工方法が挙げられる。
【0082】
このように構成された本発明に係る光学用フィルムは、分散安定性に優れた本発明に係る重合体粒子を含むコーティング用の分散液を基材フィルムに塗工してなるものであるから、前記塗工により形成された塗膜全体において、光拡散性、防眩性等の光学特性がムラ無く安定して得られる。よって、本発明に係る光学用フィルムでは、高い品質安定性が得られる。
【0083】
[実施例]
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず、以下の実施例及び比較例において、重合体粒子の体積平均粒子径及び粒子径の変動係数の測定方法、重合体粒子の製造に使用したシード粒子の体積平均粒子径の測定方法、重合体粒子の水酸基価の測定方法、並びにアルコール系溶剤分散試験について説明する。
【0084】
{重合体粒子の体積平均粒子径及び粒子径の変動係数の測定方法}
重合体粒子の体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizer
TM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。
【0085】
なお、測定に用いるアパチャーは、測定する粒子の大きさに応じて適宜選択する。50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合は、Current(アパチャー電流)は−800、Gain(ゲイン)は4と設定とした。
【0086】
測定用試料としては、重合体粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散体としたものを使用する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、重合体粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。重合体粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0087】
重合体粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、以下の数式によって算出する。
重合体粒子の粒子径の変動係数=(重合体粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差
÷重合体粒子の体積平均粒子径)×100
【0088】
{重合体粒子の製造に使用したシード粒子の体積平均粒子径の測定方法}
重合体粒子の製造に使用したシード粒子の体積平均粒子径の測定は、レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「LS 13 320」)及びユニバーサルリキッドサンプルモジュールによって行う。
【0089】
具体的には、シード粒子分散体0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散体としたものを使用する。
【0090】
測定は、ユニバーサルリキッドサンプルモジュール中でポンプ循環を行うことによって上記シード粒子を分散させた状態、かつ、超音波ユニット(ULM ULTRASONIC MODULE)を起動させた状態で行い、シード粒子の体積平均粒子径(体積基準の粒度分布における算術平均径)を算出する。測定条件を下記に示す。
媒体=水
媒体の屈折率=1.333
固体の屈折率=シード粒子の屈折率(1.495)
PIDS相対濃度:40〜55%程度
【0091】
{重合体粒子の水酸基価の測定方法}
重合体粒子の水酸基価の測定は、水酸基価定量分析方法(JIS K 0070−1992)に準じて行う。具体的には、下記の手順となる。
【0092】
<水酸基価測定用酸価測定方法(JIS K 0070)>
200mL平底フラスコに試料2gとピリジン溶剤20mLを投入し、室温で1時間攪拌させながら分散させた後、フェノールフタレイン試薬3滴を入れ、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、赤紫色に変色したところを終点とする。同様の方法で空試験も行い、下式より酸価を算出する。測定は2回行い、平均値を酸価とする。
【0093】
<酸価計算式>
酸価(mgKOH/g)=(V1−V0)×f×0.1×56.11÷S
但し
S:採取試料の質量(g)
V0:空試験で要した0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
・・・ブランク滴定量(mL)
V1:本試験で要した0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
・・・サンプル滴定量(mL)
f:0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター ・・・1.0
【0094】
<分析方法手順>
200ml平底フラスコに試料2gとアセチル化薬を3mLを加えて攪拌して馴染ませ、さらに、ピリジン溶液20mLを加えて、10分攪拌後、110℃の油浴中で1時間反応させる。その後、振盪機で10分攪拌し、放冷後、蒸留水1mL加え、105℃の油浴で10分反応させる。そして、フェノールフタレイン試薬3滴を入れ、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行い、赤紫色に変色したところを終点とする。また、同様の方法にて、空試験を行い、下式にて水酸基価を算出する。測定は2回行い、平均値を水酸基価とする。
【0095】
<水酸基価計算式>
水酸基価(mgKOH/g)=〔(V0−V1)×f×0.5×56.11÷S〕+酸価
但し、
S:採取試料の重量(g)
V0:空試験で要した0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
・・・ブランク滴定量(mL)
V1:本試験で要した0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
・・・サンプル滴定量(mL)
f:0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター ・・・1.0
【0096】
{アルコール系溶剤分散試験}
アルコール系溶剤分散試験は、10mL容量のプラスチック製の軟膏壺に粒子0.1gとアルコール系溶剤としてメタノール又はイソプロピルアルコール5gとを計りとり、攪拌脱泡機(あわとり練太郎(登録商標)AR−100:株式会社シンキー社製)にて3分間攪拌を行う。攪拌終了後、分散液をガラスプレートにスポイトで1滴落とし、上からカバーグラスをかける。そして、分散状態をデジタルマイクロスコープVHX(株式会社キーエンス社製)にて観察することによる評価試験を実施する。観察結果よりメタノール及びイソプロピルアルコールの両方に分散した場合を「◎」、どちらか一方に分散した場合を「○」、どちらにも分散しなかった場合を「×」と判定する。
【0097】
{シード粒子の製造例1}
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水性媒体としての水3000gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル500gと、分子量調整剤としてのn−オクチルメルカプタン5gとを仕込み、セパラブルフラスコの内容物を攪拌しながらセパラブルフラスコの内部を窒素置換し、セパラブルフラスコの内温を70℃に昇温した。さらに、セパラブルフラスコの内温を70℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸カリウム2.5gをセパラブルフラスコの内容物に添加した後、12時間重合反応させ、エマルジョンを得た。得られたエマルジョンは、固形分(ポリメタクリル酸メチル粒子)を14重量%含有し、その固形分は、体積平均粒子径が0.45μmであり、重量平均分子量が15000である真球状粒子(シード粒子)であった。この真球状粒子を含むエマルジョンをシード粒子分散体として、後述する重合体粒子の実施例、比較例に用いた。
【0098】
{シード粒子の製造例2}
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水性媒体としての水600gと、シード粒子の製造例1で得られたエマルジョン70gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル100gと、分子量調整剤としてのn−オクチルメルカプタン1.0gとを仕込み、セパラブルフラスコの内容物を攪拌機で攪拌しながらセパラブルフラスコ内の空間を窒素置換し、セパラブルフラスコの内温を70℃に昇温した。さらに、セパラブルフラスコの内温を70℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5gを添加した後、セパラブルフラスコの内温を70℃に保ったまま8時間かけて重合反応させた。これにより、シード粒子分散体が得られた。得られたシード粒子分散体は、固形分を14重量%含有し、その固形分は、体積平均粒子径1.01μmの真球状粒子(シード粒子)からなっていた。
【0099】
{実施例1:重合体粒子の製造例}
攪拌機及び温度計を備えた5Lの反応器に、単官能スチレン系単量体としてのスチレン300gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸ブチル(25℃の水に対する溶解度が0.04重量%)350gと、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート300gと、前記一般式(1)で表される水酸基含有単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」、日油株式会社製、前記一般式(1)で表される複数の化合物からなる混合物であって、R=CH
3であり、mが平均して3.5であり、nが平均して2.5であるもの)50gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物を得た。得られた単量体混合物を、予めノニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル10gをイオン交換水990gに溶解させることにより得られた界面活性剤水溶液1000gと混合し、高速乳化・分散機(商品名「ホモミクサーMARK II 2.5型」、プライミクス株式会社製)に入れて10000rpmで10分間処理して、乳化液を得た。この乳化液に、上記シード粒子の製造例1で得られた体積平均粒子径が0.45μmのシード粒子分散体24g(固形分3.4g)を加え、30℃で3時間攪拌し、分散体を得た。この分散体に、高分子分散安定剤としてのポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、商品名「ゴーセノール(登録商標)GH−17」)の4重量%水溶液2000gと、重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.6gとを加え、その後、70℃で5時間攪拌し次いで105℃で2.5時間攪拌することにより重合反応を行った。重合後の分散体を加圧濾過機にて脱水し、温水を用いて洗浄した後、70℃で24時間真空乾燥することで、架橋(メタ)アクリル−スチレン共重合樹脂からなる重合体粒子Aを得た。
【0100】
{実施例2:重合体粒子の製造例}
単官能スチレン系単量体としてのスチレン80gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル(25℃の水に対する溶解度が1.72重量%)700gと、架橋性単量体としてのジビニルベンゼン120gと、前記一般式(1)で表される水酸基含有単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」、日油株式会社製)100gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物とし、シード粒子分散体を上記シード粒子の製造例1で得られた体積平均粒子径が0.45μmのシード粒子分散体80g(固形分11.2g)としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子Bを得た。
【0101】
{実施例3:重合体粒子の製造例}
単官能スチレン系単量体としてのスチレン240gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル320gと、架橋性単量体としてのジビニルベンゼン300gと、前記一般式(1)で表される水酸基含有単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」、日油株式会社製)100gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物とし、シード粒子分散体を上記シード粒子の製造例1で得られた体積平均粒子径が0.45μmのシード粒子分散体80g(固形分11.2g)としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子Cを得た。
【0102】
{実施例4:重合体粒子の製造例}
単官能スチレン系単量体としてのスチレン510gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸ブチル320gと、架橋性単量体としてのジビニルベンゼン120gと、前記一般式(2)で表される水酸基含有単量体としてのラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名「プラクセル(登録商標)FM2D」、ダイセル化学株式会社製、前記一般式(2)、p=2であるもの)50gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物とし、シード粒子分散体を上記シード粒子の製造例1で得られた体積平均粒子径が0.45μmのシード粒子分散体80g(固形分11.2g)としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子Dを得た。
【0103】
{実施例5:重合体粒子の製造例}
スチレン系単量体としてのスチレン80gと、(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸ブチル700gと、架橋性単量体としてのジビニルベンゼン120gと、前記一般式(1)で表される水酸基含有単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」、日油株式会社製、前記一般式(1)で表される複数の化合物からなる混合物であって、R
1=CH
3、R
2=C
2H
5、R
3=C
3H
6、R
4=Hであり、mが平均して3.5であり、nが平均して2.5であるもの)100gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物とし、シード粒子分散体を上記シード粒子の製造例1で得られた体積平均粒子径が0.45μmのシード粒子分散体80g(固形分11.2g)としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子Eを得た。
【0104】
{実施例6:重合体粒子の製造例}
単官能スチレン系単量体としてのスチレン420gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル230gと、架橋性単量体としてのジビニルベンゼン300gと、前記一般式(1)で表される水酸基含有単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」、日油株式会社製)50gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物とし、シード粒子分散体を上記シード粒子の製造例2で得られた体積平均粒子径が1.01μmのシード粒子分散体107g(固形分15.0g)としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子Fを得た。
【0105】
{比較例1:重合体粒子の比較例}
単官能スチレン系単量体としてのスチレン300gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル230gと、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート300gと、前記一般式(2)で表される水酸基含有単量体としてのラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名「プラクセルFM2D(登録商標)」、ダイセル化学株式会社製、前記一般式(2)、n=2であるもの)50gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物とし、シード粒子分散体を上記シード粒子の製造例2で得られた体積平均粒子径が1.01μmのシード粒子分散体107g(固形分15.0g)としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子Gを得た。
【0106】
{比較例2:重合体粒子の比較例}
単官能スチレン系単量体としてのスチレン200gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル500gと、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート300gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物とし、シード粒子分散体を上記シード粒子の製造例1で得られた体積平均粒子径が0.45μmのシード粒子分散体80g(固形分11.2g)としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子Hを得た。
【0107】
{比較例3:重合体粒子の比較例}
単官能スチレン系単量体としてのスチレン200gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル400gと、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート200gと、前記一般式(1)で表される水酸基含有単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」、日油株式会社製)200gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物とし、シード粒子分散体を上記シード粒子の製造例1で得られた体積平均粒子径が0.45μmのシード粒子分散体80g(固形分11.2g)としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子Iを得た。
【0108】
{比較例4:重合体粒子の比較例}
単官能スチレン系単量体としてのスチレン240gと、単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル320gと、架橋性単量体としての重合性ビニル系単量体としてのジビニルベンゼン300gと、前記一般式(1)で表される水酸基含有単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」、日油株式会社製)50gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8gとを互いに溶解させて単量体混合物とし、シード粒子分散体を上記シード粒子の製造例2で得られた体積平均粒子径が1.01μmのシード粒子分散体14.3g(固形分2.0g)としたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子Jを得た。
【0109】
{防眩フィルム用分散液の調整及び防眩フィルムの作製}
紫外線硬化型樹脂としてのぺンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(商品名「アロニックス(登録商標)M−305」、東亞合成株式会社製)80重量部と、有機溶剤としてのイソプロパノール(IPA)及びシクロペンタノンの混合液(IPAとシクロペンタノンとの体積比=5:5)120重量部と、上記実施例1〜6、比較例1〜4にて製造した重合体粒子5重量部と、光重合開始剤(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、商品名「イルガキュア(登録商標)907」、BASF(登録商標)ジャパン株式会社製)5重量部とを混合し、分散液としての防眩フィルム用分散液を調製した。
【0110】
基材フィルムとして、透明プラスチックフィルムである厚さ0.2mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。上記防眩フィルム用分散液を上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ウェット膜厚60μmのバーコーターを用いて塗布することで、塗膜を形成した。次に、上記塗膜を80℃で1分間加熱することにより上記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて紫外線を積算光量300mJ/cm
2で上記塗膜に照射することにより、上記塗膜を硬化させて防眩性ハードコート層を形成した。これにより、防眩フィルム(成形品)として、上記実施例1〜6、比較例1〜4にてそれぞれ製造した重合体粒子を含有した防眩性ハードコートフィルムをそれぞれ作製した。
【0111】
{防眩フィルムの防眩性の評価方法}
上記方法により作製した防眩フィルムの防眩性の評価方法について説明する。作製した防眩フィルムの各々の塗工面ではない面をABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)板に張り付け、当該防眩フィルムの2m離れた場所から、輝度10000cd/cm
2の蛍光灯を塗工面に映し、目視にて防眩フィルムの防眩性を評価した。防眩性の評価基準は、蛍光灯の反射像の輪郭がはっきり見えない場合には防眩性が「○」(良好)、蛍光灯の反射像の輪郭がはっきりと見える場合には防眩性が「×」(不良)と評価した。
【0112】
実施例1〜6及び比較例1〜4について、重合体粒子に係る実施例又は比較例、重合体粒子の形成に使用したシード粒子の体積平均粒子径(μm)、重合体粒子の製造に使用した単量体[メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、スチレン(St)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジビニルベンゼン(DVB)、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(ブレンマー(登録商標)50PEP−300)、ラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(プラクセル(登録商標)FM2D)]の投入量(g)、単量体含有比率(重量%)、重合体粒子の体積平均粒子径(μm)及び粒子径の変動係数(CV値(%))の測定結果、重合体粒子の水酸基価の測定値(mgKOH/g)、重合体粒子のアルコール系溶剤分散試験の評価結果、並びに基材フィルムに塗工して形成した塗膜(防眩フィルム)の防眩性の評価結果(塗工評価)を、表1に示す。なお、単量体含有比率は、重合体粒子中における各単量体に由来する構成単位の含有比率をアクリル系単量体/スチレン系単量体/架橋性単量体/水酸基含有単量体として重量%により示したものである。
【0114】
表1において、アルコール系溶剤分散試験の評価結果に関する一部の重合体粒子の観察結果について説明する。
図1及び
図2は、実施例1の重合体粒子のアルコール系溶剤分散試験における分散状態を示す画像であり、
図3及び
図4は、比較例2の重合体粒子のアルコール系溶剤分散試験における分散状態を示す画像である。
図1は、重合体粒子Aをイソプロピルアルコールに分散した状態を示しており、
図2は、重合体粒子Aをメタノールに分散した状態を示している。また
図3は、重合体粒子Hをイソプロピルアルコールに分散した状態を示しており、
図4は、重合体粒子Hをメタノールに分散した状態を示している。
図1〜
図4を比較すると明らかなように、
図1及び
図2では、重合体粒子Aが略均一に分散しているが、
図3及び
図4では、重合体粒子が局所的に凝集しており、均質な分散状態を得られていない。重合体粒子Hは、
図3及び
図4に示すように、イソプロピルアルコール及びメタノールのいずれの溶剤中においても局所的に凝集することから、表1に示すようにアルコール系溶剤分散試験の評価結果を不良「×」とした。
【0115】
表1に示す結果より、重合体粒子の体積平均粒子径が5μm以下であり、かつ、水酸基価が5.0mgKOH/g以上、15mgKOH/g以下である場合に、アルコール系溶剤分散試験の評価結果及び防眩性の評価結果が共に良好な結果となることが認められた。
【0116】
一方、重合体粒子径及び水酸基価のいずれかが上記範囲から外れる場合、防眩性が不良との結果となった。特に水酸基価が5.0mgKOH/g未満の重合体粒子Hではアルコール分散テストの評価が低く、また、塗工不可となった。水酸基価が5.0mgKOH/g以上の場合、分散媒中で均一に分散したと考えられるが、水酸基価が15mgKOH/gより大きい場合、又は粒子径が5μmを超える場合、防眩性の評価は低い結果となった。これは、水酸基価が大き過ぎる場合、基材フィルム上に塗工して塗膜を形成する過程において、凝集性が低く防眩性に影響する凸部を十分に形成することができなかったためと考えられる。また、重合体粒子の体積平均粒子径が5μmを超える場合、基材フィルム上で形成される凸部が急峻となり、外光を散乱し過ぎる結果となったことによるものと考えられる。
【0117】
さらに、水酸基含有単量体に由来する構成単位が3重量%より小さい比較例2では、分散性が不足し、塗工が困難であった。構成単位が15%を超える比較例3では、塗工、乾燥後の分散性が過剰であり、所望の凝集性が得られず、目的の防眩性が得られない結果となった。
【0118】
本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。