特許第6231064号(P6231064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231064
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】液化天然ガスを変換する方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   F17C9/02
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-226245(P2015-226245)
(22)【出願日】2015年11月19日
(62)【分割の表示】特願2012-532612(P2012-532612)の分割
【原出願日】2010年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-48119(P2016-48119A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】09352005.4
(32)【優先日】2009年10月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599067318
【氏名又は名称】クライオスター・ソシエテ・パール・アクシオンス・サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100147511
【弁理士】
【氏名又は名称】北来 亘
(72)【発明者】
【氏名】ポツィフィル,ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】デナルディ,ダヴィッド
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04444015(US,A)
【文献】 特開昭57−083798(JP,A)
【文献】 特開平06−221499(JP,A)
【文献】 特表2009−529455(JP,A)
【文献】 特開昭63−275897(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02008239(GB,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0065085(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
F17C 13/00
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスを5℃より高い温度を有する過熱流体に変換する方法であって、加圧下の前記天然ガスを、直列になった第1、第2、及び第3の熱交換段の列に通し、その中で前記天然ガスを加温させる段階を備えている方法において、
れぞれの主熱交換段凝縮性の熱交換媒体によって加温されているか、又は前記第1主熱交換段と前記第2主熱交換段は凝縮性の熱交換媒体によって加温され前記第3熱交換段は当該第3熱交換段で相を変化させない液状媒体によって加温されており、
縮性の熱交換媒体によって加温されるそれぞれの主熱交換段では、熱交換媒体は、当該主熱交換段に加えて、
記主熱交換段から凝縮された熱交換媒体を回収するための回収容器と、
記凝縮された熱交換媒体を再気化させるための少なくとも1つの副熱交換器と、
記凝縮された熱交換媒体の流れを加圧するためのポンプであって前記回収容器からの出口と前記副熱交換器の中間に設置されているポンプと、
備える無限回路を流されており、
記天然ガスは、前記第1主熱交換段ではマイナス40℃からマイナス20℃の範囲の温度へ上昇させられ、前記第2主熱交換段ではマイナス5℃からプラス5℃の範囲の温度へ上昇させられ、そして前記第3熱交換段ではプラス10℃からプラス25℃の範囲の温度へ上昇させられ、
複数の前記第1主熱交換段が並列に設けられており、
複数の前記第2主熱交換段が並列に設けられ、前記複数の第1主熱交換段のそれぞれが対応する記第2主熱交換段と連通しており、
複数の前記第3熱交換段が並列に設けられ、
前記複数の第2主熱交換段のそれぞれからの加温された前記天然ガスが共通の分配管へ流入し、前記天然ガスが前記分配管から前記複数の第3熱交換段へ分配され、
前記無限回路は、前記副熱交換器を通過する際に生成される部分的に気化した熱交換媒体から液体を分離する液体−蒸気分離容器を更に備え、
前記無限回路は、分離された液体を前記回収容器へ戻し、蒸気を前記主熱交換段に流す、方法。
【請求項2】
それぞれの主熱交換段は凝縮性の熱交換媒体によって加温されているか、又は前記第1主熱交換段と前記第2主熱交換段は凝縮性の熱交換媒体によって加温され前記第3主熱交換段は当該第3主熱交換段で相を変化させない液状媒体によって加温されており、
凝縮性の熱交換媒体によって加温されるそれぞれの主熱交換段では、熱交換媒体は、当該主熱交換段に加えて、
前記主熱交換段から凝縮された熱交換媒体を回収するための回収容器と、
前記凝縮された熱交換媒体を再気化させるための少なくとも1つの副熱交換器と、
前記凝縮された熱交換媒体の流れを加圧するためのポンプであって前記回収容器からの出口と前記副熱交換器の中間に設置されているポンプと、
を備える無限回路を流されており、
前記天然ガスは、前記第1主熱交換段ではマイナス40℃からマイナス20℃の範囲の温度へ上昇させられ、前記第2主熱交換段ではマイナス5℃からプラス5℃の範囲の温度へ上昇させられ、そして前記第3主熱交換段ではプラス10℃からプラス25℃の範囲の温度へ上昇させられ、
複数の前記第1主熱交換段が並列に設けられており、
複数の前記第2主熱交換段が並列に設けられ、
数の前記第3熱交換段が並列に設けられ、前記複数の第2主熱交換段のそれぞれが前記複数の第3熱交換段と連通しており、
前記複数の第1主熱交換段のそれぞれからの加温された前記天然ガスが共通の分配管へ流入し、前記天然ガスが前記分配管から前記複数の第2主熱交換段へ分配され、
前記無限回路は、前記副熱交換器を通過する際に生成される部分的に気化した熱交換媒体から液体を分離する液体−蒸気分離容器を更に備え、
前記無限回路は、分離された液体を前記回収容器へ戻し、蒸気を前記主熱交換段に流す、方法。
【請求項3】
前記熱交換媒体の組成は、それぞれの主熱交換段で同じであり、前記直列になったそれぞれの主熱交換段の前記天然ガスの流出温度に要求される勾配を与えるために異なった凝縮圧力が採用されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第3熱交換段での前記相を変化させない液状媒体は、水又は水とグリコールの混合液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記凝縮性の熱交換媒体はプロパンである、請求項1乃至の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1主熱交換段を含んでいる熱交換回路及び前記第2主熱交換段を含んでいる熱交換回路は、共通の回収容器を共用している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1主熱交換段を含んでいる熱交換回路及び前記第2主熱交換段を含んでいる熱交換回路は、海水によって加温される副熱交換器を採用している、請求項1乃至の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記海水は開サイクルを流れている、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1主熱交換段を含んでいる熱交換回路は、当該回路に掛かる熱負荷を賄うために、2つ又はそれ以上の副熱交換器を並列に採用している、請求項1乃至の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第3主熱交換段は、前記天然ガスを所望の温度へ加温するのに要求される熱負荷の5%又はそれ以下を賄っている、請求項1乃至の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の第1主熱交換段の数が4であり、前記複数の第3熱交換段の数が2である、請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスを過熱流体に変換するための方法と装置に関する。本方法及び装置は、船舶又は他の外洋航行船、例えばFSRU(浮体式貯蔵再ガス化ユニット)での船上使用にとりわけ適している。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、好都合にも、液体状態で貯蔵及び輸送される。とはいえ、それはガス状態で使用されるのが一般的である。従って、大容積の液化天然ガスを、典型的に天然ガスの臨界圧力より下では気体であるが臨界圧力より上の圧力では時に流体である過熱流体に、変換する必要がある。
【0003】
米国特許第6945049号には、液化天然ガスを気化させるための方法と装置が開示されている。液化天然ガスは、気化を達成する第1熱交換器と、蒸気の温度を大凡周囲温度又は周囲温度より僅かに低い温度へ上昇させる第2熱交換器に、ポンプで通される。第1熱交換器は、閉サイクルを流れるプロパンの様な熱交換流体によって加温される。プロパンは、第1熱交換器内でガス状態から液体状態に変化し、典型的には海水の流れによって加温されている複数の熱交換器内で再び気体に変換される。第2熱交換器内で、気化器天然ガスは蒸気の流れによって加温される。
【0004】
5℃より高い温度、例えば10℃から25℃程度の温度であることを要求される天然ガスについては、加温方法及び加温装置に対する特定の要請がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6945049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこれらの要請に応えることを目指した方法と装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、液化天然ガスを5℃より高い温度を有する過熱流体に変換する方法において、加圧下の天然ガスを、直列になった第1、第2、及び第3の熱交換段の列に通し、その中で天然ガスを加温させる段階を備える方法が提供されている。
【0008】
本発明は、更に、液化ガスを5℃より高い温度を有する過熱流体に変換するための装置において、直列になった第1、第2、及び第3の主熱交換器段の列を備える装置を提供している。
【0009】
天然ガスの流れの方向に関して、熱交換段の最上流は第1熱交換段であり、中間は第2熱交換段であり、最下流は第3熱交換段であると理解されたい。それぞれの主熱交換部は個別の熱交換器を備えているのが好適である。
【0010】
それぞれの主熱交換段は、凝縮性の熱交換媒体によって加温されている。熱交換媒体の組成は、それぞれの主熱交換段で同じとし、直列になったそれぞれの主熱交換段の天然ガス流出温度に要求される勾配を与えるために異なった凝縮圧力が採用されていてもよい。代わりに、第1主熱交換段及び第2主熱交換段のみを凝縮性の熱交換媒体によって加温さ
せ、第3熱交換段は、閉回路内の、水、例えば海水、或いは水とグリコールの混合液の様な、第3熱交換段で相を変化させない液状媒体によって加温させてもよい。
【0011】
何れかの特定の主熱交換段を加温するのに使用される凝縮性の熱交換媒体は、主熱交換段に加えて、主熱交換器から凝縮された熱交換媒体を回収するための容器と、凝縮された熱交換媒体を再気化させるための少なくとも1つの副熱交換器と、凝縮された熱交換媒体の流れを加圧するためのポンプであって回収容器からの出口と副熱交換器の中間に設置されているポンプと、を備える無限回路を流れていてもよい。特に第1主熱交換段と第2主熱交換段は、どちらもその様な回路の一部を形成しているのが好適である。
【0012】
所望であれば、2つの熱交換回路は共通の回収容器を共用していてもよい。第1主熱交換段を含んでいる熱交換回路内の副熱交換器は、海水によって加温されていてもよい。第2主熱交換段を含んでいる熱交換回路内の副熱交換器もそうであってよい。
【0013】
第3主熱交換段を加温するのに凝縮性の熱交換媒体が採用されるなら、第3主熱交換段は、以上に説明されている種類の熱交換回路の一部を形成することになろう。この熱交換回路の副熱交換器は、閉回路を流れている水又は水とグリコールの混合液であって、例えば機関から又は燃焼ガスからの廃熱を捕捉するのに使用された水又は水とグリコールの混合液の加温源によって加温されるのが好適である。容易に使える廃熱がないなら、熱ポンプを使用して、流れている液体(水又は水‐グリコール混合液)の温度を所望のより高い温度へ上昇させ、そうして熱交換回路内の熱交換媒体の必要な加温が提供されるようにしてもよい。好適さは劣るが或る代わりのやり方は、ボイラーを運転して蒸気を上昇させ、得られる蒸気を用いて熱交換媒体の温度を上昇させるというものである。典型的に、第3熱交換器は、それら主熱交換段に掛かる総負荷の多くて5%しか賄わず、従ってこの加温の運転費用は低く抑えられている。
【0014】
典型的に、第1熱交換器を含んでいる熱交換回路は、自身に掛かる熱負荷を賄うために2つ又はそれ以上の副熱交換器を並列に採用していてもよい。熱交換回路のどれも、特に第1主熱交換段を含んでいる熱交換回路及び第2主熱交換段を含んでいる熱交換回路では、熱交換媒体にはプロパンが好適な選定である。プロパンは商業的に容易に入手でき、3つの主熱交換器それぞれでの凝縮温度を−40℃から+25℃の範囲で選択できるようにする熱力学的特性を有している。他の熱交換流体が、プロパンの代わりに又はプロパンと混合して使用されてもよいであろう。その様な代替又は追加の熱交換流体は、エタン冷媒、ブタン冷媒、及びフルオロカーボン冷媒、具体的にはR134(a)を備える。
【0015】
第1熱交換回路は、典型的に、天然ガスを−40℃から−20℃の範囲の温度へ上昇させる。第2熱交換回路は、典型的に、天然ガスを−5℃から+5℃の範囲の温度へ上昇させる。第3熱交換回路は、天然ガスを、その所望される最終温度、典型的には、+10℃から+25℃程度の温度へ上昇させる。
【0016】
所望であれば、天然ガスの最大供給速度によっては、本発明による方法及び装置は、前記熱交換段の列について複数の列を並列に採用することもできるであろう。
別の代わりのやり方は、2つの列が第3主熱交換段を共用するというものである。1つの例では、4つの列が2つの第3主熱交換段を共用している。概して、任意の数の前記列が任意の数の第3熱交換段を共用していてもよい。
【0017】
更に別の代わりのやり方は、2つの列が第2主熱交換段及び第3主熱交換段を共用するというものである。或る別の例では、並列になった4つの主熱交換段が、第2主熱交換段と第3主熱交換段の第1の対及び第2の対と連通している。概して、任意の数の前記列が任意の数の第2熱交換段及び第3熱交換段を共用していてもよい。
【0018】
所望であれば、或る列が別の列と天然ガスをやり取りすることもできるであろう。
本発明による装置は、海洋航行船、例えばいわゆるFSRU(浮体式貯蔵再ガス化ユニット)に船上設置することができる。
【0019】
熱交換回路のうち何れか又は全ての回路内の熱交換媒体は、各々の単数又は複数の副熱交換器内で部分的に気化されてもよい。部分的に気化される場合、残留液体を、得られた蒸気から、例えば、適した液体‐蒸気分離手段を装備した分離容器内で、分離させてもよい。
【0020】
本願発明の実施形態は、例えば、以下の通りである。
[実施形態1]
液化天然ガスを5℃より高い温度を有する過熱流体に変換する方法において、加圧下の前記天然ガスを、直列になった第1、第2、及び第3の熱交換段の列に通し、その中で前記天然ガスを加温させる段階を備えている方法。
[実施形態2]
それぞれの主熱交換段は、凝縮性の熱交換媒体によって加温される、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
前記熱交換媒体の組成は、それぞれの主熱交換段で同じであり、前記直列になったそれぞれの主熱交換段の前記天然ガスの流出温度に要求される勾配を与えるために異なった凝縮圧力が採用されている、実施形態2に記載の方法。
[実施形態4]
前記第1主熱交換段と前記第2主熱交換段は、凝縮性の熱交換媒体によって加温され、前記第3熱交換段は、当該第3熱交換段で相を変化させない液状媒体によって加温される、実施形態1に記載の方法。
[実施形態5]
前記の相を変化させない液状媒体は、水又は水とグリコールの混合液である、実施形態4に記載の方法。
[実施形態6]
前記凝縮性の熱交換媒体はプロパンである、実施形態2から5の何れか1項に記載の方法。
[実施形態7]
凝縮性の熱交換媒体によって加温されるそれぞれの主熱交換段では、前記熱交換媒体は、前記主熱交換段に加えて、前記主熱交換器から凝縮された熱交換媒体を回収するための容器と、前記凝縮された熱交換媒体を再気化させるための少なくとも1つの副熱交換器と、前記凝縮された熱交換媒体の流れを加圧するためのポンプであって前記回収容器からの出口と前記副熱交換器の中間に設置されているポンプと、を備える無限回路を流されている、実施形態2から6の何れか1項に記載の方法。
[実施形態8]
2つの熱交換回路が共通の回収容器を共用している、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]
前記第1主熱交換段を含んでいる前記熱交換回路及び前記第2主熱交換段を含んでいる前記熱交換回路は、海水によって加温される副熱交換器を採用している、実施形態7又は8に記載の方法。
[実施形態10]
前記海水は開サイクルを流れている、実施形態9に記載の方法。
[実施形態11]
前記第3主熱交換器を加温するための熱エネルギーは、廃熱から回生させるか又は熱ポンプによって発生させている、実施形態5に記載の方法。
[実施形態12]
前記の相を変化させない液状媒体は閉サイクルを流れている、実施形態5又は11に記載の方法。
[実施形態13]
前記第1熱交換器を含んでいる前記熱交換回路は、当該回路に掛かる前記熱負荷を賄うために、2つ又はそれ以上の副熱交換器を並列に採用している、実施形態7から9の何れか1項に記載の方法。
[実施形態14]
前記天然ガスは、前記第1主熱交換段ではマイナス40℃からマイナス20℃の範囲の温度へ上昇させられ、前記第2主熱交換段ではマイナス5℃からプラス5℃の範囲の温度へ上昇させられ、そして前記第3熱交換段ではプラス10℃からプラス25℃の範囲の温度へ上昇させられる、上記実施形態の何れか1項に記載の方法。
[実施形態15]
前記第3主熱交換段は、前記天然ガスを所望の温度へ加温するのに要求される前記熱負荷の5%又はそれ以下を賄っている、上記実施形態の何れか1項に記載の方法。
[実施形態16]
液化ガスを5℃より高い温度を有する過熱流体に変換するための装置において、直列になった第1、第2及び第3の主熱交換器段を備えている装置。
[実施形態17]
複数の前記列を並列に採用している、実施形態16に記載の装置。
[実施形態18]
2つの前記列が第3主熱交換段を共用している、実施形態17に記載の装置。
[実施形態19]
2つの前記列が第2主熱交換段及び第3主熱交換段を共用している、実施形態17に記載の装置。
[実施形態20]
任意の数の前記列が、任意の数の前記第3主熱交換段を共用している、実施形態17に記載の装置。
[実施形態21]
任意の数の前記列が、任意の数の第2主熱交換段及び任意の数の第3主熱交換段を共用している、実施形態17に記載の装置。
[実施形態22]
海洋航行船に船上設置された、実施形態14から17の何れか1項に記載の装置。
これより本発明による方法及び装置を一例として添付図面を参照しながら説明してゆく。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による第1の装置の系統図である。
図2図1に示されている装置の略図である。
図3】本発明による第2の装置の略図である。
図4】本発明による第3の装置の略図である。
図5】本発明による第1の装置の或る代替型の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、導管2にはそれに沿ってLNGポンプ4が配置されている。ポンプ4には、使用者の需要次第で、LNGの圧力を100バール又はそれ以上へ上昇させる能力があってもよい。導管2は、その内方の端が、没液LNGポンプ(図示せず)を有する熱絶縁貯蔵槽(図示せず)と連通している。没液LNGポンプは、運転時、LNGを導管2へ移送することができる。
【0023】
ポンプ4の出口は、LNGの流れを加温するための本発明による装置と連通している。装置と貯蔵槽は、典型的には、例えばいわゆるFSRU(浮体式貯蔵再ガス化ユニット)であるとされている海洋航行船に船上設置されている。時により、天然ガスを、高圧且つ非極低温の温度、本発明の場合には+15℃を下らない温度で、装置から送達する必要がある。図1に示されている装置は、天然ガスを、選定された圧力、速度、及び温度で、送達させられる。この装置は、第1主熱交換器10と、第2主熱交換器12と、第3主熱交換器14を含んでいる。第1主熱交換器10、第2主熱交換器12、及び第3主熱交換器14は、第1熱交換回路16、第2熱交換回路18、及び第3熱交換回路20それぞれを流れる凝縮性の熱交換流体によって加温される。熱交換回路16、18、及び20は、どれも無限であるが、それらの回路には共通のパイプライン22から熱交換流体が液体状態で送給されている。
【0024】
第1熱交換回路16は、パイプライン22から、熱交換液体の初回分と追加分を受け入れる熱交換液体槽24を含んでいる。液体ポンプ26は、熱交換液体を槽24から引き出し、それを2つの並列の第1副熱交換器28及び30へ通すように作動する。熱交換液体は、それが熱交換器28及び30を通過してゆく際に部分的に気化する。得られる、部分的に気化した熱交換液体は、適したデミスタ或いは他の液体‐蒸気分離手段36を備える液体‐蒸気分離容器34へ流れてゆく。分離された液体は回収槽24へ戻される。蒸気は、第1主熱交換器10を通って天然ガスの流れに向流又は並流に流れる。
【0025】
第1主熱交換器10には、当該熱交換器を通って流れる液化天然ガス全てを気化させ、それを典型的には−20℃から−40℃の範囲の選定された温度へ過熱するのに十分な熱交換流体の流れが提供されている。但し、理解しておくべきこととして、ポンプは典型的に液化天然ガスの圧力をその臨界圧力より上に、例えば約100バールへ上昇させるものであり、その場合、天然ガスは第1主熱交換器10へ超臨界流体として進入し、従って厳密に言えばそれは気化していないわけである。熱交換回路内の圧力は、熱交換流体の温度、第1主熱交換器10に掛かる熱負荷、第1主熱交換器10の提供されている熱交換表面積、第1主熱交換器10内の被冷却流と被加温流の間の温度差、及び熱伝達率に従って、自ずと適応してゆく。概して、冷却回路16は、装置全体に掛かる熱負荷の70%から80%を賄うことを要求されている。2つの副次的な第1交換器28及び30が使用されるのはこの理由による。
【0026】
第1熱交換媒体液はプロパンである。プロパンは商業的に容易に入手でき、第1熱交換器内の凝縮温度を−20℃から0℃の範囲で変化させるか又は「自己適応」させられる熱力学的特性を有している。
【0027】
熱交換媒体又は熱交換液体は、典型的には、第1副熱交換器28及び30内で、第1本管40から取られ第2本管42へ戻される海水の流れとの間接的な熱交換で気化する。海水は典型的には開回路を流れている。海水の温度は時節的又は日周的に5℃から13℃の範囲で変化する可能性があり、典型的には第1副熱交換器28及び30を通過することによって凡そ7℃から9℃冷却されることになろう。海水は、当然ながら、船又は他の海洋航行船の船上で容易に入手できる。
【0028】
液体が液体‐蒸気分離容器34から槽24へ戻るのに通る導管46には流量制御弁44が設置されている。流量制御弁44は容器34内の液位検出器48と作動的に関連付けられており、弁の位置は容器34内に一定の液体プロパン液位が維持されるように必要に応じて調節される。
【0029】
第2熱交換回路18は、第1のものと同様である。それは、液状熱交換媒体回収槽54を含んでおり、槽では液体がポンプ56の運転によって引き出される。ポンプは、液状熱交換媒体を単一の第2副熱交換器58を通して送り、当該第2副熱交換器内で媒体は部分的に気化する。得られる、部分的に気化した熱交換媒体は、デミスタパッド66を収容している液体‐蒸気分離容器64へ流入する。液体を分離させた蒸気は、第2主熱交換器12を通って天然ガスの流れに向流乃至並流に流れ、天然ガスを更に加温しながら、蒸気自体は第2主熱交換器12内で凝縮してゆく。典型的に、天然ガスは、第2主熱交換器12内で約0℃の温度へ上昇させられる。熱交換媒体は第2主熱交換器12内で凝縮し、得られる凝縮物が回収槽54へ戻る。容器64内で蒸気から分離した液体は、導管68を通って回収槽54へ戻される。導管68には流量制御弁70が設置されている。流量制御弁70は、容器64内の液位センサ72からの信号に応答して、当該容器内の液状冷媒の一定液位が維持されるようにする。第2副熱交換器は本管40からの海水を用いて加温される。得られる、冷却された海水は本管42へ戻される。
【0030】
第2熱交換回路18内で使用される熱交換媒体は、第1熱交換回路16内で使用されているものと同じ熱交換媒体であるのが好適である。よって、それはプロパンであってもよい。プロパンは−5℃から+5℃で容易に凝縮する。第2熱交換回路18内の凝縮圧力は第1熱交換回路16内より高い。典型的には、第2熱交換回路18は、装置に掛かる総熱負荷の15%から20%を賄っている。
【0031】
第3熱交換回路20は、第1熱交換回路16及び第2熱交換回路18と同様である。それは、始動に先立ちパイプライン22から液状熱交換媒体が送給される液体回収槽74を含んでいる。ポンプ76は槽74から液体を引き出し、それを第3副熱交換器78に通す。液状熱交換媒体が熱交換器78を通されると、その結果、当該媒体の部分的気化が起こる。得られる、部分的に気化した液体は、デミスタ86を装備した液体‐蒸気分離容器8
4へ流入する。液体は容器84内で蒸気から分離される。分離された蒸気は、第3主熱交換器14を通って天然ガスと向流又は並流熱交換をしながら流れ、天然ガスの温度を所望の送達温度、例えば+15℃へ上昇させる。蒸気状の熱交換媒体は熱交換器14内で凝縮される。得られる凝縮物は回収槽74へ流れ戻る。分離された液体は、容器84から導管88を通って回収槽74へ流れる。導管88には流量制御弁90が設置されている。弁90は、容器84内の液位センサ92と作動的に関連付けられており、即ち、本装置の運転中は液状熱交換媒体の一定液位が容器84内に維持され得るような仕組みになっている。典型的には、第3副熱交換器78を加温するのに海水は使用されていない。その代わりに、廃熱を捕捉するのに使用された温水又は水‐グリコール混合液の加温源が採用されていてもよい。水は、パイプライン94を通って第3副熱交換器78へ流れ、そこで流れを下って冷却された後、第3副熱交換器78を出て別のパイプライン96へ流入する。パイプライン94、96は、閉回路にあってもよい。
【0032】
第3熱交換回路20に掛かる熱負荷は、典型的に、第1熱交換回路16又は第2熱交換回路18のどちらに掛かる熱負荷よりもはるかに少ない。第3熱交換回路内に採用されている液状熱交換媒体は第1熱交換回路16及び第2熱交換回路18内に採用されているものと同じであってもよい。よって、第3熱交換回路20内の熱交換媒体としてプロパンが使用されていてもよい。プロパンは、+15℃から+30℃の範囲でなお凝縮するが、但し第2熱交換回路18内より高い圧力で凝縮する。
【0033】
導管2から送達される天然ガスの温度制御は、パイプライン94の流量制御弁98の設定を、導管2の流れを下って天然ガスが第3主熱交換器14を通過した後に配置されている温度センサ100に応えて調節することによって行使される。温度が低すぎれば、弁98の設定は、弁を通る温かい加温媒体の流量を増やすように調節される。加えて、導管2の第1主熱交換器10の上流に、流量制御弁102が設けられていてもよい。弁102は、導管2の第2主熱交換器12と第3主熱交換器14の中間の位置にある温度センサ104からの信号に応えて制御されることになる。
【0034】
1つの制御戦略は、センサ104によって感知される所望の温度に対して要流量と流入海水温度を指定することである。感知温度が低くなりすぎた場合、温度信号が流量需要制御をオーバーライドし、LNGの流量を絞るように弁102の設定が調節されることになる。例えば、流入海水温度が指定されているより低いか又はLNGの流入量が指定されているより高い場合、温度センサ104は信号を送って弁102にLNG流量を絞らせる。他方で、海水流入温度が指定されているより高い場合は、LNG流量が指定されている弁通過量より上に増加されることになる。LNGの流入流量が規定されているより低い場合には、センサ104によって感知される温度はより高くなるはずであり、制御システムは、温度制御が流量制御をオーバーライドせず、センサ104によって感知される温度をより高い値へ移ってゆかせる仕組みになっている。
【0035】
図1に示されている装置には様々な変更及び修正を施すことができるであろう。具体的には、第3熱交換回路20は、典型的には、装置に掛かる総熱負荷の5%未満を賄えばよいため、当該回路は、第3主熱交換器14を加温するのに水又は水‐グリコール混合液を採用することによって単純化することができるであろう。その様な配列が図5に示されている。図5の諸部分で図1に示されている対応する部分と基本的に同じである部分は、図1と同じ参照番号で表示されており、それらの作動を理解するには図1の説明を参照されたい。
【0036】
図5を参照すると、第3熱交換回路20は、全体に亘って、水又は水‐グリコール混合液を熱交換媒体として配備している。第3主熱交換器14又は第3副熱交換器78のどちらでも液体の相変化はない。相対的に冷たい水は、第3主熱交換器14から容器74に回
収され、ポンプ76によって、第3副熱交換器78に通され、その中で相対的に温かい水又は他の加温媒体との熱交換によって再加温される。再加温された水は、天然ガスを約+10℃から+25℃の要求温度まで加温するために、直接に第3副熱交換器78から第3主熱交換器14へ流れる。水は熱交換によって冷却され、回収槽74へ回される水を形成する。当該第3熱交換回路20は、図1に示されている装置の対応する回路20より熱効率的には劣るが、第3熱交換回路20に掛かる熱負荷は相対的に低いことから、装置全体としての熱効率に対する全般的な影響は小さい。
【0037】
図1に示されている装置に対する更なる修正は、2つの回収槽24と54を使用する代わりに、単一の共通回収槽(図示せず)が代わりに使用されてもよいというものである。
これより図2を参照すると、図1に示されているのと同じ装置の簡略図が示されている。同種の簡略化は、図1又は図5に示されている装置より大きいLNG流量に対応することを意図した装置を示している図3及び図4に使用されている。
【0038】
図3は、本発明による装置で、第1熱交換器10と第2熱交換器12と第3熱交換器14の列について複数の列を採用している装置を表している。図3に示されている装置は、4つの第1主熱交換器10を並列に採用している。それぞれの第1主熱交換器10が第2主熱交換器12と連通している。従って、4つの第2主熱交換器12が並列に設けられている。この実施例では、第3主熱交換器14を、図1に示されている対応する主熱交換器14に掛かるよりも相対的に高い熱負荷で運転させるのが望ましい。従って、図3に示されている装置には、たった2つの第3主熱交換器14が並列に設けられている。第2主熱交換器12のそれぞれからの加温された天然ガスは、共通の分配管300へ流入する。天然ガスはそこから2つの第3主熱交換器14へ分配される。当該主熱交換器のそれぞれは、図1に示されている装置の対応する熱交換器と同じ方式で運転され同じ方式で加温が提供される。
【0039】
図4は、更なる修正を示している。今回もやはり4つの第1主熱交換器10が並列に設けられているが、これらの熱交換器のそれぞれは、加温された天然ガスを共通の分配管400へ導き、すると分配管は加温された天然ガスを、2つの第2主熱交換器12が並列になった配列へ導く。天然ガスは、第2主熱交換器12の両方からそれら自身の第3主熱交換器14へ流れる。従って、2つの第3主熱交換器14が並列に設けられている。主力の第1主熱交換器10と、第2主熱交換器12及び第3主熱交換器14は、図1に示されている装置の対応する熱交換器と同種であってもよい。
【0040】
図2図3、及び図4に示されている、主熱交換器10、12、及び14の選択された異なった組合せを用いた列、及び各々の熱交換回路16、18、及び20は、共に、天然ガス供給装置全体の冗長性についての必要性に従った寸法とすることができる。
【0041】
本発明による方法及び装置は、(単数又は複数の)第3主熱交換器14の使用が運転効率に多大な利得をもたらし得るという点でとりわけ有利である。第1主熱交換器10及び第2主熱交換器12に掛かる熱負荷を最大化でき、熱交換回路16及び18は開サイクルを流れる海水によって加温させ、熱交換回路20は閉サイクルの加温媒体によって加温させることができる。
【符号の説明】
【0042】
2 導管
4 LNGポンプ
10 第1主熱交換器
12 第2主熱交換器
14 第3主熱交換器
16 第1熱交換回路
18 第2熱交換回路
20 第3熱交換回路
22 パイプライン
24 熱交換液体槽、回収槽
26 液体ポンプ
28、30 第1副熱交換器
34 液体‐蒸気分離容器
36 デミスタ又は液体‐蒸気分離手段
40 第1本管
42 第2本管
44 流量制御弁
46 導管
48 液位検出器
54 液状熱交換媒体回収槽
56 ポンプ
58 第2副熱交換器
64 液体‐蒸気分離容器
66 デミスタパッド
68 導管
70 流量制御弁
72 液位センサ
74 液体回収槽
76 ポンプ
78 第3副熱交換器
84 液体‐蒸気分離容器
86 デミスタ
88 導管
90 流量制御弁
92 液位センサ
94、96 パイプライン
98、102 流量制御弁
100、104 温度センサ
300、400 分配管
図1
図2
図3
図4
図5