(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電磁弁の各実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、下記の各実施形態では、この電磁弁を、従来と同様、内燃機関(エンジン)の油圧式バルブタイミング制御装置に適用したものを示している。
【0011】
まず、本発明に係る電磁弁が適用される油圧式バルブタイミング制御装置について説明すれば、このバルブタイミング制御装置は、
図1に示すように、図示外のエンジンのクランクシャフトからタイミングチェーンを介して回転駆動されるタイミングスプロケット1と、該タイミングスプロケット1に対し相対回動可能に設けられたカムシャフト2と、該カムシャフト2とタイミングスプロケット1との間に介装され、油圧によって当該両者1,2の相対位相を変更する位相変更機構3と、該位相変更機構3の油圧を給排に供する油圧給排手段4と、該油圧給排手段4の作動を制御する電子コントロールユニット5と、を備えている。
【0012】
前記位相変更機構3は、タイミングスプロケット1の内周側に一体に設けられた円筒状のハウジング6と、カムシャフト2の一端部に軸方向から固定され、ハウジング6内に回転自在に収容されたベーンロータ7と、から主として構成されている。すなわち、ハウジング6の内周側に突設された、ベーンロータ7の環状基部7bの外周面に摺接する例えば4つのシュー6aと、ベーンロータ7の外周側に突設された、前記各シュー6aに対応する4つのベーン7aと、によって隔成される遅角側油室Pr及び進角側油室Paに油圧を給排することで、ハウジング6に対するベーンロータ7の相対位相が変化し、これによって、タイミングスプロケット1(前記クランクシャフト)に対するカムシャフト2の相対位相が変更されるようになっている。なお、前記各ベーン7aの1つには、最遅角側におけるベーンロータ7の自由な回転を拘束するロック機構3aが設けられていて、エンジンの始動時やアイドル運転時等の安定化が図られている。
【0013】
前記油圧給排手段4は、オイルパン8内に貯留された作動油を圧送する油圧供給源であるポンプ9と、該ポンプ9によって圧送された作動油を電子コントロールユニット5からの制御信号に応じて遅角室Pr又は進角室Paの一方に供給すると共に他方の作動油をオイルパン8へと導く流路切替弁である電磁弁SVと、該電磁弁SV及びオイルパン8と遅角室Pr及び進角室Paとを連通する油通路Lと、から主として構成されている。
【0014】
前記油通路Lは、電磁弁SVの後述する遅角ポートP1と位相変更機構3の遅角室Prとを連通し、該遅角室Prに対して作動油を給排する遅角通路L1と、電磁弁SVの後述する進角ポートP2と位相変更機構3の進角室Paとを連通し、該進角室Paに対して作動油を給排する進角通路L2と、オイルパン8とポンプ9の吸入口とを連通する吸入通路L0と、ポンプ9の吐出口と電磁弁SVの後述する導入ポートP3とを連通し、ポンプ9によって吐出された作動油を位相変更機構3側へと導く導入通路L3と、電磁弁SVの後述する排出ポートP4とオイルパン8とを連通し、排出ポートP4から排出された作動油をオイルパン8へと還流するドレン通路L4と、から構成され、電磁弁SVによって遅角通路L1及び進角通路L2と導入通路L3及びドレン通路L4との連通が選択的に切り替えられるようになっている。
【0015】
前記電磁弁SVは、いわゆるスライドスプール形の4ポート比例電磁式切換弁であって、
図1〜
図3に示すように、バルブボディ11内に軸方向移動可能に収容されたスプール12の軸方向位置に応じてバルブボディ11に設けられた後述する各ポートP1〜P4の連通状態を切り替えるスプールバルブ10と、該スプールバルブ10に結合され、電子コントロールユニット5からの制御電流に基づき発生する電磁力をもって可動鉄心25を介してスプール12を駆動する電磁ソレノイド20と、から主として構成され、後述するヨーク21の外周に設けられたブラケット21cを介してエンジンに取付固定される。
【0016】
前記スプールバルブ10は、そのほぼ全体がエンジンのシリンダヘッド30に穿設されたバルブ収容穴30aへと嵌挿され、前記各通路L1〜L4に接続される後述のポートP1〜P4を有するバルブボディ11と、該バルブボディ11内に摺動自在に収容配置され、その軸方向位置によって前記各ポートP1〜P4の連通状態を切り替えるスプール12と、を備えている。
【0017】
前記バルブボディ11は、例えばアルミニウム等の非磁性金属材料によってほぼ円筒状に形成されていて、その一端部(
図1中の左側の端部)に拡径形成されたフランジ部11aを介し、電磁ソレノイド20の後述するヨーク21の一端部(
図1中の右側の端部)に設けられた複数の第1爪部17をもって当該電磁ソレノイド20の一端部にかしめ固定されている。
【0018】
そして、かかるバルブボディ11の内周側には、スプール12を摺動自在に収容するスプール収容室13が軸線方向に沿って設けられると共に、その周壁には、遅角通路L1と接続する遅角ポートP1、進角通路L2と接続する進角ポートP2、導入通路L3と接続する導入ポートP3及び排出通路L4と接続する排出ポートP4とがそれぞれ周方向に沿って一定の軸方向幅をもって貫通形成されている。
【0019】
ここで、前記各ポートP1〜P3には、作動油中に混入した異物の侵入を抑制するフィルタ部材F1〜F3が設けられている。特に、フィルタ部材F3は、
図4〜
図7例えばステンレスや黄銅からなる薄肉の金属平板により形成され、外縁(外枠)を構成する枠体としてのフレーム31と、該フレーム31によって囲われる開口部に設けられたメッシュ状のフィルタ32と、により構成され、
図5に示すような帯状に構成されたものを
図4に示すように導入ポートP3の外周に切欠形成された環状溝19に巻き付けて、
図6等に示すようにその両端部を重合し溶接(プロジェクション溶接)することにより、バルブボディ11に取付固定されている(
図2参照)。なお、前記フィルタ32のメッシュサイズは、70〜100メッシュ(目開き0.15〜0.20mm)程度の大きさに設定されている。
【0020】
さらに、前記フィルタ部材F3には、その内周側に、すなわち導入通路L3からバルブボディ11内に流入するという作動油の流れにおけるフィルタ32の下流側に、導入ポートP3における作動油の流出を規制する逆止弁33が設けられている。この逆止弁33は、導入ポートP3の開口幅よりも若干小さく設定された前記フレーム31と同様の薄肉で帯状の金属平板を長手方向に湾曲してなる弁体34の一端部をフレーム31の内周面31aに溶接(プロジェクション溶接)することによりフィルタ部材F3として一体的に構成されたもので、前記湾曲により生ずる弾性力(復元力)でもって弁体34の外周面34aがフレーム31の内周面31aと弾接することにより、その内周側から外周側への作動油の通流が規制される構成となっている。
【0021】
すなわち、前記逆止弁33は、導入ポートP3に対してバルブボディ11の外周側から油圧が作用するときは(
図7(a)中の矢印参照)、同
図7(a)に示すように逆止弁33の弁体34が前記一端部たる溶接部35を支点として他端側がフィルタ部材F3のフレーム31から離間するように撓み変形することによって、導入ポートP3を通じたバルブボディ11内への作動油の流入が許容される一方、導入ポートP3に対してバルブボディ11の内周側から油圧が作用するときは(
図7(b)中の矢印参照)、同
図7(b)に示すように逆止弁33の弁体34がフィルタ部材F3のフレーム31に圧接することによって、導入ポートP3を通じたバルブボディ11外への作動油の流出が規制されるようになっている。
【0022】
前記スプール12は、
図1に示すように、その軸方向位置に応じ進角、遅角ポートP1,P2と導入、排出ポートP3,P4との連通状態を選択的に切り替える2つの大径状の第1、第2ランド部12a,12bをもって、スプール収容室13内にて摺動自在に収容されている。なお、この際、スプール12とバルブボディ11の他端壁との間にはコイルスプリング14が弾装されていて、該コイルスプリング14をもって、常に第1固定鉄心23側に付勢された状態となっている。この結果、スプール12は、電磁ソレノイド20が非通電の状態ではスプール収容室13の
図1中の左側端に位置し、電磁ソレノイド20に給電されることにより、コイルスプリング14の付勢力に抗してスプール収容室13の
図1中の右側へと軸方向移動することとなる。
【0023】
より詳しくは、前記電磁ソレノイド20が非通電状態のときには、スプール12が
図1中の左側端に位置することで、前記両ランド部12a,12b間の縮径部外周に隔成される環状通路15を介し遅角ポートP1と導入ポートP3が連通し、スプール12の内部に穿設された油通路16を介し進角ポートP2と排出ポートP4が連通する。一方、電磁ソレノイド20に給電されスプール12が
図1中の右側端へと移動することにより、前記環状通路15を介し進角ポートP2と導入ポートP3が連通し、前記油通路16を介し遅角ポートP1と排出ポートP2が連通することとなる。
【0024】
前記電磁ソレノイド20は、磁性体によってほぼ円筒状に形成された本発明のケースに相当するヨーク21と、該ヨーク21の内周側に収容され、ボビン22aの外周にコイル22bを巻回してなるコイルユニット22と、その一端部に有する各フランジ部23b,24bを介してヨーク21の軸方向各端部に固定されると共に、その他端側の各筒状部23a,24aがコイルユニット22の内周側に収容されて互いに対峙するように配置された磁性体からなる第1固定鉄心23及び第2固定鉄心24と、第2固定鉄心24の内周側に摺動自在に収容配置された磁性体からなる可動鉄心25と、第1固定鉄心23の内周側に収容され、その一端面がスプール12の他端面に当接すると共に、その他端面が前記可動鉄心25の一端面に当接するように設けられた非磁性体からなるロッド26と、を備えている。
【0025】
前記ヨーク21は、板状の磁性金属材を丸めてその対向する周方向両端部を互いに接合することにより、コイルユニット22の外周を囲繞するような円筒状に構成されている。そして、このヨーク12の軸方向各端には、それぞれ周方向に所定の間隔を隔てて配置される複数の第1爪部17及び第2爪部18が突設されていて、第1爪部17についてはバルブボディ11のフランジ部11aの外側端縁に、第2爪部18については第2固定鉄心24のフランジ部24bの外側端縁に、それぞれ係止するようにかしめ固定されている。
【0026】
前記第1、第2固定鉄心23,24は、例えば鉄等の磁性金属材料によってほぼ円筒状に形成されたもので、相互に対峙するかたちで配置され、それぞれコイルユニット22の内周側に収容される筒状部23a,24aと、該筒状部23a,24aの外端部にそれぞれ段差拡径状に設けられたフランジ部23b,24bと、を有している。そして、第1固定鉄心23は、ヨーク21の第1爪部17をかしめ加工することでフランジ部23bを介してボビン22aとバルブボディ11とによって挟持状態に固定されると共に、ヨーク21の周壁に磁気結合されている。一方、第2固定鉄心24も、ヨーク21の第2爪部18をかしめ加工することでフランジ部24bを介してボビン22aと一緒に共締め状態に固定されると共に、ヨーク21の周壁に磁気結合されている。
【0027】
前記コイルユニット22は、樹脂材料によりほぼ円筒状に形成されたボビン22aの外周にコイル22bが巻回されてなるもので、ヨーク21の他端部に固定された樹脂製のコネクタ22c及びこれに接続される図示外のハーネスを介して電子コントロールユニット5に接続されている。そして、この電子コントロールユニット5から給電されることで、ヨーク21、第1、第2固定鉄心23,24及び可動鉄心25により磁路が形成され、第1固定鉄心23と可動鉄心25の間に磁気吸引力が発生することとなる。
【0028】
ここで、前記電子コントロールユニット5は、機関の回転数を検出するクランク角センサや吸入空気量を検出するエアフローメータ等の各種センサ類からの信号に基づいて機関運転状態を検出し、該機関運転状態に応じて電磁弁SVのコイル22bに制御電流を給電し又はこれを遮断することで、前述したような各ポートP1〜P4の切り替え(油通路Lの切り替え)が行われる。
【0029】
前記可動鉄心25は、例えば鉄等の磁性金属材料によって第2固定鉄心24の内径よりも僅かに小さい外径を有するほぼ円筒状に形成されたものであって、第2固定鉄心24の筒状部24a内周に非磁性体からなるキャップ29を介してほぼ同軸上に配置され、第1固定鉄心23の先端部に穿設された凹部23cとの間においていわゆるエアギャップ(メインギャップ)が形成されるようになっている。また、この可動鉄心25の内周部には、所定の内径に設定されたいわゆる呼吸孔25aが当該可動鉄心25の軸線方向に沿って貫通形成されていて、前記呼吸孔25aを通じてメインギャップに充満した作動油を第2固定鉄心24側へ逃がすことで、当該作動油中における当該可動鉄心25の軸方向移動が確保されている。すなわち、可動鉄心25は、第2固定鉄心24の内周側において、その周壁にガイドされるようにして当該第2固定鉄心24に対して相対移動可能となっており、コイル22bの通電時には、第1固定鉄心23に形成される磁束によって当該第1固定鉄心23側へと吸引されることで、その一端(
図1中の右方向端)が第1固定鉄心23の凹部23c内側面に当接するまでの範囲内で軸方向移動するようになっている。
【0030】
前記ロッド26は、例えばステンレスやアルミニウム、樹脂等の非磁性材料により可動鉄心25側へと開口する有底円筒状に形成されたものであり、前記コイルスプリング14の付勢力に基づくスプール12からの押圧力をもって可動鉄心25と一体となって移動するようになっている。また、このロッド26の外周には、径方向内側へと窪む軸方向溝26aが周方向にほぼ等間隔に設けられていると共に、当該各軸方向溝26aの第2固定鉄心24側の端部には、ロッド26の内外周を連通する連通孔26bが径方向に沿って貫通形成されていて、スプールバルブ10側から前記各軸方向溝26aへと流入した作動油を前記各連通孔26bを通じてロッド26の内周側へと逃がし、さらにこのロッド26の内周部を通じて可動鉄心25の呼吸孔25aへと逃がすことで、作動油中におけるロッド26の軸方向移動が確保されている。
【0031】
以下、本実施形態に係る電磁弁SVの組立〜取付について、
図2〜
図5に基づいて説明する。
【0032】
まず、前記バルブボディ11に対して電磁ソレノイド20を結合させた後、前記各ポートP1〜P3に前記各フィルタ部材F1〜F3を取り付ける。特に、導入ポートP3については、
図5に示すような予め逆止弁33(弁体34)がプロジェクション溶接された前記帯状のフィルタ部材F3を、
図4に示すようにフィルタ32を導入ポートP3と重合させるかたちで当該導入ポートP3の外周(環状溝19)へと巻き付け、
図2に示すようにその両端部をプロジェクション溶接することによって固定される。これによって、電磁弁SVの組立が完了する。
【0033】
その後、この組立が完了した電磁弁SVについて、
図3に示すように、そのスプールバルブ10を先端側(反電磁ソレノイド20側)からシリンダヘッド30のバルブ収容穴30aへと嵌挿して、ブラケット21cを介して電磁ソレノイド20をシリンダヘッド30にボルト40によって締結することで、当該電磁弁SVの取付が完了することとなる。
【0034】
ここで、従来の電磁弁に用いる逆止弁は、フィルタ部材F3とバルブ収容穴30aの間に介装され、バルブ収容穴30aにおける導入通路L1の開口縁に弁体が弾接するように構成されたものであった。そして、かかる構成に基づき、導入通路L3側からの油圧によっては導入ポートP3の通流を許容する一方、油圧供給対象(本実施形態に係るバルブタイミング制御装置に相当)側の油圧によっては導入ポートP3の通流を規制していた。このため、電磁弁の取付にあたっては、スプールバルブ10のフィルタ部材F3外周側に位置する弁体を、その弾性力に抗して内周側へと押し縮めた状態でバルブ収容穴30aへと嵌挿しなければならず、取付作業が煩雑となっていた。
【0035】
これに対して、本実施形態に係る電磁弁SVは、逆止弁33がフィルタ部材F3の下流側にて当該フィルタ部材F3のフレーム31の内周面31aと弾接するように構成されることで、逆止弁33をフィルタ部材F3とバルブボディ11の間に予め介装した状態でもってスプールバルブ10をバルブ収容穴30aへと嵌挿してシリンダヘッド30に取り付けることになる。すなわち、当該電磁弁SVの取付時には、弁体34を押し縮めるような手間を伴うことなく、良好な取付作業性を確保することができる。
【0036】
次に、本実施形態に係る電磁弁SVの作用及び特徴的な効果について、
図7等に基づいて説明する。
【0037】
まず、前記遅角ポートP1又は進角ポートP2へと作動油を供給するとき、すなわち前記遅角通路L1又は進角通路L2の油圧に対し導入通路L3の油圧が相対的に高い状態にあるときは、
図7(a)に示すように、導入通路L3側の油圧に基づき弁体34の先端側がフレーム31の内周面31aから離間するように内周側へと撓み変形して開弁し、当該弁体34とフレーム31との間の隙間Cより導入ポートP3へと作動油が導入されて、前記各ポートP1,P2の作動油の給排に供することとなる。
【0038】
一方、前記導入通路L3の油圧に対し遅角通路L1又は進角通路L2の油圧が相対的に高い状態にあるときは、
図7(b)に示すように、前記各通路L1,L2側の油圧に基づき弁体34がフィルタ部材F3のフレーム31の内周面31aへと圧接して閉弁することとなる。これにより、導入ポートP3を通じたバルブボディ11内から当該バルブボディ11外への作動油の流出(逆流)の規制に供することとなる。
【0039】
このように、本実施形態では、前記逆止弁33をフィルタ部材F3の下流側に配置されていることで、該逆止弁33の上流側に位置するフィルタ部材F3によって作動油中に含まれる異物を濾過することが可能となる。これにより、逆止弁33において弁体34とフィルタ部材F3(フレーム31)の間に異物が噛み込んでしまう不具合の発生が極力抑制され、その結果、当該逆止弁33の良好なシール性を維持することができる。
【0040】
しかも、本実施形態の場合には、前記フレーム31及び弁体34が共に金属材料によって形成されているため、弁体34に対する過大な油圧の作用や当該弁体34の繰り返しの弾性変形による破損やへたり等が抑制されるうえ、両者31,34が溶接によって連結されていることで、当該連結部の破損のおそれも低減できる。その結果、逆止弁33の良好な耐久性の確保にも供される。
【0041】
図8は、本発明に係る電磁弁の第1実施形態の変形例を示したものであって、前記第1実施形態に係る逆止弁33の固定方法を変更したものである。かかる構成以外の基本的構成については前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成及び作用については、同一の符号を付すことによってその説明を省略する。
【0042】
すなわち、本変形例に係る電磁弁SVでは、前記バルブボディ11の外周に横断面円形の係合突起11bが突設されている一方、前記フィルタ部材F3のフレーム31及び前記逆止弁33の弁体34に、それぞれ前記係合突起11bと係合可能な係合穴31c,34cが設けられていて、前記係合突起11bによる周方向位置の位置決めが可能となるように構成されると共に、逆止弁33の弁体34がフレーム31に溶接されるのではなく当該フレーム31とバルブボディ11とによって挟持される構成となっている。
【0043】
したがって、前記フィルタ部材F3の組み付けにあたっては、まず、バルブボディ11の係合突起11bに弁体34の係合穴34cを係合させて当該弁体34をバルブボディ11へと仮組みした後、帯状のフィルタ部材F3を、その係合穴31cを係合突起11bに係合させることで当該フィルタ部材F3の周方向位置決めを行いつつ導入ポートP3の外周(環状溝19)へと巻き付け、その両端部を溶接(プロジェクション溶接)する。これにより、当該フィルタ部材F3がバルブボディ11に固定されると共に、当該固定に伴って弁体34がバルブボディ11とフィルタ部材F3とにより挟持固定されることとなる。
【0044】
以上のことから、本変形例においても、前記逆止弁33がフィルタ部材F3の下流側に配置されていることによって前記第1実施形態と同様の作用効果が奏せられることは勿論、特に本変形例の場合には、前記係合突起11bによる位置決め作用によって、フィルタ部材F3及び逆止弁33を適切な位置に容易に組み付けることが可能となることから、前記電磁弁SVの組立作業性のさらなる向上に供されるメリットがある。
【0045】
図9〜
図11は、本発明に係る電磁弁の第2実施形態を示したものであり、前記第1実施形態に係るフィルタ部材F3及び逆止弁33の各構成を変更したものである。なお、かかる構成以外の基本的構成については前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成及び作用については、同一の符号を付すことによってその説明を省略する。
【0046】
すなわち、本実施形態に係る電磁弁SVでは、前記フィルタ部材F3のフレーム31が樹脂材料によって成形されていて、その長手方向の両端部に設けた1対の係止爪36,36をもって、バルブボディ11に係止固定されている。なお、前記逆止弁33は、弁体34が金属材料によって形成されていて、前記樹脂材料によって形成されるフレーム31にかしめ固定されている。より具体的には、フィルタ部材F3のフレーム31に所定形状のかしめ突起31dが突設されている一方、逆止弁33の弁体34に前記かしめ突起31dに対応する係合穴34cが貫通形成されていて、該係合穴34cに挿通されたかしめ突起31dの先端部が熱かしめにより潰されることで、逆止弁33がフィルタ部材F3に予め固定されるようになっている。
【0047】
以上のような構成から、本実施形態でも、前記第1実施形態と同様に、前記各通路L1,L2の油圧に対し導入通路L3の油圧が相対的に高い状態では、
図11(a)に示すように、導入通路L3側の油圧に基づいて弁体34の一端部のかしめ部37を支点に当該弁体34の他端側がフレーム31の内周面31aから離間するように内周側へと撓み変形することにより開弁することとなる。一方、導入通路L3の油圧に対し前記各通路L1,L2の油圧が相対的に高い状態では、
図11(b)に示すように、前記各通路L1,L2側の油圧に基づいて弁体34の外周面34aの全体がフレーム31の内周面31aに圧接することにより閉弁することとなる。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、前述のように金属製のフィルタ部材F3(フレーム31)及び逆止弁33を備える前記第1実施形態と比べて耐久性の観点では若干劣ってしまうものの、逆止弁33をフィルタ部材F3の下流側に設けたことによる良好なシール性の維持といった本発明の基本的な作用効果については前記第1実施形態と同様である。
【0049】
図12〜
図14は、本発明に係る電磁弁の第2実施形態の変形例を示したものであり、前記第2実施形態に係る逆止弁33の支持点を変更したものである。かかる構成以外の基本的構成については前記第2実施形態と同様であるため、当該第2実施形態と同一の構成及び作用については、同一の符号を付すことによってその説明を省略する。
【0050】
すなわち、本変形例に係る電磁弁SVでは、前記第2実施形態と同様に樹脂材料によって成形された前記フレーム31の長手方向中間部に、開口部を二分する中間梁31eが幅方向に沿って設けられると共に、この中間梁31eの内側面に前記かしめ突起31dが突設されていて、前記逆止弁33が、前記弁体34のほぼ中央部を支持するかたちでフレーム31の中間梁31eに熱かしめによって固定されている。なお、前記中間梁31eにより二分された各開口部には、それぞれ前記フィルタ32が設けられている。
【0051】
以上のような構成から、本実施形態では、前記各通路L1,L2の油圧に対し導入通路L3の油圧が相対的に高い状態では、
図14(a)に示すように、導入通路L3側の油圧に基づき弁体34の中央部のかしめ部37を支点に当該弁体34の両端側がそれぞれフレーム31の内周面31aから離間するように内周側へ撓み変形することにより開弁することとなる。一方、導入通路L3の油圧に対し前記各通路L1,L2の油圧が相対的に高い状態では、
図14(b)に示すように、前記各通路L1,L2側の油圧に基づき弁体34の外周面34aの全体がフレーム31の内周面31aに圧接することにより閉弁することとなる。
【0052】
したがって、本変形例においても、前記逆止弁33がフィルタ部材F3の下流側に配置されていることによって前記第2実施形態と同様の作用効果が奏せられることは勿論、特に本変形例の場合には、逆止弁33において弁体34がフレーム31の中央部にて支持するように構成されていることから、前記第2実施形態のような端部支持によるものと比べて、開弁時における作動油の流動抵抗を低減することが可能となる。これにより、当該開弁時における作動油の圧力損失が低減され、作動油のより良好な給排に供されるメリットがある。
【0053】
図15、
図16は、本発明に係る電磁弁の第3実施形態を示したものであり、前記第2実施形態に係る逆止弁33を、前記フィルタ部材F3の外周側に配置するよう構成したものである。
【0054】
すなわち、作動油の通流方向が前記第1、第2実施形態とは反対方向となる場合には、本実施形態のように、前記フレーム31の中間梁31eの外周部にかしめ突起31dを設けることで弁体34をフレーム31の外周側に配置し、当該フレーム31の外周面31bに弁体34の内周面34bを弾接させるように構成することができる。
【0055】
かかる構成の場合、前記フィルタ部材F3の外周側の油圧に対して内周側の油圧が相対的に大きくなることで、当該内周側の油圧に基づき弁体34の中央部のかしめ部37を支点として当該弁体34の両端側がそれぞれフレーム31の外周面31bから離間するように外周側へ撓み変形することにより開弁する一方、前記フィルタ部材F3の内周側の油圧に対して外周側の油圧が相対的に大きくなることで、当該外周側の油圧に基づき弁体34の内周面34bの全体がフレーム31の外周面31bに圧接することにより閉弁することとなる。
【0056】
したがって、本実施形態によっても、前記逆止弁33はフィルタ部材F3の下流側に配置されることで、前記第1、第2実施形態等と同様の作用効果が奏せられる。
【0057】
本発明は前記各実施形態等の構成に限定されるものではなく、前記スプールバルブ10や電磁ソレノイド20等の細部の構成、例えば前記各ポートP1〜P4の位置及び形状など本発明の構成とは直接関係しない細部の構成は勿論のこと、例えば前記フィルタ部材F3のフレーム31の構成や前記逆止弁33における弁体34の支持手段など本発明の構成と直接関係する部分であっても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適用対象の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0058】
その一例として、樹脂材料からなるフレーム31に金属材料からなる弁体34を固定する場合について、前記実施形態等では、弁体44をフレーム31にかしめ固定する態様を例示したが、かかる手段の他にも、例えばフィルタ部材F3のフレーム31の成形にあたって弁体34をインサート成形するなどフレーム31と弁体34とを一体に成形することとしてもよい。かかる構成とすることで、逆止弁33の組付工程を省略することが可能となり、前記電磁弁SVの生産性のさらなる向上を図ることができる。
【0059】
前記各実施形態等から把握される特許請求の範囲における請求項に記載した発明以外の技術的思想について、以下に説明する。
【0060】
(a)請求項3に記載の電磁弁において、
前記枠体は、前記バルブボディの外周に巻き付けられ、かつ、その両端部が重合され溶接されていることを特徴とする電磁弁。
【0061】
(b)請求項4に記載の電磁弁において、
前記逆止弁は、前記枠体にかしめ固定されていることを特徴とする電磁弁。
【0062】
かかる構成とすることで、逆止弁を枠体に容易に固定することができ、電磁弁の生産性の向上に供される。
【0063】
(c)請求項7に記載の電磁弁において、
前記逆止弁は、前記枠体の一端部に固定されていることを特徴とする電磁弁。
【0064】
(d)請求項7に記載の電磁弁において、
前記逆止弁は、前記枠体のほぼ中央位置に固定されていることを特徴とする電磁弁。
【0065】
(e)前記(c)又は(d)に記載の電磁弁において、
前記逆止弁は、前記枠体に対し熱かしめ固定されていることを特徴とする電磁弁。
【0066】
(f)前記(c)又は(d)に記載の電磁弁において、
前記逆止弁は、前記枠体に対しインサート成形によって固定されていることを特徴とする電磁弁。
【0067】
このように、逆止弁をフィルタ部材と一体に成形することで、逆止弁の組付工程を省略することが可能となり、電磁弁の生産性のさらなる向上を図ることができる。
【0068】
(g)請求項7に記載の電磁弁において、
前記枠体は、その長手方向両端部に設けられた係止爪をもって、前記バルブボディに係止固定されていることを特徴とする電磁弁。
【0069】
(h)請求項8に記載の電磁弁において、
前記逆止弁は、前記枠体への固定位置に対して片側に撓み変形することを特徴とする電磁弁。