(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231196
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】多軸式の車両用センサマウンティング
(51)【国際特許分類】
B60R 21/0136 20060101AFI20171106BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20171106BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20171106BHJP
G01P 15/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
B60R21/0136
B60R21/00 610Z
G01P15/18
G01P15/00 C
【請求項の数】14
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-521833(P2016-521833)
(86)(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公表番号】特表2016-527123(P2016-527123A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】US2014043333
(87)【国際公開番号】WO2014205308
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】61/837,837
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/308,833
(32)【優先日】2014年6月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005662
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティブ システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONTINENTAL AUTOMOTIVE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エイ. ディングマン
【審査官】
三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/111098(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0171672(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/0136
B60R 21/00
G01P 15/00
G01P 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)用の安全システム(12)であって、
第1の検出軸および前記第1の検出軸に対し垂直な第2の検出軸(A)に沿う動きのみを検出するように構成された少なくとも1つのセンサ(16)を備え、
前記少なくとも1つのセンサ(16)は、前記車両(10)の縦軸に平行な前記第1の検出軸と前記車両(10)の横軸に対して角度が付けられた前記第2の検出軸(A)とに沿った衝撃を示す動きを検出し、
前記少なくとも1つのセンサ(16)によって検出された動きに基づいて安全応答が必要か否かを決定するための、前記少なくとも1つのセンサ(16)と通信接続された電子制御ユニット(14)を備え、
前記第2の検出軸(A)に沿った衝撃を示す動きは、前記横軸に沿った動きを示す第1の成分(24)と、前記車両の横軸および前記車両の縦軸に対して横方向の第3の車両軸に沿った動きを示す第2の成分(26)とを含んでいる、
ことを特徴とする、安全システム(12)。
【請求項2】
前記第2の検出軸(A)は、前記横軸を基準として0度よりも大きく90度よりも小さい角度をなしている、請求項1記載の安全システム(12)。
【請求項3】
前記第2の検出軸(A)は、前記横軸を基準として45度の角度をなしている、請求項1記載の安全システム(12)。
【請求項4】
前記電子制御ユニット(14)は、前記車両(10)の横軸に沿った動きを前記第1の成分(24)に基づいて決定し、さらに前記第3の車両軸に沿った動きを前記第2の成分(26)に基づいて決定する、請求項1記載の安全システム。
【請求項5】
前記電子制御ユニット(14)は、安全応答を開始させるための信号を、前記第1のセンサ軸に沿って検出された動きと、前記横軸に沿った動きを示す前記第1の成分(24)と、前記第3の車両軸に沿った動きを示す第2の成分(26)とに基づいて生成する、請求項4記載の安全システム。
【請求項6】
前記第1の成分(24)は、前記横軸に沿った実際の動きの一部を含み、前記第2の成分(26)は、前記第3の車両軸に沿った実際の動きの一部を含む、請求項4記載の安全システム(12)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのセンサ(16)は、前記第1の検出軸に沿った動きを検出するための第1部分を備え、さらに前記第1の検出軸に対して横方向の前記第2の検出軸に沿った動きを検出するための第2部分を備える、請求項1記載の安全システム(12)。
【請求項8】
前記電子制御ユニット(14)は、安全装置(18,20)を起動する安全応答を作動させるための信号を生成する、請求項1記載の安全システム。
【請求項9】
車両用の安全システム(12)を作動させる方法であって、
第1検出部分(28)および第2検出部分(30)のみを有するセンサ(16)を用いて衝撃方向の力を検出するステップと、
前記第1検出部分(28)は第1の検出軸に沿った動きを検出し、前記第2検出部分(30)は前記第1の検出軸に対し垂直な第2の検出軸(A)に沿った動きを検出し、
前記第1検出部分(28)は前記車両(10)の縦軸に平行な前記第1の検出軸に沿った力を検出し、かつ、前記第2検出部分(30)は前記車両(10)の横軸に対して角度が付けられた前記第2の検出軸に沿った力を検出し、
前記第2の検出軸(A)に沿った衝撃を示す動き検出には、前記車両の横軸に沿った動きを示す第1の部分(24)および前記車両の縦軸に沿った動きを示す第2の部分(26)を含み、その結果、前記第1検出部分(28)および前記第2検出部分(30)のみを有する前記センサは、少なくとも3つの車両軸に沿った力を検出し、
電子制御ユニット(14)を用いて、安全応答が必要とされることを、前記車両(10)に作用する力を示す前記センサ(16)から伝送された信号に基づいて決定するステップと、
前記電子制御ユニット(14)を用いて、安全応答をトリガする信号を生成するステップとを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記横軸を基準として0度より大きく90度よりも小さい角度をなす前記第2の検出軸に沿った検出を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記横軸を基準として45度の角度をなす前記第2の検出軸に沿った検出を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記横軸に沿った動きを示す第1の成分(24)と、前記車両横軸および前記車両縦軸に対して横方向の第3の車両軸に沿った動きを示す第2の成分(26)とが含まれている前記第2の検出軸に沿った衝撃を示す動きが検出される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記電子制御ユニット(14)を用いて、前記車両(10)の横軸に沿った動きを前記第1の成分(24)に基づいて決定し、さらに前記第3の車両軸に沿った動きを前記第2の成分(26)に基づいて決定することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記電子制御ユニット(14)は、安全応答を開始させるための信号を、前記第1のセンサ軸に沿って検出された動きと、前記横軸に沿った動きを示す前記第1の成分(24)と、前記第3の車両軸に沿った動きを示す第2の成分(26)とに基づいて生成する、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年6月19日付けで出願された米国特許出願第14/308,833号および2013年6月21日付けで出願された米国仮特許出願第61/837,837号の関連出願あって、これらの出願に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ展開システムを含む車両用の安全システムは、クラッシュ状況を検出するために車両に配置されたセンサを利用している。このクラッシュセンサは、エアバッグなどの安全装置をいつ展開するかに関する意思決定を行う電子制御ユニット(ECU)と通信接続されている。安全システムによって使用される情報には、衝撃の方向と力が含まれる。センサは、衝撃の発生源からの方向を決定するために、車両の各軸に沿ったデータを検出するように配置されなければならない。したがってここでは車両全体を通して複数のセンサが、安全システムによって利用される衝撃を示す力と動きを検出するために利用されている。
【0003】
ここに記載される背景技術の説明は、本開示の背景を一般的に公開することを目的としている。本明細書の背景技術に記載されている範囲内で発明者によって指定されたワーク(仕事、作用、働き等)と同様に本明細書の態様も、別途、出願時の先行技術に当て嵌まる場合を除き、明示または黙示を問わず、本開示に対する先行技術として認められるものである。
【0004】
発明の概要
開示されている車両用の安全システムは、車両の長手方向の軸(以下では単に縦軸とも称する)に平行な第1の検出軸と、車両の横方向の軸(以下では単に横軸とも称する)に対して角度が付けられた第2の検出軸とに沿った衝撃を示す車両上の動きと力を検出するために少なくとも1つのセンサを含んでいる。この少なくとも1つのセンサは、互いに直交する2方向の動きと力を検出可能な第1検出部分と第2検出部分を備えている。これらのセンサは、第2の検出軸が車両の横軸に対して0度よりも大きく90度よりも小さい角度で配置されるように配向されている。開示されている一実施形態によれば、前記第2の検出軸の角度は45度である。
【0005】
電子制御ユニットは、少なくとも1つのセンサと通信接続され、第2の検出軸に沿った動きと力に対して得られた情報から、異なる軸に沿った動きと力を導出する。ECUは、少なくとも1つのセンサによって検出された動きと、第2の検出軸に沿った動きに関する情報から導出された情報とに基づいて、安全応答が必要かどうかを決定するための導出情報を使用する。
【0006】
図には特定の構成要素を有する異なる実施例が示されているが、本発明の実施形態は、それらの特定の組み合わせに限定されるものではない。一実施形態からの構成要素または特徴のいくつかは、別の実施形態からの特徴または構成要素と組み合わせて使用することが可能である。
【0007】
本明細書で開示されるこれらの特徴および他の特徴は、以下の明細書及び図面から良好に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】安全システムの複数のセンサのうちの1つの斜視図
【0009】
発明を実施するための形態
以下の説明は、もちろん単なる例示であり、本発明をその用途または使用において限定する目的でなされたものではない。理解しやすくするために、図面では類似要素の識別のために同一の参照番号が使用される。
【0010】
図1を参照すると、車両10は、エアバッグ18やアクティブシートベルト20などの補助的な拘束手段を有する安全システム12を含んでいる。この安全システム12は、電子制御ユニット(ECU)14と、車両10に取り付けられた少なくとも1つのセンサ16とを含んでいる。この実施例では、少なくとも4つのセンサ16が、車両10全体にわたって取り付けられ、複数の車両軸の1つに沿った動きと力を示す信号を生成している。ECU14は、衝撃が発生したかどうかを決定するために、1つ以上のセンサ16からのデータを使用する。衝撃が発生したことを決定した場合、ECU14は、安全応答を開始させるための信号を生成し、エアバッグ18やアクティブシートベルト20などの少なくとも1つの安全策を講じる。ECU14は、複数のセンサ16からの信号によって示される検出方向や大きさに応じて、マルチエアバッグ18やシートベルトプリテンショナー20などの安全策を組合せて講じてもよい。
【0011】
車両10の衝撃と動きは、複数の主要な車両軸の成分を含んだ方向に発生する。この実施例では、X軸が車両の長手軸若しくは縦軸に沿って配置され、Y軸は車両の横軸に沿って配置されている。そしてZ軸若しくは第3の軸は、Y軸とX軸の両方に対して垂直な関係にある。各センサ16は、各車両軸に平行な方向の動きを示す情報を生成し、その情報をECU14に伝送する。
【0012】
図1に関連する
図2および
図3を参照すれば、例示的な1つ以上のセンサ16の各々は、互いに垂直な2つの検出方向を検出し、XYセンサとも称される。この実施例では、前記センサ16の各々は、第1の検出方向の動きと力を検出する第1検出部分28と、第2の検出方向の動きと力を検出する第2検出部分30とを備えている。例えばX軸とY軸のような2つの方向だけの検出ならば、Z軸周りの動きはそのままにされ、場合によっては検出されないかまたは遅れて検出される可能性がある。従って、例えば2つの軸に沿った動きを検出するセンサ16を利用した例示的安全システム12では、少なくとも3つの軸に沿った動きに関連する情報を、各センサ16の角度を付けた配向によって得るために、第1の検出軸はX軸に平行に配置され、第2の検出軸Aは横軸若しくはY軸に対して所定の角度で配置される。
【0013】
検出軸A(
図1および
図3参照)の角度を付けた配向は、1つ以上の2軸センサ若しくはXYセンサ16に、3つの全ての軸に沿った動きを示す情報を生成させることを可能にする。この実施例では、1つ以上のセンサ16が、X軸に対して45度の角度で配置された第2の検出軸に沿った動きを検出するように配向されている。例えば2つのセンサは、第2の検出軸Aを45度の角度で提供するために取り付けられているが、本出願が想定する範囲内では、0度よりも大きい角度から90度未満までの任意の角度を利用することが可能である。
【0014】
この実施例の1つ以上のセンサ16は、次のようなXYセンサである。すなわち、X軸に平行な縦軸周りにセンサ16を回転させることによって、X軸に垂直な軸に沿った動きを代わりに検出するように配向されたXYセンサである。それは、X軸から45度の角度で配向された第2の検出軸A回りの動きを検出する。それ故に1つ以上のセンサ16は、車両10の縦軸と平行な方向に沿った第1の検出軸における力と動きの100%を検出し、Y軸とZ軸の各々に沿った動きは第1の成分24と第2の成分26に従って部分的に検出する。図からも理解されるように、第2の検出軸Aに沿った動きは、Y成分(第1の成分24)とZ成分(第2の成分26)の両方を含んでいる。従ってセンサ16は、Y軸に沿った第2の方向における力の一部(例えば45度の角度に対して71%)を示す情報を生成し、さらにZ軸に沿った第3の方向における力の71%を示す情報を生成する。従って、2軸若しくはXYセンサ16は、複雑でコストのかかる3軸センサの追加なしで、車両10の3つの軸に沿った力と動きを示す情報を提供する。
【0015】
ECU14は、2つの検出軸に沿った動きを示す各センサ16からの情報を受信し、車両10の3つの軸における動きを示す情報を生成している。第2の検出軸Aに沿った情報の生成は、角度22を考慮して、Y軸に沿った第1の成分24とZ軸に沿った第2の成分26の動きと力の値を導出するために利用される。ECU14は、車両の縦軸に沿った動きと力を示す、前記複数のセンサ16から得られた情報を組み合わせて導出される情報を、衝撃の激しさと方向を決定し、安全システム12の任意の所要の構成要素の展開を開始するための信号を生成するために使用する。動きと力の成分の導出は、ECU14の一部としてプログラムされたアルゴリズムによって実施される。
【0016】
車両10の全体にわたって配向されるセンサ16の各々は、動作時に、車両における車両縦軸Xに平行な第1の検出軸と、車両横軸Yに対して角度を付けられた第2の検出軸Aとに沿った動きと力を検出するために配向されている。それにより、センサ16は、第1および第2の検出軸に沿った動きを示す信号を生成し、それらの情報をECU14に伝送する。ECU14は、第2の検出軸Aに沿った動きと力を示す情報を用いて、車両10の対応するY軸およびZ軸回りの動きと力を示す値を導出する。そしてECU14は、予め定められた要求に従って安全システム12からの安全応答作動をトリガさせる信号を生成する。
【0017】
この例では、第2の検出軸Aに沿って検出された動きと力には、車両横軸若しくはY軸に沿った動きを示す第1の成分24と、車両横軸および車両縦軸に対して横方向の第3の車両軸に沿った動きを示す第2の成分26とが含まれている。ECU14は、車両Y軸若しくは横軸に沿った動きと力を第1の成分24に基づいて導出し、第3の車両軸に沿った動きと力を第2の成分26に基づいて導出する。その後ECU14は、安全応答を開始させるための信号を、第1の検出軸に沿って検出された動きと、横軸に沿った動きを示す第1の成分と、第3の車両軸に沿った動きを示す第2の成分とに基づいて生成する。
【0018】
3軸ロールオーバーセンサを利用した安全システムは、(本発明によれば)異なる方向で少なくとも3つの軸に沿って車両に作用する動きと力の情報を生成するためにECUにおいて使用されるアルゴリズムによって支援された2軸センサに置き換えることが可能になる。複数のセンサ16から得られたデータを用いたアルゴリズムは、安全システムの展開につなげられる車両の動的状態の把握を可能にする。
【0019】
例えば45度の角度でセンサを配向することによって提供される追加情報は、エアバッグや他の安全装置を展開させるための時間を作り出す良好な意思決定を可能にする。45度の取付け配向角度は、最も簡素な幾何学的計算を提供する。しかしながらここでは、0度〜90度の間で選択される別の角度も可能である。この別の角度は、他のところよりもそこが望ましいとみなされる状況毎に1つの検出方向を選択させる。
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明してきたが、一方では本開示の真の権利範囲は、そのような実施形態に限定されるものではない。なぜなら本発明が関係する当業者には、添付の特許請求の範囲の枠内において、本発明を実施するための様々な代替的構成や実施形態が容易に認識され得るからである。
【0021】
ここでは例示的な実施形態が開示されてはいるが、当業者であれば、所定の変更が本開示の権利範囲に含まれることが容易に認識されるであろう。この理由からも、本開示の権利範囲と内容を決定するためには以下の特許請求の範囲が検討されるべきであろう。