【文献】
The relation Between Particle Structure and the Peel Strength of Vinyl Acetate/Acrylate Core-Shell Latexes Laminating Adhesives,Polymer-Plastics Technology and Engineering,2011年12月29日,vol. 51, 2012,p.35-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
家具業界及び関連する業界では、木材;冷間圧延鋼及びアルミニウム等の金属;布地;紙;皮革;発泡体;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)等のプラスチック、ガラス繊維、並びに例えばカウンタートップ用に高圧積層体を構築するために用いられる材料;を含む広範な基材を接着させなければならない。
【0003】
本明細書で使用するとき、コンタクト型接着剤とは、典型的に2つの基材をくっつける最高24時間前に、接合する両基材に塗布し、しばらくの間乾燥させなければならない接着剤を指す。いったん基材をくっつけると、非常に速やかに固着が形成されるので、通常、長時間にわたって圧力を印加する必要はない。一部のコンタクト型接着剤は、基材に塗布された後20秒〜5分以内にハンドリング強度を示す固着基材を提供することができる。すなわち、基材を結合し、破壊を引き起こす可能性のある新たなボンドラインにおいてその後の力に抵抗するのに十分な強度の固着を形成する。塗布及び固着直後に所望のハンドリング強度を提供する接着剤は、典型的に、「速硬化」又は「速硬化性」接着剤と呼ばれる。接着剤が速硬化接着剤であるかどうかを決定するために、ピンチボンド試験を利用してよい。
【0004】
ピンチボンド又はナイフエッジボンドは、接着剤製剤が、家具で用いられる発泡ゴムクッションの製造中に、次々に直ちにハンドリング及び加工することができる所望のハンドリング強度特性を示すかどうかを評価するために用いられる。前者では、いったん固着されたらストレス下でボンドラインが生じるが、後者では生じないので、このようなボンドは、典型的な固着を形成するために必要であるよりも強度の増強が必要である。
【0005】
従来、発泡体及び家具の製造では、塩素化溶媒及び低引火点有機溶媒等の有機溶媒に溶解又は分散している一液型コンタクト型接着剤が広く用いられていた。このような一液型コンタクト型接着剤は、便利なことに、単一源(すなわち、容器)を用いて塗布することができる。しかし、環境上の理由により、有機溶媒系接着剤組成物から水系又は水分散接着剤組成物にシフトすることが望まれている。
【0006】
速硬化接着剤として用いることができる水系接着剤を見出すことが望ましい。しかし、それを一液型で提供しようとする試みは、業界では少しずつしか受け入れられていない。その理由は、従来の有機溶媒系接着剤よりも乾燥時間が長いことに加えて、強度増強の速度が比較的遅いためである。このような制約を克服するために、噴霧の数秒間以内に高い接着強度を示す二液型(すなわち、2つの別々の容器から同時に噴霧する)水分散接着剤系が開発された。接着剤組成物は、二液型系の一部である。クエン酸、乳酸、酢酸、又は硫酸亜鉛等の外部凝固剤は、典型的に、第1の部分に対して所定の比で第2の部分として用いられる。しかし、このような二液型接着剤系は、完全に満足のいくものではない。同時噴霧装置は高価であり、この装置は、メンテナンスを必要とし、塗布中に2つの部分(凝固剤及び接着剤組成物)の比を監視しなければならない。
【0007】
米国特許第6,086,997号(Patelら)は、接着剤成分とホウ酸とを含む、保存安定性速硬化性一液型水性コンタクト型接着剤組成物について記載している。ホウ酸は、内部凝固剤として利用され、溶液の形態で添加してもよく、その場で生成されてもよい。接着剤成分は、少なくとも1つのポリクロロプレンを含む。接着剤成分は、任意に、ポリクロロプレンと天然ゴム、合成ゴム、又はこれらの組み合わせとの混合物を含んでよい。接着剤成分は、アクリレートを実質的に含まず(すなわち、5重量%以下しか含有しない)、また、内部凝固剤としてグリシン等のアミノ酸を含有してよい。ホウ酸の添加により、優れた貯蔵寿命を維持しながら、ポリクロロプレン接着剤組成物のpHを低下させることができると開示されている。「貯蔵寿命」は、それを超えると、接着剤組成物が、噴霧コーティング方法によって均質で均一な液体ブレンドとして有用に又は容易に塗布することができないように、実質的に凝固、凝結、カードリング、分離、沈降、又は容易に混合できないか若しくは容易には分散できない層を形成してしまう期間として定義される。すなわち、優れた貯蔵寿命を有する組成物は、保存安定性である。「保存安定性である」とは、室温(25℃、S.T.P.)で保存したとき、水性組成物が約4ヶ月を超える貯蔵寿命を有することを意味すると定義される。「速硬化性」は、固着される基材に接着剤を塗布した後約10分間以内に指圧を印加(すなわち、フィンガーボンド)したときに固着を形成するのに十分な強度を発現する接着剤組成物を指すと記載される。一部の用途、例えば、家具業界における発泡体の固着の場合、速硬化性接着剤は、望ましくは、塗布後90秒間以内にフィンガーボンドを発現する。組成物は、組成物のpHが低い(好ましくは約7〜約9.5の範囲である)ことにより、速硬化性になると開示されている。一液型速硬化性保存安定性水性接着剤組成物は、1つの容器から噴霧することによって塗布してよい。
【0008】
米国特許第5,543,455号(Shah)には、A)(A+Bに基づいて)約50〜約80重量%固形分の乳化アクリルポリマーであって、約5〜約50の酸価、及びモノマー固形分に基づいて約0.5〜約5重量%のN−メチロールアクリルアミド含量を有する、アクリルポリマーと;B)(A+Bに基づいて)約20〜約50重量パーセント固形分のエラストマーのラテックス、例えば、天然ゴム、ネオプレン等のゴムラテックスと;C)A)及びB)の水性分散液を安定化させるのに十分な量のアニオン性界面活性剤との水性エマルションを含む水性接着剤が記載されている。N−メチロールアクリルアミドは、必須モノマーであると開示されている。エラストマーのラテックスB)は、アクリル樹脂単独ではラテックス接着剤として優れた固着が得られないので、優れた固着を得るために必要であると言われている。また、主にネオプレンに基づくコンタクト型接着剤では優れた高温接着性が得られないので、アクリルポリマーA)を約50〜約80重量%のレベルで用い、エラストマーのラテックスB)を約20〜約50重量%で用いる(A+Bに基づいて)と教示されている。水性組成物の最終pHは、約7〜約11であると開示されている。
【0009】
欧州特許出願公開第2246403 A1号(Motzetら)には、+10℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する架橋性バインダー樹脂と、任意に架橋剤と、任意に粘着付与剤及び/又は可塑剤とを含む水性製剤であって、前記製剤の揮発性有機化合物(VOC)レベルが0.5重量%未満である、水性製剤として提供されるフロア又はコンタクト型接着剤が記載されている。架橋性バインダー樹脂は、好ましくは、+10℃〜−90℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有しなければならず、更に、好ましくは、カルボニル官能性(メタ)アクリレート、又はアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマー及び/若しくはビニルモノマーとジアセトンアクリルアミド(DAAM)モノマーとを含むモノマー混合物から調製されるビニルコポリマーを含まなければならないと述べられている。6.9以上のpH値を有するアクリル系カルボニル官能性バインダーエマルションが例示されている。これらを用いて、7.2以上のpH値を有する接着剤組成物が調製された。
【0010】
「コア−シェル」エマルション重合プロセスによって調製されるアクリルポリマーに基づく一液型積層接着剤組成物が、米国特許第4,948,822号(Iovine及びWalker)に開示されている。この接着剤組成物は、潜在的に反応性である官能性コモノマー(例えば、グリシジルメタクリレート)がコアに配置され、第1のコモノマーと反応性である第2の官能性コモノマーがシェルに配置されている、コア及びシェルを含むアクリルコポリマーに基づいている。ここに記載されている接着剤で使用されるアクリルポリマーを調製するのに有用なモノマーは、コア及びシェルのポリマーが両方とも約−10〜−35℃のTgを有するコア−シェルポリマーを提供するように選択される。ポリマーの調製において使用されるコアモノマーのシェルモノマーに対する重量比は、約2:1〜5:1(67〜83重量%)の範囲であると記載されている。典型的に、接着剤は、フィルムにコーティングし、室温で乾燥(又は中庸熱で乾燥)させる。次いで、接着剤がコーティングされたフィルムを、「ホットニップ」ローターに通すことによって、所望の基材(例えば、コロナ処理ポリエチレン又はポリプロピレンフィルム、又は他の薄板)に積層させる。得られる積層体は、ポリマー固化又は硬化により室温静置において強度を得る即時固着を形成すると記載されている。積層プロセスにおいて使用される「ニップ」工程から発生する熱は、官能性コモノマーを互いに反応させて、それにより、ポリマーの固化、イオン結合、又は架橋を開始させるのに十分であると理解される。コア−シェル技術は、反応性が望まれる時間になるまで反応性官能性コモノマーを有効に分離しておくために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示のいずれかの実施形態が詳細に説明される前に、本開示は、以下の記述で説明される構成の詳細及び構成要素の配置の適用に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、且つ様々な方法で実践又は実行することができる。また、本明細書で使用する語法及び専門用語は、説明を目的としたものであり、発明を限定するものとして見なされるべきでない点は理解されるべきである。「含む(including)」、「備える・含む(comprising)」、又は「有する(having)」、及びこれらの変化形は、その後に列記される要素及びそれらの均等物、並びに更なる要素を包含するものである。本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリル型モノマー及びポリマーの両方を含むことを意図する。(メタ)アクリルモノマーは、本明細書では(メタ)アクリレートとも呼ばれる(メタ)アクリルエステルと、それが由来する(メタ)アクリル酸の両方を含む。本明細書に引用される任意の数値的な範囲には、低位の値から高位の値までの全ての値を含む。例えば、濃度範囲が1%〜50%として示される場合、2%〜40%、10%〜30%、又は1%〜3%などといった値が明示的に列挙されることが意図される。これらは何が具体的に意図されているのかの例に過ぎず、列挙された最も低位の値と最も高位の値との間並びにこれらを含む、数値の全ての可能性のある組み合わせが、本明細書において明確に記載されていると考慮される。
【0022】
コア−シェルポリマー粒子
本開示の速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションは、本明細書でコア−シェルポリマー又はコア−シェルポリマー成分とも呼ばれる、コア−シェルポリマー粒子を含有する。
【0023】
コア−シェルポリマーは、内側ポリマーコア成分と外側ポリマーシェル成分とを含む。両成分は、1以上のエチレン性不飽和モノマーの共重合から調製してよい。このようなモノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸及びそれに対応するエステルを含む。このようなモノマーの一例は、(メタ)アクリルモノマーである。
【0024】
ポリマーコア成分
内側ポリマーコア成分の調製において有用なエチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸と、C1〜C20アルコールとも呼ばれる、1〜20個の炭素原子を有するアルコールとの反応生成物である。本開示において有用なエチレン性不飽和エステルモノマーは、(メタ)アクリレートモノマーを含む。このようなモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メチル)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルマレエート、n−ブチルマレエート、シクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、カルボジイミド(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマーの調製に有用なエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、エタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、及びケイ皮酸に加えて、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩を含むこれら酸の塩類が挙げられるが、これらに限定されない。更に、これらモノマーは、コア成分を調製するために上述のエチレン性不飽和エステルモノマーと共重合してよい。
【0026】
芳香環の外部にエチレン性不飽和部位を含有する芳香族化合物をコモノマーとして用いてよい。このような材料の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−フェニルスチレン、スチレンスルホン酸、パラ−アセトキシスチレン、ビニルトルエン、及びビニルナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本開示で用いてよいエチレン性不飽和エステルの別の分類は、ビニルエステルである。1〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルn−ブチラート、ラウリン酸ビニル、カプリン酸ビニル(n−デカノエート)、及びステアリン酸ビニル(n−オクタデカノエート)が挙げられるが、これらに限定されない。また、バーサチック酸又はビニルネオデカノエートと呼ばれる分岐ビニルエステルも含まれる。これらの例としては、商品名「VEOVA 9」及び「VEOVA 10」(Momentive Specialty Chemicals,Incorporated(Gahanna,OH)製)として市販されているもの、及びピバル酸ビニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
また、コア成分は、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフタレート、及びアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多エチレン性不飽和官能性モノマーを含んでよい。
【0029】
ポリマーコアのモノマー成分は、得られるポリマーが、ポリマーシェル成分のガラス転移温度以上である、本明細書で「第1のガラス転移温度」と呼ばれるガラス転移温度(Tg)を示すような量が選択され、使用される。1つの実施形態では、ポリマーコア成分のTgは、Fox式を用いて計算したとき10℃以下である。
【0030】
ポリマーコア成分は、ポリマーシェル成分中に存在する任意のペンダント官能基と反応する任意のペンダント官能基を含有しない(すなわち、含まない)。「ペンダント官能基」及び「ペンダント官能性基」とは、コア及びシェル成分を調製するために用いられるモノマーの重合後に残る任意の反応基を意味する。このような基は、ポリマー鎖に沿って又はその末端に位置してよい。理論に縛られるものではないが、コア成分とシェル成分との間のこのような固着は、溶媒又は水に対する耐性を改善することができ、ゲル含量の増加によって特徴付けられ得るが、可撓性特性を低下させると考えられ、これは、家具及び発泡体の固着用途において不利であると考えられる。ポリマーコア成分内の内部架橋は、同じ効果を有すると予測される。
【0031】
ポリマーシェル成分
ポリマーシェル成分は、多エチレン性不飽和モノマーが含まれないことを除いて、ポリマーコア成分について上記したものと同じ材料から調製してよい。更に、少なくとも1つのペンダント官能基を含有するモノマーが、シェル成分の調製において含まれる。このような官能基としては、ヒドロキシ含有モノマー、例えば、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」について参照するとき、参照は、ヒドロキシル基がアルキル基に結合し得る全ての可能性に対する参照を含む);エポキシ又はグリシジル含有モノマー、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート;アルデヒド又はケトン含有モノマー、例えば、アクロレイン又はジアセトンアクリルアミド(N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)−アクリルアミド);アセト酢酸、例えば、2[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチル3−オキソブタノエート(アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)としてEastman Chemical Company(Kingsport,TN)から入手可能);並びにカルボジイミドが挙げられる。
【0032】
1つの実施形態では、シェル成分は、コア成分よりも親水性の特徴を有する。理論に縛られるものではないが、このような特徴は、乳化ポリマーコア−シェル粒子のシェル成分に対する多官能性成分の移動、及びこれらの反応に役立ち得ると考えられる。
【0033】
互いに反応しない限り、異なるペンダント官能基を有する2以上のモノマーをポリマーシェル成分の調製において用いてよい。
【0034】
ポリマーシェルのモノマー成分は、得られるポリマーが、コア成分のガラス転移温度以上である、本明細書で「第2のガラス転移温度」と呼ばれるTgを示すような量が選択され、使用される。1つの実施形態では、ポリマーシェルのTgは、Fox式を用いて計算したとき0℃以下である。
【0035】
幾つかの実施形態では、ポリマーコアは、約50重量%〜約100重量%の、1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートと、約0重量%〜約5重量%のエチレン性不飽和カルボン酸と、0重量%〜約50重量%の共重合性モノマーとの反応生成物を含む。
【0036】
幾つかの実施形態では、ポリマーシェルは、約50重量%〜約100重量%の、1〜20個の炭素を有するアルキル(メタ)アクリレートと、約0重量%〜約10重量%のエチレン性不飽和カルボン酸と、0.5重量%〜約5重量%の、ペンダント官能基を含有する共重合性モノマーと、0重量%〜約50重量%の共重合性モノマーとの反応生成物を含む。
【0037】
本開示のコア−シェルポリマーは、少なくとも25重量%のコア成分を含む。更なる実施形態では、少なくとも50重量%のコア成分を含有する。また更なる実施形態では、83重量%以下のコア成分を含有する。幾つかの実施形態では、70重量%以下のコア成分を含有する。幾つかの実施形態では、コア−シェルポリマーは、59〜65重量%のコア成分を含有する。
【0038】
多官能性成分
本開示の速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションはまた、多官能性成分を含む。多官能性成分は、ポリマーシェル成分中に存在するペンダント官能基のうちの少なくとも幾つかと反応することができる少なくとも2つの官能基を含有し、コア−シェルポリマー粒子を外的に架橋させる手段を提供する。多官能性成分の例としては、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸等の二酸の多官能性ヒドラジドが挙げられる。例としては、アジピン酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド;フマル酸ジヒドラジド;酒石酸ジヒドラジド;ピメリン酸ジヒドラジド;イタコン酸ジヒドラジド;9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸ジヒドラジド;1,14−テトラデカンジカルボン酸ジヒドラジド;1,20−イコサン二酸ジヒドラジド;バリンジヒドラジド;オルトフタル酸ジヒドラジド;イソフタル酸ジヒドラジド;テレフタル酸ジヒドラジド;セバシン酸ジヒドラジド;シクロヘキサンジカルボン酸ビス−ヒドラジド;アゼライン酸ビス−ヒドラジドが挙げられる。別の有用な分類の多官能性成分は、多官能性ヒドラジン、例えば、ジヒドラジノアルキノン、及び芳香族炭化水素のジヒドラジン、例えば、1,4−ジヒドラジンベンゼン及び2,3−ジヒドラジノナフタレンである。用いることができる他の種類の多官能性成分としては、多官能性アミン、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン;多官能性エナミン;前述の二酸に由来する多官能性アルデヒド、例えば、アジピン酸ジアルデヒド、グルタル酸ジアルデヒド、コハク酸ジアルデヒド、及びシュウ酸ジアルデヒド;多官能性アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びグリセロールが挙げられる。
【0039】
例えば、多官能性ヒドラジド、ヒドラジン、アミン、及びエナミンを用いて、ポリマーシェル成分に存在するペンダントエポキシ、グリシジル、アルデヒド、ケトン、アセト酢酸、及びカルボジイミド基と反応させてよい。ポリマーシェル成分がペンダントアセト酢酸基を含有する場合、多官能性アルデヒドを用いてよい。多官能性アルコールは、ポリマーシェル成分がカルボジイミド基を含有する場合に使用するのに好適である。
【0040】
他の実施形態では、互いに反応しない限り、2以上の異なる官能基が存在する多官能性成分を用いてよい。
【0041】
本開示の幾つかの実施形態では、互いに反応しない限り、各多官能性成分における官能基が他の多官能性成分に存在する官能基と異なる2以上の多官能性成分を用いてよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、コア−シェルポリマーのシェル成分において及び多官能性成分において有用であると記載されている様々な種類の官能基を、逆にしてもよい。すなわち、例えば、シェル成分におけるペンダント官能基は、アミンであってよく、多官能性成分における官能基は、エポキシ、グリシジル、アルデヒド、ケトン、アセト酢酸、及びカルボジイミドのうちの1以上であってよい。
【0043】
多官能性成分の量は、コア−シェルポリマーのシェル成分におけるペンダント官能基の各当量について、多官能性成分から0.5〜1.5当量の官能基が存在するように選択される。1つの実施形態では、1:1の比が用いられる。
【0044】
コア−シェルエマルションの調製
本明細書に開示するポリマーエマルションを調製するための重合プロセスは、連続モノマー添加を使用する標準的なエマルション重合手順に従って実施される。例示的な重合プロセスは、少なくとも2つの異なる段階を含む:ポリマーのコア部分用のコモノマーの第1の配合及びポリマーのシェル部分用のコモノマーの第2の配合。特定の所望の結果を得るために、当業者は、エマルション重合技術の多くのパラメータを調整することができる。また、様々な可能なスケジュールに従って反応開始剤を添加してよい。したがって、開始前に、コモノマーのうちの1以上をまず撹拌された水相中で乳化してよい。モノマーは、連続的に又は時間を少しずつずらして増量させながら添加してよい。更に、重合は、既に調製されているシードの存在下で開始させてよい。
【0045】
コア−シェルポリマーの製造において、界面活性剤系は、第2の段階、すなわち、シェルの重合中の新たな粒子形成を最小化するか又はなくすように設計することが重要である。この段階において典型的に有用な界面活性剤(すなわち、ミセル形成)は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。シェル重合段階では、界面活性剤を完全になくしてもよい。したがって、特定の重合反応順序の設計において、コア重合は、ポリマー粒子形成を促進するために実施されるべきであるが、一方、後続のシェル重合は、コア表面上におけるポリマー形成を促進すべきである。本開示において使用される多段階重合プロセスでは、このプロセスは、まずポリマーコア粒子を好ましく生成し、次いで、コアの周囲にシェルポリマーを形成するように設計される。この開示の目的のために、本明細書に記載されており、本明細書に記載する多段階プロセスによって生成される「コア−シェル」コポリマーは、コア及びシェルを有するコポリマー、またコア及びシェルと中間成分とを有するコポリマーを含むことを意図する。本開示で有用なコポリマーは全て、そこで重合される官能性コモノマーの潜在的反応性を有する。コア−シェル重合は、当業者に周知であり、例えば、米国特許第4,091,162号(Smith & McLaurin Limited)に記載されている。
【0046】
アニオン性界面活性剤は、接着剤エマルション調製において使用される。有用なアニオン性界面活性剤としては、炭素数約6〜約12のアルキル、アルキルアリール、及び/若しくはアルケニル基からなる群から選択される少なくとも1つの疎水性部分に加えて、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ポリオキシエチレンサルフェート、ポリオキシエチレンスルホネート、ポリオキシエチレンホスフェート等から選択される少なくとも1つのアニオン性基、並びに/又は、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム塩、三級アミノ塩等からなる群から選択されるこのようなアニオン性基の塩類を含む分子構造を有するもの等が挙げられるが、これらに限定されない。更に、任意の脂肪酸ソープ(例えば、アルキルスクシネート)、エトキシ化脂肪酸、及び/又はアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム塩、脂肪酸の三級アミノ塩;ジアルキルスルホスクシネート;硫酸化油。アニオン性界面活性剤の例示的な市販例としては、ラウリル硫酸ナトリウム(Stepan Chemical Coから商品名「POLYSTEP B−3」として入手可能);ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(Stepan Chemical Co.)から商品名「POLYSTEP B−12」として入手可能);及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Rhodia,Incorporatedから商品名「RHODACAL DS−10」として入手可能)が挙げられる。
【0047】
エマルションの調製において用いられる界面活性剤の合計量は、合計コア−シェルポリマー成分100重量部当たり1.5重量部以下である。幾つかの実施形態では、界面活性剤の合計量は、合計コア−シェルポリマー成分100重量部当たり1.3重量部である。幾つかの実施形態では、使用される界面活性剤の合計量は、自然界ではアニオン性である。
【0048】
幾つかの実施形態では、必要に応じて、少量(例えば、合計界面活性剤量の5重量%未満)の非イオン性界面活性剤を使用してよい。このような界面活性剤は、当業者に周知である。非イオン性界面活性剤の例示的な市販例としては、「TRITON X」シリーズの界面活性剤(オクチルフェノールエトキシレート)及び「TRITON CG 600」(ポリアルキルグルコシド)(Dow Chemical Companyから入手可能)が挙げられる。
【0049】
幾つかの実施形態では、少量(例えば、合計界面活性剤量の5重量%未満)の、モノマー混合物と共重合可能なイオン性界面活性剤が存在してもよい。イオン性共重合性界面活性剤は、共重合性モノマー混合物と反応可能な少なくとも1つの基又は唯1つの基を有する。このような反応性基としては、ビニル基、アクリレート基等のエチレン性不飽和基からなる群から選択される基が挙げられるが、これらに限定されない。共重合性イオン性界面活性剤の例示的な市販例は、スチレンスルホン酸ナトリウム(Alfa Aesarから入手可能)である。
【0050】
本開示で用いられるアクリレート接着剤ポリマーの調製において有用な重合開始剤は、熱に曝露したとき、モノマー混合物の(共)重合を開始させるフリーラジカルを発生させる反応開始剤である。水溶性反応開始剤は、エマルション重合によるアクリレートポリマーの調製に有用である。好適な水溶性反応開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物、上記過硫酸塩の反応生成物等の酸化−還元反応開始剤、並びにメタ重亜硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホキシレート、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)及びその可溶性塩類(例えば、ナトリウム、カリウム)の群から選択されるもの等の還元剤からなる群より選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。用いられるとき、反応開始剤は、接着剤中のモノマー成分100重量部に基づいて、約0.05〜約1重量部又は約0.1〜約0.5重量部含まれ得る。変換を増加させるために、反応の最後に最終酸化/還元反応開始剤対を添加してよい。
【0051】
フリーラジカル生成を促進するために触媒を用いてよい。例としては、硫酸鉄及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。
【0052】
共重合性エマルション混合物は、得られるポリマーの分子量を制御するために、任意に連鎖移動剤を更に含んでよい。有用な連鎖移動剤の例としては、四臭化炭素、アルコール、メルカプタン、例えば、イソオクチルチオグリコレート、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つから選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
上記成分に加えて、本開示の接着剤エマルション組成物に以下の添加剤を含めてもよい:ヒドロキノン等の阻害剤、顔料、染料、レオロジー調節剤、増粘剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、充填剤、防腐剤、殺生物剤、及び消泡剤。
【0054】
含まれてよい別の分類の添加剤は、腐食防止剤である。好適な例としては、金属イオン、例えば、Zn
+2(亜鉛(II))、CrO4
−2(クロム酸)、及びMoO4
−2(モリブデン酸);無機リン酸塩、例えば、オルトリン酸塩及びピロリン酸塩;オルガノリン酸塩、例えば、2−ホスホノ−ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、及び2−ヒドロキシ−ホスホノ酢酸;オルガノホスフィン酸塩;オルガノスルホン酸塩;並びに有機金属エステル、例えば、「CRODACOR OME FE」(Croda Coatings & Polymers,Croda USA(New Castle,DE)から入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
これら添加剤は、用いられる場合、当業者に周知である従来の濃度で、本開示によって提供される利点に許容できないほどの影響を与えない程度に存在する。
【0056】
非水性溶媒は、望ましい場合、本開示の水性エマルションに少量使用してよい。1つの実施形態では、非水性溶媒の量は、水性組成物中の接着剤固形分に基づいて3重量%以下であってよい。別の実施形態では、1重量%以下であってよい。更なる実施形態では、0.5重量%以下であってよい。幾つかの実施形態では、非水性溶媒の量は、0〜0.2重量%である。適切な非水性溶媒の例としては、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、一価アルコール、例えば、メタノール及びエチルアルコール、並びに多価アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本開示の速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションは、当業者に公知である通り、標準的なpH計又はpH紙を用いて測定したとき、6.5以下のpH値を有する。幾つかの実施形態では、エマルションのpHは、6.0以下である。幾つかの実施形態では、pHは、5.5以下である。幾つかの実施形態では、pHは、5.0以下である。幾つかの実施形態では、pHは、3.0以上である。幾つかの実施形態では、pHは、3.5以上である。幾つかの実施形態では、pHは、4.0以上である。
【0058】
一液型水性アクリル接着剤エマルションのコア−シェルポリマー成分は、動的光散乱測定によって測定したとき、200ナノメートル(nm)以下の粒径を有する。幾つかの実施形態では、粒径は、175nm以下である。幾つかの実施形態では、粒径は、150nm以下である。幾つかの実施形態では、粒径は、140nm以下である。幾つかの実施形態では、粒径は、110nm以下である。幾つかの実施形態では、粒径は、50nm超である。幾つかの実施形態では、粒径は、100nm超である。幾つかの実施形態では、粒径は、130nm以上である。
【0059】
コア−シェルエマルションを作製し、必要に応じてpHを調整した後、多官能性成分を、例えば、水溶液の形態で又は後に溶解させる固体として添加する。
【0060】
本開示の速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションは、100センチポアズ(100mPa−s)以上の粘度を示す。幾つかの実施形態では、エマルションは、少なくとも300センチポアズ(300mPa−s)の粘度を有する。幾つかの実施形態では、エマルションは、10,000センチポアズ(10,000mPa−s)以下の粘度を有する。幾つかの実施形態では、粘度は、3000センチポアズ(3000mPa−s)以下である。幾つかの実施形態では、粘度は、1000センチポアズ(1000mPa−s)以下である。幾つかの実施形態では、エマルションは、500センチポアズ(500mPa−s)以下の粘度を有する。
【0061】
本開示の速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションを用いて、木材;冷間圧延鋼及びアルミニウム等の金属;布地;紙;皮革;発泡体;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)等のプラスチック、ガラス繊維、並びに例えばカウンタートップ用に高圧積層体を構築するために用いられる材料を含む広範な基材を接着することができる。
【0062】
家具業界において、例えば発泡体を固着する特定の用途は、多くの場合、接触する基材の片方又は両方に接着剤エマルションを塗布し、コーティングされた基材を互いに押し付けた直後、室温で接着固着が速やかに形成されることが必要である。すなわち、基材を結合し、破壊を引き起こす可能性のある新たなボンドラインにおいてその後の力に抵抗するのに十分な強度の固着を形成する。本明細書で使用するとき、「速硬化」及び「速硬化性」とは、接着剤を基材の片方又は両方に塗布し、室温で互いに接合した直後に所望のハンドリング強度を提供する接着剤を指す。接着剤が速硬化性接着剤であるかどうかを決定するために、ピンチボンド試験を利用してよい。
【0063】
ピンチボンド又はナイフエッジボンドは、接着剤製剤が、家具で用いられる発泡ゴムクッションの製造中に、直ちにハンドリング及び加工することができる所望のハンドリング強度特性を示すかどうかを評価するために用いられる。前者では、いったん固着されたらストレス下でボンドラインが生じるが、後者では生じないので、このようなボンドは、典型的な固着を形成するために必要であるよりも強度の増強が必要である。
【0064】
本開示の接着剤エマルションの使用において、乾燥は、例えば、両方が非多孔質基材を有する場合、基材を接合する前に、又は片方若しくは両方の基材が本来多孔質である場合、接合後に行うことができなければならない。接着剤エマルションは、接合する前に片方又は両方の基材に塗布してよい。
【0065】
少なくとも1つの多孔質基材、例えば、発泡体を使用する場合、本開示の速硬化性一液型水性エマルションは、基材への塗布の90秒間以内に室温で好適なピンチボンド強度を提供することができる。幾つかの実施形態では、塗布の60秒間以内に室温で、許容可能なピンチボンドが形成され得る。幾つかの実施形態では、塗布の30秒間以内に室温でピンチボンドが形成され得る。幾つかの実施形態では、塗布の約15秒間以内に室温で、適切なピンチボンドが提供され得る。
【0066】
また、本開示のエマルションを用いて2枚の非多孔質基材を固着することができる。このような場合、接合する前により長い乾燥時間が必要である。例えば、塗布の10分間以内に室温で、好適な固着強度が形成され得る。幾つかの実施形態では、塗布の5分間以内に室温で、好適な固着強度が形成され得る。幾つかの実施形態では、塗布の1分間以内に室温で、好適な固着強度が形成され得る。幾つかの場合、熱の使用を用いて乾燥時間を短縮させてよい。
【0067】
驚くべきことに、また有利なことに、本開示の接着剤エマルションは、幾つかの実施形態では、固着の形成前に著しい乾燥を必要とすることなく、所望のハンドリング強度を提供することができる。初期固着が形成された後、乾燥を続け、固着強度を増強する。これら利点は、熱の印加を必要とすることなく室温で実現される。理論に縛られるものではないが、著しい乾燥を必要とすることなく、ハンドリング強度を速やかに発現させる能力は、少なくとも部分的に、6.5以下のpHを有する本開示の接着剤エマルション、及び本来実質的にアニオン性であり且つ少量(例えば、合計コア−シェルポリマー成分100部当たり合計1.5部の界面活性剤)の界面活性剤の存在によるものであると考えられる。また、多官能性成分の使用は、エマルションの速硬化性特性、及びその最高値まで固着強度を増強する経時的な架橋反応の提供に寄与する。
【0068】
十分なハンドリング強度を有する初期固着が形成された後、乾燥を続け、最終的にその最高強度に達するまで固着強度を上昇させる。このプロセスは、室温で数時間(例えば、2〜24時間)どこでも生じ得る。この時間は、100〜200°F(38〜93℃)の温度等、熱の印加によって短縮させることができる。熱を使用する場合、最高強度は、わずか30分間以下で得ることができる。更に、本開示の接着剤エマルションを用いて、塗布直後に好適なハンドリング強度を有するだけではなく、最高固着強度に達した後も、16時間もの間140°F(60℃)又は更には160°F(71℃)の温度に曝露した後でさえも結合する固着の形成を提供することができる。
【0069】
また、本開示の速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションは、所望のオープンタイムを示し、それは、基材を接合し、固着を形成する前に片方又は両方の基材にエマルションを塗布した後に経過する時間を意味する。この特徴は、大規模稼働では、多くの場合、関与する基材の数により塗布工程と接合工程との間で著しい時間経過を必要とするという観点から有利である。本開示の接着剤エマルションは、60分間以内、幾つかの実施形態では40分間以内、幾つかの実施形態では20分間以内のオープンタイムを示し得るが、室温で基材を互いに固着した直後に高いハンドリング強度を提供する。
【0070】
また、速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションは、有利なことに、初期に固着し、ハンドリング強度を発現するが、分離可能、再配置可能、且つ再固着可能である物品を提供することができる。このような特徴は、固着部品が固着前に適切に位置合わせされていないとき、特に有用である。
【0071】
本開示の速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションは、例えば、噴霧、ブラッシング、ワイピング、コーティング、並びにグラビア及びカーテンコーティング等の機械的印刷方法を含む当業者に公知の様々な方法で基材に塗布することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、接着剤エマルションは、単一の容器から噴霧することにより塗布してよい。
【0073】
本開示の様々な変形例及び代替例は、本開示の範囲及び趣旨を逸脱することなく当業者に明らかになるであろう。
【実施例】
【0074】
【表1】
【0075】
以下の実施例で報告される全ての量は、特に明記しない限り重量部で記載される。
【0076】
試験方法
ガラス転移温度(Tg)
コポリマーのガラス転移温度(Tg)は、Fox式に従って、全ての対応するホモポリマーのTg値を用いて、コポリマーのモノマー組成から計算した:
(1/Tgm)=(w1/Tg1)+(w2/Tg2)+(w3/Tg3)+...
式中、
Tgmは、コポリマーのTgであり(ケルビン温度)、
Tg1は、コモノマー1のホモポリマーのTgであり(ケルビン温度)、
Tg2は、コモノマー2のホモポリマーのTgであり、
Tg3は、コモノマー3のホモポリマーのTgであり、
w1は、コポリマー中のコモノマー1の重量分率であり、
w2は、コポリマー中のコモノマー2の重量分率であり、
w3は、コポリマー中のコモノマー3の重量分率である。
【0077】
pH
接着剤エマルションのpHを、pH紙(実施例1〜4及び比較例1〜3)又はデジタル表示のプローブ(Omega Engineering,Incorporated(Stamford,Connecticut)から入手可能)を備える「OMEGA」PHB−212 pH計(実施例5)を用いて測定した。
【0078】
粒径
粒径及び分布測定は、Zetasizer Nano S動的光散乱(DLS)機器(Malvern Instruments,Incorporated(Westborough,MA)から入手可能)を用いて行った。4mLのポリスチレンキュベット内で、エマルション1滴を約2mLの脱イオン水で希釈した。機器のソフトウェアによって提供される通り、強度重み付き平均粒径を記録した。
【0079】
粘度
粘度は、20rpm又は30rpmで#3 RVスピンドルを備えるBrookfield粘度計を用いて、室温(約70°F(21℃))で測定した。粘度は、センチポアズで測定し、ミリパスカル−秒に変換した。
【0080】
噴霧性
約40psi(276KPa)の入来圧及び約10psi(69KPa)の流体(噴霧出口)圧において、送風機を備える3M Company(St.Paul,MN)から商品名「3M ACCUSPRAY」スプレーガンモデルHG09として市販されているもの等のスプレーガンを用いて、接着剤エマルションを噴霧した。スプレーノズルの任意の詰まり又は閉塞を記録し、噴霧性に関する主観的評価を行った。
【0081】
ピンチボンド
ピンチボンドは、ナイフエッジボンドとしても知られており、接着剤組成物の塗布後の発泡体と発泡体との固着の形成を指す。4インチ(10.2cm)に切断した高耐荷重性発泡体のサンプルを基材として用いた。発泡体キューブのサンプルを平らに置き、2対の平行な対向する辺を有するキューブの上面を得た。この上面に、室温で0.75g〜2gの湿潤接着剤エマルションを噴霧した。室温で短時間(例えば、15秒間)後、上面の中心部を内向きに押すように、1対の対向する辺を位置合わせして接触させ、キューブの中心に向かってつまみ、コーティングされた表面を手圧を用いて数秒間接触させた。これを、手圧を解放した後も固着が保持されるまで繰り返した。この点に達するまでにかかる時間(すなわち、接着剤を噴霧してから、手圧を解放したときに固着が保持されるまでに経過する時間)を、ピンチボンド時間と呼ぶ。ピンチボンド時間は、ハンドリング強度増強の相対速度の指標であり、すなわち、「ピンチボンド」時間が短いほど、より速やかに固着によりハンドリング強度が発現する。これは、更に加工するために取り扱うことができる物品を形成するのにかかる時間の尺度を提供する。幾つかのサンプルについて、幅2インチ(5.1cm)のマスキングテープ片を、面の面積の半分がマスキングされるように、辺のうちの1つに沿って発泡体ブロックの表面の半分に適用した。マスキングされていない表面に接着剤を噴霧した後、マスキングテープを除去して、キューブの面の半分のみが接着剤でコーティングされている状態にする。次いで、発泡体キューブの面のコーティングされている半分を、コーティングされていない半分と接触させることによって、ピンチボンドを形成した。
【0082】
ピンチボンド安定性
ピンチボンド安定性は、最短16時間ピンチボンドが閉じられたままである温度である。(上記の通り)ピンチボンドを形成することによって、試験されるエマルション組成物用のサンプルを調製した。次いで、少なくとも16時間65〜75°F(18〜24℃)でサンプルをコンディショニングした。サンプルの固着が室温(RT)で無傷のままである場合、同じサンプルを少なくとも16時間140°F(60℃)のオーブンに入れた。サンプルの固着が140°F(60℃)で無傷のままである場合、同じサンプルを160°F(71℃)のオーブンに入れた。固着を開くことによって(すなわち、既に固着している表面を分離することによって)固着破壊を観察した。破壊されることなくサンプルが達した最高温度を、ピンチボンド安定性温度として記録した。
【0083】
アクリルエマルションの調製
(実施例1)
還流冷却器、温度プローブ、機械的撹拌機、定量ポンプ、及び供給漏斗を備える5つ口反応フラスコ内で、19.46部の脱イオン水、0.08部のDS−10アニオン性界面活性剤、0.04部の炭酸水素ナトリウム緩衝液(99.7〜100%、EMD Chemical,Incorporated(Gibbstown、NJ)から入手)、2.39部の2−EHA、及び1.63部のIBOAの混合物を撹拌し、窒素下で加熱した。混合物の温度が74℃に達したら、0.34部の脱イオン水中0.04部の過硫酸アンモニウム(98%、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)の反応開始剤溶液を、シングルショット(「ワンショット」、一度に全てを意味する)でフラスコに添加した。反応を発熱させ、次いで、30分間78℃で維持して、シードエマルションを得た。次に、0.09部の過硫酸カリウム(97%、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)及び0.69部の脱イオン水を含有する反応開始剤溶液を、ワンショットで添加した。2分間混合した後、21.73部の脱イオン水、0.40部のDS−10アニオン性界面活性剤、11.64部の2−EHA、4.34部のBA、及び14.01部のスチレンを含有する乳様プレエマルションを、140分間かけて精密ポンプを介して反応器に供給した。この添加工程の完了後、反応物質を78℃で20分間加熱して、コア−シェルポリマー成分のポリマーコアを得た。次に、0.03部の過硫酸カリウム及び0.57部の脱イオン水を含有する反応開始剤溶液を、ワンショットで添加した。2分間混合した後、70分間かけて2つの更なる原料を同時に反応フラスコに滴下して、コア−シェルポリマー成分のポリマーシェルを得た。1つの原料は、4.04部の脱イオン水及び0.38部のDAAMを含む水溶液であり、他の原料は、12.53部のBA、0.75部のMAA、及び4.83部のMMAを含有するモノマー混合物であった。これらの添加が完了した後、反応混合物を撹拌し、78℃で45分間維持した。得られたエマルションを氷浴を用いて25℃まで急冷し、約0.01部のヒドロキノン阻害剤(99%、Alfa Aesar(Ward Hill,MA))を添加し、溶解させ、次いで、エマルションをチーズクロスで濾過した。一液型水性アクリル接着剤エマルションは、重力測定的に、50.3重量%の固形分含量を有すると測定され、ガスクロマトグラフィーにより、99.0%のモノマーが変換されたことが明らかになった。ガラス転移温度、粒径、及び粘度を測定し、次いで、AADの10重量%水溶液0.9重量部をアクリル接着剤エマルション50重量部に添加して、本開示のエマルションを得た。速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションを、噴霧性、ピンチボンド強度、及びピンチボンド安定性について評価した。結果を以下の表2に報告する。
【0084】
比較例1
多官能性成分(AAD)を添加しなかったことを除いて、実施例1に記載の方法と同じ方法で比較例1を調製した。
【0085】
(実施例2)
還流冷却器、温度プローブ、機械的撹拌機、定量ポンプ、及び供給漏斗を備える5つ口反応フラスコ内で、39.28部の脱イオン水、0.36部のDS−10アニオン性界面活性剤、0.07部の炭酸水素ナトリウム、0.0003部の硫酸鉄七水和物(99.6%、J.T.Baker(Phillipsburg,NJ)から入手)、15.68部の2−EHA、及び13.35部のIBOAの混合物を撹拌し、窒素下で加熱した。混合物の温度が32℃に達したら、0.08部の過硫酸アンモニウム、0.02部のメタ重亜硫酸ナトリウム反応開始剤(97%、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)、0.02部のスチレンスルホン酸ナトリウム界面活性剤(Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)、及び1.0部の脱イオン水の溶液をワンショットでフラスコに添加し、反応物質を55℃に加熱し、発熱させた。次いで、反応を50分間80℃で維持して、コア−シェルポリマー成分のポリマーコアを得た。次に、0.03部の過硫酸カリウム及び0.77部の脱イオン水を含有する反応開始剤溶液を、ワンショットで添加した。2分間混合した後、8.96部の脱イオン水、0.07部のDS−10アニオン性界面活性剤、13.51部のBA、5.30部のMMA、0.79部のMAA、及び0.20部のDAAMを含有する乳様プレエマルションを、70分間かけて精密ポンプを介して反応器に供給した。この添加工程の完了後、反応物質を80℃で40分間加熱して、コア−シェルポリマー成分のポリマーシェルを得た。次に、t−ブチルヒドロペルオキシド反応開始剤の水溶液(3.46重量%)(Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から70%水溶液として入手し、更に希釈)0.33部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム二水和物反応開始剤(Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から固体として入手)の1.88重量%水溶液0.24部を、ワンショットで添加した。混合を更に15分間継続し、その後、別のホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム二水和物溶液0.23部を添加し、最後に15分間混合/加熱を継続した。得られたエマルションを氷浴を用いて25℃まで急冷し、約0.01部のヒドロキノン反応開始剤を添加し、次いで、エマルションをチーズクロスで濾過した。最終的な速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションは、重力測定的に48.5重量%の固形分含量を有すると測定され、ガスクロマトグラフィーにより、99.9%のモノマーが変換されたことが明らかになった。ガラス転移温度、粒径、及び粘度を測定し、次いで、AADの10重量%水溶液0.9重量部をアクリル接着剤エマルション50重量部に添加して、本開示のエマルションを得た。速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションを、噴霧性、ピンチボンド強度、及びピンチボンド安定性について評価した。結果を以下の表2に報告する。
【0086】
比較例2
多官能性成分(AAD)を添加しなかったことを除いて、実施例2に記載の方法と同じ方法で比較例2を調製した。
【0087】
(実施例3)
還流冷却器、温度プローブ、機械的撹拌機、定量ポンプ、及び供給漏斗を備える5つ口反応フラスコ内で、38.70部の脱イオン水、0.39部のDS−10アニオン性界面活性剤、0.07部の炭酸水素ナトリウム、0.0003部の硫酸鉄七水和物、13.76部の2−EHA、9.17部のIBOA、及び5.73部のMAの混合物を撹拌し、窒素下で加熱した。混合物の温度が50℃に達したら、0.08部の過硫酸アンモニウム、0.03部のメタ重亜硫酸ナトリウム及び0.88部の脱イオン水の溶液を、ワンショットでフラスコに添加した。温度を10分間50℃で維持し、次いで、反応物質を60℃に加熱し、発熱させた。次いで、反応を15分間78℃で維持して、コア−シェルポリマー成分のポリマーコアを得た。次に、0.03部の過硫酸カリウム及び1.10部の脱イオン水を含有する反応開始剤溶液を、ワンショットで添加した。2分間混合した後、9.59部の脱イオン水、0.06部のDS−10アニオン性界面活性剤、13.38部のBA、5.36部のMMA、0.80部のMAA、及び0.20部のDAAMを含有する乳様プレエマルションを、70分間かけて精密ポンプを介して反応器に供給した。この添加工程の完了後、反応物質を78℃で40分間加熱して、コア−シェルポリマー成分のポリマーシェルを得た。次に、t−ブチルヒドロペルオキシド反応開始剤の水溶液(8.48重量%)0.33部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム二水和物反応開始剤の水溶液(4.76重量%)0.21部を、ワンショットで添加した。78℃における混合を更に15分間継続し、その後、別のホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム二水和物溶液0.21部をワンショットで添加し、最後に15分間混合/加熱を継続した。得られたエマルションを氷浴を用いて25℃まで急冷し、約0.01部のヒドロキノン反応開始剤を添加し、溶解させ、次いで、エマルションをチーズクロスで濾過した。一液型水性アクリル接着剤エマルションは、重力測定的に48.0重量%の固形分含量を有すると測定され、ガスクロマトグラフィーにより、99.6%のモノマーが変換されたことが明らかになった。ガラス転移温度、粒径、及び粘度を測定し、次いで、AADの10重量%水溶液0.9重量部をアクリル接着剤エマルション50重量部に添加して、本開示のエマルションを得た。速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションを、噴霧性、ピンチボンド強度、及びピンチボンド安定性について評価した。結果を以下の表2に報告する。
【0088】
比較例3
多官能性成分(AAD)を添加しなかったことを除いて、実施例3に記載の方法と同じ方法で比較例3を調製した。
【0089】
(実施例4)
還流冷却器、温度プローブ、機械的撹拌機、定量ポンプ、及び供給漏斗を備える5つ口反応フラスコ内で、38.71部の脱イオン水、0.39部のDS−10アニオン性界面活性剤、0.08部の炭酸水素ナトリウム、0.0006部の硫酸鉄七水和物、13.77部の2−EHA、9.18部のIBOA、及び5.77部のMAの混合物を撹拌し、窒素下で加熱した。混合物の温度が40℃に達したら、0.07部の過硫酸アンモニウム、0.02部のメタ重亜硫酸ナトリウム、及び0.88部の脱イオン水の溶液を、ワンショットでフラスコに添加した。温度を20分間40℃で維持し、その後、0.01部のメタ重亜硫酸ナトリウム、及び0.22部の脱イオン水をワンショットでフラスコに添加し、反応物質を発熱させた。次いで、反応を10分間78℃で維持して、コア−シェルポリマー成分のポリマーコアを得た。次に、0.03部の過硫酸カリウム及び1.10部の脱イオン水を含有する反応開始剤溶液を、ワンショットで添加した。2分間混合した後、9.41部の脱イオン水、0.06部のDS−10アニオン性界面活性剤、0.04部の炭酸水素ナトリウム、13.39部のBA、5.61部のMMA、0.40部のMAA、及び0.29部のDAAMを含有する乳様プレエマルションを、70分間かけて精密ポンプを介して反応器に供給した。この添加工程の完了後、78℃で40分間加熱を継続して、コア−シェルポリマー成分のポリマーシェルを得た。次に、t−ブチルヒドロペルオキシド反応開始剤の水溶液(8.31重量%)0.31部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム二水和物反応開始剤の水溶液(3.78重量%)0.25部を、ワンショットで添加した。78℃における混合を更に15分間継続し、その後、別のホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム二水和物溶液0.21部をワンショットで添加し、最後に15分間混合/加熱を継続した。得られたエマルションを氷浴を用いて25℃まで急冷し、約0.01部のヒドロキノン反応開始剤を添加し、溶解させ、次いで、エマルションをチーズクロスで濾過した。最終的な速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションは、重力測定的に47.8重量%の固形分含量を有すると測定され、ガスクロマトグラフィーにより、99.5%のモノマーが変換されたことが明らかになった。ガラス転移温度、粒径、及び粘度を測定し、次いで、AADの10重量%水溶液0.9重量部をアクリル接着剤エマルション50重量部に添加して、本開示のエマルションを得た。速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションを、噴霧性、ピンチボンド強度、及びピンチボンド安定性について評価した。結果を以下の表2に報告する。
【0090】
(実施例5)
還流冷却器、温度プローブ、機械的撹拌機、定量ポンプ、及び供給漏斗を備える4つ口ジャケット付反応フラスコ内で、38.71部の脱イオン水、0.39部のDS 10アニオン性界面活性剤、0.11部の0.27重量%硫酸鉄七水和物溶液、0.07部の重炭酸ナトリウム、13.91部の2−EHA、5.79部のMA、及び9.06部のIBOAの混合物を撹拌し、窒素下で加熱し、一定の撹拌を行った。混合物の温度が78℃に達したら、0.88部の脱イオン水中0.07部の過硫酸カリウム及び0.06部のメタ重亜硫酸ナトリウムの反応開始剤溶液を、ワンチャージでフラスコに添加した。反応を発熱させ、次いで20分間68℃で維持して、コア−シェルポリマー成分のポリマーコアを得た。次に、0.03部の過硫酸カリウム及び1.10部の脱イオン水を含有する反応開始剤溶液を、ワンショットで添加した。2分間混合した後、9.56部の脱イオン水、0.06部のDS 10アニオン性界面活性剤、0.29部のDAAM、10.65部のBA、7.93部のMMA、及び0.77部のMAAを含有するプレエマルションを、反応温度を68℃で維持しながら、105分間かけて精密ポンプを介して反応器に供給した。この添加工程の完了後、反応器の内容物を68℃で1時間一定の撹拌下で保持して、コア−シェルポリマー成分のポリマーシェルを得た。次に、7.5重量%t−ブチルヒドロペルオキシド水溶液0.23部及び3.3重量%ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.49部をそれぞれワンチャージで添加することによって、未反応モノマーを捕捉した。68℃で15分間撹拌した後、それぞれの別のチャージを添加し、更に15分間混合した。得られたエマルションを25℃に冷却し、例えば、商品名「CUNO 150」として3M Company(St.Paul,MN)から市販されている150マイクロメートルのポリエステルフィルターバッグで濾過した。一液型アクリル接着剤エマルションは、重力測定的に46.5%の固形分含量を有すると測定された。ガラス転移温度、粒径、及び粘度を測定し、次いで、AADの10重量%水溶液0.9重量部をアクリル接着剤エマルション50重量部に添加して、本開示のエマルションを得た。速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションを、噴霧性、ピンチボンド強度、及びピンチボンド安定性について評価した。結果を以下の表2に報告する。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
再配置性−I
実施例4の接着剤組成物を2つの発泡体キューブ(それぞれ、4インチ×4インチ×4インチ(10.2cm×10.2cm×10.2cm)であると測定)の上面に室温で噴霧して、1.0〜1.6gの湿潤接着剤エマルションのコーティング重量を得た。室温で約15秒間後、2つの接着剤エマルションでコーティングされた表面を、非常に軽い指圧のみを用いて互いに接触させて、固着した発泡体物品を得た。室温で1分後、固着した片を手で分離し、わずかに再配置し、次いで、前回の通り再度互いに接触させた。更に1分後、再固着した片を再度分離し、前回の通り再配置し、次いで、十分な圧力を用いて互いに接触させて発泡体を変形させた。固着した発泡体物品を室温で一晩コンディショニングした後、固着した片を手で分離しようと試みた。この試みは失敗し、発泡体は引き裂かれた。
【0094】
再配置性−II
2つの発泡体キューブを、以下を除いて上記「再配置性−I」評価に記載の通り固着した。2つの発泡体キューブを接合したとき、十分な圧力を印加して発泡体を変形させ、すなわち、十分な手圧を用いて変形させ、3つの接合工程のそれぞれについてブロックを互いに押し付けた。1分後に片を分離させ、再配置し、次いで、前回の通り再固着した。再固着後1分以内に、固着した発泡体物品は、バラバラになることなく床を転がった。次に、室温で一晩コンディショニングした後、固着した片を手で分離しようと試みた。この試みは失敗し、発泡体は引き裂かれた。
【0095】
保存安定性
以下の通り28日間120°F(49℃)で保存する前後に、典型的なエマルションのpH、ピンチボンド時間、及びピンチボンド安定性を測定することによって、本開示の速硬化性一液型水性接着剤エマルションの保存安定性を評価した。
【0096】
最終的な速硬化性一液型水性アクリル接着剤エマルションを、実施例3と同様の方法で調製した。それは、重力測定的に、47.2重量%の固形分含量を有すると測定され、96.0%のモノマー変換率を有していた。得られたポリマーは、59.4:40.6/コア:シェルのモノマー重量比を有していた。コアは、48.4:31.5:20.1/EHA:IBOA:MA(w/w)のコポリマーであった。シェルは、68.0:26.6:3.9:1.5/BA:MMA:MAA:DAAM(w/w)のコポリマーであった。反応が完了した後、穏やかに混合しながら10% AAD水溶液0.9部を接着剤エマルション50部に添加した。初期試験後、約50グラムの接着剤エマルションをヘッドスペースが最小限になるようにガラスジャーに入れ、そのジャーを密封し、28日間120°F(49℃)のオーブンに入れた。この時間中、接着剤エマルションにおける任意の凝集又は凝塊について、サンプルを定期的に目視検査した。何も見つからなかった。28日後、密封されたジャーをオーブンから取り出した。接着剤エマルションの外観(凝集、凝塊等)に視覚的変化はなかった。試験結果を以下の表3に示す。
【0097】
【表4】
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[17]に記載する。
[1]
a)
i.第1のガラス転移温度を有する(メタ)アクリレートコポリマーを含む内側コア、及び
ii.少なくとも1つのペンダント官能基を含有する(メタ)アクリレートコポリマーを含み、かつ前記第1のガラス転移温度以下である第2のガラス転移温度を有する外側シェル、を含むコア−シェルポリマー成分と、
b)前記外側シェルにおける前記ペンダント官能基のうちの少なくとも1つと反応することができる多官能性成分と、を含むエマルションであって、
前記内側コアが、前記外側シェルにおける前記ペンダント官能基と反応する官能基を含まず、
前記エマルションのpHが、6.5以下であり、
前記エマルションが、速硬化性一液型水性接着剤である、エマルション。
[2]
前記内側コアが、+10℃以下の第1のガラス転移温度を有する、項目1に記載のエマルション。
[3]
前記エマルションが、アニオン性界面活性剤を更に含む、項目1又は2に記載のエマルション。
[4]
前記エマルションが、コア−シェルポリマー100部当たり1.5部(乾燥)以下の界面活性剤含量を有する、項目3に記載のエマルション。
[5]
前記ポリマーシェル成分における各ペンダント官能基当量について、前記多官能性成分における官能基当量数が、0.5〜1.5である、項目1〜4のいずれかに記載のエマルション。
[6]
前記ペンダント官能基が、ケトン及びアルデヒドから選択される、項目1〜5のいずれかに記載のエマルション。
[7]
前記多官能性成分が、ポリヒドラジド及びポリアミンから選択される、項目1〜6のいずれかに記載のエマルション。
[8]
前記コア−シェル成分が、25〜83重量%の前記コア成分を含む、項目1〜7のいずれかに記載のエマルション。
[9]
前記エマルションの粒子が、200nm以下の直径を有する、項目1〜8のいずれかに記載のエマルション。
[10]
前記エマルションが、非水性溶媒を含まない、項目1〜9のいずれかに記載のエマルション。
[11]
a)
i.第1のガラス転移温度を有する(メタ)アクリレートコポリマーを含む内側コア、及び
ii.少なくとも1つのペンダント官能基を含有する(メタ)アクリレートコポリマーを含み、かつ前記第1のガラス転移温度以下である第2のガラス転移温度を有する外側シェル、を含むコア−シェルポリマー成分と、
b)前記外側シェルにおける前記ペンダント官能基のうちの少なくとも1つと反応することができる多官能性成分と、を含むエマルションを用いて互いに固着している2枚の基材を含む物品あって、
前記内側コアが、前記外側シェルにおける前記ペンダント官能基と反応する官能基を含まず、
前記エマルションのpHが、6.5以下であり、
前記エマルションが、速硬化性一液型水性接着剤である、物品。
[12]
前記2枚の基材が、互いに対して再配置可能である、項目11に記載の物品。
[13]
前記2枚の基材が、分離可能である、項目11又は12に記載の物品。
[14]
2枚の基材を接合する方法であって、
a)
i.第1のガラス転移温度を有する(メタ)アクリレートコポリマーを含む内側コア、及び
ii.少なくとも1つのペンダント官能基を含有する(メタ)アクリレートコポリマーを含み、かつ前記第1のガラス転移温度以下である第2のガラス転移温度を有する外側シェル、を含むコア−シェルポリマー成分と、
b)前記外側シェルにおける前記ペンダント官能基のうちの少なくとも1つと反応することができる多官能性成分と、を含むエマルションを前記基材のうちの少なくとも1枚に塗布することであって、
前記内側コアが、前記外側シェルにおける前記ペンダント官能基と反応する官能基を含まず、
前記エマルションのpHが、6.5以下であり、
前記エマルションが、速硬化性一液型水性接着剤である、塗布することと、
前記基材を接合することと、を含む、方法。
[15]
前記基材を再配置することを更に含む、項目14に記載の方法。
[16]
前記エマルションが、ブラッシング、噴霧、ワイピング、ローリング、又は機械的印刷方法によって塗布される、項目14又は15に記載の方法。
[17]
前記エマルションが、単一の容器から噴霧によって塗布される、項目16に記載の方法。