(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231198
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】インダクタ用ドライバ回路、インダクタを動作させる方法およびドライバ回路を備えたアクティブ送信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20171106BHJP
B60R 25/40 20130101ALI20171106BHJP
【FI】
H04B1/04 J
B60R25/40
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-522034(P2016-522034)
(86)(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公表番号】特表2017-501602(P2017-501602A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2014070831
(87)【国際公開番号】WO2015052033
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年6月2日
(31)【優先権主張番号】102013220596.1
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘアベアト フロイツハイム
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ザース
【審査官】
木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−321652(JP,A)
【文献】
特開平04−293320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R25/00−99/00
G06K17/00
H04B 1/00− 1/04、 1/30
1/59− 1/72、 5/00− 5/06
11/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタ(1)用のドライバ回路において、
当該ドライバ回路は、
コンデンサ(4)と、
当該コンデンサ(4)に対して基準電圧(Ur)を供給する2つの入力路と、
インダクタ(1)を前記コンデンサ(4)に接続する2つの出力路と、
前記2つの入力路の1つに接続されている第1の制御可能なスイッチ(5)と、
前記2つの出力路の1つに接続されている第2の制御可能なスイッチ(7)と、
前記2つの出力路の1つに接続されており、かつ、前記インダクタ(1)を流れる電流(Ia)を測定するように構成されている電流測定装置(8)と、
前記電流測定装置(8)に後置接続されているスイッチ制御装置(9)であって、前記インダクタ(1)を流れる電流(Ia)を評価し、かつ、まず前記第2スイッチ(7)を開いて前記第1スイッチ(5)を閉じて、前記コンデンサ(4)を前記基準電圧(Ur)に充電し、つぎに前記第1スイッチ(5)を開きかつ前記第2スイッチ(7)を閉じて、前記インダクタ(1)を介して前記コンデンサ(4)を振動的に放電させるように構成されたスイッチ制御装置(9)とを有しており、
前記インダクタ(1)を流れる電流(Ia)が、完全な一振動周期間またはその倍数の周期間を流れ終わった場合に前記第2スイッチ(7)がはじめて再度開かれる、
ことを特徴とする、
インダクタ(1)用のドライバ回路。
【請求項2】
電流制限部(6)または電流印加部が前記第1スイッチ(5)に直列接続されている、
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項3】
前記スイッチ制御装置(9)は、測定した前記電流(Ia)のゼロクロスを検出し、
2つのゼロクロスの後、または、2つのゼロクロスの整数倍の後、前記第2スイッチ(7)を開くように構成されている、
請求項1または2に記載のドライバ回路。
【請求項4】
前記スイッチ制御装置(9)は、変調信号(MOD)用の変調入力を有しており、かつ、前記変調信号(MOD)に依存して前記第1スイッチ(5)および前記第2スイッチ(7)のスイッチングサイクルを制御するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のドライバ回路。
【請求項5】
前記スイッチ制御装置(9)は、位相シフトキーイング変調または振幅シフトキーイング変調または周波数シフトキーイング変調を実行するように構成されている、
請求項4に記載のドライバ回路。
【請求項6】
少なくとも前記第1スイッチ(5)および前記第2スイッチ(7)は、制御可能な半導体素子として構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のドライバ回路。
【請求項7】
前記電流測定装置(8)は、オーム抵抗として構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のドライバ回路。
【請求項8】
前記電流測定装置は、前記コンデンサ(4)における電圧の微分を評価するように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のドライバ回路。
【請求項9】
第3の制御可能なスイッチ(10)が、前記コンデンサ(4)に並列接続されており、
前記第3の制御可能なスイッチ(10)は、前記ドライバ回路を非活性化するため、当該第3の制御可能なスイッチ(10)によって前記コンデンサ(4)が短絡されるように制御される、
請求項1から8までのいずれか1項に記載のドライバ回路。
【請求項10】
誘導アンテナ(1)用のドライバ回路であり、当該誘導アンテナ(1)はアクティブ送信装置として動作する、ドライバ回路において、
当該ドライバ回路は、
コンデンサ(4)と、
当該コンデンサ(4)に対して基準電圧(Ur)を供給する2つの入力路と、
インダクタ(1)を前記コンデンサ(4)に接続する2つの出力路と、
前記2つの入力路の1つに接続されている第1の制御可能なスイッチ(5)と、
前記2つの出力路の1つに接続されている第2の制御可能なスイッチ(7)と、
前記2つの出力路の1つに接続されており、かつ、前記インダクタ(1)を流れる電流(Ia)を測定するように構成されている電流測定装置(8)と、
前記電流測定装置(8)に後置接続されているスイッチ制御装置(9)であって、前記インダクタ(1)を流れる電流(Ia)を評価し、かつ、まず前記第2スイッチ(7)を開いて前記第1スイッチ(5)を閉じて、前記コンデンサ(4)を前記基準電圧(Ur)に充電し、つぎに前記第1スイッチ(5)を開きかつ前記第2スイッチ(7)を閉じて、前記インダクタ(1)を介して前記コンデンサ(4)を振動的に放電させるように構成されたスイッチ制御装置(9)とを有しており、
前記インダクタ(1)を流れる電流(Ia)が、完全な一振動周期間またはその倍数の周期間を流れ終わった場合に前記第2スイッチ(7)がはじめて再度開かれる、
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項11】
インダクタ(1)を動作させる方法において、
充電電流(Ia)を用いてコンデンサ(4)を基準電圧(Ur)に充電し、
充電した当該コンデンサ(4)を、インダクタ(1)を介して振動的に放電し、
前記インダクタ(1)を流れる電流(Ia)が、完全な一振動周期間またはその倍数の周期間を流れ終わった場合に前記放電を完了する、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記コンデンサ(4)の前記充電電流(Ia)を制限するかまたは印加する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
測定した前記電流(Ia)のゼロクロスを検出し、
2つのゼロクロスの後、または、2つのゼロクロスの整数倍の後、前記コンデンサ(4)の前記放電を終了する、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記コンデンサ(4)の前記充電および放電サイクルを変調信号(MOD)に依存して制御する、
請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記変調信号(MOD)に基づいて位相シフトキーイング変調または振幅シフトキーイング変調または周波数シフトキーイング変調を実行する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
電流測定のため、前記コンデンサ(4)における電圧の微分を評価する、
請求項11から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ドライバ回路を非活性化するため、前記コンデンサ(4)を短絡する、
請求項11から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
誘導アンテナ(1)、
コンデンサ(4)、
基準電圧(Ur)、
前記基準電圧(Ur)と前記コンデンサ(4)との間に接続された2つの入力路、
前記誘導アンテナ(1)と前記コンデンサ(4)との間に接続された2つの出力路、
前記2つの入力路の1つに接続されている第1の制御可能なスイッチ(5)、
前記2つの出力路の1つに接続されている第2の制御可能なスイッチ(7)、
前記2つの出力路の1つに接続されておりかつ前記誘導アンテナ(1)を流れる電流(Ia)を測定するように構成されている電流測定装置(8)、および、
前記電流測定装置(8)に後置接続されているスイッチ制御装置(9)であって、前記誘導アンテナ(1)を流れる電流(Ia)を評価し、かつ、まず前記第2スイッチ(7)を開いて前記第1スイッチ(5)を閉じて、前記コンデンサ(4)を前記基準電圧(Ur)に充電し、つぎに前記第1スイッチ(5)を開きかつ前記第2スイッチ(7)を閉じて、前記誘導アンテナ(1)を介して前記コンデンサ(4)を振動的に放電させるように構成されているスイッチ制御装置(9)とを有する、アクティブ送信装置において、
前記誘導アンテナ(1)を流れる電流(Ia)が、完全な一振動周期間またはその倍数の周期間を流れ終わった場合に前記第2スイッチ(7)がはじめて再度開かれる、
ことを特徴とするアクティブ送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に誘導アンテナのようなインダクタ用のドライバ回路と、インダクタを動作させる方法と、ドライバ回路を備えたアクティブ送信装置とに関する。
【0002】
例えばパッシブスタートエントリ(PASE Passive Start Entry)システムのようなキーレスの車両アクセスおよびスタートシステムは、自動車キーを能動的に利用することなく車両を解錠し、単にスタートボタンを操作するだけでこれを始動させる自動的なシステムである。これは、車両のドライバが携帯する、チップを備えた電子式キーによって可能になる。この車両からはこれに設けられた少なくとも1つのアンテナを介し、符号化された問い合わせ信号が、LF周波数(LFは、例えば20kHzと200kHzとの間の周波数の"Low Frequency"を表す)で周期的に送信される。これに続いて上記のシステムは、UHF領域(UHFは、例えば3桁のMHz周波数領域の"Ultra High Frequency"を表す)における受信モードに移行し、確認を待機する。トランスポンダを備えたキーが到達範囲に存在する場合、キーはLF信号を受信し、これを復号化し、新たな符号と共にこれをUHF信号として再び送信する。このUHF信号は車両において復号化される。この車両には2つの符号テーブルが既知であるため、この車両は、それ自体がはじめに送信したものと、今まさに受信した信号とを比較し、一致した場合にはアクセスを許可する。所定の時間内に正しい応答がない場合、なにも行われず、システムは再びスタンバイ状態に切り換わる。エンジン始動過程は実質的に上記のアクセスコントロールの過程に対応するが、この際にはエンジンスタートボタンを操作するだけでよい。
【0003】
上記のLF信号を送信するアンテナとしてはもっぱら誘導アンテナが使用され、この誘導アンテナは、(マグネチックループアンテナまたはフェライトバーアンテナとしても知られている)例えば巻線を備えたフェライトコアとして構成される。誘電アンテナのインダクタは、コンデンサと共に振動回路において動作されることが多い。このような振動回路のエネルギ消費は一般的に、アクセスおよびスタートシステムの全体消費電力を可能な限りに少なく維持するため、可能な限りに高いQおよび正確な周波数調整によって低く維持される。消費電力が少ないことは、例えば、そうでなければ車両の停車時間が比較的長い場合に車両バッテリが迅速に放電してしまい得るというような理由だけからも望ましい。しかしながら高いQ(良度)は、伝送データ速度を制限し、Qが高い場合には正確な同調にはいくらかのコストがかかる。したがって流通している装置は、データ速度と、コストと、エネルギ消費との間の不十分な妥協の産物なのである。
【0004】
本発明の課題は、上記の点に関して改善されたインダクタ用ドライバ回路を提供することである。さらに本発明では、インダクタを動作させる改善された方法と、振動回路を備えた改善されたアクティブ送信装置とを提供する。
【0005】
この課題は、請求項1に記載したインダクタ用ドライバ回路、ないしは、請求項12に記載したインダクタを動作させる方法、ないしは、請求項19に記載したアクティブ送信装置によって解決される。
【0006】
本発明によるインダクタ用ドライバ回路は、コンデンサと、このコンデンサに対して基準電圧を供給する2つの入力路と、インダクタをコンデンサに接続する2つの出力路とを有する。さらにドライバ回路は、2つの入力路の1つに接続されている第1の制御可能なスイッチと、2つの出力路の1つに接続されている第2の制御可能なスイッチとを有する。ここでは電流測定装置が、2つの出力路の1つに接続されており、かつ、インダクタを流れる電流を測定するように構成されている。電流測定装置に後置接続されているスイッチ制御装置は、インダクタを流れる電流を評価し、かつ、まず第2スイッチを開いて第1スイッチを閉じて、コンデンサを基準電圧で充電し、つぎに第1スイッチを開きかつ第2スイッチを閉じて、インダクタを介してコンデンサを振動的に放電させるように構成されている。第2スイッチは、インダクタを流れる電流が、完全な一振動周期またはその倍数を走破し終わった場合にはじめて再度開かれる。
【0007】
本発明によるドライバ回路の利点は、接続および調整のためのコストが小さく、電流消費が少なく、障害信号放出が比較的少なく、またディメンジョニングの許容差の影響を比較的受けにくいことである。
【0008】
さらに電流制限部または電流印加部を第1スイッチに直列接続することができるため、コンデンサ、スイッチまたは基準電圧源に過負荷が加わることがなく有利である。
【0009】
スイッチ制御装置は、測定した電流のゼロクロスを検出して、2つのゼロクロスの2個分または整数倍の後、第2スイッチが開かれるように構成することができる。ゼロクロスの検出は、振動周期の終了を確定する簡単かつ効果的な選択肢である。
【0010】
スイッチ制御装置は、変調信号用の変調入力側を有し、かつ、第1スイッチおよび第2スイッチのスイッチサイクルを変調信号に依存して制御し、これによって有利にも多様な応用の選択肢が含まれるように構成することができる。
【0011】
スイッチ制御装置はさらに、アンテナ電流の位相シフトキーイング変調または振幅シフトキーイング変調または周波数シフトキーイング変調を実行するように構成することができる。スイッチ制御装置により、変調時に1の効果的なQが得られ、これに対して振動回路は、高いQで、ひいてはエネルギを大きく節約して動作される。
【0012】
少なくとも第1スイッチおよび第2スイッチは、制御可能な半導体素子として構成することが可能であり、これにより、比較的高いスイッチング周波数であっても簡単かつ少ないコストでスイッチング過程を実行することができる。
【0013】
電流測定装置は、オーム抵抗として構成することができ、これによって簡単かつ少ないコストで電流を測定することができる。
【0014】
しかしながら電流測定装置は、電流測定が望ましくないかまたは実践的でない場合、コンデンサにおける電圧の微分を評価するように構成することも可能である。
【0015】
コンデンサおよびインダクタによって構成される振動回路は有利には、伝送のために設けられる搬送周波数よりも高い共振周波数を有する。この共振周波数は、例えば、伝送のために設けられた搬送周波数よりも5〜30%だけ高くすることができる。
【0016】
第3の制御可能なスイッチは、コンデンサに並列接続することができ、この第3スイッチは、ドライバ回路を非活性化するため、第3スイッチによってコンデンサが短絡されるように制御されることが可能である。これにより、非活性状態において、コンデンサに所定の電圧、例えば0Vを印加することができ、有利である。
【0017】
上記の課題はさらに、つぎのようなインダクタを動作させる方法によって解決される。ここでは充電電流を用いてコンデンサを基準電圧に充電し、充電したこのコンデンサを、インダクタを介して振動的に放電し、インダクタを流れる電流が、完全な一振動周期またはその整数倍を走破し終わった場合に放電を完了する。このような方法は、極めて効率的であり、かつ、実行の際にわずかなコストしか要しない。
【0018】
過電流から保護するため、上記のコンデンサの充電電流を制限または印加することも可能である。
【0019】
本発明による方法ではさらに、測定した電流のゼロクロスを検出することができ、2つのゼロクロスの2個分または整数倍の後、コンデンサの放電を終了する。ゼロクロスの検出は、振動周期の終了を確定するための簡単かつ効率的な選択肢である。
【0020】
特に送信装置として使用する際、コンデンサの充電および放電サイクルは、変調信号に依存して制御することができる。
【0021】
ここでは、変調信号に基づいて位相シフトキーイング変調または振幅シフトキーイング変調または周波数シフトキーイング変調を実行することができる。充電および放電サイクルは、1の効率的なQで変調が行われるが、振動回路が高いQで動作されて、これがエネルギを大いに節約して行われるように構成することができる。
【0022】
電流測定のため、択一的にコンデンサにおける電圧の微分を評価することも可能である。
【0023】
コンデンサはさらにドライバ回路を非活性化するため、また場合によっては過電流から保護するためにも、電流制御部または電流印加部を用いて短絡させることができ、これによってこの非活性状態においてコンデンサは所定の状態になる。
【0024】
上記の課題はさらに、誘導アンテナと、コンデンサと、基準電圧とを備えたアクティブ送信装置によって解決される。この送信装置にはさらに、基準電圧とコンデンサとの間に接続された2つの入力路と、誘導アンテナとコンデンサとの間に接続された2つの出力路とが含まれている。2つの入力路の1つには第1の制御可能なスイッチが、また2つの出力路の1つには第2の制御可能なスイッチが接続されている。さらに電流測定装置が、2つの出力路の1つに接続されており、かつ、誘導アンテナを流れる電流を測定する。電流測定装置に後置接続されているスイッチ制御装置は、誘導アンテナを流れる電流を評価し、かつ、まず第2スイッチを開いて第1スイッチを閉じて、コンデンサを基準電圧に充電し、つぎに第1スイッチを開きかつ第2スイッチを閉じて、誘導アンテナを介してコンデンサを振動的に放電させるように構成されており、このアンテナを流れる電流が、完全な一振動周期またはその倍数を走破し終わった場合に第2スイッチがはじめて再度開かれる。このようなアクティブ送信装置は、例えば、PASE(Passive Start Entry)システムのようなキーレス車両アクセスおよびスタートシステムに有利に使用することができる。
【0025】
以下では、図面の複数の図に示した実施例に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】LF信号用アクティブ送信装置として応用された例示的なインダクタ用ドライバ回路の回路図である。
【
図2】複数のスイッチの制御信号および変調信号に関連して、ドライバ回路のコンデンサの両端電圧の経過を示す線図である。
【
図3】搬送周波数を基準にして、種々異なる共振周波数におけるドライバ回路のコンデンサの両端電圧の経過を示す線図である。
【
図4】
図3の電圧経過に対応して、アンテナを流れる電流の経過を示す線図である。
【
図5】従来の矩形動作時、および、本発明によるドライバ回路の使用時に形成される複数の高調波を比較する線図である。
【
図6】バイフェーズシフトキーイング変調時のアンテナ信号の経過を示す線図である。
【
図7】振幅シフトキーイング変調時のアンテナ信号の経過を示す線図である。
【
図8】周波数シフトキーイング変調時のアンテナ信号の経過を示す線図である。
【0027】
図1には、インダクタ用ドライバ回路の一実施例が示されており、このインダクタは、本発明において、アクティブ送信装置として応用される際には、例えばフェライトバーアンテナのような誘導アンテナ1によって得られる。誘導アンテナ1は、
図1に示したように、純粋なインダンクタンス分2および抵抗分3からなる電気直列回路によって等価的に表すことができる。ここではまずコンデンサ4が、アースMを基準にした基準電圧Urを供給するための2つの入力路と、誘導アンテナ1と接続するための2つの出力路とに接続されている。また第1の制御可能なスイッチ5が、この2つの入力路の上側に接続されている。このスイッチは択一的には、この2つの入力路の下側に接続することも可能である。
【0028】
スイッチ5とは直列にオーム抵抗6が接続されており、このオーム抵抗は、入力路における電流制限に使用される。オーム抵抗6の代わりに電流源または別のタイプの電流印加部または電流制限部を使用することも可能である。第2の制御可能なスイッチ7が、2つの出力路の上側に接続されており、また、誘導アンテナ1を流れる電流Iaを測定するための測定抵抗として、すなわち電流測定装置として使用されるオーム抵抗8が2つの入力路の下側に接続されている。択一的にはスイッチ7および抵抗8を、それぞれ同じ1つの入力路に配置することもできるし、又は、それぞれの入力路を互いに入れ替えることも可能である。電流測定のために択一的には、コンデンサ(4)における電圧の微分を評価することも可能である。
【0029】
ドライバ回路にはスイッチ制御装置9がさらに含まれており、このスイッチ制御装置は、抵抗8を流れる電流Iaに比例し、ひいてはアンテナ1を流れる電流に比例する電圧を抵抗8の両端で取り出して評価し、例えば電流Iaのゼロクロスを求める。第2スイッチ7が開いている場合、スイッチ制御装置9の制御下で、制御信号S1によって第1スイッチ5が閉じられ、これによってコンデンサ4が基準電圧Urに充電される。引き続いて第1スイッチ5が開かれ、かつ、第2スイッチ7が制御信号S2によって閉じられ、これによって誘導アンテナ1を介してコンデンサ4を振動的に、すなわち、少なくとも1つの完全な一振動を行って放電する。ここで第2スイッチ7は、誘導アンテナ1を流れる電流Iaが、完全な一振動周期(またはその複数倍)を走破し終わった場合にはじめて再度開かれる。スイッチ制御装置9はさらに、変調信号MOD用の変調入力側を有する。これについては以下でさらに詳しく説明する。
【0030】
オプションではさらに第3の制御可能なスイッチ10を、場合によって直列接続されるダイオード11と共に、コンデンサ4に直接または(図示のように)抵抗6を介して並列接続することができ、ここでこのスイッチ10は、これが、コンデンサ4を短絡して、すなわち放電して、このドライバ回路を非活性化するように制御信号S3によって制御される。
【0031】
この実施例では、制御可能なスイッチ5,7および10として電界効果トランジスタ、特にMOS電界効果トランジスタ(MOSは、酸化金属半導体"Metall Oxide Semiconductor"という用語の略語である)を使用し、制御可能なスイッチ5は、pチャネルタイプのMOS電界効果トランジスタであるのに対し、制御可能なスイッチ7および10はnチャネルタイプである。図示した(それぞれの導電形の)MOS電界効果トランジスタの他に、適切に制御可能なスイッチの、特に制御可能な半導体スイッチの他のあらゆるタイプも、いうまでもなく対応するドライバ、ブートストラップ回路、チャージポンプなどに関連して使用することができる。
【0032】
図2には、バイフェーズシフトキーイング変調(BPSK変調)の場合に対し、制御信号S1,S2およびS3に依存した、コンデンサ4における電圧Ucの時間tについての経過が示されている。まずはじめに時点T0において、例えば0Vから基準電圧Urまでのコンデンサ4の最初の充電が開始され、これに対応してコンデンサ4の両端の電圧Ucが、例えば0Vから基準電圧Urまで(この場合には指数関数的に)増大する。フルの充電は時点T1において達成される。諸動作条件に小さな差異が生じる場合であってもフルの充電を保証するため、充電のために閉じられる第1スイッチ5(スイッチ7は開)と、振動的な放電のために閉じられる第2スイッチ7(スイッチ5は開)との間の切換が、時点T1よりもやや遅れて、すなわち時点T2に行われる。
【0033】
これにより、時点T2にコンデンサ4の振動的な放電のフェーズが開始される。これに相応して、コンデンサ4の両端で電圧Ucが(ここでは余弦波状に)再度降下し、まずゼロに達し、つぎにコンデンサ4とアンテナ1とによって構成される振動回路の特性に対応して、時点T3に、Qに依存する振幅によって負の最大値に達し、つぎに時点T4に、ここでもQに依存する振幅によって相対的な正の最大値に向かって再度接近して増大する。この正の最大値は確かに程度の差はあるもののほぼ基準電圧Urに等しいが、いずれにせよこの基準電圧よりも小さい。振動的な放電フェーズ中、アンテナ1は電磁信号を送出する。つぎに時点T4にリチャージフェーズがはじまり、ここではフルの充電が時点T5に得られる。しかしながら充電から振動的な放電への切り換えはここでも、上ですでに説明した理由からやや遅れた時点T6に行われる。その後、ここでも振動的な放電フェーズが、時点T7における負の最大値への到達を含めて、時点T8まで行われる。
【0034】
その後、時点T8からはじめて新たなリチャージフェーズが続き、ここでは時点T9にフルの充電に到達する。しかしながらその後には時点T11までの比較的長い待機時間が続く。この待機時間は、BPSK変調による180°の位相シフトが原因である。比較のため、
図2にはさらに1つの時点T10が書き込まれており、これは、時点T10とT11との間の最小の待機時間を示す。時点T11からは再び、時点T12における負の最大値を有する振動的な放電が時点T13まで行われる。その後、時点T14までリチャージがさらに行われるが、このリチャージは、スイッチ10を用いた時点T14におけるドライバ回路の非活性化に起因して、ほぼ0V(場合によってはダイオード11の両端のダイオード電圧)への最終的な放電によって中断される。
【0035】
スイッチ5,7および10のスイッチング特性に対応して、制御信号S1は各充電フェーズ中(時点T0〜T1,T4〜T6,T8〜T1,T13〜T14)の間、レベルHにあり、制御信号S2は差し当たってはレベルLにある。それぞれ後続の放電フェーズ(時点T2〜T4,T6〜T8,T11〜T13)において制御信号S1はレベルLに、また制御信号S2はレベルHに移行する。制御信号S3は、時点T14における最後の放電時までレベルLにあり、つぎにレベルHになる。よりわかりやすくするため、
図2に示した実施例では基本的に、レベルHは閉じられたスイッチ(導通)を、またレベルLは開いたスイッチ(非導通)を表すものとする。しかしながら実際に使用される個々またはすべてのスイッチのタイプおよびその固有の信号スイッチング配置に依存して、これとは異なる実際の駆動制御信号が生じ得る。
【0036】
図2に示した、コンデンサ4の両端電圧Ucの経過を生じさせる変調信号MODも
図2に示されている。変調信号MODは時点T2までレベルHであり、つぎに時点T3までレベルLであり、時点T3にレベルHになり、時点T4までレベルLであり、時点T4から時点T6までレベルHであり、時点T6から時点T8までは、時点T7におけるレベルHを除いてレベルLであり、時点T8から時点T11まではレベルHであり、時点T11から時点T13までは時点T13におけるレベルHを除いてレベルLである。これにより、変調信号MODは実質的に、コンデンサ4の充電フェーズおよびコンデンサ4における電圧Ucの負の最大値が発生する際にレベルHであり、その他の場合にはレベルLである。
【0037】
図3には、コンデンサ4における電圧Ucの時間tについての経過が、異なる2つの共振周波数F1およびF2において再度詳細に示されており、ここでは共振周波数F1は、所望の搬送周波数を5%上回り、共振周波数F2は、所望の搬送周波数を30%上回る。
図4には、これらにそれぞれ対応する電流経過Iaが、2つの共振周波数F1およびF2に対し、時間tについて示されており、この電流経過は、例えば抵抗8において示されるものである。予想されるように各電圧および電流間の位相シフトは約90°であった。
【0038】
図5には、アンテナ1によって放出される信号のスペクトルにおいて発生する高調波が、周波数Fについて、これらの高調波の振幅Aとして略示されており、ここでは2つのケースについて(図示しない)同じ振幅を有する基本振動を想定している。ここからわかるように、本発明による方法は、矩形信号による公知の方法に比べ、高調波が寄与するエネルギが格段に好適である。すなわち、ここでは障害エネルギがあまり形成されず、ひいては電磁両立性(EMC electromagnetic compatibility)がより有利であり、さらに
図1に示した回路からわかるように同時にコストが一層小さく有利である。アンテナの矩形状の動作時には、奇数次の高調波だけが形成されるのに対し、本発明では偶数次の高調波も奇数次の高調波も共に形成される。本発明のドライバ回路の好適な特性は、アンテナ1を流れる電流Iaが広い範囲にわたって正弦波状であり、正弦波状の振動過程間のリチャージ中の中断だけが、高調波成分の形成に寄与することによって得られる。基本振動および高調波の振幅は、アンテナ共振周波数と搬送周波数との間の関係によって変化する。
【0039】
図2に示した例では、BPSK変調を仮定した。時間tについて振幅Aとして得られるこれに対する送信信号は、
図6に詳細に示されている。択一的には別の多くの変調方式、例えば対応する送信信号が
図7に示されているASK変調(ASKは"Amplitude Shift Keying"を表す)、または対応する送信信号が
図8に示されているFSK変調(FSKは"Frequency Shift Keying"を表す)も同様に好適である。
【0040】
BPSK変調は、本発明のドライバ回路において、伝送すべき論理値に依存して180°位相シフトが搬送信号に挿入されることを意味する。例えば、論理値Lに対して0°の位相シフトを、また論理値Hに対して180°の位相シフトを行うことができる。本発明のドライバ回路では、180°の位相シフトは、それぞれ関係する放電過程を、対応する時間だけ遅延して実行することによって行われる。本発明のドライバ回路では良度係数Qはいずれにせよ高いが、BPSK変調が直ちに形成されるため、良度係数Qは1に等しくなる。これにより、損失エネルギは極めて小さくなる。なぜならばコンデンサ4およびアンテナ1から構成される共振回路は、上記の変調のために放電しなくてもよいからである。
【0041】
ASK変調では、伝送すべき論理値に依存して異なる2つの振幅を形成する。特別な形態であるOOK(On-Off Keying)では、これらの2つの振幅値の1つは、ゼロであり、別の1つは例えば最大値である。本発明のドライバ回路に関連して、変調のこの特殊な方式により、例えば論理値Lを伝送しようとする場合にアンテナ1は全時間にわたって遮断されたままになり、その他の場合に論理値Hを伝送しようとする時にはアンテナ1は導通される。このことは、n個の搬送周期の持続時間に対してn回の360°の位相シフトに対応する。この場合にも良度係数は1であり、ここでも変調のためにシステムからエネルギが取り去られることはない。
【0042】
FSK変調では、論理値毎に固有の搬送周波数が設けられる。本発明のドライバ回路では、このために各放電フェーズの後、対応する位相シフトを挿入し、これによって通常の搬送周波数よりも低い搬送周波数が形成される。この場合にもQは1であり、ここでも変調のためにエネルギがシステムから取り去られることはない。
【0043】
本発明によるドライバ回路および本発明によるアクティブ送信装置の利点は、伝送品質を損なうことなく、かつ、固有の良度係数Qを必要とすることなく高い振動回路良度係数Qを達成できることと、EMC放出を比較的低くすることと、損失出力を極めて小さくすることと、マルチプレクサを使用することにより、異なる複数のアンテナを同じドライバによって動作させることもできることとである。
【符号の説明】
【0044】
1 アンテナ、 2 純粋なインダクタンス分、 3 純粋な抵抗分、 4 コンデンサ、 5 第1の制御可能なスイッチ、 6 電流制限部、抵抗、 7 第2の制御可能なスイッチ、 8 電流測定装置、抵抗、 9 スイッチ制御装置、 10 第3の制御可能なスイッチ、 11 ダイオード、 A 振幅、 f 周波数、 F1 共振周波数、 F2 共振周波数、 H レベル、 Ia 電流、 L レベル、 M アース、 MOD 変調信号、 Q 良度係数、 S1 制御信号、 S2 制御信号、 S3 制御信号、 t 時間、 T0〜T14 時点、 Uc コンデンサ電圧、 Ur 基準電圧、