(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231147
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】引張又は圧縮試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20171106BHJP
G01N 3/04 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
G01N3/08
G01N3/04 P
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-61286(P2016-61286)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-173206(P2017-173206A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2016年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】512024336
【氏名又は名称】株式会社メルビル
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕也
【審査官】
伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−117952(JP,U)
【文献】
特許第4344850(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/08
G01N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け板部材と、前記受け板部材に接触する第一のロッド部材と、前記第一のロッド部材が螺合する第一のねじ穴を有する第一の部材と、前記第一の部材と連動して可動可能な第一の試料固定部材と、前記第一の試料固定部材との間で試料を固定する第二の試料固定部材と、前記第一の部材を、前記第一のロッド部材の長手方向に対して引張り又は圧縮可能な弾性部材と、前記部材を組み込むフレームとからなる試料の引張又は圧縮試験装置。
【請求項2】
さらに、前記受け板部材に接触する第二のロッド部材と、前記第二のロッド部材が螺合する第二のねじ穴を有する第二の部材と、を有する請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記第二の部材を、第二のロッド部材の長手方向に対して引張り又は圧縮可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第二の試料固定部材は、前記第二の部材と連動して可動可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
さらに、前記第一及び/又は第二のロッド部材を回転させるつまみ部材を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
さらに、前記第一のロッド部材は第一のギヤを備え、前記第二のロッド部材は第二のギヤを備え、前記第一のギヤに噛み合う第三のギヤ及び/又は前記第二のギヤに噛み合う第四のギヤを有するシャフトを備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記シャフトの回転により、第一の部材と第二の部材とは、互いに近づくか、又は遠ざかる方向に可動する請求項6記載の装置。
【請求項8】
さらに、前記シャフトの第三のギヤ及び/又は第四のギヤに噛み合う第五のギヤを有するモータードライブ装置を有する請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記フレームの側面には、前記第一及び/又は第二の部材を案内する案内構造を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第一及び/又は第二の試料固定部材は、脱着可能である請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記受け板部材は、圧力センサーを有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張又は圧縮試験装置に関し、特に、小型化可能な引張又は圧縮試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料に対して引張力又は圧縮力を加えることにより試料の機械的諸特性を測定するための引張試験機がある。例えば、微小長試料の両端部をクリップにより挟んで所定の試験試験長に固定した後、各クリップを引張試験機の各引張手段に固定することを特徴とする微小長試料引張試験方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−99820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のものも含め、従来技術においては、微妙な応力の調整を可能にするには困難性を有し、特に、微小な試料に対しては、細かい調整が困難であるという問題点を有していた。装置が複雑化され、大掛かりなものになりがちで、小型化が望まれている。
【0005】
そこで、上記問題点を解決すべく、本発明は、小型化が可能な引張又は圧縮試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明者は鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
【0007】
すなわち、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置は、受け板部材と、前記受け板部材に接触する第一のロッド部材と、前記第一のロッド部材が螺合する第一のねじ穴を有する第一の部材と、前記第一の部材と連動して可動可能な第一の試料固定部材と、前記第一の試料固定部材との間で試料を固定する第二の試料固定部材と、前記第一の部材を、前記第一のロッド部材の長手方向に対して引張り又は圧縮可能な弾性部材と、前記部材を組み込むフレームとからなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、さらに、前記受け板部材に接触する第二のロッド部材と、前記第二のロッド部材が螺合する第二のねじ穴を有する第二の部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記弾性部材は、前記第二の部材を、第二のロッド部材の長手方向に対して引張り又は圧縮可能であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記第二の試料固定部材は、前記第二の部材と連動して可動可能であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、さらに、前記第一及び/又は第二のロッド部材を回転させるつまみ部材を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、さらに、前記第一のロッド部材は第一のギヤを備え、前記第二のロッド部材は第二のギヤを備え、前記第一のギヤに噛み合う第三のギヤ及び/又は前記第二のギヤに噛み合う第四のギヤを有するシャフトを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記シャフトの回転により、第一の部材と第二の部材とは、互いに近づくか、又は遠ざかる方向に可動することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、さらに、前記シャフトの第三のギヤ及び/又は第四のギヤに噛み合う第五のギヤを有するモータードライブ装置を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記フレームの側面には、前記第一及び/又は第二の部材を案内する案内構造を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記第一及び/又は第二の試料固定部材は、脱着可能であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記受け板部材は、圧力センサーを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の試料の引張又は圧縮試験装置は、コンパクトに設計可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置の断面図の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置の断面図の一例であって、試料を引張っている場合を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置の上面図の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置の一例を示し、つまみを備える場合を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置の一例を示し、モータードライブを備える場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の試料の引張又は圧縮試験装置は、受け板部材と、前記受け板部材に接触する第一のロッド部材と、前記第一のロッド部材が螺合する第一のねじ穴を有する第一の部材と、前記第一の部材と連動して可動可能な第一の試料固定部材と、前記第一の試料固定部材との間で試料を固定する第二の試料固定部材と、前記第一の部材を、前記第一のロッド部材の長手方向に対して引張り又は圧縮可能な弾性部材と、前記部材を組み込むフレームとからなることを特徴とする。受け板部材は、フレーム内に設けることができる。片側からの引張又は圧縮試験には、受け板部材は、フレームの側面を利用することができる。受け板部材は、ロッドを受ける部材であり、受け板部材の役割は、ロッドを受けることより、ロッドの移動を停止するとともに、当該ロッドの回転を利用して、前記第一のロッド部材が螺合する第一のねじ穴を有する第一の部材と、前記第一の部材と連動して可動可能な第一の試料固定部材とを水平方向に移動させることが可能とし、それによって、試料の圧縮及び引張試験を行うことが可能とすることである。
【0021】
なお、受け板部材は、ロッドの移動をブロックできる限り、圧力センサー自体で構成されていてもよい。また、受け板部材に、圧力センサーを配してもよい。圧力センサーを配することにより、引張又は圧縮試験のみにならず、当該引張又は圧縮応力を測定することも可能である。圧力センサ―を受け板部材に配する場合、圧力センサーは、少なくとも受け板部材の片側に配すればよい。圧力センサーが受け板部材の両側にあってもよい。受け板部材の片側に圧力センサーがあれば、ネジのロットで片側の圧力センサーを押す事で、作用反作用により、実際に引張った応力等を測定することが可能である。また、一つの圧力センサーで引張又は圧縮応力を測定できるので、さらにコンパクトなサイズを要求される場合には有利に作用することになる。このように、例えば、受け板部材と、当該受け板部材の反対側のフレーム側面で、ロッドをサンドイッチにすると、ロッドの回転により、ロッドが移動することなく、その場でクルクル回るので、第一の部材が動き、ひいては連動して第一の試料固定部材が動く仕組みとなっている。
【0022】
また、前記第一の部材を、前記第一のロッド部材の長手方向に対して引張り又は圧縮可能な弾性部材により、試料をリニアに引張又は圧縮する事が可能となる。ロッド部材が螺合する部材を、弾性部材、例えば、引きばね、押しばね(圧縮ばね)等で引張又は圧縮し、前記部材にいずれかのテンションをかけることで、ネジ(ロッド)のガタ付きを抑えることができ、バックラッシュの少ない駆動が可能となる。
【0023】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、さらに、前記受け板部材に接触する第二のロッド部材と、前記第二のロッド部材が螺合する第二のねじ穴を有する第二の部材と、を有することを特徴とする。第二のロッド部材と、前記第二のロッド部材が螺合する第二のねじ穴を有する第二の部材との構成により、試料を両サイドから引張、又は圧縮することが可能となる。
【0024】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記弾性部材は、前記第二の部材を、第二のロッド部材の長手方向に対して引張り又は圧縮可能であることを特徴とする。前記弾性部材により、試料をリニアに引張又は圧縮する事が可能となる。ロッド部材が螺合する部材を、弾性部材、例えば、引きばね、押しばね(圧縮ばね)等で引張又は圧縮し、前記部材にいずれかのテンションをかけることで、ネジ(ロッド)のガタ付きを抑えることができ、バックラッシュの少ない駆動が可能となる。
【0025】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記第二の試料固定部材は、前記第二の部材と連動して可動可能であることを特徴とする。また、好ましい実施態様において、さらに、前記第一及び/又は第二のロッド部材を回転させるつまみ部材を有することを特徴とする。前記つまみ部材により、試料の引張又は圧縮が容易となる。
【0026】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、さらに、前記第一のロッド部材は第一のギヤを備え、前記第二のロッド部材は第二のギヤを備え、前記第一のギヤに噛み合う第三のギヤ及び/又は前記第二のギヤに噛み合う第四のギヤを有するシャフトを備えることを特徴とする。また、好ましい実施態様において、前記シャフトの回転により、第一の部材と第二の部材とは、互いに近づくか、又は遠ざかる方向に可動することを特徴とする。第一の部材や第二の部材のネジ山を調整することにより、例えば、前記シャフトの右周り又は左周りの回転は、第一の部材及び第二の部材は、互いに離れる方向又は互いに近づく方向へ移動するように設定することができる。
【0027】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、さらに、前記シャフトの第三のギヤ及び/又は第四のギヤに噛み合う第五のギヤを有するモータードライブ装置を有することを特徴とする。本構造はギヤを用いて駆動させることができるため、モータードライブを配することにより、試料の動的観察(引張りながら、又は圧縮しながらの観察)も可能であり、つまみなどで安価に製作も可能である。
【0028】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記フレームの側面には、前記第一及び/又は第二の部材を案内する案内構造を有することを特徴とする。案内構造は、前記第一及び/又は第二の部材を案内することが可能であれば、特に限定されない。例えば、案内構造は、V溝を有する構造等とすることができる。例えば、V溝構造の場合について説明すると、第一及び/又は第二の部材側面にV溝を配し、第一及び/又は第二の部材を組み込む(押さえる)フレームにV溝とは逆の山を配する事で、第一及び/又は第二の部材の駆動時に捻じれが生ずることなく、水平に駆動可能となる。一般的には、万力のように両サイドにロットを配して捻じれや、浮き上がりを防止することができるが、駆動させるために、加工上どうしても若干のクリアランスが必要なためガタつきが出てしまう。仮に、ガタ付きをゼロに抑える事が出来ても、小さく作るにはロットは細くなり、ロット自体によじれが出てしまい、歪みによる捩れや、歪みにより、動かないなど、現実的に難しいのが現状である。この場合、大きな用途用であり、大きく作れば可能であるが、小さい部材に適用する場合には、例えば以下の問題点を有する。
【0029】
例えば、好ましい態様において、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置は、SEM等の電子顕微鏡観察にも応用することが可能であるが、このような小さい装置として適用する場合には、上述の捩れやガタは電子顕微鏡内のナノレベルの世界では大きな捻じれとなり、引張り試験精度に悪影響を及ぼすことになる。このV溝構造だと、押しあて具合を調整する事が出来るため、スムーズかつガタ付きの無い駆動が実現可能で、超コンパクトで強度のある構造で制作が可能となる。
【0030】
なお、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置をSEM等の顕微鏡での観察に使用する場合、好ましい態様において、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置は、SEM用固定ピンを備えることができる。この固定ピンを中心に試験装置は回転可能であり、回転させながら、試料の引張試験等を行うことができる。
【0031】
また、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の好ましい実施態様において、前記第一及び/又は第二の試料固定部材は、第一及び/又は第二の部材から脱着可能であることを特徴とする。試料固定部材は、試料固定台と試料固定板とから構成されていてもよく、これらを取外して、両部材を変えることにより、様々な形状の試料をクランプすることが可能となる。
【0032】
また、好ましい態様において、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置は、Nanoスケールを観察するSEM(走査型電子顕微鏡)をはじめ、Sub μmスケールを観察するレーザー顕微鏡や、μmスケールを観察する光学顕微鏡など、さらにはX線解析装置などに適用することが可能である。これらの装置において、微小な領域に注視しながら、前述のスケールレベルでの試料挙動をその場観察(その場観察とは、動的観察手法の学術文献上における呼称)を行う場合、引張又は圧縮試験によって、試料の観察部位(視野位置)が、出来るだけ前述の観察装置らの光軸より逃げない事が望まれる。本発明の試料の引張又は圧縮試験装置は、試料片の両端から、引張り力(引張量)を均等に与えることが可能な機構であり、よって、試料の中心より引分けの力を受けることも可能であるので、観察部分の位置逃げが最小に抑えられる効果を有する。よって本発明は冒頭に羅列した装置群を用いた微小領域の観察手法に、最適化され、広範な範囲で適用可能となっている。
【実施例】
【0033】
ここで、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0034】
図面を参照して、本発明の試料の引張又は圧縮試験装置の一実施態様を説明すれば以下の通りである。
【0035】
図1は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置の断面図の一例を示す図である。
図1の態様は、小型化が強く要求されている電子顕微鏡分野における試料の引張又は圧縮試験装置の例である。この例において、ギヤが記載されているが必須ではない。
図1において、1は第一のギヤ(右ネジ用)、2は第一のロッド部材(右ネジ)、3は第一の試料固定部材、4は試料、5は第二のロッド部材(左ネジ(逆ネジ))、6は第二のギヤ(左ネジ用)、7はCCW(反時計回り)回転(ネジに対しての回転方向)、8はCW(時計回り)回転(シャフトの回転軸)、9は受け板部材又は圧力センサー、10はSEM用固定ピン、11は第三又は第四のギヤ、13はCW回転(ネジに対しての回転方向)、をそれぞれ示す。
【0036】
図1の態様は、両側にロッドを有する一例であるが、片側ロッドのものでもよい。図示しないが、片側ロッドの場合、第一のロッド部材(右ネジ)2、第一の試料固定部材3、試料4、受け板部材又は圧力センサー9、から構成されることができる。
【0037】
本発明の引張又は圧縮試験装置においては、片側のみならず、両側からの引張又は圧縮試験も行うことが可能である。
図1の側面断面図に記載するように、両サイドの引張り又は圧縮ステージ(第一又は第二の部材)にそれぞれ、右ネジ、左ネジと逆方向のタップを立てる事で、第三又は第四のギヤ11(ギヤ1又は6と連動するギヤ)が一定方向で回っても、それぞれがロッドに対して(中心側)同一動作を行うことができる。例えば、第三又は第四のギヤ11の軸が時計回り(CW)になると、当然ギヤ1は反対に回るが、作用する方向(中心側)に向かってみるとネジを締める方向(CW)に回ることになる。ギヤ6は中心方向に向かってみると反時計回り(CCW)になるが、左ネジなので、しまる方向となる。よってギヤ11のシャフトをCWにすれば、試料固定部材は両サイドに開き、CWでは閉まる方向となり、引張り圧縮が可能となる。両サイドで開く重要性は、引張りホルダーと同じ原理で、視野が逃げないことにある。
【0038】
図2は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置の断面図の一例であって、試料を両サイドから引張っている場合を示す図である。
【0039】
図3は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置を上から見た図の一例を示す図である。
図3において、30はV溝構造の拡大図、31は弾性部材、32はギヤ、33は第一のロッド部材、34は第一の部材、35は受け板部材、36は圧力センサー、37は第二のロッド部材、38は第二の部材、39はフレーム、をそれぞれ示す。この態様においては、受け板部材35と、圧力センサー36を別途設けているが、圧力センサー自体に、ロッドを受ける耐久性があれば、受け板部材の役割を果たすので、圧力センサーのみでもよい。また、受け板部材に圧力センサーが組み込まれていてもよい。この態様においては、弾性部材31は、第一の部材34と、第二の部材38とが、お互いに近づくようにスプリングにより引張られているが、第一の部材34と、フレーム39との間に弾性部材を設置して、第一の部材34を試料方向へ押すような構成でもよい。逆に、第一の部材34と、フレーム39との間に弾性部材を設置して、第一の部材34をフレーム39側へ押すような構成でもよい。いずれにしても、いずれかの方向、好ましくはロッドの長手方向の軸に沿ったテンションを、第一又は第二の部材にかけることにより、スムーズに第一又は第二の部材を動かすことが可能である。
【0040】
また、この態様においては、前記フレームの側面には、前記第一又は第二の部材を案内する案内構造を有する。案内構造は、具体的には、この例では、V溝構造30である。これにより、第一又は第二の部材を、スムーズ、かつがたつきなく駆動させることができる。また、V構造等の案内溝であれば、押し当て具合を調整することができるので、コンパクトで強度を有する構造で制作することが可能となる。
【0041】
図4は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置の一例を示し、つまみを備える場合を示す図である。
図4において、40はつまみ部材、41は第一の試料固定部材、42は第二の試料固定部材、43は試料、44はフレーム、をそれぞれ示す。つまみにより、よりスムーズに引張又は圧縮の調整が可能となる。
【0042】
図5は、本発明の一実施態様における試料の引張又は圧縮試験装置の一例を示し、モータードライブを備える場合を示す図である。
図5において、50はモータードライブを示す。この構造によれば、ギヤ及びモータードライブにより、動的観察(引張ながら、又は圧縮しながら、試料を観察)も可能であり、一方つまみなどで安価に製作も可能である。
【0043】
このように、本発明の試験の引張又は圧縮装置によれば、装置の小型化が実現可能となる。小型化の装置の例として、顕微鏡観察用にも適用できることが判明した。また、圧力センサーを配する態様においては、引張又は圧縮応力を測る事が可能となる。上記ネジ構造と中央にブロックセンター受け板を配する事で、両サイドに引張、圧縮する事を可能にした。また、この構造にする事で中央に超小型の圧力センサーを配する事が出来るため、引張力又は圧縮力の測定が可能となる。様々な測定方法は存在するが、本発明の構造であれば、たった一つの圧力素子で引張力又は圧縮力を測定できるので、超コンパクトかつ、低コストで測定を可能にすることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
このような本発明の試料の引張又は圧縮試験装置は、装置自体を小型化可能であることから、広範な範囲での分野において有益であることが期待できる。
【符号の説明】
【0045】
1 第一のギヤ(右ネジ用)
2 第一のロッド部材(右ネジ)
3 第一の試料固定部材
4 試料
5 第二のロッド部材(左ネジ(逆ネジ))
6 第二のギヤ(左ネジ用)
7 CCW(反時計回り)回転(ネジに対しての回転方向)
8 CW(時計回り)回転(シャフトの回転軸)
9 受け板部材又は圧力センサー
10 SEM用固定ピン
11 第三又は第四のギヤ
13 CW回転(ネジに対しての回転方向)
20 両サイドが開く様子
30 V溝構造の拡大図
31 弾性部材
32 ギヤ
33 第一のロッド部材
34 第一の部材
35 受け板部材
36 圧力センサー
37 第二のロッド部材
38 第二の部材
39 フレーム
40 つまみ部材
41 第一の試料固定部材
42 第二の試料固定部材
43 試料
44 フレーム
50 モータードライブ