特許第6231031号(P6231031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231031熱伝導性粒子組成物、熱伝導性粒子組成物の製造方法、熱伝導性樹脂組成物および熱伝導性樹脂硬化体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231031
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】熱伝導性粒子組成物、熱伝導性粒子組成物の製造方法、熱伝導性樹脂組成物および熱伝導性樹脂硬化体
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20171106BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20171106BHJP
   C01B 21/064 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   C09K5/14 E
   C08L101/00
   C08K3/38
   C08K7/00
   !C01B21/064 M
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-34520(P2015-34520)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-155937(P2016-155937A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 崇人
(72)【発明者】
【氏名】深澤 元晴
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/002505(WO,A1)
【文献】 特開2012−238676(JP,A)
【文献】 特開2014−105297(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/111684(WO,A1)
【文献】 特開2005−232313(JP,A)
【文献】 特開2014−193965(JP,A)
【文献】 特開2011−184507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00−5/20、
H05K7/20、
C08G59/00−59/72、
C08K3/00−13/08、
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が20〜150μmの窒化ホウ素粗粉と平均粒子径1〜10μm、平均厚み0.001〜1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉を含む熱伝導性粒子組成物。
【請求項2】
前記窒化ホウ素微粉が、シランカップリング剤で分散処理されたものである、請求項1に記載の熱伝導性粒子組成物。
【請求項3】
前記窒化ホウ素微粉の一部が、前記窒化ホウ素粗粉表面に付着したものである、請求項1または2に記載の熱伝導性粒子組成物。
【請求項4】
前記窒化ホウ素粗粉90〜99.8質量部に対し、前記窒化ホウ素微粉が0.2〜10質量部である、請求項1〜の何れか一項に記載の熱伝導性粒子組成物。
【請求項5】
請求項1〜の何れか一項に記載の熱伝導性粒子組成物と樹脂を含有する熱伝導性樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンオキシドから選択される少なくとも1種以上の樹脂である、請求項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項に記載の熱伝導性樹脂組成物における樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、該エポキシ樹脂が硬化された熱伝導性樹脂硬化体。
【請求項8】
窒化ホウ素粉末を高圧ホモジナイザーで、平均粒子径1〜10μm、平均厚み0.01〜1μmの鱗片形状の窒化ホウ素微粉に粉砕する第一工程と、前記窒化ホウ素微粉をシランカップリング剤で分散処理する第二工程と、前記シランカップリング剤で表面処理された窒化ホウ素微粉を、乾式混合にて、窒化ホウ素粗粉と混合する第3工程を含む、熱伝導性粒子組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性粒子組成物、熱伝導性粒子組成物の製造方法、熱伝導性樹脂組成物および熱伝導性樹脂硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂組成物や樹脂シートに対して熱伝導性のフィラーを含有させることで、樹脂単体よりも熱伝導性を向上させる方法が利用されている。特に、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などのマトリックス樹脂に、熱伝導性の無機フィラーを充填した熱伝導性樹脂組成物は、発熱性電子部品を実装するプリント配線版の絶縁層や発熱性電子部品の搭載された回路とヒートシンクの間の絶縁層等の用途において広く採用されている。
【0003】
近年、電子部品の高性能・高集積化に伴って、電子デバイス内部の発熱密度が増加しており、高熱伝導性の樹脂組成物や樹脂シートが要求されている。高熱伝導化を達成するためには、高熱伝導性の無機フィラーを樹脂中に高充填することが必要である。しかし、フィラーを高充填すると、フィラーの分散不良・凝集が起こり、樹脂組成物の熱伝導率向上が困難となる。特に、熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素などの窒化物を用いると、フィラー表面の変性が困難で、樹脂とフィラーの親和性の向上効果が不十分であり、シリカやアルミナ等のフィラーよりも、樹脂中における分散性に問題があった。
【0004】
そこで、これらの熱伝導性粒子を用いた組成物の流動性改善を目的として、フィラー表面を変性させる方法が検討されている。例えば、窒化ホウ素フィラーを、アミン系(特許文献1)やエポキシ系(非特許文献1)シラン系カップリング剤を用いる方法や、ジルコネートカップリング剤、アルミン酸ジルコニウムカップリング剤、アルミネートカップリング剤(特許文献2)で表面処理する方法が開示されているが、カップリング剤のみでは十分な分散性を得るには不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−203770号公報
【特許文献2】特開2006−257392号公報
【非特許文献1】広島県立創業技術研究所 西部工業技術センター研究報告 No.49、2006、p19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題と実情に鑑み、分散性および樹脂の低粘度化に優れた熱伝導性粒子組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。加えて、この熱伝導性粒子組成物を用いて製造される熱伝導性に優れた樹脂組成物および硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は上記の課題を解決するために、以下の方法を採用する。
(1)平均粒子径が20〜150μmの窒化ホウ素粗粉と窒化ホウ素微粉が平均粒子径1〜10μm、平均厚み0.001〜1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉を含む熱伝導性粒子組成物。
(2)前記窒化ホウ素微粉が、シランカップリング剤で分散処理されたものである、(1)に記載の熱伝導性粒子組成物。
(3)前記窒化ホウ素微粉の一部が、前記窒化ホウ素粗粉表面に付着したものである、(1)または(2)に記載の熱伝導性粒子組成物。
)前記窒化ホウ素粗粉90〜99.8質量部に対し、前記窒化ホウ素微粉が0.2〜10質量部である、(1)〜()の何れか一つに記載の熱伝導性粒子組成物。
)(1)〜()の何れか一つに記載の熱伝導性粒子組成物と樹脂を含有する熱伝導性樹脂組成物。
)前記樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンオキシドから選択される少なくとも1種以上の樹脂である、()に記載の熱伝導性樹脂組成物。
)()に記載の熱伝導性樹脂組成物における樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、該エポキシ樹脂が硬化された熱伝導性樹脂硬化体。
)窒化ホウ素粉末を高圧ホモジナイザーで、平均粒子径1〜10μm、平均厚み0.01〜1μmの鱗片形状の窒化ホウ素微粉に粉砕する第一工程と、前記窒化ホウ素微粉をシランカップリング剤で分散処理する第二工程と、前記シランカップリング剤で表面処理された窒化ホウ素微粉を、乾式混合にて、窒化ホウ素粗粉と混合する第3工程を含む、熱伝導性粒子組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、熱伝導性粒子粗粉と、特定範囲にある平均粒子径および平均厚みの鱗片形状を有する窒化ホウ素微粉を用いた熱伝導性粒子組成物は、樹脂組成物中での分散性および低粘度化に優れることを見出した。さらに本発明の熱伝導性粒子組成物を用いた樹脂組成物および硬化体は、熱伝導性粒子組成物を高充填できるため、優れた熱伝導性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施例1で用いた、窒化ホウ素微粉の走査型電子顕微鏡写真である。
図2図2は実施例9で用いた、窒化ホウ素微粉の厚みを示す走査型電子顕微鏡写真である。
図3図3は実施例2の熱伝導性粒子組成物の走査型電子顕微鏡写真である。
図4図4図3を部分的に拡大した走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<熱伝導性粒子粗粉>
本発明の熱伝導性粒子粗粉としては、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリカ、表面絶縁処理を行った金属や炭素系の導電性粒子を使用することができる。これらの中では、高熱伝導性および高絶縁性を示すことから、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素が好ましい。
【0011】
熱伝導性粒子粗粉の平均粒子径は20〜150μmが好ましく、20〜70μmがより好ましい。熱伝導性粒子粗粉の平均粒子径が20μm未満であると、熱伝導性が低下する場合がある。平均粒子径が150μmを超えると、絶縁性が低下する場合がある。
【0012】
<窒化ホウ素微粉>
本発明の窒化ホウ素微粉は鱗片形状であり、その平均粒子径は1〜10μmであり、好ましくは2〜8μmである。1μm未満であると、分散性が低下したり、樹脂組成物の粘度が高くなり充填性が低下する場合がある。また、10μmよりも大きいと、熱伝導性粒子粗粉に良好な流動性や充填性を付与できない場合がある。
【0013】
窒化ホウ素微粉の平均厚みは0.001〜1μmであり、好ましくは0.05〜0.5μmである。平均厚みが0.001μm未満または1μmを超えると、樹脂組成物へ熱伝導性粒子組成物を高充填することが困難になる場合がある。
【0014】
前記窒化ホウ素微粉は、窒化ホウ素粉末を湿式で粉砕可能な、例えば高圧ホモジナイザー、ビーズミル、磨細機または振動ミルを用いて作製することができる。特に、不純物の混入を避けるため、メディアレスである高圧ホモジナイザーによる粉砕処理が好ましい。前述の方法以外に、化学気相成長(CVD)法、有機溶媒中で超音波を照射する方法を用いて窒化ホウ素微粉を作製してもよい。
【0015】
さらに、前記窒化ホウ素微粉は、樹脂組成物中での分散性向上および樹脂組成物の低粘度化を目的として分散処理されていることが好ましい。分散処理としては、アミン系やエポキシ系のシランカップリング剤を用いる方法や、ジルコネートカップリング剤、アルミン酸ジルコニウムカップリング剤、アルミネートカップリング剤で処理する方法が挙げられる。これらの中では、分散性の点でシランカップリング剤で分散処理されたものが好ましい。
【0016】
分散処理の方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば分散剤としてシランカプリング剤を用いた場合は、窒化ホウ素微粉をシランカップリング剤を添加したアルコール溶液と混合後、真空乾燥にてアルコールを除去する方法が挙げられる。
【0017】
<熱伝導性粒子組成物>
本発明の熱伝導性粒子組成物(以下、粒子組成物と略す)は、熱伝導性粒子粗粉と窒化ホウ素微粉を含む。窒化ホウ素微粉の一部が熱伝導性粒子粗粉の表面に付着した状態にあることが好ましい。付着とは、窒化ホウ素微粉が、ファデアワールス力により熱伝導性粒子粗粉の表面に物理的に付着した状態を意味する。粒子組成物は、熱伝導性粒子粗粉90〜99.8質量部に対し窒化ホウ素微粉0.2〜10質量部であることが好ましく、熱伝導性粒子粗粉95〜99.5質量部に対し窒化ホウ素微粉0.5〜5質量部であることがより好ましい。熱伝導性粒子粗粉が90質量部未満であると、後述する熱伝導性樹脂組成物の粘度が高くなる場合がある。また、99.8質量部を超えると、分散性が低下する場合がある。
【0018】
粒子組成物は、前記窒化ホウ素微粉を乾式混合にて、熱伝導性粒子粗粉と混合し作製される。混合方法として、ヘンシェルミキサー、転動流動式混合機、V型ブレンダー、らいかい機、バタフライミキサーを用いて、各成分の所定量を均一に混合すればよい。
【0019】
<熱伝導性樹脂組成物>
本発明の熱伝導性樹脂組成物(以下、樹脂組成物と略す)は、粒子組成物と樹脂を含んでなる。樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトンおよびポリフェニレンオキシドから選択される1種以上の樹脂から選択することができる。なお、樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、硬化剤および硬化助剤等を配合することができる。
これらの中では、エポキシ樹脂が耐熱性と銅箔回路への接着性が優れていることから、プリント配線板の絶縁層として好適である。また、シリコーン樹脂は耐熱性、柔軟性及びヒートシンク等への密着性が優れていることから熱インターフェース材として好適である。樹脂組成物の総質量の10〜90質量%、特に好ましくは20〜80質量%が粒子組成物であると、樹脂組成物の熱伝導性、電気絶縁性等を向上させることが可能となる。
なお、樹脂組成物には、粒子組成物への分散性を促進させるため、シランカプリング剤を添加することが好ましい。
【0020】
樹脂組成物は、ミル、バンバリーミキサー、ブラベンダー、一軸又は二軸スクリュー押出機、連続ミキサー、混練機等を用いて調製することができる。
【0021】
樹脂組成物は、厚さ0.1〜5mmの金属基板上に塗布し、回路を形成する金属箔と重ね合わせた後、150〜240℃で5〜8時間加熱し硬化体を得ることができる。塗布は、ダイコーター、コンマコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビヤコーター、カーテンコーター、ドクターブレードコーター、スプレーコーターおよびスクリーン印刷等の方法を使用し塗布することができる。または、金属基板上に樹脂組成物を塗布した後に加熱により半硬化させた後、樹脂組成物の表面に金属箔とラミネートまたは熱プレスする方法が採用できる。さらには、樹脂組成物をシート状に半硬化後、金属基板と金属箔を貼り合わせて硬化体を得ることもできる。
【0022】
<硬化体>
硬化体の厚みは20〜150μmであることが好ましく、40〜125μmであることがより好ましい。厚みを20μm以上とすることで、耐電圧特性が良好となり、150μm以下とすることで、熱抵抗が低くなる。金属基板としてはアルミニウム、鉄、銅およびこれらの合金、もしくはこれらのクラッド材が熱伝導性の点で好ましい。また、金属箔としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、スズ、金、銀、モリブデン、チタニウム、ステンレス等が使用できる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
<窒化ホウ素微粉の作製>
ガラス製300mlビーカーに鱗片形状の窒化ホウ素粉末(電気化学工業(株)製、製品名「SGP」、平均粒子径18μm)5質量部、エタノール47.5質量部、水47.5質量部を入れて混合した。この溶液をスギノマシン社製高圧ホモジナイザー(湿式微粒化装置「スターバーストミニ」)を用いて、微粉化処理を行った。条件として、ノズルの形状はボール衝突型を使用し、200MPaの圧力での処理を10回行い、窒化ホウ素微粉分散溶液を作製した。得られた分散溶液を、目開き0.5μmのろ紙によって、吸引ろ過し、固液分離し、濾物を45℃で12時間真空乾燥し、窒化ホウ素微粉を得た。
【0025】
<窒化ホウ素微粉の分散処理>
メタノール溶媒3.4質量部に、エポキシ系シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名「KBM403」、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)5質量部、pHを3.3に調整した酢酸水溶液1.6質量部を加え、室温で1時間攪拌した。上記の方法により得られた窒化ホウ素微粉100質量部に対し、この溶液を滴下しながら、ミキサーにて混合し、風乾した後、45℃真空乾燥機中に12時間放置し、窒化ホウ素微粉の分散処理を行った。
【0026】
<熱伝導性粒子組成物の作製>
上記の方法で分散処理した窒化ホウ素微粉0.2質量部、をミキサー(Iwatani社製、「IFM−620DG」、インペラー径58mm、回転数20000rpm)にて、10秒間解砕処理した。さらに、熱伝導性粒子粗粉として、平均粒子径64.1μmである窒化ホウ素粗粉(電気化学工業(株)製)99.8質量部を加えて、さらにミキサーにて50秒間混合し、熱伝導性粒子粗粉99.8質量部と窒化ホウ素微粉0.2質量部からなる粒子組成物を得た。なお、得られた粒子組成物の走査型電子顕微鏡画像により、窒化ホウ素微粉は窒化ホウ素粗粉表面に付着した状態にあることを確認した。
【0027】
<熱伝導性樹脂組成物の作製>
上記の方法により得られた粒子組成物75質量部と、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(DIC社製、「EPICLON 850CRP」)19質量部、芳香族アミン(日本合成化工社製、「H−48B」)6質量部、(東レ・ダウコーニング社製、「z−6040」)シランカップリング剤1.0質量部を、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR−250」、回転数2000rpm)にて混練し、樹脂組成物を作製した。
【0028】
実施例1で用いた原料、作製した粒子組成物及び樹脂組成物の特性を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
[平均粒子径]
熱伝導性粒子粗粉又は窒化ホウ素微粉の平均粒子径は、ベックマンコールター製「レーザー回折式粒度分布測定装置LS 13 320」を用いて測定を行った。試料はガラスビーカーに10ccの純水と、熱伝導性粒子粗粉又は窒化ホウ素微粉を1g添加して、超音波洗浄機(アズワン社製、「US CLEANER」、出力80W)で15分間、分散処理を行った。分散処理を行った熱伝導性粒子粗粉または窒化ホウ素微粉の分散液をスポイトで装置に一滴ずつ添加し、再度超音波を90秒間照射後、60秒後に測定を行った。レーザー回折式粒度分布測定装置では、センサで検出した粒子による回折/散乱光の光強度分布のデータから粒度分布を計算した。平均粒子径は測定される粒子径の値に相対粒子量(差分%)を乗じて、相対粒子量の合計(100%)で割って求めた。
【0031】
[窒化ホウ素微粉の平均厚み]
窒化ホウ素微粉75質量部と、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(DIC社製、「EPICLON 850CRP」)19質量部、芳香族アミン(日本合成化工社製、「H−48B」)6質量部を、遊星式撹拌機にて混練後、30mmΦの一軸押出機にて60℃で押出し窒化ホウ素微粉の長径が押出方向に配向したシート状を得た。得られたシートを200℃で8時間加熱し硬化させた。硬化したシートの中央部を採取後、ミクロトームで端面処理し10mm×10mmの細片を得た。得られた細片の断面図の走査型電子顕微鏡画像より、任意に選択した窒化ホウ素微粉の20個の最大厚みを測定し、その算術平均値を平均厚みとした。
【0032】
[熱伝導性樹脂組成物の粘度]
得られた樹脂組成物を、レオメーター(日本シイベルヘグナー社製「MCR−300」)を用い下記条件にて粘度を測定した。
プレート形状:円形平板25mmφ
試料厚み:1mm
温度:25±1℃
剪断速度:0.1S−1
【0033】
[熱伝導性樹脂組成物の分散性]
スクレパーを用い、50℃に加温した樹脂組成物を平板上に塗布した。塗布した面の中央部の50mm×50mmの範囲を選定し、目視にて確認可能な凝集塊の個数を以下の判定に従い評価した。なお、評価には3枚の試料を用いた際の凝集塊の総個数を用いた。
優:凝集塊が観られなかった。
可:凝集塊が1個以上3個未満であった。
不良:凝集塊状が3個以上であった。
【0034】
[熱伝導率]
熱伝導率は、得られた樹脂組成物のシートを作成し、熱拡散率、比重、比熱を全て乗じて算出した。熱拡散率は、試料を幅10mm×10mm×厚み1mmに加工し、レーザーフラッシュ法により求めた。測定装置はキセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製LFA447 NanoFlash)を用いた。比重はアルキメデス法を用いて求めた。比熱は、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q2000」)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温〜400℃まで昇温させて求めた。結果を表1に示す。なお、樹脂シートの硬化条件は、200℃で8時間とした。
【0035】
(実施例2)
窒化ホウ素粗粉99質量部、窒化ホウ素微粉1質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で評価を実施した。
【0036】
(実施例3)
窒化ホウ素粗粉90質量部、窒化ホウ素微粉10質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で評価を実施した。
【0037】
参考例4)
熱伝導性粒子粗粉を窒化ホウ素(電気化学工業社製、「SGP」、平均粒子径18μmへ変更した以外は、実施例2と同様な方法で評価を実施した。
【0038】
(実施例5)
熱伝導性粒子粗粉を窒化ホウ素(電気化学工業社製、平均粒子径150μmへ変更した以外は、実施例2と同様な方法で評価を実施した。
【0039】
参考例6)
熱伝導性粒子粗粉をアルミナ(電気化学工業社製、「DAW−70」、平均粒子径71μm)へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で評価を実施した。
【0040】
参考例7)
熱伝導性粒子粗粉99質量部、窒化ホウ素微粉1質量部へ変更した以外は、参考例6と同様な方法で評価を実施した。
【0041】
参考例8)
熱伝導性粒子粗粉90質量部、窒化ホウ素微粉10質量部へ変更した以外は、参考例6と同様な方法で評価を実施した。
【0042】
(実施例9)
平均粒子径1.7μm、平均厚み0.03μmの窒化ホウ素微粉を用いた以外は、実施例2と同様な方法で評価を実施した。
【0043】
(実施例10)
平均粒子径9μm、平均厚み0.62μmの窒化ホウ素微粉を用いた以外は、実施例2と同様な方法で評価を実施した。
【0044】
(比較例1)
窒化ホウ素微粉の平均粒子径を0.5μmに変更した以外は、実施例2と同様な方法で評価を実施した。結果を表2に記す。
【0045】
【表2】

【0046】
(比較例2)
窒化ホウ素微粉の平均粒子径を20μmに変更した以外は、実施例2と同様な方法で評価を実施した。
【0047】
(比較例3)
窒化ホウ素微粉を使用せず、熱伝導性粒子粗粉のみを使用した以外は、実施例1と同様な方法で評価を実施した。
【0048】
(比較例4)
窒化ホウ素微粉の平均粒子径を0.5μmに変更した以外は、実施例4と同様な方法で評価を実施した。
【0049】
(比較例5)
窒化ホウ素微粉の平均粒子径を20μmに変更した以外は、実施例4と同様な方法で評価を実施した。
【0050】
(比較例6)
窒化ホウ素微粉を使用せず、熱伝導性粒子粗粉のみを使用した以外は、実施例4と同様な方法で評価を実施した。
【0051】
(比較例7)
窒化ホウ素微粉の平均粒子径を0.5μmに変更した以外は、実施例5と同様な方法で評価を実施した。結果を表3に記す。
【0052】
【表3】

【0053】
(比較例8)
窒化ホウ素微粉の平均粒子径を20μmに変更した以外は、実施例5と同様な方法で評価を実施した。
【0054】
(比較例9)
窒化ホウ素微粉を使用せず、熱伝導性粒子粗粉のみを使用した以外は、実施例5と同様な方法で評価を実施した。
【0055】
(比較例10)
窒化ホウ素微粉の平均粒子径を0.5μmに変更した以外は、実施例7と同様な方法で評価を実施した。
【0056】
(比較例11)
窒化ホウ素微粉の平均粒子径を20μmに変更した以外は、実施例7と同様な方法で評価を実施した。
【0057】
(比較例12)
窒化ホウ素微粉を使用せず、熱伝導性粒子粗粉のみを使用した以外は、実施例6と同様な方法で評価を実施した。
【0058】
本発明の粒子組成物を配合した樹脂組成物は、窒化ホウ素微粉が配合されていない樹脂組成物と比較して、粘度が低く抑えられた結果となった。また、本発明の樹脂組成物は分散性及び熱伝導性も良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の粒子組成物を用いた樹脂組成物は、熱伝導性に優れるため、金属ベース回路基板の絶縁材の他、放熱性が必要とされる混成集積回路等の絶縁材に利用可能である。
図1
図2
図3
図4