特許第6231075号(P6231075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231075
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】手による圧力で作動する付与メカニズム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20171106BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20171106BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   A61M5/158 500Z
   A61M5/142 522
   A61M25/06 500
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-504921(P2015-504921)
(86)(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公表番号】特表2015-516202(P2015-516202A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】EP2013057324
(87)【国際公開番号】WO2013153039
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】12163673.2
(32)【優先日】2012年4月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513088249
【氏名又は名称】ファルマセンス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハドヴァリー、パオル
(72)【発明者】
【氏名】チルキー、ハンスヨルク
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/119896(WO,A1)
【文献】 特表平3−501348(JP,A)
【文献】 米国特許第6685675(US,B1)
【文献】 特表2010−535058(JP,A)
【文献】 米国特許第5527287(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0249505(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0124979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 5/142
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
持針器内に固定して位置決めされた針の皮膚挿入メカニズムであって、注射又は分析システムへの接続手段を有し、前記皮膚挿入メカニズムは、
a)皮膚に付着するための接着剤層でコーティングされ、前記針を通すことを可能にする穴を有する平らな皮膚アタッチメント・プレートと、
b)前記皮膚アタッチメント・プレートに接続され、移動可能な抑制手段を介して、前記持針器に接続されたスペーサー・メカニズムであって、前記持針器及び前記皮膚アタッチメント・プレートを平行な平面内に位置決めし、それらの軸方向の移動を互いに対してガイドし、使用可能な位置において、前記皮膚アタッチメント・プレートが前記持針器から固定された間隔で隔てられ前記針の先端を覆うように構成された前記スペーサー・メカニズムと、
c)前記スペーサー・メカニズムに移動可能に連結され、前記使用可能な位置から前記抑制手段を解放するリリース要素であって、前記抑制手段を解放し、前記持針器を前記皮膚アタッチメント・プレートの方へ、前記針の針先によって皮膚を穿刺し、前記針を前記皮膚内に挿入するのに十分な速度で軸方向に移動することを可能にするために、前記皮膚アタッチメント・プレートに対してプリセットされたトリガー点圧力を必要とすることを特徴とする前記リリース要素と、
を備える皮膚挿入メカニズム。
【請求項2】
前記接着剤層の外側リムを前記皮膚に堅固に付着させるための手段をさらに備える請求項1に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項3】
前記接着剤層の前記外側リムを前記皮膚に堅固に付着させるための前記手段は、前記接着剤層を前記皮膚の方へ圧迫し、前記リリース要素を意図しない作動から保護するリムを備える機能性パッケージであることを特徴とする請求項2に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項4】
前記接着剤層の前記外側リムを前記皮膚に堅固に付着させるための前記手段は、前記皮膚に付着させるための接着面が前記皮膚に付着している前記接着面と比較して小さな表面によって固定される前記皮膚アタッチメント・プレートの底部であることを特徴とする請求項2に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項5】
皮膚アタッチメント・プレートを持針器と結合し、スペーサー・メカニズム及びリリース要素から減結合するための手段をさらに備え、当該結合および減結合するための手段は、持針器と皮膚アタッチメント・プレートとを積み上げた際に自動的に実行し、スペーサー・メカニズムの取り外しをリリース要素と一緒に行えるようにすることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項6】
皮膚アタッチメント・プレートを持針器と結合し、スペーサー・メカニズム及びリリース要素から減結合するための前記手段は、前記持針器を前記皮膚アタッチメント・プレートの方へ軸方向に移動することによって作動されるフック型要素であることを特徴とする請求項5に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項7】
前記針は、注射液を皮下送達するためのカニューレであることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項8】
前記針は、前記皮膚内に挿入するための取り外し可能な内側マンダリンを備えるプラスチック・チューブであり、前記マンダリンは前記スペーサー・メカニズム及びリリース要素と一緒に取り外されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項9】
前記固定して位置決めされた針及び注射システムへの前記接続手段を備える前記持針器は、使用可能な位置において隔てられ、持針器とともに皮膚アタッチメント・プレートの最初のものを積み上げ、続いて前記持針器を前記接続手段とともに積み上げる連続的操舵によって針が前記皮膚内に挿入された後にのみ機能的に接続されることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項10】
持針器、注射システムへの接続手段、及びリリース要素を一緒に結合するための手段をさらに備え、当該結合するための手段は、皮膚アタッチメント・プレート、持針器、及びリリース要素との接続手段を積み上げた際に自動的実行し、前記皮膚から一体として引き離すことによって前記皮膚から取り外すことを可能にし、前記皮膚アタッチメント・プレートは前記皮膚に付着されている前記接着剤層によって引っ張られ、針の保護として前記引き出された位置で固定されることを特徴とする請求項9に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項11】
前記針は、診断プローブであることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の皮膚挿入メカニズム。
【請求項12】
前記針は、柔軟なカニューレ又は診断プローブを前記皮膚内に挿入するための取り外し可能なガイド針であり、前記ガイド針は前記スペーサー・メカニズム及びリリース要素と一緒に取り外されることを特徴とする請求項1から11までのいずれか一項に記載の皮膚挿入メカニズム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に付着し、皮膚内に挿入された針を通して皮下アクセス(subcutaneous access)を行う注射セット(injection set)又は診断プローブに関するものである。より具体的には、皮膚内に挿入される針を備え、ポンプ若しくは分析システムへの、又は注射器型ペンへの接続手段を有するパッチ型ポートに関係する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの皮下注射用針挿入メカニズムの応用分野は、例えば、インスリン・ポンプ・システムを使った、生理学的活性を有する流体の患者体内への挿入、又は皮下組織内の検体レベルの測定である。さらに、これは注射器又はペンと組み合わせて使用することができる。これらの使用に関して、通常、皮膚内への針の手動挿入が要求される。手動針挿入は、多くの場合、患者の心理的嫌悪感を引き起こし、安全上の問題を負う。従来技術の針挿入メカニズムは、通常、複数のステップによる取り扱いを必要とする複雑なデバイスであり、したがって、針が皮膚内に挿入される単純なパッチ型ポート、又は注射器若しくはペンに適していない。それに加えて、そのようなバネ型挿入メカニズムは、急速すぎることは避けられず、したがって、患者を不安にさせるものとして認識されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP0825882
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、パッチ型ポート・システム及び注射器若しくはペンに適している針を皮膚内に安全に、また容易に挿入することを可能にする、費用効果があり、利用者に優しい解決方法を提供することである。本発明により、これは請求項1に記載されているとおりに達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で使用されるときに、以下の定義で、記載されている語を定義する。
【0006】
接着剤層は、皮膚アタッチメント・プレート(skin attachment plate)に固定するための接着剤、必要な柔軟性を付与する織物、及び患者の皮膚上に固定するための接着剤の、3つの部分からなる。一時的に皮膚に付けるのに適した、強い接着特性及びアレルギー誘発性が最小の材料が市販されている。この接着剤層は、好ましくは皮膚に付着する表面よりも著しく小さい表面を使用して、皮膚アタッチメント・プレート上に固定される。これは、例えば、皮膚アタッチメント・プレートの表面を超えて延在する接着剤層によって、又は皮膚アタッチメント・プレートの表面に類似するか、若しくはそれよりごくわずかに大きい接着剤層の形状が選択された場合には、外側環状ゾーンが皮膚アタッチメント・プレートに固定されないように接着剤層を皮膚アタッチメント・プレートに固定することによって達成され得る。そのような設計は、剛体基部を持つ医療デバイスについてEP0825882において説明されている。
【0007】
検体とは、個人の健康状態、臓器機能、代謝状態、又は薬物代謝能を診断するために使用されうる濃度を有する内因性又は外因性物質を意味する。内因性物質の実例は、グルコース、乳酸塩、酸素、クレアチニンなどである。外因性物質の実例は、薬物、そのような薬物の代謝産物、診断用物質(例えば、イヌリン)などである。
【0008】
分析システムは、皮下組織内の検体の濃度を判定するために必要なすべての要素を備える。皮下組織の接触は、皮膚内に挿入された活性表面を有する診断プローブを介して達成される。
【0009】
結合手段は、針付きの注射又は分析システムとの安全な接続を確実にする。流体送達システムに接続するために、円錐状のもの、例えば、ルアーロック又は隔壁針メカニズム(septum−needle mechanisms)などの無効体積と堅く接続することが重要である。微小透析プローブについては、二重管腔接続が好ましい。挿入されたセンサーなどの診断プローブと分析システムとの接続は、もっぱら、当技術分野で知られている、電気的又は光学的接続である。
【0010】
或いは、結合手段は、使用可能な位置において、固定して位置決めされた針を有する持針器から分離され、針の皮膚挿入の後にのみ針に接続されることになるものとしてよい。好ましい一実施例において、持針器内に固定して位置決めされた針は、持針器から皮膚の方へ突き出るだけでなく、隔壁を有する結合手段の方へも突き出て、持針器が結合手段の方へ移動した際に隔壁を穿刺する。
【0011】
診断プローブは、検体濃度の判定のための機能要素であり、限定はしないが、センサー、体液除去又は微小透析プローブを意味する。診断プローブは、皮膚内に部分的に挿入され、挿入先端部に近い位置に配置されている、少なくともその活性表面は、皮下組織と直接接触している。診断プローブが、ガイド針を使って皮膚内に挿入される場合、このガイド針は、皮膚内に挿入された後に、好ましくはスペーサー・メカニズム及びリリース要素(release element)と一緒に後退する。
【0012】
機能性パッケージ(Functional package)は、解放可能な結合メカニズムによって皮膚挿入メカニズム又はデバイスを保持するように設計され、無菌状態を保護し、湿気などの定められた環境内への保管中に診断プローブの活性表面を保持するための剥離キャップを有する。機能性パッケージは、キャップを取り外した後に、皮膚の周囲全体を圧迫することによって接着剤層のリムを正しく付着させることを可能にするリム要素も有する。さらに、機能性パッケージは、早すぎる、意図しない操作からリリース要素を保護し、リリース要素は、皮膚への皮膚挿入メカニズムの付着、及び機能性パッケージの取り外しの後にのみ作動させることができる。
【0013】
注射液の送達用の注射システムは、手で操作される注射器とポンプとを包含し、これらは限定はしないが、注射器型ポンプ、蠕動ポンプ、圧電ポンプなどの従来技術で知られているような貯蔵槽と送達メカニズムとの組み合わせ、又は機械、空気圧、若しくは油圧による手段によって圧搾される可撓性貯蔵槽からなる。注射液の送達は、身体中への液体の比較的高速な注射(ボーラス)と比較的低速な導入(注射又は点滴とも称される)との両方を包含する。
【0014】
接着剤層の外側リムを皮膚に堅固に付着させるための手段は、皮膚挿入メカニズムを皮膚に押し付けた際に、付着を全面にわたって確実にし、それにより、皮膚への皮膚アタッチメント・プレートの安全且つ耐久性のある粘着を保証する構成要素である。接着剤層の柔軟なリム全体を皮膚に確実に粘着させることは、確実に付着していない小さな間隙は、簡単に外れてしまう潜在的な問題となる箇所なので特に重要である。
【0015】
このような手段の実例は、皮膚アタッチメント・プレートの周から突き出る接着剤層の柔軟なリムを皮膚に押し付ける、剛体リムを有する機能性パッケージである。或いは、皮膚に付着させるための接着剤層は、これが皮膚に付着した接着面と比較して小さい表面によってのみ固定される皮膚アタッチメント・プレートの底部と等しい周を有するものとしてよく、したがって、皮膚から外れるのを回避するのに重要な柔軟なリムを残す。このような一実施例では、皮膚アタッチメント・プレートの底部は、接着剤層の付着していない柔軟なリムも堅固に皮膚に押し付けて、皮膚付着が全面にわたってなされることを確実にする。
【0016】
皮膚アタッチメント・プレートを持針器と結合し、スペーサー・メカニズム及びリリース要素から減結合するための手段は、これらの機能が持針器及び皮膚アタッチメント・プレートを積み上げた際に自動的に実行されるように構成される。好ましくは、両方の機能を作動させるために、皮膚に対してリリース要素上にかかる軸圧力のみが必要である。持針器及び皮膚アタッチメント・プレートは連結して、挿入された針と共に皮下ポートを形成する。持針器からスペーサー・メカニズムを減結合した後、リリース要素はスペーサー・メカニズムとともに、それを単純に持ち上げて引き離すだけで取り外すことができる。
【0017】
微小透析プローブは、皮下液と膜の内側に通される透析液との間の界面を形成する活性面として、透析膜を有する。好ましい一実施例において、微小透析プローブは、透析膜によって先端部近くの埋め込み可能な部分のところで覆われている内側チューブと外側チューブとからなり、接続手段は、内側チューブを透析液を送達するポンプに結合することと、外側チューブを透析物の出口として検体判定システム又は微小透析物回収システムに結合することとを同時に行うことを可能にする。
【0018】
針は、先端部が患者の皮膚を容易に穿刺し皮膚を貫通するのを可能にするように構成され、十分に剛性のある機能要素である。皮膚内への挿入は、針の直径が非常に小さく、好ましくは0.3mm未満である場合に侵襲の少ない、また痛みのない仕方で達成されうる。これらの針として、限定はしないが、注射液を導入するためのカニューレなどの中空針、診断プローブとしてのチューブ若しくは中実針又は柔軟な診断プローブを導入するためのガイド針としてのチューブ、又は軟質チューブを導入するためのマンドリンとしての中実針が挙げられる。
【0019】
針が、ガイド針又はマンドリンの機能を有する場合、これは取り外され、好ましくは、スペーサー・メカニズム及びリリース要素の取り外しと連携し得る。
【0020】
持針器は、針の固定位置決めを強制し、スペーサー・メカニズムを介して、皮膚アタッチメント・プレートを持針器に対して軸方向に誘導して移動することを可能にする構造的特徴を有する。
【0021】
リリース要素はプリセットされたトリガー点圧力が印加された場合にブロックされている使用可能な位置から抑制手段を解除し、その結果皮膚アタッチメント・プレートに対して皮膚挿入メカニズムに十分な加速がつき、針の皮膚穿刺及び挿入を確実にする。リリース・メカニズムに使用される構造及び材料は、リリース作動に対するそのようなトリガー点圧力を要求するように調整される。
【0022】
リリース要素及び抑制手段の構造は、相補的である、例えば、抑制手段がブロックするのにフック型コンポーネントを使用している場合、リリース要素は、フック型コンポーネントによるブロックを解除する、突起しているピン形状のコンポーネントを有することができる。この構造では、ブロック解除するためのフック型コンポーネントの曲がりは、リリースに対する必要なトリガー点圧力を画定することができるが、例えばバネを備える代替的構造も、この目的に使用され得る。
【0023】
隔壁は、汚染がなく漏れのないようにカニューレ又はワイヤで穿刺され得る天然若しくは合成ゴム系の材料で作製されたストッパーである。
【0024】
皮膚アタッチメント・プレートは、好ましくは円形又は卵形の取付面積を有し、皮膚に付着するための接着面でコーティングされ、針の先端部の反対側に、持針器を皮膚アタッチメント・プレートの方に移動した際に針を妨げられることなく通せる十分な大きさの直径を持つ穴を有する。皮膚アタッチメント・プレートは、抑制手段によって持針器に連結される。スペーサー・メカニズムの抑制手段は、皮膚アタッチメント・プレートが針の先端部を覆うことができるように、皮膚アタッチメント・プレート及び持針器が相隔てられた、使用可能な位置から、皮膚アタッチメント・プレート及び持針器が互いに近い第2の位置までの滑らかな軸方向移動を確実にするものでもあり、針は、皮膚アタッチメント・プレートの穴を通して突き出ており、皮膚内に挿入される。
【0025】
スペーサー・メカニズムは、持針器と皮膚アタッチメント・プレートとの間の接続要素である。皮膚挿入メカニズムの使用可能な位置において、これは、その抑制手段によって、持針器と皮膚アタッチメント・プレートとを互いに十分に相隔てて平行な平面内に保持し、したがって、皮膚アタッチメント・プレートは、針の先端部を覆っている。スペーサー・メカニズムは、リリース要素によって作動される抑制手段を解放した際に、皮膚アタッチメント・プレートを持針器に対して誘導された軸方向へ移動させることを可能にする。
【0026】
抑制手段は、スペーサー・メカニズムの一部であり、持針器から隔てて置かれる皮膚アタッチメント・プレートを使用可能な位置に固定するものである。リリース要素によって作動されると、これらは、針による皮膚貫通のため、持針器を十分に加速できる所定の圧力がリリース要素に印加された場合に、この位置から素早く解放することを可能にする。
【0027】
以下では、本発明の好ましい実施例が、添付図面を参照しつつ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1a】本発明の一実施例による使用可能な位置における皮膚挿入メカニズムの断面線図である。
図1b】本発明の一実施例による使用可能な位置における皮膚挿入メカニズムの断面線図である。
図2a】針が皮膚に挿入された後の皮膚挿入メカニズムの断面線図である。
図2b】針が皮膚に挿入された後の皮膚挿入メカニズムの断面線図である。
図3】動作モードにおける皮膚挿入メカニズムの断面線図である。
図4】機能性パッケージ内の皮膚挿入メカニズムの断面線図である。
図5】流体の注射のための一体化された注射器を備える皮膚挿入メカニズムの断面線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、皮膚アタッチメント・プレート2の接着剤層1によって皮膚に付着する使用可能な位置にある皮膚挿入メカニズムを示している。持針器3、結合要素4と抑制手段5とからなるスペーサー・メカニズム、及びリリース要素6は、この実施例では、3回転軸を有し、したがって、図示されている断面では、右側部分と左側部分は、構造要素を通る異なる切口を示している。
【0030】
スペーサー・メカニズムの結合要素4は、フック型メカニズム7によって抑制手段5に連結され、フック型メカニズム8によって持針器と係合する。抑制手段5は、好ましくはピン形状の要素9を有し、皮膚アタッチメント・プレートを係合メカニズム10によって持針器3からそれがカニューレ11を覆い、皮膚との接触から保護することを十分に確実にする距離に保持するものである。スペーサー・メカニズム4は、隆起部と溝との構造12によってリリース要素6に連結され、これにより、皮膚アタッチメント・プレートに向かう方向でのリリース要素の制限された相対的移動を可能にする(矢印(1)によって示されている)。
【0031】
リリース要素6を皮膚アタッチメント・プレートの方へ圧した後、ピン形状の突起部13が、フック型メカニズム7の曲がりを引き起こし、抑制手段5との係合から減結合する。この減結合メカニズムは、フック型メカニズム7を曲げるのに必要な圧力によって、或いはスペーサー・メカニズム4とリリース要素6(図示せず)との間の個別の圧力バネによって好ましくはプリセットされる作動用の所定の圧力を必要とする。
【0032】
減結合の後に、印加された手動圧力の下で、リリース要素は、抑制手段5に対して皮膚アタッチメント・プレート2と一緒に矢印(2)によって示される方向に移動し、支持体14は、持針器2をリリース要素と一緒に移動するように強制する。
【0033】
フック型メカニズム7の構造の寸法はピン形状の突起部13と一緒に、皮膚アタッチメント・プレートに対するプリセットされたトリガー点圧力が抑制手段を減結合し、解放するのに必要になるように決められ、その結果、持針器は皮膚アタッチメント・プレートの方へ皮膚を穿刺し、針を皮膚内に挿入するのに十分な速度で軸方向に移動される。皮膚アタッチメント・プレート2のピン形状の突起部15は、皮膚アタッチメント・プレートが持針器に接近すると2つの機能を連続的に実行できるように形成される。最初に、フック型メカニズム8がくさび形の端部16によって曲げられ、持針器3からスペーサー・メカニズム4を減結合する。2番目に、他のくさび形の端部17が持針器のステイ18を曲げ、これによりくさび形の端部18が通れるようにし、ステイ18が初期位置に戻った際に、結果として、図2に示されているように、フック19による皮膚アタッチメント・プレートと持針器との間の係合が生じる。
【0034】
図2は、リリース要素6を皮膚アタッチメント・プレートの方へ押し、その結果、針が皮膚に挿入される状況を示している。皮膚アタッチメント・プレート2及び持針器3は、積み上げられ、持針器のステイ18と係合するフック19によって一緒に保持される。また、抑制手段5及びリリース要素が、次に積み上げられ、フック・メカニズム20によって一緒に保持される。皮膚アタッチメント・プレート2とのピン形状の要素9の係合メカニズム10は、結合要素4のエッジ21によって減結合され、スペーサー・メカニズムはリリース要素と一緒に取り外され得る。
【0035】
図3に示されているように、この位置で、結合要素4を保持する隆起部と溝構造12を通してスペーサー・メカニズムに係合され、またフック・メカニズム19によって抑制手段5に係合されているリリース要素を持ち上げて引き離すと、結果として、スペーサー・メカニズムとリリース要素とが一緒に取り外され、皮膚アタッチメント・プレートの接着剤層によって皮膚に付着している持針器のみが残る。
【0036】
詳細1A及び2Aは、図1の係合位置及び図2の減結合位置に対する係合メカニズム10をそれぞれ示している。詳細1Aにおいて、抑制手段のピン形状の要素9のキー22は、皮膚アタッチメント・プレート2のスロット23と係合しているが、詳細2Aにおいて、ピン形状の要素9は、結合要素4のエッジ21によって曲げられ、その結果、皮膚アタッチメント・プレート2が減結合する。
【0037】
図3は、動作モードにおける皮膚挿入メカニズムを示している。皮膚アタッチメント・プレート2は、接着剤層1によって皮膚に付着し、持針器3は皮膚内に挿入される針11とともに、持針器のステイ18及び皮膚アタッチメント・プレートのフック19によって、皮膚アタッチメント・プレートに固定される。カバー24は、係合メカニズム10のスロット23内に係入する突起部25によって、皮膚アタッチメント・プレートに固定される。これは、例えば、グリップ形状の表面26を使用してカバーの対向する側を互いに押し付けることによって達成され得る。カバーは、注射システム(図示せず)に接続され得るチューブ28で結合手段27を保持する。カバーは、これが結合手段に圧力を加えて堅く接続するように形成される。結合手段は、例えば、ルアーロック(図示されている)又は隔壁針メカニズム(図示せず)などの円錐状のものとすることができる。
【0038】
図4は、機能性パッケージ内の皮膚挿入メカニズムの断面線図を示している。皮膚挿入メカニズムは、図1に示されているものと本質的に類似しており、したがって、スペーサー・メカニズムは図示されておらず、接着剤層1でコーティングされた皮膚アタッチメント・プレート2のみ、リリース要素6、針11を含む持針器3、及び接続手段としての隔壁27が概略として示されている。
【0039】
機能性パッケージ29は、意図しない作動からリリース要素6を保護する。剥離箔30はシール31とともに、パッケージを気密密閉し、保管時に滅菌状態を保つ。フラップ32を引っ張って剥離箔を剥ぎ取ると、接着剤34によって剥離箔に留められている接着剤層保護部33の一部も引き離される。それに加えて、接着剤層保護部33の他の部分の舌状部35は、解放された柔軟なリムのくっつき合う問題が生じる危険なしに、接着剤層の残り部分を解放するために容易に接近可能になる。
【0040】
そこで、機能性パッケージ29は皮膚に押し付けられるものでよく、そのリム36は、接着剤層1を全面にぴったり付着させて固定するが、これは、皮膚アタッチメント・プレートを皮膚に安全に、また耐久性を保って粘着させることを確実にするうえで重要である。機能性パッケージが軸上でわずかに回ると、差し込み継手37が外れ、図1で説明されているように、使用可能な位置で皮膚に付着している皮膚挿入メカニズムから持ち上げられて外れ得る。
【0041】
図5は、流体の注射のための一体化された注射器又はペンを備える皮膚挿入メカニズムの断面線図を示している。本発明のそのような一実施例は、使い捨て型注射器又はペンを使って、注射液を安全に、また容易に自己付与するために必要な異なる機能について、従来技術の解決方法に比べていくつかの有利な点を有する。
【0042】
特に、接着剤層により皮膚に付着させることで、針で皮膚が凹んでしまい、注射を終える前の操作中に挿入が不完全になるか、又は挿入さえもされないか、又は皮膚から意図せず後退してしまうという危険性が回避される。さらに、機械的支持なしで針を完全に手動で挿入すると、結果として、心理的嫌悪感を引き起こし、たいてい、皮膚を安全に穿刺するのに十分な速度が得られない。その一方で、バネ型メカニズムによって注射器又はペンに取り付けられた針の挿入は、急速すぎることが避けられず、その結果、患者にショックを与え、ときには、反射的に引っ込めてしまうこととなる。対照的に、針の挿入を緩めるための皮膚アタッチメント・プレートに対する構造的にプリセットされたトリガー点圧力によって、自然な腕の動きの特性を利用し、滑らかであるが十分に速く針を移動して皮膚に当てることが、針先で皮膚を安全に穿刺し、針を皮膚内に挿入するために達成され得る。
【0043】
図5に示されている実例は、安全に使用するために必要なすべての操作をガイドし、円滑にするものである。皮膚に対して軸方向への圧力のみを必要とし、注射が完了した際に皮膚から引き抜くという、患者による必要最低限の取り扱いは、手先の器用さが減じた高齢者でも容易に行える。取り扱い及び機能の異なる段階は、図5A〜5Cに示されている。
【0044】
図5Aは、皮膚アタッチメント・プレート2の接着剤層1によって皮膚に付着する、一体化された注射器が使用可能な位置にある、皮膚挿入メカニズムの一実施例を示している。持針器3、結合要素4と抑制手段5とからなるスペーサー・メカニズム、及びリリース要素6は、この実施例では、3回転軸を有し、したがって、図示されている断面では、右側部分と左側部分は、構造要素を通る異なる切口を示している。
【0045】
スペーサー・メカニズムの結合要素4は、注射器ハウジング38の一部であるフック型メカニズム7によって抑制手段5に連結され、次いでフック型メカニズム8によって持針器と係合する。抑制手段5は、この実施例では、皮膚アタッチメント・プレート2と融合されたピン形状の要素からなり、皮膚アタッチメント・プレートを持針器3から十分な距離で保ち、カニューレ11を覆い、皮膚との接触から保護されるようにする。スペーサー・メカニズム4は、この実施例では、皮膚アタッチメント・プレートとさらに融合され、フックと溝との構造12によってリリース要素6に連結され、これにより、皮膚アタッチメント・プレートに向かう方向のリリース要素の移動を可能にする(矢印(1)によって示されている)。
【0046】
リリース要素6を皮膚アタッチメント・プレートの方へ圧した後、ピン形状の突起部13が、矢印(2)の方向のフック型メカニズム7の曲がりを引き起こし、抑制手段5との係合から減結合する。この減結合メカニズムは、フック型メカニズム7を曲げるのに必要な圧力によって好ましくはプリセットされる、作動用の所定の圧力を必要とする。
【0047】
減結合の後、印加される手による圧力の下で、リリース要素は、矢印(3)で示されているように、抑制手段5及び皮膚アタッチメント・プレート2に対して軸方向に移動し、リリース要素が注射器ハウジング38に触れると直ちに、これらはフック・メカニズム39(図5Bに示されているような)によって連結され、一緒になって皮膚アタッチメント・プレート2の方へ移動している。
【0048】
この実施例では、結合手段27は、注射器の出口のところの隔壁であり、持針器内に固定して位置決めされた針は、結合手段の方へ突き出る隔壁を穿刺し、穿刺して隔壁を抜けた後に注射器の出口を形成するように構成され、寸法を決められた先端部を有する部分40を有する。結合手段27及び持針器3は、皮膚アタッチメント・プレート2のピン形状の突起部41がフック型メカニズム8を持針器3から外すまでフック型メカニズム8によって隔てられる。
【0049】
図5Bは、持針器3が皮膚アタッチメント・プレート2に到達した瞬間の皮膚挿入メカニズムの中間位置を示している。皮膚アタッチメント・プレート3が持針器3の方へ移動すると、その結果、最初に、カニューレが挿入され、先端部が患者の皮膚の方へ向かい皮膚内に突出した。連続的に、結合手段27から隔てられている持針器3を固定していたフック型メカニズム8を減結合することによって、持針器3は、皮膚アタッチメント・プレート2によって押される、結合手段27の方へ移動し得る。
【0050】
図5Cは、皮膚から軸方向に取り外し開始時の、注射液を患者の皮膚内に送達した後の皮膚挿入メカニズムの終了位置を示している。先端部が結合手段の方へ突き出ているカニューレ40の突起部は、隔壁27を穿刺して貫通し、注射器の出口を形成している。フック41は、注射器ハウジング38と係合し、注射器内に収容されている注射液は、ピストンを手動で皮膚の方へ押すことによって排出されている。
【0051】
皮膚から矢印(7)の方向で軸方向に引っ張ることによるデバイス全体の取り外しは、以下の過程に従う(図示せず)。すべての部品は、現在一緒に固定して保持されており、皮膚アタッチメント・プレート2のみが皮膚に付着している接着剤層1によって差し控えられ、矢印(8)の方向に結合要素4及び抑制手段5とともにリリース要素6から外へ摺動することができ、これにより、皮膚から引き出された針11の保護シールドを形成する。フックと溝とからなる構造12によって画定された、終了位置において、弾力性のあるリブ42が、針のこの保護シールドから摺動して後退する可能性を阻止する。さらに、軸方向に引っ張る、及び/又は曲げることで、接着剤層が皮膚から引き離される。
【0052】
これらの明細書を読んだ後、さまざまな代替的実施例が当業者に明らかになるであろう。例えば、要素を接続し、外すための異なるメカニズムは、この機能に関する、例えば、フック、差し込み受け口、一緒に押されて広がることにより変形する要素、突起部から外すことによって変形する要素、磁気要素などの従来技術で知られている任意の構造とすることができ、移動の一部は、好適な弾力性のあるメカニズムによって強化され得る。
【0053】
図面の説明は、注射セット又はカニューレが皮膚内に挿入される注射器若しくはペンとしての応用を重点的に取り上げているが、類似の構造的特徴も、例えば、センサー又は微小透析プローブなどの診断プローブに使用され得る。
【0054】
上で説明されている針の皮膚挿入メカニズムの主要な利点は、それが患者側で操作できるように非常に単純で安全であり、針を手動で皮膚に挿入する際の心理的障害及び失敗の発生の可能性を回避する点にある。さらに、バネ式針挿入メカニズムが速すぎて患者にショックを与えときに反射的に引っ込めてしまうことが避けられないのとは対照的に、本発明の挿入メカニズムは滑らかであるが、皮膚に対する針の移動は十分な速さであり、針先で安全に皮膚を穿刺し、皮膚内に挿入する。
【0055】
それに加えて、接着剤層の外側リムを皮膚に全面的に堅固に付着させるための手段は、皮膚アタッチメント・プレートの皮膚への安全で耐久性のある粘着を保証し長期間付着させておくためには重要である。本発明によって、これは、非常に効果的に、小さなリムと不器用な指には問題となる皮膚に対して、手で円形を描いてリムを圧迫することを必要とせずに実施することができ、すでに挿入されている針は適切な圧迫のために心理的障壁とはならない。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5A
図5B
図5C