(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231183
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】物理量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01K 7/22 20060101AFI20171106BHJP
G01F 1/684 20060101ALI20171106BHJP
G01F 1/692 20060101ALI20171106BHJP
G01K 1/08 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
G01K7/22 L
G01F1/684 A
G01F1/692 A
G01K7/22 J
G01K1/08 Q
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-238956(P2016-238956)
(22)【出願日】2016年12月9日
(62)【分割の表示】特願2015-89936(P2015-89936)の分割
【原出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2017-44712(P2017-44712A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2016年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】田代 忍
(72)【発明者】
【氏名】半沢 恵二
(72)【発明者】
【氏名】徳安 昇
(72)【発明者】
【氏名】森野 毅
(72)【発明者】
【氏名】土井 良介
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−153701(JP,A)
【文献】
特開平11−006752(JP,A)
【文献】
特開2010−151795(JP,A)
【文献】
国際公開第02/010694(WO,A1)
【文献】
特開平05−190734(JP,A)
【文献】
特開平08−008280(JP,A)
【文献】
特開2008−088937(JP,A)
【文献】
特開2000−162008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/22
G01F 1/684
G01F 1/692
G01K 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副通路に配置される流量検出素子を備える流量測定装置のセンサチップパッケージにおいて、
温度検出素子と、
前記温度検出素子を支持固定し、かつ、前記温度検出素子と電気的に接続される第一の導電性リードフレームと、
第二の導電性リードフレームと、
前記第一の導電性リードフレームと前記第二の導電性リードフレームを電気的に接続し、かつ、前記第一の導電性リードフレームと前記第二の導電性リードフレームよりも断面積が小さい導電性部材と、を有し、
前記第一の導電性リードフレームと、前記第二の導電性リードフレームと、前記導電性部材と、前記温度検出素子とが樹脂で内包されるように覆われた樹脂パッケージと、を備え、
前記樹脂パッケージの外周における前記第一の導電性リードフレームまたは前記第二の導電性リードフレームの切断面が封止されていることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記タイバーの切断面は接着剤で覆われていることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記タイバーの切断面は樹脂で覆われていることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記温度検出素子は、サーミスタチップであることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記樹脂パッケージは、
前記第一及び第二の導電性リードフレームとは独立した第三の導電性リードフレームを有し、
前記温度検出素子は、前記第一の導電性のリードフレームと前記第三の導電性リードフレームとを跨るように搭載されることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項6】
請求項1に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記導電性部材は、ボンディングワイヤであることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項7】
請求項1に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記導電性部材と、前記第一の導電性リードフレームと、前記第二の導電性リードフレームとは、同一の金属板からなることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項8】
請求項5に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記温度検出素子は、前記第一及び第三の導電性リードフレーム上に導電性接着剤を介して接合されることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項9】
請求項5に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記樹脂パッケージは、
前記第二の導電性リードフレーム上に配置される回路基板を有し、
前記回路基板と、前記第三の導電性リードフレームとは前記導電性部材により電気的に接続されていることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項10】
請求項5に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記樹脂パッケージは、
前記第二の導電性のリードフレーム上に配置される回路基板と、
前記第一と第二と第三の導電性リードフレームとは独立した第四の導電性のリードフレームを有し、
前記第三の導電性のリードフレームと前記第四のリードフレームとは前記導電性部材により電気的に接続され、
前記第四の導電性のリードフレームと前記回路基板とは前記導電性部材により電気的に接続されることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項11】
請求項1に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記流量検出素子は、ダイアフラムを有する熱式の流量センサチップであり、
前記樹脂パッケージには、前記流量検出素子が搭載されることを特徴とするセンサチップパッケージ。
【請求項12】
請求項11に記載のセンサチップパッケージにおいて、
前記樹脂パッケージは、前記ダイアフラムを露出する露出部を有することを特徴とするセンサチップパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸入空気通路に流れる空気の少なくとも温度を測定する物理量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の空燃比を正確に制御する最も一般的な方法に、吸入空気流量と吸入空気温度を測定し、燃焼状態が最適となる燃料噴射量を逐次演算する手段がある。熱式流量測定装置は、発熱抵抗体等からなる流量検出部とサーミスタ等からなる温度検出部を備え、流量検出部を加熱温度制御する電子制御回路部を備えている。従来の流量測定装置は、内燃機関からの熱影響を受け難くするために温度測定のためのサーミスタ素子を内燃機関の吸気管路内に配置し吸入空気による冷却効果を図ったものが知られている。
【0003】
このような技術を用いた構成としては、例えば特許文献1に記載された流量測定装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−292508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、温度検出素子の検出温度精度の高精度化と熱応答性を確保することにある。これは従来の温度検出素子の材料と構造に起因するところにある。温度検出チップの両端に接合された導電性リードワイヤ、及びリードワイヤを備えた温度検出素子を支持する導電性ターミナルもしくはコネクタターミナルには、導電性部材を用いている。導電性の金属材料は、例えば樹脂と比較すると熱伝導率が1桁以上高く、流量測定装置本体樹脂ハウジングの熱が金属材料を介して温度検出チップまで伝わり、定常運転使用時においてハウジング本体と空気にコーティング被覆を介して晒された温度検出チップ部の温度が平衡する温度、すなわち、測定したい実際の空気温度に対しハウジングから金属製ターミナルを介し熱が伝わり一定の誤差を持つ課題がある。更に、主に内燃機関始動時の本体ハウジングの温度と吸入空気温度が異なる過渡時において、リードワイヤやターミナル及びコーティング膜の熱容量が大きいと熱引けが遅く、温度検出チップの検出熱応答性が低下する課題がある。
【0006】
本発明の目的は、熱応答性の良い物理量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の物理量測定装置は次のように構成される。
【0008】
温度検出素子と、前記温度検出素子を支持固定する第一の導電性のリードフレームと、第二の導電性のリードフレームと、を備え、前記第一の導電性リードフレームと前記第二の導電性リードフレームとは、前記第一及び前記第二の導電性リードフレームよりも断面積が小さい導電性部材により電気的に接続される
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱応答性の良い物理量測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】リードフレームとアウターリードの概略構成図。
【
図8】リードフレームとアウターリードの概略構成図。
【
図9】空気流量及び温度測定装置の概略構成断面図。
【
図10】
図9空気流量及び温度測定装置の概略側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施例1)
まず初めに、本発明の一実施例であるセンサチップパッケージ1について
図1から
図3を用いて説明する。
【0013】
図1から
図3において、温度を検出するためのサーミスタチップ2と空気流量を検出するための流量センサチップ8と制御回路チップ9と、これを支持固定し電気的導通を図るためのリードフレーム3とが、はんだ付け、あるいは導電性接着剤を用い実装され、加熱硬化により必要な全てのチップが最短1回の工程によって接合される。
【0014】
ここで、流量センサチップ8と制御回路チップ9は、チップ裏面とリードフレーム3との間で電気的導通を不要とする場合には導電性接着剤を用いずに絶縁性の例えばエポキシ接着剤を用いることもできる。
【0015】
リードフレーム3は、銅合金や鉄ニッケル合金、ステンレスなどの導電性金属材料が用いられ、精密微細プレス成型ないしはエッチング処理によって形成される。
【0016】
サーミスタチップ2と流量センサチップ8と制御回路チップ9をリードフレーム3へ実装した後、各センサチップと制御回路チップ9は、相互の電気的導通を図るために金線や銅線やアルミ線などの細線12を用い、これを熱圧着や超音波振動、超音波熱圧着などの工法によってワイヤボンディング接合される。
【0017】
サーミスタチップ2と流量センサチップ8と制御回路チップ9を実装したリードフレーム3は、これらを内包するように熱硬化性の樹脂5を用いてトランスファ成型により覆われる。但し、流量センサチップ8の一部表面および外部との電気的導通を図るために必要なリードフレーム3の一部分(これをアウターリード4と呼ぶ)については、樹脂5から露出するようにトランスファ成型がなされる。
【0018】
次に
図4を用いて、センサチップパッケージ1、リードフレーム3、アウターリード4について詳細に説明する。なお、トランスファ成型により熱硬化された樹脂5の部分を破線で示している。
【0019】
リードフレーム3は、サーミスタチップ2を実装した一端とは反対側を樹脂成型される面から外に出るように配置することが好ましく、外枠6とつながる構成である。リードフレーム3は、(1)最終的に製品の部品として構成される部分と、(2)外枠6とをつな
ぐための製造上必要な吊り構造部分と、に役目を分けて見ることができ、特に、後者の吊り構造部分をタイバー7と呼ぶ。
【0020】
タイバー7は、リードフレーム3と同一のプレスなどにより打ち抜かれた部品であり、製造工程において電気回路を構成する際にリードフレーム3を必要な箇所で切り離してもバラバラにならないように形状を維持する役割を担っている。そして、熱硬化性の樹脂5でトランスファ成型が完了した後、リードフレーム3が樹脂により固定されたあとにタイバー7の部分は切断され切断面以外に製品へは残らないものとなる。
【0021】
各センサチップの検出信号を外部へ引き出すためのアウターリード4も同様にタイバー7を介して外枠6とつながれ、リードの形状が保持される。
【0022】
サーミスタチップ2を実装するリードフレーム3は、正極と負極の信号ラインの一部を
、板厚より薄く、もしくはリード幅より狭く、あるいは薄く狭い(細い)寸法で精密微細プレスないしはエッチング処理により形成される。
【0023】
サーミスタチップ2の電気信号は、リードフレーム3を介して金線や銅線などの細線により制御回路チップ9と接続されるか、あるいは流量検出の機能とは別に直接アウターリード4と接続され外部装置へと出力される。
【0024】
サーミスタチップ2と流量センサチップ8と制御回路チップ9を実装したリードフレーム3と金線や銅線もしくはアルミ線などの熱容量の少ない細線11、12は、流量センサチップ8の一部表面を除きトランスファ成型などの工法により樹脂5で覆われ保護されたパッケージ構造となる。
【0025】
樹脂成型を終えた後、センサチップパッケージ1外周に飛び出しているタイバー7を切断し、切断面は必要に応じて接着剤を用い封止することで、センサチップパッケージ1となる。
【0026】
ここで内燃機関における温度測定の必要性と温度検出素子2の構造について述べる。温度測定は、定常状態における内燃機関の制御を目的とした用途の他に、冷間始動時などの過渡時における燃費に係る燃料噴射量の最適制御や、触媒温度制御による排気ガス中有害物質の抑制にも用いられ、内燃機関が吸入する空気温度を測定するための温度検出機能が欠かせない。そこで種々の方式・構造による温度検出素子2が提案され今日広く実用に供されている。温度検出素子2としては、熱電対、ダイオード、白金等の測温抵抗体や半導体マイクロマシニング技術を利用しシリコン基板上に感温抵抗体を形成した素子などが知られている。その一方式に検出素子としてサーミスタを用いサーミスタの抵抗値より温度を検出する方式がある。このサーミスタを用いた温度検出素子は、サーミスタチップを様
々な構造で保護したサーミスタ素子を、内燃機関の空気が流入する流路内に配置し、流量測定装置内の回路と電気的に接続されるか、あるいは燃料噴射量演算装置(エンジンコントロールユニット)と導通を図るためのコネクタターミナルと電気的に接続され実用に供されている。
【0027】
サーミスタ素子は、サーミスタチップの両端に外部装置との電気的導通を図る目的で導電性のニッケル合金や、鉄、鋼を心材として銅を厚めっきしたCP線(カッパー−プライ線)や、鉄ニッケル合金線に銅を貼り合せ圧着により金属間界面を拡散結合させる加工を施し最表面に亜酸化銅を生成させることで軟質ガラスとの密着性を向上させたジュメット線などのリードワイヤが接合されており、これらチップ全周及びチップとリードワイヤの接合部を覆うように円筒状のガラス管を被せて、次にチップ、リードワイヤ、ガラスを焼成することによりガラスが溶融、収縮することでチップとリードワイヤが固定され、あるいは、ガラス管を用いない構造としてはチップとリードワイヤをはんだなどにより接合した後に熱硬化性樹脂などにより被覆(コーティング)固定することによりチップ及びリードワイヤとの接合部が保護された状態の温度検出用の素子が完成する。ジュメット線の場合、ガラスを焼成することによりガラスが溶融、ガラスと亜酸化銅が化学結合することでより密着した構造が得られることが知られている。そして完成したサーミスタ素子を内燃機関の流路内に配置・支持固定するために素子のリードワイヤを導電性の板金製ターミナルに溶接などによって接合される。導電性ターミナルは、外部装置との電気信号授受を目的としてコネクタターミナルに直接あるいはアルミ線や電子回路基板などの別な導電性部材を介して間接的に接続される。コネクタターミナルは、それを支持固定する樹脂などの絶縁性ハウジング本体とともに一体成型される。ハウジング本体に配置された導電性ターミナルを介して電気的に接続されたサーミスタ素子は、これもハウジングに配置されたコネクタを介して流量測定装置ないし燃料噴射量演算装置(エンジンコントロールユニット
)と接続され、一般的には前記装置からサーミスタ素子に対して少なくとも1つ以上の直列抵抗を介してコネクタターミナルよりサーミスタ素子に一定電圧が供給され、前記直列抵抗により分圧されたサーミスタ素子の端子間電圧を検出するとサーミスタ素子の温度変化に伴い抵抗値が変化することで検出電圧が変化しこれを温度信号として得ることができる。
【0028】
流量測定装置は、自動車などの内燃機関では比較的苛酷な環境で流量測定装置が使用される場合が多く存在し、例えば、燃料蒸気雰囲気、高温環境下等で発生する腐食性ガス、および、水や塩水などがエアクリーナフィルタを通過して飛散してくるなどの苛酷環境下で用いられる。内燃機関の流路内への暴露を前提にした温度検出素子であって、その中でもガラス封止サーミスタ素子は、リードワイヤとガラスとの界面(微小隙間)などに生ずる腐食・電食を防ぐために熱硬化性などの樹脂を用い微小隙間がコーティングされ、更に求められる耐久性の度合いに応じてリードワイヤと導電性ターミナルとの接合部なども、はんだ付けや溶接後に熱硬化性樹脂などで封止され、また極性の異なるリードワイヤ間などに生ずる電気化学的腐食を防ぐために耐熱被覆電線などを用いることによりリードワイヤ間の水や塩水などによる短絡不具合を防止・保護することで信頼性を確保している。しかしながらサーミスタチップ自身と、サーミスタチップとリードワイヤとの接合部を覆うようにガラス管を配置するため、ガラス管は、リードワイヤの直径よりも大きくなるところに構造上の耐腐食性に対する限界がある。ここで、一般的にアキシャルリードタイプと呼ばれる、正極と負極が軸方向のほぼ同一直線上にリードワイヤが並ぶサーミスタ素子は
、リードワイヤの直径とガラス管の直径差によってできるガラス管端部(フィレット部)のコーティング膜厚を均一にすることが難しく、フィレット部の膜厚が充分に確保できないか、ポーラスな状態すなわち膜中に孔を持ってコーティング膜が形成されると腐食に至る場合がある。一方、一般的にラジアルタイプと呼ばれる、2本のリードワイヤが同一方向に並行配置される温度検出素子では、仮にジュメット線を用いて軟質ガラスとの密着性を上げることでリードワイヤとガラス界面の微小隙間腐食を防止したとしてもジュメット線むき出しの状態ではリードワイヤ間のショート(短絡)が発生するためコーティング膜を必要とするがリードワイヤ間距離がサーミスタチップのサイズで決まるため微小であり
、そのリードワイヤ間に隙間のないコーティング膜を形成することが難しい。更に次工程にてリードワイヤを広げるような加工(フォーミング)が要求されるケースでは、リードワイヤ周囲に塗布されたコーティング膜にダメージを与えてしまう懸念がある。またジュメット線ではなく耐熱被覆電線を用いた場合には被覆電線とガラス管界面の微小隙間で生ずる腐食を完全に対策することが難しい。
【0029】
本実施例1中に記載構成においては、サーミスタチップ2とリードフレーム3の全周を薄い樹脂で被覆することができるため、サーミスタチップ2をガラス管で保持してガラス管とリードワイヤ接合部をコーティング膜で覆う構造と比較するとリードワイヤの直径とガラス管の直径差によってできるガラス管端部(フィレット部)でのコーティング膜厚の不均一性やフィレット部に加わる熱や振動などの歪に起因したクラック(欠陥)を回避することが可能となり耐食性の向上を図ることができる。
【0030】
また温度検出素子は、耐腐食性が必要とされる他に熱に対する考慮も必要であり、これは内燃機関からの輻射熱を受けることによって流路壁が流路内の空気温度よりも高い場合や、あるいは始動時に流路壁は常温ないし低温環境下にあるが流路内温度が高い場合などの環境下では、温度検出素子が取り付けられる温度検出部と実際に内燃機関の流路内温度との間に誤差が生ずる課題を持つ。前述のいずれの場合においても温度検出誤差を小さく抑えるためにサーミスタ素子は、積極的に空気に晒される構造とし、更にリードワイヤや導電性ターミナルも空気に晒す(放熱させる)ことで流路壁や温度検出素子の設置部材料との間に生ずる温度差影響を軽減する構造としている。この他温度誤差を低減させる手段として部材の断面積を減らすことで熱伝導を抑えることができる。ただし流量測定装置ないしは温度検出素子の設置環境を考慮すると耐腐食性に加えて振動や温度・湿度サイクルに耐え得る設計とする必要があるため、温度検出素子は、概ね0.2ミリメートル以上の
寸法によるリードワイヤで構成され、検出素子を支持固定するための円柱や角柱支持体ターミナルも前記寸法以上で用いられており、線径あるいは断面寸法を細くするためには構造的に別な補強手段を要すことから複雑な構成になることが避けられない。
【0031】
しかしながら本実施例1中に記載した構成においては、サーミスタチップ2とリードフレーム3の全周を樹脂で覆うことができるため、ガラス管及びガラス管とリードワイヤ接合部と更にはリードワイヤ自体をコーティング(被覆)保護する構造では機械的強度不足のため達成できなかった、電位の等しい電気信号ラインであるリードフレームの一部を細く形成することが可能となる。そのため目的とする導電性部材で構成されたアウターリード4(金属)から伝導してくる最も高い熱をリードフレーム3の断面積を小さくすることで熱伝導を抑制することができサーミスタチップ2が検出する温度とセンサチップパッケージ1を支持内蔵する本体が持つ熱とを切り分ける、すなわち熱分断構造部10を持つことが可能となる。
【0032】
これにより、アウターリード4やハウジング14を介して外部(内燃機関)から伝導してくる熱影響が、熱分断構造部10で緩和されるため、サーミスタチップ2の検出機能は
、熱影響を軽減した精度の高い、熱応答性が良好なものとなり、信頼性の高い流量測定装置を実現することができる。
【0033】
(実施例2)
次に本発明の一実施例である実施例2について以下説明する。
図5から
図8は、
図1から
図4に示した図示方向に各々順に対応しており
図1から
図4に対して、先に述べた熱分断構造部10の手法が別な手段によって達成可能となる例を示すものである。
【0034】
図5において、リードフレーム3は、サーミスタチップ2と制御回路チップ9の間に構成した正極と負極信号ラインの途中を分断するようにプレス成型やエッチング処理により形成される。この時点ではサーミスタチップ2を実装したリードフレーム3は、電気的には接続されていない状態となる。同極性同士の電気信号ラインを構成するために前記2つのリードフレーム3、23間は、金線や銅線もしくはアルミ線などの熱容量の少ない細線11を用いてこれを熱圧着や超音波振動もしくは超音波熱圧着などの工法によってワイヤボンディング接合される。サーミスタチップ2を実装したリードフレーム3と細線11により接続されることで電気的導通の図られたリードフレーム23は、必要な全てのチップ部品と金線を含めてそれらが内包されるようにトランスファ成型などの工法により樹脂5で覆われ保護されたパッケージ構造となる。樹脂成型を終えた後にセンサチップパッケージ1外周に飛び出しているタイバー7は切断される。タイバー7の切断面は、樹脂や接着剤により封止されセンサチップパッケージ1となる。
【0035】
これにより、ガラス管及びガラス管とリードワイヤ接合部更にはリードワイヤをコーティング保護する構造では達成できない、電位の等しい電気信号ラインであるリードフレーム3の一部を完全に分断することが可能となり、且つ分断したリードフレーム3とリードフレーム23をリードワイヤよりも熱容量の小さい細線11で接続することによって電気回路としての機能を損なうことなく構成することができ、目的とする内燃機関の輻射熱に起因したリードフレーム23やアウターリード4を介して伝導してくる熱を金属部材よりも熱抵抗の高い樹脂によって遮ることができサーミスタチップ2が検出する温度と温度検出部を支持内蔵する本体が持つ熱とを切り離した熱分断構造の効果をより多く得ることが可能となる。
【0036】
(実施例3)
次に本発明の一実施例である実施例3について以下説明する。
図9は、実施例1と2のセンサチップパッケージ1を内燃機関に取り込まれる空気18を導入するための吸気管(ダクト)13に取り付けた状態である空気温度測定装置の概略構成断面図であり、
図10は、
図9の側面から見た概略構成断面図である。
【0037】
図9、
図10において、センサチップパッケージ1は、箱状の絶縁性筐体となる樹脂製ハウジング14本体に接着剤などを介し接合し内蔵される。
【0038】
ハウジング14は、センサチップパッケージ1を収容するケース部材としてセンサチップパッケージ1の底面と側面のほぼ全周に亘って囲うことで保護する機能の他に外部装置との電気的信号の授受を行うためのコネクタ(カプラ)15が樹脂成型などによって形成され、コネクタ15内部には銅合金などの導電性コネクタターミナル16が熱可塑性樹脂などを用いインサート成型される。
【0039】
なお、ハウジング14の底面を別な部材として板状の樹脂もしくは板金製のベースプレートをハウジング14に接着固定もしくはハウジング14にインサート成型し一体化することでケース部材を構成することでも良い。
【0040】
ハウジング14へ実装されたセンサチップパッケージ1は、コネクタターミナル16へアルミ細線17などを用い超音波振動溶着され外部装置との電気的インターフェースが整えられる。
【0041】
ここで、センサチップパッケージ1のアウターリード4をプレス加工などにより折り曲げて(フォーミング加工し)直接コネクタターミナル16へスポット溶接や超音波振動溶接やレーザ溶接などの工法により接合されることでも電気的導通を図ることができる。
【0042】
コネクタターミナル16とアウターリード4を溶接接合する際に板状のターミナル面とリードを溶接電極により挟み込みターミナル面の表裏方向から溶接を行う工法の場合にはハウジング14の底面が邪魔して溶接電極を配置できないことも考えられるためハウジング14の底面全てもしくは溶接電極が挿入できる空間を開放させた状態とすることでコネクタターミナル16とアウターリード4を溶接することが可能となり接合された後に前記ベースプレートをハウジング14に接合することでも構造として成立させることができる
。
【0043】
また、ハウジング14は、吸気管13内を通過する空気18の一部を取り込む副通路19が樹脂成型によって形成されセンサチップパッケージ1を落下衝撃などの破損から保護する構造でも良い。
【0044】
センサチップパッケージ1を内部実装したハウジング14は、接着剤を用い板状の樹脂製カバー20により封止されるか、あるいはレーザ溶着や振動溶着や超音波溶着などの工法によりハウジング14と接合される。
【0045】
カバー20により封止されたハウジング14は、内燃機関に導入される空気18が流れる吸気管13の内部に位置するように、ねじ21あるいは熱溶着などの工法により固定される。
【0046】
また、ハウジング14に一体化されたコネクタ15は、吸気管13の外部に位置するように固定される。
【0047】
図11は、
図9、
図10に示すA部の拡大C−C断面図を示す。ここで、ハウジング14に実装されるセンサチップパッケージ1において、サーミスタチップ2を実装したリードフレーム3に設けられた熱分断構造部10は、好ましくはハウジング14本体の樹脂部を境界としてサーミスタチップ2とリードフレーム3がハウジングのコネクタ15とは反対方向の先端側に露出して配置され熱分断構造部10がハウジング樹脂5の内部に配置されサーミスタチップ2を実装したリードフレーム3に対して熱分断構造部10を境にして反対側のリードフレーム23がハウジング14本体樹脂により4辺を囲われた回路室側方向に配置されることが好ましい。もしくは、熱分断構造部10の一部がハウジング14樹脂部分の範囲内にあってもリードフレーム3の電気的に同一極性の信号ラインが断面積縮小構造とするか熱容量の少ない細線により構成された、すなわち熱的に分断された構造とされていれば金属製部材の熱伝導を低減することは可能である。
【0048】
これにより、サーミスタチップ2が検出する温度と温度検出部を支持固定する本体が持つ熱とを切り分けることが可能となるため内燃機関が吸入する空気温度を精度良く且つ熱応答の良好な流量測定装置を提供することができる。
【0049】
(実施例4)
次に本発明の一実施例である実施例4について以下説明する。
図12は、
図11の流量測定装置に更なる改良を加えた概略断面図を示す。
【0050】
サーミスタチップ2を実装するリードフレーム3と同一極性の電気信号ラインを構成するように配置されて細線11により接続されるもう一方のリードフレーム23との間に電気的には繋がっていないリードフレーム22がタイバー7を介して外枠6(リードフレーム本体)と同時に精密微細プレス加工またはエッチング処理により同時に形成される。サーミスタチップ2をリードフレーム3上に実装したあとに分断されたリードフレーム3とリードフレーム23の間が細線11により接合され樹脂5を用いてトランスファ成型される。
【0051】
これにより、サーミスタチップ2を実装したリードフレーム3に設けられた熱分断構造部10の部分は構造体として樹脂5のみにより剛性を有していた場合と比べて、樹脂5の内部に金属部材リードフレーム22を内包していることで機械的な耐衝撃性や耐振動性をより向上させることができ、当初目的とした金属材料を伝導してくる熱も分断することが可能となるため信頼性の高い流量測定装置を実現できる。
【符号の説明】
【0052】
1 センサチップパッケージ
2 サーミスタチップ(温度検出素子)
3、22、23 リードフレーム
4 アウターリード
5 樹脂
6 外枠(リードフレーム本体)
7 タイバー(リードフレーム吊り構造)
8 流量センサチップ
9 制御回路チップ
10 熱分断構造部
11、12 細線
13 吸気管
14 ハウジング
15 コネクタ(カプラ)
16 コネクタターミナル
17 アルミ細線
18 空気(空気の流れ)
19 副通路(温度センサ保護部材)
20 カバー
21 ねじ