(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231114
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】希釈ガス混合器を備えた2段燃焼
(51)【国際特許分類】
F23R 3/34 20060101AFI20171106BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20171106BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
F23R3/34
F23R3/42 A
F02C7/18 C
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-538332(P2015-538332)
(86)(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公表番号】特表2015-533412(P2015-533412A)
(43)【公表日】2015年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2013058650
(87)【国際公開番号】WO2014063835
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】12189685.6
(32)【優先日】2012年10月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル デューズィング
(72)【発明者】
【氏名】ルイス タイ ウォ チョン ヒラレス
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ルーベン ボティエン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン ヘラート
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ スフアマンス
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
カナダ国特許出願公開第02832493(CA,A1)
【文献】
特開昭51−021011(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第10214574(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0218503(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10312971(DE,A1)
【文献】
特開昭60−014017(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0296839(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0083737(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0003998(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0036859(US,A1)
【文献】
特開平08−219445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00− 7/22
F23R 3/06− 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2段燃焼器配列(104)であって、第1のバーナ(112)と、第1の燃焼室(101)と、作動中に前記第1の燃焼室(101)から出てくる高温ガスに希釈ガスを混合するための混合器(117)と、第2のバーナ(113)と、続いて流体流れ接続されて配置された第2の燃焼室(102)と、を備え、前記混合器(117)は、前記第1の燃焼室(101)と前記第2のバーナ(113)との間に延びる高温ガス流路において燃焼ガスを案内するように適応されており、前記高温ガス流路は、前記第1の燃焼室(101)への接続のために適応された、上流端部における入口と、前記第2のバーナ(113)への接続のために適応された、下流端部における出口とを有するダクトを含む、2段燃焼器配列(104)において、
前記混合器(117)は、希釈ガスを混合して、前記第1の燃焼室(101)から出てくる高温の煙道ガスを冷却するために、前記混合器(117)の側壁(116)から内方へ延びる複数の噴射管(114,115)を有し、
前記混合器(117)は、平均軸方向流速を一定に保つためにおよび/または平均軸方向流速の増大を混合位置の上流における軸方向流速のプラス20%に制限するために、希釈空気の混合による体積流量の増大と同じ比で流れ面積を増大させるように、希釈空気混合の領域においてディフューザセクションを有する、
ことを特徴とする、2段燃焼器配列(104)。
【請求項2】
前記側壁(116)に対して垂直な、高温ガス流内への第1の進入深さ(L)を有する第1の噴射管(114)と、前記第1の進入深さ(L)よりも小さい、前記側壁(116)に対して垂直な、高温ガス流内への第2の進入深さ(l)を有する第2の噴射管(115)とを備える、請求項1記載の燃焼器配列(104)。
【請求項3】
前記第2の噴射管(115)の進入深さ(l)に対する前記第1の噴射管(114)の進入深さ(L)の比は、2よりも大きいおよび/または3よりも大きい、請求項1または2記載の燃焼器配列(104)。
【請求項4】
前記第1の噴射管(114)の長さに対する、前記混合器(117)における前記第1の噴射管(114)の位置における前記高温ガス流路の横断面の相当直径の比は、2.5〜8の範囲および/または3〜6の範囲である、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃焼器配列(104)。
【請求項5】
前記第2の噴射管(115)の直径(d)に対する、前記第2の噴射管(115)の長さの比は、1/4よりも小さい、請求項1から4までのいずれか1項記載の燃焼器配列(104)。
【請求項6】
前記混合器(117)は、前記側壁(116)に第1の噴射管(114)と噴射孔(118)とを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の燃焼器配列(104)。
【請求項7】
前記第2の噴射管(115)または噴射孔(118)は、前記第1の噴射管(114)の後流を補償するために前記第1の噴射管(114)の下流に配置されているおよび/または前記第2の噴射管(115)または噴射孔(118)は、前記第1の噴射管(114)の前の高温ガスの軸方向流速を減じるために前記第1の噴射管(114)の下流に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の燃焼器配列(104)。
【請求項8】
前記第1の噴射管(114)と前記第2の噴射管(115)との間の流れ方向の距離(a)は、前記第1の噴射管(114)の直径(D)の3倍よりも小さいおよび/または前記第1の噴射管(114)の直径(D)の2.5倍よりも小さい、請求項1から7までのいずれか1項記載の燃焼器配列(104)。
【請求項9】
1つの長さ(L,l)の噴射管(114,115)は、前記混合器(117)を通流する高温ガスの主流れ方向に対して垂直な1つの平面において前記混合器(117)の側壁に沿って周方向に分配されて配置されている、
または、前記噴射管(114,115)は、該噴射管(114,115)による流れの妨害を減じるために、前記混合器(117)の側壁(116)に沿って、前記混合器(117)を通流する高温ガスの主流れ方向に対して垂直な平面に関してずらされて配置されており、ずれは、前記管の直径(d,D)の半分より小さい、請求項1から8までのいずれか1項記載の燃焼器配列(104)。
【請求項10】
前記噴射管(114,115)の内面に冷却リブおよび/またはピンフィールドが配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の燃焼器配列(104)。
【請求項11】
前記噴射管(114,115)の外面はTBC(119)で被覆されているおよび/または前記噴射管(114,115)の下流側に拡散冷却孔(120)が設けられている、請求項1から10までのいずれか1項記載の燃焼器配列(104)。
【請求項12】
前記混合器(117)は、高温ガスの流速(Vhot)を減じるために、希釈空気混合部の上流にディフューザセクションを有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の燃焼器配列(104)。
【請求項13】
前記噴射管(114,115)から出てくる希釈ガスが、噴射位置において高温ガス流の方向の流れ成分を有するように、前記噴射管(114,115)は、高温ガスの流れ方向に対して90°未満の角度で傾斜させられている、請求項1から12までのいずれか1項記載の燃焼器配列。
【請求項14】
ガスタービン(100)を作動させる方法であって、前記ガスタービン(100)は、
少なくとも圧縮機(103)と、
燃焼器配列(104)であって、該燃焼器配列(104)は、第1のバーナ(112)と、第1の燃焼室(101)と、作動中に前記第1の燃焼室(101)から出てくる高温ガスに希釈ガスを混合するための混合器(117)と、第2のバーナ(113)と、続いて流体流れ接続されて配置された第2の燃焼室(102)と、を備え、前記混合器(117)は、前記第1の燃焼室(101)と前記第2のバーナ(113)との間に延びる高温ガス流路において燃焼ガスを案内するように適応されており、前記高温ガス流路は、前記第1の燃焼室(101)への接続のために適応された、上流端部における入口と、前記第2のバーナ(113)への接続のために適応された、下流端部における出口とを有するダクトを含み、
前記混合器(117)は、希釈ガスを混合して、前記第1の燃焼室(101)から出てくる高温の煙道ガスを冷却するために、前記ダクトの側壁(116)から内方へ延びる複数の噴射管(114,115)を有する、燃焼器配列(104)と、
タービン(105)と、を備えるガスタービン(100)を作動させる方法において、
前記希釈ガス(110)を、前記混合器(117)の横断面の様々な領域へ混合し、
前記混合器(117)は、平均軸方向流速を一定に保つためにおよび/または平均軸方向流速の増大を混合位置の上流における軸方向流速のプラス20%に制限するために、希釈空気の混合による体積流量の増大と同じ比で流れ面積を増大させる、
ことを特徴とする、ガスタービン(100)を作動させる方法。
【請求項15】
前記希釈ガスを、前記混合器(117)の横断面の様々な領域へ希釈ガスを導入するために、噴射孔(118)および/または第2の噴射管(115)、および第1の噴射管(114)を通じて噴射する、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希釈ガスを燃焼器配列内へ混合することを含む、ガスタービン用の2段燃焼器配列に関する。本発明は、加えて、希釈ガスを燃焼器配列内へ混合することを含む、ガスタービンを作動させる方法に関する。
【0002】
開示の背景
風または太陽などの不安定な再生可能源による発電が増大していることにより、既存のガスタービンベースの発電プラントは、電力需要のバランスを保ち、電力網を安定させるためにますます利用されている。すなわち、改良された運転柔軟性が要求されている。これは、ガスタービンがしばしばベース負荷設計点よりも低い負荷、すなわち、より低い燃焼器入口温度および燃焼温度で運転されることを意味する。
【0003】
それと同時に、エミッション制限値および全体的なエミッション許容はより厳しくなっているので、より低いエミッション値で運転し、部分負荷運転時および移行中においても低いエミッションを保つことが要求される。なぜならば、これらは、累積エミッション限界の原因でもあるからである。
【0004】
従来の燃焼システムは、圧縮機入口質量流量を調節することによってまたは異なるバーナ、燃料段または燃焼器の間における燃料分割を制御することによって、運転条件における可変性に対応するように設計されている。しかしながら、これは新たな要求を満たすには不十分である。
【0005】
エミッションをさらに減じかつ運転柔軟性を高めるために、2段燃焼が独国特許出願公開第10312971号明細書において提案されている。運転条件、特に第1の燃焼室の高温ガス温度に応じて、ガスが第2のバーナ(シーケンシャルバーナとも呼ばれる)へ進入させられる前に高温ガスを冷却する必要がある。この冷却は、燃料噴射、および第2のバーナにおける第1の燃焼器の高温煙道ガスとの、噴射された燃料の予混合を許容するために有利である。
【0006】
従来の冷却方法は、主高温ガス流における大きな圧力降下につながる熱交換器構造を必要とするか、または側壁からの冷却媒体の噴射を提案する。側壁からの冷却媒体の噴射のために、大きな圧力降下が必要とされる。大きな圧力降下は、このような燃焼器配列で作動させられるガスタービンの効率にとって不利であり、全体の流れの制御された冷却が困難である。
【0007】
開示の概要
本開示の課題は、第1の燃焼室と第2のバーナとの間の希釈ガス混合のための混合セクションを備える、2段燃焼器配列を提案することである。第2のバーナのための適切な流入条件を提供するために、希釈ガスが混合セクションにおいて混合される。特に、高温ガスが冷却される。
【0008】
高い入口温度の結果、大量のエミッション(特にNOx、COおよび未燃焼炭化水素)および/または第2のバーナにおける逆火が生じ得る。逆火およびNOxは、高い入口ガス温度または高い酸素濃度により、噴射された燃料のための自己点火時間が短縮されることにより誘発され、これは、より早い点火(逆火につながる)または燃料空気混合のための時間の短縮を生じ、燃焼中に局所的なホットスポットを生じ、結果的にNOxエミッションの増大につながる。低温領域は、自己点火時間が長くなることにより、COエミッションを生じ得る。これは、COからCO
2への燃焼のための時間を短縮し、低下した局所的火炎温度は、さらにCOからCO
2への燃焼を減速させる。最後に、局所的なホットスポットは、混合器の下流の部分の過熱につながり得る。
【0009】
開示による2段燃焼器配列は、第1のバーナと、第1の燃焼室と、作動中に第1の燃焼室から出てくる高温ガスに希釈ガスを混合するための混合器と、第2のバーナと、引き続き流体流れ接続されて配置された第2の燃焼室と、を備え、混合器は、第1の燃焼室と第2のバーナとの間に延びる高温ガス流路において燃焼ガスを案内するように適応されており、高温ガス流路は、第1の燃焼室への接続のために適応された、上流端部における入口と、第2のバーナへの接続のために適応された、下流端部における出口とを有するダクトを含む。
【0010】
局所的な高い酸素濃度は、局所的な高温と同じ効果、例えば、混合のための時間を短縮する急速な反応、高い燃焼温度、NOxエミッションの増大および場合によっては逆火を生じる可能性がある。局所的な低い酸素濃度は、局所的な低温と同じ効果、例えば、COおよびUHC(未燃焼炭化水素)エミッションの増大につながる遅い反応を生じる可能性がある。
【0011】
高いまたは低い局所的入口速度は、第2のバーナおよび後続の第2の燃焼室における滞留時間の延長または短縮につながる可能性があり、これは、不均一な自己点火時間と同様の望ましくない効果を生じ、例えば、第2のバーナにおける滞留時間の短縮は、不完全混合および高いNOxにつながる可能性がある。第2の燃焼器における滞留時間の短縮は、不完全燃焼につながる可能性があり、その結果、COエミッションを増大させる。第2のバーナにおける流速の低下は、早期点火および逆火につながる可能性がある。
【0012】
空力的観点からの別の重要な要求は、高温ガス通路および希釈ガス供給部における圧力損失を最小限にとどめることである。両者は、このような燃焼器配列により作動するガスタービンの性能に影響を与える可能性がある。
【0013】
第1の実施の形態によれば、混合器は、複数の噴射管を有し、複数の噴射管は、第1の燃焼室から出てくる高温の煙道ガスを冷却して第2のバーナへの適切な流入条件を提供するために、希釈ガスを混合するためにダクトの壁部から内方へ延びている。
【0014】
これらの管の直径、長さおよび数は、所要の局所的質量流量および温度低下が小さな圧力降下で達成されるように、希釈ガスを高温ガス流へ混合するように設計されている。通常、噴射管は、混合前の希釈ガス圧力の合計圧力の0.4%〜2%の圧力降下で希釈ガスの混合を可能にする。噴射管の入口における小さな圧力降下により、混合前の希釈ガス圧力の合計圧力の0.2%〜1%の圧力降下で十分であり得る。入口圧力降下を減じるために、丸みづけられた管入口を使用することができる。
【0015】
1つの実施の形態によれば、燃焼器配列は、側壁に対して垂直な高温ガス流内への第1の進入深さを有する第1の噴射管と、側壁に対して垂直な第2の進入深さを有する第2の噴射管とを含む。第2の噴射管の進入深さは、第1の噴射管の進入深さよりも小さくてよい。
【0016】
側壁に対して垂直に配置された管の場合、高温ガス通路内へ延びる管の長さは、進入深さと等しい。
【0017】
別の実施の形態によれば、第2の噴射管の進入深さに対する第1の噴射管の進入深さの比は、2よりも大きい。さらに別の実施の形態によれば、第2の噴射管の進入深さに対する第1の噴射管の進入深さの比は、3よりも大きい。
【0018】
さらに別の実施の形態によれば、少なくとも、第1および第2の噴射管の長さの間の長さを有する第3の噴射管が混合器に配置されている。第3の噴射管は、例えば、第1の噴射管の上流または下流に配置することができ、第1の噴射管の60%〜80%の長さを有することができる。
【0019】
1つの実施の形態によれば、第1の噴射管の進入深さに対する、混合器における第1の噴射管の位置における流路の横断面の相当直径の
比は、2.5〜8の範囲である。さらに別の実施の形態によれば、第1の噴射管の進入深さに対する、混合器における第1の噴射管の位置における流路の横断面の相当直径の比は、3〜6の範囲である。缶型構造における混合器の場合、相当直径は、流れダクトの面積と同じ横断面積を与える円形のダクトまたは管の直径である。環状構造の混合器の場合、相当直径は、環状ダクトの高さ(すなわち外側半径から内側半径を引いたもの)である。
【0020】
1つの実施の形態によれば、第2の噴射管の直径に対する第2の噴射管の長さの比は、1/4よりも小さい。この実施の形態では、希釈ガスを最小限の圧力損失で側壁の近くで混合することができる。この短い管は、側壁の境界層を超える、混合される希釈ガスの進入、および主流への混合を可能にする。
【0021】
別の実施の形態によれば、混合器は、側壁に沿って配置された、第1の噴射管および噴射孔を有する。第1の噴射管は、希釈ガスを高温ガス流路の中央領域に向かって混合するように配置されており、噴射孔は、希釈ガスを高温ガス流路の壁領域へ混合するように配置されている。
【0022】
高温ガス流路における圧力降下を最小限にするために、第2の噴射管または噴射孔を第1の噴射管の近くに配置することが有利であり得る。第1の噴射管の近くの第2の噴射管または噴射孔から噴射された希釈ガスは、圧力降下を減じることができる。特に、第2の噴射管または噴射孔を、第1の噴射管の下流に配置することができるか、または、その逆に、すなわち第1の噴射管または噴射孔を、第2の噴射管または噴射孔の下流に配置することができる。第2の噴射管が第1の噴射管の下流に配置されている場合、第1の噴射管の後流を補償することができ、これにより、第1の噴射管による圧力損失を減じる。第2の噴射管が第1の噴射管の上流に配置されている場合、第1の噴射管の近くにおける流速は、第2の噴射管の後流により減じられ、これにより、第2の噴射管の噴射された希釈空気は、圧力降下をも減じる。
【0023】
別の実施の形態によれば、第1の噴射管と第2の噴射管、もしくは噴射孔の間の高温ガスの流れ方向での距離は、第1の噴射管の直径の3倍よりも小さく、好適には第1の噴射管の直径の2.5倍よりも小さい。短い距離は、混合器の全長を減じ、後流内への有効な噴射を可能にする。
【0024】
1つの実施の形態によれば、1つの長さの複数の管、例えば第1の噴射管は、混合器を通流する高温ガスの主流れ方向に対して垂直な1つの平面において混合器の壁に沿って周方向に分配されて配置されている。
【0025】
別の実施の形態によれば、管は、混合器の壁に沿って周方向に分配され、かつ混合器を通流する高温ガスの主流れ方向に対して垂直な平面に関してずらされて配置されている。ずれは、高温ガス流路内へ延びる管の妨害を減じる。混合器の長さを短くするために、ずれは、管直径の半分よりも小さくてよい。妨害を有効に減じるために、ずれは、好適には管直径の10%よりも大きく、より好適には管直径の25%よりも大きい。
【0026】
混合器の管は、第1の燃焼室から出てくる高温ガスに曝される。管は、本来、管を通流する希釈ガスによって冷却される。しかしながら、管の寿命を延ばすために、管の温度を低下させるための付加的な手段を提供することができる。
【0027】
1つの実施の形態では、管の内側における熱伝達率が高められている。熱伝達の増大のために、噴射管の内面に冷却リブおよび/またはピンフィールドを配置することができる。
【0028】
別の実施の形態では、管の外面は、サーマルバリアコーティング(TBC)で被覆されている。別の実施の形態では、サーマルバリアコーティングは管の前縁領域に提供されている。これは、例えば、前縁から±45°の領域であってよい。TBCと組み合わせてまたはTBCに代えて、拡散冷却穴を管に提供することができ、これにより、希釈ガスの一部は冷却穴から排出され、これにより、管壁の熱負荷を減じる。好適には、拡散冷却穴は管の下流側に配置されている。希釈ガスは、高温ガスの合計圧力に関して低い差圧で噴射することができる。したがって、前縁における噴射が可能ではない。加えて、下流側の拡散冷却により、混合器圧力降下に対する管後流の望ましくない効果を、少なくとも部分的に軽減することができる。
【0029】
本開示の課題のうちの1つは、高温ガス流路における小さな圧力降下での希釈ガスの混合を可能にする混合器を提供することである。圧力降下を減じるために、低い流速が好ましい。1つの実施の形態によれば、燃焼器配列の混合器は、高温ガスの流速を減じるために希釈ガス混合部の上流にディフューザセクションを有する。これに代えてまたは加えて、混合器は、流れ面積を増大するために希釈ガス混合部の領域にディフューザセクションを有する。なぜならば、体積流量が、希釈ガスの混合により増大するからである。流れ面積の増大は、軸方向流速を一定に保つために、体積流量増大と同じ比を有することができる。別の実施の形態では、流れ面積の増大は、平均軸方向速度の増大が、混合位置の上流の軸方向速度の20%以内であるように選択される。
【0030】
別の実施の形態では、管から出てくる希釈ガスが噴射位置における高温ガス流の方向の流れ成分を有するように、噴射管は、高温ガスの流れ方向に対して90°未満の角度で傾斜させられている。
【0031】
好適には、管から出てくる希釈ガスの軸方向成分が、噴射位置における高温ガス流の軸方向流速と等しいかまたは±50%以内であるように、噴射管が所定の角度で傾斜させられている。
【0032】
燃焼器配列の他に、このような燃焼器配列を備えるガスタービンは、本開示の主体である。このようなガスタービンは、少なくとも圧縮機と、燃焼器配列とを備え、燃焼器配列は、第1のバーナと、第1の燃焼室と、作動中に第1の燃焼室から出てくる高温ガスに希釈ガスを混合するための混合器と、第2のバーナと、引き続き流体流れ接続されて配置された第2の燃焼室と、を備え、混合器は、第1の燃焼室と第2のバーナとの間に延びる高温ガス流路において燃焼ガスを案内するように適応されており、高温ガス流路は、第1の燃焼室への接続のために適応された、上流端部における入口と、第2のバーナへの接続のために適応された、下流端部における出口とを有するダクトを含み、さらにタービンを備える。混合器は、複数の噴射管を有し、複数の噴射管は、作動中に第1の燃焼室から出てくる高温の煙道ガスを冷却するために、希釈ガスを混合するためにダクトの側壁から内方へ延びている。混合器は、高温ガスを冷却するために作動中に希釈ガスが混合されるように配置されている。
【0033】
ガスタービンの他に、このようなガスタービンを作動させる方法は、本開示の主体である。高温ガスが冷却されるように、混合器において希釈ガスを高温ガスに混合することができる。1つの実施の形態によれば、混合器の横断面の様々な領域において希釈ガスを導入するために、希釈ガスは、孔および/または様々な長さを有する噴射管を通じて噴射される。1つの実施の形態では、第1の噴射管は、希釈ガスを高温ガス流路の中央領域に向かって混合するように配置されており、第2の噴射管または噴射孔は、希釈ガスを高温ガス流路の壁領域へ混合するように配置されている。
【0034】
燃焼器壁および/または混合セクションの側壁を冷却するために、しみ出し冷却が用いられてもよい。
【0035】
希釈空気噴射部の下流において、希釈空気と高温ガスとの混合を、流路の狭窄によって高めることができる。
【0036】
2段燃焼に関して、燃焼器の組合せを以下のように配置することができる:
・両方とも、第1および第2の燃焼器は、2段の缶型−缶型構成として構成されている。
・第1燃焼器は、環状の燃焼室として構成されており、第2燃焼器は、缶型構成として構成されている。
・第1燃焼器は缶型構成として構成されており、第2燃焼器は、環状燃焼室として構成されている。
・両方とも、第1および第2燃焼器は、環状燃焼室として構成されている。
【0037】
図面の簡単な説明
開示、その性質及びその利点は、添付の図面を用いて以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1a,b,cおよびdは、希釈ガスを混合するための混合器を備える、2段燃焼を用いる一般的なガスタービンを示している。
【
図2a】第1および第2の噴射管を備える混合器を示している。
【
図2b】第1の噴射管および噴射孔を備える混合器を示している。
【
図2c】第1の噴射管および噴射孔と、広がった混合器側壁とを備える混合器を示している。
【
図2d】第1および第2の噴射管と、圧縮機プレナムからの直接の希釈ガス供給とを備える混合器を示している。
【
図3】高温ガス流の方向に傾斜した第1および第2の噴射管を備える混合器の壁部分を示している。
【
図4】ずらされた第1および第2の噴射管を備える混合器側壁の部分を示している。
【
図5】内側および外側の側壁に配置された第1および第2の噴射管を備える、環状構造の混合器の一部を示している。
【
図6】円筒状壁部に配置された第1および第2の噴射管を備える、缶型構造の混合器の一部を示している。
【0039】
開示の実施の形態
図1a,b,cおよびdは、開示による2段燃焼器配列104を備えるガスタービン100を示している。ガスタービン100は、圧縮機103と、燃焼器配列104と、タービン105とを有する。燃焼器配列104は、第1のバーナ112と、第1の燃焼室101と、作動中に第1の燃焼室101から出てくる高温ガスに希釈ガスを混合するための混合器117とを有する。混合器117の下流において、燃焼器配列104は、さらに、第2のバーナ113と、第2の燃焼室102とを有する。第1のバーナ112、第1の燃焼室101、混合器117、第2のバーナ113および第2の燃焼室102は、順次、流体流れ接続して配置されている。燃料を、第1の燃料噴射部123によって第1のバーナ112へ導入し、圧縮機103において圧縮された圧縮空気と混合し、第1の燃焼室101において燃焼させることができる。希釈ガスは、後続の混合器117において混合される。付加的な燃料を、第2の燃料噴射部124によって第2のバーナへ導入し、混合器117から出た高温ガスと混合し、第2の燃焼室102において燃焼させることができる。第2の燃焼室102から出た高温ガスは、後続のタービン105において膨張させられ、仕事を行う。タービン105および圧縮機103はシャフト106に配置されている。
【0040】
タービン105から出た排ガス107の残りの熱はさらに、排熱回収ボイラまたは蒸気発生用のボイラ(図示せず)において利用することができる。
【0041】
ここに示された例においては、圧縮排出ガスは希釈ガスとして混合される。通常、圧縮機排出ガスは、圧縮された周囲空気である。煙道ガス再循環(図示せず)を備えたガスタービンの場合、圧縮機排出ガスは、周囲空気と再循環された煙道ガスとの混合物である。
【0042】
通常、ガスタービンシステムは、ガスタービン100のシャフト106に連結された発電機(図示せず)を含む。
【0043】
混合器117の様々な典型的な実施の形態が、
図1a〜
図1dの拡大断面図として
図2a〜
図2dに示されている。
図2aは、長さLを有する第1の噴射管114と、第1の噴射管114の下流に配置された長さlを有する第2の噴射管115とを含む混合器を備える第1の例を示している。この例では、圧縮機プレナムからの圧縮ガスは、燃焼器ライナに沿って、接続ダクト111内を、希釈ガスとして案内される。接続ダクト111から、希釈ガス110は、第1の噴射管114および第2の噴射管115を通じて混合器内へ噴射される。混合器117は、高さHの横断面を有する。
【0044】
混合器は、環状の横断面を有するように配置することができる。環状混合器の場合、高さHは、環状通流部の外壁の直径と、環状通流部の内壁の直径との差である。円筒状の横断面を有する混合器(缶型混合器配列)の場合、高さHは、横断面の直径である。第1の噴射管114の高さLと、第2の噴射管115の高さlとは、噴射された希釈ガス110と、第1の燃焼室101から出てくる高温ガスとの良好な混合が保証されるように選択される。
【0045】
図2bは、長さLを有する第1の噴射管114と、噴射孔118とを含む混合器117を備える一例を示している。
図2aの第2の噴射管115は、噴射孔118と置き換えられている。噴射孔の使用は、混合器117における高温ガス流の圧力降下を減じることができる。噴射孔は、例えば、高さHが、長さLを有する第1の噴射管114および噴射孔118を通る希釈ガスの混合による良好な混合を許容するために十分に小さいならば、使用することができる。
【0046】
図2cは、長さLを有する第1の噴射管114と、第1の噴射管114の下流に配置された長さlを有する第2の噴射管115とを含む混合器を備える別の例を示している。高温ガス流における圧力損失を減じるために、混合器は、希釈ガスが混合される混合器の領域において広がった側壁116を備えて配置されている。広がった側壁116により、混合器の横断面は、ディフューザのように増大している。この横断面の増大は、流速の低下と、第1の噴射管114および第2の噴射管115によって生ぜしめられる圧力降下の減少とにつながる。さらに、横断面の増大は、高温ガス流へ希釈ガスを噴射することによって生じる圧力降下を減じる。
【0047】
図2dは、
図2aの例に基づく例を示している。この例では、希釈ガス110は、(圧縮機103の下流の)圧縮機プレナムから第1の噴射管114および第2の噴射管115へ直接に供給される。第1の噴射管114および第2の噴射管115は、圧縮機プレナム内へ延びており、これにより、より高圧で、かつより低温の希釈ガス110(希釈ガスとしての使用前に燃焼器の冷却器による温度ピックアップは存在しない)が利用可能である。
【0048】
図3は、傾斜した第1および第2の噴射管114,115を備える混合器117の壁部分を示している。第1および第2の噴射管114,115は、第1および第2の噴射管114,115の圧力降下を減じるために高温ガスの流れの方向に傾斜させられている。好適には、傾斜は、管から出てくる希釈ガスが、噴射位置において高温ガスの流れ方向で軸方向流れ成分V
d,axを有しており、この軸方向流れ成分V
d,axは、高温ガスの流速V
hotと等しい。希釈ガスは、希釈ガスの速度V
dで噴射管114,115から出ていく。これは、希釈ガスの軸方向速度V
d,axを有する、高温ガス流の方向の成分と、高温ガス流に対して垂直な希釈ガスの速度V
d,nを有する、高温ガスに対して垂直な流れ成分とを有する。高温ガス流に対して垂直な希釈ガスの速度V
d,nは、高温ガス流への希釈ガスの進入、および高温ガス流との混合を促進する。
【0049】
図3の例において、噴射管114,115の温度を低下させるために、噴射管114,115の上流側にサーマルバリアコーティング(TBC)119が提供されている。TBCは、例えば、上流側半分のセクションまたは噴射管114,115全体の周囲に提供することができる。加えて、下流側には冷却孔120が設けられている。管壁を冷却する以外に、これらの冷却孔120から排出された冷却空気が、噴射管114,115の後流へ噴射され、これにより、高温ガス流における圧力降下を減じる。
【0050】
図4は、直径Dを有するずらされた第1および第2の噴射管114,115を備える混合器117の側壁116の切り取られたセクションの平面図を示している。第1の噴射管は、高温ガスの流れ方向に対して垂直な平面Aもしくは平面A’に配置されている。第1の噴射管は、ずれsだけずらされており、すなわち、平面Aは、平面A’に対して流れ方向で距離sに配置されている。ずれにより、2つの隣接する第1の噴射管114の間の自由距離f’は、ずらされていない2つの隣接する噴射管の間の自由距離fと比べて増大されている。
【0051】
第2の噴射管115は、同じずれsで、第1の噴射管114の下流に、第1および第2の噴射管114,115の間の距離aで配置されている。図示した例では、第2の噴射管115の直径dは、第1の噴射管114の直径Dと等しい。
【0052】
図5は、環状構造の混合器117の一部分の一例を示している。第1および第2の噴射管114,115は、内側および外側の側壁116に配置されている。内側および外側の側壁116は、これらの間の環状の高温ガス流路と同心状に配置されている。高温ガスは、高温ガスの速度V
hotで混合器117へ流入する。結果的に生じた混合ガスは、混合ガスの速度V
mixで混合器117から出ていく。
【0053】
一方の環状の側壁116、例えば外側の側壁のみからの噴射管を介した混合も可能である(図示せず)。これは、噴射管への希釈ガスの供給を促進することができる。
【0054】
図6は、缶型構造の混合器の一部分の一例を示している。
図6は、円筒状の側壁116の切取り図を示している。第1および第2の噴射管114,115は、円筒状壁部116に配置されている。第2の噴射管115は、高温ガス流速V
hotの方向で第1の噴射管114の下流に配置されている。第1および第2の噴射管114,115への入口は、噴射管114,115に進入する希釈ガスの圧力損失を減じるように丸みづけられている。第2の噴射管115は、入口の丸みの半径の2倍のオーダでしかない長さを有する。
【0055】
第1の燃焼室101および第2の燃焼室102は、燃焼器缶型−缶型構造に配置することができる。すなわち、第1の燃焼室101および第2の燃焼室102は、缶型燃焼室である。
【0056】
第1の燃焼室101および第2の燃焼室102は、燃焼器缶型−環状構造に配置することができる。すなわち、第1の燃焼室101は環状燃焼室として配置されており、第2の燃焼室102は缶型燃焼室として配置されている。
【0057】
第1の燃焼室101および第2の燃焼室102は、燃焼器環状−缶型構造に配置することができる。すなわち、第1の燃焼室101は缶型燃焼室として配置されており、第2の燃焼室102は環状燃焼室として配置されている。
【0058】
第1の燃焼室101および第2の燃焼室102は、燃焼器環状−環状構造に配置することができる。すなわち、第1の燃焼室101および第2の燃焼室102は、環状燃焼室である。
【0059】
混合器117の混合の質は、重要である。なぜならば、第2の燃焼室102のバーナシステムは、規定された入口温度および入口速度分布を要求するからである。
【0060】
全ての説明した利点は、明記した組合せだけに限定されるのではなく、開示の範囲から逸脱することなく、その他の組合せにおいてまたは単独で使用することもできる。例えば個々のバーナまたはバーナの複数のグループを作動停止させるために、その他の可能性が選択的に考えられる。さらに、希釈ガスは、混合器117における混合の前に冷却空気クーラにおいて再冷却することができる。さらに、噴射管または噴射孔の配置を逆転することができ、すなわち、短い第2の噴射管または孔を、長い第1の噴射管の上流に配置することができる。さらに、別の管長さおよび管直径の組合せを有する付加的な管タイプを設けることもできる。
【符号の説明】
【0061】
100 ガスタービン
101 第1の燃焼器
102 第2の燃焼器
103 圧縮機
104 燃焼器配列
105 タービン
106 シャフト
107 排ガス
108 圧縮空気
109 燃焼生成物
110 希釈ガス
111 接続ダクト
112 第1のバーナ
113 第2のバーナ
114 第1の噴射管
115 第2の噴射管
116 側壁
117 混合器
118 噴射孔
119 TBC
120 冷却孔
123 第1の燃料噴射
124 第2の燃料噴射
a 距離
A,A’ 高温ガス流れ方向に対して垂直な平面
f,f’ 自由距離
L 第1の噴射管の長さ
l 第2の噴射管の長さ
D 第1の噴射管の直径
d 第2の噴射管の直径
H 高温ガス流路の高さまたは相当直径
s ずれ
V
hot 高温ガスの速度
V
d 希釈ガスの速度
V
d,ax 希釈ガスの軸方向速度
V
d,n 高温ガス流に対して垂直な希釈ガスの速度
V
mix 高温ガス流および希釈ガスの混合物の速度