(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231112
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】セラミック変換素子、オプトエレクトロニクス半導体デバイス、及び、セラミック変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20171106BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20171106BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
H01L33/50
C09K11/80CPM
C09K11/08 J
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-536097(P2015-536097)
(86)(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公表番号】特表2015-534277(P2015-534277A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】EP2013070933
(87)【国際公開番号】WO2014056903
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】102012109650.3
(32)【優先日】2012年10月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク アイザート
(72)【発明者】
【氏名】イオーン シュトル
【審査官】
高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0227477(US,A1)
【文献】
特開2009−117825(JP,A)
【文献】
特開2006−253336(JP,A)
【文献】
特開2001−313417(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/112494(WO,A1)
【文献】
特開2004−161871(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/012354(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/131402(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0098017(US,A1)
【文献】
特開2011−129661(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0147778(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01S 5/00−5/50
C09K 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック変換素子(1)において、
・第1波長領域の電磁放射を第2波長領域の電磁放射に変換する第1発光材料(3)を有する第1セラミック層(2)と、
・第1波長領域の電磁放射を第3波長領域の電磁放射に変換する第2発光材料(5)を有する第2セラミック層(4)と
を備えており、
前記第1発光材料(3)は、(Gd,Y)3Al5O12:Ce3+とTb3Al5O12:Ce3+とを含むグループから選択されており、及び前記第2発光材料(5)は、Sc3Al5O12:Ce3+であり、
前記第1セラミック層(2)の厚さは、50μm以上300μm以下であり、
前記第2セラミック層(4)の厚さは、30μm以上100μm以下であり、
前記第1波長領域は青色光を含み、前記第2波長領域は黄色光及び/又は赤色光を含み、前記第3波長領域は緑色光を含み、
前記セラミック変換素子は、中性白色の光の生成に適している、
ことを特徴とするセラミック変換素子(1)。
【請求項2】
前記第1セラミック層(2)の主延在平面と、前記第2セラミック層(4)の主延在平面とは、前記セラミック変換素子(1)の主平面に対して平行に配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載のセラミック変換素子(1)。
【請求項3】
前記第1セラミック層(2)と前記第2セラミック層(4)とが、1つの共通の界面を形成している、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のセラミック変換素子(1)。
【請求項4】
前記第1セラミック層(2)と前記第2セラミック層(4)との間に、前記第1波長領域の電磁放射を第4波長領域の電磁放射に変換し、かつ、少なくとも1つの酸素含有無機化合物をベースにした第3発光材料(7)を有する第3セラミック層(6)が配置されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のセラミック変換素子(1)。
【請求項5】
前記第1セラミック層(2)及び/又は前記第2セラミック層(4)は、完全にセラミックから形成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載のセラミック変換素子(1)。
【請求項6】
前記変換素子(1)の前記セラミック層(2、4、6)は、接着層を用いることなく、機械的に安定的に素材結合によって互いに結合されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載のセラミック変換素子(1)。
【請求項7】
前記第1セラミック層(2)には、前記第2発光材料および場合により前記第3発光材料が含まれていない、
ことを特徴とする請求項4、又は、請求項4を引用する請求項5又は6記載のセラミック変換素子(1)。
【請求項8】
前記第2セラミック層(4)には、前記第1発光材料および場合により前記第3発光材料が含まれていない、
ことを特徴とする請求項4、又は、請求項4を引用する請求項5又は6、又は、請求項7記載のセラミック変換素子(1)。
【請求項9】
前記第3セラミック層(6)には、前記第1発光材料および場合により前記第2発光材料が含まれていない、
ことを特徴とする請求項4、又は、請求項4を引用する請求項5又は6、又は、請求項7又は8記載のセラミック変換素子(1)。
【請求項10】
オプトエレクトロニクス半導体デバイスにおいて、
・動作中に出射面(12)から第1波長領域の電磁放射を放射する半導体本体(10)と、
・前記第1波長領域の電磁放射を少なくとも部分的に第2波長領域の放射と第3波長領域の放射とに変換する、請求項1から7のいずれか一項記載のセラミック変換素子(1)とを備えており、
前記オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、前記第1波長領域の電磁放射と、前記第2波長領域の電磁放射と、前記第3波長領域の電磁放射とを放射する、
ことを特徴とするオプトエレクトロニクス半導体デバイス。
【請求項11】
前記セラミック変換素子(1)は、前記第1波長領域の光を最も長い波長の光に変換する発光材料(3,5,7)を有するセラミック層(2,4,6)が、前記半導体本体(10)の前記出射面(12)を向くように配置されている、
ことを特徴とする請求項10記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス。
【請求項12】
セラミック変換素子(1)の製造方法において、
・第1波長領域の電磁放射を第2波長領域の電磁放射に変換するために適した第1発光材料(3)を有する第1グリーンシート(15)を用意するステップと、
・第1波長領域の電磁放射を第3波長領域の電磁放射に変換するために適した第2発光材料(5)を有する第2グリーンシート(16)を用意するステップと、
・前記第1グリーンシート(15)と前記第2グリーンシート(16)とを積層させるステップと、
・前記第1グリーンシート(15)と前記第2グリーンシート(16)とを有する積層体を焼結して、請求項1〜9のいずれか一項記載のセラミック変換素子(1)を形成するステップと、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項13】
前記積層体の焼結を、単一の焼結ステップにおいて実施する、
ことを特徴とする請求項12記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セラミック変換素子と、セラミック変換素子を有するオプトエレクトロニクス半導体デバイスと、セラミック変換素子の製造方法とに関する。
【0002】
セラミック変換素子は、例えば文献DE 10 2011 010 118、DE 10 2011 113 962、及び、DE 10 2011 116 229に記載されている。文献DE 100 65 381には、積層された樹脂ベースの変換素子が例として記載されている。
【0003】
本発明の課題は、2つの異なる発光材料を有する、容易に製造可能なセラミック変換素子を提供することである。さらには、セラミック変換素子を有するオプトエレクトロニクス半導体デバイスと、このようなセラミック変換素子の製造方法とを提供したい。
【0004】
これらの課題は、請求項1に記載の特徴を有するセラミック変換素子と、請求項11に記載の特徴を有するオプトエレクトロニクス半導体デバイスと、請求項14に記載のステップを有する製造方法と、によって解決される。
【0005】
セラミック変換素子、オプトエレクトロニクス半導体デバイス、及び、セラミック変換素子の製造方法の、各好ましい実施形態及び発展形態は、それぞれ従属請求項に記載されている。
【0006】
セラミック変換素子は、特に、第1波長領域の電磁放射を第2波長領域の電磁放射に変換する第1発光材料を有する第1セラミック層を含む。セラミック変換素子はさらに、第1波長領域の電磁放射を第3波長領域の電磁放射に変換する第2発光材料を有する第2セラミック層を含む。第1発光材料と第2発光材料とは、互いに異なっており、かつ、それぞれ少なくとも1つの酸素含有無機化合物をベースにしている。
【0007】
さらに、第1波長領域と第2波長領域と第3波長領域も、互いに異なるように構成されている。この場合に、各々の波長領域が互いに重複するという可能性は排除されていない。
【0008】
特に好ましくは、第1セラミック層は、完全にセラミックから形成されている。特に好ましくは、第2セラミック層も、完全にセラミックから形成されている。
【0009】
特に好ましくは、セラミック変換素子全体が、完全にセラミック材料から形成されている。さらには、有利には、本発明のセラミック変換素子がモノリシックな変換素子であることが好ましい。つまり、変換素子の各セラミック層は、接着層を用いることなく、機械的に安定的に素材結合によって互いに結合されている。このことによって、例えば複数の各々異なる発光材料を有する単一の変換素子を使用する場合に比べて取り扱いが容易になるという利点が提供される。
【0010】
特に好ましくは、第1セラミック層の主延在平面と第2セラミック層の主延在平面とが、セラミック変換素子の主平面に対して平行に配置されている。換言すると、第1セラミック層と第2セラミック層とが1つの積層体を形成しており、当該積層体の積層方向は、セラミック変換素子の主平面に対して垂直になっている。
【0011】
セラミック変換素子の1つの実施形態によれば、第1セラミック層と第2セラミック層とが、1つの共通の界面を形成している。換言すると、第1セラミック層と第2セラミック層とを、互いに直接接触して配置することができる。
【0012】
特に好ましくは、第1発光材料及び第2発光材料は、酸素含有ガーネット発光材料である。
【0013】
例えば、第1発光材料及び第2発光材料は、Ln
3 (Al
5O
12):Ce
3+の発光材料系をベースにしており、但し、Lnは、テチウム、イットリウム、スカンジウム、ガドリニウム、テルビウムの元素のうちの少なくとも1つを表す。
【0014】
特に好ましくは、第1発光材料は、(Gd,Y)
3Al
5O
12:Ce
3+とTb
3Al
5O
12:Ce
3+とを含むグループから選択されており、第2発光材料は、Lu
3Al
5O
12:Ce
3+とSc
3Al
5O
12:Ce
3+とを含むグループから選択されている。
【0015】
第1セラミック層の厚さは、好ましくは50μm以上300μm以下である。第1セラミック層の厚さは、特に好ましくは80μm以上150μm以下である。
【0016】
第2セラミック層の厚さは、特に好ましくは30μm以上100μm以下である。
【0017】
セラミック変換素子全体の厚さは、好ましくは80μm以上250μm以下である。
【0018】
セラミック変換素子の1つの実施形態によれば、第1セラミック層と第2セラミック層との間に、第1波長領域の電磁放射を第4波長領域の電磁放射に変換する第3発光材料を有する第3セラミック層が配置されている。この場合には、第3発光材料は、特に好ましくは少なくとも1つの酸素含有無機化合物をベースにしている。第4波長領域はさらに、特に好ましくは第1波長領域とも、第2波長領域とも、第3波長領域とも異なっている。この場合に、第4波長領域と他の波長領域の1つとが互いに重複するという可能性は排除されていない。
【0019】
特に好ましくは、第1セラミック層には、第2発光材料も第3発光材料も含まれていない。同様にして特に好ましくは、第2セラミック層には、第1発光材料も第3発光材料も含まれていない。同様にして好ましくは、第3セラミック層には、第1発光材料も第2発光材料も含まれていない。しかしながらこれらの場合にも、例えば製造工程における許容公差に基づき、それぞれ他のセラミック層の各発光材料によって各セラミック層が汚染されるという可能性は排除されていない。換言すると、変換素子の複数の各々異なる発光材料は、特に好ましくは、技術的に実現可能な限りにおいて互いに異なる層の中に空間的に隔離されて配置されている。このようにすると、他の変換材料による既に変換された放射の再吸収を、有利には少なくとも低減することができる。
【0020】
第1波長領域は、特に好ましくは青色光を有するか、又は、青色光から形成されている。第2波長領域は、特に好ましくは黄色光及び/又は赤色光を有するか、又は、黄色光及び/又は赤色光から形成されている。第3波長領域は、特に好ましくは緑色光を有するか、又は、緑色光から形成されている。このような変換素子は基本的に、青色光を放射する光源と一緒に、青色又は黄色又は黄−赤色又は緑色の各放射成分を有する混合色の放射を放射するために適している。第1波長領域の青色光成分と、第2波長領域の黄色光成分又は黄赤色光成分と、第3波長領域の緑色光成分とを含む混合色の放射は、基本的に有利には、特にカメラのフラッシュとして使用するのに適した比較的広いスペクトルを有する。
【0021】
セラミック変換素子が第3セラミック層を有する場合には、第1波長領域は、好ましくは青色光を有するか、又は、青色光から形成されている。第2波長領域は、特に好ましくは黄−赤色光を有するか、又は、黄−赤色光から形成されている。第3波長領域は、特に好ましくは緑色光を有するか、又は、緑色光から形成されている。第4波長領域は、特に好ましくは黄色光を有するか、又は、黄色光から形成されている。
【0022】
第3発光材料は、好ましくはこの場合にも、第1材料及び第2材料と同じ発光材料系から選択されている。特に好ましくは、第3発光材料も、Ln
3 (Al
5O
12):Ce
3+の発光材料系から選択されており但し、Lnは、ルテチウム、イットリウム、スカンジウム、ガドリニウム、テルビウムの元素のうちの少なくとも1つを表す。第3発光材料は、例えば(Gd,Y)
3Al
5O
12:Ce
3+である。
【0023】
セラミック変換素子は、特に好ましくは、発光ダイオードのようなオプトエレクトロニクス半導体デバイスにおいて使用するために設けられている。
【0024】
オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、特に、動作中に出射面から第1波長領域の電磁放射を放射する半導体本体を含む。さらに、オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、第1波長領域の電磁放射を少なくとも部分的に第2波長領域の放射と、第3波長領域の放射とに変換するセラミック変換素子を含み、これによってオプトエレクトロニクス半導体デバイスは、第1波長領域の電磁放射と、第2波長領域の電磁放射と、第3波長領域の電磁放射とを放射する。
【0025】
このためにセラミック変換素子は、特に好ましくは、半導体本体の放射経路内に配置されている。例えばセラミック変換素子を、半導体本体の出射面に直接接触して配置することができる。このようにすると、半導体デバイスの動作中における変換素子の特に良好な冷却が可能となる。セラミック変換素子は、例えばシリコーンを用いて出射面の上に接着することができる。
【0026】
セラミック変換素子は、特に好ましくは、半導体本体の電磁放射を部分的にのみ第2波長領域の電磁放射と、第3波長領域からの電磁放射とに変換するように構成されており、その一方で、半導体本体から放射される第1波長領域の電磁放射の所定の部分は、変換されずにセラミック変換素子を通過する。このようにして、オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、第1波長領域の放射と第2波長領域の放射と第3波長領域の放射とを有する混合色の放射、又は、第1波長領域の放射と第2波長領域の放射と第3波長領域の放射とからなる混合色の放射を放射することができる。
【0027】
特に好ましくは、混合色の放射は、CIE標準表色系の白色の範囲内、特に中性白色の範囲内の色度を有する。
【0028】
特に好ましくは、セラミック変換素子は、第1波長領域の放射を最も長い波長の放射に変換する発光材料を有するセラミック層が、半導体本体の出射面を向くように配置されている。換言すると、第1波長領域の光を最も長い波長の光に変換する発光材料を有するセラミック層は、当該セラミック層が半導体本体を向くように、かつ、半導体本体の光がまず当該セラミック層を通過するように、配置されている。このようにすると、他の発光材料の1つによる既に変換された光の再吸収を、少なくとも低減することができる。
【0029】
セラミック変換素子が、各々異なる発光材料を有する3つ以上のセラミック層を含む場合には、これら3つのセラミック層は、特に好ましくは、これらの各セラミック層によって第1波長領域からそれぞれ変換される各波長領域が、半導体本体からの距離が増加するにつれてより短い波長を有するように、配置されている。
【0030】
セラミック変換素子の製造方法は、特に好ましくは以下のステップを含む:
・第1波長領域の電磁放射を第2波長領域の電磁放射に変換するために適した第1発光材料を有する第1グリーンシートを用意するステップと、
・第1波長領域の電磁放射を第3波長領域の電磁放射に変換するために適した第2発光材料を有する第2グリーンシートを用意するステップと、
・第1グリーンシートと第2グリーンシートとを積層させるステップと、
・第1グリーンシートと第2グリーンシートとを有する積層体を焼結して、上述したようなセラミック変換素子を形成するステップ。
【0031】
特に好ましくは、積層体の焼結は、単一の焼結ステップにおいて実施される。こうすることにより、セラミック変換素子の製造がより簡単になる。
【0032】
それぞれのグリーンシート自体を、複数の互いに積層されたグリーンシートから形成することができる。このようにすると、より厚いセラミック層を形成することができる。
【0033】
基本的には、グリーンシートを製造するために有機マトリクス材料の中にそれぞれの発光材料が粒子形態で導入され、この有機マトリクス材料が、引き延ばされてグリーンシートとなる。セラミック変換素子の製造方法は、例えば文献DE 10 2012 104 274に記載されており、この文献の開示内容は参照によって本願に組み込まれる。
【0034】
グリーンシートの厚さは、好ましくは20μm以上50μm以下である。
【0035】
第1グリーンシートと第2グリーンシートとを有する積層体の焼結工程において、有機マトリクス材料は、特に好ましくは完全に灰化される。
【0036】
とりわけセラミック変換素子は、第1発光材料及び第2発光材料を、本発明によれば好ましくは酸素含有性の、1つの共通の発光材料系から選択するという技術思想に基づいている。このようにすると、2つの異なる発光材料を一緒に焼結することができ、それでもなお、焼結に必要な高温によるこれら2つの発光材料の劣化を引き起こすことはなくなる。この劣化の問題は、基本的には特に、―例えば赤色光を形成するための―窒化物発光材料と、―例えば黄色光を形成するための―酸化物含有発光材料とを組み合わせた場合に生じる。このような発光材料の組み合わせは、例えば、青色光を放射する半導体本体によって励起した場合に、白色光を形成するために使用することができる。
【0037】
さらに、各々異なってはいるが、全て酸素含有無機化合物をベースにしている複数の発光材料を使用することによって、有利には、これらの発光材料を有するセラミック層同士を互いに直接接触して配置することが可能となる。
【0038】
本発明のさらなる好ましい実施形態及び発展形態は、図面に関連して以下に説明する実施例から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】1つの実施例に基づくセラミック変換素子の概略断面図である。
【
図2】1つの実施例に基づくセラミック変換素子の概略断面図である。
【
図3】1つの実施例に基づくセラミック変換素子の概略断面図である。
【
図4】1つの実施例に基づくオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
【
図5】セラミック変換素子の製造方法の1つの実施例を説明するための図である。
【
図6】セラミック変換素子の製造方法の1つの実施例を説明するための図である。
【
図7】セラミック変換素子の製造方法の1つの実施例を説明するための図である。
【
図8】セラミック変換素子の製造方法の1つの実施例を説明するための図である。
【
図9】セラミック変換素子の製造方法の1つの実施例を説明するための図である。
【
図10】従来のオプトエレクトロニクス半導体デバイスの放射スペクトル(曲線A)と、
図4に基づくオプトエレクトロニクス半導体デバイスの放射スペクトル(曲線B)とを概略的に示す図である。
【0040】
図面において、同一の要素、類似の要素、又は同一の機能を有する要素には同一の参照符号が付されている。図面と、図面に図示された要素との寸法比は、縮尺通りであるとみなすべきではない。むしろ個々の要素、特に層の厚さは、見やすくするため及び/又は理解しやすくするために誇張して大きく図示されていることもある。
【0041】
図1の実施例に基づくセラミック変換素子1は、第1波長領域の青色光を黄色光に変換するために適した第1発光材料3を有する第1セラミック層2を有している。換言すると、
図1の実施例の場合、第2波長領域は黄色光を含む。第1発光材料3は、例えばY
3Al
5O
12:Ce
3+である。
【0042】
第1セラミック層2に直接接触して第2セラミック層4が配置されている。第2セラミック層4は、第1波長領域の青色光を緑色光に変換するために適した第2発光材料5を有している。第2発光材料5は、例えばLu
3Al
5O
12:Ce
3+である。
【0043】
図1の実施例に基づくセラミック変換素子1の場合、第1セラミック層2及び第2セラミック層4は、完全にセラミックから形成されており、かつ、互いに直接接触して配置されており、従って第1セラミック層2と第2セラミック層4とは、1つの共通の界面を形成している。
【0044】
図1のセラミック変換素子1は、モノリシックに形成されている、つまり、第1セラミック層2と第2セラミック層4とは、別個の接着層を用いることなく例えば焼結工程により、機械的に安定的に素材結合によって互いに結合されている。特に好ましくは、セラミック変換素子1は、第1セラミック層2と第2セラミック層4とからなる。
【0045】
変換素子1のセラミック層2,4は2つの異なる発光材料3,5を含むが、これら2つの発光材料3,5は両方とも、酸素含有無機化合物をベースにしており、1つの共通の発光材料系から選択されている。
【0046】
図2の実施例に基づくセラミック変換素子1も、2つの異なる発光材料3,5を有する2つのセラミック層2,4を含む。しかしながら、
図1の実施例に基づくセラミック変換素子1とは異なり、第1セラミック層2は、第1波長領域の青色光を赤−黄色光に変換するために適した第1発光材料3を有している。第1発光材料3は、例えばTb
3Al
5O
12:Ce
3+である。
図2のセラミック変換素子1は、その他の点については
図1のセラミック変換素子1と同様に構成されている。
【0047】
図3の実施例に基づくセラミック変換素子1は、
図1及び
図2のセラミック変換素子1とは異なり、3つのセラミック層を有する。第1セラミック層2は、第1波長領域の青色光を黄−赤色光に変換するために適した第1発光材料3を有している。第1発光材料3は、例えばTb
3Al
5O
12:Ce
3+である。
【0048】
第2セラミック層4は、第1波長領域の青色光を第2波長領域の緑色光に変換するために適した第2発光材料5を有している。第2発光材料5は、例えばLu
3Al
5O
12:Ce
3+である。
【0049】
第1セラミック層2と第2セラミック層4との間には、第3セラミック層6が配置されている。第3セラミック層6は、第1波長領域の放射を第3波長領域の放射に変換するために適した第3発光材料7を有している。この実施例の場合、第3波長領域は黄色光を含む。第3発光材料7は、例えばY
3Al
5O
12:Ce
3+である。
【0050】
3つのセラミック層2,4,6は、それぞれ互いに直接接触して配置されている。特に好ましくは、セラミック変換素子1は、これら3つのセラミック層2,4,6からなる。
【0051】
セラミック変換素子1は、第1波長領域の放射がまず第1セラミック層2を通過し、次いで第2セラミック層4を通過し、次いで第3セラミック層6を通過するように配置されている。このようにして第1波長領域の放射は、部分的にまず赤−黄色光に変換され、その後部分的に黄色光に変換され、最後に部分的に緑色光に変換される。換言すると、各セラミック層2,4,6は、各セラミック層2,4,6によって第1波長領域からそれぞれ変換される各波長領域が、光源からの距離が増加するにつれてより短い波長を含むように、配置されている。
【0052】
図4の実施例に基づくオプトエレクトロニクス半導体デバイスは、凹部9を備えたデバイスハウジング8を有する。デバイスハウジング8の底部には、半導体本体10が取り付けられており、半導体本体10は、表側がボンディングワイヤ11を介して電気的にコンタクトされている。
【0053】
半導体本体10は、動作中に第1波長領域の電磁放射を放射するために適しており、この電磁放射は、出射面12から放射される。この実施例の場合、第1波長領域は青色放射からなる。
【0054】
半導体本体10の出射面12の上には、
図1又は
図2に基づいて既に説明したようなセラミック変換素子1が載置されている。例えば
図3に基づく別の変換素子1を、出射面12の上に配置することも可能である。
【0055】
半導体本体10の出射面12から放射された第1波長領域の青色放射は、セラミック変換素子1を通過する。この際に、青色放射の一部が、第1セラミック層2の第1発光材料3によって黄色光又は赤−黄色光に変換される。その後、青色放射は第2セラミック層4を通過し、第2発光材料5によって部分的に緑色光に変換される。半導体本体10の青色光の残りの部分は、変換されずに変換素子1を通過する。このようにして、
図4の実施例に基づくオプトエレクトロニクス半導体デバイスは、第1波長領域の青色放射と、第2波長領域の赤黄色放射と、第3波長領域の緑色放射とを含んだ、白色範囲内の色度を有する混合色の白色放射を放射する。
【0056】
この実施例の場合、デバイスハウジング8の凹部9はさらに、半導体本体10を取り囲んで保護している。
【0057】
図5〜
図9の実施例に基づく製造方法においては、第1ステップにおいて、グリーンシート用のベース材料14が製造される(図示せず)。このために、有機マトリクス材料の中に、無機の第1発光材料3が粒子形態で導入される。次いで、ベース材料14が引き延ばされてグリーンシート15となる(
図5)。同様にして、第2発光材料5を有する別のグリーンシート16が製造される(図示せず)。
【0058】
そうして、第1グリーンシート15と第2グリーンシート16とが用意される(
図6)。第1グリーンシート15は、第1波長領域の電磁放射を第2波長領域の電磁放射に変換するために適した第1発光材料3を有する。第2グリーンシート16は、第1波長領域の電磁放射を第3波長領域の電磁放射に変換するために適した第2発光材料5を有する。
【0059】
次のステップにおいて、2つのグリーンシート15,16が上下に積層される(
図7)。これら2つのグリーンシート15,16は、互いに直接接触している。最後に、第1グリーンシート15と第2グリーンシート16とを有する積層体が焼結され、これによってプレート形状のセラミック素子17が形成される。
【0060】
プレート形状のセラミック素子17は、さらなるステップにおいて、複数の分割線18に沿って複数の個々のセラミック変換素子1に分割される(
図8)。こうして、例えば
図1及び
図2に基づいて既に説明したようなセラミック変換素子1が、複数提供される(
図9)。
【0061】
3つの異なるセラミック層2,4,6を有するセラミック変換素子1を形成するためには、同様にして3つの異なるグリーンシートが用意され、互いに積層され、焼結される。
【0062】
図10の実線の曲線Aは、従来のオプトエレクトロニクス半導体デバイスによって放射される波長λに依存した相対強度Iを図示しており、この場合には、第1発光材料3と第2発光材料5とが、粒子形態で注型材料13の中に含まれている。第1発光材料3はY
3Al
5O
12:Ce
3+であり、第2発光材料5はLu
3Al
5O
12:Ce
3+である。
【0063】
図10はさらに、
図1に基づいて既に説明したような変換素子1を含むオプトエレクトロニクス半導体デバイスによって放射される波長λに依存した相対強度Iを図示している(曲線B、破線)。この場合には、第1発光材料3と第2発光材料5とが、2つの異なるセラミック層2,4の中に互いに空間的に隔離されて配置されている。この場合にも、第1発光材料3はY
3Al
5O
12:Ce
3+であり、第2発光材料5はLu
3Al
5O
12:Ce
3+である。2つの曲線を比較すると、2つの発光材料3,5を2つの別々のセラミック層2,4の中に配置することによって、変換効率を改善することができ、さらには、再吸収による所定の波長領域の放射の損失が低減されることが分かる。
【0064】
本願は、ドイツ国特許出願第DE 10 2012 109 650.3号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0065】
以上、実施例に基づいて記載してきたが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。むしろ本発明は、たとえ請求項又は実施例に明示的に記載されていなくとも、如何なる新しい特徴並びに各特徴の組み合わせをも含むものであり、特に、請求項に記載の各特徴の如何なる組み合わせをも含むものである。