特許第6231192号(P6231192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231192
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】大電流用途のためのシールド装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/10 20060101AFI20171106BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20171106BHJP
   H02G 15/18 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H02G15/10
   H05K9/00 L
   H02G15/18
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-515516(P2016-515516)
(86)(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公表番号】特表2016-532409(P2016-532409A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2014065969
(87)【国際公開番号】WO2015039791
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】102013218726.2
(32)【優先日】2013年9月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ザウア
(72)【発明者】
【氏名】ジェンユー フー
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/014826(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00− 15/196
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁導体(22)および該絶縁導体(22)を取り囲むケーブルシールド(20)を有する接続ケーブル(40)と、貫通孔部(14)を有するシールドケーシング(12)とを備えた、大電流用途のためのシールド装置(10)において、
前記シールド装置(10)は、中空円筒状の導電性のシールドスリーブ(18)をさらに備えており、
前記絶縁導体(22)は、前記シールドスリーブ(18)を通って案内され、
前記シールドスリーブ(18)は、一方の長手側端部にケーシング側スリーブ領域(32)を有し、かつ他方の長手側端部にケーブル側スリーブ領域(34)を有しており、
前記シールドスリーブ(18)のケーシング側スリーブ領域(32)は、前記シールドケーシング(12)の貫通孔部(14)の領域に配置され、前記シールドケーシング(12)は、前記ケーシング側スリーブ領域(32)の外周面(36)と接触し、
前記ケーブルシールド(20)は、前記ケーブル側スリーブ領域(34)の外周面(38)に当接し、
前記ケーブルシールド(20)は、前記シールドスリーブ(18)を介して前記シールドケーシング(12)と電気的に接続されるように構成されており、
前記シールドケーシング(12)は、前記貫通孔部(14)の領域において複数の接触ラグ(16)を外方に向けて形成し、前記複数の接触ラグ(16)は、前記ケーシング側スリーブ領域(32)の前記外周面(36)に対して実質的に平行に延在し、かつ前記ケーシング側スリーブ領域(32)の前記外周面(36)と接触するように構成されていることを特徴とするシールド装置(10)。
【請求項2】
前記絶縁導体(22)の直径は、前記シールドスリーブ(18)の内径よりも小さく、それにより前記絶縁導体(22)は前記シールドスリーブ(18)の内部領域内で径方向に可動である、請求項1記載のシールド装置(10)。
【請求項3】
前記ケーブルシールド(20)は、前記シールドケーシング(12)の外側及び前記シールドスリーブ(18)の外側にて、前記シールドスリーブ(18)に隣接する領域において、前記絶縁導体(22)に対して相対的に径方向で可動であり、それにより当該領域における前記ケーブルシールド(20)と前記シールドスリーブ(18)は、相互に相対的に機械的に分離されている、請求項1または2記載のシールド装置(10)。
【請求項4】
前記径方向の可動性は、前記ケーブルシールド(20)が前記領域において形状変更可能でありかつ前記領域において径方向に拡張されていることによって達成される、請求項3記載のシールド装置(10)。
【請求項5】
前記シールド装置(10)は、前記ケーシング側スリーブ領域(32)および/または前記ケーブル側スリーブ領域(34)において、周面方向外側に向けて前記シールドスリーブ(18)を外側で取り囲むように周方向で全周にわたって延びる固定バンド(28,42,44)を有しており、前記固定バンド(28,42,44)は、前記接触ラグ(16)の各外面への押付け圧または前記ケーブルシールド(20)に対する押付け圧を前記シールドスリーブ(18)の前記外周面(36,38)の方向に生じさせるように構成されており、それにより、前記接触ラグ(16)または前記ケーブルシールド(20)は、前記シールドスリーブ(18)の前記各外周面(36,38)に固定される、請求項1から4までのいずれか1項記載のシールド装置(10)。
【請求項6】
前記固定バンド(28,42,44)の周長さは、前記シールドスリーブ(18)の前記外周面(36,38)への前記接触ラグ(16)および/または前記ケーブルシールド(20)の押付け圧を変更できるようにするために調整可能である、請求項記載のシールド装置(10)。
【請求項7】
前記固定バンド(28,42,44)は、金属を含んでいる、請求項または記載のシールド装置(10)。
【請求項8】
前記固定バンド(28,42,44)は、プラスチックを含み、さらに前記ケーブルシールド(20)を前記ケーブル側スリーブ領域(34)の前記外周面(38)と共に形状に合わせて取り囲むように構成されている、請求項から7までのいずれか1項記載のシールド装置(10)。
【請求項9】
前記固定バンド(28,42,44)は、収縮スリーブである、請求項記載のシールド装置(10)。
【請求項10】
前記シールドスリーブ(18)は、前記スリーブ領域(32,34)の各長手側端部に、周方向で全周にわたって延び、かつ径方向外側に向けられた凸部(26)を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載のシールド装置(10)。
【請求項11】
前記接触ラグ(16)は、それらの延在方向で前記シールドケーシング(12)から前記外周面(36)に向かって段状に延在しており、それにより前記凸部(26)領域の前記接触ラグ(16)の部分領域は、前記ケーシング側スリーブ領域(32)の凸部(26)間の前記接触ラグ(16)の部分領域よりもさらに前記シールドスリーブ(18)の中心軸から離間されている、請求項10記載のシールド装置(10)。
【請求項12】
前記シールドスリーブ(18)長手方向における前記固定バンド(28,42,44)の幅は、前記各スリーブ領域(32,34)の2つの凸部(26)間の間隔よりも短い、請求項5を引用する請求項10または1記載のシールド装置(10)。
【請求項13】
前記ケーシング側スリーブ領域(32)および/または前記ケーブル側スリーブ領域(34)は、前記外周面に凹部および/または凸部を有している、請求項1から12までのいずれか1項記載のシールド装置(10)。
【請求項14】
前記外周面(36,38)の断面形状は、波形に形成されている、請求項1記載のシールド装置(10)。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載のシールド装置(10)を含んでいることを特徴とする、自動車用プラグインコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接続装置に関する。特に本発明は、大電流用途における接続装置のためのシールド装置に関している。
【背景技術】
【0002】
電気的接続装置は、2つ以上の構成部材間の電気的接続を形成するために使用することが可能である。これについては、例えばプラグインコネクタやケーブルなどが挙げられる。
【0003】
特に大電流用途の場合、電気的導体路の周囲に電磁場が形成される可能性がある。この電磁場による電気的導体路周囲の損傷を避けるために、例えば、被覆シールド材を必要とする場合がある。この目的のために、大電流ケーブルのケースでは導体路絶縁として例えば編組シールドを組み入れることが可能である。
【0004】
電磁シールドは、接続装置のためにも必要であり得る。これらの接続装置のための機械的および電気的な要求と、部材における例えば50A〜300Aの範囲の非常に大きな電流の発生とによって、時には電気的コンタクト形成の品質に対する高い要求が発生し、時には機械的構造部の堅牢性への高い要求が発生する。またそれと同時に可及的に良好な電磁シールド性を必要とすることもある。しかしながらこれら全ての要求を考慮するためには、多くの場合、特定の特徴に係る妥協が余儀なくされる。
【0005】
発明の開示
本発明の実施形態は、とりわけ以下のような考察を基礎としている。すなわち、大電流接続装置の構成要素、例えばプラグインコネクタなどは、電磁シールドのために、例えばシールド板によって取り囲まれていてもよい。このシールド板はこの場合、接続装置を完全に若しくは部分的に取り囲むことができ、そのため電磁場の効果的なシールドを達成することが可能である。このシールド板は、金属材料から形成され、導電性であり得る。接続ケーブルのケーブルシールドとシールド板とを接続するためには、接続ケーブルの場合によって存在し得る外側絶縁部が部分的に除去され、露出したケーブルシールドが、シールド板と電気的かつ機械的に接続される。このことは例えば圧着やクランプによって行うことができる。またケーブルシールドやシールド板内部でも、一部には大電流が生じる可能性があるので、これらの構成要素間の信頼性の高いコンタクト形成が低い電気抵抗のもとで望まれる。例えば振動によるまたは組立時のシールドケーシングと接続ケーブルの相対的移動に基づいて、接続ケーブルとシールドケーシングの更なる機械的分離を要する場合もある。
【0006】
本発明によれば、とりわけ大電流用途のための接続装置において機械的な安定性、電気的コンタクト形成および/または電磁シールド性を向上させることが可能である。
【0007】
それ故ここでは、絶縁導体および該絶縁導体を取り囲むケーブルシールドを有する接続ケーブルと、貫通孔部を有するシールドケーシングとを備えた、大電流用途のためのシールド装置が提案される。このシールド装置は、さらに、中空円筒状の導電性のシールドスリーブを備える特徴を有している。絶縁導体は、このシールドスリーブを通って案内され、前記シールドスリーブは、一方の長手側端部に、ケーシング側スリーブ領域を有し、他方の長手側端部にケーブル側スリーブ領域を有している。前記シールドスリーブのケーシング側スリーブ領域は、前記シールドケーシングの貫通孔部の領域内に配置されており、前記シールドケーシングは、前記ケーシング側スリーブ領域の外周面と接触する。前記ケーブルシールドは、前記ケーブル側スリーブ領域の外周面に当接し、前記ケーブルシールドは、前記シールドスリーブを介して前記シールドケーシングと導電接続される。
【0008】
1つの利点は、シールドケーシングと接続ケーブルの良好な機械的分離のもとで良好な電気的コンタクト形成を達成できることである。またその寿命にわたってコンタクト箇所の摩耗をより少なくすることができる。
【0009】
シールド装置は、電流によって誘起される電磁場の低減のために、シールド装置外の領域において用いることが可能である。そこでは、接続ケーブルのケーブルシールドが、接続ケーブルの周囲に発生し絶縁導体内を通流する電流によって誘起される電磁場の低減のために用いられる。シールドケーシングの貫通孔部は、通電のための電気導体を有する接続ケーブルを、シールドケーシングの内部領域内に引き込むために用いることが可能である。
【0010】
シールドスリーブとは、例えばその内径が、シールドスリーブを通る絶縁導体の引き込みを許容可能にし、その外径は、好適には、シールドスリーブが少なくともケーシング側スリーブ領域において貫通孔部内へ導入可能であるように選択されている管状の金属部材と理解されたい。同時に前記シールドスリーブの外径は、当該シールドスリーブとシールドケーシングの電気的かつ機械的コンタクト形成が可能であるように選択されている。この場合ケーシング側スリーブ領域は、ケーブル側スリーブ領域と比べて、同一若しくは異なる外径と、同一若しくは異なる内径とを有している。ケーブル側スリーブ領域は、その外周面がケーブルシールドと機械的かつ電気的にコンタクト形成する。このことは例えば圧着、半田付け、またはクリップによって達成可能である。換言すれば、前記シールドスリーブとは、接続ケーブルとシールドケーシングとの間の機械的かつ電気的結合部材として理解されたい。
【0011】
前述のシールド装置は、一例では、単一の絶縁導体の電磁シールドに使用される。また別の例では、前述のシールド装置は、例えば複数の導体の集合シールドまたは総括シールドとして、複数の絶縁導体の電磁シールドに用いられている。
【0012】
一例では、ケーシング側スリーブ領域とケーブル側スリーブ領域は相互に離間してシールドスリーブに配置されていてもよい。換言すれば、2つのスリーブ領域の間に介在領域が存在し、それにより前記2つのスリーブ領域は、それぞれ互いに直接移行しない。別の例では、ケーシング側スリーブ領域は、直接ケーブル側スリーブ領域に続いている。
【0013】
本発明の一実施形態では、絶縁導体の直径は、シールドスリーブの内径よりも小さく、例えばシールドスリーブの内径よりも10%以上小さく、好適には20%以上小さい。それにより、絶縁導体は、シールドスリーブの内部領域において径方向に可動である。絶縁導体の比較的小さな直径により、有利には、シールドスリーブ内の絶縁導体の移動空間に遊びが生じる。これにより、絶縁導体の径方向の移動は、限られた周面範囲で可能となる。このことは、絶縁導体の径方向の移動若しくはシフトが、シールドスリーブに対する径方向の印加押力にならないか、限定的にしかならない利点につながる。換言すれば、それによって機械的な分離または運動の分離が達成される。それにより、例えば内燃機関の周辺において接続装置を使用したときに、接続ケーブルとシールドケーシングとの間の振動の伝達が低減されるかまたは回避される。このことは、有利には、例えば移行箇所における振動や温度変化の過程によって材料疲労やその結果としての接続箇所の破断を引き起こすリスクも低減させる。また、それによって有利には、例えば材料疲労や洗浄過程によって発生する可能性のある移行箇所における電磁放射の漏れの形成に対するリスクも軽減される。
【0014】
前記絶縁導体は、それぞれ例えば銅若しくは銅合金からなるソリッドワイヤやリッツ線を有していてもよいし、例えば最大75mm2の導体断面積を有していてもよい。この導体は、導体路を包含する例えばプラスチックまたは他の適切な材料からなる絶縁層によって周囲を取り囲まれていてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態では、ケーブルシールドは、シールドケーシングの外側及びシールドスリーブの外側にて、シールドスリーブに隣接する領域において、絶縁導体に対して相対的に径方向で可動であり、それにより当該領域におけるケーブルシールドとシールドスリーブは、相互に相対的に機械的に分離されている。シールドスリーブに対するケーブルシールドの径方向の移動性は、所定の限度内で、相互に相対的なシールドスリーブないし接続ケーブルの相互に機械的に分離する径方向の動きを許容する。これにより有利には、接続ケーブルとシールドスリーブとの間で例えば振動などのような動きや変位の伝達が低減可能または防止可能となる。一例では、ケーブルシールドの径方向の移動性に加えて、絶縁導体もシールドスリーブの内部において径方向に移動可能である。さらに別の例では、接続ケーブルのケーブルシールドの外側が、例えばプラスチックからなる外部絶縁体によって取り囲まれている。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記径方向の可動性は、前記ケーブルシールドが前記領域において変形可能な形態でかつ前記領域において径方向に拡張されていることによって達成される。この拡張の利点は、これによって、径方向の移動を可能にさせる所要の移動空間の遊びが得られることにある。この拡張は、比較的簡単な手段で行うことができる、ケーブルシールド周面の簡単な引き上げ手段と見なせる。例えばワイヤリッツ線の形態のケーブルシールドの更なる移動性は、拡張によってもたらすことが可能である。なぜならこの場合個々の撚り線間のそれぞれの間隔が増加するからである。例えば編組シールドとして具現化されるこの種のケーブルシールドによって、有利にはシールド性が向上し、また接続ケーブルとシールドスリーブないしシールドケーシングとの間の機械的な分離もシールド性を向上させる。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記シールドケーシングは、前記貫通孔部の領域において複数の接触ラグを外方に向けて形成し、前記複数の接触ラグは、前記ケーシング側スリーブ領域の前記外周面に対して実質的に平行に延在し、かつ前記ケーシング側スリーブ領域の前記外周面と接触可能に構成されている。そのような接触ラグの利点は、シールドケーシングとケーシング側スリーブ領域の外周面との間のより広い接触面に認められ、この接触面によってより高い摩擦力および/または接触力並びにそれに伴ってさらに向上した機械的保持力が可能になる。その他にも、接触ラグとスリーブ領域との間、ないしは貫通孔部とスリーブ領域との間に、電磁放射の漏れの一種として機能し得る間隙が備わる。それにより、特に効果的なシールドが引き起こされる。
【0018】
前記接触ラグは、例えばシールドケーシングの側面に対して横方向に延在する出張り若しくは突出部と理解されたい。例えば、前記貫通孔部の領域内で、当該貫通孔部の縁部にある薄板状の部分が外側に折り曲げられ、それが接触ラグとして用いられてもよい。
【0019】
本発明の別の一実施形態では、前記シールド装置は、前記ケーシング側スリーブ領域において、および/または前記ケーブル側スリーブ領域において、周面方向外側に向けて前記シールドスリーブを取り囲む固定バンドを有している。この固定バンドは、前記接触ラグの各外面に対する押付け圧または前記ケーブルシールドに対する押付け圧を前記シールドスリーブの前記外周面の方向に生じさせるように構成されており、それにより、前記接触ラグまたは前記ケーブルシールドは、前記シールドスリーブの前記各外周面に固定されている。
【0020】
前記固定バンドの利点は、前記シールドスリーブの周面に亘って実質的に均一に分散される押付け圧に見られる。この固定バンドは、さらに前記接触ラグないしケーブルシールドの前記各外周面に対する押付け圧を有利に高めることができ、それによって確実な機械的および/または電気的接触接続を達成することが可能である。さらに有利な耐振動性と熱変動に対する耐性が得られ、接触箇所と接続構成部の摩耗もより低減することができる。固定バンドを使用することによって、温度下でのずれ特性、すなわち温度に起因する変位の低減も達成できる。さらなる利点は、固定バンドが比較的低コストで製造され、装着も比較的容易にできる点にある。その上さらにこの固定バンドによれば、ケーシング/接触ラグとシールドスリーブの間、ないしは、ケーブルシールドとシールドスリーブとの間の全ての移行箇所において、広範囲にわたる導電接続が簡単な方法で形成され、好適で漏れのないシールドがもたらされる。
【0021】
本発明の一実施形態では、前記固定バンドの有効範囲は、シールドスリーブの外周面に対する接触ラグの押付け圧および/またはケーブルシールドの押付け圧を変更できるようにするために調整可能である。この調整可能な有効範囲によって、例えば固定バンドの限定的な弾力を、結果として得られる径方向の押付け圧の変更に利用できる。一例によれば、固定バンドの有効範囲の低減によって押付け圧を高めることができる。
【0022】
固定バンドの有効範囲は、例えば固定バンドの一方の端部に配置されたラグと、ラグ内の固定バンドの適切な固定とによって達成することが可能である。この固定バンドは特にケーブルタイに類似した構成であってもよい。
【0023】
固定バンドにより有利には個々の構成要素のモジュラー形成が可能となり、また効果的なシールドをもたらすシールド装置に対する個々の構成要素の特に簡単で迅速かつ低コストな取付けがもたらされる。さらに固定バンドの使用は、例えば接続ケーブルを交換する必要がある場合に、シールド装置の迅速な取り外しを可能にする。このような取り外しは、当該シールド装置の個々の構成要素に損傷を与えることなく実施可能である。
【0024】
本発明の一実施形態では、前記固定バンドは金属を有する。この場合の利点は、例えばばね鋼から製造された固定バンドは、少ない自重のもとで比較的高い押付け圧を生成することができることにある。さらに金属製の固定バンドは、高い機械的安定性を有する。特に有利には、金属製の固定バンドによって簡単な方法で、シールド装置内の通電接続ケーブルによって生じる電磁界の漏れのない効果的なシールドがもたらされる。
【0025】
本発明の一実施形態では、前記固定バンドは、プラスチック材料を含み、さらに前記ケーブルシールドをケーブル側スリーブ領域の外周面と形状を合わせて取り囲めるように構成されている。ここでのプラスチックの利点は、例えば加熱によって、接触ラグと一緒に、ないしはケーブルシールドと一緒に、前記各外周面のそれぞれの個々の形状に適合させることが可能になることである。換言すれば、シールドスリーブの表面は、それぞれ当接する接触ラグ若しくはケーブルシールドと一緒に密に封入可能である。それによりこのプラスチック製の固定バンドは、場合によっては、前記外周面の周面における半径方向の変動にも適合化させることが可能である。さらに別の例示的な実施形態では、前記固定バンドの材料として、金属−プラスチック結合材、例えば金属コーティングされたプラスチック部材が提供される。この部材によれば、プラスチックによる機械的な結合利点と金属コーティングによる漏れのないシールド性の利点とが統合される。
【0026】
本発明の一実施形態では、前記固定バンドは、収縮スリーブである。この収縮スリーブの利点は、プラスチックによるシールドスリーブと接触ラグないしケーブルシールドの形状に合わせた封入が簡単な加熱処理、例えば熱風によって可能になる点である。この収縮スリーブは次のような特性によって特徴付けられるものであってもよい。すなわちそれが例えば事前の拡張と冷却によって、容易にシールドスリーブやケーブルシールドないし接触ラグ上に誘導でき、その後に続くステップで加熱処理によって収縮する特性である。この収縮スリーブは、多くの様々な実施形態で、比較的安価に入手することができる。さらに動作中の温度変動に対する良好な整定性も得られる。というのも熱収縮性の収縮スリーブは、例えば、通常の動作条件のもとで発生する温度変化に対しては不感であり、ケーブルシールドを遊び無しでシールドスリーブに固定するからである。同時にこの収縮スリーブは、例えば熱的方法を使用して若しくは機械的除去によって、ケーブルシールドとシールドスリーブを傷つけることなく簡単に取り外すこともできる。
【0027】
本発明の一実施形態では、前記シールドスリーブは、前記スリーブ領域の各長手側端部に、周面方向で周りを取り囲むように、かつ、径方向で外向きの凸部ないし隆起部を有している。この凸部ないし隆起部の利点は、ケーシング側スリーブ領域ないしケーブル側スリーブ領域外で、シールドスリーブ領域における各外周面に当接する接触ラグないしケーブルシールドの長手方向の離脱移動を防止若しくはより困難にすることができる点にある。これにより、特にシールドスリーブの軸方向に作用する引張力に関する総じて良好な機械的安定性が得られる。
【0028】
一例では、前記シールドスリーブは3つの凸部を有し、この場合これらの凸部のうちの2つは、シールドスリーブの各端面側の端部にそれぞれ配置され、第3の凸部は、ケーシング側スリーブ領域とケーブル側スリーブ領域の共通の凸部としてシールドスリーブの長さに亘って配置される。
【0029】
本発明の一実施形態では、前記接触ラグは、それらの延在方向で前記シールドケーシングから前記外周面に向かって段状に延在しており、それにより前記凸部領域の前記接触ラグの部分領域は、前記ケーシング側スリーブ領域の凸部間の前記接触ラグの部分領域よりもさらに前記シールドスリーブの中心軸から離間されている。この段状に延在することの利点は、接触ラグないしケーブルシールドの前記外周面との接触領域が、径方向でより深い位置に存在するシールドスリーブ領域に配置されることである。これらの凸部ないし隆起部は、接触ラグないしケーブルシールドがシールドスリーブの外周面から軸方向に抜け出るような移動を阻止若しくは困難にする機械的な障壁と理解されたい。
【0030】
本発明の一実施形態では、前記シールドスリーブの長手方向における前記固定バンドの幅は、前記各スリーブ領域の2つの凸部間の間隔よりも短い。この利点は、これによってテープを凸部の間の領域内に完全に配置することができる点にあり、それによって凸部間の外周面領域における効果的な固定と接触接続とが可能となる。同時に、固定バンドの適切な幅によって可及的に大きな共通の接触面と、それに伴う押付け圧の良好な分散とが外周面を介して達成される。
【0031】
本発明の一実施形態では、前記ケーシング側スリーブ領域および/または前記ケーブル側スリーブ領域は、前記外周面に凹部および/または凸部を有している。この利点は、有効接触面積の増大及び/又はケーブルシールドとシールドスリーブとの間ないしは接触ラグとシールドスリーブとの間のより良好な機械的接続にある。
【0032】
接触面を増加させることにより有利には、ケーブル側スリーブ領域からケーブルシールドへの電気的な移行部抵抗が低減される。良好な機械的接続と共に、通電される接続ケーブルの寿命に亘って恒久的でかつ信頼性の高い電磁界のシールド性が得られる。さらに拡大された接触面によって有利には、シールドスリーブとケーブルシールドとの間の電磁放射の漏れが発生するリスクも低減される。特に有利には、ケーブル側のシールドが、例えば振動による機械的な負担の入れ替わりや温度に起因する寸法変化に対して恒久的に不感となる。
【0033】
本発明の一実施形態では、前記外周面の輪郭は、波形に形成されている。換言すれば、例えば周面方向に亘って延在する溝や凹部を設けてもよい。
【0034】
特に、このような波状の構成、例えばシャープなエッジを持たない波形は有利である。なぜならそれによって、ケーブルシールドの固定が、例えば収縮スリーブを用いて特にダメージを与えることなく高い信頼性のもとで行うことができるからである。それにより、シールドの破壊に要する軸方向の引張力が有利に大きく高められる。
【0035】
本発明の一態様では、上述したようにシールド装置を含む、自動車用プラグインコネクタが提案される。
【0036】
ここでは、本発明によるシールド装置の可能な特徴及び利点を、様々な実施形態に関連させて説明することを述べておくが、当業者であるならば、さらなる実施形態や可能な相乗効果を得るために、個々の特徴を適切な方法で相互に組み合わせたり、入れ替えたりすることが可能であることは容易に理解されるであろう。
【0037】
以下では本発明の例示的な実施形態を、添付の図面を参照して説明するが、但しこれらの説明や図面のいずれも、本発明を限定するものとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明によるシールド装置の一例を空間表現にて示した図
図2】本発明によるシールド装置のシールドスリーブの一例を示した図
図3】本発明によるシールド装置の一部として、接触ラグを有するシールドケーシングの一例を示した図
図4】本発明によるシールド装置の接続ケーブルの一例を示した図
図5】仮組立状態での本発明によるシールド装置の一例を示した図
図6】完成状態での本発明によるシールド装置の一例を示した図
図7】波形状の外周面と固定バンドとしての収縮チューブとを有する本発明による例示的なシールド装置の一部の断面図
【0039】
これらの図面は、単に概略的に示されたものであって、必ずしも縮尺通りのものではない。図中の同じ参照番号は、同一の若しくは同等の作用を有する特徴部分を示している。図中において複数の特徴部分が示されている場合には、これらの各特徴部分は、互いに独立した特徴とみなすことができ、必ずしも他に示された特徴との組み合わせにおいて解釈されるべきものではない。
【0040】
実施形態の詳細な説明
図1には、大電流用途のためのシールド装置10が、立体図で概略的に示されている。このシールド装置10は、シールドケーシング12を有し、その側面には貫通孔部14が設けられている。シールドケーシング12は、この貫通孔部14から突出するように複数の接触ラグ16を有し、これらの接触ラグ16は、シールドケーシング12の側面から直角方向に突出している。貫通孔部14には、シールドスリーブ18が配設されており、このシールドスリーブ18は、図示の例ではシールドケーシング12からケーブルシールド20まで延在している。さらにこのケーブルシールド20の周面側は、外側から外部絶縁体30によって取り囲まれている。ケーブルシールド20は、絶縁導体22を取り囲んでおり、該絶縁導体22は、シールドスリーブ18の長さに亘って当該シールドスリーブ18により、少なくともシールドケーシング12の内部領域内まで案内されている。絶縁導体22は、その内部領域に絶縁物によって取り囲まれている導電体(図示せず)を有している。例えば絶縁導体22の導電体(図示せず)は、中実の銅線または銅より線であってもよい。ケーブルシールド20は、例えば、銅からなる編組シールドまたはその他の高導電性材料として構成されていてもよい。例えばそのような編組シールドは複数の層から成り、その内部を延在する通電用の絶縁導体22を電磁場から効果的にシールド可能にする織込み部分を有している。この編組シールドは、例えば軸線延在方向に沿って所定の可撓性を有していてもよいし、さらにその際にはシールド効果が電磁放射に対する漏れによって損なわれることなく伸縮可能であってもよい。
【0041】
絶縁導体22の直径は、図示の例ではシールドスリーブ18の内径よりも小さい。これにより、絶縁導体とシールドスリーブ18の内壁との間に介在空間24が生じる。このことは有利には、シールドスリーブ18内の絶縁導体22の制限された径方向の可動性を可能にする。シールドスリーブ18は、長手側の各端部に、並びにシールドスリーブ18の所定の長さに亘って径方向外向きの凸部ないし隆起部26を有している。
【0042】
接触ラグ16は、シールドスリーブ18の外周面に当接し、シールドスリーブの周りで周方向に延びる外部からの固定バンド28を用いて、接触ラグ16の各外面への押付け圧により、シールドスリーブ18の外周面に固定される。図示の例では、周方向の固定バンド28はプラスチックから作製されたケーブルタイである。
【0043】
図2には、本発明によるシールド装置10(図1参照)のシールドスリーブ18が立体図で示されている。シールドスリーブ18は、ケーシング側スリーブ領域32と、ケーブル側スリーブ領域34とを有している。ケーシング側スリーブ領域32はその外表面に、周方向に延在するケーシング側スリーブ領域32の外周面36と、ケーブル側スリーブ領域34の外周面38とを有している。これらの各スリーブ領域32,34は、さらにそれぞれの端面側端部に、凸部ないし隆起部26を有し、この場合内方側の第3の凸部26は、ケーシング側スリーブ領域32とケーブル側スリーブ領域34の共通の凸部26を形成している。絶縁導体22の引き込みのために(図1参照)、前記シールドスリーブ18は、中空円筒状に構成されている。
【0044】
図3には、本発明によるシールド装置10の一部としてのシールドケーシング12の斜視図が示されている。このシールドケーシング12は、側面に貫通孔部14を有している。この貫通孔部14の縁部においては、当該貫通孔部14の縁部に一方の側がそれぞれ接続している複数の接触ラグ16が、直交方向に若しくは当該側面から横方向に突出している。これらの接触ラグ16は、それらの延在方向において、シールドケーシング12からケーシング側スリーブ領域32の外周面36まで段状に延在している(図2参照)。
【0045】
図4には、本発明によるシールド装置10の接続ケーブル40の一例が、絶縁導体22と、ケーブルシールド20と、外部絶縁体30と共に示されている。絶縁導体22は、絶縁層の内部に導電体(図示せず)を有している。ケーブルシールド20は、ここに示されているように、例えば後からの摺動目的のために、シールドスリーブ18のケーブル側スリーブ領域34上で(図2参照)周面方向において拡張されている。ここではこの拡張の形態は、例えばシールドスリーブ18の隆起26を考慮に入れてもよい。
【0046】
図5及び図6には、取付前と完成後のシールド装置10が簡素に例示的に示されている。図5に示されている一例では、最初にシールドスリーブ18のケーシング側スリーブ領域32が、シールドケーシング12の貫通孔部14内に挿入される。さらなるステップでは、絶縁導体22が、シールドスリーブ18を通って引き出される。この目的のために、接続ケーブル40の場合によって存在する外部絶縁体30の一部が事前に取り除かれ、それによって絶縁導体22が露出される。同じように事前に露出されたケーブルシールド20は、拡張された後でケーブル側スリーブ領域34の上に被せられる。
【0047】
それに続くステップでは、図6の描写に応じて、シールドスリーブ18へのシールドケーシング12の接触ラグ16の機械的な固定並びにシールドスリーブ18へのケーブルシールド20の機械的な固定が行われる。これらの固定はそれぞれ次のことによって行われている。すなわち1つのケーブルタイ42は接触ラグ16の外面の周りに広範囲に装着し、さらに別のケーブルタイ42は接続ケーブル40のケーブルシールド20の周りに広範囲に装着することで行われる。この場合ケーブルタイ42の巻き付け範囲は、例えばケーブルタイ42の突出端部を引っ張ることにより縮小することができ、それによってシールドスリーブ18への接触ラグ16とケーブルシールド20の押付け圧が高まる。ケーブルシールド20は、図示の例では、外部絶縁体30とシールドスリーブ18の間の領域内で径方向に移動可能であり、それによって接続ケーブル40が、シールドスリーブ18とシールドケーシング12から機械的に分離される。
【0048】
図7には、本発明による例示的なシールド装置10からの簡略化された断面図が示されている。ここでは、絶縁導体22が貫通しているシールドスリーブ18が示されている。このシールドスリーブ18は、ケーシング側スリーブ領域32とケーブル側スリーブ領域34とを有している。ケーシング側スリーブ領域32においては、接触ラグ16がシールドケーシング12(図1参照)から突出し、固定バンド28によってケーシング側スリーブ領域32の外周面36に押圧されることによって固定されている。この固定バンド28は、例えば、プラスチック若しくは金属薄板からなるケーブルタイ42(図6参照)であってもよい。ケーブル側スリーブ領域34における、シールドスリーブ18の外周面38は、波形の輪郭を有している。この波形は、例えば径方向に、軸方向に、または斜め方向に設定することができ、シールドスリーブ18に加えられる接触力および/または引張力に関連する有利な機械的結合をもたらしている。
【0049】
ケーブル側スリーブ領域34の外周面38に沿ってケーブルシールド20が挿入されている。ケーブル側スリーブ領域34の外周面38へのケーブルシールド20の機械的な締結若しくは固定のために、固定バンドとして、収縮スリーブ44が周面方向でケーブルシールド20と外周面の上に押し付けられている。図7の描写においては、この収縮スリーブ44は、拡張された状態で示されている。続くステップにおいて、この収縮スリーブ44は、例えば熱風によって加熱され、これによってこの収縮スリーブ44は、その巻き付き範囲を縮小しないしは径方向に収縮する。これによりケーブルシールド20は、ケーブル側スリーブ領域34の波形の外周面38に押し付けられ、それによって固定される。一例では、この収縮スリーブはプラスチックで製造されており、このことは、収縮スリーブ44の径方向内向きの表面構造または輪郭がケーブルシールド20と外周面38の輪郭に良好に適合できるようになるという利点をもたらす。収縮により、シールドスリーブ18に対して径方向内向きの押付け圧が生成され、これはシールドスリーブ18へのケーブルシールド20の有利な固定と有利な電気的接続並びに有利な機械的固定を可能にさせる。この場合、ケーブルシールド20は、例えば薄膜、撚り線または導電性の繊維であってもよい。
【0050】
なお、本願中の記載において、「含む」との表現は、他の構成要素やステップを除外しているものではなく、「1つの」との表現も、複数の存在を除外するものではないことを述べておく。さらに上述の実施形態のいずれかを参照して説明されている特徴や手順も、上述の他の実施形態の別の特徴や手順と組み合わせて用いることも可能であることを述べておく。さらに、特許請求の範囲における参照符号は、権利範囲の限定とみなすべきものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7