(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231210
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】牽引車両のためのベクトルベースのドライバアシスタンス
(51)【国際特許分類】
B62D 13/00 20060101AFI20171106BHJP
B62D 53/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
B62D13/00
B62D53/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-532041(P2016-532041)
(86)(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公表番号】特表2017-502867(P2017-502867A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014066096
(87)【国際公開番号】WO2015074027
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】61/905,677
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー アレン ボッチェネック
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン チャールズ ディードリック
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジェアク
【審査官】
神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−060499(JP,A)
【文献】
特表2006−527359(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0231701(US,A1)
【文献】
特開平07−017428(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/087022(WO,A1)
【文献】
特開2008−273504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 9/00 − 15/02
B62D 41/00 − 67/00
B60D 1/00 − 99/00
B60W 10/00 − 50/16
B60T 7/12 − 8/1769
B60T 8/32 − 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーラ連結器を介してトレーラを牽引するホスト車両のためのドライバアシスタンスシステムであって、
前記ホスト車両の後部近傍における前記トレーラ連結器から横方向に向かって所定距離にある箇所での、前記ホスト車両に関する速度ベクトルを求める手段と、
前記トレーラの前部近傍における前記トレーラ連結器から横方向に向かって前記所定距離と同一の距離にある箇所での、前記トレーラに関する速度ベクトルを求める手段と、
前記ホスト車両に関する速度ベクトルを、前記トレーラの速度ベクトルと比較する手段と、
前記ホスト車両の速度ベクトルと前記トレーラの速度ベクトルとの前記比較に基づき、ジャックナイフ状態が発生しようとしているか否かを特定する手段と、
ジャックナイフ状態が発生しようとしている場合には、警告信号を生成する手段と、
を備えていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
更に、
第1の車両センサと、
第2の車両センサと、
前記第1の車両センサからの信号に基づき、前記ホスト車両に関する第1のベクトルを求める手段と、
前記第2の車両センサからの信号に基づき、前記ホスト車両に関する第2のベクトルを求める手段と、
前記ホスト車両に関する前記第1のベクトル及び前記ホスト車両に関する前記第2のベクトルに基づき、前記ホスト車両に関する速度ベクトルを求める手段と、
を備えていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
前記第1の車両センサは、加速度センサを有しており、
前記加速度センサからの信号に基づき前記ホスト車両に関する加速度ベクトルを求めることによって、前記ホスト車両に関する前記第1のベクトルを求める手段を更に備えていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
前記第2の車両センサは、ステアリング角度センサを有しており、
前記ステアリング角度センサからの信号に基づき前記ホスト車両に関するステアリングベクトルを求めることによって、前記ホスト車両に関する前記第2のベクトルを求める手段を更に備えていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
前記ホスト車両に関する連結器ベクトルを求める手段と、
前記ホスト車両に関する連結器ベクトルに基づき、前記トレーラに関する連結器ベクトルを求める手段と、
前記ホスト車両の後部近傍に位置決め可能な後向きカメラと、
前記後向きカメラから、トレーラを含む画像を受信する手段と、
受信した前記画像に基づき、前記ホスト車両に相対的な前記トレーラのトレーラ角度を求める手段と、
求められた前記トレーラ角度に基づき、前記トレーラに関する中心トレーラベクトルを求める手段と、
前記トレーラに関する連結器ベクトル及び前記トレーラに関する中心トレーラベクトルに基づき、前記トレーラに関する速度ベクトルを求める手段と、
を更に備えていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
更に、前記ホスト車両に関する速度ベクトルと前記トレーラに関する速度ベクトルとの差が、所定の期間にわたり一定のままであれば、前記トレーラは一様に前記ホスト車両に追従していることを特定する手段を備えていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
更に、前記ホスト車両に関する速度ベクトルと前記トレーラに関する速度ベクトルとの差が0であれば、前記ホスト車両及び前記トレーラは直線を移動していることを特定する手段を備えていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
更に、
ユーザ出力装置と、
前記ホスト車両に関する速度ベクトルと前記トレーラに関する速度ベクトルとの差を表す信号を前記ユーザ出力装置に供給する手段と、
を備えていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
前記ユーザ出力装置は、前記ホスト車両に関する速度ベクトルと前記トレーラに関する速度ベクトルとの差を表す前記信号に基づき、前記ホスト車両のドライバに車両運転指示を供給するように構成されていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
更に、
ユーザ出力装置と、
前記ジャックナイフ状態が発生しようとしている場合には、前記ユーザ出力装置に伝送するための前記警告信号を生成する手段と、
を備えていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のドライバアシスタンスシステムであって、
前記ユーザ出力装置は、前記警告信号の受信に応答して、視覚的な警告、音響的な警告及び触覚的な警告から成る群から少なくとも一つ選択された出力を供給するように構成されていることを特徴とするドライバアシスタンスシステム。
【請求項12】
ホスト車両によってトレーラ連結器を介して牽引されるトレーラを監視する方法において、
前記ホスト車両の後部近傍における前記トレーラ連結器から横方向に向かって所定距離にある箇所での、前記ホスト車両に関する速度ベクトルを求めるステップと、
前記トレーラの前部近傍における前記トレーラ連結器から横方向に向かって前記所定距離と同一の距離にある箇所での、前記トレーラに関する速度ベクトルを求めるステップと、
前記ホスト車両に関する速度ベクトルを、前記トレーラの速度ベクトルと比較するステップと、
前記ホスト車両の速度ベクトルと前記トレーラの速度ベクトルとの前記比較に基づき、ジャックナイフ状態が発生しようとしているか否かを特定するステップと、
ジャックナイフ状態が発生しようとしている場合には、警告信号を生成するステップと、
を備えていることを特徴とする、トレーラを監視する方法。
【請求項13】
ホスト車両によってトレーラ連結器を介して牽引されるトレーラを監視する方法において、
前記ホスト車両の後部近傍における前記トレーラ連結器から横方向に向かって所定距離にある箇所での、前記ホスト車両に関する速度ベクトルを求めるステップと、
前記トレーラ連結器の箇所における前記ホスト車両に関する連結器ベクトルを求めるステップと、
前記ホスト車両に関する連結器ベクトルに基づき、前記トレーラ連結器の箇所における前記トレーラに関する連結器ベクトルを求めるステップであって、前記トレーラに関する連結器ベクトルは、前記トレーラ連結器の箇所における前記ホスト車両と前記トレーラとの間の機械的な結合に起因して、前記ホスト車両に関する連結器ベクトルと同等である、ステップと、
前記ホスト車両に位置決めされた後向きカメラによって収集された画像データに基づき、前記トレーラのトレーラ角度を求めるステップと、
前記トレーラの前部近傍における前記トレーラ連結器から横方向に向かって前記所定距離と同一の距離にある箇所での、前記トレーラに関する速度ベクトルを求めるステップであって、前記トレーラに関する速度ベクトルは、前記トレーラに関する連結器ベクトル及び求められた前記トレーラ角度に基づき求められる、ステップと、
前記ホスト車両に関する速度ベクトルを、前記トレーラに関する速度ベクトルと比較するステップと、
前記比較に基づき、前記ホスト車両に相対的な前記トレーラの移動を表す出力信号を生成するステップと、
を備えていることを特徴とする、トレーラを監視する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2013年11月18日に出願された、発明の名称「後退アシスタンスシステム及び方法(BACK-UP ASSISTANCE SYSTEMS AND METHODS)」の米国仮出願特許第61/905,677号の利益を主張するものであり、その開示内容全体は参照により本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
対象物(例えば他の車両、トレーラ、バイクラック、貨物運搬車等、以下では「トレーラ」と称する)を牽引する際には、一般的に、トレーラが牽引車両に追従すること(例えば、牽引車両と同じ経路を辿ること)が所望される。しかしながら、望ましくない危険な状況、例えば、ジャックナイフ状態が生じていること、又は、ジャックナイフ状態が生じ始めていることをドライバが認識することが困難な場合もある。
【発明の概要】
【0003】
概要
本発明の実施の形態は、トレーラを牽引する車両によって種々の操作を行うドライバを支援するための方法及びシステムに関する。例えば、種々の実施の形態は、ベクトルベースの監視技術を使用して、後退操作を実行している間の反対の運転状態を検出する。特に、いくつかの実施の形態は、ジャックナイフ状態(即ち、牽引車両/ホスト車両とトレーラとがV字の形状を成し始めること)を検出し、牽引車両のドライバに警告を発する。
【0004】
本発明のいくつかの実施の形態は、牽引車両のベクトル及び牽引されるトレーラのベクトルを使用して、車両とトレーラとの間の相対運動についての情報をドライバに提供するための方法及びシステムを提供する。ベクトルは、例えば牽引車両のステアリングホイール角度、移動データ(例えば位置、速度、加速度、ヨー等)の監視情報及びカメラ画像データに基づき求められる。牽引車両及びトレーラが同一のカーブに沿って移動しているとき、トレーラが直線を移動しているとき、所望のトレーラ軌跡を達成するために牽引車両をどのように操作するかを通知するとき、また、ジャックナイフ状態が発生しようとしているときに、ドライバに情報を提供することができる。例えば、ベクトルはドライバによる後退操作の実行を支援するために使用することができる。
【0005】
一つの実施の形態においては、本発明は、トレーラを牽引するホスト車両のためのドライバアシスタンスシステムを提供する。このシステムは、プロセッサと、システム機能を提供するためにプロセッサによって実行される命令を記憶するメモリと、を有している。システムは、ホスト車両に取り付けられているトレーラ連結器からの横方向の所定の距離にあるホスト車両の後部近傍の箇所での、ホスト車両に関する速度ベクトルを求める。またシステムは、トレーラ上の対応する箇所での、つまり、トレーラ連結器からのほぼ同一の横方向の所定の距離にあるトレーラの前部の箇所での、トレーラに関する速度ベクトルを求める。システムは、ホスト車両に関する速度ベクトルを、トレーラに関する速度ベクトルと比較し、その比較に基づき、ジャックナイフ状態が発生しようしているか否かを特定する。ジャックナイフ状態が発生しようとしている場合には、システムは警告信号を生成する。
【0006】
別の実施の形態においては、本発明はトレーラを監視するための方法を提供する。ホスト車両に取り付けられているトレーラ連結器からの横方向の所定の距離にあるホスト車両の後部近傍の箇所において、ホスト車両に関する速度ベクトルが求められる。トレーラ上の対応する箇所での、即ち、トレーラ連結器からのほぼ同一の横方向の所定の距離にあるトレーラの前部の箇所において、トレーラに関する速度ベクトルも求められる。ホスト車両に関する速度ベクトルは、トレーラに関する速度ベクトルと比較され、その比較に基づき、潜在的なジャックナイフ状態が検出される。潜在的なジャックナイフ状態が検出されると、警告信号が生成される。
【0007】
更に別の実施の形態においては、本発明はトレーラを監視するための別の方法を提供する。ホスト車両に取り付けられているトレーラ連結器からの横方向の所定の距離にあるホスト車両の後部近傍の箇所での、ホスト車両に関する速度ベクトルが求められる。トレーラ連結器の箇所での、ホスト車両に関する連結器ベクトルも求められる。トレーラ連結器におけるホスト車両とトレーラとの間の機械的な結合に起因して、トレーラに関する連結器ベクトルは、ホスト車両に関する連結器ベクトルと実質的に同等であり、またホスト車両に関する連結器ベクトルに基づき求めることができる。トレーラのトレーラ角度は、ホスト車両に位置決めされた後向きカメラによって収集された画像データに基づき求められ、また、速度ベクトルは、トレーラ連結器から横方向の所定の距離にあるトレーラの前部近傍の箇所におけるトレーラに関して求められる。トレーラに関する速度ベクトルは、トレーラに関する連結器ベクトル及び求められたトレーラ角度に少なくとも部分的に基づき求められる。ホスト車両に関する速度ベクトルは、トレーラに関する速度ベクトルと比較され、その比較に基づき、ホスト車両に相対的なトレーラの移動を表す出力信号が生成される。
【0008】
本発明の別の態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面を考察することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】牽引車両及びトレーラの種々のベクトルが示されている、牽引車両及びトレーラの俯瞰図を示す。
【
図2】同一のカーブに沿って移動する、牽引車両及びトレーラの俯瞰図を示す。
【
図3】一つの実施の形態によるドライバアシスタンスシステムの概略図を示す。
【
図4】
図3のシステムによって実施されるトレーラを監視するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明の各実施の形態の詳細な説明に先立ち、本発明は、下記に説明され又は添付の図面に示したコンポーネントの構造及び構成の細部に対して適用されることに限定されるものではないと理解されたい。本発明のその他の実施の形態も考えられ、実施することができ、又は、本発明を種々の手法で実施することができる。
【0011】
即ち、本明細書において使用される語句及び用語は説明を目的としたものであって、制限を課すものとみなされるべきではないと理解されるべきである。本明細書における「含んでいる」、「備えている」又は「有している」及びそれらの変形の使用は、下記に挙げるアイテム及びそれらのアイテムと等価のアイテム、また付加的なアイテムを包含していることを意味している。「取り付けられている」、「接続されている」及び「結合されている」という語句は広範に使用されており、また、直接的な取り付け、接続及び結合も、間接的な取り付け、接続及び結合も包含している。更に「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されておらず、直接的であるか間接的であるかは問わず、電気的な接続又は結合も含んでいる。また、電気的な通信及び通知も、直接的な接続、無線による接続等を含む既知のいずれかの手段を使用して実施することができる。
【0012】
ハードウェア及びソフトウェアを基礎とする複数の装置、並びに、構造が異なる複数のコンポーネントを、本発明を実施するために利用できることに言及しておく。また、ハードウェア及びソフトウェアを基礎とする複数の装置、並びに、構造が異なる複数のコンポーネントを、本発明を実施するために使用できることにも言及しておく。更に、本発明の複数の実施の形態は、ハードウェア、ソフトウェア及び複数の電子コンポーネント又はモジュールを含むことができるが、検討のために、それらのコンポーネントの大部分があたかもハードウェアにおいてのみ実施されているように図示及び説明されていることを理解されたい。もっとも当業者であれば、この詳細な説明を読むことによって、少なくとも一つの実施の形態において、本発明の態様を基礎とする電子機器を、一つ又は複数のプロセッサによって実行可能な(例えば非一時的なコンピュータ読み出し可能媒体に記憶されている)ソフトウェアとして実施できることが分かる。そのようにして、ハードウェア及びソフトウェアを基礎とする複数の装置、並びに、構造が異なる複数のコンポーネントを、本発明を実施するために利用できることに言及しておく。例えば、本明細書に記載されている「制御ユニット」及び「制御装置」は、標準的な処理コンポーネント、例えば一つ又は複数のプロセッサ、非一時的なコンピュータ読み出し可能媒体を含む一つ又は複数のメモリモジュール、一つ又は複数の入力/出力インタフェース、及び、コンポーネント同士を接続する種々のコネクション(例えばシステムバス)を含むことができる。
【0013】
移動する対象物の挙動、例えば車両の挙動を、対象物上の種々の点における複数のベクトルによって規定することができる。
図1には、後退操作を実施している、トレーラ連結器105においてトレーラ103に結合されている牽引車両101が示されている。ホスト車両101の挙動を、そのホスト車両101上の異なる点にそれぞれ位置決めされている(即ち、それらの点を原点とする、又は、それらの点に関連付けられている)種々のベクトルによって表すことができる。例えば
図1に示されているように、第1のベクトル107は、ホスト車両101の中心に位置決めされており(即ち中心を原点とし)、第2のベクトル109は、トレーラ連結器結合部に位置決めされており、また、第3のベクトル111は、トレーラ連結器105から所定の距離を置いて、ホスト車両101の後部側の所定の箇所に位置決めされている。
【0014】
それらのベクトルを、観測された車両オペレーティングパラメータ、例えば、加速度情報、速度情報及びステアリング角度情報に基づき求めることができる。この情報を、車両に取り付けられたセンサによって、又は、イメージデータを収集するように位置決めされたカメラ113によって求めることができる。
【0015】
更に、空間内を移動する固定の寸法の物体については、対象物上の2点に関する既知のベクトルに基づき、その他のベクトルを求めることができる。従って、(例えば下記において更に詳細に説明するような)システムが、測定/観測された車両データに基づき第1のベクトル107及び第2のベクトル109を求めるように構成されている場合には、第3のベクトル111を、第1のベクトル107及び第2のベクトル109に基づき求めることができる。
【0016】
図1のホスト車両101はまた、トレーラ103の移動を特徴付ける種々のベクトルを求めるようにも構成されている。例えば、ホスト車両101は連結器105においてトレーラ103に機械的に結合されているので、ホスト車両の連結器ベクトル109は一般的にトレーラの連結器ベクトルと同一である。更に、
図1の実施例におけるホスト車両101には、そのホスト車両101に相対的なトレーラ103の位置及び向きを監視するように構成されている、後向きカメラ113が装備されている。この情報に基づき、トレーラのトレーラ角度(α)を求めることができ、また、その他のトレーラベクトル115を求めることができる。
【0017】
トレーラ103もまた、空間内を移動する固定の寸法の対象物であるので、二つのベクトル109,115を、トレーラ103の移動を特徴付けるその他のベクトルを求めるために使用することができる。例えば、第2のトレーラベクトル117を、トレーラ103の後部において求めることができる。トレーラの揺動はトレーラの後部において最も顕著なので、この情報は有用であると考えられる。更に、別のベクトル119をトレーラの前部の所定の箇所において求めることができる。
【0018】
この実施例に関して以下において更に検討するように、このトレーラベクトル119は、トレーラ連結器105からの第1の所定の直線距離に位置決めされた速度ベクトル(V
T)である。トレーラ速度ベクトルV
Tは、ホスト車両上の対応する箇所に位置決めされたホスト車両速度ベクトル(V
V)に相当する。より詳細には、ホスト車両速度ベクトルV
Vは、トレーラ連結器105から同一の直線距離に位置決めされている(即ちベクトル111)。
【0019】
下記において説明するシステム及び方法は、ホスト車両101に相対的なトレーラ103の移動を特徴付けるために、トレーラ速度ベクトルV
Tをホスト車両速度ベクトルV
Vと比較する。例えば、
図2の状況において、ホスト車両101及びトレーラ103は一定のカーブに沿って一様に移動している。従って、ホスト車両速度ベクトルV
V及びトレーラ速度ベクトルV
Tは実質的に同じ(即ちほぼ同一)である。更に、一様な移動を続けている間は、ホスト車両速度ベクトルV
Vとトレーラ速度ベクトルV
Tとの差は一定に維持される。二つの速度ベクトル間のこの同一性は、車両及びトレーラが直線を移動(前進又は後退)しているときにも存在する。
【0020】
しかしながら、ホスト車両101が後退している場合、トレーラ103はホスト車両101と同じ経路を辿らないことが多い。いくつかのケースにおいては、この後退運動によって、ホスト車両101とトレーラ103がV字の形状を成す、ジャックナイフシナリオが生じる。トレーラジャックナイフの極端なケースでは、トレーラ103、ホスト車両101及びトレーラ連結器結合部105が損傷する可能性もある。ジャックナイフシナリオが発生している場合、又はジャックナイフシナリオが発生しようとしている場合、ホスト車両速度ベクトルV
V及びトレーラ速度ベクトルV
Tはもはや同一ではなくなり、また差も一定には維持されなくなる。本明細書において開示されているシステム及び方法は、ホスト車両速度ベクトルV
Vとトレーラ速度ベクトルV
Tとの差を監視することによって、そのようなジャックナイフシナリオを検出し、また損傷が生じる前に車両のドライバに警告を発する。
【0021】
図3には、ホスト車両101及びトレーラ103の種々のベクトルを求め、またそれらのベクトルを監視するためのシステム300が示されている。制御装置301は、プロセッサ及びメモリを含んでいる。メモリは、本明細書において記載されているようなシステム300の機能を提供するためにプロセッサによって実行される命令を記憶している。制御装置301は、観測及び測定された車両パラメータを表す入力データを、例えば加速度センサ303、速度センサ305を含む種々のセンサ及びカメラ309から受信する。制御装置301は入力データを解析し、重要なベクトルを求め/監視し、出力信号をユーザ出力装置311に供給する。種々の構成において、このユーザ出力装置311は、例えば、可聴の出力を提供するスピーカ、視覚的な出力を提供する表示装置(LCD,LED、ワーニングライト等)又は触覚的なフィードバックを提供する振動機構を含むことができる。
【0022】
制御装置301は、一つ又は複数の処理ユニット(例えばプロセッサ、特定用途向け集積回路(「ASIC」)等)、非一時的なコンピュータ読み出し可能媒体、及び少なくとも一つの入力/出力インタフェースを含んでいる。制御装置は、入力/出力インタフェースを介して車両運転パラメータを取得する。いくつかの構成においては、それらの外部装置が専用の有線コネクションを介して入力/出力インタフェースと接続されているか、又は、コントローラエリアネットワーク通信バス(例えばCANバス)を介して入力/出力インタフェースと通信する。更に別の実施の形態においては、それらの装置のうちの一つ又は複数が制御装置301自体に組み込まれている。
【0023】
図4には、ホスト車両101及びトレーラ103に関連付けられた種々のベクトルを求めて監視するための、制御装置301によって実施される方法が示されている。制御装置301は、車両の連結器に関するベクトル109を計算する(ステップ401)。トレーラ連結器ベクトル109を、測定されたセンサデータに基づき直接的に求めることができ、又は、計算された他の二つの車両ベクトルに基づき間接的に求めることができる。制御装置301は、測定されたセンサデータ又は計算された他の二つの車両ベクトルに基づき、中心車両ベクトル107も求める(ステップ403)。先行して計算された二つの車両ベクトル(例えば中心車両ベクトル107及び連結器ベクトル109)に基づき、制御装置301は、後部車両速度ベクトルV
Vを求める(ステップ405)。
【0024】
制御装置301は、後向きカメラ113からのデータに基づきトレーラ角度(α)を求め(ステップ407)、また、そのトレーラ角度(α)に基づき中心トレーラベクトル115を求める(ステップ409)。中心トレーラベクトル115及び連結器ベクトル109を使用して、制御装置301は前部トレーラ速度ベクトルV
Tを求めることができる(ステップ411)。
【0025】
制御装置301は、車両速度ベクトル(V
V)とトレーラ速度ベクトル(V
T)とを比較する。それらのベクトルの差がほぼ0である場合(又は、0と所定の最小閾値の間にある場合)(ステップ413)、制御装置はトレーラが牽引車両の後方を追従していること(例えば直線状の経路又はカーブしている経路にいること)を推定する(ステップ415)。ベクトルの差が閾値よりも大きい場合(ステップ417)、制御装置301は、ジャックナイフ状態が発生しているか、差し迫っていることを推定し(ステップ419)、ユーザ出力装置311に伝送される警告信号を生成する。上述したように、視覚的な警告、聴覚的な警告、触覚的な警告又はそれらの組み合わせを提供するように、ユーザ出力装置を構成することができる。
【0026】
更に、いくつかの構成においては、制御装置301は、ホスト車両速度ベクトルV
Vがトレーラ速度ベクトルV
Tと同一でないが、差分は未だ閾値を超過していない場合には、予備的な警告信号を生成する(ステップ421)。いくつかの構成においては、この決定は、車両とトレーラ(又はそれらのラック)との間の検出された相対運動に基づき、連続的な信号をユーザ出力装置311に供給するために使用される。例えば、制御装置301は前述の差を使用して、牽引車両及びトレーラが同一のカーブに沿って移動しているとき、トレーラが直線を移動しているとき、また、ジャックナイフ状態が発生しようとしているときに、ドライバに情報を提供することができる。
【0027】
いくつかの構成においては、制御装置301が車両101及びトレーラ103の、
図4の方法において上記で説明した点及び図示した点とは異なる点に関するその他のベクトルを求めるように構成されていると解される。例えば、いくつかの構成においては、制御装置301は、トレーラの後部に沿った一点に関する少なくとも一つのベクトル(
図1におけるベクトル117)を求める。ジャックナイフ状態においては、トレーラの後部が先ず車両の経路からはずれると考えられる。従って、トレーラの後部に関するベクトルを計算し、そのベクトルを、ジャックナイフ状態が発生しようとしていることを識別するために使用するように、制御装置301を構成することができる。
【0028】
制御装置301によって計算されたベクトルは、所望のトレーラ軌跡を達成するためには牽引車両をどのように操縦するかをドライバに指示するために使用することができる。例えば、制御装置はドライバに対して指示(例えば視覚的な指示又は音響的な指示)を出力するように構成することができる。この指示は、トレーラの軌跡を所望の軌跡に変更するために、車両をどのように操縦すべきか(例えば、右又は左又は時計回り又は反時計回り)をドライバに指示する。いくつかの状況においては、所望の軌跡は(車両軌跡に関して)直線状の軌跡であって良い。別の状況においては、所望の軌跡は(車両軌跡に関して)非直線状の軌跡であって良い。例えば、いくつかの状況においては(例えばトレーラを駐車スペースに止めるために)、ドライバは車両及びトレーラを後退させることができ、且つドライバはトレーラが車両とは異なる経路を辿ることを望むことも考えられる。制御装置は、車両が後退する場合には(例えば画像データ及びライン認識を使用して)トレーラに関して見込まれる位置を自動的に識別するように構成することができる。択一的又は付加的に、制御装置は、トレーラに関して予定される軌道を、ドライバによって手動で(例えばタッチスクリーン、ボタン又はその他の入力機構を介して)特定させることができる。例えば、ドライバは、車両の右側又は左側において車両に対して斜めに位置する駐車スペースへとトレーラを後退させようとしていることを決定することができる。所望の軌跡を受信した後に、制御装置はドライバに対する命令を生成及び出力する。命令は、所望の軌跡に沿ってトレーラを移動させるためにはどのようにハンドルを切るかドライバに指示する。
【0029】
制御装置は、本明細書において記載したものとは異なる装置も含めて種々の装置から車両運転パラメータを受信するように構成することができると解される。また、いくつかの実施の形態においては、有線又は無線による接続を介してトレーラから運転パラメータ(例えばトレーラ速度、ステアリング角度、加速度、ヨーレート等)を受信するように、制御装置を構成することができる。上記において説明した機能を複数の制御装置に分散させることもできる。
【0030】
従って、本発明は特に、ホスト車両及びトレーラの移動特性を表す種々のベクトルを求めて監視し、少なくとも一つの車両ベクトルと少なくとも一つのトレーラベクトルとの比較に基づきドライバアシスタント情報を提供するためのシステムを提供する。本発明の種々の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲に開示されている。