(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0005】
本願発明を、本発明の好ましい実施形態を示す添付図を参照して、以下にさらに詳細に説明する。この発明は、しかしながら、異なる形状で実施することが可能であり、ここに記載した実施形態に限定すると解釈すべきものではない。むしろ、これらの実施形態は、この記載を完全なものとし、ここに記載した本発明の範囲を当業者に十分伝えるために、提示するものである。図において、類似の番号は全般にわたって類似のエレメントを意味する。
【0006】
以下の記載及び/又は特許請求の範囲で、「上に」、「覆う」、「上に配置する」、「上部に」、を以下の記載及び/又は特許請求の範囲で用いることがある。「上に」、「覆う」、「上に配置する」、「上部に」は、2つ以上のエレメントが相互に物理的に接触していることを示すために用いることがある。しかしながら、「上に」、「覆う」、「上に配置する」、「上部に」は、相互に直接接触していないことを意味する可能性もある。例えば、「上部に」は、1つのエレメントが別の1つのエレメントの上にあるが、相互に接触しておらず、2つのエレメントの間に他のエレメントがある可能性がある。さらに、用語「及び/又は」は、「及び」を意味することもあり、「又は」を意味することもあり、「排他的論理和」を意味することもあり、「1つ」を意味することもあり、「1つ以上、しかしすべてではない」を意味することもあり、「いずれも〜でない」を意味することもあり、及び/又は、「両方」を意味することもあるが、特許請求の対象の範囲は、これに限定されない。
【0007】
本実施形態は、一般に酸化亜鉛材料をベースにした金属酸化物バリスタ(MOV)に関する。知られている通り、このタイプのバリスタは、微視組織に酸化亜鉛粒子が含まれるセラミック本体を具備し、このセラミック微視組織内に配置された他の金属酸化物のような種々の他の構成要素を含むことができる。このようなセラミック酸化亜鉛バリスタの性質は、一般に、バリスタの正確な組成及び微視組織に応じて変化することがある。背景として、MOVは、主として、酸化亜鉛顆粒が固体で高い導電性材料である一方、顆粒の境目の他の酸化物が高い絶縁性を持つディスクを形成するために焼結された酸化亜鉛顆粒からなる。酸化亜鉛顆粒が満たすこの点で、焼結により、対称的なツェナーダイオードに匹敵する「マイクロバリスタ」を製造することができる。金属酸化物バリスタの電気的振舞は、直列又は並列に接続された複数のマイクロバリスタから得られる。MOVの焼結物であることが、高いエネルギーを吸収することができる高い電気的負荷容量を持つこと、また、それゆえに高いサージ電流の処理容量を有することの説明となる。
【0008】
特に、種々の既知のMOV装置は、セラミックの結晶(粒子)の間の境目に、一方向だけに電流を流すことのできるダイオード接合を形成することができる。焼結した後、セラミックMOVの微視組織内の粒子の集合は、各ペアが多くの他のダイオードのペアに並列になっている連続的なダイオードのペアのネットワークとしてモデル化することができる。小さいか又は中程度の電圧が電極にかけられたとき、ほんの少しの電流が、ダイオード接合を通る逆方向の漏れ電流として流れる。大きな電圧がかけられたとき、熱電子放出及び電子トンネル効果の組み合わせにより、ダイオード接合が壊れる。この性質により、MOVは低電圧では高抵抗となり高電圧では低抵抗となる、非常に非線形な電流‐電圧特性をもつ。
【0009】
既知のMOV装置、特に酸化亜鉛ベースのバリスタの性質を改善するための幅広い試みがなされてきた。本実施形態に応じて、新規な自明でない素材のMOVセラミックを酸化亜鉛をベースに開示する。特に、本願発明者は、以下に詳述するように非常に優れたバリスタ装置としての性質を発揮する新しい組成を発見した。このような機能強化されたバリスタ装置を形成する方法も開示される。
【0010】
図1には1つのバリスタ102が、そして
図2には、以下に詳述するような改善された性質を有して製造された別のバリスタ202が描かれている。特に、バリスタ本体104、204は、バリスタ102、202の電気的性能を予想外に改善する新しい組成を持つように製造することができる。バリスタ102、202は各々、それぞれが1対のリード106、206を有するタイプのバリスタを示す。しかし、本実施形態では、バリスタは、当業者には明らかなもののみならず、任意の、都合のよい、形状、大きさ、リード構成で製造することができる。
【0011】
図3は、本実施形態を満たす機能強化されたバリスタを形成するための例示的処理300を示す。処理300は、以下に詳述するような機能強化された性質を有するバリスタをベースにした酸化亜鉛を製造するために用いることができる。ブロック302にて、バインダ溶液を作る。バインダ溶液は、バリスタ素材をバリスタ本体にする処理に用いるバインダを生成するために用いられる。種々の実施形態において、バインダ溶液は、高温で水に溶かしたポリマー素材を用いて作ることができる。1つの例では、バインダは、ポリビニルアルコール(PVA)、特に、10重量パーセントのPVAの脱イオン化された水溶液により調合される。この水溶液は、高温でPVAと水の混合物をかき混ぜることにより作ることができる。1つの例では、この水溶液を、90℃で約2時間高温でかき混ぜる。
【0012】
さらに
図3に示されるように、ブロック304で溶剤を作る。溶剤は、ブロック302で作られたPVA溶液を水と他の成分の混合物に加えることにより作られる。溶剤は、1以上の分散剤、消泡剤、他の結合剤、及び、pH調整のための添加物のような他の添加物を含有することができる。本実施形態にあわせて、溶剤は、プラスチックの容器のような便利な容器で上述の原料をかき混ぜることにより作ることができる。
【0013】
ブロック306から310で、機能強化されたバリスタを形成するための種々の成分を、溶剤に加えるために計測される。例えば、ブロック306にて、Al、B、又はアルカリ土類金属を含む添加物のような種々の添加物が、溶剤に加えられる。これらの添加物は一般的に最終的にバリスタが形成されるときのトレース成分として組み込まれる。
【0014】
ブロック308にて、金属酸化物のセットが溶剤に添加するために計測される。金属酸化物には、例えば、Bi
2O
3、Co
3O
4、Mn
3O
4、Cr
2O
3、NiO、及びSb
2O
3を含めることができる。これらの成分は、各金属酸化物が約0.1パーセントから約3パーセントまでのオーダーのモルパーセントとなるような、最終的なバリスタにおける軽微な成分として組み込まれる。上記金属酸化物成分の、本実施形態により形成されたバリスタの例示的な配合範囲には、モル分率が0.2パーセントと2.5パーセントとの間のBi
2O
3を具備する酸化物の形態のビスマスと、モル分率が0.2パーセントと1.2パーセントとの間のCo
3O
4を具備する酸化物の形態のコバルトと、モル分率が0.05パーセントと0.5パーセントとの間のMn
3O
4を具備する酸化物の形態のマンガンと、モル分率が0.05パーセントと0.5パーセントとの間のCr
2O
3を具備する酸化物の形態のクロムと、モル分率が0.5パーセントと1.5パーセントとの間のNiOを具備する酸化物の形態のニッケルと、モル分率が0.05パーセントと1.5パーセントとの間のSb
2O
3を具備する酸化物の形態のアンチモンと、モル分率が0.001パーセントと0.05パーセントとの間のB
2O
3を具備する酸化物の形態のボロンと、モル分率が0.001パーセントと0.05パーセントとの間のAl
3+の形のアルミニウムとが含まれる。いくつかの変化形態において、モル分率が0.2パーセントと1.0との間のTiO
2を具備する酸化物の形態のチタンがバリスタパウダー内に含まれる。金属酸化物成分の正確な組成を調整することにより、バリスタの性能は実質的に改善される。
【0015】
図4A及び4Bには、「L20G」、「L100S」、「L150A」と称す、3つの異なる具体的な構成の例示的酸化物成分が描かれている。L20G構成は、低電圧バリスタを作ることを目的とし、L100Sは中間電圧バリスタを目的とし、L150Aは高電圧バリスタを目的とする。
図4Aにおいて、L20G構成、L100S構成、及び、L150A構成の各々に対する種々の組成のモル分率は、ビスマスの場合における、化学量論的(stochiometric)酸化物「Bi
2O
3」としてのように用いられる、原材料の関数として示される。便宜上、
図4Bにおいて、L20G組成、L100S組成、及び、L150A組成の各々の種々の酸化物成分のモル分率を、ビスマスの場合における「Bi」のように、酸化物の金属成分のモル分率の関数として示される。
図4A及び4Bから明らかなように、バリスタの成分のモル分率は、その金属を含有する化学量論的化合物(
図4A)ではなく、金属(
図4B)として示したときは異なることがある。
【0016】
とりわけ、L20G構成、L100S構成、及び、L150A構成について記載した組成は、単なる例示であり、1つ以上の酸化物成分のモル分率は、以下に説明するように、バリスタパウダーの電気的性質を整えることで変化することがある。さらに、
図4Bは、酸化物成分を形成する金属エレメントのモル分率を記載しているが、各金属エレメントは、当業者に理解されている通り、バリスタ素材中の酸化物として組み込まれている。
【0017】
ブロック310にて、最終的に形成されるバリスタ中の適切な重量比を提示するために、ZnO(酸化亜鉛)が計測される。いくつかの実施形態にあわせて、以下に詳述するように、ZnOのモル分率は、約90から99パーセントとすることができる。
【0018】
ブロック312にて、バリスタ懸濁液を形成するために、添加物、金属酸化物、酸化亜鉛、及び溶剤を混合する。いくつかの実施形態では、これらの成分は、所定の順序で導入することができる。例えば、かき混ぜ容器内の溶剤に添加物を加え、金属酸化物をこのかき混ぜ容器に導入することができる。最後にZnOをこのかき混ぜ容器に加えることができる。
【0019】
ブロック314にて、バリスタ懸濁液が粉砕される。1つの例ではボールミルによる粉砕を10時間から20時間行うことがある。
【0020】
ブロック316にて、バリスタ懸濁液を噴霧乾燥させ顆粒を形成する。ブロック318にて、バリスタ懸濁液を圧縮し好ましい固体物に形成する。ブロック320にて、脱バインダが行われる。このステップでは、ディスクのような固体物に形成された固形パウダーを、固形パウダーからバインダ素材を除去するために加熱するオーブンのような装置に収納する。いくつかの例では、脱バインダ処理の間に固形パウダーを加熱する最大温度は、400℃と700℃との間である。処理時間は、いくつかの例では、約10時間から40時間である。
【0021】
ブロック322にて、脱バインダの後に固形パウダーの焼結が行われる。固形パウダー固形物は、いくつかの実施形態では1000℃から1300℃の範囲の温度でキルンにより焼結することができる。焼結時間は約10時間から30時間までとすることができる。続いて、銀印刷焼成(ブロック324)、半田付け(ブロック325)、及び、コーティング(ブロック326)を行い、計測を行うことができるようにするように(ブロック328)バリスタを作ることができる。
【0022】
前述の通り、本願発明は、装置の性能が予想以上に実質的に向上するバリスタベースのZnOの組成の具体的な範囲を特定する。Co、Mn、Ni、Cr、Bi、及び、Sbの酸化物を含有するバリスタ材料の別の成分は知られているが、劣化しない最大サージ電流容量のような、ZnOバリスタの好ましい電気的性質を実質的に強化することが、特定の配合範囲における成分の特定の組み合わせにおいて見出された。
【0023】
いくつかの組み合わせによる試験において、ZnOバリスタの種々の成分を変化させて電気的性能を測定した。
図5A及び5Bでは、材料の第1の組み合わせによるバリスタ試料を作るために用いられた別々の成分、及び、電気的計測の結果の概要が描かれる。
図5A及び5Bに示したデータは、バリスタ電圧が約20V/mmから40V/mmまで変化する低電圧L20バリスタ構成のグループを表す。特に、
図5Aは、ベースになるパウダー組成(L20BC)を示し、特定した成分の組成は、
図4Bの種々の金属酸化物成分の金属のモル分率を示す。
図5Bは、電気的性質が測定され
図5Bに示された最終的なバリスタ組成(L20)に到達するように、L20BC構成に付加された材料(L20ACを意味する)の種々の追加量を示す。実際のバリスタ組成は
図5Bには示されず、ベース値に対する各成分の追加量が
図5Aに示されるだけである。従って、0.15%のニッケル組成を記載した
図5Bでの記載項目は、ニッケルモル分率が(酸化物の形態のバリスタに組み込まれているにもかかわらず)0.85%(=0.70+0.15%、
図5Aにおけるベース組成、プラス、
図5Bに示したモル分率)である、バリスタパウダーを示す。
【0024】
特に、パウダー組成は、
図4Aに示すように、(酸化物の形態の)0.1〜0.52mol%のコバルト、(酸化物の形態の)0.04〜0.45mol%のマンガン、(酸化物の形態の)0.03〜0.15mol%のニッケル、(酸化物の形態の)0.02〜0.14mol%のクロム、(酸化物の形態の)0.06〜0.38mol%のチタン、(酸化物の形態の)0.05〜1.28mol%のビスマス、(酸化物の形態の)0.01〜0.16mol%のアンチモンを加えることにより、ベース組成を調整することにより作られる。水、有機分散物質、消泡物質、及びバインダに付加した、ZnOに加えバリスタパウダーの本質的成分を形成する、上記材料は、混合物となり、粉砕及び噴霧乾燥されて粒状のパウダーになる。そして、このような粒状のパウダーは型に詰め込まれ圧縮されて、直径14mm×厚さ1.2mmの円板になる。続いて、圧縮された円板は、加熱されてバインダが除去され、プッシュキルン(push kiln)内で1230℃の温度で焼結され、焼結体を形成する。
【0025】
図5Bのデータでいくつかの傾向が示される。1つは、0.7%のベース組成から0.15モル%のNiに等しいニッケル酸化物の含有量に増大させると、35.2V/mmにバリスタ電圧上昇が増大する。同様に、(酸化物の形態の)0.5モル%のTiのベース組成から十分の数パーセントチタン酸化物含有量を増大させると、バリスタ電圧が29.9V/mmから35.7V/mmに増大する。一方、Biが0.9%モル分率のベース組成からビスマス酸化物の含有量を増大させても、バリスタ電圧が複雑な変化をするだけである。0.75%までの追加では、バリスタ電圧は29V/mmから35.8V/mmに上昇させる一方、0.9%のベース組成を越えて、l1.28%にまでさらに上げると、バリスタ電圧は27.4V/mmに下がる結果となる。最終的に、アンチモン酸化物の含有量を0.1モル%のSbから(酸化物の形態の)0.16モル%の付加アンチモンにまで上げると、バリスタ電圧が41.3V/mmから32.6V/mmに単調減少する。いくつかの場合は、サージ容量は、バリスタ成分の組成を変えることにより、実質的に影響される。特に、試料に標準の「8/20」波形を与えた結果を
図5Bに示す。8/20波形では、8μsで最大値に達し、20μsで最大電流の50%に減少する電流サージを生じさせる。特に、従来のMOVにおいて、14mm低電圧バリスタ(VRMS≦40V)の8/20μsのサージ電流密度は約10〜20A/mm
2である。本実施形態では、対称的に、14mm低電圧バリスタの8/20μsのサージ電流密度は58A/mm
2に機能強化される。
【0026】
他の中間電圧「L100」パウダーを作るために用いられる別のベースパウダー組成に変化させることにより、複数の異なるパウダーのセットについて試験を行った。
【0027】
図5C及び
図5Dは、100V/mmから約130V/mmまでの範囲でのバリスタ電圧を有するL100構成のグループである。
図5C及び5Dに示す成分データは、それぞれ、上述の
図5A及び5Bに用いた工程に従うものである。従って、電気的計測値を
図5Dに示すL100パウダー素材の組成は、L100構成=L100ベース組成(
図5Cに示すL100BC)+L100付加組成(
図5Dに示すL100AC)により決定される。また、
図5Cに示すL100BC組成は、種々の出発物質を作り上げる金属のモル分率の形で特定されるエレメントを示す。
【0028】
特に、パウダー組成は、
図5C及び5Dに示したように、上記成分のモルパーセントを増加することにより、上記組成を調整することにより作られた。ZnOに加えて、主バリスタパウダー成分を水、有機分散物質、消泡物質、及びバインダに加えて作られた上記材料は、ミキサーに入れて、粉砕し噴霧乾燥して粒状のパウダーにする。そして、そのような粒状のパウダーは、型に詰め込まれ圧縮されて、直径14mm×厚さ1.2mmの円板になる。続いて、圧縮された円板は、加熱されてバインダが除去され、プッシュキルン(push kiln)内で1230℃の温度で焼結され、焼結体を形成する。次に、圧縮されたディスクは、電気的計測を受け、その結果が
図5Dに示されている。
【0029】
図5Dのデータでいくつかの傾向が示される。1つは、ニッケル酸化物を付加してベース組成の0.40モル%のNiから、0.73%まで上げると、バリスタ電圧は約115V/mmから126V/mmまで増加する一方、コバルト酸化物を、0.8モル%のCoのベース組成から10.45モル%のCoにまで上げると、同様にバリスタ電圧が増加する。ベース組成の0.2%のマンガンに、マンガン組成を付加して0.68%に上げると、バリスタ電圧が約112V/mmから131V/mmに増加する一方、ベース組成の0.002%のアルミニウム含有量をさらに0.002%増やすと、バリスタ電圧が約111V/mmから125V/mmに増加する。最終的に、ビスマスの含有量を2.0%のベース組成から約0.4%上げることによって、バリスタ電圧の明らかな変化は得られなかった。従来のMOV装置において、14mmバリスタ(≦50VRMS≦75V)への8/20μsサージ電流密度は約35〜50A/mm2である。本実施形態では、14mmの同じ電圧のバリスタの8/20μsサージ電流密度は、66A/mm2へと機能強化された。
【0030】
図6A〜6Cは、本実施形態により製造したバリスタによる性能及び信頼性の改善をさらに示したバリスタの計測結果を表すグラフである。
図6Aにおいて、既知のZnOベースのMOVで行ったDC印加試験の結果が示されている。特に、
図6Aには、125℃の高温では性能が安定しない従来のパウダーについての、DC印加試験の結果(Vdc=85V、LR=0.728)が例示されている。
図6B及び6Cには、本実施形態により製造された2つの別々のバリスタ試料についての、DC印加試験の結果を表す。
【0031】
図6Aの計測結果となったMOV試料は、125℃で85VDCの印加電圧であった。試料(C−MOV)は、最初に計測した後、85VDCを連続的に印加した。計測は、トータルで、168時間、500時間、及び1000時間DC電圧を試料に加え続けたあと行われた。計測値の中で、パラメータVnは、計測して
図6Aに示した電圧曲線にプロットした。特に、電圧曲線602を定めるVn値は1mAの電流で行われた。
図6Aに示すVn値はいくつかの計測値の平均を表す。C−MOV試料は、最初は117VのVn値を呈していた。しかし、168時間後のVnは111Vまで少し減少した値を示している。500時間後では、Vnは77Vまで減少し、1000時間後では、Vn値は59Vまで下がっている。
【0032】
Vnの低下は、85VDCを加えた時間により引き起こされたものであり、
図6Aにさらに示すように、電圧曲線602には、漏れ電流の増加が伴っている。特に、漏れ電流曲線604では、時間の関数として漏れ電流(μA)をプロットしている。図示の通り、C−MOV試料は、平均して約14μAの小さな漏れ電流を呈する。168時間後の漏れ電流は約μAに増大し、500時間後及び1000時間後ではそれぞれ322μA及び390μAに極端に増大する。10の試料計測のうちのどれも168時間後の計測に失敗しなかったが、500時間後及び1000時間後では10の試料のすべてが計測失敗となった。
【0033】
図6Bは、
図6Aに示した結果と同様の、試料の試験結果を表示する。しかしながら、
図6Bに反映された試料の計測値は、本実施形態を満たす中間電圧バリスタ組成(L100構成)を用いて行われた。計測して
図6Bの結果を得た試料(34×34方形ディスク、Vrms=75V)は、125℃で100VDC(LR=0.822)の電圧を印加したものである。試料は、最初に計測した後、100VDCを連続的に印加した。22個の試料について、計測は、トータルで、168時間、500時間、及び1000時間、DC電圧を試料に加え続けた後、各試験条件に対して行われた。試料の計測値の中で、パラメータVnは、1mAの試験電流を用いて計測され、各試験条件に対して異なるいくつかの試料の計測の平均を反映させた
図6Bに示した電圧曲線にプロットした。L100S試料は、最初は122VのVn値を呈している。しかし、168時間後のVnは少し増加して127Vとなっている。336時間後、500時間後、1000時間後では、Vnの値は127Vで一定となっている。従って、L100S試料は、100VDC電圧を印加したとき、定常状態は、少なくとも1000時間まで継続することが示されている。このことは、漏れ電流曲線614に示した漏れ電流の計測結果にも反映されている。最初の漏れ電流値は13μAであり、通常のC−MOV試料の低電流値を満たす。168時間後、計測値は平均して13μAに減少し、1000時間後では、わずかに増加して15μAとなる。どの試料の計測においても失敗は記録されなかった。
【0034】
図6Cは、本実施形態を満足する低電圧バリスタ組成(ここでは、L20構成と称する)を用いて
図6Bに示した結果と同様の、試料の試験結果を表示する。計測して
図6Cの結果を得た試料(34×34方形ディスク、Vrms=45V、LR=0.810)は、125℃で60VDCの電圧を印加したものである。
【0035】
試料は、最初に計測した後、60VDCを連続的に印加した。22個の試料について、計測は、トータルで、168時間、500時間、及び1000時間、DC電圧を試料に加え続けた後、各試験条件に対して行われた。
【0036】
試料の計測値の中で、パラメータVnは、1mAの試験電流を用いて計測され、各試験条件に対して異なるいくつかの試料の計測の平均を反映させた
図6Cに示した電圧曲線622にプロットした。L20試料は、最初は74VのVn値を呈している。しかし、168時間後のVnは少し増加して76Vとなっている。500時間後、1000時間後では、Vnの値は77Vで一定となっている。従って、L20試料は、60VDC電圧を印加したとき、定常状態は、少なくとも1000時間まで継続することが示されている。このことは、漏れ電流曲線624に示した漏れ電流の計測結果にも反映されている。最初の漏れ電流値は24μAであり、通常のC−MOV試料の低電流値を満たす。168時間後、計測値は平均して33μAに増加し、次いで、336時間後に29μAに減少し、そして、1000時間まで31μAを維持する。22個の試料の計測においていずれも失敗は記録されなかった。従来の大型低電圧バリスタは、125℃の高温でのDC印加試験に耐えるのは難しいことに留意すべきである。そのような低電圧バリスタの寸法は、通常の商用MOVにおいて現在5mmから20mmの範囲である。本実施形態では、L20構成で作られた34×34方形ディスクは、125℃の高温でのDC印加試験に耐えることができる。
【0037】
エネルギーサージに対する強度を評価するために本実施形態により製造したL100バリスタ試料に、さらなる試験を行った。特に試料には、標準の「8/20」波形及び「10/350」波形を印加した。8/20波形では、8μsで最大値に達し、20μsで最大電流の50%に減少する電流サージを生じさせる一方、10/350波形では、10μsで最大値(IMAX)に達し、350μsで最大電流の50%に減少する電流サージを生じさせる。これらの波形は、間接的な雷撃及び直接的な雷撃を近似するものであると考えられる。
【0038】
直径を変化させて低電圧バリスタの一連の試験を、最大処理電流を決定するために、8/20波形で行った。
図7は、従来のバリスタ試料702の性能を本実施形態のL20構成により製造されたバリスタ試料704を比較するための試験結果を比べたものである。各組みのバリスタ試料702、704には、5、7、10、14、及び20mmの直径の円板が含まれている。表706は、従来のバリスタ試料702の計測結果712と、バリスタ試料704の結果714とを表示する。表706に示したパラメータImax及びWmaxは、8/20波形試験に基づく、電流及び電力サージ定格を示す。表706に示す湯鬼、Imax電流サージ定格は、所定のディスク直径のバリスタ試料702との比較において、バリスタ試料704では約4〜7倍大きい。加えて、バリスタ試料704のWmax値は、対応する従来のバリスタ試料702より約10〜20倍大きい。
【0039】
10/350波形を使って、従来のバリスタ試料と本実施形態により製造されたバリスタ試料とについて、試料の大きさを固定した一連の試験も行った。従来のバリスタ試料では、最大パルス電流は、約3.1kAと5kAとの間で変動した。3.3kA以上の電流を加えた試料は信頼性がなく、概ね失敗し、10/350波形に対して3200Aの単一パルスサージ保護容量の定格であることが導かれた。本実施形態により製造されたバリスタ試料には、650Aから6.5kAまでの範囲でパルス電流を加えた。この試料のすべては、6.5kAまでパルスに対して安定性を維持した。
【0040】
図8は、L150構成により合成された高電圧バリスタの電気的性能の実験計測値802を示す。
図8はまた、中間電圧L100構成を用いて合成されたバリスタの電気的性能の実験計測値804も示す。さらに、
図8はまた、低電圧L20構成を用いて合成されたバリスタの電気的性能の実験計測値806も示す。
図8に示すように、高電圧バリスタ材料802は、34mm×34mmバリスタに対して約1400VのVcを有する一方、低電圧バリスタ材料806は、34mm×34mmバリスタに対して約580VのVcを有する。V10kA/V1mA比は、高電圧材料802での約2.8から、低電圧材料806の約8.9に増加する。
【0041】
要約すると、ZnOベースのバリスタの構成が開示されている。特に、金属酸化物の組成と酸化亜鉛材料全般への添加物の新しい組み合わせにより、ZnOベースのバリスタの性能及び信頼性を大きく向上させることが見出された。
【0042】
特定の実施形態を参照して本発明を開示したが、記載した実施形態に対して、添付した特許請求の範囲で定義した本発明の技術的範囲から逸脱することなく、多くの修正、変更、及び変形が可能である。従って、本発明は記載した実施形態に限定するものではなく、以下の特許請求の範囲の文言及びその均等物で定義される全範囲を有するものである。