(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
石炭焚き等の発電プラント、焼結機等の製鉄原料プロセスは、ダスト(粒子状物質)を含む排ガスを排出する。このダストを除去するために、燃焼設備の下流側の煙道に、排ガス中のダストを静電気力によって捕集(「集塵」ともいう。)する電気集塵装置が備えられている。電気集塵装置は、集塵極である接地極と放電極とからなる荷電部との間に高電圧を印加し、コロナ放電によりガス中のダストに正または負の電荷を与えて、ダストを帯電させる。
ここで、高抵抗ダストが堆積した集塵極と放電極との間でコロナ放電を発生させていると、ダスト層に絶縁破壊が生じる逆電離現象が発生しやすく、逆電離現象が発生すると、集塵性能が大幅に低下する。
そこで、電気集塵装置の荷電制御において、逆電離に伴う集塵性能の低下を抑制するために、荷電休止時間を設け、荷電時間と荷電休止時間とを交互に繰り返して間欠的な荷電を行う間欠荷電方式が採用されている(特許文献1〜3)。
【0003】
このような間欠荷電方式では、逆電離の発生が顕著で著しく集塵性能が低下する状態では荷電休止時間を長くとり、集塵性能を改善させる。しかしながら、荷電休止時間は、電極に流れる電流の大きさを調整できない。このため、荷電休止時間を長くすると、荷電のための電圧(電極間の電位差)が低下し、その結果、電気集塵装置の集塵性能の低下を招くこととなる。
そこで、特許文献3には、荷電休止時間中にダストに必要最小限の低電流を流して集塵極と放電極との間に電界を形成することにより、高抵抗ダストの集塵性能を向上させることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に開示されている間欠荷電方式では、荷電休止時間、特に荷電休止時間の始期においても、電界が形成されているので荷電時間よりも電極間の電位差が小さいものの、逆電離が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、逆電離の発生を抑制すると共に、間欠荷電の荷電休止による集塵性能の低下を抑制する、電気集塵装置、電気集塵装置の荷電制御プログラム、及び電気集塵装置の荷電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電気集塵装置、電気集塵装置の荷電制御プログラム、及び電気集塵装置の荷電制御方法は以下の手段を採用する。
【0008】
本発明の第一態様に係る電気集塵装置は、ガス中に含まれる捕集対象物を静電気力によって捕集する電気集塵装置であって、前記ガスの流通方向に沿って対向して配置され、前記捕集対象物を荷電するための電界を形成する第1の電極及び第2の電極と、荷電時間と荷電休止時間とを繰り返すように、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差を与える電源とを備え、前記電源は、前記荷電休止時間が開始してから第1時間帯経過後の第2時間帯に、前記荷電時間における電流よりも小さく、かつ前記第1時間帯における電流よりも大きな電流を出力
し、前記電源は、前記荷電休止時間の開始後における出力電圧低下の傾きが規定値以下となった場合に、前記規定値以下となった場合の出力電圧となるように出力電流を上昇させて前記第2時間帯を開始する。
【0009】
本構成に係る電気集塵装置は、ガス中に含まれる捕集対象物を静電気力によって捕集する。なお捕集対象物は、例えば、ガス中に含まれる煤塵である。
【0010】
そして、捕集対象物を荷電するための電界を形成する第1の電極と第2の電極が、ガスの流通方向に沿って対向して配置される。捕集対象物は、静電気力によって電極に捕集されることで、ガス中から除去される。
また、電源によって、荷電時間と荷電休止時間とを繰り返すように、第1の電極及び第2の電極との間に電位差が与えられる。すなわち、荷電時間と荷電休止時間とを交互に繰り返して間欠的な荷電を行う間欠荷電が行われる。荷電休止時間は、逆電離を発生させないことを目的に設けられている。
【0011】
ここで、荷電休止時間が長いと、電気集塵装置の集塵性能の低下を招くこととなる。また、荷電休止時間が開始してから一定時間に荷電時間よりも小さな電位差が与えられると、逆電離の抑制効果が低下する。
そこで、本構成に係る電源は、荷電休止時間が開始してから第1時間帯経過後の第2時間帯に、荷電時間における電流よりも小さく、かつ第1時間帯における電流よりも大きな電流を出力する。すなわち、荷電休止時間は第1時間帯と第2時間帯に分けられ、第1時間帯では電源は電流の出力が停止される。一方、第2時間帯では、荷電時間における電流よりも小さく、かつ第1時間帯における電流よりも大きな電流が電極に出力される。第2時間帯での出力電流は、換言すると、逆電離が生じる閾値未満の電位差を電極間に生じさせる電流である。すなわち、荷電休止時間であっても第2時間帯では、逆電離を生じさせない弱い電界を形成するための電圧が電源から出力される。これにより、荷電休止時間における集塵性能の低下が抑制される。
以上のように、本構成は、逆電離の発生を抑制すると共に、間欠荷電の荷電休止による集塵性能の低下を抑制できる。
【0012】
上記第一態様では、前記電源が、前記荷電休止時間の開始後における出力電圧低下の傾きが規定値以下となった場合に、前記規定値以下となった出力電圧となるように出力電流を上昇させて前記第2時間帯を開始することが好ましい。
【0013】
本構成によれば、荷電休止時間の開始後における出力電圧低下の傾きが規定値以下となった場合に、逆電離を発生させない電圧(電位差)となったと判定し、このときの出力電圧を維持するように電源からの出力電流が制御される。これにより、第2時間帯における出力電圧の値を適正なものにできる。なお、出力電圧低下の傾きを用いて逆電離が発生しない電圧を決定する理由は、逆電離を発生させない電圧の大きさは装置の特性、負荷等の状態によって変化するので、上記電圧の大きさを予め決定することが難しいためである。
【0014】
上記第一態様では、前記電源が、出力電圧低下の傾きが前記規定値以下となった場合に予め定められた
出力電
圧となるように
出力電流を調整することが好ましい。
【0015】
本構成によれば、第2時間帯における出力電圧をより早く適正な大きさにできる。
【0016】
上記第一態様では、前記電源の動作周波数が、中周波以上であることが好ましい。
【0017】
本構成によれば、第2時間帯における適正な電圧をより早く電源が出力できる。
【0018】
本発明の第二態様に係る電気集塵装置の荷電制御プログラムは、ガスの流通方向に沿って対向して配置され、
前記ガス中に含まれ
る捕集対象物を荷電するための電界を形成する第1の電極及び第2の電極、及び荷電時間と荷電休止時間とを繰り返すように、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差を与える電源を備え、前記捕集対象物を静電気力によって捕集する電気集塵装置の荷電制御プログラムであって、コンピュータを、前記荷電時間において、前記捕集対象物を荷電させるための所定の電流を前記電源から出力させる第1出力手段と、前記荷電休止時間が開始してからの第1時間帯を決定し、かつ該第1時間帯経過後の第2時間帯において、前記荷電時間における電流よりも小さく、かつ前記第1時間帯における電流よりも大きな電流を決定し、前記電源から出力させる第2出力手段と、して機能させ
、前記電源は、前記荷電休止時間の開始後における出力電圧低下の傾きが規定値以下となった場合に、前記規定値以下となった場合の出力電圧となるように出力電流を上昇させて前記第2時間帯を開始する。
【0019】
本発明の第三態様に係る電気集塵装置の荷電制御方法は、ガスの流通方向に沿って対向して配置され、
前記ガス中に含まれ
る捕集対象物を荷電するための電界を形成する第1の電極及び第2の電極、及び荷電時間と荷電休止時間とを繰り返すように、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差を与える電源を備え、前記捕集対象物を静電気力によって捕集する電気集塵装置の荷電制御方法であって、前記荷電時間において、前記捕集対象物を荷電させるための所定の電流を前記電源から出力し、前記荷電休止時間が開始してから第1時間帯経過後の第2時間帯において、前記荷電時間における電流よりも小さく、かつ前記第1時間帯における電流よりも大きな電流を前記電源から出力
し、前記電源は、前記荷電休止時間の開始後における出力電圧低下の傾きが規定値以下となった場合に、前記規定値以下となった場合の出力電圧となるように出力電流を上昇させて前記第2時間帯を開始する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、逆電離の発生を抑制すると共に、間欠荷電の荷電休止による集塵性能の低下を抑制する、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る電気集塵装置、電気集塵装置の荷電制御プログラム、及び電気集塵装置の荷電制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る乾式電気集塵装置10の概略図である。乾式電気集塵装置10は、ガスの流通方向に直列になるように配列された2つの電界形成部11a,11bを備える。燃焼排ガスは、乾式電気集塵装置10の左側から流入し、電界形成部11a,11bを通過して右側から排出される。電界形成部11a,11bの下部に設けられているホッパ12a,12bには、捕集対象物(「EP内捕集ダスト」ともいう。)が一時的に集められ、灰処理設備により定期的に搬出される。なお、
図1では電界形成部が2つ設けられているが、乾式電気集塵装置10の要求性能に応じて1つまたは3つ以上の電界形成部が設けられても良い。
【0024】
図2は、本実施形態に係る乾式電気集塵装置10の電界形成部11の拡大概略図である。
電界形成部11は、アース電極20と印加電極21とが対向して配置され、EP内捕集ダストを荷電するための電界(「EP内捕集ダスト層」ともいう。)を形成する。EP内捕集ダストは、静電気力によって電極に捕集されることで、燃焼排ガス中から除去される。
図2では、1組のアース電極20及び印加電極21が図示されているが、通常は一つのアース電極20に対し複数の印加電極21が交互に配置されている。
【0025】
印加電極21は、高電圧電源26に接続され、電圧が印加される。
そして、アース電極20に形成されたEP内捕集ダスト層20Aで捕集されたEP内捕集ダストは、予め設定されたサイクルでアース電極20へ槌打が行われることにより、アース電極20から剥離する。アース電極20から剥離したEP内捕集ダストは、落下してホッパ12a,12bに集められ、搬出される。なお、EP内捕集ダスト層20Aにおいて、集塵されたEP内捕集ダストの固有電気抵抗値が10
11〜10
12Ω・cmを超えるような高抵抗の場合、EP内捕集ダスト層20Aの電圧が著しく高くなり、EP内捕集ダスト層20Aで絶縁破壊、いわゆる逆電離現象が発生し、集塵性能の低下が起こる場合がある。
【0026】
本実施形態に係る高電圧電源2
6は、例え
ば中周波(100Hz)以上、若しくは高周波(10kHz以上)
の動作周波数で動作するスイッチング電源(Switchmode Power Supply:SMPS)である。高電圧電源26の動作周波数が中周波以上とされることによって、詳細を後述する本実施形態に係る間欠荷電方式をmSec単位で高精度に行うことが可能となる。なお、高電圧電源26の出力電圧は、電圧センサ28によって測定される。
【0027】
高電圧電源26は、出力する電流の大きさが電源制御装置30によって制御される。また、電源制御装置30は、電圧センサ28によって測定された出力電圧の値が入力される。
電源制御装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random
Access Memory)、デジタルI/O、アナログI/O、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。
【0028】
乾式電気集塵装置10では、高電圧電源26が、荷電時間と荷電休止時間とを繰り返すように、アース電極20と印加電極21との間に電位差を生じさせる。すなわち、電源制御装置30は、荷電時間と荷電休止時間とを交互に繰り返して間欠的な荷電を行う間欠荷電を行うように高電圧電源26を制御する。なお、荷電休止時間は、逆電離を発生させないことを目的に設けられており、高電圧電源26からの出力電流が停止、又は荷電時間に比べて出力電流が小さくされる。
【0029】
図3は、従来の間欠荷電方式を示す図であり、電源制御装置30からの電流指令値の時間変化(デューティ比)と高電圧電源26からの出力電圧の時間変化を示す。
電源制御装置30は、荷電時間T1において、捕集対象物を荷電させるための所定の電流指令値を高電圧電源26へ出力する。これにより、高電圧電源26は、電流指令値に応じた電流を出力し、出力電圧が増加する。なお、電流指令値は、高電圧電源26からの出力電流に比例する値である。
そして、荷電時間T1が経過すると、電源制御装置30は、電流の出力を停止させる電流指令値を高電圧電源26へ出力し、荷電休止時間T2に移行する。電流の出力を停止するとは、出力電流の大きさを略0(零)とすることである。これにより、出力電圧は低下する。
【0030】
そして、荷電休止時間T2が終了すると、再び荷電時間T1へ移行する。荷電時間T1及び荷電休止時間T2は、予め定められた固定値とされており、
図3では、一例として、荷電時間T1を5mSecとし、荷電休止時間T2を20mSecとする。
【0031】
ここで、荷電休止時間T2が長いと、乾式電気集塵装置10の集塵性能の低下を招くこととなる。また、荷電休止時間T2が開始してから一定時間に荷電時間よりも小さな電位差が与えられると、逆電離の抑制効果が低下する。
【0032】
図4は、本実施形態に係る間欠荷電方式を示す図であり、電源制御装置30からの電流指令値の時間変化(デューティ比)と高電圧電源26からの出力電圧の時間変化を示す。
本実施形態に係る荷電休止時間T2は、第1時間帯T2−1と第2時間帯T2−2に分けられる。第1時間帯T2−1では電流の出力を停止するように、電源制御装置30が電流指令値を高電圧電源26へ出力する。そして、電源制御装置30は、第1時間帯T2−1経過後の第2時間帯T2−2に、荷電時間T1における電流よりも小さく、かつ第1時間帯T2−1における電流よりも大きな電流を出力するように電流指令値を高電圧電源26へ出力する。
第2時間帯T2−2での出力電流は、換言すると、逆電離が生じる閾値未満の電位差を、アース電極20と印加電極21との間に生じさせる電流である。すなわち、荷電休止時間T2であっても第2時間帯T2−2では、逆電離を生じさせない弱い電界を形成するための電圧が高電圧電源26から出力される。これにより、荷電休止時間T2における、集塵性能の低下が抑制される。
【0033】
そして、荷電休止時間T2が終了すると、再び荷電時間T1へ移行する。なお、
図4に示される5mSecの荷電時間T1、10mSecの第1時間帯T2−1、及び10mSecの第2時間帯T2−2時間T2は一例である。特に、第1時間帯T2−1及び第2時間帯T2−2は、固定値ではなく、詳細を後述するように荷電休止時間T2の時間範囲内で変動する。
【0034】
なお、以下の説明において、荷電時間T1における電流指令値をDCON(Duty Cycle during ON Time)といい、荷電休止時間T2の第2時間帯T2−2における電流指令値をDCBC(Duty Cycle during Base Charging)という。
そして、数1に示されるDCONとDCBCとの比をBCLR(Base Charging Level Ratio)といい、BCLRは一例として0
%より大きく50%
までの範囲
の値である。
【数1】
【0035】
また、荷電休止時間T2の第1時間帯T2−1の期間をOffD(Off time Duration)といい、荷電休止時間T2の第2時間帯T2−2の期間をBCD(Base Charging Duration)という。
そして、数2に示されるOffDとBCDとの比をBCDR(Base Charging Duration Ratio)といい、BCDRは一例として0
%より大きく99%
までの範囲
の値である。
【数2】
【0036】
図5は、間欠荷電を行う場合に、電源制御装置30によって実行される間欠荷電制御プログラムであって、本実施形態に係る第1時間帯T2−1と第2時間帯T2−2の電流指令値を自動設定するための処理の流れを示すフローチャートである。間欠荷電制御プログラムは電源制御装置30の所定領域に予め記憶されている。間欠荷電制御プログラムは、例えば排ガス処理装置1の運転開始と共に開始される。
【0037】
まず、ステップ100では、出力電流をDCONにまで上昇させる電流指令値を高電圧電源26へ出力する。
【0038】
次のステップ102では、荷電時間T1が終了したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ104へ移行する。否定判定の場合は、荷電時間T1が終了するまで出力電流をDCONとする電流指令値を高電圧電源26へ出力し続ける。
【0039】
ステップ104では、荷電休止時間T2となったため、荷電をオフとするための電流指令値、例えば出力電流を0mAとする電流指令値を高電圧電源26へ出力する。これにより、高電圧電源26からの出力電圧は低下する。
【0040】
次のステップ106では、高電圧電源26からの出力電圧の波形(以下「電圧波形」という。)の傾きが規定値以下となった否かを判定し、肯定判定の場合はステップ108へ移行する。否定判定の場合は、荷電オフの状態が維持される。
【0041】
ステップ108では、電圧波形の傾きが規定値以下となった場合の出力電圧Vbcを記憶する。
【0042】
次のステップ110では、DCBCを示す電流指令値を高電圧電源26へ出力する。なお、本制御を初めて行う場合は、予め定められたDCBCを示す電流指令値が、初期値として高電圧電源26へ出力される。一方、2回目以降は、前回の制御におけるDCBCの最終値(前回最適値)が読み出され高電圧電源26へ出力される。高電圧電源26は、電流指令値により示されるDCBCの初期値又は前回最適値となるように電流を出力する。これにより荷電休止時間T2の第2時間帯T2−2が開始される。
すなわち、出力電圧低下の傾きに基づいて、荷電休止時間T2が開始してからの第1時間帯T2−1が決定され、かつ第1時間帯T2−1経過後の第2時間帯T2−2において、荷電時間T1における電流よりも小さく、かつ第1時間帯T2−1における電流よりも大きな電流が決定され、高電圧電源26から出力される。
【0043】
次のステップ112では、荷電休止時間T2が終了したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ114へ移行する。否定判定の場合はDCBC出力の状態が維持される。
【0044】
ステップ114では、電圧センサ28による測定電圧、すなわち高電圧電源26からの現在の出力電圧が電圧Vbcよりも高いか否かを判定する。肯定判定の場合はステップ116へ移行し、否定判定の場合はステップ118へ移行する。
【0045】
ステップ116では、DCBCの大きさを低下させる電流指令値を高電圧電源26へ出力し、ステップ120へ移行する。
ステップ118では、DCBCの大きさを上昇させる電流指令値を高電圧電源26へ出力し、ステップ120へ移行する。
【0046】
ステップ120では、荷電休止時間T2の終了に伴い、荷電休止時間の終了時におけるDCBCの最終値を最適値として保存し、ステップ100へ戻り、荷電時間T1を開始する。
【0047】
このように、間欠荷電制御プログラムによって荷電時間T1、並びに第1時間帯T2−1及び第2時間帯T2−2を含む荷電休止時間T2が繰り返される。
【0048】
ここで、ステップ106〜118の処理について、
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る間欠荷電方式における出力電圧の時間変化の拡大図である。
【0049】
図6に示される傾きAは規定値を超える傾きを示し、傾きBは規定値以下となる傾きを示す。そして、傾きBとなった出力電圧がVbcで示される。
すなわち、荷電休止時間T2の開始後における出力電圧低下の傾きが規定値以下となった場合に、逆電離を発生させない電圧(電位差)となったと判定され、このときの出力電圧Vbcを維持するように出力電流が制御される。これにより、第2時間帯T2−2における出力電圧を、逆電離を発生させず、捕集対象部を荷電できる適正な値にできる。なお、出力電圧低下の傾きを用いて逆電離が発生しない電圧を決定する理由は、逆電離を発生させない電圧Vbcの大きさは乾式電気集塵装置10の特性や負荷等の状態によって変化するので、電圧Vbcの大きさを精度良く予め決定することが難しいためである。
【0050】
なお、傾きの規定値は、経験的に決定されてもよいし、シミュレーション等により決定されてもよい。
また、特性や負荷等の状態の変化が小さい乾式電気集塵装置10では、出力電圧低下の傾きから電圧Vbcを決定せずに、予め電圧Vbcを決定し、電源制御装置30が電圧Vbcを記憶し、この電圧Vbcとなるように出力電流が調整されてもよい。
【0051】
そして、ステップ110〜ステップ118では、出力電圧低下の傾きが規定値以下となった場合、高電圧電源26が、DCBCの初期値又は前回最適値となるように電流を出力した後、規定値以下となった時点の電圧Vbcとなるように電流を調整する。DCBCの初期値は、電圧Vbcに近似する出力電圧となるように予め設定されている。
従って、第2時間帯T2−2に移行する場合、電圧Vbcに近似する電圧が高電圧電源26から時間遅れなく出力され、その後、電圧Vbcとなるように制御されるので、第2時間帯T2−2における適正な電圧をより早く電源が出力できる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る乾式電気集塵装置10は、荷電時間T1において、捕集対象物を荷電させるための電流であるDCONを高電圧電源26から出力する。そして、乾式電気集塵装置10は、荷電休止時間T2が開始してから第1時間帯T2−1の経過後の第2時間帯T2−2において、DCONよりも小さく、かつ第1時間帯T2−1における電流よりも大きな電流であるDCBCを高電圧電源26から出力する。
従って、本実施形態に係る乾式電気集塵装置10は、逆電離の発生を抑制すると共に、間欠荷電の荷電休止による集塵性能の低下を抑制できる。
【0053】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、複数の上記実施形態を組み合わせてもよい。
【0054】
例えば、上記実施形態では、本発明を乾式電気集塵装置10に適用する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、湿式電気集塵装置に適用する形態としてもよい。
【0055】
また、上記実施形態で説明した間欠荷電制御プログラムの処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。