(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1及び第2実施形態に係る能動騒音抑制システムについて、同システムを車両に搭載した例をあげて、図面を参照して詳細に説明する。
なお、第1及び第2実施形態に関する以下の説明において、原則として、両者間で共通の機能を有する構成要素には共通の符号を付すものとする。ただし、両者間で共通の機能を有するものの、第1実施形態に固有の構成要素については枝番号「−1」を、第2実施形態に固有の構成要素については枝番号「−2」を、原則としてそれぞれ付するものとする。
ただし、第1及び第2実施形態に係る能動騒音抑制システムについて、各個別の説明を要しない場合に、枝番号を除いた符号「11」を用いて、第1及び第2実施形態を総称するものとする。このことは、第1及び第2実施形態に係る能動騒音抑制装置についても同様とする。
【0022】
〔本発明の実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11の概要〕
はじめに、本発明の第1及び第2実施形態に共通の実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11の概要について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る能動騒音抑制システムを車両に搭載した例を表す概略構成図である。
【0023】
本発明の実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11は、車両Vの室内での会話補助と能動騒音抑制を的確に両立させる機能を有する。
こうした機能を実現するために、車両用能動騒音抑制システム11は、
図1に示すように、車両Vの室内(以下、車室内という場合がある。)における前席空間13に設けられて前席空間13で生じた音声を収音する第1マイクロフォン13Aと、車室内における後席空間15に設けられて後席空間15で生じた音声を収音する第2マイクロフォン15Aと、前席空間13に設けられて音声を出力する第1スピーカ13Bと、後席空間15に設けられて音声を出力する第2スピーカ15Bと、車室内の騒音を抑制するための打消音を、第1スピーカ13B及び第2スピーカ15Bのうち少なくともいずれかから出力させる制御を行う能動騒音抑制装置17と、を備えて構成されている。
【0024】
前席空間13は本発明の“第1の空間”に、後席空間15は本発明の“第2の空間”に、それぞれ相当する。第1マイクロフォン13Aは本発明の“第1の収音部”に、第2マイクロフォン15Aは本発明の“第2の収音部”に、それぞれ相当する。第1スピーカ13Bは本発明の“第1の音声出力部”に、第2スピーカ15Bは本発明の“第2の音声出力部”に、それぞれ相当する。
【0025】
能動騒音抑制装置17には、
図1に示すように、入力した音声信号を増幅して出力するオーディオアンプ19が接続されている。オーディオアンプ19の出力端子(不図示)には、第1スピーカ13B及び第2スピーカ15Bが接続されている。第1スピーカ13B及び第2スピーカ15Bは、車室内での会話に係る音声を一方から他方へと伝達すると共に、車室内の騒音を抑制する役割を果たす。
【0026】
また、能動騒音抑制装置17には、
図1に示すように、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信媒体21を介して、エンジン回転速度センサ23、及び合成モード選択スイッチ25が、相互に情報通信可能に接続されている。
【0027】
CANは、車載機器間の情報通信の用途に汎用される多重化されたシリアル通信網であり、優れたデータ転送速度及びエラー検出能力を有する。ただし、本発明で用いる情報通信媒体21としては、CANに限定されない。本発明で用いる情報通信媒体21として、例えばFlexRay(登録商標)を採用してもよい。
【0028】
エンジン回転速度センサ23は、車両Vに搭載されたレシプロエンジン(不図示)の回転速度を検出する機能を有する。エンジン回転速度センサ23で検出されたエンジン回転速度情報は、能動騒音抑制装置17に送られる。
【0029】
合成モード選択スイッチ25は、車室内に設けられる、音声出力モードを乗員が選択する際に操作されるスイッチである。合成モード選択スイッチ25で選択された合成モード選択情報は、能動騒音抑制装置17に送られる。なお、音声出力モードとしては、合成音声出力モード、及び打消音出力モードがある。これについて、詳しくは後記する。
【0030】
〔第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1の内部構成〕
次に、第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1の内部構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1を備える第1実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−1の概要を表すブロック図である。
第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1は、
図2に示すように、ANC(Active Noise Control)制御部31、伝達関数取得部32、ACP(Active Communication Prompt)制御部33−1、第1の音声合成部35、第2の音声合成部37、第1D/A変換部DA1、第2D/A変換部DA2、第1ローパスフィルタLPF1、第2ローパスフィルタLPF2、第3ローパスフィルタLPF3、第4ローパスフィルタLPF4、第1ハイパスフィルタHPF1、第2ハイパスフィルタHPF2、第1A/D変換部AD1、第2A/D変換部AD2、第3A/D変換部AD3、第4A/D変換部AD4、及び切替部39を有して構成されている。
【0031】
具体的には、第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータにより構成される。
【0032】
ANC制御部31は、前記マイクロコンピュータの機能部として構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行し、ANC制御部31が有する騒音抑制機能などの実行制御を遂行する。
【0033】
伝達関数取得部32は、前記マイクロコンピュータの機能部として構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行し、伝達関数取得部32が有する後記の開ループ伝達関数取得機能などの実行制御を遂行する。
【0034】
また、ACP制御部33−1は、前記マイクロコンピュータの機能部として構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行し、ACP制御部33−1が有する会話補助機能などの実行制御を遂行する。
【0035】
能動騒音抑制装置17は、
図2に示すように、例えばエンジン音(エンジン回転速度情報)及び第1マイクロフォン13Aで収音された音声に係る誤差信号e1を参照して第1の打消音を生成する機能を有する。この機能は、ANC制御部31により実現される。また、能動騒音抑制装置17は、
図2に示すように、エンジン音(エンジン回転速度情報)及び第2マイクロフォン15Aで収音された音声に係る誤差信号e2を参照して第2の打消音を生成する機能を有する。この機能も、ANC制御部31により実現される。
【0036】
要するに、ANC制御部31は、車室内の騒音(車室内で生じた騒音、及び車室外から伝わった例えばエンジン音等の騒音を含む)を抑制するための第1又は第2の打消音を、対応する第1スピーカ13B又は第2スピーカ15Bからそれぞれ出力させる制御を行うことにより、車室内の騒音を抑制する役割を果たす。また、ANC制御部31は、合成モード選択スイッチ25に係る合成モード選択情報に基づいて、適応フィルタ(
図3の第1適応フィルタ47A、第2適応フィルタ47B参照)の動作安定性を調整する際に設定されるステップサイズパラメータの値を設定する役割を果たす。ANC制御部31の詳細構成について、詳しくは後記する。
【0037】
また、能動騒音抑制装置17は、
図2に示すように、ANC制御部31で生成された前席空間13で生じた騒音を打ち消すための第1の打消音に対し、第2マイクロフォン15Aで収音された後席乗員の会話音声に係る誤差信号e2を合成した第1の合成音声を生成する機能を有する。この機能は、第1の音声合成部35により実現される。
【0038】
また、能動騒音抑制装置17は、
図2に示すように、ANC制御部31で生成された後席空間15で生じた騒音を打ち消すための第2の打消音に対し、第1マイクロフォン13Aで収音された前席乗員の会話音声に係る誤差信号e1を合成した第2の合成音声を生成する機能を有する。この機能は、第2の音声合成部37により実現される。
【0039】
また、能動騒音抑制装置17は、
図2に示すように、第1及び第2の合成音声を生成する際に、第1マイクロフォン13Aで収音された音声に係る誤差信号e1、及び第2マイクロフォン15Aで収音された音声に係る誤差信号e2から、車室内における抑制対象となる騒音に係る周波数帯域に属する音声成分をそれぞれ除去する機能を有する。これらの機能は、第1ハイパスフィルタHPF1、第2ハイパスフィルタHPF2によりそれぞれ実現される。
【0040】
また、第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1は、
図2に示すように、第1スピーカ13Bから第2マイクロフォン15Aに至る経路に係る第1の伝達関数C1、及び、第2スピーカ15Bから第1マイクロフォン13Aに至る経路に係る第2の伝達関数C2を取得する機能を有する。第1及び第2の伝達関数C1,C2を取得する機能は、例えば、第1及び第2の伝達関数C1,C2を予め測定することで実現される。
【0041】
また、第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1は、能動騒音抑制装置17−1、第1スピーカ13B及び第2スピーカ15B、第1マイクロフォン13A及び第2マイクロフォン15A、並びに、オーディオアンプ19(ただし、オーディオアンプ19を除いてもよい。)を含んで構成される音響系統(音響信号のフィードバックループ)全体としての開ループ伝達関数を取得する機能を有する。この開ループ伝達関数取得機能は、例えば
図2に示すように、測定用の信号を出力すると共に、測定用の信号に対する前記音響系統全体としての開ループ伝達関数を実測する伝達関数取得部32により実現される。伝達関数取得部32は、本発明の“伝達関数取得部”に相当する。
このように、第1スピーカ13B及び第2スピーカ15Bを駆動するオーディオアンプ19や、第1スピーカ13B又は第2スピーカ15Bから第1マイクロフォン13A又は第2マイクロフォン15Aに至る音響空間を含む音響系統を構成し、かかる音響系統全体としての開ループ伝達関数を取得することにより、開ループ伝達関数の精度を向上することができる。
【0042】
また、第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1のACP制御部33−1は、前記開ループ伝達関数が、全ての周波数帯域において0dB(1倍)以下となるようにゲイン係数G1,G2を設定する。ACP制御部33−1は、本発明の“設定部”に相当する。
【0043】
また、第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1は、
図2に示すように、第1マイクロフォン13Aで収音された前席乗員の会話音声に係る誤差信号e1に対し、前記のように設定されたゲイン係数G2を乗算する補正を行う機能、及び、第2マイクロフォン15Aで収音された後席乗員の会話音声に係る誤差信号e2に対し、前記のように設定されたゲイン係数G1を乗算する補正を行う機能を有する。これらの機能は、ACP制御部33−1により実現される。ACP制御部33−1は、本発明の“補正部”に相当する。
前記のように構成されたACP制御部33−1は、車室内での会話に係る音声を、一方から他方へと円滑に伝達する役割を果たす。
【0044】
第1D/A変換部DA1は、第1の音声合成部35で生成されたデジタル信号態様の第1の合成音声をアナログ信号態様に変換して、第1ローパスフィルタLPF1に出力する。第2D/A変換部DA2は、第2の音声合成部37で生成されたデジタル信号態様の第2の合成音声をアナログ信号態様に変換して、第2ローパスフィルタLPF2に出力する。
【0045】
第1ローパスフィルタLPF1は、アナログ信号態様の第1の合成音声に係る周波数帯域のうち、例えば200Hz等に適宜設定されるカットオフ周波数に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させて、オーディオアンプ19に出力する。第2ローパスフィルタLPF2は、アナログ信号の第2の合成音声に係る周波数帯域のうち、前記カットオフ周波数に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させて、オーディオアンプ19に出力する。
【0046】
ここで、第1ローパスフィルタLPF1及び第2ローパスフィルタLPF2は、アナログ信号態様の第1及び第2の合成音声を再構成するリコンストラクションフィルタとしての役割を果たす。これにより、第1及び第2の合成音声が呈するアナログ信号波形を滑らかに整形することができる。
【0047】
第3ローパスフィルタLPF3は、第1マイクロフォン13Aで収音された音声に係るアナログ誤差信号e1の周波数帯域のうち、例えば200Hz等に適宜設定されるカットオフ周波数に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させて、第1A/D変換部AD1及び第1ハイパスフィルタHPF1に出力する。第4ローパスフィルタLPF4は、第2マイクロフォン15Aで収音された音声に係るアナログ誤差信号e2の周波数帯域のうち、前記カットオフ周波数に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させて、第2A/D変換部AD2及び第2ハイパスフィルタHPF2に出力する。
【0048】
ここで、第3ローパスフィルタLPF3及び第4ローパスフィルタLPF4は、サンプリング定理に基づくアンチエイリアシングフィルタとしての役割を果たす。そのため、第3ローパスフィルタLPF3及び第4ローパスフィルタLPF4のカットオフ周波数は、ANC制御部31、ACP制御部33−1を構成するマイクロコンピュータが呈するサンプリング周波数の1/2以下に設定される。
このように、第3ローパスフィルタLPF3及び第4ローパスフィルタLPF4をアナログフィルタ回路により構成すれば、能動騒音抑制装置17の演算処理に係る負荷を抑制することができる。
【0049】
第1A/D変換部AD1は、第3ローパスフィルタLPF3でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1を、デジタル誤差信号e1に変換して、ANC制御部31に出力する。第2A/D変換部AD2は、第4ローパスフィルタLPF4でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e2を、デジタル誤差信号e2に変換して、ANC制御部31に出力する。
【0050】
第1ハイパスフィルタHPF1は、第3ローパスフィルタLPF3でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1に対し、例えば200〜300Hz程度に適宜設定されるカットオフ周波数に対して高い周波数帯域の音声信号を通過させて、第3A/D変換部AD3に出力する。第2ハイパスフィルタHPF2は、第4ローパスフィルタLPF4でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1に対し、前記カットオフ周波数に対して高い周波数帯域の音声信号を通過させて、第4A/D変換部AD4に出力する。
このように、第1ハイパスフィルタHPF1及び第2ハイパスフィルタHPF2をアナログフィルタ回路により構成すれば、能動騒音抑制装置17の演算処理に係る負荷を抑制することができる。
【0051】
第3A/D変換部AD3は、第1ハイパスフィルタHPF1でハイパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1を、デジタル誤差信号e1に変換して、伝達関数取得部32を通してACP制御部33−1に出力する。第4A/D変換部AD4は、第2ハイパスフィルタHPF2でハイパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e2を、デジタル誤差信号e2に変換して、伝達関数取得部32を通してACP制御部33−1に出力する。
【0052】
切替部39は、合成モード選択スイッチ25に係る合成モード選択情報に基づいて、第1スピーカ13B及び第2スピーカ15Bのうち少なくともいずれかから音声を出力させる際に用いる音声出力モードを、合成音声出力モード、又は打消音出力モードのうちいずれか一方に切り替える機能を有する。合成音声出力モードでは、能動騒音抑制装置17は、前記第1の合成音声を第1スピーカ13Bに出力させる一方、前記第2の合成音声を第2スピーカ15Bに出力させる。また、打消音出力モードでは、能動騒音抑制装置17は、第1の打消音を第1スピーカ13Bから、第2の打消音を第2スピーカ15Bから、それぞれ出力させる。
【0053】
〔ANC制御部31の内部構成〕
次に、ANC制御部31の内部構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、ANC制御部31の内部構成を概略的に表すブロック図である。
ANC制御部31は、
図3に示すように、基準信号生成部41、第1参照信号生成部43A、第2参照信号生成部43B、第1フィルタ係数更新部45A、第2フィルタ係数更新部45B、第1適応フィルタ47A、及び第2適応フィルタ47Bを有して構成されている。
【0054】
基準信号生成部41は、エンジン回転速度情報に基づいて振動周波数を算出すると共に、算出された振動周波数に相関する基準信号を生成する。基準信号生成部41で生成される基準信号は、実際には、余弦波信号及び正弦波信号として生成される。
【0055】
第1参照信号生成部43Aは、基準信号生成部41で生成される基準信号、及び予め測定することで取得した第1の伝達関数C1に基づいて、基準信号を補正した第1参照信号R1を生成する。また、第2参照信号生成部43Bは、基準信号生成部41で生成される基準信号、及び予め測定することで取得した第2の伝達関数C2に基づいて、基準信号を補正した第2参照信号R2を生成する。
【0056】
第1フィルタ係数更新部45Aは、第1参照信号生成部43Aで生成された第1参照信号R1、第1マイクロフォン13Aで収音された音声に係る誤差信号e1、第1伝達関数C1、及び第1適応フィルタ47Aの動作安定性を調整する際に設定されるステップサイズパラメータM1を、最小二乗平均(LMS:Least Mean Square)適応アルゴリズムの演算式(式1参照)に代入して演算を行うことにより、第1適応フィルタ47Aのフィルタ係数W1を更新する。
W1
n+1 =W1
n −R1×e1×C1×M1 (式1)
【0057】
前記と同様に、第2フィルタ係数更新部45Bは、第2参照信号生成部43Bで生成された第2参照信号R2、第2マイクロフォン15Aで収音された音声に係る誤差信号e2、第2伝達関数C2、及び第2適応フィルタ47Bの動作安定性を調整する際に設定されるステップサイズパラメータM2を、LMS適応アルゴリズムの演算式(式2参照)に代入して演算を行うことにより、第2適応フィルタ47Bのフィルタ係数W2を更新する。
W2
n+1 =W2
n −R2×e2×C2×M2 (式2)
【0058】
ここで、第1フィルタ係数更新部45Aは、合成音声出力モードが選択されている場合のステップサイズパラメータM1として、打消音出力モードが選択されている場合と比べて小さい値を設定する。同様に、第2フィルタ係数更新部45Bは、合成音声出力モードが選択されている場合のステップサイズパラメータM2として、打消音出力モードが選択されている場合と比べて小さい値を設定する。これは、合成音声出力モードにおいて、第1及び第2の合成音声(誤差信号)に係る収音結果に応じて第1及び第2適応フィルタ47A,47Bのフィルタ係数W1,W2が更新されることに伴って、能動騒音抑制に係る制御動作が不安定になる事態を未然に回避する趣旨である。
【0059】
第1適応フィルタ47Aは、基準信号にフィルタ係数W1を乗じることで第1の打消音に係る制御信号を生成する。同様に、第2適応フィルタ47Bは、基準信号にフィルタ係数W2を乗じることで第2の打消音に係る制御信号を生成する。第1適応フィルタ47A及び第2適応フィルタ47Bとしては、例えば、適応ノッチフィルタやFIRフィルタを適宜用いることができる。第1適応フィルタ47A及び第2適応フィルタ47Bは、本発明の“制御信号生成部”に相当する。
【0060】
なお、ANC制御部31の内部構成については、第1及び第2実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1,17−2間において共通である。
【0061】
〔第1実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−1の動作〕
次に、第1実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−1の動作について、前席空間13に存する前席乗員が後席空間15に存する後席乗員に話しかけるケース、及び後席空間15に存する後席乗員が前席空間13に存する前席乗員に話しかけるケースを例示して説明する。ただし、合成モード選択スイッチ25は、合成音声出力モードが選択操作されているものとする。
【0062】
前席乗員が後席乗員に話しかけるケースでは、まず、前席乗員の会話音声が、第1マイクロフォン13Aによって収音される。第1マイクロフォン13Aによって収音された前席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e1は、第3ローパスフィルタLPF3に入力される。
【0063】
第3ローパスフィルタLPF3は、第1マイクロフォン13Aで収音された前席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e1の周波数帯域のうち、カットオフ周波数(例えば200Hz)に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させる。第3ローパスフィルタLPF3でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1は、第1A/D変換部AD1(これについての説明は後記)及び第1ハイパスフィルタHPF1に入力される。
【0064】
第1ハイパスフィルタHPF1は、第3ローパスフィルタLPF3でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1に対し、カットオフ周波数(例えば200Hz)に対して高い周波数帯域の音声信号を通過させる。これにより、カットオフ周波数に対して低い周波数帯域に属する音声成分が除去(同音声成分のゲインが減衰)される。こうして除去される音声成分の周波数帯域は、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)の周波数帯域と共通している。その結果、騒音に係る周波数帯域のゲインが発散する事態を未然に回避して、能動騒音抑制に係る制御動作を安定化することができる。
【0065】
第1ハイパスフィルタHPF1でハイパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1は、第3A/D変換部AD3に入力される。第3A/D変換部AD3は、第1ハイパスフィルタHPF1でハイパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1を、デジタル誤差信号e1に変換する。変換後のデジタル誤差信号e1は、伝達関数取得部32を介してACP制御部33−1に入力される。
【0066】
ACP制御部33−1は、変換後のデジタル誤差信号e1に対し、前記開ループ伝達関数が全ての周波数帯域において0dB(1倍)以下となるように設定されたゲイン係数G2を乗算する補正を行う。これにより、能動騒音抑制に係る制御動作の安定化を図ることで、ハウリング現象の生じる事態を未然に回避することができる。ACP制御部33−1で補正後の前席乗員の会話音声に係るデジタル誤差信号e1は、第2の音声合成部37に入力される。
【0067】
一方、後席空間15における能動騒音抑制を実現するために、第2マイクロフォン15Aによって収音された後席空間15で生じた騒音に係るアナログ誤差信号e2は、第4ローパスフィルタLPF4に入力される。
【0068】
第4ローパスフィルタLPF4は、第2マイクロフォン15Aによって収音された後席空間15で生じた騒音に係るアナログ誤差信号e2の周波数帯域のうち、カットオフ周波数(例えば200〜500Hz程度)に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させる。第4ローパスフィルタLPF4でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e2は、第2A/D変換部AD2及び第2ハイパスフィルタHPF2(これについての説明は後記)に入力される。
【0069】
第2A/D変換部AD2は、第4ローパスフィルタLPF4でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e2を、デジタル誤差信号e2に変換する。変換後のデジタル誤差信号e2は、ANC制御部31の第2フィルタ係数更新部45Bに入力される。
【0070】
ANC制御部31の基準信号生成部41は、エンジン回転速度情報に基づいて算出された振動周波数に相関する基準信号を生成する。第2参照信号生成部43Bは、基準信号生成部41で生成される基準信号、並びに、予め測定することで取得した第2の伝達関数C2に基づいて、基準信号を補正した第2参照信号R2を生成する。
【0071】
第2フィルタ係数更新部45Bは、第2参照信号生成部43Bで生成された第2参照信号R2、第2マイクロフォン15Aで収音された後席空間15で生じた騒音に係る誤差信号e2、第2伝達関数C2、及び第2適応フィルタ47Bの動作安定性を調整する際に設定されるステップサイズパラメータM2を、前記式2に代入して演算を行うことにより、第2適応フィルタ47Bのフィルタ係数W2を更新する。
【0072】
このフィルタ係数W2の更新にあたり、第2フィルタ係数更新部45Bは、合成音声出力モードが選択されている場合のステップサイズパラメータM2として、打消音出力モードが選択されている場合と比べて小さい値を設定する。これにより、能動騒音抑制に係る制御動作が不安定になる事態を未然に回避することができる。
【0073】
次いで、第2適応フィルタ47Bは、基準信号にフィルタ係数W2を乗じることで第2の打消音に係る制御信号を生成する。こうして生成された、後席空間15で生じた騒音を打消すための第2の打消音に係る制御信号は、第2の音声合成部37に入力される。
【0074】
第2の音声合成部37は、後席空間15で生じた騒音を打消すための第2の打消音に係る制御信号に対し、ACP制御部33−1で補正後の前席乗員の会話音声に係るデジタル誤差信号e1を合成した第2の合成音声を生成する。こうして生成された第2の合成音声は、第2D/A変換部DA2に入力される。
【0075】
第2D/A変換部DA2は、第2の音声合成部37で生成されたデジタル信号態様の第2の合成音声をアナログ信号態様に変換する。変換後のアナログ信号態様の第2の合成音声は、第2ローパスフィルタLPF2に入力される。
【0076】
第2ローパスフィルタLPF2は、アナログ信号態様の第2の合成音声に係る周波数帯域のうち、カットオフ周波数(例えば200〜500Hz程度)に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させる。第2ローパスフィルタLPF2でローパスフィルタ処理後のアナログ信号態様の第2の合成音声(前席乗員の会話音声に係る誤差信号e1+後席空間15で生じた騒音を打消すための第2の打消音)は、オーディオアンプ19で所定の増幅がなされた後、第2スピーカ15Bを介して出力される。
第2スピーカ15Bを介して出力されたアナログ信号態様の第2の合成音声は、前席乗員の会話音声、及び、後席空間15で生じた騒音を打ち消すための第2の打消音を含む。このため、前席乗員から後席乗員への閉空間内での会話補助と、後席空間15における能動騒音抑制を的確に両立させることができる。
【0077】
次に、後席乗員が前席乗員に話しかけるケースでは、まず、後席乗員の会話音声が、第2マイクロフォン15Aによって収音される。第2マイクロフォン15Aによって収音された後席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e2は、第4ローパスフィルタLPF4を介して、第2A/D変換部AD2(これについての説明は後記)及び第2ハイパスフィルタHPF2に入力される。
【0078】
第2ハイパスフィルタHPF2は、第4ローパスフィルタLPF4でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e2に対し、カットオフ周波数(例えば200〜300Hz程度)に対して高い周波数帯域の音声信号を通過させる。これにより、カットオフ周波数に対して低い周波数帯域に属する音声成分が除去(同音声成分のゲインが減衰)される。こうして除去される音声成分の周波数帯域は、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)の周波数帯域と共通している。その結果、騒音に係る周波数帯域のゲインが発散する事態を未然に回避して、能動騒音抑制に係る制御動作を安定化することができる。
【0079】
第2ハイパスフィルタHPF2でハイパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e2は、第4A/D変換部AD4に入力される。第4A/D変換部AD4は、第2ハイパスフィルタHPF2でハイパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e2を、デジタル誤差信号e2に変換する。変換後のデジタル誤差信号e2は、伝達関数取得部32を介してACP制御部33−1に入力される。
【0080】
ACP制御部33−1は、変換後のデジタル誤差信号e2に対し、前記開ループ伝達関数が全ての周波数帯域において0dB(1倍)以下となるように設定されたゲイン係数G1を乗算する補正を行う。これにより、能動騒音抑制に係る制御動作の安定化を図ることで、ハウリング現象の生じる事態を未然に回避することができる。ACP制御部33−1で補正後の後席乗員の会話音声に係るデジタル誤差信号e2は、第1の音声合成部35に入力される。
【0081】
一方、前席空間13における能動騒音抑制を実現するために、第1マイクロフォン13Aによって収音された前席空間13で生じた騒音に係るアナログ誤差信号e1は、第3ローパスフィルタLPF3を介して、第1A/D変換部AD1及び第1ハイパスフィルタHPF1(これについての説明は後記)に入力される。
【0082】
第1A/D変換部AD1は、第3ローパスフィルタLPF3でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1を、デジタル誤差信号e1に変換する。変換後のデジタル誤差信号e1は、ANC制御部31の第1フィルタ係数更新部45Aに入力される。
【0083】
ANC制御部31の基準信号生成部41は、エンジン回転速度情報に基づいて算出された振動周波数に相関する基準信号を生成する。第1参照信号生成部43Aは、基準信号生成部41で生成される基準信号、並びに、予め測定することで取得した第1の伝達関数C1に基づいて、基準信号を補正した第1参照信号R1を生成する。
【0084】
第1フィルタ係数更新部45Aは、第1参照信号生成部43Aで生成された第1参照信号R1、第1マイクロフォン13Aで収音された前席空間13で生じた騒音に係る誤差信号e1、第1伝達関数C1、及び第1適応フィルタ47Aの動作安定性を調整する際に設定されるステップサイズパラメータM1を、前記式1に代入して演算を行うことにより、第1適応フィルタ47Aのフィルタ係数W1を更新する。
【0085】
このフィルタ係数W1の更新にあたり、第1フィルタ係数更新部45Aは、合成音声出力モードが選択されている場合のステップサイズパラメータM1として、打消音出力モードが選択されている場合と比べて小さい値を設定する。これにより、能動騒音抑制に係る制御動作が不安定になる事態を未然に回避することができる。
【0086】
次いで、第1適応フィルタ47Aは、基準信号にフィルタ係数W1を乗じることで第1の打消音に係る制御信号を生成する。こうして生成された、前席空間13で生じた騒音を打消すための第1の打消音に係る制御信号は、第1の音声合成部35に入力される。
【0087】
第1の音声合成部35は、前席空間13で生じた騒音を打消すための第1の打消音に係る制御信号に対し、ACP制御部33−1で補正後の後席乗員の会話音声に係るデジタル誤差信号e2を合成した第1の合成音声を生成する。こうして生成された第1の合成音声は、第1D/A変換部DA1に入力される。
【0088】
第1D/A変換部DA1は、第1の音声合成部35で生成されたデジタル信号態様の第1の合成音声をアナログ信号態様に変換する。変換後のアナログ信号態様の第1の合成音声は、第1ローパスフィルタLPF1に入力される。
【0089】
第1ローパスフィルタLPF1は、アナログ信号態様の第1の合成音声に係る周波数帯域のうち、カットオフ周波数(例えば200〜300Hz程度)に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させる。第1ローパスフィルタLPF1でローパスフィルタ処理後のアナログ信号態様の第1の合成音声(後席乗員の会話音声に係る誤差信号e2+前席空間13で生じた騒音を打消すための第1の打消音)は、オーディオアンプ19で所定の増幅がなされた後、第1スピーカ13Bを介して出力される。
第1スピーカ13Bを介して出力されたアナログ信号態様の第1の合成音声は、後席乗員の会話音声、及び、前席空間13で生じた騒音を打ち消すための第1の打消音を含む。このため、後席乗員から前席乗員への閉空間内での会話補助と、前席空間13における能動騒音抑制を的確に両立させることができる。
【0090】
〔第2実施形態に係る能動騒音抑制装置17−2の内部構成〕
次に、第2実施形態に係る能動騒音抑制装置17−2の内部構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、第2実施形態に係る能動騒音抑制装置17−2を備える第2実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−2の概要を表すブロック図である。
第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1と、第2実施形態に係る能動騒音抑制装置17−2とでは、基本機能の共通する構成要素が存在する。そこで、第1及び第2実施形態間の相違点に注目し、その相違点について説明することで、第2実施形態に係る能動騒音抑制装置17−2の構成説明に代えることとする。
【0091】
第2実施形態に係る能動騒音抑制装置17−2では、第1オぺアンプOP1を用いてアナログ誤差信号e1を適宜のゲインに増幅する処理を施す一方、第2オぺアンプOP2を用いてアナログ誤差信号e2を適宜のゲインに増幅する処理を施す構成を採用している。なお、第1オぺアンプOP1又は第2オぺアンプOP2を用いた増幅処理は、アナログ信号処理により行っている。
【0092】
また、第2実施形態に係る能動騒音抑制装置17−2では、ACP制御部33−2は、合成モード選択スイッチ25に係る合成モード選択情報に基づいて、ゲイン係数G3,G4をそれぞれ設定する。第1オぺアンプOP1のゲインはゲイン係数G3に基づいて設定される一方、第2オぺアンプOP2のゲインはゲイン係数G4に基づいて設定される。
具体的には、合成モード選択情報がオン(音声出力モードが合成音声出力モード)である場合、第1及び第2オぺアンプOP1,OP2のゲインは比較的高い値(例えば0.7〜1程度)に設定される。一方、合成モード選択情報がオフ(音声出力モードが打消音出力モード)である場合、第1及び第2オぺアンプOP1,OP2のゲインは比較的低い値(例えば0〜0.3程度)に設定される。
【0093】
第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1では、第1マイクロフォン13Aで収音された前席空間13での会話音声に係る誤差信号e1から、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)に係る周波数帯域の音声成分を除去(同音声成分のゲインを減衰)するために、誤差信号e1に対し、第1ハイパスフィルタHPF1を用いてカットオフ周波数(例えば200〜300Hz程度)に対して高い周波数帯域の音声信号を通過させる処理を施す構成を採用している。一方、第2マイクロフォン15Aで収音された後席空間15での会話音声に係る誤差信号e2から、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)に係る周波数帯域の音声成分を除去(同音声成分のゲインを減衰)するために、誤差信号e2に対し、第2ハイパスフィルタHPF2を用いてカットオフ周波数(例えば200〜300Hz程度)に対して高い周波数帯域の音声信号を通過させる処理を施す構成を採用している。
【0094】
これに対し、第2実施形態に係る能動騒音抑制装置17−2では、第1マイクロフォン13Aで収音された前席空間13での会話音声に係る誤差信号e1から、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)に係る周波数帯域の音声成分を除去(同音声成分のゲインを減衰)するために、第1オぺアンプOP1で増幅処理後のアナログ誤差信号e1に対して第1バンドパスフィルタBPF1を用いて所要の周波数帯域幅に属する音声信号を通過させる処理を施す構成を採用している。一方、第2マイクロフォン15Aで収音された後席空間15での会話音声に係る誤差信号e2から、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)に係る周波数帯域の音声成分を除去(同音声成分のゲインを減衰)するために、第2オぺアンプOP2で増幅処理後のアナログ誤差信号e2に対して第2バンドパスフィルタBPF2を用いて所要の周波数帯域幅に属する音声信号を通過させる処理を施す構成を採用している。
なお、第1バンドパスフィルタBPF1及び第2バンドパスフィルタBPF2を用いたバンドパスフィルタ処理は、アナログ信号処理により行っている。
第1バンドパスフィルタBPF1で増幅処理後のアナログ誤差信号e1は、第2の音声合成部37に入力される。一方、第2バンドパスフィルタBPF2で増幅処理後のアナログ誤差信号e2は、第1の音声合成部35に入力される。
【0095】
〔第2実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−2の動作〕
次に、第2実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−2の動作について、前席空間13に存する前席乗員が後席空間15に存する後席乗員に話しかけるケース、及び後席空間15に存する後席乗員が前席空間13に存する前席乗員に話しかけるケースを例示して説明する。ただし、合成モード選択スイッチ25は、合成音声出力モードが選択操作(合成モード選択情報がオン)されているものとする。
【0096】
前席乗員が後席乗員に話しかけるケースでは、まず、前席乗員の会話音声が、第1マイクロフォン13Aによって収音される。第1マイクロフォン13Aによって収音された前席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e1は、第1オぺアンプOP1及び第3ローパスフィルタLPF3にそれぞれ入力される。
【0097】
第1オぺアンプOP1は、第1マイクロフォン13Aで収音された前席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e1を、ACP制御部33−2で設定されたゲイン係数G3に基づくゲインを用いて増幅する。第1オぺアンプOP1で増幅されたアナログ誤差信号e1は、第1バンドパスフィルタBPF1に入力される。
【0098】
第1バンドパスフィルタBPF1は、第1オぺアンプOP1で増幅処理後のアナログ誤差信号e1に対して所要の周波数帯域幅に属する音声信号を通過させる。これにより、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)に係る周波数帯域の音声成分を除去する(同音声成分のゲインを減衰させる)。第1バンドパスフィルタBPF1でバンドパスフィルタ処理後の前席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e1は、第2の音声合成部37に入力される。
【0099】
一方、後席空間15における能動騒音抑制を実現するために、第2マイクロフォン15Aによって収音された後席空間15で生じた騒音に係るアナログ誤差信号e2は、第4ローパスフィルタLPF4に入力される。
【0100】
第4ローパスフィルタLPF4は、第2マイクロフォン15Aで収音された後席空間15で生じた騒音に係るアナログ誤差信号e2の周波数帯域のうち、カットオフ周波数(例えば200〜500Hz程度)に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させる。第4ローパスフィルタLPF4でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e2は、第2A/D変換部AD2に入力される。
【0101】
第2A/D変換部AD2は、第4ローパスフィルタLPF4でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e2を、デジタル誤差信号e2に変換する。変換後のデジタル誤差信号e2は、ANC制御部31に入力される。
【0102】
ANC制御部31は、エンジン回転速度情報に基づいて算出された振動周波数に相関する基準信号、デジタル誤差信号e2などに基づいて、後席空間15における騒音を打消すための第2の打消音に係る制御信号を生成する。こうして生成された第2の打消音に係る制御信号は、第2D/A変換部DA2に入力される。
【0103】
第2D/A変換部DA2は、デジタル信号態様の第2の打消音をアナログ信号態様に変換する。変換後のアナログ信号態様の第2の打消音は、第2ローパスフィルタLPF2に入力される。
【0104】
第2ローパスフィルタLPF2は、アナログ信号態様の第2の打消音に係る周波数帯域のうち、カットオフ周波数(例えば200〜500Hz程度)に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させる。第2ローパスフィルタLPF2でローパスフィルタ処理後の、後席空間15で生じた騒音を打消すための第2の打消音に係る制御信号は、第2の音声合成部37に入力される。
【0105】
第2の音声合成部37は、ANC制御部31で生成されたアナログ信号態様の、後席空間15で生じた騒音を打消すための第2の打消音(第2ローパスフィルタLPF2の出力)に対し、前席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e1(第1バンドパスフィルタBPF1の出力)を合成した第2の合成音声を生成する。こうして生成された第2の合成音声(前席乗員の会話音声に係る誤差信号e1+後席空間15で生じた騒音を打消すための第2の打消音)は、オーディオアンプ19で所定の増幅がなされた後、第2スピーカ15Bを介して出力される。
第2スピーカ15Bを介して出力されたアナログ信号態様の第2の合成音声は、前席乗員の会話音声、及び、後席空間15で生じた騒音を打ち消すための第2の打消音を含む。このため、前席乗員から後席乗員への閉空間内での会話補助と、後席空間15における能動騒音抑制を的確に両立させることができる。
【0106】
次に、後席乗員が前席乗員に話しかけるケースでは、まず、後席乗員の会話音声が、第2マイクロフォン15Aによって収音される。第2マイクロフォン15Aによって収音された後席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e2は、第2オぺアンプOP2及び第4ローパスフィルタLPF4にそれぞれ入力される。
【0107】
第2オぺアンプOP2は、第2マイクロフォン15Aで収音された後席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e2を、ACP制御部33−2で設定されたゲイン係数G4に基づくゲインを用いて増幅する。第2オぺアンプOP2で増幅されたアナログ誤差信号e2は、第2バンドパスフィルタBPF2に入力される。
【0108】
第2バンドパスフィルタBPF2は、第2オぺアンプOP2で増幅処理後のアナログ誤差信号e2に対して所要の周波数帯域幅に属する音声信号を通過させる。これにより、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)に係る周波数帯域の音声成分を除去する(同音声成分のゲインを減衰させる)。第2バンドパスフィルタBPF2でバンドパスフィルタ処理後の後席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e2は、第1の音声合成部35に入力される。
【0109】
一方、前席空間13における能動騒音抑制を実現するために、第1マイクロフォン13Aで収音された前席空間13で生じた騒音に係るアナログ誤差信号e1は、第3ローパスフィルタLPF3に入力される。
【0110】
第3ローパスフィルタLPF3は、第1マイクロフォン13Aで収音された前席空間13で生じた騒音に係るアナログ誤差信号e1の周波数帯域のうち、カットオフ周波数(例えば200〜500Hz程度)に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させる。第3ローパスフィルタLPF3でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1は、第1A/D変換部AD1に入力される。
【0111】
第1A/D変換部AD1は、第3ローパスフィルタLPF3でローパスフィルタ処理後のアナログ誤差信号e1を、デジタル誤差信号e1に変換する。変換後のデジタル誤差信号e1は、ANC制御部31に入力される。
【0112】
ANC制御部31は、エンジン回転速度情報に基づいて算出された振動周波数に相関する基準信号、デジタル誤差信号e1などに基づいて、前席空間13で生じた騒音を打消すための第1の打消音に係る制御信号を生成する。こうして生成された第1の打消音に係る制御信号は、第1D/A変換部DA1に入力される。
【0113】
第1D/A変換部DA1は、デジタル信号態様の第1の打消音をアナログ信号態様に変換する。変換後のアナログ信号態様の第1の打消音は、第1ローパスフィルタLPF1に入力される。
【0114】
第1ローパスフィルタLPF1は、アナログ信号態様の第1の打消音に係る周波数帯域のうち、カットオフ周波数(例えば200〜500Hz程度)に対して低い周波数帯域の音声信号を通過させる。第1ローパスフィルタLPF1でローパスフィルタ処理後の、前席空間13で生じた騒音を打消すためのアナログ信号態様の第1の打消音は、第1の音声合成部35に入力される。
【0115】
第1の音声合成部35は、ANC制御部31で生成されたアナログ信号態様の、前席空間13で生じた騒音を打消すための第1の打消音(第1ローパスフィルタLPF1の出力)に対し、後席乗員の会話音声に係るアナログ誤差信号e2(第2バンドパスフィルタBPF2の出力)を合成した第1の合成音声を生成する。こうして生成された第1の合成音声は、オーディオアンプ19で所定の増幅がなされた後、第1スピーカ13Bを介して出力される。
第1スピーカ13Bを介して出力されたアナログ信号態様の第1の合成音声は、後席乗員の会話音声、及び、前席空間13で生じた騒音を打ち消すための第1の打消音を含む。このため、後席乗員から前席乗員への閉空間内での会話補助と、前席空間13における能動騒音抑制を的確に両立させることができる。
【0116】
〔車両用能動騒音抑制システム11の作用効果〕
次に、車両用能動騒音抑制システム11の作用効果について説明する。
【0117】
本発明の実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11では、能動騒音抑制装置17は、騒音及び第1マイクロフォン(第1の収音部)13Aで収音された音声(誤差信号e1)を参照して生成された第1の打消音に対し、第2マイクロフォン(第2の収音部)15Aで収音された音声(誤差信号e2)を合成した第1の合成音声を生成する第1の音声合成部35と、騒音及び第2マイクロフォン(第2の収音部)15Aで収音された音声を参照して生成された第2の打消音に対し、第1マイクロフォン(第1の収音部)13Aで収音された音声を合成した第2の合成音声を生成する第2の音声合成部37と、を備える。能動騒音抑制装置17は、第1の合成音声を第1スピーカ(第1の音声出力部)13Bに出力させる一方、第2の合成音声を第2スピーカ(第2の音声出力部)15Bに出力させる制御を行い、第1及び第2の合成音声を生成する際に、第1マイクロフォン13Aで収音された音声及び第2マイクロフォン15Aで収音された音声から、閉空間内(車室内)における抑制対象となる騒音に係る周波数帯域に属する音声成分をそれぞれ除去する処理を行う。
【0118】
本発明の実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11によれば、車室内での会話補助と能動騒音抑制を的確に両立させることができる。
また、第1実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−1によれば、車室内に生じる騒音を抑制する従来の能動騒音抑制装置に対し、合成モード選択スイッチ25、ACP制御部33−1、第1の音声合成部35、第2の音声合成部37、切替部39、第1ハイパスフィルタHPF1、第2ハイパスフィルタHPF2、第3A/D変換部AD3、及び、第4A/D変換部AD4を追加することで、車室内での円滑な会話を補助する会話補助機能を、比較的簡易に組み込むことができる。
【0119】
さらに、第2実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−2によれば、車室内に生じる騒音を抑制する従来の能動騒音抑制装置に対し、合成モード選択スイッチ25、ACP制御部33−2、第1の音声合成部35、第2の音声合成部37、第1オぺアンプOP1、第2オぺアンプOP2、第1バンドパスフィルタBPF1、及び、第2バンドパスフィルタBPF2を追加することで、車室内での円滑な会話を補助する会話補助機能を、比較的簡易に組み込むことができる。
【0120】
また、第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1は、能動騒音抑制装置17−1、第1スピーカ13B(第1の音声出力部)及び第2スピーカ(第2の音声出力部)15B、第1マイクロフォン(第1の収音部)13A及び第2マイクロフォン(第2の収音部)15A、並びに、オーディオアンプ19(ただし、オーディオアンプ19を除いてもよい。)を含んで構成される音響系統の開ループ伝達関数を取得する伝達関数取得部32と、伝達関数取得部32で取得された開ループ伝達関数が、(好ましくは全ての周波数帯域において)0dB(1倍)以下となるようにゲイン係数G1,G2を設定するACP制御部(設定部)33−1と、第1マイクロフォン13Aで収音された前席乗員の会話音声に係る誤差信号e1に対し、前記設定されたゲイン係数G2を乗算する補正を行うと共に、第2マイクロフォン15Aで収音された後席乗員の会話音声に係る誤差信号e2に対し、前記設定されたゲイン係数G1を乗算する補正を行うACP制御部(補正部)33−1と、を備える構成を採用してもよい。
【0121】
このように構成すれば、ACP制御部33−1は、第1マイクロフォン13Aで収音された前席乗員の会話音声に係る誤差信号e1に対し、前記設定されたゲイン係数G2を乗算する補正を行うと共に、第2マイクロフォン15Aで収音された後席乗員の会話音声に係る誤差信号e2に対し、前記設定されたゲイン係数G1を乗算する補正を行うため、能動騒音抑制に係る制御動作の安定化を図ることで、ハウリング現象の生じる事態を未然に回避しつつ、閉空間内での会話補助と能動騒音抑制を的確に両立させることができる。
【0122】
また、能動騒音抑制装置17は、第1スピーカ(第1の音声出力部)13B又は第2スピーカ(第2の音声出力部)15Bのうち少なくともいずれかから音声を出力させる際に用いる音声出力モードとして、第1の合成音声を第1スピーカ13Bに出力させる一方、第2の合成音声を第2スピーカ15Bに出力させる合成音声出力モード、並びに、第1又は第2の打消音を第1スピーカ13B及び第2スピーカ15Bのうち少なくともいずれかから出力させる打消音出力モードを切替え可能に有し、少なくとも騒音に相関する基準信号に基づいて参照信号を生成する参照信号生成部43A,43Bと、参照信号生成部43A,43Bで生成された参照信号R1,R2、第1マイクロフォン13Aで収音された音声又は第2マイクロフォン15Aで収音された音声に係る誤差信号(e1又はe2)、及び適応フィルタ47A,47Bの係数更新量を調整する際に設定されるステップサイズパラメータM1,M2を用いて適応フィルタ47A,47Bのフィルタ係数W1,W2を更新するフィルタ係数更新部45A,45Bと、基準信号に適応フィルタ47A,47Bのフィルタ係数W1,W2を乗じることで第1又は第2の打消音に係る制御信号を生成する適応フィルタ(制御信号生成部)47A,47Bと、を備え、合成音声出力モードが選択されている場合のステップサイズパラメータM1,M2には、打消音出力モードが選択されている場合と比べて小さい値が設定される構成を採用してもよい。
【0123】
このように構成すれば、音声出力モードとして、合成音声出力モード又は打消音出力モードのうちどちらが選択されているかに関わらず、適応フィルタ47A,47Bのフィルタ係数更新に伴う能動騒音抑制に係る制御動作の安定性を担保することができる。
【0124】
また、第1実施形態に係る能動騒音抑制装置17−1のACP制御部33−1は、合成音声出力モードが選択されている場合、ゲイン係数として0を超える1未満の値を設定する一方、打消音出力モードが選択されている場合、ゲイン係数として0を設定し、合成音声出力モード又は打消音出力モードのいずれか一方から他方への音声出力モードの切り替えは、所定の時定数をもって行われる構成を採用してもよい。
【0125】
このように構成すれば、合成音声出力モードが選択されている場合には、第1マイクロフォン13Aで収音された音声又は第2マイクロフォン15Aで収音された音声に係る誤差信号(e1又はe2)に対し、ゲイン係数として0を超える1未満の値を乗算する補正が行われる。このケースでは、誤差信号の影響を抑制することができる。
一方、打消音出力モードが選択されている場合には、第1マイクロフォン13Aで収音された音声又は第2マイクロフォン15Aで収音された音声に係る誤差信号(e1又はe2)に対し、ゲイン係数として値0を乗算する補正が行われる。このケースでは、誤差信号の影響を除くことができる。
また、合成音声出力モード又は打消音出力モードのいずれか一方から他方への音声出力モードの切り替えは、所定の時定数をもって行われるため、例えば、音声出力モードの切り替えに伴いゲイン係数を切り替えた場合であっても、瞬時に(所定の時定数を設けずに)音声出力モードの切り替えを行った際の異音の発生を抑制することができる。
以上説明したように、本発明の実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11によれば、合成音声出力モード又は打消音出力モードのうちどちらが選択されているかに関わらず、全ての周波数帯域において車両用能動騒音抑制システム11における制御安定性を担保することができる。
【0126】
また、本発明の第2実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−2では、第1の打消音に対し、アナログ信号態様のままのアナログ誤差信号e2を合成することで第1の合成音声を生成(第2の打消音に対し、アナログ信号態様のままのアナログ誤差信号e1を合成することで第2の合成音声を生成)するため、能動騒音抑制装置17−2の演算処理能力(サンプリングタイム)に関わらず、前席・後席のうち一方の乗員の音声を他方の乗員に対して明瞭に伝達する効果を期待することができる。
その理由は、一般に、アナログ音声信号をデジタル音声信号に変換する際に、マイコン等の制御装置の演算処理能力が低いと、乗員の音声を言語として認識するために必要な成分が出力から脱落してしまう(量子化誤差、量子化歪み)おそれがあるところ、第2実施形態のケースでは、そのような不具合を未然に防ぐことができるからである。
【0127】
特に、本発明の第2実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11−2では、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)に係る周波数帯域をバンドパスフィルタを用いてカットオフ処理するため、能動騒音抑制制御の安定性を確保すると同時に、乗員の会話音声が属する周波数帯域から外れる帯域の音声成分を適宜カットオフすることができる結果として、乗員の会話音声を一層明瞭に伝達する効果を期待することができる。
【0128】
[その他の実施形態]
以上説明した実施形態は、本発明の具現化例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0129】
例えば、本発明の実施形態に係る説明において、車室内の騒音の例として、エンジン音を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。車室内で生じる、例えばエンジン音の他に、ロードノイズ(タイヤが路面に接することで生じる音)やドラミングノイズ(走行中にルーフパネルやフロアパネルが振動することで生じる音)を含む騒音全般に適用することができる。
【0130】
また、本発明の実施形態に係る説明において、第1ローパスフィルタLPF1、第2ローパスフィルタLPF2、第3ローパスフィルタLPF3、及び第4ローパスフィルタLPF4に設定されるカットオフ周波数として、例えば200〜500Hz程度を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。第1ローパスフィルタLPF1、第2ローパスフィルタLPF2、第3ローパスフィルタLPF3、及び第4ローパスフィルタLPF4のそれぞれに設定されるカットオフ周波数としては、本発明の実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11が十分な性能を発揮することを考慮して、適宜の値を設定すればよい。
【0131】
また、本発明の実施形態に係る説明において、第1ハイパスフィルタHPF1及び第2ハイパスフィルタHPF2に設定されるカットオフ周波数として、例えば200〜300Hz程度を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。第1ハイパスフィルタHPF1及び第2ハイパスフィルタHPF2のそれぞれに設定されるカットオフ周波数としては、前記と同様に、本発明の実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11が十分な性能を発揮することを考慮して、適宜の値を設定すればよい。
【0132】
また、本発明の実施形態に係る説明において、本発明に係る能動騒音抑制システムを車両の室内空間に搭載した例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明に係る能動騒音抑制システムは、例えば、航空機の室内空間や鉄道車両の室内空間等に適用してもよい。
【0133】
また、本発明の実施形態に係る説明において、車室内の前席空間13にひとつのスピーカ(第1スピーカ13B)を設ける例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明の実施形態に係る車両用能動騒音抑制システム11では、例えば、車室内の前席空間13における運転席側及び助手席側の両側にそれぞれスピーカを設ける構成を採用してもよい。
かかる構成を備える車両Vに、目的地までの経路を画像及び音声を介して案内するナビゲーション装置が搭載されているとする。この場合において、ナビゲーション装置による案内音声を、運転席側スピーカから出力させる。また、ナビゲーション装置による案内音声が出力されている間は、運転席側スピーカから後席空間15からの音声が出力されないように、運転席側スピーカが属する能動騒音抑制システムの音声出力モードを、合成音声出力モードから打消音出力モードに切替える構成を採用してもよい。
【0134】
また、本発明の実施形態に係る説明において、乗員による合成モード選択スイッチ25の操作を介して選択された合成モード選択情報に基づいて、音声出力モードを、合成音声出力モード又は打消音出力モードのうちいずれか一方へ切り替える例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。音声出力モードの切り替えを、車両状態や外乱(騒音)状態に応じて行う構成を採用してもよい。具体的には、例えば、能動騒音抑制に係る制御動作が不安定(例えば、マイクロホンからの収音が発散傾向にある)である場合に、合成音声出力モードから打消音出力モードへの音声出力モードの切り替えを行う構成を採用してもよい。
【0135】
また、本発明の実施形態に係る説明において、前記音響系統全体としての開ループ伝達関数を取得する伝達関数取得部32を、能動騒音抑制装置(マイクロコンピュータ)17が有する機能部(ソフトウェア)として構成する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。前記伝達関数取得部32は、設計段階で測定器を用いて予め実測された前記音響系統全体としての開ループ伝達関数を記憶することにより、開ループ伝達関数を取得する構成を採用してもよい。
【0136】
また、本発明の第2実施形態に係る説明において、ANC制御部31が抑制対象としている騒音(エンジン騒音を含む)に係る周波数帯域の音声信号成分を除去するために、第1及び第2バンドパスフィルタBPF1,BPF2を用いる例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。第1及び第2バンドパスフィルタBPF1,BPF2に代えて、抑制対象となる騒音に係る周波数帯域に応じた帯域の音声信号成分を除去可能なハイパスフィルタを採用してもよい。