(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6231181
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】かつらベース、かつら及びかつらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
A41G3/00 F
A41G3/00 N
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-229909(P2016-229909)
(22)【出願日】2016年11月28日
【審査請求日】2017年2月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】星名 宣辰
【審査官】
村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−065335(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3056701(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3206599(JP,U)
【文献】
特開2008−240178(JP,A)
【文献】
実開平01−070825(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護ネット、ネット状の基布、及び標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材を準備する第1の工程と、
前記布部材の前記表示面と反対側の面が前記保護ネットと接するように、前記布部材を前記保護ネットに縫着又は貼着した後、前記基布及び前記保護ネットの外縁部を縫合する第2の工程と、
縫合された前記保護ネット及び前記基布に対して、擬毛を前記保護ネット側から、前記保護ネット及び前記基布の両方、前記保護ネットのみ、並びに前記基布のみの何れかに植設する第3の工程と、を含む、ことを特徴とするかつらの製造方法。
【請求項2】
保護ネット、ネット状の基布、標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材、及び前記保護ネット以上のサイズを有する人工皮膚シートを準備する第1の工程と、
前記布部材の前記表示面と反対側の面が前記保護ネットと接するように、前記布部材を前記保護ネットに縫着又は貼着した後、前記保護ネットの前記布部材が取り付けられた面と反対側の面が前記人工皮膚シートと接するように、前記保護ネットを前記人工皮膚シートに縫着又は貼着し、その後、前記布部材の前記表示面が前記基布側を向くように配置した状態で、前記人工皮膚シート及び前記基布の外縁部を縫着する第2の工程と、
縫合された前記人工皮膚シート及び前記基布に対して、擬毛を前記人工皮膚シート側から、前記人工皮膚シート又は前記基布に植設する第3の工程と、を含む、ことを特徴とするかつらの製造方法。
【請求項3】
保護ネット、ネット状の基布、標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材、並びに前記保護ネット以上のサイズを有する人工皮膚シート及び第2の保護ネットを準備する第1の工程と、
前記人工皮膚シート及び前記第2の保護ネットを縫着又は貼着した後、擬毛を前記人工皮膚シート側から前記第2の保護ネットに植設する第2の工程と、
前記布部材の前記表示面と反対側の面が前記保護ネットと接するように、前記布部材を前記保護ネットに縫着又は貼着した後、前記布部材が間に配置されるように、前記保護ネット及び前記基布の外縁部を縫合する第3の工程と、
第2及び第3の工程の後、前記布部材が間に配置されるように、前記人工皮膚シート及び前記第2の保護ネットの接合体の外縁部と、前記基布の外縁部とを縫合する第4の工程と、を含む、ことを特徴とするかつらの製造方法。
【請求項4】
保護ネット、ネット状の基布、標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材、及び前記保護ネット以上のサイズを有する人工皮膚シートを準備する第1の工程と、
前記人工皮膚シート及び前記保護ネットを縫着又は貼着した後、擬毛を前記人工皮膚シート側から前記保護ネットに植設する第2の工程と、
前記布部材の前記表示面が接するように、前記布部材を前記基布に縫着又は貼着する第3の工程と、
第2及び第3の工程の後、前記布部材が間に配置されるように、前記人工皮膚シート及び前記保護ネットの接合体の外縁部と、前記基布の外縁部とを縫合する第4の工程と、を含む、ことを特徴とするかつらの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつらベース、かつらベースに擬毛を植設したかつら及びそのかつらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の頭部に装着するかつらは、通常、かつらベースと称するベース部分に擬毛を植設することによって形成される。このようなかつらの中には、網状のかつらベースに擬毛を植設したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、かつらの中には、図柄、文字等が示された布部材(タグ)がかつらベースの裏面側に取り付けられたものが提案されている(例えば、特許文献2の段落0018、
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−114567号公報
【特許文献2】特開2011−127228
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載のかつらにおいて、かつら裏面に配置された布部材が装着者の頭皮に接触して、装着感が低下するという問題があった。また、長く使用すると、布部材の損傷が起きやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、裏面側に配置された図柄、文字等が示された布部材が装着の際のつけ心地を害さず、長く使用しても布部材の損傷が少ないかつらを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の1つの実施態様に係るかつらベースは、
標章、図柄又は文字が表された表示面を有する布部材と、
前記布部材以上のサイズを有する保護ネットと、
ネット状の基布と、を備え、
前記布部材は、前記保護ネット及び前記基布の間に、前記表示面が前記基布に接するように配置されている。
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の1つの実施態様に係るかつらは、上記のかつらベースの前記人工皮膚シート又は前記保護ネット側に擬毛が植設されている。
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の1つの実施態様に係るかつらの製造方法は、
保護ネット、ネット状の基布、及び標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材を準備する第1の工程と、
前記布部材の前記表示面と反対側の面が前記保護ネットと接するように、前記布部材を前記保護ネットに縫着又は貼着した後、前記基布及び前記保護ネットの外縁部を縫合する第2の工程と、
縫合された前記保護ネット及び前記基布に対して、擬毛を前記保護ネット側から、前記保護ネット及び前記基布の両方、前記保護ネットのみ、並びに前記基布のみの何れかに植設する第3の工程と、を含む。
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のその他の実施態様に係るかつらの製造方法は、
保護ネット、ネット状の基布、標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材、及び前記保護ネット以上のサイズを有する人工皮膚シートを準備する第1の工程と、
前記布部材の前記表示面と反対側の面が前記保護ネットと接するように、前記布部材を前記保護ネットに縫着又は貼着した後、前記保護ネットの前記布部材が取り付けられた面と反対側の面が前記人工皮膚シートと接するように、前記保護ネットを前記人工皮膚シートに縫着又は貼着し、その後、前記布部材の前記表示面が前記基布側を向くように配置した状態で、前記人工皮膚シート及び前記基布の外縁部を縫着する第2の工程と、
縫合された前記人工皮膚シート及び前記基布に対して、擬毛を前記人工皮膚シート側から、前記人工皮膚シート又は前記基布に植設する第3の工程と、を含む。
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のその他の実施態様に係るかつらの製造方法は、
保護ネット、ネット状の基布、標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材、並びに前記保護ネット以上のサイズを有する人工皮膚シート及び第2の保護ネットを準備する第1の工程と、
前記人工皮膚シート及び前記第2の保護ネットを縫着又は貼着した後、擬毛を前記人工皮膚シート側から前記第2の保護ネットに植設する第2の工程と、
前記布部材の前記表示面と反対側の面が前記保護ネットと接するように、前記布部材を前記保護ネットに縫着又は貼着した後、前記布部材が間に配置されるように、前記保護ネット及び前記基布の外縁部を縫合する第3の工程と、
第2及び第3の工程の後、前記布部材が間に配置されるように、前記人工皮膚シート及び前記第2の保護ネットの接合体の外縁部と、前記基布の外縁部とを縫合する第4の工程と、を含む。
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明のその他の実施態様に係るかつらの製造方法は、
保護ネット、ネット状の基布、標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材、及び前記保護ネット以上のサイズを有する人工皮膚シートを準備する第1の工程と、
前記人工皮膚シート及び前記保護ネットを縫着又は貼着した後、擬毛を前記人工皮膚シート側から前記保護ネットに植設する第2の工程と、
前記布部材の前記表示面が接するように、前記布部材を前記基布に縫着又は貼着する第3の工程と、
第2及び第3の工程の後、前記布部材が間に配置されるように、前記人工皮膚シート及び前記保護ネットの接合体の外縁部と、前記基布の外縁部とを縫合する第4の工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明においては、裏面側に配置された図柄、文字等が示された布部材が装着の際のつけ心地を害さず、長く使用しても布部材及びその周辺の損傷が少ないかつらベース、かつら及びかつらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施態様1に係るかつらの製造方法を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す本発明の実施態様1に係るかつらベースの製造方法を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施態様2に係るかつらの製造方法を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施態様3に係るかつらの製造方法を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施態様4に係るかつらの製造方法を示す断面図である。
【0014】
始めに、本発明の全般的な説明として、本発明の実施態様に係るかつらベース、かつら及びかつらの製造方法について記載する。
【0015】
本発明の実施態様1乃至4に係るかつらベースは、
標章、図柄又は文字が表された表示面を有する布部材と、
前記布部材以上のサイズを有する保護ネットと、
ネット状の基布と、を備え、
前記布部材は、前記保護ネット及び前記基布の間に、前記表示面が前記基布に接するように配置されている。
【0016】
本実施態様では、標章、図柄又は文字が表された表示面を有する布部材を保護ネット及び基布で包含して保護するので、長く使用しても布部材の損傷を少なくすることができ、布部材が装着者の頭皮に接触しないので、布部材が装着の際のつけ心地を害さることがない。
【0017】
本発明の実施態様2及び4に係るかつらベースは、上記実施態様1において、
前記保護ネットの前記布部材と接する面の反対側に人工皮膚シートが配置されている。
【0018】
本実施態様では、人工皮膚シートを取り付けることによって、より自然な外観を有することができる。
【0019】
本発明の実施態様3に係るかつらベースは、上記実施態様2において、
前記保護ネット及び前記人工皮膚シートの間に、更に第2の保護ネットが配置されている。
【0020】
本実施態様では、布部材が配置される箇所の保護ネットを二枚にすることによって、布部材をより確実に保護することができる。
【0021】
本発明の実施態様1乃至4に係るかつらは、上記のかつらベースの前記人工皮膚シート又は前記保護ネット側に擬毛が植設されている。
【0022】
本実施態様では、裏面側に配置された布部材が装着の際のつけ心地を害さず、長く使用しても布部材の損傷が少ないかつらを提供することができる。
【0023】
本発明の実施態様1に係るかつらの製造方法は、
保護ネット、ネット状の基布、及び標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材を準備する第1の工程と、
前記布部材の前記表示面と反対側の面が前記保護ネットと接するように、前記布部材を前記保護ネットに縫着又は貼着した後、前記基布及び前記保護ネットの外縁部を縫合する第2の工程と、
縫合された前記保護ネット及び前記基布に対して、擬毛を前記保護ネット側から、前記保護ネット及び前記基布の両方、前記保護ネットのみ、並びに前記基布のみの何れかに植設する第3の工程と、を含む。
【0024】
本実施態様では、保護ネットに布部材を取り付け、その保護ネットを基布に取り付けるので、簡単な工程で、裏面側に配置された布部材が装着の際のつけ心地を害さず、長く使用しても布部材の損傷が少ないかつらを製造することができる。
【0025】
本発明の実施態様2に係るかつらの製造方法は、
保護ネット、ネット状の基布、標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材、及び前記保護ネット以上のサイズを有する人工皮膚シートを準備する第1の工程と、
前記布部材の前記表示面と反対側の面が前記保護ネットと接するように、前記布部材を前記保護ネットに縫着又は貼着した後、前記保護ネットの前記布部材が取り付けられた面と反対側の面が前記人工皮膚シートと接するように、前記保護ネットを前記人工皮膚シートに縫着又は貼着し、その後、前記布部材の前記表示面が前記基布側を向くように配置した状態で、前記人工皮膚シート及び前記基布の外縁部を縫着する第2の工程と、
縫合された前記人工皮膚シート及び前記基布に対して、擬毛を前記人工皮膚シート側から、前記人工皮膚シート又は前記基布に植設する第3の工程と、を含む。
【0026】
本実施態様では、人工皮膚シートを保護ネットに取り付けた後、布部材を内側に配置しながら基布に取り付けるので、人工皮膚シートを用いたかつらにおいても、布部材を適切に保護することができ、装着した際のつけ心地をよくすることができる。
【0027】
本発明の実施態様3に係るかつらの製造方法は、
保護ネット、ネット状の基布、標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材、並びに前記保護ネット以上のサイズを有する人工皮膚シート及び第2の保護ネットを準備する第1の工程と、
前記人工皮膚シート及び前記第2の保護ネットを縫着又は貼着した後、擬毛を前記人工皮膚シート側から前記第2の保護ネットに植設する第2の工程と、
前記布部材の前記表示面と反対側の面が前記保護ネットと接するように、前記布部材を前記保護ネットに縫着又は貼着した後、前記布部材が間に配置されるように、前記保護ネット及び前記基布の外縁部を縫合する第3の工程と、
第2及び第3の工程の後、前記布部材が間に配置されるように、前記人工皮膚シート及び前記第2の保護ネットの接合体の外縁部と、前記基布の外縁部とを縫合する第4の工程と、を含む。
【0028】
本実施態様では、人工皮膚シートを取り付けた第2の保護ネットに擬毛を植設してから、布部材が間に配置された保護ネット及び基布と合体させるので、布部材をより確実に保護できる上に、擬毛の植設が容易となる。
【0029】
本発明の実施態様4に係るかつらの製造方法は、
保護ネット、ネット状の基布、標章、図柄又は文字が表された表示面を有し、前記基布及び前記保護ネット以下のサイズを有する布部材、及び前記保護ネット以上のサイズを有する人工皮膚シートを準備する第1の工程と、
前記人工皮膚シート及び前記保護ネットを縫着又は貼着した後、擬毛を前記人工皮膚シート側から前記保護ネットに植設する第2の工程と、
前記布部材の前記表示面が接するように、前記布部材を前記基布に縫着又は貼着する第3の工程と、
第2及び第3の工程の後、前記布部材が間に配置されるように、前記人工皮膚シート及び前記保護ネットの接合体の外縁部と、前記基布の外縁部とを縫合する第4の工程と、を含む。
【0030】
本実施態様では、人工皮膚シートを取り付けた保護ネットに擬毛を植設してから、布部材が間に配置された保護ネット及び基布と合体させるので、布部材をより確実に保護できる上に、擬毛の植設が容易となる。また、布部材を保護する保護ネットを一枚にすることによって、製造コストを下げ、製造時間を短縮することができる。
【0031】
次に、本発明の実施態様に係るかつらベース、このかつらベースを用いたかつら及びこのかつらの製造方法について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0032】
(実施態様1に係るかつらの説明)
はじめに、
図1及び2を参照しながら、本発明の実施態様1に係るかつらの説明を行う。
図1は、本発明の実施態様1に係るかつらの製造方法を示す断面図である。
図2は、
図1に示す本発明の実施態様1に係るかつらベースの製造方法を示す上面図である。かつらベース2はシート状であって、ここでは一例としてハート形の外形を有する場合を示す。ただし、かつらベース2の大きさ、外形は、用途に応じて任意の大きさ、任意の形状のものを用いることができる。
【0033】
図1及び2に示すように、本実施態様に係るかつらベース2は、標章、図柄又は文字が表された表示面3aを有する布部材3と、布部材3以上のサイズを有する保護ネット4と、ネット状の基布5と、を備える。また、かつらベース2は、さらに、かつらベース2の強度を高めるために、基布5の外縁部に縫着される外枠7を備える。
【0034】
布部材3は、表示面3aの反対面が保護ネット4に縫着又は貼着される。また、布部材3は、保護ネット4及び基布5の間に、表示面3aが基布5に接するように配置されている。布部材3は、保護ネット4又は基布5と比較すると厚手の布部材であり、表示面3aに標章、図柄又は文字が刺繍又は印刷で表されている。本実施態様においては、布部材3自体が蝶々の形状であり、表示面3aにデフォルメされた蝶々の図柄が刺繍又は印刷で表されている。
【0035】
保護ネット4は、絹又はポリエステル、ポリアミド等の化学繊維素材を天竺編みなどでネット状にした部材である。保護ネット4は、布部材3の表示面3aの反対面と縫着又は接着され、その布部材3を内側にして、その外縁部で基布5と縫着される。
【0036】
基布5は、絹又はポリエステル、ポリアミド等の化学繊維素材を天竺編みなどでネット状にした部材である。また、基布5は、ユーザがかつらを装着した際に、その頭部に直接接する部材であり、肌触りがよくなるように構成される。
【0037】
本発明の実施態様1に係るかつら1は、かつらベース2の保護ネット4側に擬毛6が植設されている。擬毛6は、人毛から成る一本の毛、又は、アクリル、ポリエステル、ポリアミド系の樹脂などから成るモノフィラメントを黒又はその他の色に例えば原液染めによって着色し紡出した人工毛である。また、擬毛6は、毛髪対6a,6bとなるように、保護ネット4又は基布5の網目にその中間部が結び付けられる。
【0038】
(実施態様1に係るかつらの製造方法の説明)
本発明の実施態様1に係るかつらの製造方法は、第1乃至第3の工程から構成される。
【0039】
第1の工程では、保護ネット4、ネット状の基布5、及び標章、図柄又は文字が表された表示面3aを有し、基布5及び保護ネット4以下のサイズを有する布部材3を準備する。
【0040】
第2の工程では、
図1(a)及び
図2(a)〜(c)に示すように、布部材3の表示面3aと反対側の面3bが保護ネット4と接するように、布部材3を保護ネット4に縫着又は貼着する。次に、
図1(b)及び
図2(d)〜(g)に示すように、基布5及び保護ネット4の外縁部を縫合する。そして、外枠7を基布5の外側に縫着し、かつらベース2を完成させる。
【0041】
第3の工程では、
図1(c)に示すように、縫合された保護ネット4及び基布5に対して、擬毛6を保護ネット4側から、保護ネット4及び基布5の両方、保護ネット4のみ、並びに基布5のみの何れかに植設して、かつら1を完成させる。
【0042】
以上のように、本発明の実施態様1に係るかつら1は、標章、図柄又は文字が表された表示面3aを有する布部材3を保護ネット4及び基布5で包含して保護するので、裏面の布部材3が装着の際のつけ心地を害さず、長く使用しても布部材の損傷が少なくすることができる。
【0043】
(実施態様2に係るかつらの説明)
はじめに、
図3を参照しながら、本発明の実施態様2に係るかつらの説明を行う。
図3は、本発明の実施態様2に係るかつらの製造方法を示す断面図である。かつらベース12はシート状である。ただし、かつらベース2の大きさ、外形は、用途に応じて任意の大きさ、任意の形状のものを用いることができる。
【0044】
図3に示すように、本実施態様に係るかつらベース12は、標章、図柄又は文字が表された表示面13aを有する布部材13と、布部材13以上のサイズを有する保護ネット14と、ネット状の基布15と、を備える。また、かつらベース2は、保護ネット4の布部材3と接する面の反対側に人工皮膚シート17が配置されている。
【0045】
布部材13は、表示面13aの反対側を保護ネット14に縫着又は貼着され、保護ネット14の外縁部は、布部材13が反対側になるように人工皮膚シート17又は保護ネット14と縫着され、擬毛16は、人工皮膚シート17、保護ネット14又は基布15に人工皮膚シート17側から植設される。
【0046】
人工皮膚シート17は、基布15と同色のウレタン樹脂シート等であり、極めて薄く、地肌に似せて同様な色合いに構成され、かつらの装着が視認されにくいように構成される。
【0047】
本発明の実施態様2に係るかつら11は、かつらベース12の人工皮膚シート17又は保護ネット14側に擬毛16が植設されている。
【0048】
(実施態様2に係るかつらの製造方法の説明)
本発明の実施態様2に係るかつらの製造方法は、第1乃至第3の工程から構成される。
【0049】
第1の工程では、保護ネット14、ネット状の基布15、標章、図柄又は文字が表された表示面13aを有し、基布15及び保護ネット14以下のサイズを有する布部材13、及び保護ネット14以上のサイズを有する人工皮膚シート17を準備する。
【0050】
第2の工程では、
図3(a)に示すように、布部材13の表示面13aと反対側の面が保護ネット14と接するように、布部材13を保護ネット14に縫着又は貼着する。次に、
図3(b)に示すように、保護ネット14の布部材13が取り付けられた面と反対側の面が人工皮膚シート17と接するように、保護ネット14を人工皮膚シート17に縫着又は貼着する。そして、
図3(c)に示すように、布部材13の表示面13aが基布15側を向くように配置した状態で、人工皮膚シート17及び基布15の外縁部を縫着する。
【0051】
第3の工程では、
図3(d)に示すように、縫合された人工皮膚シート17及び基布15に対して、擬毛16を人工皮膚シート17側から、人工皮膚シート17又は基布15に植設する。
【0052】
以上のように、本発明の実施態様2に係るかつら11は、人工皮膚シート17を取り付けることによって、自然な外観を有し、触り心地をよくすることができる。また、人工皮膚シート17を保護ネット14に取り付けた後、布部材13を内側に配置しながら基布15に取り付けるので、人工皮膚シート17を用いたかつらにおいても、布部材13を適切に保護することができ、装着した際のつけ心地をよくすることができる。
【0053】
(実施態様3に係るかつらの説明)
はじめに、
図4を参照しながら、本発明の実施態様3に係るかつらの説明を行う。
図4は、本発明の実施態様3に係るかつらの製造方法を示す断面図である。かつらベース22はシート状であって、ただし、かつらベース22の大きさ、外形は、用途に応じて任意の大きさ、任意の形状のものを用いることができる。
【0054】
図4に示すように、本実施態様に係るかつらベース22は、標章、図柄又は文字が表された表示面23aを有する布部材23と、布部材23以上のサイズを有する保護ネット28と、ネット状の基布25と、を備える。布部材23は、保護ネット28及び基布25の間に、表示面23aが基布25に接するように配置されている。
【0055】
また、かつらベース22は、保護ネット28の布部材23と接する面の反対側に人工皮膚シート27が配置されている。また、かつらベース22は、保護ネット24及び人工皮膚シート27の間に、更に第2の保護ネット24が配置されている。
【0056】
本発明の実施態様3に係るかつら21は、かつらベース22の人工皮膚シート27又は第2の保護ネット24側に擬毛26が植設されている。
【0057】
詳細に説明すると、人工皮膚シート27及び第2の保護ネット24が外縁部で縫着され、人工皮膚シート27側から第2の保護ネット24に擬毛26が植設される。一方で、布部材23は、保護ネット28に接着又は縫着され、その後、布部材23を内側にして外縁部で基布25に縫着される。最後に、人工皮膚シート27及び第2の保護ネット24と、基布25とを外縁部で縫着して構成される。
【0058】
(実施態様3に係るかつらの製造方法の説明)
本発明の実施態様3に係るかつらの製造方法は、第1乃至第4の工程から構成される。
【0059】
第1の工程では、第2の保護ネット24、ネット状の基布25、標章、図柄又は文字が表された表示面23aを有し、基布25及び保護ネット28以下のサイズを有する布部材23、並びに第2の保護ネット24以上のサイズを有する人工皮膚シート27及び保護ネット28を準備する。
【0060】
第2の工程では、
図4(a)に示すように、人工皮膚シート27及び第2の保護ネット24を縫着又は貼着した後、擬毛26を人工皮膚シート27側から第2の保護ネット24に植設する。
【0061】
第3の工程では、
図4(a)に示すように、布部材23の表示面23aと反対側の面が保護ネット28と接するように、布部材23を保護ネット28に縫着又は貼着した後、布部材23が間に配置されるように、保護ネット28及び基布25の外縁部を縫合する。
【0062】
第4の工程では、
図4(b)に示すように、第2及び第3の工程の後、布部材23が間に配置されるように、人工皮膚シート27及び第2の保護ネット24の接合体の外縁部と、基布25の外縁部とを縫合する。
【0063】
以上のように、本発明の実施態様3に係るかつら21は、人工皮膚シート27を取り付けた第2の保護ネット24に擬毛を植設してから、布部材23が間に配置された保護ネット28及び基布25と合体させるので、布部材23をより確実に保護できる上に、擬毛26の植設が簡便となり生産工程が簡素化される。また、布部材23が配置される箇所の保護ネットを二枚にすることによって、布部材23のより確実に保護することができる。
【0064】
(実施態様4に係るかつらの説明)
はじめに、
図5を参照しながら、本発明の実施態様4に係るかつらの説明を行う。
図5は、本発明の実施態様4に係るかつらの製造方法を示す断面図である。ただし、かつらベース32の大きさ、外形は、用途に応じて任意の大きさ、任意の形状のものを用いることができる。
【0065】
図4に示すように、本実施態様に係るかつらベース32は、標章、図柄又は文字が表された表示面33aを有する布部材33と、布部材33以上のサイズを有する保護ネット34と、ネット状の基布35と、を備える。布部材33は、保護ネット34及び基布35の間に、表示面33aが基布35に接するように配置されている。また、かつらベース32は、保護ネット34の布部材33と接する面の反対側に人工皮膚シート37が配置されている。
【0066】
本発明の実施態様4に係るかつら31は、かつらベース32の人工皮膚シート37又は保護ネット34側に擬毛36が植設されている。
【0067】
詳細に説明すると、人工皮膚シート37及び保護ネット34が外縁部で縫着され、人工皮膚シート37側から保護ネット34に擬毛36が植設される。一方で、布部材33は、外縁部で基布25に縫着される。最後に、布部材33を内側にして、人工皮膚シート37及び保護ネット34と、基布35とを外縁部で縫着して構成される。
【0068】
(実施態様4に係るかつらの製造方法の説明)
本発明の実施態様4に係るかつらの製造方法は、第1乃至第4の工程から構成される。
【0069】
第1の工程では、保護ネット34、ネット状の基布35、標章、図柄又は文字が表された表示面33aを有し、基布35及び保護ネット34以下のサイズを有する布部材33、及び保護ネット34以上のサイズを有する人工皮膚シート37を準備する。
【0070】
第2の工程では、
図5(a)、(b)に示すように、人工皮膚シート37及び保護ネット34を縫着又は貼着した後、この人工皮膚シート37及び保護ネット34の接合体に擬毛36を植設する。人工皮膚シート37及び保護ネット34の接合体に擬毛36を植設する方法を更に詳細に説明すると、はじめに
図5(a)に示すように、図面下側から保護ネット34に擬毛36を植設する。次に、
図5(a)の点線の矢印に示すように、擬毛36を人工皮膚シート37側(図面上側)に引き抜いて、
図5(b)に示すように、擬毛36が人工皮膚シート37側から伸びた植設状態を得ることができる。
【0071】
第3の工程では、
図5(b)に示すように、布部材33の表示面33aが接するように、布部材33を基布35に縫着又は貼着する。
【0072】
第4の工程では、
図5(c)に示すように、第2及び第3の工程の後、布部材33が間に配置されるように、人工皮膚シート37及び保護ネット34の接合体の外縁部と、基布35の外縁部とを縫合する。また、
図5(c)に示すように、必要に応じて、基布35に擬毛36を植設する。
【0073】
以上のように、本発明の実施態様4に係るかつら31によれば、人工皮膚シートを取り付けた保護ネットに擬毛を植設してから、布部材が間に配置された保護ネット及び基布と合体させるので、布部材をより確実に保護できる上に、擬毛の植設が容易となる。また、布部材を保護する保護ネットを一枚にすることによって、製造コストを下げ、製造時間を短縮することができる。
【0074】
本発明の実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0075】
1,11,21,31 かつら
2,12,22,32 かつらベース
3,13,23,33 布部材
3a,13a,23a,33a 表示面
3b 反対側の面
4,14,24,34 保護ネット
5,15,25,35 ネット状の基布
6,16,26,36 擬毛
6a,b,16a,b,26a,b,36a,b 毛髪対
7 外枠
17,27,37 人工皮膚シート
28 第2の保護ネット
【要約】
【課題】 裏面の布部材が装着の際のつけ心地を害さず、洗っても布部材及びその周辺の損傷が少ないかつらベース、かつら及びかつらの製造方法を提供する。
【解決手段】 標章、図柄又は文字が表された表示面3aを有する布部材3と、布部材3以上のサイズを有する保護ネット4と、ネット状の基布5と、を備え、布部材3は、保護ネット4及び基布5の間に、表示面3aが基布5に接するように配置されている、かつらを提供する。
【選択図】
図1