(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記搗精工程の複数の搗精機から排出される大麦糠のうち、第一の大麦糠を選択的に回収する第一移送ラインと、前記第一移送ラインを介して、前記第一の大麦糠が移送される第一集糠タンクと、
第二の大麦糠を選択的に回収する第二移送ラインと、前記第二移送ラインを介して、前記第二の大麦糠が移送される第二集糠タンクと、
前記第一の大麦糠および第二の大麦糠を除く第三の大麦糠を回収する第三移送ラインと、前記第三移送ラインを介して前記第三の大麦糠が移送される第三集糠タンクとを有し、
前記複数の搗精機のそれぞれが、前記第一移送ライン、前記第二移送ライン、前記第三移送ラインのいずれかに接続された大麦糠回収装置を用いて、
前記第一の大麦糠を前記第一移送ラインに送り、前記第二の大麦糠を前記第二移送ラインに送り、前記第三の大麦糠を前記第三移送ラインに送ることによって大麦糠を選別して回収する工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の大麦糠の回収方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、従前から、大麦糠の機能性について研究はされており、例えば特許文献2のようにβグルカンを主成分とする食物繊維の抽出等の検討がおこなわれている。しかし、大麦糠から実際にポリフェノールを抽出し、機能性食品として利用することは具体化されていない。なぜなら、大麦や大麦糠のポリフェノール含有量は非常に低く、現実的にはポリフェノール原料として十分な量を抽出することができないと考えられていたためである。更に、現在は、ポリフェノールが大麦特有の褐変等の原因であると考えて、大麦の新品種育成段階からポリフェノール含有量を減少させ、食用麦としての価値を高める方向に移行している傾向にある。
【0009】
従来、大麦の精麦は、大麦の外皮から糊粉層を搗精機で徐々に削り取る方法で行われる。そして、大麦糠としては大麦の重量比で歩留50%〜85%程度に搗精された部分が回収されている。前述の特許文献1では、大麦糠には小麦よりもポリフェノールが多く含まれているとするものの、その含有量は、未処理大麦糠(歩留65〜85重量%部分)で560〜690mg/100gとなっており、必ずしも高濃度とは言えないものであった。また、ポリフェノールが含まれることが嫌味成分になるとし、その除去を検討しているものの、回収することは検討されていない。
【0010】
また、前述の非特許文献1では、六条大麦の搗精糠(歩留80〜90%区分)と、複数の搗精機を用いて行われる大麦の搗精工程で排出される大麦糠を混合して回収した、いわゆる混合大麦糠をそのまま用いている。また、ここでも、その具体的な濃度については言及されていない。このように、工業上、現実的に実行可能な大麦由来のポリフェノールの製造方法は提案されていなかった。また、皮麦、裸麦などの様々な大麦糠を活用して工業的に量産可能なβグルカンの製造に適した大麦糠の回収方法は十分には提案されていなかった。係る状況下、本発明は、大麦糠に含まれるポリフェノールやβグルカンを効率的に得ることができ大麦糠の活用に適する大麦糠の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。本発明は、殆どの植物に酸化を防ぐ抗酸化作用があるポリフェノールに着目した。特に日本の食文化と深い関りがある大麦を対象として、ポリフェノールの抽出を行うものである。
【0012】
一部前述したように、複数の搗精機を用いて行われる大麦の搗精工程で排出される大麦糠を混合して回収した、いわゆる混合大麦糠について、特許文献1や非特許文献1のような検討がなされている。この従来の大麦糠の回収工程の概要を
図1に示す。大麦搗精工程では、原料の大麦の外層から搗精し胚乳を中心とした中心部分を精白麦として得ることを目的として、大麦は搗精される。この搗精は適宜複数台の搗精機を用いて段階的に行うが、精白麦以外の部分はまとめて大麦糠として回収されている。
【0013】
図1の参考形態をさらに詳しく説明すると、
図1は、従来の大麦の搗精工程および、大麦糠の回収工程を示すため大麦搗精装置の概要を示す図である。ここでは、搗精機201〜210までの10機の搗精機を直列で並べて用いて精白麦を得る装置を例にしたものである。原料となる大麦種子(大麦)は、その品種や状態によって、適宜、搗精機201または搗精機202から搗精が開始され、各搗精機による段階的な搗精を経て、精白麦が回収される。この搗精の途中で除去された外層の外皮や果皮、種皮、糊粉層といった糠は、大麦糠として各搗精機の排出口から、移送ライン74を経て集糠タンク75に分別されていない混合大麦糠として回収される。この混合大麦糠には、一般的に重量歩留比率60〜100重量%(大麦種子の種類等により変更される)に相当するものがまとめて回収されており、ポリフェノールやβグルカンの含有量は低い状態となる。
【0014】
前述したような文献で着目している歩留に相当する大麦糠は、大麦の搗精工程で、大麦種子の外皮に相当する部分を搗精して除去した内側の糊粉層を主とするものである。従来は、この糊粉層に相当する部分はほぼ均一な組成のものと考えて、混合大麦糠として全量をまとめて回収し、そのまま使用されており、この混合大麦糠としてのポリフェノールを除去することを目的としたり、たとえポリフェノール自体に着目してもその含有量が低いことから、現実的には十分量を抽出できないと考えられていた。
【0015】
本発明者は、通常、複数の搗精機を経てそれぞれの歩留毎に排出されるにも関わらず、まとめて混合し回収されていた大麦糠を、歩留毎に詳しく分析した。その結果、驚くべきことに、同じ糊粉層に相当する歩留部分であっても、ポリフェノールの含有量はその層の厚さ(歩留)によって大きな含有量差があること、また、外皮に近い層に非常に多くのポリフェノールが含まれていることを見出し、これら特定の範囲の歩留に相当する大麦糠を利用することで、十分量のポリフェノールを製造することができることを着想した。
【0016】
さらに、大麦糠のうちポリフェノールの製造に適さない歩留部分については、βグルカンの製造に適することを見出し、これらを分けて回収することで、ポリフェノールの製造と、βグルカンの製造とを効率的に行うことができることを見出し、本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0018】
本発明は、大麦の搗精工程で排出される大麦糠を用いる大麦糠の回収方法であって、前記搗精工程で排出される大麦糠の成分を判定し、ポリフェノール含有量が所定の量以上である第一の大麦糠を選択的に回収する第一の回収工程と、前記搗精工程で排出される大麦糠の成分を判定し、βグルカン含有量が所定の量以上である第二の大麦糠を選択的に回収する第二の回収工程とを有することを特徴とする大麦糠の回収方法に関する。
【0019】
このような大麦糠の回収方法で大麦糠を回収することで、ポリフェノール回収に適した第一の大麦糠と、βグルカンの回収に適した第二の大麦糠を効率よく得ることができる。また、大麦糠は従来産業廃棄物等として処理されていたが、それを機能性物質の原料として利用することができ、廃棄物を低減することができる。
【0020】
本発明は、前記大麦糠の回収方法において、前記搗精工程が、複数の搗精機を用いて段階的に大麦を搗精する搗精工程であることが好ましい。複数の搗精機を用いれば、搗精機ごとの大麦糠について成分を判定しておくことで、より安定して効率的に第一の大麦糠および第二の大麦糠とを選択的に回収することができる。
【0021】
本発明は、前記大麦糠の回収方法において、搗精される原料となる大麦が皮麦であり、前記第一の回収工程で前記第一の大麦糠として重量歩留比率85重量%〜95重量%の大麦糠を回収し、前記第二の回収工程で前記第二の大麦糠として重量歩留比率75重量%〜85重量%未満の大麦糠を回収することが好ましい。歩留も管理指標とすることで、それぞれの回収対象となる大麦糠を速やかに把握することができ、効率よく回収することができる。
【0022】
本発明は、前記大麦糠の回収方法において、搗精される原料となる大麦が裸麦であり、前記第一の回収工程で前記第一の大麦糠として重量歩留比率90重量%〜98重量%の大麦糠を回収し、前記第二の回収工程で前記第二の大麦糠として重量歩留比率82重量%〜90重量%未満の大麦糠を回収することが好ましい。歩留も管理指標とすることで、それぞれの回収対象となる大麦糠を速やかに把握することができ、効率よく回収することができる。
【0023】
本発明は、大麦糠の回収方法において、前記搗精工程の複数の搗精機から排出される大麦糠のうち、第一の大麦糠を選択的に回収する第一移送ラインと、前記第一移送ラインを介して、前記第一の大麦糠が移送される第一集糠タンクと、第二の大麦糠を選択的に回収する第二移送ラインと、前記第二移送ラインを介して、前記第二の大麦糠が移送される第二集糠タンクと、前記第一の大麦糠および第二の大麦糠を除く第三の大麦糠を回収する第三移送ラインと、前記第三移送ラインを介して前記第三の大麦糠が移送される第三集糠タンクとを有し、前記複数の搗精機のそれぞれが、前記第一移送ライン、前記第二移送ライン、前記第三移送ラインのいずれかに接続された大麦糠回収装置を用いて、前記第一の大麦糠を前記第一移送ラインに送り、前記第二の大麦糠を前記第二移送ラインに送り、前記第三の大麦糠を前記第三移送ラインに送ることによって大麦糠を選別して回収する工程を有する大麦糠の回収方法として達成することができる。このような装置を用いれば、搗精工程で大量に排出される大麦糠をそれぞれの回収対象ごとに、排出速度に対応して分別しやすい。
【0024】
本発明は、大麦糠の回収方法において、前記搗精工程の複数の搗精機から排出される大麦糠を、それぞれの搗精機ごとに取出し、搗精機ごとに、第一の大麦糠、または第二の大麦糠のいずれにあたるか判定し、それぞれの大麦糠として回収する大麦糠の回収方法として達成することができる。このような回収方法とすることで、それぞれの層の大麦糠を細分化して利用しやすい。
【0025】
本発明は、前記大麦糠の回収方法により回収された、複数品種の大麦の第一の大麦糠、または第二の大麦糠を、それぞれ混合して用いることを特徴とする大麦糠の回収方法として達成することができる。このような回収方法とすることで、単独品種ではポリフェノールやβグルカンの製造に十分ではない場合等も、混合した量として製造に十分な量の確保等が容易になる。
【0026】
また、本発明は、前記大麦糠の回収方法で回収された大麦糠を用いて、前記第一の大麦糠からポリフェノールを抽出し、前記第二の大麦糠からβグルカンを抽出することを特徴とする大麦糠由来物質の製造方法とすることが好ましい。この大麦糠由来物質の製造方法とすることで、大麦糠の産業廃棄物を低減し、食品由来のヒトが摂取しやすく、かつ機能性に優れたポリフェノールやβグルカン等の大麦糠由来物質を製造することができる。
【0027】
また、本発明は、大麦の搗精工程で排出される大麦糠の回収装置であって、前記搗精工程が、複数の搗精機を用いて段階的に大麦を搗精する搗精工程であり、前記搗精工程の複数の搗精機から排出される大麦糠のうち、ポリフェノール含有量が所定の量以上である第一の大麦糠を選択的に回収するための第一移送ラインと、前記第一移送ラインを介して、前記第一の大麦糠が移送される第一集糠タンクと、前記搗精工程の複数の搗精機から排出される大麦糠のうち、βグルカン含有量が所定の量以上である第二の大麦糠を選択的に回収するための第二移送ラインと、前記第二移送ラインを介して、前記第二の大麦糠が移送される第二集糠タンクと、前記第一の大麦糠および第二の大麦糠を除く第三の大麦糠を回収する第三移送ラインと、前記第三移送ラインを介して前記第三の大麦糠が移送される第三集糠タンクとを有し、前記複数の搗精機のそれぞれが、前記第一移送ライン、前記第二移送ラインおよび前記第三移送ラインのいずれかに接続されたことを特徴とする大麦糠回収装置に関する。このような大麦糠回収装置とすることで、大麦糠を選択的に様々な機能性物質源として分離して回収することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の大麦糠の回収方法によれば、大麦糠から、工業的な量産に適したポリフェノールおよびβグルカン製造に用いることができる大麦糠を分別して回収することができる。また、本発明の大麦糠回収装置は、ポリフェノール抽出用や、βグルカン抽出用等の単なる産業廃棄物としてのみ以外にも使用しやすい大麦糠の回収に適していて、搗精工程で排出される大麦糠を速やかに分別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0031】
(大麦糠)
本発明は、大麦の搗精工程において排出される大麦糠を利用するものである。ここで大麦としては、二条大麦、六条大麦、裸麦等いずれの大麦も使用することができる。大麦は、収穫直後の種子の段階では、外皮に包まれており、その中に、外側から果皮や種皮と呼ばれる層があり、さらに、糊粉層とよばれる層があり、中心部は胚乳と呼ばれる(
図2参照)。
【0032】
この胚乳を主たるものとして搗精されたものが一般的に精白麦と呼ばれ、最も食用に付されている部分である。このために、外皮、果皮、種皮、糊粉層の部分は搗精工程で除去され、この除去部分は大麦糠と呼ばれている。この、搗精工程で除去される大麦糠の量は、原料の大麦の品種や、精白麦の用途によっても異なるが、外皮を含む大麦の種子の重量を100重量%としたとき、概ね外皮から20〜35重量%が除去され、胚乳を中心とした精白麦として残る重量が65〜80重量%程度である。
【0033】
(歩留り)
この搗精工程は、複数の搗精機を直列に並べて行うことが一般的であり、それぞれの搗精機を経るごとに、外皮から徐々に取り除かれる。この取り除かれて残った重量は、その搗精機を経た歩留と呼ばれ、「当該搗精機を経た大麦の重量/原料となる大麦種子の重量」の比率から、歩留(重量%)として表されている。例えば、大麦種子の外皮から10重量%にあたる大麦糠は、歩留比率90重量%の大麦糠と呼ばれる。そしてこの歩留は、排出された大麦糠の層を管理する指標としても用いられている。
【0034】
この大麦の歩留の測定にあたっては、夾雑物を除去した搗精前の大麦原麦・裸麦原麦を、ばらつきを無くすため一粒ずつ選別し、それぞれ100粒ずつ取り出した原麦と同様に、選別した加工後(各搗精機通過後)の大麦・裸麦それぞれの100粒で、歩留り及び重量を比較測定することで求めることができる。さらに測定は正確性を期するため、加工した大麦を複数の人員で抽出するのではなく一名の者で抽出し、抽出した加工大麦の粒揃えが均等に選び出されているかを、複数者で点検することが好ましい。これは大麦の粒揃えを公正に判断し、正確性を期するものである。
【0035】
[第一の実施形態(大麦糠の回収方法)]
本発明の大麦糠の回収方法に関する第一の実施形態を、
図3に示す。
図3は、大麦糠の搗精工程S1および大麦糠の成分判定工程S2を有し、搗精工程の大麦糠を回収する排出ライン311〜316や、排出ラインを適宜分別して回収するための第一の回収ライン512〜513、第二の回収ライン614〜616、第三の回収ライン711を有する大麦糠の回収方法S10の概要を示すものである。
【0036】
この実施形態においては、原料となる大麦は、大麦搗精工程S1において段階的に外層から搗精され、搗精された大麦糠は段階的に搗精工程から排出される。この排出ラインは、例えば、排出ライン311〜316のように複数設けれ、排出ライン311〜316と段階的に外層側から内層側に回収される。成分判定工程S2でその排出ラインごとの成分が判定される。
【0037】
この成分判定工程は、例えば、
図4に示すようなフローとすることができ、搗精工程から生じた大麦糠について、まず、このポリフェノール成分判定工程S21にて、排出ラインごとのポリフェノール含有量を判定し、ポリフェノール含有量が所定の量以上である排出ラインの大麦糠は、第一の大麦糠として回収する。次に、このポリフェノール成分判定工程S21の結果、ポリフェノールを所定量以上含まないと判定された排出ラインの大麦糠について、成分判定工程S22にて、その大麦糠のβグルカン含有量を判定し、その結果に基づき、βグルカン含有量が所定の量以上である排出ラインの大麦糠は、第二の大麦糠として回収する。そして、いずれの要件も満たさない場合は、第三の大麦糠として回収する。
【0038】
このように、
図3においては、
図4に示すような成分判定工程S2で判定された結果に基づき、排出ライン312、313の大麦糠をそれぞれ第一回収ライン512、513に導き、第一の大麦糠を回収している。そして、排出ライン314〜316の大麦糠をそれぞれ第二回収ライン614〜616に導き、第二の大麦糠を回収している。また、いずれの条件も満たさない外皮付近の最外層にあたる排出ライン311の大麦糠を、第三の回収ライン711を介して第三の大麦糠として回収している。
【0039】
[第二の実施形態(大麦糠の製造方法)]
本発明においては、大麦糠の回収方法の第一の実施形態で回収した大麦糠を用いる大麦糠の製造方法とすることができる。この大麦糠の製造方法に関する第二の実施形態を
図5に示す。
【0040】
図5は、
図3に示す大麦糠の回収方法S10で、分別して回収された第一の大麦糠からポリフェノールを抽出するポリフェノール抽出工程S3と、第二の大麦糠からβグルカンを抽出するβグルカン抽出工程S4を有する、ポリフェノールおよびβグルカンといった大麦糠由来物質の製造方法S20の概要を示すものである。
【0041】
(成分判定工程)
搗精工程で排出される大麦糠は、外皮から段階的に搗精されて排出される。この段階的に行われる排出は、単一の搗精機により搗精する場合、搗精時間などを基に管理することができ、複数の搗精機により搗精する場合、搗精機ごとの搗精量で管理することができる。この管理として、一般的には指標として歩留が用いられる。複数段に分けて各歩留のものとして排出される大麦糠は、大麦糠の成分を判定する工程で、ポリフェノール含有量や、βグルカン含有量が分析される。
【0042】
(ポリフェノール含有量)
第一の大麦糠の判定を行うにあたって、そのポリフェノール含有量は、食品等に含まれるポリフェノール含有量の測定方法として公知の方法を適宜採用してよい。具体的な方法としては、Folin−Denis法により比色試験法で測定することができる。
【0043】
このFolin−Denis法により比色試験法で測定したときの濃度として、第一の大麦糠に適したものとして回収する所定の量以上の含有量を満たすかの判定基準としては、1kgの大麦糠あたりのポリフェノール含有量として、10,000mg/kg(1,000mg/100g)以上であるかを判断基準とすることが好ましい。この判定基準は12,000mg/kg以上とすることがより好ましく、15,000mg/kg以上とすることがより好ましい。
【0044】
(βグルカン含有量)
第二の大麦糠の判定を行うにあたって、そのβグルカン含有量は、食品等に含まれるβグルカン含有量の測定方法として公知の方法を適宜採用してよい。具体的な方法としてはAACC(American Association of Clinical Chemists)32-23や、AOAC(association of analytical communities)995.16、ICC(International Cereals Congress)法166、EBC(European Brewing Convention)3.11.1、RACI(Royal Australian Chemical Institute)標準法に規定されているようなMcCleary法に対応する測定法で測定することができる。前述した測定法に対応するものとして、例えば、日本バイオコン株式会社製「β-グルカン測定キット MIXED LINKAGE BETA-GLUCAN ASSAY KIT (McCLEARY METHOD) (STREAMLINED METHOD)」を用いて、この測定方法による測定結果に基づいて判定することができる。
【0045】
このMcCleary法に則って測定したときの濃度として、第二の大麦糠に適したものとして回収する所定の量以上の含有量を満たすかの判定基準としては、1kgの大麦糠あたりのβグルカン含有量として、28,000mg/kg(2,800mg/100g)以上であるかを判断基準とすることが好ましい。この判定基準は29,000mg/kg以上とすることがより好ましく、30,000mg/kg以上とすることがより好ましい。
【0046】
大麦糠のポリフェノール含有量およびβグルカン含有量は、本発明者等の検討の結果、同じ品種で同じ時期に同じ生産者が製造した大麦糠(いわゆる同一ロット品)については、同じ搗精工程をおこなったとき歩留毎で安定した含有量になっているという知見を得た。そして、一般的にはこのような同一ロット品のような安定した大麦が、毎年数トン〜数百トンのような量で搗精されている。
【0047】
この知見に基づいて、本発明の大麦糠の回収方法の成分判定工程は、このような安定した大麦を用いるとき、排出ライン等から排出される大麦糠に対して常に行う必要性は低い。すなわち、排出初期のサンプル等を測定して、その結果に基づいてその後の回収対象としての判定を行っておき、その判定結果に基づいて回収を行ってよい。また、判定基準として濃度を用いる場合、前述した方法に換算したときの値がその範囲内となれば、他の方法で測定してもよい。
【0048】
ここで、大麦糠の回収にあたっては、大麦糠自体が本来廃棄されるものとして大麦から除去されるもののため、第一の大麦糠および第二の大麦糠のいずれもが、それぞれの判定対象から外れるものが含まれるおそれがある。そこで、本発明において、選択的に回収とは、回収後の第一の大麦糠および第二の大麦糠が、それぞれの判定条件を満たすものとして90重量%以上含むように回収することをさし、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上とすることをさし、その判定対象の条件を満たすもののみとなるように回収することが最も好ましい。
【0049】
前述したように、大麦糠は歩留で複数の搗精機等から排出された層を求めることができる。ここで、本発明の大麦糠の回収方法および大麦糠由来物質の製造方法においては、前記第一の大麦糠とする大麦糠および前記第二の大麦糠とする大麦糠を歩留りに基づき管理することもできる。
【0050】
ここで、大麦は、外皮、果皮および種皮に相当する層が極めて少ない(あるいはない)裸麦と呼ばれるものと、そうではない一般的な大麦とに分けられ、本出願においては、一般的な大麦は裸麦と区別するために皮麦と呼ぶ。皮麦か、裸麦かによって、使用される大麦糠の歩留比率のより好ましい範囲は異なる。
【0051】
本発明における回収工程は、搗精される原料となる大麦が皮麦であり、前記第一の回収工程で前記第一の大麦糠として重量歩留比率85重量%以上〜95重量%以下の大麦糠を回収する構成とすることができる。また、このとき、前記第二の回収工程で前記第二の大麦糠として重量歩留比率75重量%以上〜85重量%未満の大麦糠を回収する構成とすることができる。
【0052】
本発明における回収工程は、搗精される原料となる大麦が裸麦であり、前記第一の回収工程で前記第一の大麦糠として重量歩留比率90重量%以上〜98重量%以下の大麦糠を回収する構成とすることができる。また、このとき、前記第二の回収工程で前記第二の大麦糠として重量歩留比率82重量%以上〜90重量%未満の大麦糠を回収する構成とすることができる。
【0053】
この第一の大麦糠は、糊粉層を中心とする大麦糠の中でも特別にポリフェノールの含有量が多く、大麦由来のポリフェノールの実用的な生産性に適した層である。一方、重量歩留比率がこの範囲未満の大麦糠は、ポリフェノール含有量が極めて少なく生産性が低い場合がある。また、重量歩留比率がこの範囲を超える部分は、外皮等に相当し、硬く加工性が低いため、大麦糠と同時に扱いにくく、前処理等の必要がありポリフェノールの生産性が低下する場合がある。
【0054】
この第二の大麦糠は、糊粉層を中心とする大麦糠の中でも特別にβグルカンの含有量が多く、大麦糠由来のβグルカンの実用的な生産性に適した層である。なお、βグルカンは一般的には精白麦となる胚乳側に豊富に含まれていると考えられており、大麦糠として回収する歩留下限となる範囲まで比較的高い濃度でβグルカンは含まれている場合が多いが、精白麦として利用する分は糠としては排出されないため第二の大麦糠としての利用する必要性は低い。
【0055】
一方、重量歩留比率がこの範囲を超える部分は、一般的にβグルカン含有量が極めて少なく生産性が低い場合がある。また、第一の大麦糠に適したものとなる範囲となることが多いため、第一の大麦糠に適しているかを判定し利用することが好ましい範囲となる。また、それぞれにこのような歩留に基づく範囲を設定しておくことで、それぞれの回収対象となる大麦糠を速やかに把握することができ、効率よく回収することができる。また、ポリフェノールやβグルカンの含有量として、第一・第二の大麦糠の両方の条件に適し得る範囲があるときに、それぞれの大麦糠を十分量ずつ回収することも容易となる。
【0056】
本発明の回収方法および製造方法は、大麦の搗精工程で排出される大麦糠を利用するものである。搗精工程は、一部前述したように、原麦や大麦種子ともよばれる大麦を、回転する砥石などを利用し、外皮部分や果皮、種皮、糊粉層を取り除くことで精麦し、胚乳層を主とする精白麦を得る工程である。この搗精工程は、一般的には、複数(5〜15台程度)の直列に設置された搗精機で、各搗精機で歩留比率がおよそ1〜3重量%程度ずつ減るように外層から取り除かれていく。これにより取り除かれた層はいわゆる糠と呼ばれている。
【0057】
(ポリフェノール)
本発明の回収方法は、大麦由来のポリフェノールの製造に適した第一の大麦糠を回収する工程を有する方法に関するものである。また、本発明の大麦由来物質の製造方法は、第一の大麦糠からポリフェノールを回収する工程を有するものである。ポリフェノールとは分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ植物成分の総称であり、大麦にはプロシアニジンやプロデルフィニジンなどのプロアントシアニジン類等のポリフェノールが含まれていることが知られている。本発明においては、第一の大麦糠に含まれるすべてのポリフェノールを対象として抽出してもよいし、目的とするポリフェノールが選択的に抽出されるように抽出してポリフェノールを製造してもよい。
【0058】
大麦由来のポリフェノールを抽出する工程は、本発明に利用する第一の大麦糠からポリフェノールを抽出することができればその方法は特に制限なく使用することができる。抽出方法としては、例えば、70〜90v/v%濃度程度のエタノール水溶液に、適宜脱脂した大麦糠を粉砕して混合することで、エタノール水溶液にポリフェノールを抽出するアルコール抽出法を例示することができる。この他にも、アルコール抽出法のエタノール水溶液にかえ熱水による抽出を行ったり、超臨界二酸化炭素を用いた方法、遠心分離、膜分離等の種々の方法を採用することができる。
【0059】
また、抽出されたポリフェノールは、活性炭や吸着樹脂などにより精製され、例えばゲルろ過クロマトグラフィーに用いられるLH−20(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)、HP―20(三菱化学社製)などの樹脂を充填したカラムを用いてポリフェノールを含有する試料を負荷すると、ポリフェノールは樹脂に吸着される一方、他成分(糖、アミノ酸、ミネラル、有機酸など)は洗脱されることにより、ポリフェノールの精製が行われる。次に、精製されたポリフェノールは、減圧法、逆浸透膜を用いた方法などにより水分が除去され、濃縮される。これらの抽出、精製、濃縮工程を経た濃縮液を凍結乾燥、噴霧乾燥などの方法に供し、得られた乾燥物を粉砕することにより乾燥粉末を得ることができる。
【0060】
(βグルカン)
本発明の回収方法は、大麦由来のβグルカンの製造に適した第二の大麦糠を回収する工程を有する方法に関するものである。また、本発明の大麦由来物質の製造方法は、第二の大麦糠からβグルカンを回収する工程を有するものである。大麦のβグルカンとしては、高い水溶性を示すことが知られているβ―1,3―1,4―グルカンが多く含まれており、これを大麦由来物質のβグルカンとして製造対象とすることができる。
【0061】
大麦由来のβグルカンを抽出する工程は、本発明に利用する第二の大麦糠からβグルカンを抽出することができればその方法は特に制限なく使用することができる。具体的な抽出方法としては、βグルカンが高い水溶性を示すことから、温水抽出が適している。さらに、適宜、温水抽出後に固液分離、精製、濃縮、乾燥等して、βグルカン濃度が高い大麦由来物質を製造することができる。
【0062】
[第三の実施形態(大麦糠回収装置1A)]
本発明の大麦糠の回収装置に関する第三の実施形態を、
図6に示す。
図6は大麦糠回収装置1Aを示すものである。この大麦糠回収装置1Aは、原麦(大麦)が投入口101から投入され、搗精機201〜210で搗精され搗精された精白麦は精白麦タンク81に貯蔵される。それぞれの搗精機から搗精された大麦糠は、それぞれの搗精機に設けられた排出ライン301〜310に排出される。この大麦糠回収装置1Aは、排出された大麦糠のうち、ポリフェノール含有量が所定の量以上である第一の大麦糠を選択的に回収するための第一移送ライン50と、前記第一移送ライン50を介して、前記第一の大麦糠が移送される第一集糠タンク51を有している。さらに、この大麦糠回収装置1Aは、排出された大麦糠のうち、βグルカン含有量が所定の量以上である第二の大麦糠を選択的に回収するための第二移送ライン60と、前記第二移送ライン60を介して、前記第二の大麦糠が移送される第二集糠タンク61を有している。さらに、この大麦糠回収装置1Aは、第一の大麦糠および第二の大麦糠を除く第三の大麦糠を回収する第三移送ライン70と、第三移送ライン70を介して前記第三の大麦糠が移送される第三集糠タンク71を有している。搗精機201〜210は、それぞれに対応する第一移送ライン、第二移送ラインおよび第三移送ラインのいずれかに接続されている。なお、本実施形態においては、全ての排出ラインに切替弁を設け、その切り替え弁を切り替えることで、第一〜第三移送ラインのいずれかを選択することができる構成としている。しかし、一般的に前半側の搗精機は高い確率で第一の大麦糠の回収に適しており、後半側の搗精機は高い確率で第二の大麦糠の回収に適している。よって、常に第一〜第三を選択可能に設計せずとも、それぞれに適する移送ラインを限定して、それらに接続される構成とすることもできる。
【0063】
この大麦糠回収装置1Aの構成について、
図7に部分拡大図を用いてより詳しく説明する。
図7は搗精機201〜203を中心とした、その構成を示すものである。原麦(大麦)が投入口101から投入され、搗精機201に投入することができるが、このとき大麦の種類によっては搗精機10機全てを用いずに、搗精機202から搗精される場合がある。このために、搗精機201に投入するとき投入ライン103を介して搗精機201に投入し、搗精機202に投入するとき投入ライン104を介して搗精機202に投入することができるように、投入口101のあとに切替弁102を設けて切り替え可能にする。さらに、この切替弁や投入ラインは、さらに搗精機203以降から搗精されるように変形してもよい。
【0064】
次に、搗精機201で搗精された大麦は、移送ライン201aを介して搗精機202に、さらに、搗精機202から移送ライン202aを介して搗精機203へと順次移送される。一方、搗精された糠は、搗精機201の大麦糠は排出ライン301へ、搗精機202の大麦糠は排出ライン202の大麦糠は排出ライン302へとそれぞれの搗精機に設けられている排出ラインで排出される。この排出ラインから排出された大麦糠は、成分判定等により目的別に回収することができるように複数の移送ラインに切り替えて、分別して回収することができるように排出後の移送ラインが設けられる。
【0065】
例えば、搗精機201から排出された大麦糠について、ポリフェノール回収に適した層にあたる大麦糠の場合は、排出ライン501を通り第一移送ライン50を介して第一の集塵タンク(図示せず)へ回収される。また、βグルカン回収に適した層にあたる第二の大麦糠の場合は、排出ライン601を通り第二移送ライン60を介して第二の集塵タンク(図示せず)へ回収される。さらに、いずれにも適していないものは、第三の大麦糠として、排出ライン701を通り第二移送ライン70を介して第三の集塵タンク(図示せず)へ回収される。この排出ライン501、601および701の切替ができるように排出ライン301には切替弁401が設けられる。なお、この切替弁の設定(移送ラインの選択)は、各搗精機の大麦糠の成分を予め測定して判定しておいた結果に基づいて設定しておくことができる。同様に、搗精機202、搗精機203にもそれぞれに対応した排出ラインや切替弁が設けられる。このような大麦糠回収装置1Aにより、搗精機ごとに第一の大麦糠、第二の大麦糠および第三の大麦糠をそれぞれ回収することができる。
【0066】
[第四の実施形態(大麦糠回収装置1B)]
図8は、本発明の大麦糠の回収方法および大麦由来物質の製造方法に用いることができる装置に関する第4の実施形態を示すものである。
この大麦糠回収装置1Bは大麦糠回収装置1A同様に、原麦(大麦)が投入口1から投入され、搗精機201〜210で搗精され搗精された精白麦は精白麦タンク81に貯蔵される。それぞれの搗精機から搗精された大麦糠は、それぞれの搗精機に設けられた排出ライン301〜310に排出される。この大麦糠回収装置1Bにおいては、各搗精機に対応した大麦糠を個別に回収することができるように、切替弁421〜430がそれぞれに設けられており、小型タンク921〜930に排出ラインが接続されている。
【0067】
そして、各個別タンクに回収される大麦糠について、成分判定結果に基づいて、単独、あるいは複数のタンクの大麦糠を、適宜組み合わせて、第一の大麦糠や第二の大麦糠として用いることができる。例えば、排出ライン302〜305の大麦糠が第一の大麦糠の要件を満たすとき、小型タンク922〜925に回収された大麦糠は第一の大麦糠として回収される。また、排出ライン306〜310の大麦糠が第二の大麦糠の要件を満たすとき、小型タンク926〜930に回収された大麦糠は、第二の大麦糠として回収される。そして、いずれの要件も満たさない大麦糠は第三の大麦糠として回収される。さらに、この大麦糠回収装置1Bは、個別の回収対象としない第三の大麦糠のような大麦糠を回収することができる第三移送ライン72と、第三移送ライン72を介して前記第三の大麦糠が移送される第三集糠タンク73を有している。
【0068】
この大麦糠回収装置1Bを用いれば、大麦搗精工程を、複数の搗精機を有する装置で行い、搗精機から排出される前記重量歩留比率に相当するそれぞれの大麦糠を選択的に大麦混合糠として回収することができる。これは、全ての搗精工程で排出される大麦糠をまとめて回収する従来の大麦混合糠と異なり、搗精機毎に発生する大麦糠を取出して配合したものとして回収に適している。回収対象の機能性成分含有量が高い歩留に相当する搗精機の大麦糠回収タンクの大麦糠を利用するため、適当な大麦糠の選択が容易であり、品質が安定した成分(ポリフェノールやβグルカン等)を製造しやすい。
【0069】
本発明の回収方法は、前記大麦搗精工程を、複数の搗精機を有する装置で行い、大麦糠をそれぞれの搗精機ごとに取出し、取出した大麦糠のうち前記重量歩留比率に相当するそれぞれの大麦糠を複数混合した大麦混合糠として回収してもよい。このような構成とすることで、大麦糠を搗精機ごとにタンクなどに取り出したものを混合して利用することができ、歩留として本発明に用いられる適当な搗精機に相当するものを混合しやすい。特に、品種を切り替えて搗精機ごとの歩留が明確ではない段階等で大麦外層糠を適切に回収し使用するときに適している。
【0070】
本発明の回収方法は、複数品種の大麦について、大麦搗精工程を、複数の搗精機を有する装置で行い、複数品種の大麦糠のうち前記重量歩留比率に相当する大麦外層糠をそれぞれの搗精機ごとに取出し、当該複数品種の大麦糠を前記重量歩留比率に相当する大麦外層糠を混合した大麦混合糠として回収して、複数の品種の大麦から得られた大麦糠を利用しても良い。このように複数の品種を併せて用いれば、少量しか生産しない大麦の品種であっても、その品種からポリフェノールを高い生産性で回収することができる。
【0071】
このように、単一品種及び他品種との混合も含めた混合糠、及び単体(個別)で回収した大麦糠を用いてポリフェノール含有量やβグルカン含有量が、それぞれ所定量以上となる部分を選択的に回収し、効果的に配合し成分を抽出するため、それぞれの成分が抽出しやすく、製造量の確保も可能となる。
【0072】
本発明は、前述したような本発明の製造方法により製造された大麦由来物質としても達成することができる。一般に、ポリフェノールは苦い・渋いと言われているが、本発明により製造された大麦由来のポリフェノールは、苦い、渋いという感応は少なく、食してみると逆に香りがよく、甘く、香ばしい。また、本発明はこの大麦由来のポリフェノールを含有する加工食品とすることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[評価項目]
[歩留(重量%)]
歩留を求めるための各試料の重量は、100粒を取り出したものの平均値として求めた。歩留を求めるための重量の測定は正確性を期するため、加工された大麦を一人の者が抽出し、抽出した加工大麦の粒揃えが均等に選び出されているかを、複数の者で点検した。
歩留(重量%)=[取り出した試料100粒の平均重量(g)/搗精開始前の試料(原麦)100粒の平均重量(g)]*100 ・・・式(1)
・原麦の取得:夾雑物を除去した搗精前の大麦原麦・裸麦原麦を、ばらつきを無くすため一粒ずつ選別し100粒ずつ取り出した。
・搗精機ごとの大麦の取得:サンプル種毎に搗精機で搗精中の大麦を、それぞれの搗精機から取り出し、歩留りを調査した。すなわち、各搗精機ごとの歩留は、その搗精機内部での平均値相当のものである。
【0075】
[ポリフェノール含有量]
試料を適宜粉砕し80%v/v濃度のアルコール水溶液に浸漬させ、アルコール水溶液中にポリフェノールを抽出したのち、当該ポリフェノールを抽出したアルコール水溶液を,Folin−Denis法により比色試験することで、アルコール水溶液に浸漬させた試料の重量比およびFolin-Denis法による吸光度の変化から試料中のポリフェノール含有量を計算した。
【0076】
[βグルカン含有量]
日本バイオコン株式会社製「β-グルカン測定キット MIXED LINKAGE BETA-GLUCAN ASSAY KIT (McCLEARY METHOD) (STREAMLINED METHOD)」を用いて、大麦測定用の分析手順(EBC法3.11.1)に則り、βグルカン含有量を測定した。
【0077】
[搗精装置]
(有)伊東精麦所内の横型大麦搗精機を用いた。この搗精機は、1〜10号機まで直列で使用する大麦搗精機で、基本的に、10号機終了時に品種にもよるがおよそ歩留70〜80重量%となる搗精ができるように設定したものである。なお、装置の運転にあたっては、1〜10号機を常時運転するものではなく、原料となる大麦(原麦)の品種等に合わせて、2号機や3号機以降から運転するなど、適宜、使用する搗精機を変更した。
【0078】
[試験例1〜5(皮麦)]
佐賀産のニシノホシ、佐賀産のサチホゴールデン、オーストラリア(豪州)産のスターリン、オーストリア産のハインドマーシュ、および長崎産のニシノホシ(いずれも皮麦の品種)を用いて、搗精機ごとの歩留、ポリフェノール含有量、およびβグルカン含有量を測定した。結果を表1に示す。なお、表中、「停止」とはその搗精機を用いていないことを示し、「n.d」とは測定結果を取得しなかったものを指す。
【0079】
本発明において、歩留は管理指標の一つとして用いることが好ましいが必ずしも必須ではないため、試験例4では歩留を測定せずに回収対象の決定を行った。また、本発明者等の知見によればβグルカン含有量は、最外層側ほど低くなるため、搗精機の2号機のようにβグルカン濃度が低いことが明らかに想定される場合等は測定しなかった。表において、ポリフェノール含有量の単位は、大麦糠100gにおけるものとして、「mg/100g」である。また、βグルカン含有量の単位は、大麦糠100gにおけるものとして、「g/100g」である。
【0080】
[試験例6〜7(裸麦)]
長崎産の御島裸、および大分産のトヨノカゼ(いずれも裸麦の品種)を用いて、搗精機ごとの歩留、ポリフェノール含有量、およびβグルカン含有量を測定した。結果を表2に示す。なお、「停止」、「n.d」については表1と同様である。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
[実施例1]
表1および表2に示すそれぞれの試験例のポリフェノール含有量およびβグルカン含有量に基づき、回収対象の成分を以下の設定で判定した。
(1)第一の大麦糠:ポリフェノール含有量が1000mg/100g以上のものを第一の大麦糠の回収対象とした。
(2)第二の大麦糠:βグルカン含有量が2.8g/100g以上のものを第二の大麦糠の回収対象とした。
(3)第三の大麦糠:前記第一の大麦糠および第二の大麦糠のいずれの条件も満たさないものは、第三の大麦糠とした。
【0084】
まず、実施例1においては、前記した第四の実施形態(大麦糠回収装置1B)の装置構成で、初期の試験例1のニシノホシ(佐賀産)の大麦糠を、第一の大麦糠、第二の大麦糠および第三の大麦糠のいずれにあたるか判定してそれぞれの小型タンクに回収した。回収後の第一の大麦糠はポリフェノール生産に適しており、回収後の第二の大麦糠はβグルカン生産に適したものであった。なお、第一の大麦糠および第二の大麦糠の判定条件の双方を満たすものは、第一の大麦糠として回収した。
【0085】
[実施例2]
実施例2においては、前記した第三の実施形態(大麦糠回収装置1A)の装置構成で、試験例1〜7の大麦糠すべてについて、それぞれの搗精時に分別して回収した。なお、成分判定基準は実施例1と同様である。実施例2により回収した後の第一の大麦糠もポリフェノール生産に適しており、回収後の第二の大麦糠もβグルカン生産に適したものであった。なお、第一の大麦糠および第二の大麦糠の判定条件の双方を満たすものは、第一の大麦糠として回収した。
【0086】
[実施例3]
さらに、各試験例の大麦糠を個別に回収したもの、あるいは、これらを混合した大麦外層糠を用いて、アルコール抽出法を用いてポリフェノールを製造した結果、工業的に量産可能な量のポリフェノールを製造することができた。また、温水抽出法を用いてβグルカンを製造した結果、工業的に量産可能な量のβグルカンを製造することができた。