(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体触媒成分が、脂肪族又は芳香族カルボン酸のエステル、アルコキシベンゼン、環状アルキルエーテル、及び下記の式(I)の電子供与体化合物から選択される電子供与体化合物をさらに含む、請求項1に記載の予備重合された触媒成分であって、
RR1C(OR4)−CR2R3(OR5) (I)
式中、R、R1、R2及びR3は独立に、水素又はC1−C20炭化水素基であり、これは縮合して環を形成してもよく、R4及びR5は、C1−C20アルキル基又はR6CO−基(式中、R6はC1−C20アルキル基又はアリール基である)であるが、又はR及びR3とそれぞれ結合されて環を形成してもよく、前記RないしR6基は、O、Si、ハロゲン、S、N及びPから選択されるヘテロ原子を含有することができる予備重合された触媒成分。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特定の実施形態において、アイソタクチック性は60〜95%、より好ましくは65ないし90%、特に65ないし85%の範囲にある。アイソタクチック性は70ないし85%の範囲であることが特に好ましい。
【0008】
また他の特定の実施形態において、固有粘度は1.3以上、より好ましくは1.5以上である。固有粘度は1.5〜2.5dL/gの範囲にあることが特に好ましい。本発明の特定の実施形態において、固有粘度が1.0〜1.5の範囲にある場合、アイソタクチック性は70%より高い。
【0009】
また他の好ましい実施形態において、アイソタクチック性は70%より高く、固有粘度は1.5〜2.5dL/gの範囲にある。
【0010】
本開示内容全体において、用語「非立体特異性の固体触媒成分」は、実験の部分に記述された標準重合条件下にて、25℃で、キシレンに60%未満、好ましくは55%未満、より好ましくは50%未満の不溶性を有するプロピレンホモポリマーを提供する固体触媒成分を意味する。
【0011】
好ましくは、アルファ−オレフィンはCH
2=CHR
1のものから選択され、式中、R
1はC
1−C
6線形アルキル基である。好ましくは、アルファ−オレフィンは、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1及びオクテン−1から選択される。最も好ましくは、アルファオレフィンはプロピレンである。
【0012】
特定の実施形態において、アルファ−オレフィン(コ)ポリマーの量は固体触媒成分1g当たり100g未満、より好ましくは50g未満、特に10g未満である。特に好ましい実施形態において、上記の量は固体触媒成分1g当たり0.5〜5gである。
【0013】
好ましくは、予備重合された触媒成分は1μm以下の気孔により0.1〜0.4cm
3/gの範囲の水銀多孔性を有する。
【0014】
好ましくは、非立体特異性の固体触媒成分はチタン化合物及びマグネシウムジハライドを含む。チーグラー・ナッタ触媒用担体として用いられる活性形態のマグネシウムハライド、好ましくはMgCl
2は特許文献から広範囲に公知になっている。特許USP4,298,718及びUSP4,495,338はチーグラー・ナッタ触媒作用においてこれら化合物の用途を初めて記述したものである。これら特許から、オレフィン重合用触媒成分において担体又は共担体として用いられる活性形態のマグネシウムジハライドはX−線スペクトルにより特徴化され、ここで、非活性ハライドのスペクトルで表れる最も強い回折ラインは強度が減少し、ハロを形成するように広がることが公知になっている。
【0015】
本発明の非立体特異性の固体触媒成分に用いられる好ましいチタン化合物は、式Ti(OR
II)
n−yX
yのものであり、式中、R
IIはC
1−C
20炭化水素基であり、Xはハロゲンであり、nはチタンの原子価であり、yは1〜nの数である。特に好ましい化合物はTiCl
4、TiCl
3、及び式Ti(OR
III)
aCl
n−aのTi−テトラアルコラートもしくはTi−クロロアルコラートであり、式中、nはチタンの原子価であり、aは1〜nに含まれる数であり、R
IIIはC
1−C
8アルキル基又はアリール基である。好ましくは、R
IIIはエチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル及びフェニルから選択される。
【0016】
チタン化合物は予備形成されることができるか、又はチタンテトラハライド、特にTiCl
4とアルコールR
IIOH又は式Ti(OR
II)
4のチタンアルコキシドとの反応によりイン−サイツ(in−situ)で製造され、式中、R
IIは上記に定義した意味を有する。
【0017】
好ましくは、チタン原子の50%超、より好ましくは70%超、特に90%超が4
+原子価状態にある。
【0018】
非立体特異性の固体触媒成分は、エーテル、エステル、アミン及びケトンの中から選択される電子供与体化合物(内部供与体)を含むことができる。しかし、説明したように、固体触媒成分は与えられた定義により非立体特異性ではなければならず、特徴化の部分に示した試験により確認されなければならない。従って、電子供与体化合物が存在する場合には、これは立体規則性を有しないか、又は触媒に十分な立体規則性を提供しない量で存在しなければならない。一般的に、立体規則性を有しない電子供与体は広範囲の量で存在することができるが、好ましくはTiに対するモル比が10未満、好ましくは7未満、より好ましくは5未満の範囲で存在することができる。好ましくは、立体規則性を有するか、又は下記の式(I)に属する供与体は、ED/Ti比率を0.5未満、好ましくは0.3未満、より好ましくは0.1未満で提供する量で存在する。
【0019】
好ましい電子供与体化合物は、脂肪族又は芳香族カルボン酸のエステル、例えばフタレート、アセテート、特にエチルアセテート、ベンゾエート、WO2011/015553に記述されたアルコキシベンゼン、環状アルキルエーテル、例えばテトラヒドロフラン及び下記の式(I)の電子供与体化合物から選択される。
【0020】
RR
1C(OR
4)−CR
2R
3(OR
5) (I)
【0021】
上記の式中、R、R
1、R
2及びR
3は独立に、水素又はC
1−C
20炭化水素基であり、これは縮合して環を形成してもよく、R
4及びR
5はC
1−C
20アルキル基又はR
6CO−基(式中、R
6はC
1−C
20アルキル基又はアリール基である)であるか、又はR及びR
3とそれぞれ結合されて環を形成してもよく;前記RないしR
6基は、O、Si、ハロゲン、S、N及びPから選択されるヘテロ原子を含有することができる。
【0022】
好ましくは、R及びR
4が環を形成する場合、R
5はC
1−C
20アルキル基である。好ましくは、式(I)の電子供与体化合物において、R、R
4及びR
5はメチルである。
【0023】
好ましくは、式(I)の電子供与体化合物において、R
1ないしR
3は水素である。R
4及びR
5が直鎖、分岐状又は環状アルキル基である場合、これらは好ましくはC
1−C
5アルキル基から選択され、より好ましくはメチル又はエチルから選択される。好ましくはこれらは両方ともメチルである。R
6CO基の中には、アセチル及びベンジルが好ましい。
【0024】
式(I)の特定の電子供与体化合物は、エチレングリコールジアセテート、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジエトキシプロパン、1,2−ジエトキシエタン、メチルテトラヒドロフルフリルエーテルであり、1,2−ジメトキシプロパンが最も好ましい。
【0025】
上述したように、このような供与体は立体規則性を有しないか、十分な立体規則性を提供しないほどの量で用いられる。
【0026】
上述した特徴以外にも、非立体特異性の固体触媒成分(a)は水銀法で確認される多孔性P
Fを0.2〜0.80cm
3/g、より好ましくは0.3〜0.70cm
3/g、通常0.35〜0.60cm
3/gの範囲で表すことができる。
【0027】
BET方法により測定される表面積は、好ましくは80m
2/g未満であり、特に10〜70m
2/gに含まれる。BET方法により測定される多孔性は一般的に、0.10〜0.50cm
3/g、好ましくは0.10〜0.40cm
3/gに含まれる。
【0028】
固体成分の粒子は実質的に球状形態を有し、平均直径は5〜150μm、好ましくは20〜100μm、より好ましくは30〜80μmに含まれる。粒子が実質的に球状形態を有するとは、より大きい軸とより小さい軸との比率が1.5以下、好ましくは1.3以下であることを意味する。
【0029】
上述した球状の成分の製造に適した方法はステップ(a)を含み、ここで、化合物MgCl
2.mR
IIIOHは式Ti(OR
I)
nX
4−nの前記チタン化合物と反応され、式中、0.3≦m≦1.7であり、R
IIIは炭素数1〜12のアルキル、シクロアルキル又はアリールラジカルであり、n、X及びR
Iは上述した定義と同じ意味を有する。
【0030】
この場合、MgCl
2.mR
IIIOHはMgジハライドの前駆体を表す。これらの種類の化合物は一般的に、付加物の溶融温度(100〜130℃)で攪拌条件下に作動する、付加物と非混和性である不活性炭化水素の存在下にアルコールとマグネシウムクロライドとの混合により得ることができる。その後、エマルジョンが速やかにクエンチされることにより、付加物が球状の粒子形状に固体化される。これら球状付加物の製造に関する代表的な方法は、例えばUSP4,469,648、USP4,399,054及びWO98/44009に報告されている。また、他の利用可能な球状化(spherulization)方法としては、例えばUSP5,100,849及び4,829,034に記述されている噴霧冷却である。所望の最終アルコール含量を有する付加物は、付加物の製造の間に選択された量のアルコールを直接用いることで、直接得ることができる。しかし、多孔性が増大した付加物を得なければならない場合、まずMgCl
21モル当たりアルコール1.7モル超を用いて付加物を製造した後、この付加物に熱的及び/又は化学的脱アルコール化プロセスを行うのが便利である。熱的脱アルコール化プロセスは、アルコール含量が0.3〜1.7の範囲の値に減少するまで、50〜150℃に含まれる温度で窒素流れ下に行われる。このようなタイプのプロセスはEP395083に記述されている。
【0031】
一般的に、これらの脱アルコール化された付加物はまた、半径0.1μm以下の気孔により、0.15〜2.5cm
3/g、好ましくは0.25〜1.5cm
3/gの範囲の多孔性(水銀法により測定される)を有することを特徴とする。
【0032】
ステップ(a)の反応において、Ti/Mgのモル比は化学量論的であるかそれより高く、その比率は3より高いことが好ましい。より好ましくは、過量のチタン化合物が用いられる。好ましいチタン化合物は、チタンテトラハライド、特にTiCl
4である。Ti化合物との反応は、冷却されたTiCl
4(一般的に0℃)に付加物を懸濁させることで行うことができ、混合物を80〜140℃で加熱し、この温度で0.5〜8時間、好ましくは0.5〜3時間維持する。過量のチタン化合物は濾過又は沈澱及びサイホニングにより高温で分離できる。ステップ(a)は2回以上繰り返すことができる。電子供与体化合物を含有する触媒の場合、このような電子供与体化合物は後にMgCl
2.mR
IIIOH付加物との反応のために反応系においてチタン化合物と共に添加することができる。しかし、電子供与体化合物はまた、まず付加物と単独で接触した後に、結果的に形成された生成物がチタン化合物と反応することができる。他の方法として、電子供与体化合物は、付加物とチタン化合物との間の反応が完了した後に、追加的なステップで個別に添加することができる。
【0033】
本開示内容の予備重合された触媒成分は、非立体特異性の固体触媒成分をアルファオレフィンCH
2=CHR
1と予備重合することで得ることができる。特に、本発明の予備ポリマーは、オレフィンと、非立体特異性の固体触媒成分と、共触媒としてのアルキルアルミニウム(B)と、外部電子供与体化合物(C)とを、(B)/(C)のモル比が100未満の量で接触させることで得ることができる。
【0034】
好ましくは、電子供与体化合物(C)は、(B)/(C)のモル比が0.1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である量で用いられる。
【0035】
アルキル−Al化合物(B)は、好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムから選択される。トリ−n−オクチルアルミニウムの使用が特に好ましい。また、トリアルキルアルミニウムとアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライド又はアルキルアルミニウムセスキクロライド、例えばAlEt
2Cl及びAl
2Et
3Cl
3との混合物を用いることが可能である。
【0036】
アルキル−Al化合物を少量で用いて前記予備重合を行うことが特に有利であることが明らかになった。特に、前記量はAl/Tiモル比を0.01〜50、好ましくは0.01〜10、より好ましくは0.05〜3で有するようにすることができる。
【0037】
外部電子供与体化合物は、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシラン及びエーテルから選択できる。
【0038】
アルコキシシランのうち、式(R
7)
a(R
8)
bSi(OR
9)
cのものが好ましく、式中、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜4の整数であり、(a+b+c)の合は4であり、R
7、R
8及びR
9は炭素数1〜18のラジカルであり、これは選択的にヘテロ原子を含む。aが1、bが1、cが2であり、R
7及びR
8の少なくとも一つが、選択的にヘテロ原子を含有する炭素数3ないし10の分岐状アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、R
9がC
1−C
10アルキル基、特にメチルであるケイ素化合物が特に好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(C供与体)、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)、ジイソプロピルジメトキシシラン、(2−エチルピペリジニル)t−ブチルジメトキシシラン、(2−エチルピペリジニル)テキシルジメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2−エチルピペリジニル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)ジメトキシシラン、N,N−ジエチルアミノトリエトキシシランである。さらに、aが0、cが3であり、R
8が、選択的にヘテロ原子を含有する分岐状アルキル基又はシクロアルキル基であり、R
9がメチルであるケイ素化合物が一層好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン及びテキシルトリメトキシシランである。また、EP−A−1538167に開示されたアミノシランも利用可能である。
【0039】
エーテルのうち、WO2011/015553に記述されたアルコキシベンゼン、環状アルキルエーテル、例えばテトラヒドロフラン、1,3−ジエーテル、例えばEP362705及びEP728769に記述されたもの、及び下記の式(I)の電子供与体化合物が好ましい。
【0040】
RR
1C(OR
4)−CR
2R
3(OR
5) (I)
【0041】
式中、R、R
1、R
2及びR
3は独立に、水素又はC
1−C
20炭化水素基であり、これは縮合して環を形成してもよく、R
4及びR
5はC
1−C
20アルキル基又はR
6CO−基(式中、R
6はC
1−C
20アルキル基又はアリール基である)であるか、又はR及びR
3とそれぞれ結合されて環を形成してもよく、前記RないしR
6基は、O、Si、ハロゲン、S、N及びPから選択されるヘテロ原子を含有することができる。
【0042】
好ましくは、R及びR
4が環を形成する場合、R
5はC
1−C
20アルキル基である。好ましくは、式(I)の電子供与体化合物において、R、R
4及びR
5はメチルである。
【0043】
好ましくは、式(I)の電子供与体化合物において、R
1ないしR
3は水素である。R
4及びR
5が直鎖、分岐状又は環状アルキル基である場合、これらは好ましくはC
1−C
5アルキル基から選択され、より好ましくはメチル又はエチルから選択される。好ましくはこれらは両方ともメチルである。R
6CO基の中には、アセチル及びベンジルが好ましい。
【0044】
式(I)の特定の電子供与体化合物は、エチレングリコールジアセテート、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジエトキシプロパン、1,2−ジエトキシエタン、メチルテトラヒドロフルフリルエーテルであり、1,2−ジメトキシプロパンが最も好ましい。
【0045】
好ましいエステルは芳香族カルボン酸のモノエステル、例えばベンゾエート、特に安息香酸のC
1−C
10アルキルエステル、及び脂肪族カルボン酸のモノエステル、例えば脂肪族モノカルボン酸のC
1−C
8アルキルエステルから選択でき、一例はエチルアセテートである。
【0046】
また、他の関心部類は、芳香族ジカルボン酸のC
1−C
10アルキルエステル、例えばフタレート、及び脂肪族ジカルボン酸のC
1−C
10アルキルエステル、例えばマロネート、スクシネート及びケルタレートである。さらに、USP7,388,061及びWO2010/078494に開示されたもののようなジオールのジエステルも用いることができる。
【0047】
好ましいエステルは、エチルアセテート、ジ−イソブチルフタレート、p−エトキシ−エチルベンゾエートジエチル2,3−ジイソプロピルスクシネートである。
【0048】
好ましいアルコールは式R
3OHのものであり、式中、R
3基はC
1−C
20炭化水素基である。好ましくは、R
3はC
1−C
10アルキル基である。特定の例はメタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノールである。
【0049】
好ましいアミンは式NR
43のものであり、式中、R
4基は独立に、水素又はC
1−C
20炭化水素基であり、ただし、これらは同時に水素ではない。好ましくは、R
4はC
1−C
10アルキル基である。特定の例はジエチルアミン、ジイソプロピルアミン及びトリエチルアミンである。
【0050】
好ましいアミドは式R
5CONR
62のものであり、式中、R
5及びR
6は独立に、水素又はC
1−C
20炭化水素基である。特定の例はホルムアミド及びアセトアミドである。
【0051】
好ましいニトリルは式R
3CNのもので、式中、R
3は上述したものと同じ意味を有する。特定の例はアセトニトリルである。
【0052】
好ましいグリコールは炭素原子の総数が50未満のものである。このうち、炭素原子の総数が25未満である1,2グリコール又は1,3グリコールが特に好ましい。特定の例はエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール及び1,3−プロピレングリコールである。
【0053】
予備重合は−10〜100℃、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜30℃の範囲の温度で液相(スラリー又は溶液)、又は気相で行うことができる。さらに、好ましくは液体希釈剤、特に液体炭化水素から選択される液体希釈剤で行われる。このうち、ペンタン、ヘキサン及びヘプタンが好ましい。アルファオレフィンの供給は、一般的に50g/h未満、好ましくは30g/h未満の非常に穏やかな条件下で維持されることが好ましい。用いられるアルキルアルミニウムの量は触媒において、一般的にTi1モル当たりAl20モル未満、好ましくは10モル未満であり、Ti1モル当たりAl0.2〜2モルの範囲であることが好ましい。
【0054】
結果的に得られる予備重合された触媒は重合からそのまま用いることができるか、さらなる処理を受けることができる。特に、予備重合に用いられる固体触媒成分が内部電子供与体を含有しない場合には、電子供与体を予備ポリマー上に担持することを含む予備ポリマー処理の好ましい実施形態を構成する。電子供与体は上に記述した内部供与体の中から選択でき、これは典型的には予備ポリマーと電子供与体を適した液体炭化水素媒質内で接触させることで行われ、その後、この媒質は乾燥により除去される。付加的に行うことのできる処理は、少なくとも一つのTi−ハロゲン結合を含有するチタン化合物との追加的な反応、ハロゲン化剤での処理、及びアルキルアルミニウムでの処理である。
【0055】
説明したように、先行技術の予備ポリマーと比べてより遅い沈降時間が付与される、結果的に得られた予備重合された触媒成分はエチレンの(共)重合に用いることができ、高い嵩密度の面から特に表現される規則的な形態を有するポリマーを高収率で得るようにする。また、触媒はエチレンとアルファ−オレフィンの共重合において優れた性能を表し、与えられたポリマー密度でキシレン可溶性画分を低含量で有するLLDPEポリマーを製造できるようにする。
【0056】
特に、前記エチレン(共)重合プロセスは、(A)上述した予備重合された触媒成分と(B)上述したタイプのAl−アルキル化合物とを含む触媒の存在下に行うことができる。主重合プロセスで、Alの量は予備重合ステップで用いられるAlの量より多い。好ましくは、Al化合物は、Al/Ti比率が1より高く、一般的には20〜800に含まれる量で用いられる。必須なものではないが、上述したような外部電子供与体化合物(C)がエチレン重合ステップで用いることができる。
【0057】
本開示内容の触媒は当該技術分野に公知の任意のオレフィン重合プロセスで用いることができる。これらは例えば、希釈剤として不活性炭化水素溶媒を用いるスラリー重合や、反応媒質として液体モノマーを用いるバルク重合で用いることができる。特に、これらは気相で行われる重合プロセスで好適に用いられる。気相プロセスは2つの相互連結された重合区域を含む流動層又は攪拌層の、固定床反応器又は気相反応器で行うことができ、この2つの区域の一方は迅速な流動化条件下で稼動し、他方ではポリマーが重力の作用下で流れる。また、2種のタイプの気相反応器の組合せを用いることができる。好ましい実施形態において、触媒はマルチステップ気相プロセスでエチレンを重合する際に用いられ、このプロセスで、第1ステップは流動層気相反応器で行われ、後続的なステップは2つの相互連結された重合区域を含む第2の気相反応器で行われ、この2つの区域の一方は迅速な流動化条件下で稼動し、他の一方ではポリマーが重力の作用下で流れる。
【0058】
これらは予備重合セクションを含むか又は含まない重合プラントセットアップで用いられることができる。実際に、触媒はエージングの問題を有していないため、これらはバッチスケールで予備重合されてもよく、その後、予備重合ラインなしに作動する液相又は気相オレフィン重合プラントで用いることができる。
【0059】
特に、前記エチレン(共)重合プロセスは、(A)上述した予備重合された触媒成分と(B)上述したタイプのAl−アルキル化合物とを含む触媒の存在下に行うことができる。主重合プロセスで、Alの量は予備重合ステップで用いられるAlの量より多い。好ましくは、Al化合物は、Al/Ti比率が20より高く、一般的に50〜800に含まれる量で用いられる。
【0060】
上述した重合プロセスは一般的に当該技術分野に公知の重合条件下に行うことができる。ここで、重合は一般的に20〜120℃、好ましくは40〜90℃の温度で行われる。
【0061】
用いられる任意の重合(液相重合又は気相重合)プロセスで、触媒形成成分(A)及び(B)は、これらを重合反応器に添加する前に予備接触させることができる。前記予備接触ステップは、重合可能なオレフィンの不存在下に、又は選択的に固体触媒成分1g当たり3g以下の量の前記オレフィンの存在下に行うことができる。触媒形成成分は約60℃未満、好ましくは約0〜30℃の温度で10〜60分間プロパン、n−ヘキサン又はn−ヘプタンのような液体不活性炭化水素溶媒と接触することができる。
【0062】
前記プロセスは広範囲のポリエチレン生成物の製造に適する。例えば、下記の生成物を製造することができる。エチレンホモポリマー及びエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとのコポリマーを含む、高密度エチレンポリマー(HDPE、密度は0.940g/cm
3より高い)。エチレンと端炭素数3〜12の一つ以上のα−オレフィンとのコポリマーで構成され、エチレン由来ユニットのモル含量が80%より高い、線形低密度ポリエチレン(LLDPE、密度は0.940g/cm
3より低い)、非常に低密度のポリエチレン及び超低密度ポリエチレン(VLDPE、及びULDPE、密度は0.920〜0.880g/cm
3より低い)。
【0063】
下記の実施例は本発明を制限するものではなく、本発明をよりよく例示するために提供される。
【0066】
MIE流動指数: ASTM−D 1238 条件E
【0068】
キシレン不溶性画分で分析を行い、ポリマー約40mgを1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2 0.5mlに溶解した。
13C−NMRスペクトルを、凍結探針が備えられた、フーリエトランスフォームモード150.91MHzで作動するBruker AV−600分光計で120℃で獲得した。
1H−
13Cカップリングを除去するため、90゜パルス、パルス間の遅延時間15秒、及び複合パルスデカップリング(CPD、bi_WALTZ_65_64pl シーケンス)を用いた。約512のトランジェントを、9000Hzのスペクトル窓を用いて64Kデータポイントに保管した。21.80ppmでのメチル領域におけるmmmmペンタッドピークを内部標準として用いた。ポリプロピレン(PP)予備ポリマーの立体規則度を文献に記述された微細構造分析を用いてPPメチル領域におけるペンタッドの積分から評価した(文献[「Studies of the stereospecific polymerization mechanism of propylene by a modified Ziegler−Natta catalyst based on 125MHz 13C n.m.r. spectra」Y.Inoue,Y.Itabashi,R.Chujo Polymer,1984,25,1640]及び文献[「Two−site model analysis of 13C n.m.r. of polypropylene polymerized by Ziegler−Natta catalyst with external alkoxysilane donors」 R.Chujo,Y.Kogure,T.Vaananen Polymer,1994,35,339])。重複する場合、鎖末端のシグナルは省略した。実験的なペンタッド分布を第2参照文献に記述された2−部位モデルを用いて適合化した(Polymer、1994)。適合化から得られる総mmmmペンタッドを記録する。
【0069】
固有粘度:135℃でテトラヒドロナフタレンで確認した。135℃で検体をテトラヒドロナフタレンに溶解した後、溶液を毛細管粘度計に注入する。粘度計チューブ(Ubbelohdeタイプ)はシリンダ型ガラスジャケットで囲まれている。この設定は循環する温度調節された液体を用いて温度を調節できるようにする。上部ランプの前面でのメニスカスの通過が、石英結晶振動子を有する計数器を始動させる。メニスカスは、下部ランプを通過して流出時間が登録されることにより、計数器を停止させる。これはハギンス方程式により固有粘度の値に変換され、同じ実験条件(同じ粘度計及び同じ温度)で純溶媒の流動時間が分かるようにする。一つの単一ポリマー溶液を用いて[η]を確認する。
【0070】
標準プロピレン重合試験に対する一般的な工程
【0071】
攪拌器、圧力ゲージ、温度計、触媒供給システム、モノマー供給ライン及び温度調節ジャケットが備えられた4Lの鋼鉄オートクレーブを用いた。反応器に固体触媒成分0.01g及びTEAL6.6モルを充填した。さらに、プロピレン1.6kg及び水素1.5NLを添加した。システムを攪拌下に70℃まで10分間加熱し、この条件下で120分間維持した。重合終了時、任意の未反応モノマーを除去することでポリマーを回収し、真空下で乾燥した。
【0072】
結果的に製造されたポリマー2.5g及びo−キシレン250mlを、冷却器及び還流縮合器が備えられた丸底フラスコに入れ、窒素下で維持した。得られた混合物を135℃まで加熱し、攪拌下で約60分間維持した。最終溶液を継続的な攪拌下で0℃まで冷却させ、その後、不溶性ポリマーを0℃で濾過した。その後、140℃で濾過物を窒素流れ中で蒸発させ、一定の重量に達するようにした。前記キシレン−可溶性画分の含量をオリジナル2.5gの百分率として表現し、その差はX.I.%である。
【0073】
エチレン重合(HDPE)に対する一般的なスラリー工程
【0074】
70℃でN
2ストリーム下で脱気した4Lのステンレス鋼鉄オートクレーブに、無水ヘキサン1600cc、球状成分0.025g及びトリエチルアルミニウム(TEA)0.5gを導入した。全てを攪拌し、75℃まで加熱した後、H
24bar及びエチレン7barを供給した。重合は2時間の間持続され、この間圧力を一定に維持するためにエチレンを供給した。
【0075】
気相エチレン重合(HDPE)に対する一般的な工程
【0076】
15.0Lのステンレス鋼鉄流動反応器に、気体循環システム、サイクロン分離器、熱交換器、温度及び圧力表示器、エチレン、プロパン、水素用供給ライン、及び触媒予備重合及び/又は触媒系の流動層反応器内への注入のための1Lの鋼鉄反応器を備えた。
【0077】
気相装置は、純粋な窒素を40℃で12時間フラクシングすることで精製した後、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)0.2gを含有するプロパン(10bar、部分圧力)混合物を80℃で30分間循環させた。その後、これを減圧し、反応器を純粋なプロパンで洗浄した後、80℃で加熱し、最後に24barの総圧力を有するプロパン(60モル%)、エチレン(10モル%)及び水素(30モル%)をローディングした。
【0078】
100mLの3口ガラスフラスコに、無水ヘプタン20mL、TIBA1.1g、ジエチルクロロアルミニウム(DEAC)0.16g、テトラヒドロフラン(THF)0.014g及び触媒成分0.22gをこの順に導入した。これらを共に混合し、室温で5分間攪拌した後、プロパン100gと共に1−L反応器に導入した。本願では、触媒系を流動層反応器に導入して、重合を開始する前にこれを1.5時間50℃で維持した。重合テストは2時間持続された。
【実施例】
【0079】
実施例1
【0080】
球状担体(MgCl
2/EtOHの付加物)の製造工程
【0081】
マグネシウムクロライド及びアルコール付加物をUSP4,399,054の実施例2に記述された方法により製造し、ただし10000RPMでなく2000RPMで行った。アルコール約3モル及びH
2O約2.5重量%を含有する付加物は平均サイズが約55μmであった。アルコールの重量%が25%に達するまで、50〜150℃の温度範囲で窒素ストリーム下で付加物を熱処理した。
【0082】
非立体特異性の触媒成分の製造工程
【0083】
窒素でパージした2L反応容器にTiCl
4 1Lを0℃で導入した。その後、同じ温度で、上述したように製造したエタノール25重量%を含有する球状MgCl
2/EtOH付加物70グラムを攪拌下で添加した。
【0084】
温度を2時間以内に130℃まで昇温して、60分間維持した。その後、攪拌を中断し、固体生成物が沈降されるようにした後(1時間以内において依然として130℃を維持する)、上澄液をサイホニングにより除去した。全スラリーを再び1Lにするため、多量の新しいTiCl
4を反応器に導入し、攪拌下で温度を110℃まで昇温した。この温度を15秒間維持した後、攪拌を中断して、固体が沈降されるようにし(110℃で1時間以内に)、上澄液をサイホニングにより除去した。
【0085】
その後、固体残留物をヘキサンで50℃で2回、25℃で3回洗浄した後、真空下で30℃で乾燥して分析を行った。
【0086】
球状形態の固体はマグネシウム含量を19.0重量%で有し、平均粒径(P50)は57ミクロンであった。
【0087】
中間固体成分を本願の上述した一般的な方法を用いてプロピレン重合でテストした。当該の試験から得られたポリマーはキシレン不溶性画分を48.1重量%で有する。
【0088】
プロピレン−予備重合
【0089】
攪拌器が備えられた1.5Lガラス反応器に、上述したように製造された触媒成分47gを攪拌しながら、20℃のヘキサン0.8Lを10℃で導入した。一定の内部温度を維持しながら、ヘキサン(約370g/l)中のトリ−n−オクチルアルミニウム(TnOA)14gを反応器に徐々に導入し、温度を10℃に維持した。3’間攪拌した後、固定の量の外部電子供与体化合物(C)を、表1に示した量で反応器に導入した。10’後、プロピレン61gを一定流を維持しながら同じ温度で6時間以内に反応器に注意深く導入した。反応器でプロピレンの消費をモニタリングし、触媒1g当たりポリマー1.3gの理論学的転化に至ったと見なされた時に、重合を中断した。予備ポリマー粒子が沈降されるようにして沈澱速度を測定した(表1のデータ)。生成物を20℃のヘキサン(60g/L)で4回洗浄し、真空下で30℃で乾燥した。予備重合された触媒を立体規則性(%mmmm)及び平均分子量(固有粘度)の面から分析した。データを表1に示す。
【0090】
予備重合された触媒上での内部電子供与体の担持化
【0091】
以前の実施例に記述されたように製造された予備重合された個体触媒約42gを窒素でパージしたガラス反応器に充填し、50℃でヘキサン0.8Lでスラリー化した。
【0092】
その後、予備重合された触媒のMgと有機ルイス塩基との間のモル比が1.7になる量で、エチルアセテートを注意深く滴加した(10’以内に)。
【0093】
スラリーを、内部温度として依然として50℃で2時間の間攪拌下で維持した。
【0094】
その後、攪拌を中断して固体が沈降されるようにした。最終触媒を回収して乾燥する前に、単一ヘキサン洗浄を室温で1回行った。
【0095】
また、最終固体組成物を表1に表す。
【0096】
結果的に得られた予備重合された固体触媒成分をスラリー工程及び気相工程の両方によりエチレン重合に用い、その結果をそれぞれ表2及び表3に示す。
【0097】
比較例2
【0098】
触媒を実施例1に記述された工程により製造し、予備重合プロセスを任意の外部電子供与体化合物を添加せずに行った。触媒組成物及び特徴も、表1に示す。結果的に得られた予備重合された固体触媒成分をスラリー工程及び気相工程の両方によりエチレン重合に用い、その結果をそれぞれ表2及び表3に示す。
【0099】
表1−予備重合に用いられる電子供与体タイプ及び相対的な量(TnOAに対し)、及び以後得られる触媒組成物に対するリスト。
【0100】
【表1】
【0101】
表2−一般的な工程により行われたヘキサンスラリーHDPE重合試験
【0102】
【表2】
【0103】
表3−一般的な工程により行われた気相重合HDPE試験
【0104】
【表3】
【0105】
実施例3
【0106】
触媒を実施例1に記述された工程により製造し、予備重合プロセスを表4に示した外部電子供与体を添加しながら行った(触媒組成物及び特徴も、含まれる)。
【0107】
結果的に得られた予備重合された固体触媒をスラリー方法工程によりエチレン重合でテストし、その結果を表5に示す。
【0108】
表4−実施例3に対し、予備重合に用いられる電子供与体タイプ及び相対的な量(TnOAに対する)、及びその後得られる触媒組成物に対するリスト。
【0109】
【表4】
【0110】
表5−実施例3の触媒を用いる一般的な工程により行われたヘキサンスラリーHDPE重合試験
【0111】
【表5】
【0112】
実施例4
【0113】
触媒を実施例1に記述された工程により製造し、予備重合プロセスを表6に示した外部電子供与体を添加しながら行い、出発触媒1g当たりポリマー0.66gを有するようにプロピレンの供給を減少させた(触媒組成物及び特徴も、含まれる)。
【0114】
結果的に得られた予備重合された固体触媒をスラリー方法工程によりエチレン重合でテストし、その結果を表7に示す。
【0115】
表6−実施例4に対し、予備重合に用いられる電子供与体タイプ及び相対的な量(TnOAに対する)、及びその後得られる触媒組成物に対するリスト。
【0116】
【表6】
【0117】
表7−実施例4の触媒を用いる一般的な工程により行われたヘキサンスラリーHDPE重合試験
【0118】
【表7】