【実施例1】
【0035】
図1〜3、
図9において本発明に係る耐震性石積構造1は、石積構造物2を基礎コンクリート部3を介して地盤4に固定するものであって、該石積構造物2は、積重された上下の石材6,6相互が連結一体化され、該石積構造物2が結果的に上下全長に亘って連結一体化されており、
図4に示すように、該石積構造物2の下面部9でアンカー部材10が突設されている。そして該基礎コンクリート部3は、地盤4に設けた(例えば、地盤4を掘削して該地盤4に設けた)打設凹部11(
図2〜3、
図4、
図14)にコンクリートを打設して形成されており、
図3、
図5に示すように、該打設凹部11の底部12で、帯状の板13(
図5)を杭軸線L1方向(上下方向)で連続的に螺旋状に捩じって形成されたスパイラル杭15が前記地盤4に埋設され(打込みによって又は回転によって埋設される)、該スパイラル杭15の螺旋状の上端側部分16が前記底部12で上方に突設され、該上端側部分16が前記基礎コンクリート部3に埋入されている。又前記アンカー部材10が、
図2〜5に示すように、前記石積構造物2の下面部9を前記基礎コンクリート部3の上面部17に載置した状態で該基礎コンクリート部3に埋入されている。
【0036】
前記石積構造物2は本実施例においては
図3、
図6、
図12に示すように、その一つは、遺骨を納めた容器(以下、納骨壷という)を収納するための納骨室20を内部に具える第1の石積構造物2aであり、又もう一つは、底面部21に散骨用開口22(
図12)が設けられてなる散骨室23を内部に具える第2の石積構造物2bである。該第1、第2の石積構造物2a,2bは、所要間隔を置いて隣り合わせて配設されており、該第1の石積構造物2aと該第2の石積構造物2bは、夫々、
図2、
図8〜10に示すように、積重された上下の石材6,6相互が前記連結部材7によって連結一体化されてなり、
図4に示すように、夫々の下面部9,9で、前記アンカー部材10が突設されている。そして
図3に示すように、該第1の石積構造物2aの下部25と該第2の石積構造物2bの下部26とに股がって骨収容槽27が地盤4に埋設され、前記散骨用開口22が、該骨収容槽27の上端開放部29の略中央30に連通する如くなされている。このように、該骨収容槽27を、該第1の石積構造物2aの下部25と該第2の石積構造物2bの下部26とに股がらせて地盤4に埋設しているため、該第2の石積構造物2bを該第1の石積構造物2aに、より近付けた状態で、前記散骨用開口22を骨収容槽27の該略中央30に連通させることができる。
【0037】
前記第1の石積構造物2aは、本実施例においては
図1〜3、
図6〜7に示すように、石材からなる矩形板状の床板部材31上の四隅部において、石材からなる支柱部材32,32,32,32が立設されている。各支柱部材32には、
図7〜8に示すように、その軸線に沿って上下方向に連続する軸挿通孔33が設けられており、該軸挿通孔33に、連結軸7a(前記連結部材7の一種)が挿通される。又、前記納骨室20の前面部35と後面部36と左右の側面部37,37では、
図7に示すように、隣り合う支柱部材32,32間に、石材6としての板状部材39が、その両側部分40,40を、対向する支柱部材32,32の対向面部に設けた嵌合溝41,41に嵌め入れた立設状態で保持されている。
【0038】
そして
図2に示すように、前記の各支柱部材32,32,32,32の上端42は同高さにあり、該支柱部材32,32,32,32の該上端42に、石材からなる矩形板状の天板部材43が載置され、該天板部材43上に、石材からなる矩形枠部材45が載置され、その上に、石材からなる屋根部材46が載置されている。該屋根部材46上には、適宜、観音像や五輪塔等が載置される。
【0039】
又、前記前面部35を形成する前記板状部材39は、
図6に示すように、その中央部分に出入口用開口47が設けられており、該出入口用開口47に扉49が蝶番を介して取り付けられることによって、前記第1の石積構造物2aの内部に形成されてなる前記納骨室20の出入口50を該扉49で開閉可能となされている。又、前記左右の側面部37,37の外面部分51,51には、
図1〜2、
図6に示すように、戒名板をスライドによって取り付けるためのスライド溝部52が上下多段に設けられている。
【0040】
前記納骨室20の内部の左右側には、
図3、
図6(B)に示すように、前記納骨壷を収容するためのステンレス製の棚53,53が、例えば5段に設けられており、参拝者は、前記出入口50を通して該納骨室20を出入りできる。
【0041】
前記第2の石積構造物2bは、本実施例においては
図1〜3に示すように、前記第1の石積構造物2aの稍後側に位置させて(例えば240mm程度の最大距離を置いて)設けられており、前記第1の石積構造物2aに比して高さが低く形成され、その上面部分55には、花台部材56や燭台部材57等を配置可能となされている。
【0042】
該第2の石積構造物2bは、より具体的には
図1、
図9〜11に示すように、前記第1の石積構造物2aの前記床板部材31と左右方向幅が等しいベース部材60の前側部分61上に載置される床板部材62の四隅部において、石材からなる支柱部材63,63,63,63が立設されている。各支柱部材63には、
図9〜10に示すように、その軸線に沿って上下方向に連続する軸挿通孔65が設けられており、該軸挿通孔65に連結軸7b(前記連結部材7の一種)が挿通される。又
図11に示すように、前面部67と両側面部69,69にあっては、隣り合う支柱部材63,63間に、石材からなる板状部材70が、その両側部分71,71を、左右の支柱部材63,63の対向面部に設けた嵌合溝72,72に嵌め入れた立設状態で保持されている。そして該両側面部69,69を構成する両板状部材70,70の上側部分には、
図1、
図3、
図9に示すように、前記散骨室23内を通気するための通気孔73,73が設けられている。
【0043】
又、後側に位置する隣り合う支柱部材63,63間には、
図1、
図11に示すように、観音開き状に開閉し得る石材からなる扉板75,75が設けられている。又
図3に示すように、前記前面部67を構成する前記板状部材70の上側部分には換気口77が設けられており、該換気口77が
図3、
図12に示すように、前記骨収容槽27の上部79に連通管80を介して連通されることによって、該骨収容槽27の内部28を換気できる。
【0044】
図9に示すように、前記の各支柱部材63,63,63,63の上端81は同高さにあり、該支柱部材63,63,63,63の該上端81に、石材からなる矩形板状を呈する天板部材82が載置され、該天板部材82上に、石材からなる矩形板状を呈する供物台部材83が載置されている。そして、前記ベース部材60の後側の部分85(
図1)は参拝スペースを構成している。
【0045】
然して、前記扉板75,75を
図11に一点鎖線で示すように開くと前記散骨室23が開放される。該散骨室23の底面部21には、蓋板86によって開閉可能となされた前記散骨用開口22(
図3、
図11〜12)が設けられており、該散骨用開口22が、前記ベース部材60に設けた開口87に連通し、前記骨収容槽27の上端開放部29の略中央30に連通する如くなされている(
図3)。又
図12に示すように、該底面部21の、該散骨用開口22の側方に位置させて、前記骨収容槽27の内部28に連通する連通開口90が設けられており、該連通開口90に、L字状蛇腹ダクトとしての前記連通管80の下端部分が連設されている。
【0046】
ここで、前記第1の石積構造物2aにおける石材6,6相互の連結構成をより詳しく説明すれば、
図2、
図8(A)(B)に示すように、前記床板部材31と前記の各支柱部材32と前記天板部材43とが、両端にネジ軸部分92,92が設けられてなる該連結軸7aと、該ネジ軸部分92,92に螺合するナット93,93とによって連結一体化されると共に、前記天板部材43と前記矩形枠部材45と前記屋根部材46とが、該連結軸7aと該ナット93,93とによって連結一体化されている。
【0047】
そして
図8(A)に示すように、前記4本の支柱部材32,32,32,32を挿通した前記連結軸7aの下端のネジ軸部分92aに、長ナット95を介して、例えばL字状アンカー部材10aとしてのアンカー部材10の垂直部96の上端部分97が連結されている。又
図4に示すように、前記床板部材31の、隣り合う支柱部材32,32間の中央部分において、L字状アンカー部材10aが下方に突設されている。なお本実施例においては、前記骨収容槽27の配置状態との関係によって該骨収容槽27との接触を防止するために、前記後面部36(
図7)側における、隣り合う支柱部材32,32間には、該L字状アンカー部材10aは設けられていない。
【0048】
前記第2の石積構造物2bにおける石材6,6相互の連結構成をより詳しく説明すれば、
図2、
図9〜10に示すように、前記ベース部材60と前記床板部材62とが、両端にネジ軸部分92,92が設けられてなる連結軸7bとナット93とによって連結一体化されると共に、前記床板部材62と前記支柱部材63と前記天板部材82とが、該連結軸7bとナット93とによって連結一体化されている。又、該天板部材82と、前記供物台部材83と、該供物台部材83上に設置される花台部材56や燭台部材57等の所要の祭壇構成部材99とが、一端のネジ軸部分92が該祭壇構成部材99の下面部に埋設したネジ筒部材88にねじ込まれてなる前記連結棒7bと、その他端のネジ軸部分92に螺合されるナット93とを用いて連結一体化されている。そして
図4に示すように、前記ベース部材60の下面部9の四隅部分にはL字状アンカー部材10bとしてのアンカー部材10が下方に突設されている。
【0049】
前記骨収容槽27は、本実施例においては
図3に示すように、有底で上端が開放した、例えば円筒状凹部として構成されており、前記打設凹部11(
図14)の底部12に設けた槽収容凹部101に、例えば合成樹脂製の円筒状筒体102を埋設して構成されている。そして、該骨収容槽27の上端開放部29の略中央30に位置させて前記散骨用開口22が設けられている。本実施例においては
図3に示すように、該骨収容槽27は、その一部分103を前記第1の石積構造物2aの後側の部分105に位置させることにより、該骨収容槽27は、前記第1の石積構造物2aの下部25と前記第2の石積構造物2bの下部26とに股がって地盤4に埋設された状態にある。
【0050】
図12に示すように前記蓋板86を開いて、前記散骨用開口22を通して納骨壷内の遺骨を前記骨収容槽27内に落下させると、該遺骨は、該骨収容槽27内の中央部分に収容されることとなる。これによって該遺骨は、該骨収容槽27内に片寄りなく均等に収容される。
【0051】
次に、かかる構成を有する耐震性石積構造1を構成するための施工方法の一例を
図13に基づいて説明する。
【0052】
図13は、完成した基礎コンクリート部3を、前記骨収容槽27が設置された状態で示す平面図であり、
図4にはその斜視図が示されている。該基礎コンクリート部3は平面視で、長辺106が4700mm程度で短辺107が3000mm程度である長方形状を呈しており、その短辺107寄り側の中央部分に、上端開放部29が円形状を呈する前記骨収容槽27が埋設されている。そして、該基礎コンクリート部3には、前記第1の石積構造物2aと前記第2の石積構造物2bの夫々の下面部9で突設された前記アンカー部材10を収容するための収容孔109が、前記した夫々のアンカー部材10に対応させて設けられている。
【0053】
又該収容孔109の近傍において、前記スパイラル杭15が地盤4に埋設されている。該スパイラル杭15は例えば
図5に示すように、帯状の板(本実施例においては帯状の鋼板13a)13を杭軸線方向L1で連続的に螺旋状に捩じって構成されている。本実施例においては、該スパイラル杭15は、その径が100mm程度、該鋼板13aの厚さが9mm程度、杭軸線方向L1の長さが1300mm程度に設定されている。
【0054】
又本実施例においては
図5(B)に示すように、該スパイラル杭15の螺旋状の上端側部分16に、孔心が水平である取付け孔111が設けられており、該取付け孔111に、例えば水平棒状のネジ軸からなるアンカー杆112が挿通され、その両側部分をなすネジ軸部分113,113で螺合されたナット114,114が締め付けられることにより、該アンカー杆112が該上端側部分16に固定されている。
【0055】
図3、
図13において前記骨収容槽27の上端径は1280mm程度に設定され、その深さは1300mm程度に設定されると共に、前記収容孔109の径は150mm程度に設定されている。又、前記スパイラル杭15が前記収容孔109の近傍に位置するとは、例えば、該スパイラル杭15の前記杭軸線L1が、該収容孔109の孔軸線L2(前記垂直部96の軸線と略合致する)から200〜700mmの範囲に位置することを意味する。
【0056】
図13においては、符号109aで示す収容孔の孔軸線L2と、符号15aで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間の距離D1は230mm程度に設定されると共に、該収容孔109aの孔軸線L2と、符号15bで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間の距離D2は694mm程度に設定されている。又符号109bで示す収容孔の孔軸線L2と、その近傍に存する符号15aで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間の距離D3は370mm程度に設定されると共に、該収容孔109bの孔軸線L2と、その近傍に存する符号15dで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間の距離D4は360mm程度に設定されており、又、該収容孔109bの孔軸線L2と、その近傍に存する符号15eで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間の距離D5は428mm程度に設定されている。又、符号109cで示す収容孔の孔軸線L2と、その近傍に存する符号15eで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間の距離D6は430mm程度に設定されており、更に符号109dで示す収容孔の孔軸線L2と、その近傍に存する符号15fで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間の距離D7は400mm程度に設定されており、又、該収容孔109eの孔軸線L2と、その近傍に存する符号15gで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間の距離D8は350mm程度に設定されている。更に、符号109eで示す収容孔の孔軸線L2と、その近傍に存する符号15hで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間の距離D9は400mm程度に設定されており、符号109gで示す収容孔の孔軸線L2とその近傍に存する符号15gで示すスパイラル杭の杭軸線L1との間との距離D10は530mm程度に設定されている。
【0057】
かかる構成を有する基礎コンクリート部3を構成するために、本実施例においては、例えば
図14にその一部分を示すように、地盤に、250mm程度の深さを有する打設凹部11を形成する。その後、
図15(A)に示すように、該打設凹部11の底部12の所要部位に設けた槽収容凹部101に前記円筒状筒体102を収容された状態とすると共に、該円筒状筒体102の上端部分の内周面116に、周方向に連続する骨収容槽形成型枠117を設け、該骨収容槽形成型枠117の上端部分119は、前記打設凹部11の上端120の稍上方に突出状態とする。又
図14に示すように、該打設凹部11の底部12側に、適宜スペーサ121で鉄筋122を支持させて格子状等に配筋123を施す。この際、上下の鉄筋122,122の交差部125を適宜針金126等で結着する。そして該配筋123を避けて(本実施例においては該配筋123の所要の目の部分127において)、前記アンカー部材10を収容するための前記収容孔109(
図4、
図13)を設けるために、円筒状の収容孔形成型枠129を該底部12で立設状態に設ける。該収容孔形成型枠129の上端130は前記打設凹部11の上端120に略合致させてあり、その上端の開口132は、打設コンクリートの流入を防止するために被覆材で被覆する。なお、該上端120を前記打設凹部11の上端120の稍上方に突出状態としてもよい。
【0058】
又、該配筋123を避けて(本実施例においては該配筋の別の所要の目の部分135において)、前記打設凹部11の底部12で、前記スパイラル杭15を地盤4に回転埋設する。該スパイラル杭15を埋設するための、該別の所要の目の部分135は、前記収容孔形成型枠129の近傍に設定するのがよい。この近傍は、前記収容孔形成型枠129の軸線L3(
図14)から200〜700mmの範囲に設定するのがよい。要するに、この範囲における所要の位置設定は、該収容孔形成型枠129の軸線L3を基準として行うということである。そして、該スパイラル杭15が地盤4に所要に埋設された状態(
図5)で、その螺旋状の上端側部分16が前記底部12の上方に、例えば150mm程度突出した状態とされる。該上端側部分16と前記アンカー杆112は、前記配筋123に連結されてはいない。
【0059】
その後、前記打設凹部11にコンクリートを打設する。該コンクリートの硬化によって、例えば
図5に示すように、250mm程度の厚さを有する前記基礎コンクリート部3が形成され、前記スパイラル杭15の上端側部分16と前記アンカー杆112が該基礎コンクリート部3に埋入状態とされる。そして、該基礎コンクリート部3が形成された後、前記収容孔形成型枠129を除去することにより、該基礎コンクリート部3の上面部17で上端が開放された前記収容孔109(
図4)が形成され、又、該基礎コンクリート部3が形成された後、前記骨収容槽形成型枠117(
図15(A))を取り外すことにより、
図15(B)に示すような、該上面部17で上端が開放してなる前記骨収容槽27が形成される。
【0060】
然る後、前記の各収容孔109にモルタル137を充填した後、該収容孔109に前記アンカー部材10を収容させながら前記石積構造物2(前記第1の石積構造物2aと前記第2の石積構造物2b)を吊り下ろし、該石積構造物2の下面部9を前記基礎コンクリート部3の上面部17に載置する。この際、必要があれば、該下面部9と該上面部17との間にスペーサを介在させる。これによって、該石積構造物2の所要の位置決めがなされる。その後、該モルタル137が硬化することにより、前記第1の石積構造物2aと前記第2の石積構造物2bの夫々が、前記アンカー部材10と前記モルタル137の硬化部139を介して前記基礎コンクリート部3と一体化状態となる。
【0061】
又前記スパイラル杭15は、
図5(A)に示すように、その螺旋状に捩じれた部分140が地盤4に食い込んだ状態にあるので、該スパイラル杭15と該地盤4との係合が大きな面積で行われ該スパイラル杭15と該地盤4とが一体化状態にある。従って、地震時の振動で該スパイラル杭15を浮き上げる力が作用した場合も、該スパイラル杭15は地中から抜け難い。そして、このように地盤4と一体化状態にあるスパイラル杭15の前記上端側部分16をなす螺旋状に捩れた部分141が前記基礎コンクリート部3に食い込んだ状態にあり、該上端側部分16と該基礎コンクリート部3との係合が大きな面積で行われ、該上端側部分16と該基礎コンクリート部3とは強固に一体化した状態にある。かかることから、前記基礎コンクリート部3は地盤4に強固に一体化されている。
【0062】
本実施例においては
図5(B)に示すように、前記スパイラル杭15の螺旋状の上端側部分16で、アンカー杆112を水平状態に突設させる構成を採用しているため、該スパイラル杭15の回り止めを達成できると共に、該スパイラル杭15の上端側部分16と基礎コンクリート部3との一体化を、より強固なものとなし得る。
【0063】
このようなことから、積重された上下の石材6,6相互が連結一体化状態にある前記第1の石積構造物2aと前記第2の石積構造物2bの夫々は、基礎コンクリート部3上に安定的に設置され且つ、該安定的な設置状態で、前記アンカー部材10と前記基礎コンクリート部3と前記スパイラル杭15を介して地盤4に安定状態で強固に固定されている。従って地震時の振動が大きくても、従来のように基礎コンクリート部3が地盤4から浮き上がって石積構造物2が横転したり傾いたりするのを防止できる。
【0064】
そして前記のように、前記スパイラル杭15の前記上端側部分16と前記アンカー杆112とが前記配筋123と一体化されていないため、特許文献2のように、地震時の振動で基礎コンクリート部3の鉄筋122を損傷して基礎コンクリート部3の強度低下(石積構造物2の耐震性劣化)を招く恐れもない。
【0065】
特に本実施例においては、前記基礎コンクリート部3に埋入されているアンカー部材(石積構造物2を地盤4に固定する役割を果たしている)10の近傍においてスパイラル杭15が地盤4に埋設されており、その螺旋状の上端側部分16が該アンカー部材10の近傍に存する。そのため、該基礎コンクリート部3の該アンカー部材10の近傍に存する部分が該スパイラル杭15で地盤4に強固に固定された状態にある。かかることから、地震時における該アンカー部材10の振動がより効果的に抑制されることとなり、従って、耐震性石積構造1の耐震性をより向上させ得ることとなる。又、前記基礎コンクリート部が前記スパイラル杭を介して地盤4に強固に固定されるため、軟弱地盤(海や川に近い地盤や地下水位が高い地盤等)においての前記石積構造物2の沈下を防止できることともなる。
【0066】
本実施例においては前記のように(
図1〜2)、納骨壷を収納するための納骨室20を内部に具える第1の石積構造物2aと、底面部21に散骨用開口22が設けられてなる散骨室23(
図3、
図12)を内部に具える第2の石積構造物2bとを隣り合わせて具えている。納骨壷は、当初は納骨室20に収納されて保管されるのであるが、該納骨室20における納骨壷の収納可能個数には限度があるため、収納年数が長い納骨壷は、一定期間で順次納骨室20から取り出され、該納骨壷内の遺骨は、前記散骨室23の前記散骨用開口22から前記骨収容槽27内に散骨される。この散骨は、前記散骨用開口22が該骨収容槽27の上端開放部29の略中央30に位置するため(
図3)、該骨収容槽27内に片寄りなく均等に散骨できる。
【0067】
本実施例においては、納骨室20を内部に具える第1の石積構造物2aと散骨室23を内部に具える第2の石積構造物2bとを、完全に分離した別体に構成し、該第2の石積構造物2bに設けられている散骨室23に、骨収容槽27に連なる散骨用開口22を設ける構成を採用している。そのため、骨収容槽27の内部で発生した湿気や臭いが納骨室20に入ることがない。もしも、該納骨室20の床部に散骨用開口22を設ける場合は、骨収容槽27内で発生した湿気が該納骨室20内に侵入して納骨室の壁面等に黴を発生させる問題があり、又、納骨室20に収容されている納骨壷19内に侵入した湿気が結露して該納骨壷19内に水が貯まる等して遺骨を傷める等の問題を発生させることとなる。更に納骨室20内に臭いがこもることともなる。
【0068】
又本実施例においては、
図3に示すように、前記骨収容槽27を、前記第1の石積構造物2aの下部25と前記第2の石積構造物2bの下部26とに股がって地盤4に埋設することとしているため、前記散骨用開口22が前記骨収容槽27の上端開放部29の略中央30に位置する如く構成されてなる、散骨室23を内部に具える前記第2の石積構造物2bを、前記第1の石積構造物2aに、より近接状態となし得る。これによって、第1の石積構造物2aと第2の石積構造物2bとを隣り合わせて設ける場合における敷地のスペース削減を期し得ることとなる。
【実施例2】
【0069】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0070】
(1)
図16は本発明に係る耐震性石積構造1の他の態様を示すものであり、実施例1に係る耐震性石積構造1において、基礎コンクリート部3を構成するために設けられる前記打設凹部11の底部12の所要部位を窪ませて窪み部142が設けられている。そして該窪み部142の窪み部底部143で前記スパイラル杭15が地盤4に埋設され、該スパイラル杭15の螺旋状の上端側部分16が前記窪み部底部143で上方に突設されて前記底部12の上方に延長されており、該上端側部分16が、前記打設凹部11と前記窪み部142にコンクリートを打設して形成された前記基礎コンクリート部3に埋入されている。
【0071】
本実施例においては、該打設凹部11の深さは250mm程度に設定されると共に前記窪み部142の深さは200mm程度に設定され、該窪み部142の径は250mm程度に設定されている。このようにして設けられる窪み部142は、前記したと同様に、前記アンカー部材10の垂直部96(前記下面部9で下方に突出する垂直部96)の軸線を中心とした200〜700mmの範囲にある前記アンカー部材10の近傍に設定されている。
【0072】
このようにして設けた窪み部底部143でスパイラル杭15を地盤4に埋設する場合は、基礎コンクリート部3に埋入されるスパイラル杭15の上端側部分16の長さが、窪み部142の深さの分だけ長くなるため、該上端側部分16と該基礎コンクリート部3との一体化をより強固に行わせることができる。
【0073】
(2) 実施例1においては、納骨室20を内部に具える第1の石積構造物(前記石積構造物2の一種)2aと散骨室23を内部に具える第2の石積構造物2b(石積構造物2の一種)とを隣り合わせて具える如く構成されているが、該石積構造物2は、例えば
図17に示すように、散骨室23を内部に具える第2の石積構造物2bのみを以て構成されることもある。この場合は、前記骨収容槽27は該第2の石積構造物2bの下側に設置されることになるが、この場合も、
図17に示すように、前記散骨室23の底面部21に設けた散骨用開口22を、前記骨収容槽27の上端開放部29の略中央30に連通させるのがよい。
【0074】
(3) 前記散骨室23の底面部21に設けられた散骨用開口22は、前記骨収容槽27の上端開放部29に連通する如く設けられればよいのであり、必ずしも該上端開放部29の略中央に連通する如く設けられることは必須ではない。
【0075】
(4) 前記スパイラル杭15は、実施例1で説明した帯状の板を杭軸線方向L1で一重に連続的に螺旋状に捩じって形成したものの他、例えば
図18に示すように、複数枚(例えば2枚)の帯状の板13を杭軸線方向L1で連続的に螺旋状に捩じって形成されたスパイラル杭であってもよい。又、例えば
図19に示すように、杭軸線方向L1に延長する軸145の外周に該帯状の板13を該杭軸線方向L1で連続的に螺旋状に捩じって形成されたスパイラル杭15であってもよい。
【0076】
(5) 前記スパイラル杭15の径や長さは、前記石積構造物2の形状やその重量等を考慮して所要に設定されるものであり、その径は、例えば50〜100mm程度に、その長さは、例えば500〜1500mm程度に設定される。
【0077】
(6) 前記石積構造物2の下面部9で突設される前記アンカー部材10の本数とその突設位置は、該石積構造物2の形状やその重量等を考慮して、該アンカー部材10を介して該石積構造物2を前記基礎コンクリート部3に安定状態に固定し得るように設定される。
【0078】
(7) 前記スパイラル杭15の、前記打設凹部11の底部12における埋設部位は、地震時における前記アンカー部材の振動をより効果的に抑制できるように設定される。
【0079】
(8) 前記アンカー部材10は、前記したL字状を呈するものには特定されず、J字状を呈するもの等、前記基礎コンクリート部3に埋入されて所要のアンカ−作用を発揮するものであれば各種に構成できる。
【0080】
(9) 前記打設凹部11は、地盤4を所要深さに掘削して形成されることの他、地盤上面上で所要に型枠組して所要深さに形成されてもよい。
【0081】
(10)前記骨収容槽は、前記実施例で示したような軽量で比較的安価なプラスチック製の筒体を以て構成するのが好ましいが、コンクリート製等とされてもよい。
【0082】
(11)前記アンカー部材10を収容するための収容孔109には、モルタルに代えてコンクリートが充填されることもある。
【0083】
(12)前記石積構造物2は、前記した納骨室20を内部に具える第1の石積構造物2aや、散骨室23を内部に具える第2の石積構造物2bとして構成されることの他、石材を積重して構成されてなり、且つ、積重された上下の石材6,6相互が連結一体化されて、該石積構造物2が結果的に上下全長に亘って連結一体化されてなるものであれば、墓石や灯籠、石碑、五重の塔等の各種の石積構造物であってよい。ここに、「該石積構造物2が結果的に上下全長に亘って連結一体化される」とは、該石積構造物2を構成する石材の全てに関して石材相互が前記連結部材7を用いて連結されている必要はないことを意味している。例えば実施例1における、隣り合う前記支柱部材32,32間に介在される、石材6としての前記板状部材39のように、連結部材7を用いて連結されない石材が存してもよいことを意味している。
【0084】
そしてこれらにおいて、積重された上下の石材6,6相互の連結一体化は、実施例1で説明したような連結棒7a,7bを用いて行うのが好ましく、該連結棒は該石積構造物2の略全長に亘る1本ものであってもよい。又該連結一体化は、石材6,6相互をアングル材や平鉄等の連結部材を用いて行うものであってもよい。