(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
母材として絶縁性樹脂を含むケース部材と金属製の一対の端子とをインサート成形により一体成形して、前記端子の一部が前記ケース部材から露出しているケース組立体を作製するステップと、
少なくともニッケルを含む可溶体を前記ケース組立体の前記ケース部材に配置して、前記端子に前記可溶体を固定するステップと、
母材として絶縁性樹脂を含む蓋部材と前記ケース組立体の前記ケース部材とを接合して、密閉空間に前記可溶体を密閉するステップと、
を有する、チップヒューズの製造方法であって、
前記ケース組立体を作製するステップは、
長尺状の第1金属板を加工して、前記第1金属板に所定間隔で複数の前記端子を成形するステップと、
前記複数の端子の各々と一体構造となるように前記第1金属板に対して絶縁性樹脂を射出成形して、前記第1金属板に前記所定間隔で支持される複数の前記ケース部材を成形するステップと、を含み、
前記チップヒューズの製造方法が、
長尺状の第2金属板に対して絶縁性樹脂を射出成形して、前記第2金属板に前記所定間隔で支持される複数の前記蓋部材を成形するステップと、
前記第1金属板に支持された前記ケース組立体の前記ケース部材と、前記第2金属板に支持された前記蓋部材とを接合して、前記第1金属板及び前記第2金属板に支持されたヒューズ組立体を作製するステップと、を更に有する、チップヒューズの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、下記に示す順序で説明を行う。
1.比較例
1−1.比較例に係るヒューズの構成
1−2.比較例に係るヒューズにおける問題点
2.本実施形態
2−1.チップヒューズの構成
2−2.チップヒューズの特性
2−3.チップヒューズの製造方法
2−4.本製造方法による効果
2−5.変形例
【0029】
<1.比較例>
本発明に係るヒューズについて説明する前に、比較例に係るヒューズについて説明する。以下においては、比較例に係るヒューズの構成について説明した後に、比較例に係るヒューズにおいて発生する問題点について説明する。
【0030】
(1−1.比較例に係るヒューズの構成)
図1は、比較例に係るヒューズ900の構成を示す模式図である。
図1に示すように、ヒューズ900は、チューブ901と、可溶体902と、一対の端子903、904とを有する。ヒューズ900は、管形ヒューズであり、可溶体902を架空支持する。
【0031】
チューブ901は、アルミナ(酸化アルミニウム)製であり、円筒状の形状を成している。可溶体902は、線状のヒューズエレメントであり、チューブ901内に架空支持されている。可溶体902は、ここでは銅製である。
【0032】
端子903、904は、可溶体902の長手方向の端部とそれぞれ接続している。端子903、904は、真鍮製であり、円筒状の形状を成している。端子903、904は、接着剤920によってチューブ901の外周面と接着されている。
【0033】
端子903、904には、開口903a、904aが設けられており、可溶体902の端部は、開口903a、904aに挿通した状態で位置している。そして、可溶体902の端部は、半田910によって端子903、904に固定されている。なお、半田910は、開口903a、904aを塞ぐように設けられている。すなわち、半田910は、可溶体902を端子903、904に固定させる機能と、開口903a、904aをシールする機能とを有する。
【0034】
上記のヒューズ900は、以下のように組み立てられる。
まず、チューブ901の両端部に接着剤920で端子903、904を接着して、チューブ組立体を製作する。次に、端子903の開口903a又は端子904の開口904aから可溶体902を挿入して、可溶体902の端部を端子903、904に固定させる位置に保持する。次に、開口903a、904aに半田を充填して、可溶体902の端部を端子903、904に固定させる。この際、開口903a、904aを密閉するように半田を充填することで、チューブ901内が気密状態になる。
【0035】
(1−2.比較例に係るヒューズにおける問題点)
比較例に係るヒューズ900においては、気密性及び組立性に関して以下のような問題点がある。
【0036】
(気密性における問題点)
ヒューズ900においては、可溶体902を端子903、904に固定する半田910が溶融して、気密性が低下する場合がある。
具体的には、ヒューズ900の動作時に、発熱した可溶体902の熱が、可溶体902の端部と端子903、904を接続している半田910に伝達されることで、半田910が溶融又は軟化する。かかる場合には、半田910が、チューブ901内の圧力に耐え切れずに端子903、904の開口903a、904aから噴き出してしまい、チューブ901の気密性が低下する。これにより、チューブ901内の圧力が低下して、ヒューズ900の溶断による回路の電流の遮断が所定時間内に完了することができない。この結果、可溶体902の溶断の際に発生する火花が外気に触れて爆発に繋がる恐れがある。
【0037】
特に、近年、ヒューズ900の微細化に伴い、可溶体902の端子903、904間の長さ(
図1に示す長さLe)が小さくなっている。かかる場合には、ヒューズ900の動作時に、発熱した可溶体902から半田910へ伝達される熱量が増大するため、半田910が溶融しやすくなり、チューブ901の気密性が低下しやすい。
【0038】
また、ヒューズ900においては、端子903、904とチューブ901を接着剤920で接着している接着部分の気密性が低下する場合がある。
ここでは、ヒューズ900が長期間使用されたものとする。長期間使用されたヒューズ900においては、ヒューズ900の動作時に端子903、904がチューブ901から抜ける方向にずれる現象が発生してしまい、気密性が低下する。かかる場合にも、チューブ901内の圧力が低下して、ヒューズ900の溶断による回路の電流の遮断が所定時間内に完了することができない。
【0039】
ここで、端子903、904がチューブ901から抜ける方向にずれる理由を説明する。
ヒューズ900においては、チューブ901、端子903、904及び接着剤920の線膨張係数が、異なる。具体的には、アルミナ製のチューブ901の線膨張係数は、約8.5×10
−6(/K)であり、真鍮製の端子903、904の線膨張係数は、約19×10
−6(/K)であり、接着剤920の線膨張係数は、約30×10
−6(/K)である。このため、温度変化が生じると、チューブ901、端子903、904及び接着剤920の線膨張係数の差異に起因した応力が、接着剤920とチューブ901との接着界面や接着剤920と端子903、904との接着界面に発生する。そして、ヒューズ900の使用期間が長くなり、温度変化が繰り返されると、上記の応力が接着界面に繰り返し作用するため、接着剤920の接着力が低下する。この結果、端子903、904は、ヒューズ900の動作時に発生するチューブ901の内圧上昇に耐えられず、チューブ901から抜ける方向にずれる。
【0040】
なお、ヒューズ900が長期間使用されると、接着剤920とチューブ901との接着界面、又は接着剤920と端子903、904との接着界面から、チューブ901内の高温雰囲気(気体)が噴き出す現象が発生することが確認されている。
【0041】
(組立性における問題点)
次に、ヒューズ900の組立性における3つの問題点について説明する。
【0042】
1点目として、ヒューズ900においては、チューブ901の気密性を確保できるように接着剤920でチューブ901の両端部に端子903、904を接着する作業が難しいため、歩留まりが悪い。具体的には、円筒状のチューブ901の端部に予め接着剤920を塗布した後に、チューブ901に対して端子903、904を被せることにより、接着剤920をチューブ901と端子903、904の間に充填することになっている。しかし、接着剤をチューブ901と端子903、904の間に隙間無く充填することが極めて難しく、特にチューブ901の密閉性を保つ点において歩留まりが悪い。
【0043】
2点目として、端子903の開口903a又は端子904の開口904aから可溶体902をチューブ901内に挿入して、可溶体902の端部を端子903、904に固定させる位置に保持する作業が難しい。すなわち、可溶体902を狭い開口903a、904aからチューブ901の閉ざされた空間に装填する必要があるため、作業性が悪く、作業に長い時間を要する。また、可溶体902が細い場合には、可溶体902の剛性が小さいことで可溶体902が撓みやすくなり、作業性が更に悪くなる。
【0044】
3点目として、半田910で可溶体902の端部を端子903、904に固定させつつ、半田910で開口903a、904aを密閉する作業は、熟練を要する。すなわち、可溶体902を端子903、904に固定させる作業と、半田910で開口903a、904aを密閉する作業とを同時に行う必要があるため、作業に熟練していない通常の作業者が作業を行うと、多大な時間を要することになる。
【0045】
<2.本実施形態>
(2−1.チップヒューズの構成)
図2A、
図2B、
図3A、
図3B、
図4〜
図9を参照しながら、本発明の一実施形態に係るチップヒューズ1の構成について説明する。
【0046】
図2Aは、一実施形態に係るチップヒューズ1の概略構成を示す斜視図である。
図2Bは、蓋部材20とケース部材10を分離した状態のチップヒューズ1の概略構成を示す斜視図である。
図3Aは、チップヒューズ1の正面図である。
図3Bは、チップヒューズ1の側面図である。
図4は、
図3BのA−A断面図である。
図5は、
図4のB−B断面図である。
図6は、ケース部材10の平面図である。
図7は、
図6のC−C断面図である。
図8は、蓋部材20の平面図である。
図9は、
図8のD−D断面図である。
【0047】
チップヒューズ1は、電子機器の回路基板等に表面実装され、回路に異常な電流が流れた際に溶断する。チップヒューズ1は、小型のヒューズであり、ここでは、チップヒューズ1の長さL1(
図2A)は約2.5(mm)であり、幅L2(
図2A)は約1.5(mm)であり、厚さL3(
図2A)は約1.3(mm)である。
【0048】
チップヒューズ1は、
図2Aに示すように、外観形状が箱状を成している筐体5を有する。筐体5は、絶縁性樹脂から成り、具体的には液晶ポリマーから成る。液晶ポリマーは、耐熱性に優れると共に、射出成形時の流動性が高い特性を有する。また、筐体5内には、密閉空間(
図4に示す密閉空間6)が形成されている。なお、筐体5は、上記に限定されず、母材である絶縁性樹脂に他の材料を含んでもよい。
【0049】
チップヒューズ1は、
図2B等に示すように、ケース部材10と、蓋部材20と、可溶体30と、一対の端子40、50とを有する。チップヒューズ1は、端子40、50を介して回路基板と電気的に接続されており、回路基板から端子40、50を介して可溶体30へ電流が供給される。本実施形態では、ケース部材10及び蓋部材20が、筐体5を構成している。
【0050】
(ケース部材10)
ケース部材10は、筐体5のベース部分であり、
図2Bに示すように可溶体30と端子40、50を収容している。ケース部材10は、熱可塑性樹脂である液晶ポリマーから成る。ケース部材10は、
図2Bに示すように長方体形状を成している。ケース部材10は、可溶体収容部11と、端子収容部12と、ケース側接合面13と、嵌合凸部14と、位置決め溝部15とを有する。
【0051】
可溶体収容部11は、可溶体30を収容している凹部である。可溶体収容部11は、
図2Bに示すように、壁11aによって囲まれている。可溶体収容部11は、ケース部材10の中央に設けられている。可溶体収容部11は、可溶体30が溶断する溶断空間でもある。
【0052】
端子収容部12は、一対の端子40、50を収容している凹部である。端子収容部12は、可溶体収容部11の両側に設けられている。端子収容部12は、端子40、50と密着している。このため、端子収容部12と端子40、50との間に隙間が形成されていない。
【0053】
ケース側接合面13は、
図4に示すように、蓋部材20の蓋側接合面22と接合している。ケース側接合面13は、
図2Bに示すように、可溶体収容部11及び端子収容部12を囲むように、ケース部材10の上面の外縁に沿って環状に形成されている。ケース側接合面13は、平面度が高い面となっている。なお、可溶体収容部11の壁11aの上面は、ケース側接合面13よりも突出している。
【0054】
嵌合凸部14は、
図3Aに示すように蓋部材20の嵌合凹部23と嵌合している。嵌合凸部14は、ケース側接合面13から突出している。嵌合凸部14は、
図2Bに示すように、ケース部材10の長手方向(X方向)の中央、かつ幅方向(Y方向)の両側の縁に設けられている。
【0055】
位置決め溝部15は、
図2Bに示すように、可溶体収容部11の壁11aに長手方向に沿って形成された溝部である。位置決め溝部15は、可溶体30をケース部材10に収容する際の位置決め用の機能を有する。位置決め溝部15は、可溶体収容部11と端子収容部12の間に設けられており、可溶体30の両端部が、位置決め溝部15を通過している。
【0056】
(蓋部材20)
蓋部材20は、筐体5の蓋部分であり、
図2Bに示すようにケース部材10と同様に長方体形状を成している。蓋部材20は、ケース部材10と同一の熱可塑性樹脂である液晶ポリマーから成る。蓋部材20は、対向するケース部材10と接合しており、
図4に示すようにケース部材10とで密閉空間6を形成している。蓋部材20は、
図8に示すように、中央凹部21と、蓋側接合面22と、嵌合凹部23とを有する。
【0057】
中央凹部21は、蓋部材20の中央に設けられている。具体的には、中央凹部21は、ケース部材10の可溶体収容部11、端子収容部12及び位置決め溝部15に対向する部分に設けられている。
【0058】
蓋側接合面22は、
図4に示すように、ケース部材10のケース側接合面13と接合している。蓋側接合面22は、中央凹部21を囲むように、蓋部材20の底面の外縁に沿って環状に形成されている。蓋側接合面22は、ここではエポキシ系接着剤でケース側接合面13と接合していることで、気密性を確保している。
【0059】
嵌合凹部23は、
図3Aに示すように、ケース部材10の嵌合凸部14と嵌合している。嵌合凹部23は、
図9に示すように蓋部材20の側面を切り欠いて形成されている。嵌合凹部23が嵌合凸部14と嵌合する構成にすることで、ケース部材10に蓋部材20を被せる際に、ケース部材10に対して蓋部材20を位置決めしやすくなるので、チップヒューズ1の組立性が向上する。
【0060】
また、嵌合凹部23は、嵌合凸部14と接着剤で接合している。具体的には、嵌合凹部23の底面23a(
図9)は、嵌合凸部14の頂面14a(
図7)と接合している。例えば、底面23aは、エポキシ系接着剤で頂面14aと接合している。また、嵌合凸部14の側面14b(
図7)も、嵌合凹部23の側面23b(
図9)とエポキシ系接着剤で接合している。このように嵌合凹部23と嵌合凸部14を接合することで、ケース部材10と蓋部材20の接合強度をより高めることができる。この結果、圧力が増大する密閉空間6が内部に形成された筐体5の耐圧を高めることができる。
【0061】
なお、上記では、ケース部材10が嵌合凸部14を有し、蓋部材20が嵌合凹部23を有することとしたが、これに限定されず、例えば、ケース部材10が嵌合凹部を有し、蓋部材20が嵌合凸部を有することとしてもよい。すなわち、ケース部材10及び蓋部材20の一方が嵌合凸部を有し、他方が嵌合凹部を有する。
【0062】
(可溶体30)
可溶体30は、
図2Bに示すように線状のヒューズエレメントである。可溶体30は、筐体5内の密閉空間6内に架空支持された状態で設けられている。可溶体30は、
図4に示すように両端部が一対の端子40、50に挟持されていることで、密閉空間6内に架空支持されている。
【0063】
可溶体30は、本実施形態では熱伝導率が低いニッケルから成る。ただし、これに限定されず、可溶体30は、ニッケルを主成分として他の金属を含んでもよい。すなわち、可溶体30は、母材としてニッケルを含めばよい。かかる場合には、チップヒューズ1の動作時に可溶体30が発熱しても、端子40、50に伝達される熱量が抑制される。
【0064】
また、可溶体30は、表面に金属メッキが施されている可溶体メッキ層を有する。例えば、可溶体メッキ層は、可溶体30のニッケルの表面に錫メッキを施されている部分である。
【0065】
(端子40、50)
一対の端子40、50は、
図2Bに示すようにケース部材10の長手方向の両端側にそれぞれ設けられ、可溶体30の両端部と接続している。端子40、50は、ここでは銅の金属板から成る。端子40、50は、金属板の表面に金属メッキ(具体的には、錫メッキ)が施されている端子メッキ層を有する。端子40、50は、可溶体30との間で溶接されることで、可溶体30と電気的に接続している。具体的には、端子40、50は、溶接によって端子40、50の端子メッキ層と可溶体30の可溶体メッキ層とが溶融して接合することで、可溶体30と電気的に接続している。
【0066】
また、端子40、50は、一部が筐体5から露出するように筐体5と一体構造となっている。具体的には、端子40、50は、樹脂製のケース部材10を射出成形する際にインサート成形を行うことで、ケース部材10と一体構造となっている。
【0067】
端子40、50は、
図4に示すように、挟持部41、51と、貫通部42、52と、端子部43、53とを有する。端子40、50の構成は同様であるので、以下では端子50の詳細構成について説明する。
【0068】
挟持部51は、可溶体30の長手方向の端部を挟持している。挟持部51は、ケース部材10の端子収容部12に収容されている。挟持部51は、支え部511と、押さえ部512とを有する。
【0069】
支え部511は、可溶体30の長手方向の端部を支えている。具体的には、支え部511は、支え部511の上面に接触している可溶体30の端部を支えている(
図5参照)。支え部511の上面は、
図5に示すように、ケース部材10の上面(ケース側接合面13)と同じ高さに位置している。
【0070】
押さえ部512は、支え部511に対向しており、支え部511に支えられた端部を押さえている(
図5参照)。押さえ部512は、支え部511と繋がっており、金属板を折り曲げることで支え部511と対向している。
【0071】
なお、
図6に示すように、押さえ部512の幅W2は、支え部511の幅W1よりも小さくなっている。そして、支え部511は、可溶体30の長手方向(
図6のX方向)において、押さえ部512よりも端側まで設けられている。すなわち、支え部511の端面511aの位置は、押さえ部512の端面512aの位置よりも、長手方向の外側に位置している。かかる場合には、チップヒューズ1の組立時に、押さえ部512の端面512aに沿って可溶体30の端部を切り取ることで、切り取り後の端部は支え部511の端面511aよりも中央側に位置するので、可溶体30の端部がケース側接合面13へはみ出すことを防止できる。この結果、ケース側接合面13と蓋側接合面22との間に可溶体30の端部が挟まって気密性が低下することを防止できる。
【0072】
貫通部52は、
図4に示すようにケース部材10の壁を貫通しており、挟持部51と端子部53を接続している。貫通部52は、貫通している壁と接合しており、貫通部52とケース部材10が密着している。また、貫通部52は、金属板を複数回折り曲げた形状となっている。具体的には、貫通部52は、階段状に折り曲げた形状となっている。なお、貫通部52のケース部材10と密着している表面に表面処理を施して、貫通部52の表面を荒らしてもよい。かかる場合には、貫通部52とケース部材10とをより密着させることができるので、気密性を向上させることできる。
【0073】
端子部53は、ケース部材10の下方にて、一部が外部に露出するように設けられている。端子部53は、チップヒューズ1が回路に実装された際に、回路基板と接続される。端子部53は、
図4に示すようにL字状に形成されており、側面端子部531と、底面端子部532とを有する。
【0074】
側面端子部531は、ケース部材10の側面に外部に露出するように設けられている。具体的には、
図4に示すように、側面端子部531の外面は、ケース部材10の側面と同じ位置に位置している。かかる場合には、チップヒューズ1の回路基板への実装時の半田付けの際に、側面端子部531にも半田フィレットを形成できるので、端子50を回路基板に確実に接触させることが可能となる。
【0075】
底面端子部532は、ケース部材10の底面に位置している。底面端子部532の底面は、
図4に示すように、ケース部材10の底面に対して底面端子部532の厚さよりも小さく突出している。かかる場合には、チップヒューズ1を回路基板へ実装する際に、底面端子部532が回路基板に確実に接触できる。また、底面端子部532のケース部材10の底面から突出していない部分がケース部材10と一体となっていることで、端子50とケース部材10の接合がより強固になる。
【0076】
(2−2.チップヒューズ1の特性)
上述した構成のチップヒューズ1は、気密性を確保した信頼性の高いチップヒューズとなっている。以下において詳細に説明する。
【0077】
(チップヒューズ1の気密性について)
前述したように、チップヒューズ1においては、密閉空間6を形成するケース部材10と蓋部材20が接合することで、気密性を安定して確保できる。また、ケース部材10及び蓋部材20は、射出成形時の流動性に優れた液晶ポリマーで形成されているため、ケース側接合面13及び蓋側接合面22の平面度が、高くなっている。このため、ケース側接合面13と蓋側接合面22が、より密着しやすくなるので、気密性を高めることができる。
【0078】
また、平面であるケース側接合面13及び蓋側接合面22の面全体に接着剤を塗布しやすくなるので、従来発生していた接着剤の塗布不良に起因する気密性の低下を抑制できると共に、接着剤塗布の作業性が向上する。
【0079】
さらに、ケース部材10及び蓋部材20が同一の液晶ポリマーから形成されているので、液晶ポリマーと相性の良い接着剤を選定してケース部材10及び蓋部材20を接合することで、ケース部材10と蓋部材20の接着強度を高くできる。特に、本実施形態で用いるエポキシ系接着剤は、実験結果から、液晶ポリマーから成るケース部材10及び蓋部材20の接着強度を高められることが確認できた。なお、実験の際には、エポキシ系接着剤を約130℃の温度で30分硬化させている。
【0080】
また、ケース部材10及び蓋部材20が同一材料(液晶ポリマー)から形成されている場合には、異なる材料の場合に発生する線膨張係数の違いによる起因する接合界面における熱応力の発生を抑制できる。この結果、熱応力の発生による接合強度の低下も抑制できる。また、接着剤の線膨張係数が液晶ポリマーの線膨張係数と整合するような接着剤を選定することで、チップヒューズ1を長期にわたって使用した際に繰り返し発生する温度変化によって接合面が剥がれることを防止できる。
【0081】
次に、一体構造となっているケース部材10と端子40、50の密着による気密性について説明する。
前述したように、端子40、50は、挟持部41、51と端子部43、53との間に、ケース部材10に接合した状態で貫通している貫通部42、52を有する。ここで、貫通部42、52が端子40、50の金属板を折り曲げて階段状に形成されているため、ケース部材10との接合面積を広くできる。この結果、貫通部42、52とケース部材10の接合によって、気密性を十分に確保できる。
【0082】
また、ケース部材10の材料である液晶ポリマーは流動性が優れているため、インサート成形によって貫通部42、52が貫通しているケース部材10を成形する際に、液晶ポリマーが貫通部42、52の表面に十分になじむため、ケース部材10と貫通部42、52の密着度合いを高められる。
【0083】
(可溶体の発熱時の端子への影響について)
本実施形態では、可溶体30をニッケル製にすることで、可溶体30と電気的に接続している端子40、50(具体的には、挟持部41、51)の温度上昇を抑制できる。以下では、比較例で説明した銅製の可溶体902(
図1)と対比して説明する。
【0084】
以下では、説明の便宜上、可溶体30及び可溶体902を、単に可溶体と総称して説明する。一般に、可溶体から端子へ単位時間に伝達する熱量Q(W)は、下記の式(1)のように示される。
【0085】
【数1】
ここで、λは可溶体の熱伝導率(W/m・K)を示し、aは可溶体の通電断面積(m
2)を示し、L
eは可溶体の長さ(m)を示し、θ
mは可溶体の融点(K)を示し、θ
oは端子の温度を示す。
【0086】
次に、式(1)において、通電断面積a、長さL
e、及び温度θ
oを一定にして、可溶体が銅製である場合とニッケル製である場合の熱量Qを比較した結果を、表1に示す。なお、ここでは、a=8.0×10
−9(m
2)とし、L
e=0.0015(m)として、λは常温における値とした。
【0087】
【表1】
表1から、ニッケル製の可溶体から端子へ伝達する熱量Qは、端子の温度が同一の場合には、銅製の可溶体から端子へ伝達する熱量の約1/3であり、非常に小さくなっていることが分かる。換言すれば、可溶体がニッケル製の場合には、端子へ伝達される熱量が小さいため、端子の温度上昇が小さい。
【0088】
また、式(1)からも分かるように、可溶体の長さL
eが小さくなると、可溶体から端子へ伝達される熱量Qは増大する。
このため、本実施形態のように可溶体30の長さL
eが小さい微細なチップヒューズ1においては、可溶体30を熱伝導率の小さいニッケル製とすることにより、可溶体30から端子40、50へ伝達される熱量Qを抑制して端子40、50の温度上昇を抑制できる。この結果、可溶体30から発生する熱の影響が、気密性を高めるために一体構造となっている端子40、50及びケース部材10に及ぼす影響を抑制できる。
【0089】
上述したチップヒューズ1によれば、端子40、50の挟持部41、51が可溶体30を挟持して固定する一方で、ケース部材10のケース側接合面13と蓋部材20の蓋側接合面22とが接合して密閉空間6を形成する。かかる場合には、チップヒューズ1の動作時に、可溶体30の熱は挟持部41、51に伝達されても、ケース側接合面13や蓋側接合面22に伝達され難いので、ケース側接合面13や蓋側接合面22の接合強度が低下することを抑制できる。この結果、筐体5の気密性の低下を抑制できる。
【0090】
また、ケース部材10の母材を成形時の流動性に優れた液晶ポリマーにすることで、端子40、50とケース部材10に密着性を高めることができる。また、ケース部材10と蓋部材20を同一材料にすることで、接着剤による接合を効果的に行いやすくなる。さらに、可溶体30の材質を熱伝導率が小さいニッケルにすることで、チップヒューズ1の動作時に端子40、50の挟持部41、51の温度上昇を抑制できる。
なお、上述したチップヒューズ1を用いて実験した結果、定格電流250(mA)、定格電圧72(V)で、50(A)の電流を遮断できることが確認できた。また、繰り返し温度サイクル試験を実施した後、同様の遮断を行えることを確認できた。
【0091】
(2−3.チップヒューズの製造方法)
図10を参照しながら、上述した構成のチップヒューズ1の製造方法の一例について説明する。
図10は、チップヒューズ1の製造工程を示すフローチャートである。以下では、工程毎に詳細に説明する。
【0092】
(端子40、50の成形:S102)
図11は、端子40、50が成形されているケース用金属板600の平面図である。
図12は、
図11に示すケース用金属板600を正面側から見た図である。
図13は、ケース用金属板600に成形された端子40、50を示す斜視図である。
【0093】
ステップS102においては、長尺状の第1金属板であるケース用金属板600を加工して、ケース用金属板600に所定間隔で一対の端子40、50を連続成形する。
ケース用金属板600は、厚さが約0.15(mm)の銅製の板であり、表面に錫メッキが施されている。ケース用金属板600は、所定の搬送方向に搬送される。ケース用金属板600には、搬送用のガイド穴602が金属板の長手方向に所定のピッチLpで設けられている。搬送部材が、ガイド穴602に順次噛み合いながら回転することで、ケース用金属板600が搬送方向に搬送される。
【0094】
端子40、50は、ケース用金属板600に対してプレス成形を行うことで成形される。一対の端子40、50は、ガイド穴602のピッチと同じピッチLpで成形されている。
また、端子40、50の挟持部41、51の押さえ部412、512は、
図13に示すように支え部411、511に対して垂直に立っている。押さえ部412、512は、端子40、50に可溶体30を固定する際に、曲げられて支え部411、511に対向することになる。
【0095】
ガイド穴602と端子40、50との位置関係は、予め定められている。このため、搬送中のケース用金属板600のガイド穴602の搬送方向における位置を管理することで、端子40、50の位置も管理できる。
【0096】
(ケース組立体の作製:S104)
図14は、ケース組立体650が作製されているケース用金属板600の平面図である。
図15は、
図14に示すケース用金属板600を正面側から見た図である。
【0097】
ステップS104においては、ケース部材10の材料である熱可塑性樹脂を、端子40、50が成形されたケース用金属板600に対して射出成形することで、ケース部材10と端子40、50が一体化しているケース組立体650を作製する。本実施形態では、射出成形用の金型にケース用金属板600をセットした後に、端子40、50の周囲に液晶ポリマーを射出することで、ケース組立体650を作製する(所謂インサート成形)。
【0098】
より具体的に説明する。まず、端子40、50が連続して形成されたケース用金属板600が搬送され、開いた状態の射出金型用の金型(キャビティ又はコア)に端子40、50が位置すると搬送が停止する。その後、金型を閉じて液晶ポリマーを金型内に射出して、端子40、50と一体化したケース部材10を成形する。すなわち、一のケース組立体650を作製する。そして、金型を再度開いて、所定ピッチだけケース用金属板600を搬送して、次のケース組立体650を作製する。このようなサイクルを繰り返すことで、ケース組立体650を短時間に大量に作製でき、生産性を向上できる。
【0099】
図14に示すように、複数のケース組立体650は、ケース用金属板600の支持部604に所定間隔で支持されている。ケース組立体650において端子40、50の一部(具体的には、挟持部41、51の押さえ部412、512)は、
図15に示すように、樹脂に覆われることなくケース部材10から露出している。
【0100】
前述したように、端子40、50の端子部43、53の側面端子部431、531は、ケース部材10の側面と同一面となっている(
図4参照)。かかる場合には、インサート成形によって端子40、50とケース部材10を一体化する際に、側面端子部431、531が射出成形の金型の内面に当接して安定した状態となるので、インサート成形を精度良く行うことができる。
【0101】
(可溶体の固定:S106)
図16は、複数のケース組立体650上に長尺の長尺可溶体660が配置された状態を示す平面図である。
図17は、
図16のケース組立体650の縦断面図である。
図18は、
図17のE−E断面図である。
【0102】
ステップS106においては、長尺可溶体660をケース組立体650のケース部材10上に配置して、端子40、50に長尺可溶体660を固定する。そして、長尺可溶体660を固定した後に、長尺可溶体660と端子40、50とを電気的に接続する。以下では、この一連の作業の詳細について説明する。
【0103】
まず、長尺可溶体660をケース部材10の所定位置へ配置させる作業について説明する。
前述したように、挟持部41、51の押さえ部412、512は、支え部411、511に対して垂直に立っている。そして、長尺可溶体660を挟持部41、51の上方から下方へ移動させて、支え部411、511に長尺可溶体660を接触させる。この際、支え部411、511の上方の空間は開放されているので、長尺可溶体660が移動自在となり、長尺可溶体660の位置を容易に調整できる。特に、両端が支持された長尺可溶体660に対して所定のテンションを加えることで、撓みが抑制された直線状の長尺可溶体660を支え部411、511に対して精度良く位置決めできる。
【0104】
本実施形態では、ケース用金属板600に支持された複数のケース組立体650に跨るように、長尺可溶体660を複数のケース組立体650の各々のケース部材10上に配置させる。ここで、長尺可溶体660が接触する支え部411、511と、ケース部材10のケース側接合面13とが同一面となっているので、長尺可溶体660のZ軸方向における位置決めを行いやすくなる。また、長尺可溶体660をケース部材10の位置決め溝部15を通過させるように配置させるので、すなわち、位置決め溝部15をガイドとしても用いるので、長尺可溶体660のY軸方向における位置決めを行いやすくなる。
【0105】
次に、支え部411、511上に配置された長尺可溶体660を固定する作業について説明する。
支え部411、511に長尺可溶体660が配置された状態で、支え部411、511に対して垂直に立っている押さえ部412、512を、
図18に示す矢印の方向に折り曲げる。具体的には、押さえ部412、512が長尺可溶体660を挟んで支え部411、511に対向するように、押さえ部412、512を約90度折り曲げる。これにより、支え部411、511と押さえ部412、512が、長尺可溶体660を挟持する。この結果、所定位置に位置決めされた長尺可溶体660が、挟持部41、51に固定される。
【0106】
次に、挟持部41、51に固定された長尺可溶体660の両端と端子40、50とを電気的に接続する作業について説明する。
長尺可溶体660が挟持部41、51に固定された状態で、挟持部41の押さえ部412の上面から長尺可溶体660を挟んで支え部411へ向かって電流を流して、長尺可溶体660の一端と挟持部41を溶接する。同様に、挟持部51の押さえ部512の上面から長尺可溶体660を挟んで支え部511へ向かって電流を流して、長尺可溶体660の他端と挟持部51を溶接する。これにより、長尺可溶体660と挟持部41、51とが、電気的に接続される。特に、溶接の際に、長尺可溶体660の可溶体メッキ層と挟持部41、51の端子メッキ層とが溶融することで、長尺可溶体660と端子40、50との間の電気的接続を確実に実現できる。なお、長尺可溶体660の両端と挟持部41、51を同時に溶接してもよい。
【0107】
長尺可溶体660と端子40、50とを接続した後に、長尺可溶体660を切断する。例えば、押さえ部412、512の端面412a、512a(
図6)の位置で、長尺可溶体660をカッターで切断する。長尺可溶体660を切断したものが、チップヒューズ1の可溶体30となる。前述したように、支え部411、511の端面411a、511aは、押さえ部412、512の端面412a、512aよりも外側に位置するので、仮に長尺可溶体660の切断位置がずれて端部が切れ残っていても、可溶体30がケース部材10のケース側接合面13まではみ出ることを防止できる。
【0108】
(蓋部材の成形:S108)
図19は、蓋部材20が成形されている蓋用金属板700の平面図である。
図20は、
図19に示す蓋用金属板700を正面側から見た図である。
【0109】
ステップS108においては、蓋部材20の材料である熱可塑性樹脂を、長尺状の蓋用金属板700に対して射出成形することで、蓋用金属板700に所定間隔で支持されている蓋部材20を複数成形する。蓋用金属板700は、例えば厚さが約0.15(mm)の銅製の板であり、表面に錫メッキが施されている。蓋用金属板700にも、ケース用金属板600と同様に、ガイド穴702がピッチLpで設けられている。蓋部材20は、ガイド穴702のピッチと同じピッチで成形されている。
【0110】
成形された複数の蓋部材20は、蓋用金属板700の支持部704に支持されている。また、ガイド穴702と蓋部材20との位置関係は、予め定められている。このため、搬送中の蓋用金属板700のガイド穴702の搬送方向における位置を管理することで、蓋部材20の位置も管理できる。
【0111】
上記では、蓋部材の成形が、可溶体30の固定後に行うこととしたが、これに限定されない。例えば、蓋部材の成形が、ステップS104、S106の工程と並行して行われてもよい。
【0112】
(ヒューズ組立体の作製:S110)
図21は、ケース組立体650のケース部材10に蓋部材20を接合したヒューズ組立体800の縦断面図を示す。
図22は、ヒューズ組立体850がケース用金属板600及び蓋用金属板700に支持されている状態を示す図である。
【0113】
ステップS110においては、ケース用金属板600に支持されたケース組立体650のケース部材10と、蓋用金属板700に支持された蓋部材20とを組み合わせて、ヒューズ組立体800を作製する。具体的には、ケース組立体650のケース部材10に対して蓋部材20を被せるようにケース用金属板600及び蓋用金属板700を搬送して、ケース部材10に蓋部材20を組み付ける。この際、ケース用金属板600のガイド穴602と、蓋用金属板700のガイド穴702とを用いて、ケース用金属板600及び蓋用金属板700の搬送を制御する。例えば、ガイド穴602とガイド穴702が一致するように、ケース用金属板600と蓋用金属板700を搬送する。
【0114】
また、ケース部材10と蓋部材20を組み合わせる際には、嵌合凸部14と嵌合凹部23とが嵌合する。これにより、ケース部材10に対して蓋部材20を所望の位置に組み付けやすくなる。
【0115】
ケース部材10に蓋部材20を組み付ける際には、ケース部材10と蓋部材20を接合する。具体的には、予めケース部材10のケース側接合面13にエポキシ系接着剤を塗布しておく。その後、蓋部材20をケース部材10に被せて、ケース部材10及び蓋部材20を加圧・加熱することで、ケース部材10のケース側接合面13と蓋部材20の蓋側接合面22とが接合する。これにより、内部の密閉空間6に可溶体30が密閉されたヒューズ組立体800を作製できる。
【0116】
なお、ケース側接合面13に加えて、ケース部材10の嵌合凸部14にもエポキシ系接着剤を予め塗布している。そして、ケース部材10に蓋部材20を組み付ける際に、嵌合凸部14と嵌合凹部23が接着剤で接合される。これにより、ケース部材10と蓋部材20の接合強度を高めることができる。
【0117】
前述したように、ケース組立体650がケース用金属板600の支持部604に支持されており、蓋部材20が蓋用金属板700の支持部704に支持されている。このため、ケース組立体650のケース部材10と蓋部材20を組み合わせたヒューズ組立体800も、
図22に示すようにケース用金属板600及び蓋用金属板700に支持された状態となっている。なお、
図22に示すように、支持部604及び支持部704は、搬送方向において離れて位置している。
【0118】
(ケース用金属板の分離:S112)
ステップS112においては、ヒューズ組立体800をケース用金属板600から分離する。これにより、分離後のヒューズ組立体800の端子40、50は、ケース用金属板600に対して絶縁状態となる。具体的には、ヒューズ組立体800を支持するケース用金属板600の支持部604を例えばカッターで切断して、ヒューズ組立体800をケース用金属板600から切り離す。前述したように支持部604及び支持部704が離れているので、例えば上下動するカッターによって支持部604のみを切断できる。この際、ヒューズ組立体800を支持する複数の支持部604を同時に切断する。
【0119】
(端子間の抵抗値の測定:S114)
ステップS114においては、ケース用金属板600から分離したヒューズ組立体800の端子40と端子50の間の抵抗値を測定する。なお、ヒューズ組立体800は蓋用金属板700に支持されているが、端子40、50は、蓋用金属板700とは電気的に接続されていないので、蓋用金属板700に対して絶縁状態である。
【0120】
(蓋用金属板からの分離の要否判定:S116)
ステップS116においては、端子40、50間の抵抗値の測定結果に基づいて、ヒューズ組立体800を蓋用金属板700から分離するか否かを判定する。具体的には、端子40、50間の抵抗値が所定範囲内である場合には、ヒューズ組立体800が良品であると判断し、抵抗値を測定したヒューズ組立体800を蓋用金属板700から分離させる。すなわち、蓋用金属板700の支持部704にヒューズ組立体800の蓋部材20が支持されているので、蓋部材20を蓋用金属板700から分離させる。
【0121】
ここで、蓋部材20の蓋用金属板700からの分離方法について、
図23を参照しながら説明する。
図23は、
図22のF−F断面図である。
図23に示すように、蓋部材20が蓋用金属板700の支持部704に支持されている状態では、支持部704の先端704aが、蓋部材20の側面に設けられた側面凹部26と嵌合している。ここで、支持部704の先端704aと側面凹部26との嵌合長さは小さい(例えば、0.1mm)ため、例えば作業者が支持部704の先端704a側を手で押すことで、先端704aと側面凹部26の嵌合状態が解除される。これにより、カッターで切断しなくても、蓋部材20を蓋用金属板700から分離できる。
【0122】
一方で、測定した抵抗値が所定範囲外である場合には、ヒューズ組立体800が不良品であると判定し、測定値を測定したヒューズ組立体800を蓋用金属板700から分離させない。これにより、良品と判断されたヒューズ組立体800のみが蓋用金属板700から分離されるので、不良品と良品が混在することを防止できる。
なお、不良品と判断されたヒューズ組立体800を蓋用金属板700に支持させた状態を維持させることとしたが、これに限定されず、例えば別の工程で、不良品と判断されたヒューズ組立体800を蓋用金属板700から分離させてもよい。
【0123】
上記では、ヒューズ組立体800のケース用金属板600からの分離と蓋用金属板700からの分離とを、それぞれ別々の工程で行うこととしたが、これに限定されない。例えば、ケース用金属板600からの分離と蓋用金属板700からの分離とを、一つの工程で一緒に行ってもよい。
【0124】
また、ヒューズ組立体800を蓋用金属板700から分離した後に、ケース用金属板600から分離してもよい。かかる場合には、端子40、50間の抵抗値の測定は、ケース用金属板600からヒューズ組立体800を分離した後に行われる。
さらに、上記では、支持部704の先端704a側を手で押すことで、ヒューズ組立体800を蓋用金属板700から分離させることとしたが、これに限定されない。例えば、先端704aと側面凹部26との嵌合長さが大きい場合には、先端704a側をカッターで切断して分離してもよい。
【0125】
(2−4.本製造方法による効果)
上述したチップヒューズ1の製造方法によれば、ケース部材10の上方が開放された状態でケース部材10に可溶体30を固定した後に、可溶体30と端子40、50を電気的に接続している。そして、ケース部材10と蓋部材20とを接合して可溶体30を密閉する密閉空間6が形成されたチップヒューズ1を製造している。
【0126】
かかる場合には、ケース部材10の上方が開放された状態で可溶体30をケース部材10に配置させるので、可溶体30を固定する作業性が大幅に向上する。また、可溶体30を固定する作業と、可溶体30と端子40、50を電気的に接続する作業とを分離することで、2つの作業を同時に行う場合に比べて、各作業の作業性が大幅に向上する。また、インサート成形によりケース部材10と端子40、50を一体化しているので、ケース部材10と端子40、50を接着剤で固定する場合に比べて、長期間使用しても密閉性の低下を抑制できる。さらに、ケース用金属板600に複数のケース部材10を連続して形成すると共に、蓋用金属板700に複数の蓋部材20を連続して形成した後に、ケース部材10と蓋部材20を組み合わせることで、組立性や生産性が向上する。
【0127】
(2−5.変形例)
上記では、筐体5が液晶ポリマーから成ることとしたが、これに限定されない。例えば、筐体5は他の熱可塑性樹脂から成ってもよい。また、筐体5が熱硬化性樹脂から成ってもよい。
【0128】
上記では、ケース部材10と蓋部材20の接合をエポキシ系接着剤で行うこととしたが、これに限定されない。例えば、ケース部材10と蓋部材20の接合を他の接着剤で行ってもよい。また、接着剤による接合に代えて、加熱溶融接合や超音波接合によってケース部材10と蓋部材20を接合してもよい。
【0129】
上記では、可溶体30と端子40、50が、メッキ層同士が溶接されることで接合されることとしたが、これに限定されない。例えば、可溶体30の母材であるニッケルと、端子40、50の母材である銅とを、溶融接合してもよい。
【0130】
上記では、支え部411、511の幅W1が押さえ部412、512の幅W2よりも大きいこととしたが、これに限定されない。例えば、支え部411、511と押さえ部412、512の幅を同じ大きさにする一方で、押さえ部412、512の端面412a、512a側に切り欠きを設けてもよい。かかる場合には、切り欠きの部分で、長尺可溶体660を切断すればよい。
【0131】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
チップヒューズ(1)は、母材として絶縁性樹脂を含み、密閉空間(6)を形成している筐体(5)と、密閉空間(6)に架空支持された状態で設けられ、母材としてニッケルを含む可溶体(30)と、一部が筐体(5)から露出するように筐体(5)と一体構造となっており、可溶体(30)の両端部と電気的に接続している一対の端子(40、50)と、を備える。