(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
抵抗(R)、キャパシタ(C)、インダクタ(L)は、電子回路において受動素子であり、それぞれ単独で固有の機能を持つ。さらに、前記受動素子は相互に結合することで、前記固有の機能とは異なる機能を持つことがある。以下、受動素子を相互に結合することで生じる前記固有の機能とは異なる機能を回路的機能と呼ぶことがある。
【0003】
複数の前記受動素子は、印刷回路基板などに個別に実装した後に配線などによって連結することにより、回路的機能を発揮することができる。しかし、受動素子を個別に実装する場合には、受動素子の実装面積が増大してしまうという欠点がある。したがって、各種応用機器の小型化の要求に応じるためには、単一の電子部品で回路的機能を発揮することが求められる。単一の電子部品で回路的機能を発揮する例として、積層型LCフィルタが挙げられる。
【0004】
積層型LCフィルタとは、コイル部とコンデンサ部とが単一体の中にそれぞれ独立して存在している複合電子部品である。ここで、積層型LCフィルタを得るためには、コイル導体および磁性体層で構成されるコイル部と、内部電極および誘電体層で構成されるコンデンサ部とを、互いに重ねあわせた上で同時焼成し、一体焼結させる必要がある。しかし、コイル部とコンデンサ部との材質の違いにより、十分に一体焼結できない場合があった。
【0005】
近年では、コイル部とコンデンサ部とを有する複合電子部品を製造する際に、コイル部とコンデンサ部との間に中間材層を介在させる試みが行われている。
【0006】
特許文献1では、誘電体セラミック部分と磁性体セラミック部分との間に、中間層として、ZrO
2、TiO
2またはそれらの混合系にCuOを0.5〜30モル%含有させて合計100モル%となるように調合されたセラミック材料を介在させることを特徴とするLC複合部品が開示されている。
【0007】
特許文献2では、ガラスを含有する誘電体セラミック部分と磁性体セラミック部分との間に、15〜40モル%のBaOと、60〜85モル%のTiO
2と、からなるセラミック、および、前記誘電体セラミック部分に含有されているガラスが存在することを特徴とするLC複合部品が開示されている。
【0008】
特許文献3では、中間材層が、FeZnCu系非磁性セラミックとホウ珪酸亜鉛系ガラスとを含んで構成されていることを特徴とする複合電子部品が開示されている。
【0009】
特許文献4では、ZnO、BaOおよびTiO
2からなる組成物に対して、ZnO−SiO
2−B
2O
3系ガラスを添加してなることを特徴とする電子部品用接合剤が開示されている。
【0010】
特許文献5では、中間材層が、Zn−Ti物質を含んで構成されていることを特徴とする複合電子部品が開示されている。
【0011】
しかし、上記特許文献1〜5には、いずれも特定の誘電体セラミックの材料における結果しか記載されていない。したがって、上記特許文献1〜5に記載された技術は、あらゆる誘電体セラミックに対して適用できるとはいえない。
【0012】
特許文献1の誘電体セラミック部分は、Pb系複合ペロブスカイト材料である。したがって、環境配慮の観点から好ましくない。また、特許文献1では、一体化時において1000℃で焼結する材料を用いている。したがって、導体材料として融点が1000℃未満であるAgを用いることができない。
【0013】
特許文献2の誘電体セラミック部分は、Pbを含む材料である。したがって、環境配慮の観点から好ましくない。
【0014】
特許文献3に開示された中間材層はFeを含んでいる。誘電体セラミック部の材質によっては、焼結時に中間材層に含まれるFeが誘電体セラミック部へ拡散する場合があり、Feの拡散により誘電体セラミック部の特性が劣化する場合がある。
【0015】
特許文献4に開示された接合剤について本発明者等が追試した。本発明者らは、特許文献4に開示された接合剤を実際に用いることができる誘電体層の材質はCaO−TiO
2系酸化物に限られることを見出した。特に、誘電体層の材質がSrO−TiO
2系酸化物またはZnO−TiO
2系酸化物である場合には、特許文献4に開示された接合剤を用いても誘電体層と磁性体層とを一体化することが困難であった。
【0016】
特許文献5には、誘電体としてZnOを主成分としたバリスタのみ例示されている。すなわち、ZnOを主成分としたバリスタ以外の誘電体を用いる場合にも特許文献5に開示された技術を適用できるか否かは不明である。また、一般的にZnOとフェライトとでは線膨張係数が大きく乖離している。したがって、誘電体としてZnOを主成分としたバリスタを用い、磁性体にフェライトを用いる場合には、仮に特許文献5に記載の中間材層を介在させたとしても焼結時にクラックが発生しやすい。また、線膨張係数が大きく乖離していることによる影響を緩和するために中間層の厚みを厚くする場合には、部品の低背化の要求を満たせなくなってしまう。
【0017】
特許文献1〜5に記載された従来技術において用いられる中間材層は、それぞれに例示された誘電体セラミックと磁性体セラミックとを一体焼成する効果を有する。しかしながら、誘電体セラミックと中間材層との間の相互拡散、中間材層と磁性体セラミックとの相互拡散の様子は、中間材層と接合する誘電体セラミックおよび磁性体セラミックの材質により大きく異なる。相互拡散を適切に制御するためには、誘電体セラミックおよび磁性体セラミックによって中間材層の組成を調整する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本実施形態では、複合電子部品を具体化した積層型フィルタを例示し、その構造と製造方法を説明する。
【0030】
積層型フィルタ
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層型フィルタ2は、T型の集中定数回路構成の積層型3端子フィルタであり、素子本体4を有する。素子本体4の両端部には、外部電極61〜66が設けられている。
【0031】
素子本体4の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、(0.4〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
【0032】
図2に示すように、素子本体4は、コイル部としての積層型チップインダクタ部42と、コンデンサ部としての積層型チップコンデンサ部44とが上下に形成され、これらインダクタ部42及びコンデンサ部44の間に中間材層46を介在させ、一体化してある。
【0033】
積層型チップインダクタ部
積層型チップインダクタ部42は、磁性体層422と内部電極層424とが交互に積層一体化された多層構造のチップ本体426を有する。
【0034】
磁性体層422は、磁性フェライト組成物を含有する。磁性フェライト組成物の種類に特に制限はない。たとえば、NiCuZn系フェライト、NiCuZnMg系フェライト、CuZn系フェライト、NiCu系フェライトなどが挙げられる。特にNiCuZn系フェライトまたはCuZn系フェライトを用いることが好ましい。
【0035】
以下、NiCuZn系フェライトを用いる場合について述べる。前記NiCuZn系フェライトの組成には特に制限はなく、目的に応じて種々の組成のものを選択すればよい。焼成後のフェライト焼結体において、主成分としてFe
2 O
3 :30〜50モル%、NiO:0.1〜50モル%、CuO:3〜20モル%、およびZnO:0.5〜35モル%となるフェライト組成物を用いることが好ましい。
【0036】
このフェライト組成物は、前記主成分の他に、たとえばMnO、CoO、SiO
2、SnO
2、Bi
2O
3、B
2O
3などの副成分を含有してあってもよい。前記副成分を含有する場合の含有量は、前記主成分100モルに対し、0〜5モル(0モルを除く)程度とすることができる。
【0037】
内部電極層424は、各層が略C字形であり、チップ本体426の内部で、スパイラル状に導通が確保されて閉磁路コイル(巻線パターン)を構成し、その両端は、外部電極61,63,64,66に接続されている。この内部電極層424は、Agを主体とした導電材を用いて形成されることが好ましい。Agを主体とした導電材を用いることが好ましいのは、Agの抵抗率が小さいためである。Agを主体とした導電材はAg合金であっても良く、Ag合金として例えばAg−Pd、Ag−Pt、Ag−Pd−Ptなどを用いても良い。なお、Ti化合物、Zr化合物、Si化合物などを添加しても良い。
【0038】
インダクタ部42の磁性体層422の電極間厚みおよびベース厚みには特に制限はなく、電極間厚み(内部電極層424,424の間隔)は10〜100μm、ベース厚みは100〜500μm程度で設定することができる。さらに、内部電極層424の厚みは、通常5〜30μmの範囲で設定でき、巻線パターンのピッチは10〜400μm程度、巻数は1.5〜50.5ターン程度とすることができる。
【0039】
積層型チップコンデンサ部
積層型チップコンデンサ部44は、誘電体層442と内部電極層444とが交互に積層一体化された多層構造のチップ本体446を有する。
【0040】
誘電体層442は、誘電体磁器組成物を含有する。前記誘電体磁器組成物としては、SrO−TiO
2系酸化物またはZnO−TiO
2系酸化物を用いる。
【0041】
SrO−TiO
2系酸化物としてSrTiO
3を用いる場合には、さらにホウ素、銅の酸化物および/またはマンガンの酸化物を含有することが好ましい。ホウ素はホウ素を含むガラスの形態で含有させることが好ましい。酸化ホウ素の形態では、経時変化でホウ酸が析出しやすく取り扱いにくいためである。
【0042】
前記SrTiO
3100重量%に対して、前記ホウ素を含むガラスの含有量が2〜5重量%、前記銅の酸化物の含有量が、CuO換算で、0重量%より多く、10重量%以下、前記マンガンの酸化物の含有量が、MnO換算で、0重量%より多く、1.5重量%以下であることが好ましい。
【0043】
ZnO−TiO
2系酸化物を用いる場合には、TiO
2が40〜90mol%、ZnOが60〜10mol%からなるZnO−TiO
2系酸化物を用いることが好ましい。ZnO−TiO
2系酸化物を用いる場合には、さらにホウ素を含有させることが好ましい。ホウ素の含有量に制限はないが、前記ZnO−TiO
2系酸化物を100wt%として、B
2O
3換算で0.1〜6wt%の範囲で含有させることが好ましい。ホウ素はホウ素を含むガラスの形態で含有させることが好ましい。酸化ホウ素の形態では、経時変化でホウ酸が析出しやすく取り扱いにくいためである。
【0044】
内部電極層444は、抵抗率の小さいAgを主体とした導電材を用いて形成されており、内部電極層444の各層は、交互に、外部電極62,65に接続されている。Agを主体とした導電材はAg合金であっても良く、Ag合金として例えばAg−Pd、Ag−Pt、Ag−Pd−Ptなどを用いても良い。なお、Ti化合物、Zr化合物、Si化合物などを添加しても良い。
【0045】
コンデンサ部44の誘電体層442の電極間厚みおよびベース厚みには特に制限はない。例えば、電極間厚み(内部電極層444,444の間隔)は1〜50μm、ベース厚みは30〜500μm程度で設定することができる。さらに、内部電極層444の厚みは、誘電体層442の厚みに応じて適宜決定すればよい。通常は1〜20μmの範囲で設定できる。
【0046】
中間材層
中間材層46は、本実施形態では、ZnO、TiO
2およびホウ素を含んで構成されている。なお、本実施形態では中間材層46のみで中間部が構成される。以下、ZnO、TiO
2およびZnO−TiO
2化合物以外の成分を副成分と呼ぶ場合がある。
【0047】
中間材層46における前記ZnOの含有量と前記TiO
2の含有量との合計を100モル部とする場合に、前記ZnOの含有量が50〜85モル部、前記TiO
2の含有量が15〜50モル部となるように構成する。前記ZnOの含有量は、好ましくは55〜80モル部、さらに好ましくは60〜75モル部である。
【0048】
前記ZnOの含有量が少なすぎる場合(前記TiO
2の含有量が多すぎる場合)には、後述する共焼結時に元素拡散が進行し、焼結性が悪化する。前記ZnOの含有量が多すぎる場合(前記TiO
2の含有量が少なすぎる場合)には、後述する共焼結後において、ZnO−TiO
2化合物の生成量が少なくなりすぎる。そして、ZnOの過剰偏析が生じ、めっき伸びが生じてしまう。
【0049】
中間材層46にホウ素を含有させる方法およびホウ素化合物の形態に特に制限はない。例えば、B
2O
3としてホウ素を含有させることができる。しかし、B
2O
3は水に溶けやすく、扱いづらいため、B
2O
3を含むガラスの形態で含有させることが好ましい。また、中間材層46にホウ素を含有させることにより、前記積層チップインダクタ部および前記積層チップコンデンサ部を不具合なく一体化させることが可能となる。さらに、焼結性が向上し低温焼結も可能となる。例えば、Agの融点以下の900℃程度で焼結することが可能となる。
【0050】
中間材層46にホウ素が含まれていることが必要である。中間材層46にホウ素が含まれていない場合には、中間材層自体が十分な焼結性が得られなくなり収縮が遅れるため後述する共焼結時に各層の焼結に伴う収縮が不一致となり、前記積層チップインダクタ部および前記積層チップコンデンサ部を不具合なく一体化させることが困難になる。
【0051】
また、中間材層46におけるホウ素の含有量は、前記ZnOの含有量と前記TiO
2の含有量との合計を100重量部とする場合において、B
2O
3換算で0.1〜5.0重量部とすることが好ましい。前記の範囲を超えてB
2O
3が含有される場合には、B
2O
3の脆性により層間クラックが増加する傾向にある。かかる範囲のB
2O
3を含有することにより、不具合なく元素拡散を効果的に抑制することが可能となる。
【0052】
ここで、本実施形態における副成分の中で必須成分であるホウ素は、ガラス化したホウ素成分であってもよい。ガラス化したホウ素成分でもホウ素の効果は十分に得られる。ホウ素を成分のひとつとして含むガラスとしては、B
2O
3−SiO
2系,B
2O
3−MO系、B
2O
3−SiO
2−MO系、B
2O
3−Bi
2O
3−SiO
2系、B
2O
3−Bi
2O
3−SiO
2−MO系、(ただし、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnの群から選ばれる一種または二種以上)などが挙げられる。本実施形態では前記したいずれのガラスであっても有用に利用することができる。
【0053】
ここで、本実施形態における中間材層46には、前記ZnOと前記TiO
2とから生成するZnO−TiO
2化合物が含まれる。ZnOとTiO
2が個別に存在すると化学反応が生じるため、ZnO、TiO
2のそれぞれが元素拡散を起こしてしまい、焼結不足を招く。しかし、前記ZnOと前記TiO
2とがZnO−TiO
2化合物を構成する場合には、ZnO−TiO
2化合物として安定して存在し化学反応が生じにくくなる。そのため、元素拡散が抑制される。中間材層に含まれるZnOとTiO
2との合計重量を100重量%とする場合に、前記中間材層中に含まれる前記ZnO−TiO
2化合物の含有量は50重量%以上である。ZnO−TiO
2化合物の含有量が50重量%未満である場合には、個別に存在するZnOとTiO
2が多くなる。そのため、ZnOおよび/またはTiO
2が化学反応や元素拡散を起こしてしまい、焼結不足となってしまう。なお、全てのZnOおよびTiO
2がZnO−TiO
2化合物を構成していてもよい。
【0054】
前記ZnO−TiO
2化合物とは、ZnTiO
3相、Zn
2TiO
4相またはZn
2Ti
3O
8相のことを意味する。そして、前記ZnTiO
3相、前記Zn
2TiO
4相および前記Zn
2Ti
3O
8相の生成の有無は、例えば、X線回折測定やSTEM−EDS、EPMA測定などの方法により確認することができる。
【0055】
また、本願におけるZnO−TiO
2化合物には、Znの一部がCuおよび/またはMnにより置換されている化合物も含まれるものとする。なお、前記Znの一部とは、当該ZnO−TiO
2化合物に含まれるZn全体を100モル部として30モル部以下のことを指す。
【0056】
前記ZnO−TiO
2化合物を生成するタイミングには特に制限はない。例えば中間材層の粉末原料の仮焼時などが挙げられる。
【0057】
中間材層46には、ZnO、TiO
2、ホウ素の他に、CuOおよび/またはMnOを含有することが好ましい。CuOおよび/またはMnOを含有させることで、後述する仮焼時および共焼結時において、ZnO−TiO
2化合物の生成を促進するとともに、中間材自体の焼結性などを調整することができる。
【0058】
前記ZnOの含有量と前記TiO
2の含有量との合計を100重量部として、CuOの含有量は20.0重量部以下とすることが好ましい。また、MnOの含有量は3.0重量部以下とすることが好ましい。また、CuOおよび/またはMnOは、前記ZnO−TiO
2化合物に固溶していることが好ましい。CuOおよび/またはMnOが前記ZnO−TiO
2化合物に固溶している場合には、ZnO−TiO
2化合物の生成が促進され、前記ZnO−TiO
2化合物の割合が増えることで、共焼結時の元素拡散が効果的に抑制されるためである。
【0059】
中間材層46の厚みには特に制限はないが、好ましくは5〜75μm、より好ましくは10〜50μmである。
【0060】
外部電極
外部電極61〜66の材質には、特に制限はない。たとえば電気メッキを施したAg電極が使用できる。電気メッキは、Cu−Ni−Sn、Ni−Sn、Ni−Au、Ni−Ag等で行うことが好ましい。
【0061】
積層型フィルタの製造方法
次に、積層型フィルタ2の製造方法の一例を説明する。本実施形態の積層型フィルタ2は、誘電体グリーンシート、磁性体グリーンシート及び中間材グリーンシートを準備し、これらのグリーンシートを積層し、グリーン状態の焼成前素子本体を形成し、これを焼成した後、外部電極を形成することにより製造される。以下、具体的に説明する。
【0062】
誘電体グリーンシートの製造および内部電極の形成
まず、誘電体原料を構成する各原料を準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調製する。
【0063】
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。誘電体原料としては、SrTiO
3を用いてもよく、焼成後にSrTiO
3となる各種化合物、例えば、Srおよび/またはTiの酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることができる。さらに、必要に応じて、Cuの酸化物やガラス(例えばホウ珪酸ガラス)などを含有してもよい。なお、誘電体原料は、誘電体層用ペーストとする前に、誘電体原料を構成する各出発原料を予備焼成(仮焼成)等により、あらかじめ反応させておいてもよい。
【0064】
内部電極層用ペーストは、たとえばAgなどの導電材と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0065】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、焼成前粉体100重量部に対して、バインダは5〜15重量部程度、溶剤は50〜150重量部程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤等から選択される添加物が含有されていてもよい。前記添加物の総含有量は、10重量部以下とすることが好ましい。
【0066】
次に、誘電体層用ペーストをドクターブレード法などによりシート化し、誘電体グリーンシートを形成する。
【0067】
次に、誘電体グリーンシート上に、内部電極を形成する。前記内部電極は、内部電極用ペーストをスクリーン印刷等の方法によって、誘電体グリーンシート上に形成する。なお、内部電極の形成パターンは、製造する積層型フィルタの回路構成等に応じて適宜選択すればよい。
【0068】
磁性体グリーンシートの製造およびコイル導体の形成
まず、磁性体原料を構成する各原料を準備し、これを塗料化して、磁性体層用ペーストを調製する。
【0069】
磁性体層用ペーストは、磁性体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。磁性体原料としては、主成分の出発原料として、Ni、Cu、Zn、Feなどの酸化物あるいは焼成後にこれらの酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。また、磁性体原料として、上記主成分以外にも必要に応じて副成分の出発原料を含有してもよい。なお、磁性体原料は、磁性体層用ペーストとする前に、磁性体原料を構成する各出発原料を予備焼成(仮焼成)等により、あらかじめ反応させておいてもよい。
【0070】
コイル導体用ペーストは、たとえばAgなどの導電材と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0071】
次に、磁性体層用ペーストをドクターブレード法などによりシート化し、磁性体グリーンシートを形成する。
【0072】
次に、上記にて作製した磁性体グリーンシート上に、コイル導体を形成する。前記コイル導体は、コイル導体用ペーストをスクリーン印刷等の方法によって、磁性体グリーンシート上に形成する。なお、コイル導体の形成パターンは、製造する積層型フィルタの回路構成等に応じて適宜選択すればよい。
【0073】
中間材グリーンシートの製造
まず、中間材を構成する中間材原料を準備する。中間材原料としては、例えば、ZnO粉末、TiO
2粉末、B
2O
3を含むガラスが挙げられる。さらに、CuO粉末および/またはMnO粉末を用いてもよい。また、焼成後にZn、Ti、Cu、Mn、Bの酸化物となる化合物を用いてもよい。
【0074】
次に、上述した中間材原料を構成する各原料のうち、B
2O
3を含むガラス以外の粉末原料を配合し、混合粉末を得る。
【0075】
次に、前記混合粉末を乾燥した後に、空気中で仮焼して仮焼粉を得る。前記混合粉末を仮焼することにより、ZnO−TiO
2化合物を生成することができる。仮焼によりZnO−TiO
2化合物が生成していることは、仮焼粉に対してX線回折測定を行い、ZnTiO
3、Zn
2TiO
4、Zn
2Ti
3O
8からなる群から選択される一種または二種以上からなるピークを観測することにより確認できる。
【0076】
仮焼温度および仮焼時間には特に制限はない。仮焼温度は500℃超1100℃以下、好ましくは600℃以上1000℃以下、さらに好ましくは800℃以上950℃以下の範囲で適宜選択することができる。仮焼温度を500℃超とすることで、化学反応を十分に進行させ、ZnO−TiO
2化合物を十分に生成させることが容易となる。一方、仮焼温度を1100℃以下とすることで、粒成長およびネッキングの進行が抑制され、後の粉砕工程が容易となる。また、仮焼時間は、0.5〜10時間、好ましくは2〜3時間の範囲で適宜選択することができる。仮焼温度が高く、仮焼時間が長いほどZnO−TiO
2化合物の生成量が増加する傾向がある。
【0077】
その後、前記仮焼粉に前記B
2O
3を含むガラスを添加し、ボールミルで粉砕して粉砕粉を得る。次に、前記粉砕粉に有機ビヒクルを添加してスラリー化して中間材層用ペーストを得る。
【0078】
中間材層用ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、前記粉砕粉100重量部に対して、バインダは5〜15重量部程度、溶剤は50〜150重量部程度とすればよい。また、中間材層用ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、前記粉砕粉100重量部に対して、10重量部以下とすることが好ましい。
【0079】
次に、前記中間材層用ペーストをドクターブレード法などによりシート化し、中間材グリーンシートを形成する。
【0080】
各グリーンシートの積層
次に、前記誘電体グリーンシート、前記磁性体グリーンシートおよび前記中間材グリーンシートを、それぞれ1枚以上積層し、グリーン状態の焼成前素子本体を形成する。
【0081】
本実施形態では、グリーン状態の焼成前素子本体は、コイル部を構成するコイル導体が形成された磁性体グリーンシートを複数枚積層し、その上に中間材グリーンシートを介して、コンデンサ部を構成する内部電極が形成された誘電体グリーンシートを複数枚積層して製造される。
【0082】
なお、コイル部の最下層にコイル導体を形成していない磁性体グリーンシートを積層してもよいし、コンデンサ部の最上層に内部電極を形成していない誘電体グリーンシートを積層してもよい。
【0083】
焼成および外部電極の形成
次に、上記グリーン状態の焼成前素子本体を焼成して、焼結体としての素子本体4(
図1および
図2参照)を形成する。
【0084】
焼成条件に特に限定はないが、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、さらに好ましくは200〜300℃/時間、保持温度を好ましくは840〜900℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、さらに好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、さらに好ましくは200〜300℃/時間とする。
【0085】
次に、素子本体(焼結体)4に、たとえばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、素子本体4の両側面に外部電極用ペーストを塗布・乾燥した後、焼き付けを行うことにより
図1に示す外部電極61〜66を形成する。なお、外部電極には、電気メッキを行う。電気メッキは、Cu−Ni−Sn、Ni−Sn、Ni−Au、Ni−Ag等で行うことが好ましい。
【0086】
このようにして製造された本実施形態の積層型フィルタ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。また、本実施形態の積層型フィルタ2は、Pbを含有しないことが環境配慮の観点から好ましい。
【0087】
その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施しうることは勿論である。
【0088】
上述した実施形態では、本発明における中間部が中間材層46のみからなっている。しかし、本発明における中間部は中間材層以外の層を有していてもよい。例えば、本発明における中間部は、混合層を有していてもよい。
【0089】
前記混合層は、前記磁性体層に含まれる磁性体のうち少なくとも一部と、前記中間材層に含まれる成分のうち少なくとも一部と、を混合した混合材からなることを特徴とする。また、前記混合層は、前記磁性体層に含まれる全磁性体と、前記中間材層に含まれる全中間材と、を混合した混合材からなっていてもよい。
【0090】
前記混合層を前記磁性体層と前記中間材層との間に位置させた場合と、前記混合層を用いない場合とでは、前記混合層を前記磁性体層と前記中間材層との間に位置させた場合の方が、磁性体と中間体とを一体化しやすくなる。
【0091】
前記混合材における前記磁性体の一部と前記中間材層に含まれる成分との比率に特に制限はないが、重量比で5:5〜3:7であることが好ましい。また、前記混合層を用いる場合に、前記混合層の厚さ(t2)と前記中間材層の厚さ(t1)との比は自由に設定することができる。好ましくはt2/t1≧1である。
【0092】
また、上述した実施形態では、本発明に係る複合電子部品として積層型フィルタを例示したが、本発明に係る複合電子部品は、積層型フィルタに限定されず、上記構成を有するものであれば何でも良い。
【0093】
また、前記積層型フィルタの形態にも特に制限はない。T型回路、π型回路、L型回路、二つのπ型回路により形成されるダブルπ型、また、いずれかの回路が2つ以上形成されたアレータイプなどが例示される。更に、バリスタ機能を発現するバリスタ部を更に具備してもよい。
【0094】
本発明に係る複合電子部品は、たとえば、パソコンや携帯電話などの情報機器;テレビやビデオカメラなどの映像機器;などのさまざまな電子機器に搭載されて使用される。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0096】
実験例1
誘電体グリーンシートの作製
まず、誘電体原料を構成する各原料として、SrTiO
3、ホウ珪酸ガラスおよびCuOを準備した。前記の各原料を配合した後に粉砕を行い、誘電体原料粉末を調製した。なお、各化合物の配合量は、SrTiO
3100重量部に対し、ホウ珪酸ガラスを4重量部、CuOを1重量部とした。得られた誘電体原料粉末に、樹脂バインダ、溶剤、可塑剤および分散剤を添加し、ドクターブレード法によりSrO−TiO
2系酸化物を含む誘電体グリーンシートを作製した。誘電体グリーンシートの厚みは、焼成後に18μmとなる厚みとした。
【0097】
次に、Agを主成分とする内部電極用ペーストを使用し、内部電極を誘電体グリーンシート上に形成し、所望の電極パターンを有する誘電体グリーンシートを作製した。前記電極パターンの厚みは、焼成後に3μmとなる厚みとした。
【0098】
磁性体グリーンシートの作製
まず、磁性体原料粉末を構成する原料として、NiO、CuO、ZnOおよびFe
2 O
3 を準備し、これらの原料を配合し、仮焼成および粉砕を行い、磁性体原料粉末を調製した。なお、前記各化合物の配合割合は、NiO:25モル部、CuO:11モル部、ZnO:15モル部、Fe
2 O
3 :49モル部とした。得られた磁性体原料粉末に、樹脂バインダ、溶剤、可塑剤および分散剤を添加し、ドクターブレード法によりNiCuZn系フェライトを含む磁性体グリーンシートを作製した。磁性体グリーンシートの厚みは、焼成後に約20μmとなる厚みとした。
【0099】
次に、Agを主成分とするコイル導体用ペーストを使用し、スクリーン印刷によりコイル導体のパターンを磁性体グリーンシート上に形成し、さらに、レーザー加工によりスルーホールを作製し、所望の導体パターン、および、スルーホールを有する磁性体グリーンシートを作製した。前記コイル導体のパターンの厚みは、焼成後に12μmとなる厚みとした。
【0100】
中間材グリーンシートの作製
まず、中間材の製造原料成分として、ZnO、TiO
2、CuOおよびMnOを準備し、これらの各粉末原料を配合し、混合粉末とした。なお、各原料粉末の平均粒径は、目標とするZnO−TiO
2化合物の生成量に応じて適宜変化させた。
【0101】
次に、前記混合粉末を乾燥した後に、空気中で仮焼して仮焼物を得た。仮焼温度および仮焼時間は目標とするZnO−TiO
2化合物の含有量に応じて表1に記載するように適宜選択した。その後、前記仮焼物にB
2O
3を含むガラスを添加し、ボールミルで粉砕して粉砕粉を得た。前記B
2O
3を含むガラスにおけるB
2O
3の含有量は、前記B
2O
3を含むガラス全体を100重量部として、50重量部であった。
【0102】
B
2O
3を含むガラス、ZnO、TiO
2、CuO、および、MnOの配合割合は、後記する表1に示す配合割合となるようにした。
【0103】
次に、得られた粉砕紛に樹脂バインダ、溶剤、可塑剤および分散剤を添加し、ドクターブレード法により中間材グリーンシートを作製した。中間材グリーンシートの厚みは、焼成後に約15μmとなる厚みとした。
【0104】
各グリーンシートの積層、焼成、及び外部電極の形成
次に、作製した複数の誘電体グリーンシート及び複数の磁性体グリーンシートを、間に中間材グリーンシートを挟んで積層し、多数個取りの積層型3端子フィルタをグリーン状態で形成した。焼成後に1608形状(長さ1.6mm、幅0.8mm、高さ0.6mm)の寸法となるように、前記多数個取りの積層型3端子フィルタを単体に切断した。その後、880℃にて焼成して共焼結を行い、共焼結後の素子本体4(
図1及び
図2参照)を作製した。なお、焼成時間は目標とするZnO−TiO
2化合物の生成量に応じて適宜変化させた。
【0105】
次に、共焼結後の素子本体4の両側面に外部電極用ペーストを塗布・乾燥し、焼成による外部電極の焼き付けを行い、
図1に示す積層型フィルタ試料を作製した。
【0106】
得られた積層型フィルタ試料について、ZnO−TiO
2化合物の生成量、共焼結後の素子本体4における不具合の有無、および信頼性不良率を測定した。
【0107】
ZnO−TiO
2化合物の生成量は、X線回折装置(PANalytical社製X‘Pert PRO MPD CuKα線)を用いて測定し、得られたX線回折パターンにおいて、ピーク強度を元にした準定量法により求めた。この方法を用いて表1試料番号4を評価した結果、ZnO−TiO
2化合物の一種であるZn
2TiO
4が生成していることが確認された。
【0108】
共焼結後の素子本体4の不具合の有無は、共焼結後の素子本体4について電子顕微鏡にて観察して判断した。
【0109】
信頼性不良率は、100個の積層型フィルタ試料に対してプレッシャークッカーバイアステスト(PCBT試験)を行い、測定した。本実験例におけるPCBT試験は、印加電圧10V、2気圧、湿度85%、温度125℃の環境下で前記100個の積層フィルタ試料を48時間放置することにより行った。PCBT試験後の絶縁抵抗が1×10
6Ω以下に低下した積層フィルタ試料を不良と判断した。全積層フィルタ試料に対する不良な積層フィルタ試料の割合を信頼性不良率とした。そして、信頼性不良率を計算により求めた。信頼性不良率が10%以下である場合に信頼性が良好であるとした。なお、共焼結後に不具合が生じた試料については、信頼性の評価を行うに値しないと判断し、信頼性不良率の測定を省略した場合がある。
【0110】
【表1】
【0111】
表1の試料番号2、7は仮焼条件および焼成条件を変化させることでZnO−TiO
2化合物の生成量を変化させた試料である。表1の試料番号4、8は仮焼条件および焼成条件を変化させることでZnO−TiO
2化合物の生成量を変化させた試料である。また、表1の試料番号7、8以外の試料は、組成変化に伴うZnO−TiO
2化合物生成量の変化を確認するため、全て同一の仮焼条件、焼成条件で作製した。なお、表1のNCZはNiCuZn系フェライトを意味する。CZはCuZn系フェライトを意味する。STはSrO−TiO
2系酸化物を意味する。ZTはZnO−TiO
2系酸化物を意味する。
【0112】
表1に示すように、ZnO、TiO
2およびB
2O
3の含有量、およびZnO−TiO
2化合物の生成量が全て本発明の範囲内である場合(試料番号2〜5、9〜11、13〜15)には、共焼結後の不具合が生じず、信頼性も良好な結果となった。
【0113】
ZnOの含有量が少なすぎる場合(試料番号1)には、所定量のZnO−TiO
2化合物は生成しているものの、余剰のTiO
2が磁性体層や誘電体層の成分と化学反応しやすい状態となり、共焼結時に元素拡散が進行し焼結性が悪化した。さらに、信頼性も良好ではない結果となった。
【0114】
ZnOの含有量が多すぎる場合(試料番号6)には、ZnO−TiO
2化合物の生成量が不十分となった。そして、共焼結後に、ZnOが積層型フィルタの表面に過剰に偏析した。ZnOが過剰偏析した箇所にめっき伸びが生じた。めっき伸びにより端子電極間の絶縁耐圧が低下したために信頼性の評価を行うに値しないと判断した。
【0115】
ZnOおよびTiO
2の含有量は所定の範囲内であるが、ZnO−TiO
2化合物の生成量が少なすぎる場合(試料番号7、8)には、共焼結時に元素拡散が進行し焼結性が悪化した。試料番号7、8は仮焼温度が低い。そのため、化学反応が十分に進行せずZnO−TiO
2化合物の生成量が少なくなり、個別に存在するZnOとTiO
2が多い状態となった。そして、ZnOおよび/またはTiO
2が磁性体層や誘電体層の成分と化学反応した。主にZnOは磁性体層、TiO
2は誘電体層との化学反応が認められた。試料番号7、8を電子顕微鏡で観察したところ、特に誘電体層の焼結性が低下しすぎていたため信頼性の評価を行うに値しないと判断した。
【0116】
B
2O
3を含有しない場合(試料番号12)には、所定量のZnO−TiO
2は生成しているものの中間材層自体が十分な焼結性が得られなくなり、中間材層の収縮が遅れた。そのため、各層の焼結に伴う収縮が不一致となり、収縮の不一致に伴う剥がれが生じ、各層を一体化することができなかった。
【0117】
また、ZnO、TiO
2およびB
2O
3の含有量、およびZnO−TiO
2化合物の生成量が全て本発明の範囲内である場合には、副成分としてCuOおよび/またはMnOが含まれていても良好な結果となった(試料番号9〜11、15)。また、試料番号4、9〜11、15の結果より、CuOおよび/またはMnOを添加することでZnO−TiO
2化合物の生成を促進することがわかる。なお、STEM−EDS測定から、これらの試料において、CuO、MnOはZnO−TiO
2化合物に固溶していることが分かった。
【0118】
ここで、試料番号4(実施例)および試料番号1(比較例)、試料番号12(比較例)について、中間材層近辺の写真を電子顕微鏡で撮影した。試料番号4の磁性体層と中間材層との界面付近を撮影した結果が
図3(A)、試料番号4の中間材層と誘電体層との界面付近を撮影した結果が
図4(A)、試料番号4の中間材層近辺の写真を撮影した結果が
図5(A)である。一方、試料番号1の誘電体層と中間材層との界面付近を撮影した結果が
図3(B)、試料番号1の中間材層と誘電体層との界面付近を撮影した結果が
図4(B)、試料番号12の中間材層近辺の写真を撮影した結果が
図5(B)である。
【0119】
図3、
図4より、試料番号1(比較例)では試料番号4(実施例)と異なり、中間材層46と誘電体層442との境界付近および中間材層46と磁性体層422との境界付近に多数のボイド71が生じていることが確認できた。加えて、試料番号1の誘電体層442は焼結性が低下している様子が確認できた。また、
図5より、試料番号12(比較例)では、試料番号4(実施例)と異なり、中間材層46と磁性体層422との境界に剥がれ81が生じていることが確認できた。
【0120】
実験例2
磁性体層の材料をNiCuZn系フェライトからCuZn系フェライトに変更した点以外は実験例1の試料番号4と同様にして積層型フィルタ試料(試料番号16)を作製した。なお、前記CuZn系フェライトにおける各化合物の配合割合は、CuO:8モル部、ZnO:43モル部、Fe
2 O
3 :49モル部とした。試験結果を表1に示す。
【0121】
試料番号16は、試料番号4と同様に優れた結果が得られた。
【0122】
実験例3
誘電体層の材料をSrO−TiO
2系酸化物からZnO−TiO
2系酸化物に変更した点以外は実験例1の試料番号4と同様にして積層型フィルタ試料(試料番号17)を作製した。なお、前記ZnO−TiO
2系酸化物における各化合物の配合量は、主成分原料をZnO:30モル%、TiO
2:70モル%とし、前記主成分原料100重量部に対してB
2O
3を0.5重量部の割合で添加した。試験結果を表1に示す。
【0123】
試料番号17では、試料番号4と同様に優れた結果が得られた。
【0124】
実験例4
磁性体層の材料をNiCuZn系フェライトからCuZn系フェライトに変更した点以外は実験例3の試料番号17と同様にして積層型フィルタ試料(試料番号18)を作製した。なお、前記CuZn系フェライトにおける各化合物の配合割合は、CuO:8モル部、ZnO:43モル部、Fe
2 O
3 :49モル部とした。試験結果を表1に示す。
【0125】
試料番号18では、試料番号17と同様に優れた結果が得られた。
【0126】
実験例5
磁性体層の材料と中間材層の材料とを混合して製造した混合材グリーンシートを、磁性体グリーンシートと中間材グリーンシートとの間に挟んで積層した点以外は実験例1の各試料と同様にして積層型フィルタ試料を作製した。なお、前記混合材グリーンシートにおける前記磁性体層の材料と前記中間材層の材料との重量比は5:5とした。また、前記混合材グリーンシートの厚みは、20μmとした。
【0127】
実験例5では、実験例1と同様の結果が得られた。
【0128】
以上より、磁性体層がCuZn系フェライトであっても、誘電体層がZnO−TiO
2酸化物であっても、ZnO−TiO
2化合物の生成量も含めて、中間材層の組成を本発明の組成範囲とすることで不具合なく各層を一体化することができた。また、磁性体層と中間材層との間に、混合層を更にはさんでも、ZnO−TiO
2化合物の生成量も含めて、中間材層の組成を本発明の組成範囲とすることで不具合なく各層を一体化することができた。