(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231184
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】風力タービンブレードの地上ベースの検査のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
F03D 17/00 20160101AFI20171106BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20171106BHJP
G01N 25/72 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
F03D17/00
F03D1/06 A
G01N25/72 K
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-503374(P2016-503374)
(86)(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公表番号】特表2016-514782(P2016-514782A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】US2014030328
(87)【国際公開番号】WO2014145537
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2016年4月11日
(31)【優先権主張番号】13/839,908
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515255283
【氏名又は名称】デジタル ウインド システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン,ジョン ダブリュ
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0300059(US,A1)
【文献】
MEINLSCHMIDT P ET AL,Thermographic Inspection of Rotor Blades,ECNDT 2006,2006年 9月26日,P1-9,URL,http://www.ndt.net/article/ecndt2006/doc/Tu.1.5.3.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 17/00
F03D 1/06
G01N 25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンブレードを現場で遠隔で検査する方法であって、
熱画像データを生成するために、前記風力タービンブレードが回転して、重力および風荷重の変動による周期的負荷を受けている間であって、且つ、日没後に前記風力タービンブレードが周囲空気に対して実質的に熱平衡に達しているときに、前記風力タービンブレードが熱画像カメラの視野を通過する際に前記熱画像カメラによって風力タービンブレードの一部を撮像すること、および
前記熱画像データを分析して、前記風力タービンブレード内の欠陥の内部または周りの摩擦熱を示す可能性がある異常な熱パターンを識別すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記風力タービンブレードの一部を撮像するステップは、前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に、1つ以上のブレードの画像の連続シーケンスを取得することを含む、請求項1に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項3】
前記画像を記録し、ビデオピーク記憶プログラムを用いて連続するブレード画像の選択から成る複合画像を生成し、熱放射のソースの動きを追跡して前記ブレード上の実際の熱放射領域と関係のない熱的効果を区別するステップをさらに含む、請求項2に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項4】
各ブレードの単一の画像または連続する一連の画像は前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に記録され、前記熱放射は、ブレードの動きおよびそれにより生じる画像劣化効果を補償するためにアクチュエータによって駆動される可動ミラーから成る画像非回転化装置によって前記カメラの開口に向けられる、請求項3に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項5】
前記ミラーは、周波数、波形および振幅用の手動制御部を備えたファンクションジェネレータを用いる電気アクチュエータによって駆動される、請求項4に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項6】
前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に各ブレードの単一の画像または連続する一連の画像が記録され、前記熱放射はブレードの動きを補償するようにミラーを動かす複数の電気アクチュエータによって多軸駆動される可動ミラーから成る画像非回転化装置によって前記カメラの開口に向けられており、前記電気アクチュエータは周波数、波形および振幅用の手動制御部を用いて2つのファンクションジェネレータからの2つの独立した波形によって駆動される、請求項3に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項7】
前記波形は、ランプ関数または鋸歯関数である、請求項6に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項8】
前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に各ブレードの単一の画像または連続する一連の画像が記録され、前記熱放射は多軸駆動される可動ミラーとマイクロプロセッサまたはコンピュータが生成した波形を用いる複数のアクチュエータとから成る画像非回転化装置によって前記カメラの開口に向けられている、請求項3に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項9】
前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に各ブレードの単一の画像または連続する一連の画像が記録され、前記熱放射はブレードの動きを補償するようにミラーを動かす多軸アクチュエータによって駆動される可動ミラーから成る画像非回転化装置によって前記カメラの開口に向けられており、前記ミラーは前記ブレードの位置を検出して、ブレードの撮影を開始し、それによって回転による前記ブレードの熱画像の劣化を低減するように外部トリガ装置とともに、マイクロプロセッサまたはコンピュータが生成した波形を用いる電気アクチュエータによって動かされる、請求項3に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項10】
前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に各ブレードの単一の画像または連続する一連の画像が記録され、前記熱放射はブレードの動きを補償するための単一のアクチュエータまたは多軸アクチュエータによって駆動される可動ミラーから成る画像非回転化装置によって前記カメラの開口に向けられており、前記アクチュエータは回転中のブレードの画像が前記熱画像カメラの視野内に入って、ミラー動作およびブレードの撮影を開始することを示す前記熱画像カメラからの電子トリガ信号を用いて、電子的に生成された波形によって駆動され、それによって前記回転による前記ブレードの熱画像の劣化を低減する、請求項3に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項11】
前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に各ブレードの単一の画像または連続する一連の画像が記録され、そのため前記熱画像カメラは、垂直方向チルトアクチュエータと前記回転の一部の間に前記ブレードの画像を大まかに撮影するための波形発生器および増幅器から成る駆動電子装置とともにヒンジ付きの支持部材に取り付けられ、それによって前記熱画像カメラ画像上のブレードの動きの劣化の影響を低減する、請求項3に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項12】
前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に各ブレードの単一の画像または連続する一連の画像が記録され、そのため前記熱画像カメラは、前記回転中のブレードが前記熱画像カメラの視野内に入っている画像を示す前記熱画像カメラからの電子トリガ信号を用いて、角回転の一部の間に前記ブレードの画像を撮影し、垂直方向のカメラ動作を開始するためおよび前記ブレードを近似撮影するための波形発生器および増幅器から成る駆動電子装置を備えた垂直方向チルトアクチュエータとともにヒンジ付き支持部材に取り付けられ、それによって、前記回転による前記ブレードの熱画像の劣化を低減する、請求項3に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項13】
前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に各ブレードの単一の画像または連続する一連の画像が記録され、そのため前記熱画像カメラは前記回転中に前記ブレードの画像の一部を撮影するための2つの波形発生器および増幅器から成る駆動電子装置を備えた垂直方向チルトアクチュエータおよび水平方向パンアクチュエータとともにヒンジ付き支持部材に取り付けられ、それによってブレードの動きの熱画像劣化の影響を低減する、請求項3に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項14】
前記ブレードが前記熱画像カメラの視野を通過する際に各ブレードの単一の画像または連続する一連の画像が記録され、そのため前記熱画像カメラは前記回転中のブレードが前記熱画像カメラの視野内に入っている画像を示す前記熱画像カメラからの電子トリガ信号を伴う2つの波形発生器および増幅器から成る駆動電子装置を用いた垂直方向チルトアクチュエータおよび水平方向パンアクチュエータとともにヒンジ付きの支持部材に取り付けられ、その後カメラ運動動作およびブレードの近似撮影を開始し、それによって、前記回転による前記ブレードの熱画像の劣化を低減する、請求項3に記載の1つの風力タービンブレードまたは複数の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項15】
前記ブレードの末端にある前記ブレードのシリアル番号のビデオ画像はビデオカメラおよび適当な光照射源を用いて連続的に記録され、そして、赤外線カメラまたはコンピュータのビデオスクリーン上に欠陥が現れたときに、ビデオカメラによって記録され、オペレータによって手動でトリガされる音信号を用いることにより異常のために前記ブレードを撮像する熱画像カメラからのビデオフレームと同期され、それによって検出された欠陥とともに前記ブレードのシリアル番号を識別する、請求項3に記載の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【請求項16】
前記ブレードの末端のブレードシリアル番号の照らされた照射像のビデオ画像が記録されて、GPSタイミング信号を用いて異常のために前記ブレードを撮像する熱画像カメラからのビデオフレームと同期される、請求項3に記載の風力タービンブレードを遠隔で検査する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
文献の援用
本出願人は、2012年12月30日に出願された“METHOD AND APPARATUS FOR THE REMOTE NONDESTRUCTIVE EVALUATION OF AN OBJECT(物体の遠隔非破壊評価方法および装置)”というタイトルの米国特許非仮出願第13/731,085号明細書、2013年3月15日に出願された“MEHTOD AND APPARATUS FOR MONITORING WIND TURBINE BLADE DURING OPERATION(稼働中の風力タービンブレードをモニタする方法および装置)”というタイトルの同第13/837,145号明細書および2013年3月15日に出願された“NONDESTRUCTIVE ACOUSTIC DOPPLER TESTING OF WIND TURBINES BLADES FROM THE GROUND DURING OPERATION(稼働中の風力タービンブレードの地上からの非破壊音響ドップラー検査)”というタイトルの同第13/840,470号明細書に関する開示全体を参照によって、本願明細書に完全に記載されているかのように本願明細書に組み込むものとする。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
本発明は、回転中の風力タービン発電機の風力タービンブレードを地上から検査するための方法および装置について記載している。本発明は、風力タービンブレードの表面にある、伝播性の潜在的欠陥、現存の損傷および欠損した接着剤結合部の遠隔検出に対して有用性を有している。このことは、表面の下の欠陥が大きくなりすぎないうちに現場での修理のために検出できるようにし、それにより、風力タービンブレードを現場で修理するコストは、一般的には、ブレードを交換するコストの10%であることから、著しい経済的効果がもたらされる。
【0003】
関連技術の説明
風力タービンブレードは、その大きなサイズ、大きな表面積および複雑な形状により、製造または修理の施設内でさえ、非破壊的に検査することは難しい。目視検査では、一般的には、ガラス繊維材料から製造されている風力タービンブレードの外側面の下の欠陥は識別することができない。アクティブサーモグラフィ検査法は、表面近くの欠陥に対しては有効であるが、材料の厚さおよび表面放射率の変動により、誤検出や検出漏れを生じる可能性がある。斜角超音波法は非常に遅く、厚い炭素繊維のスパーキャップに対処できない可能性がある。その結果、ブレードは通常塔(タワー)に設置され、潜在的な製造欠陥に関してかなりの可能性を伴った状態で運転が開始される。さらに、複合ブレードは極度の温度変動にさらされる。ブレード内に封じ込められた水は、内部損傷を引き起こす可能性のある凍結融解サイクルを経る可能性がある。ブレードが回転する際の重力の周期的な力およびブレードに作用する風からの変動する力が、疲労損傷または経時的な潜在的欠陥の伝播を引き起こす可能性があり、同時に、製造プロセスのミスが、ブレードの初期故障につながる可能性もある。欠陥は、クラックや損傷が表面に出てきて視覚的に検出することができるまでは、風力タービンブレードの表面下で成長する可能性があり、また、該損傷はタワー上で修復可能ではない可能性がある。
【0004】
現場での風力タービンブレードにおける進行性の表面下損傷および伝播性の欠陥の検出は、多くの異なる理由により困難である。検査者によるスカイクレーンまたはロープアクセスを用いた検査は、費用がかかり、時間がかかり、人を非常に危険な作業環境に置く。タワー上での近接アクセスにより、検査者による後縁亀裂、クラック、落雷による損傷およびブレードの腐食等のブレードの欠陥の視覚的な検出が可能となる。加えて、大きな表面下剥離、クラック、接着接合部の剥離は、現在の技術では、容易に検出できない可能性がある。
【0005】
非破壊検査用の携帯機器の場合の現場での風力タービンブレードへのアクセスもまた、ロープアクセスまたはスカイプラットフォームおよびクレーンを必要とする。現場検査用の非破壊検査センサを備えたブレードおよびタワークローラーが既に開発されてテストされているが、それらは非常にコストがかかり、動作が遅く、それ自体の修理およびメンテナンスを必要とする。それらの有効性にも疑問の余地がある。マイクロ波やレーダースキャナは、誘電材料に対しては有効ではあるが、導電性の炭素繊維材料を有する、製造されたスパーキャップ等の重要なコンポーネントに対しては機能しない。
【0006】
したがって、風力タービンブレードをタワーから取り外して、現場から離れて修理するか、またはそれを新たなブレードと交換する必要が生じる前に、タワー上での修理を可能にするための潜在的で伝播性の損傷を十分に早期に検出できる風力タービンブレード用の高速でコストがかからない非破壊検査システムおよび方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、風力タービンブレードをタワーから取り外して、現場から離れて修理するか、またはそれを新たなブレードと交換する必要が生じる前に、タワー上での修理を可能にするために潜在的で伝播性の損傷を十分に早期に検出できる風力タービンブレード用の高速でコストがかからない非破壊検査システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願明細書に記載されている実施形態に従うと、通常の動作中に伝播性の表面下異常に対して発電所規模の風力タービン発電機ブレードを地上から検査するためのシステムは、重力および風荷重からの周期的負荷応力を受ける欠陥からの熱放射に敏感なカメラと、それらの熱放射の熱画像を処理して位置、信号対雑音比、サイズまたは他の量的測定値を測定する手段とで構成され、しかもそのような早期の検出は、よりコストのかかる交換に代わって、タワーに上がってのブレードの修理を可能にする。
【0009】
第2の実施形態は、少なくともいくつかの連続するビデオフレームにわたって、風力タービンブレードの熱画像を安定化して、ブレードの動きに関する画像劣化の影響を低減する手段を含む。
【0010】
第3の実施形態は、洋上風力タービンのボートからの検査の実施時にカメラを安定化する手段を含む。
【0011】
本発明を特徴付ける新規性に関するこれらおよびその他のさまざまな利点および特徴は、本願明細書に添付されて本願明細書の一部を構成するクレームにおいて具体的に指摘されている。しかし、本発明、その利点およびその利用によって得られる目的のより良好な理解のためには、本発明の追加的な部分を構成する図面、および本発明の好適な実施形態が例示されおよび記載されている添付の説明事項を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、発電所規模の水平軸、風力タービン発電機の概略図である。
【
図2】
図2は、風力タービンブレードの断面の概略図である。
【
図3】
図3は、検査用のサーマルカメラの相対位置を示す概略図であり、その後風力タービンブレードは地上または海面とほぼ平行に向けられる。
【
図4】
図4は、ブレード上のさまざまな位置を見るためのサーマルカメラの6つの位置を有する風力タービンの現場の平面図を示す。
【
図5】
図5は、タービンブレードディスク内またはその近くのブレード表面を直接見て記録するのに適している基本的なサーマルイメージング構成を示す。
【
図6】
図6は、水平位置におけるブレードの低圧または吸込み側を見るサーマルカメラを示す概略図である。
【
図7】
図7は、ブレードがサーマルカメラの視界を通過する際に、電子画像ピーク記憶ユニットが、どのように熱放射欠陥の軌跡を捉えるかを示す。
【
図8】
図8は、回転中のタービンブレードの熱画像を安定化、または非回転化するようにサーマルカメラの前部に取り付けられており、そして、ブレードが略水平方向にある場合に用いるのに適している手動で制御される可動ミラーアセンブリの概略図である。
【
図9】
図9は、ビデオ画像内でのブレードの存在を利用し回転中のタービンブレードの一連の熱画像を非回転化してブレードのトラッキング(撮影)の開始をトリガするためのコンピュータ制御型の可動カメラ画像スタビライザの概略図である。
【
図10】
図10は、4秒周期で回転する1つのブレードだけを撮影するサーマルカメラを支持するヒンジプレートを駆動するためのリニアモータを駆動するのに用いられる傾斜電圧波形のタイミングを示す。
【
図11】
図11は、洋上風力タービンブレードをボートまたは船から検査するためのジンバル式サーマルカメラの概略図である。
【
図12】
図12は、ブレードのシリアル番号を撮影するための可視光カメラおよび光源を用いてブレードを検査し、そして、ブレードの検査画像とともに呈示されたシリアル番号の画像を示すサーマルカメラの概略図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に従って実施された検査を示す画像フレームの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適な実施形態の詳細な説明
本願明細書に開示されている本発明の実施形態は、陸上および洋上の両方の風力発電機に適しており、そして、通常の動作中に伝播性の欠陥または損傷を検出可能な風力タービンブレードの非破壊検査のためのシステムおよび方法について記載している。検査は、風力発電機タワーへのアクセスを何ら要することなく、または、発電の中断を何ら伴うことなく地上または海面から行われる。大きな発電所規模の風力タービンは一般的に発電機を駆動するのに必要な回転トルクを生成するための複合翼型ブレードを用いるHAWT構造から成る。現在の発電所規模の風力タービンブレードは長さが9mから50m以上までの範囲にわたり、かなり大きなブレードが洋上風力発電機用にデザインされている。この発明の出願は、エポキシマトリックス中の繊維ガラスおよび炭素繊維等の熱弾性複合材料で製造されたすべての長さのブレードに関して良好な結果を実現することができる。
【0014】
風力タービンブレードは、通常の動作中に、重力や変化する風力による連続周期負荷にさらされる。ブレード異常の赤外線撮像は、日没後または曇りの日の通常の動作中に検査を実施する必要がある。ブレードが周囲空気温度と熱平衡になった後、ブレードからの残留熱放射のみが、ブレード内のどこかの伝播性の損傷の箇所で生じる。塑性変形、フレッティング、付着摩耗、酸化、および溶融等の相変態を含むトライボロジー(摩擦学的)損傷は、周期的重力荷重が構造的異常を通過する摩擦クラック面で起きる可能性がある(C.J.Pye等、参照1)。熱は、3つのメカニズム(J.Renshaw、参照2)即ちクラックウォール上の接触面(凹凸)の内部摩擦、クラックの周りのプラスチックゾーンの変形および粘弾性損失によって発生する。
【0015】
局所的なブレード表面温度異常は小さく、また、その面積は小さい可能性があるが、本発明は、ブレードの状態を評価するための優れた信号対雑音比および定量的データを提供する。例えば、高さ300フィートにおける長さ6インチのクラックに対する小さな角度αを求めるために、望遠光学系が必要であり、ここで、α=アークサイン1/600=0.0955°、または単に343アークセカンド(秒(角度))である。さらに、その欠陥がブレード先端近くに位置している場合、熱的表示は高速で動くであろう。例えば、20rpmで作動する典型的な50メートルのブレードでは、その熱的表示は176.8フィート/秒で動くであろう。
【0016】
一般的には、比較的遅いマイクロボロメータ熱センサを用いるサーマルカメラ
(熱画像カメラ)の特性により、典型的なサーマルカメラの視界を通るブレードの回転は、該カメラが放射を検出するための熱分解能を有している場合であっても、オペレータがそれほど多くないその熱表示の分析を見ることを困難にする。タービンロータディスクの下の略ミッドスパンの位置(ブレード先端を含む平面)における(追い風で、地上または洋上タービンの海面で)タワーの右側にサーマルカメラを配置することにより、タービンブレードが、比較的ゆっくりと変化する該ブレードの角度で該カメラに向かって直接的に動く際に、該カメラが、該タービンブレードの前縁を撮像することを可能にしている。ブレード前縁上の欠陥に対する良好な結果を得ることができる。後縁は、(追い風で)タワーの左側から同じ方法で検査することができ、この場合ブレードは該カメラから直接離れて動いている。ブレード上の他の箇所に位置する欠陥の撮像は、該ブレードが該タービンディスクの風を上または下から見られるため、およびその画像が該カメラの視界を横断して急激に動くため、さらに困難である。
【0017】
タービンディスクの平面の風上または風下の位置からの回転中のブレードの熱画像は、もしあれば、カメラメモリを用いるサーマルカメラ、または、GigEまたはカメラリンクインタフェースまたはアナログディジタル変換ビデオフレームグラバを用いてディジタル画像を撮るための適当なドライバを備えたコンピュータ、または、斯界では周知の他の何らかの適当なカメラ/コンピュータインタフェースによって撮ることができる。一連の連続する画像中のフレームごとに表示するためのソフトウェアアルゴリズムは、ブレードが回転してカメラの視野内に入った際に、欠陥を識別できるようにする。この発明の一部は、各フレームの各ピクセルに対して記憶された最大値を記録するピーク記憶画像機能も含む。伝播性の欠陥、可塑性または熱弾性放射の箇所における応力誘起性内部摩擦によって引き起こされたブレード上のホットスポットが回転して視野内に入る際に、各ピクセルはその最大値に固定される。1つのピーク記憶画像に結合された一連の連続するフレームを用いて、欠陥指示の動きの軌跡が各ブレードの通過を介して記録される。風力タービンブレードは、太陽からの熱を反射するように塗装されているため、ブレード内の活性欠陥以外のソースからの熱はブレードの熱画像中に反射として現れる可能性がある。実例としては、風力タワーの近くに位置する車からの熱である可能性もある。欠陥からの熱信号は、ブレード経路の周りの正弦波軌跡トラックを形成するであろうが、地上または、隣接するタワー上の熱源の反射は、少数のフレームまたは小さな角度のブレード回転を介して該ブレードの画像上に「彩色して」現れる。
【0018】
この発明の多くの実施形態においては、ブレードがカメラの視野を通過する際に、該ブレードの動きを非回転化するために、ブレード画像非回転安定化デバイスをサーマルカメラの前部開口に付加することができる。
【0019】
2つのアクチュエータを用いる2軸鏡像運動は、ブレードが高い頻度でかなりの軸外視野で100フィートから1000フィートの距離から見られるため、より高精度の画像運動補正を可能にするであろう。したがって、ブレード運動およびブレード表面の何らかの熱放射物の動きは、正弦波を近似する複合垂直および水平運動で動くように現れる。ブレードは、ブレードの翼幅にわたる画像がほぼ同じスケールを有するようにする、90度および270度の水平方向位置の略45度以内の場合に、最も良く検査される。
【0020】
ランプ関数を生成するファンクションジェネレータからの出力信号は、いくつかのビデオフレームの場合の運動の出現を停止させるのに必要な振幅および繰り返し率で、ボイスコイル型リニアアクチュエータを駆動するのに用いることができる。ブレードが視野を通過し始める際、鏡像旋回運動が始まり、視野を横切るブレード画像を追跡(撮影)する。周波数および振幅は、1つのブレードを撮影するためのタービン回転周期τ(秒)または3つすべてのブレードを連続的に撮影するためのτ/3に対応する各サイクルで設定することができる。他の実施形態は、デロテータを起動して鏡像運動サイクルを開始するサーマルカメラからのビデオ画像上に配置されるソフトウェアによって生成されたグラフィカルターゲットの利用を含む。ブレードがサーマルカメラの視野に入ってディスプレイ上の該グラフィカルターゲットを横断する際、コンピュータは、ミラーを動かし始めて、可能な限りブレードを大まかに撮影して、サーマルカメラ時間が多数の高品質画像を撮ることを可能にする。デロテータ運動は、地上からブレードを照らすレーザビームからの光を検出するように設定された光検出器によっても起動することができる。非拡張型の低出力レーザや検出電子装置は、ブレードが撮影を開始するための正しい位置にあった場合に電子トリガ信号を生成するであろう。
【0021】
他の実施形態においては、軽量のサーマルカメラをヒンジプレートに取り付けて、本願明細書に記載されているような回転ブレードの画像非回転化のためのいずれかの方法を用いて作動させることができる。
【0022】
次に、図面を参照すると、同様の参照数字は、全図にわたって対応する構造を示しており、特に
図1を参照すると、典型的な陸上および洋上の両方のタービン発電機であるHAWTが図示されている。風を受けるタービンの後からの外観1は、直接駆動発電機でない限り、発電機および歯車減速機を収容できるナセル8を支持するために、地面または海面28から上方に延びているタワー6を含む。一般的には、実用規模の3つのブレード11があり、風力タービンは根元(末端)10およびブレード先端12を有している。側面3から見て分かるように、ブレード末端は回転自在のハブ18に取り付けられている。風4の方を向いているブレード側部16は、多くの場合、高圧側と呼ばれている。風から離れる方に向いているブレード側部14は、低圧または吸込み側と呼ばれている。ブレード速度17が増すにつれて、ブレードピッチは、発電機を駆動するのに必要な最大揚力およびトルクを生みだすように、風4に対する最適な迎え角に調節される。
【0023】
図2は、典型的なHAWTブレードの構造断面を示す。風力タービンブレードは、一般的に、高圧側16および低圧側14を形成する接着接合された複合材シェルで製造されている。後縁21は、場合によっては、サンドイッチパネル18を構成する内側および外側のガラス繊維スキンによって形成された2つのフランジ22間の接着接合により、前縁20の場合と同様に、接着接合されたシェル14および16によって形成されている。繊維ガラスまたは炭素繊維積層板または他の複合材料から形成することができる2つのスパーキャップ26は、サンドイッチパネル18の縁部に接合されている。ブレードスパーウェブ30は、固い繊維ガラス積層板、または、繊維ガラスまたは炭素繊維の表面板と、発泡体、バルサ材または高圧縮強度を有する他の適当な材料で形成されたコア材料とを有するサンドイッチ構造とすることができる。スパーウェブ30は、I字型の桁を形成するように、接着剤28でスパーキャップ26に接合されている。時には、箱型桁を形成する第2のまたは第3のスペアウェブも存在する。スパーキャップ26とスパーウェブ30との接着剤28による結合部に存在する接着剤の剥離または接合不良等の欠陥は、稼働中のブレードの壊滅的な故障につながる可能性がある。また、固いスパーキャップ26の積層板内の繊維波動も、亀裂や、最終的にはブレードの故障につながる可能性がある。さらに、高圧側16および低圧側14のシェル接着剤24の結合部における後縁21の亀裂またはクラックは、動作中の兆候またはブレードの過剰な曲げである可能性がある。末端10の方の最大翼弦幅の領域における後縁21の接着剤24の結合部は、ブレードのねじり荷重を支持する。それらの位置における接着剤24のクラックや裂け目もまた、遅れずに検出されるか、タービンの停止が速やかに修理される場合を除いて、ブレードの故障につながる可能性がある。
【0024】
図3は、ブレード11の低圧側の検査の場合のタワー6の風下の位置におけるサーマルカメラ222の側面を示す概略図である。周期的応力負荷、重力および風の変動により伝播するブレード11の欠陥からの熱放射204は、サーマルカメラ222によって検出される。また該側面は、地面または海面28まで延びてブレード先端12を含むラインとして平面20を図示している。この近似位置は、ブレード11の前縁20の検査のための良好な観察位置である。
【0025】
図4は、回転中のブレード表面全体の有利な観察を実施できるように、タービンブレードの風上の高圧側の両方の位置、ブレードディスクの平面内のタワーの両側の2つの位置およびブレードの風下の低圧または吸込み側の位置に配置されたサーマルカメラ222を示す。ブレード11の低圧側14の最良の観測角度は、近似位置212に配置されたサーマルカメラ222によって実現されるが、最良の結果は、ブレードの画像がカメラの視野を通過する比較的速い速度により、本願明細書に記載されている画像スタビライザまたは画像ピーク記憶ユニットまたはソフトウェアを用いて得られる。ブレード11が該カメラにおいて下方向に向かって回転しており、そして、前縁20上の先端部の角度は比較的ゆっくり変化しているため、ブレードの前縁20の最良の観測はブレード先端の平面20内の位置214になる。位置214からの風を下方向に動かすと、3〜4つのビデオフレームにわたって比較的低速の角度変化を伴って、ブレード11の前方低圧側面14の良好な視点を与える。位置216は該ブレードの後縁21に適しており、位置220は、ブレード11の高圧側16の全景を提供し、該全景は、本願明細書に記載されている画像スタビライザまたはピーク記憶の実施形態によって最適に表示される。位置210は、後縁21および後部の低圧サンドイッチ構造18を除いて、低圧側の比較的不十分な眺めを提供するが、高速の移動角度変化およびブレードのねじれを伴っている。風力タービン用の敷地は、多くの場合、タワー6から離れて動く余地がほとんどない状態で丘または尾根に配置される。多くの場合、局所的条件および地形が、最良の観測角度を得ることができる場所を決定付ける。
【0026】
図5は、ブレード回転運動17からの重力によりブレード材料に作用する応力からの熱弾性放射によるブレード11からの低レベルの熱放射228を受けるように配置されたサーマルカメラ222を示す概略図である。
【0027】
機械的ストレス性の欠陥224からの放射226は、内部摩擦および欠陥224の周りの柔軟性によるサーマルカメラ222によって生成された画像内に温熱化して見える。
【0028】
カメラ222は、前縁および低圧側14の前方部分からの熱放射228を受けるように位置214において、該ブレードの下に配置されている。この位置は、フレーム取得中の該画像内でのブレード回転による角度変化を低減する。サーマルカメラ222からのストリーム化したビデオ画像は画像処理コンピュータ230によって記録されるか、またはサーマルカメラ222内の記憶装置にビデオファイルとして記録されて処理され、ピーク記憶または他の画像処理方法を用いて提示され、モニタ232に表示される。画像を処理するさまざまな手段は、良好な画像品質とターゲットまでの距離における既知のサイズのサイズおよび位置比較機能の定量的測定値を得るためのビデオ画像ピーク記憶、フレーム単位の分析、ヒストグラム正規化、アンシャープフィルタ等を含む。
【0029】
図6は、位置212に配置されたサーマルカメラをどのようにして、発電機ナセル8に隣接する内部のブレード断面に向けておよび熱画像シーケンスを取得することによって、一か所からブレード全体を検査するのに用いることができるかを示す。該カメラは、外部で弧状230に動かされて、先端に達するまで次のブレード断面に重ねられる。該カメラを動かすためのプログラムされたサーボまたは他のモータ駆動の利用は、高速の自動検査を可能にする。
【0030】
図7はビデオピーク記憶機能の図を示す。図示されているようなブレード11上の熱放射欠陥236、238および240は、タワー6の風下から見て分かるように、ブレード11の低圧側14のこの眺めにおいて反時計回りに回転する。回転軸7はナセル8の略中間に図示されている。より大きな熱放射欠陥236は、軸7に最も近い欠陥になっており、最強の信号248を生成する。ピーク記憶画像内では、各ピクセルは、画像データが事後検査分析ソフトウェアによって取得されている間または検査中に現場で取得されている間は、最高の階調レベルに固定される。その結果、熱放射の源を、欠陥の軌跡248、246および244に示すように、および
図13に示すように、該視野を通して撮影することができる。熱放射欠陥は、軸外に大きく見られるように、回転中のブレードをたどる軌道を有している。ピーク記憶画像242を通るラインスキャン252は、各ピクセルの場合の階調レベル値を画像の一方の側から他方の側まで一列にマッピングし、階調レベル信号強度対ブレード上の位置を示すグラフ254をプロットできるようにする。距離の縮尺は、ナセル8またはタワー6上の既知の形状構成のサイズからソフトウェアで較正される。それらの値について、ルックアップテーブル(LUT)または科学プログラミングおよび写真測量法で周知の幾何学的パラメータに基づいて画像データを補正するための他の方法を用いて、ブレード上の異なる翼長位置の場合の速度の違いを数学的に補正することができる。
【0031】
図8は一端においてヒンジ250に取り付けられたミラー241から成る熱画像デロテータの一つの実施形態を示し、反対側の端部は、玉継ぎ手または自在継ぎ手240を介してリニアアクチュエータまたはボイスコイルリニアアクチュエータ238に接続され、ブレード運動の方向でのその周期運動は、ブレード11が視野を通って回転する際に、各該ブレード11の近似運動を追跡するように調節することができる。非回転化は、本質的には、数フレームで回転運動を停止させるであろう。該ブレードは、間隙を介して吊り下がっているように見え、動いているブレードのより高解像度の画像を生成するための時間を該サーマルカメラに与えている。該調節は、ランプ電圧の振幅260から成り、それにより、ブレードの回転速度、ランプ関数の持続期間262およびランプ関数の各スタート間の時間264が補償される。ファンクションジェネレータ244の出力は増幅器242で増幅されて、その後リニアモータアクチュエータ238を駆動する。ミラー241の動きは、サーマルカメラ222によって生成された画像の短いシーケンスを非回転化することができる。繰り返し率262を選択することにより、ユーザはτ/3秒ごとに撮影運動を始動させることによりすべてのブレードを撮像するように選択することができ、ここで、τは秒単位のタービンの回転周期であり、またはτの繰り返し率を選択することにより同じブレード14の画像が提示されて非回転化されることになる。該ミラーをそのスタート位置に戻して次のブレードの通過に備えるための復元力を生成するためにばねを用いることができる。1つ以上のビデオフレームだけがブレード回転によるサーマルカメラ画像のぼやけを実質的に改善するように撮影されることを必要とする。非回転化ミラー241の運動の周期は、以下の実施例において計算することができる。タービンが15rpmで作動し、サーマルカメラ222が30フレーム/秒のフレームレートと想定すると、4つのビデオフレームを非回転化することが所望される。該タービンの周期τは、1回転を実施するのに必要な時間であり、この場合、60秒/15rpm=4秒である。この時間内に、(30フレーム/秒で作動する)サーマルカメラ222は(4秒×30フレーム/秒=)120フレームを撮影する。非回転化することを望む4つのフレームが、(4フレーム/30フレーム/秒)=0.133秒の期間にわたって撮られる。そしてそれら4つのフレームを非回転化するために、ブレード14が該サーマルカメラの視野内に入ったときに、該ブレードを撮影するために該ミラーを動かすことを、時刻0秒で開始する。ミラー241の角度は、0.133秒にわたって連続的に変化され(該視野を介して該ブレードがどの方向に動いているかにより増減され)、その後スタート位置に戻される。1つのブレードだけを撮影するために、撮影動作は4秒(τ)ごとに開始される。3つすべてのブレードを連続的に撮影するために、該撮影動作はτ/3秒即ち4/3=1.33秒ごとに開始される。各撮影動作の後に、該ミラーはスタート位置に戻されて次の撮影サイクルを待つことになる。
【0032】
図9は、サーマルカメラ222が、ブレード11の軸7周りの運動に追従するように回転移動される第2の実施形態を示す。サーマルカメラ222はフレームまたはプレート251上に取り付けられて、アクチュエータ238を支持するフレーム部材250に取り付けられているヒンジ252に接続されている。プレート251の反対側の端部は、ヒンジまたは自在継ぎ手等の可撓継手を介して電気アクチュエータに接続されている。該アクチュエータの動きはサーマルカメラ222を上下に動かし、それによって該動きは、動きが実質的に同じである該ブレードの部分と位置が合った場合に、サーマルカメラ222の視野内で該ブレードを安定化するのに役立つであろう。複数の方向に該サーマルカメラを動かすために、追加的なアクチュエータが同時に作動することができるが、追加的な複雑性を伴う。実際には、ブレード11が回転中に水平方向位置に到達するときの該ブレードの明確な観測を該視野内で実現できる場合には、1つのアクチュエータで十分である。別の選択肢はアクチュエータ238全体を回転させ、プレート250および251ならびにサーマルカメラ222を支持し、該アクチュエータの動きをデータ取得中の該ブレードの動きと合わせることである。駆動質量の低減は電子機器および電気アクチュエータの振動および所要電力を低減し、該アクチュエータはバッテリ式であってもよく、または、オペレータが使用する車両から電力を供給してもよい。該カメラの動きは、タービンブレード11の軸7上での回転中の該カメラの視野内での該タービンブレード11の動きの方向とほぼ一致させなければならない。
【0033】
位置220においてタワー6の風上側から見える該ブレードの高圧側が時計回りに回転して、カメラ222の視野内に入る際、該ブレードの前縁はいずれ閾値マーカー242と交差することになる。この動きはサーマルカメラ222によって分かるように、遮るもののない空のピクセル強度値からの変化として識別することができ、該ソフトウェアは、コンピュータ230、波形発生器244および増幅器242によって、リニアアクチュエータ238の動作の開始を電気的にトリガする。ここでもまた、最適な波形は、ブレード224が一定の速度で該視野を横切って垂直方向に動く際に、該ブレード内の欠陥からの熱放射226をレンズ228で受けるように、一定の角速度でカメラ222を動かすことになるランプ関数である。この実施形態もまた可動ミラーを用いることができる。また、三脚台が、例えば自在継ぎ手254によってカメラ用のベースフレーム250に接続されたロッド258を用いて、機械的アジマスおよび仰角を設けて、サーマルカメラまたはミラーの微細な動きを実施できるリニアモータを用いたクランプ260によって固定することもできる。図示されている実施形態は、該サーマルカメラおよび画像非回転化機構を支持するための三脚204を用いているが、風力タービンの現場の周りの設備を容易に動かすために、トラック、ワゴン車、自動車または車輪付きカートを含む何らかの頑丈な支持体を利用することができる。
図10は、画像非回転化アクチュエータを駆動するのに用いられる信号の電圧対時間のグラフを示す。手動で作動させる非回転化の実施形態の場合、ファンクションジェネレータは連続的に作動する。そのオペレータは、タービン回転周期τ268が一致するように繰り返し率を調節する。
図10に示すランプ関数は、表示される4つのビデオフレームのための時間を一致させるために、0.133秒の持続期間を有している。電子的システムまたはソフトウェアのシステムは、オペレータが、これらの値を直接入力できるように設計することができ、また、可動ミラー241または可動サーマルカメラ構成のいずれかを用いる非回転化装置を有することができる。
【0034】
図11は、サーマルカメラ222を安定化するためのジンバル架台の追加と、船または船舶に乗って水上で使用中の洋上風力発電機上に取り付けられたブレード11を検査するための本願明細書に記載されているさまざまな運動機構および実施形態とを示す概略図である。一実施形態において、カウンターウェイト280は、支持ピン274および276によって接続された内側フレーム270および外側フレーム272と、船または船舶のデッキ29上に支持されている支持ハウジングまたはフレーム部材278とから成るジンバル架台によって支持されている。このことは、検査中にカメラ222を、ブレード11と位置合わせして保持することを可能にする。このジンバルアセンブリは、本願明細書に記載されているブレード検査システムの良好な動作のための船舶の横揺れおよび縦揺れ運動に関連する安定したプラットフォームを設けるために、能動的に駆動してもよく、斯界では周知のサーボアクチュエータおよび加速度計を用いてもよい。加えて、該船上ブレード検査システムは、船体運動を補償するために、検査中に該カメラを目標のブレードに向けたまま保持するための慣性プラットフォームを用いてもよい。
図12は、ブレードが検査される際に、各ブレードの末端10に書かれているシリアル番号282を記録するように構成されたビデオレコーダー、カムコーダー、写真用カメラまたはビデオカメラ242および光源244を追加した、本願明細書に記載されている風力タービンブレード検査システムの概略図である。多くの場合、検査中のサーマルカメラのための最適な位置は、該シリアル番号を撮像するために該シリアル番号カメラを配置するのに必要な位置と同じ位置ではない。多数の方法のうちのいずれか1つをその熱画像と該シリアル番号画像を同期させるのに用いることができる。まず、GPSはクロック信号を生成し、およびビデオカムコーダーのサウンドトラックにタイミング信号を供給し、データ取得時に接続されている場合には、熱
画像カメラ222またはコンピュータ230にもタイミング信号を供給する。次に、画像デロテータが使用されている場合、該アクチュエータがブレード11を撮影し始める場合、電気的ライン243により、音響信号または電気信号または視覚信号を該シリアル番号カメラに送信することができる。該ブレードを検査角度から最良の角度へ動かして正しいシリアル番号を撮ることを可能にするためには、該シリアル番号の画像と該ブレードの位置とのタイミングを合わせるために遅延が必要である可能性がある。
【0035】
図13は、この発明の実施形態を用いて形成した1.5MWの発電所規模の風力発電機を稼働したときの2つの検査結果を示す。上の画像は1つのブレードが熱
画像カメラの視野を通過して回転する際の高圧側からの該ブレードの7つのビデオフレームを示す。これらの画像は、MOV形式のファイルに記録されて、ピーク記憶画像を生成するソフトウェアを介して再生した。該ブレードが上部から底部へ時計回りに回転する際に、活性で伝播性の欠陥からの熱放射の軌跡246が見られる。このブレードの高圧側14の画像中の黒いラインは、高速のブレード11の動きによる熱
画像カメラ222のアーチファクトである。下方の画像は、ハブ18、ナセル8およびタワー6からの熱応答を含むブレード11の前縁の検査画像を示す。該検査は、
図4の位置214から行った。2つの欠陥236の現れが見られる。該画像内の既知の形状構成からのスケーリングにより、これらの欠陥は末端10から7.2mおよび9mの箇所に位置している。
【0036】
上記の説明においては、本発明の構造および機能に関する詳細とともに、本発明の多くの特徴および利点を前述してきたが、その開示は例示的なものにすぎず、また、添付クレームが記述される用語の幅広い意味によって示される本発明の原理の最大限の範囲内で、特に部材の形状、サイズおよび配置に関して、細部にわたって変更を行ってもよいことを理解すべきである。