【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の限定ではない態様は、弁輪形成術リングの融通性およびカスタム調節可能性を高めることを追求し、および/または上記問題のうちの1つまたは複数を軽減することを追求する。
【0006】
発明の複数の態様は、請求項に規定されている。
【0007】
付加的にまたは択一的に、発明の1つの独立した態様において、調節可能な弁輪形成術リングアセンブリは、支持リングと、少なくとも部分的に支持リング内にはめ合わされた、調節可能なリングと、調節可能なリングの形状を調節するために、支持体として支持リングを使用することによって、調節可能なリングを変形させるように展開可能な(deployable)少なくとも1つの押付けエレメントと、を備える。
【0008】
本明細書において使用される場合、「リング」という用語(「リング」アセンブリを含む)は、少なくとも弁輪の周囲の大部分を包囲するためのあらゆる形状をカバーすることが意図されている。リングは閉鎖されていてもよい(例えば、略「O」字形または略「D」字形)またはリングは開放していてもよい(例えば、略「C」字形)。リングは、略丸いまたは略円形のジオメトリであってもよい(例えば、略「O」字形または略丸い「C」字形)、またはリングは丸くなくてもよい(例えば、略「D」字形または略細長い「C」字形)。リングの形状は実質的に対称的であってもよいまたは実質的に非対称であってもよい。リングは選択的に分割されていてもよいおよび/または選択的に幾つかの場合には360°よりも多く延びていてもよい。リングは、平坦でない3D形状、例えば、略サドル形状であってもよい。リングは、略三次元の曲げられたO字形、C字形またはD字形を有してもよい。
【0009】
弁輪形成術リングの調節は、術中または術後に行うことができる。術中モードにおいて、調節はむしろ「試行錯誤」的なアプローチである。その目的は、外科手術結果を微調整し、残存逆流または過剰修正を排除することである。術後モードにおいて、逆流を修正しかつ/または時間の経過と共により漸進的なサイズ調節を操作するために、弁領域を減じることができる。これにより、弁の長期的な治療を提供することができる。
【0010】
少なくとも1つの押付けエレメントは、選択的に、支持リングまたは調節可能なリングによって支持されてもよい。幾つかの実施の形態では、少なくとも1つの押付けエレメントは、支持リングによって支持されている。支持リングは、押付けエレメントのためのより大きな収容スペースを提供してもよい。
【0011】
リングアセンブリは、さらに、以下の特徴のうちの1つまたはあらゆる組み合わせを含んでもよく、これらの特徴は全て選択的である。
【0012】
(A)幾つかの実施の形態では、複数の展開可能な押付けエレメントが、支持リングと調節可能なリングとの間の境界面の周囲の異なる位置に設けられてよい。各押付けエレメントは、押付けエレメントのそれぞれの位置において、調節可能なリングを、支持リングに対して内方へ変形させるように、展開可能であってもよい。
【0013】
複数の押付けエレメントを提供することは、弁輪形成術リングアセンブリの融通性と、弁輪形成術リングアセンブリの効率を高めるための、調節可能なリングをカスタム成形する可能性とを高めることができる。
【0014】
各押付けエレメントは、例えば、それぞれの制御部材の制御下で独立しておよび/または個々に展開可能であってもよい。
【0015】
好適には、弁輪形成術リングアセンブリは、僧帽弁に関して所定の位置、好適には解剖学的位置P1,P2およびP3において3つの押付けエレメントを備える。P1およびP3位置における2つの押付けエレメントにより、弁の横方向距離が調節されてもよく、P2位置における押付けエレメントにより、前後距離が調節されてもよい。
【0016】
(B)付加的にまたは択一的に、(少なくとも1つの)展開可能な押付けエレメントの少なくとも一部は、その押付けエレメントの展開中の使用時に、概して少なくとも1つのリング、例えば支持リングの(例えば内側の)周縁部に沿った所定の位置に、とどまってもよい。
【0017】
例えば、所定の位置にとどまる部分は、たわみ可能な板状部材の端部であってよい。
【0018】
所定の位置にとどまる部分は、概して、少なくともそれぞれのリングの周縁部に沿った移動に関して、不動であってもよい。付加的にまたは択一的に、所定の位置にとどまる部分は、リングの周縁部に沿って移動することなく、それぞれのリングに対して回転してもよい。
【0019】
複数の展開可能な押付けエレメントが設けられている場合、幾つかの実施の形態では、押付けエレメントのうちの少なくとも1つ、選択的に押付けエレメントの全てが、使用時に、概して(例えば支持)リングの(例えば内側)周縁部の周囲のそれぞれの所定の位置にとどまる、それぞれの部分を有してもよい。
【0020】
(C)付加的にまたは択一的に、(少なくとも1つの)押付けエレメントは、支持リングに対する調節可能なリングの可変の変形を規定するために、押付けエレメントの位置において展開の可変の程度を有するように制御可能であってもよい。
【0021】
例えば、押付けエレメントの展開のより大きな程度または状態は、押付けエレメントの位置における調節可能なリングのより大きな内方への変形を生ぜしめてもよい。
【0022】
押付けエレメントの展開の程度は、例えば、押付けエレメントに接続された制御部材によって制御されてもよい。
【0023】
展開の可変の程度を提供することは、弁輪形成術リングアセンブリの融通性と、弁輪形成術リングアセンブリの効率を高めるための、調節可能なリングをカスタム成形する可能性とを高めることができる。変形の程度を、例えば、埋め込みの後、増進的にまたは漸進的に、変化させることもできる。
【0024】
アセンブリは、調節後に押付けエレメントの展開の状態を維持するように構成されていてもよい。例えば、アセンブリは、展開状態を保持するためのラッチング(例えば自己ラッチング)機構を備えてもよい。ラッチング機構は、ラチェットを有してもよい。ラチェットは、(i)展開状態からの押付けエレメントの弛緩を妨害するように、かつ(ii)(展開の状態がさらに保持されてもよい)変形を増大させるために押付けエレメントのさらなる(例えば増進的または漸進的な)展開を許容するように、構成されていてもよい。幾つかの実施の形態では、ラッチ(例えばラチェット)は、展開可能な押付けエレメントの弛緩を許容するために制御可能に解放可能であってもよい。
【0025】
付加的にまたは択一的に、押付けエレメントは、展開の異なる程度を表す複数の所定の異なる展開状態の間で制御可能であってもよく、各程度において、展開状態が保持可能である。幾つかの実施の形態において、複数の所定の異なる状態は、ラチェットによって規定された保持位置に対応してもよい。
【0026】
複数の展開可能な押付けエレメントが設けられている場合、幾つかの実施の形態では、展開可能な押付けエレメントのうちの少なくとも1つ、および選択的に展開可能な押付けエレメントの全てに、可変の展開程度が提供されていてもよい。
【0027】
付加的にまたは択一的に、押付けエレメントは、弛緩可能であってもよい、すなわち、展開状態を少なくともある程度戻すために弛緩可能であってもよい。異なる状態は、所定の異なる展開状態であってもよい。
【0028】
(D)付加的にまたは択一的に、(少なくとも1つの)展開可能な押付けエレメントは、ブレードの少なくとも1つ(例えば端部)への機械的な力の提供に応答して反るように構成されたたわみ可能なブレードを備えてもよい。
【0029】
幾つかの実施の形態において、ブレードは、支持リングによって支持されてもよく、ブレードの少なくとも1つの部分(例えば端部)への機械的な力の提供に応答して、調節可能なリングに向かって内方へ反るように構成されていてもよい。
【0030】
幾つかの実施の形態では、ブレードは、非展開位置において、機械的な力が加えられたときに所定の展開方向に(例えば調節可能なリングに向かって)反りを促進する形状を有してもよい。例えば、ブレードは、(例えば調節可能なリングに向かって)僅かに反ったまたは凸状であるなどの、非直線形状を有してもよい。
【0031】
複数の展開可能な押付けエレメントが設けられている場合、幾つかの実施の形態では、展開可能な押付けエレメントのうちの少なくとも1つ、および選択的に展開可能な押付けエレメントの全てが、それぞれのブレードを備えてもよい。
【0032】
(E)付加的にまたは択一的に、(少なくとも1つの)展開可能な押付けエレメントは、流体展開可能な装置を備えてもよい。
【0033】
流体展開可能な装置は、例えば、膨張可能なブラダまたはバルーン、および/または可動なダイヤフラム、および/またはシリンダ内のピストンを備えてもよい。
【0034】
流体は、例えば、(例えば空圧式制御のための)ガス、または(例えば液圧式制御のための)液体またはゲルであってもよい。
【0035】
1つの形態において、硬化可能な流体、例えばセメントが、導入可能であってもよい。流体展開可能な装置の展開の程度は、膨張流体が流体にとどまる間、調節可能にとどまってよい。展開状態は、流体が硬化したとき、設定されてもよい。流体を硬化させることによって、流体の偶発的なまたは自然の漏れのあらゆるリスクが回避され得る。
【0036】
1つの形態では、可逆的に硬化可能な流体が導入される。流体は、質量において液体状態で導入され、体温に温められるとゲルに重合する(ゼリー化)してもよい。流体は、例えば低温食塩水などの低温の液体を境界面に導入することによって再び液化させられてもよい。流体の硬化は、物理的手段、すなわち光または化学的手段、すなわち触媒の結果として生じてもよい。
【0037】
1つの形態では、非硬化可能な流体は、まず、弁輪形成術リングのさらなる調節が望まれる期間の間、導入され、保持されてよい。さらなる調節が望まれないような治療段階に達すると、非硬化可能な流体は、最終的な展開状態を固定するために、硬化可能な流体(または成分)によって置き換えられてよく(または増強されよく)、バルーンまたはブラダは、正しいサイズを見つけるために周期的に調節されてもよい。バルーンまたはブラダは、可逆的に膨張可能である。正しいサイズが見つかると、治療段階は終了し、さらなる調節は望まれず、ブラダまたはバルーンは収縮させられ、取り出される。次いで、ブラダまたはバルーンを置き換えるために、ステントが導入されてもよい。ある程度時間が経った後にさらなる調節が必要とされる場合は、ステントをさらに拡張させるために、ステントにガイドワイヤが接続されてもよい。
【0038】
(F)付加的にまたは択一的に、(少なくとも1つの)展開可能な押付けエレメントは、1つまたは複数の拡張可能なステントを備えてもよい。
【0039】
ステントは、1つまたは複数の膨張可能なバルーンによって拡張可能であってもよい。幾つかの実施の形態では、3つのステントが、1つの円筒状バルーンまたは複数のバルーンまたは成形されたバルーンに配置されていてもよい。ステントは、支持リングによって支持されていてもよい。択一的に、ステントおよびバルーンは、共通のアセンブリまたは別個のアセンブリへの支持リングおよび調節可能リングの埋め込みの後、さらに後で導入されてもよい。膨張可能なバルーンは、ステント内に配置されてもよく、流体、例えばガス、または液体またはゲルの導入により拡張する。
【0040】
(G)付加的にまたは択一的に、(少なくとも1つの)展開可能な押付けエレメントは、ケージ状構造または平行四辺形構造、すなわち「クリック(crick)」またはパンタグラフなどの、半径方向に拡張可能な構造を備えてもよい。
【0041】
クリックは、支持リングに取り付けられた基礎を備える。2つのラチェットは、基礎に対して基本的に垂直に延びている。ラチェットは、力を加えることによって2つのカウンターラチェット内で移動することができる。好適には、力は、アクチュエータによって加えられる。基礎と向かい合って、調節可能なリングの近くのラチェットの上部において、別のプレートが配置されている。この別のプレートは、ラチェットをカウンターラチェット内で移動させることによって内方へ移動させられる。
【0042】
クリックまたはケージは、引張力によってまたは圧力下の流体を介して半径方向に拡張可能であってもよい。クリックまたはケージは、支持リングによって支持されていてもよい。パンタグラフは、2つの側部と、側部の間に延びた、平行四辺形に基づく形式で接続された機械的なリンクであるバーとを備える。プレートは、調節可能なリングの近くでバーの上部に配置されている。プレートは、少なくとも1つの側部が他方の側部に向かって移動させられたときに内方へ延びている。平行四辺形は、プロセスの間、その形状を変化させるが、平行四辺形のままである。好適には、両側部は、互いに向かって移動させられる。この移動プロセスの間、バーの交差箇所は、基本的に、それらの位置にとどまる。好適には平行四辺形の側部に取り付けられた他の角は、移動プロセスの間、内方へ移動する。
【0043】
択一的に、パンタグラフは、側部を有さないが、平行四辺形に基づく形式でバーに接続された機械的なリンクと、その上部におけるプレートのみを有する。バーの外側の角を互いに向かって移動させることによって、プレートは内方へ移動させられる。
【0044】
(H)付加的にまたは択一的に、(少なくとも1つの)展開可能な押付けエレメントは、回転可能なカム状構造を備えてもよい。
【0045】
カム状構造は、支持リングに埋め込まれてもよい。カム状構造は、外側回動点を中心に回転させることができる。外側回動点は、支持リングに埋め込まれてもよい。外側回動点を中心にカム状構造を回転させることにより、カム状構造の一方の端部が、調節可能なリングを内方へ押し付ける。展開は、回転させられた角度に依存する。
【0046】
発明の別の独立した態様(選択的に前述の特徴のうちのいずれかと組み合わせて使用可能である)は、リングアセンブリの形状を調節するための少なくとも1つのアジャスタを備える、調節可能な弁輪形成術リングアセンブリを提供してもよく、アジャスタは、流体展開可能な装置を有する(例えば、膨張可能なブラダ、および/または可動なダイヤフラム、および/またはシリンダ内のピストンを有する)。
【0047】
発明の別の独立した態様(選択的に、前述の特徴のうちのいずれかと組み合わせて使用可能である)は、弁輪形成術リングによって治療される弁の性能に関するパラメータを送信するための少なくとも1つのセンサを備える弁輪形成術リング(例えば、および調節可能な弁輪形成術リング)を提供してもよい。選択的に、センサは、血流を検出するためのドップラー効果センサ、ドップラー効果センサのためのトランスデューサ、血流に基づいてその他のセンサを作動させる電流トランスデューサ、音響トランスデューサ、超音波トランスデューサ、血圧を検出するための圧力センサ、pH電解液センサなどから選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0048】
発明の別の独立した態様(選択的に、前述の特徴のうちのいずれかと組み合わせて使用可能である)は、心臓弁の部位において電気信号を提供または検出するための少なくとも1つの電極、特に細動除去電極を備える弁輪形成術リング(例えば、および調節可能な弁輪形成術リング)を提供してもよい。
【0049】
発明の別の態様(選択的に前述の特徴のうちのいずれかと組み合わせて使用可能である)は、選択的に上に規定された、調節可能な弁輪形成術リングまたはリングアセンブリと、リングへの伝達のための物理的調節制御を生じるためのアクチュエータと、アクチュエータからリングへの物理的調節制御を伝達するために、アクチュエータをリングに接続するための伝達ラインと、を備えるシステムを提供してもよい。
【0050】
システムは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を備えてもよく、これらの特徴は全て選択的である:
(A)伝達ラインは、少なくとも部分的に(および選択的に実質的に全体的に)生分解性および/または人体において再吸収可能である材料から形成されていてもよい。
(B)伝達ラインは、さらに、例えば電気的除細動のための電気ショックを提供するためにセンサと通信するためのケーブルとして機能してもよい。
(C)伝達ラインをリングまたはリングアセンブリに解放可能に接続するために、解放可能なカップリングが提供されてもよい。
(D)弁輪形成術リングは、リングの形状を調節するために複数のアジャスタ(例えば押付けエレメント)を有してもよく、アクチュエータは、複数のアジャスタを制御するように構成されていてもよい。
【0051】
例えば、システムは、少なくとも1つの所定のシーケンスで作動を制御するように構成されていてもよい。
【0052】
また、例えば、システムは、後部および/または前部に関連したアジャスタの作動前に、リングの側部に関連した少なくとも1つのアジャスタの強制的な作動のために構成されていてもよい。
【0053】
また、例えば、(および選択的に上記のように最初の強制的な側部調節の結果として)、システムは、僧帽弁前尖の実質的な収縮期前方運動(SAM)の開始を引き起こすことなく僧帽弁の強化を提供するような形式でアジャスタの作動順序を制御するように構成されていてもよい。前尖は、心室の側壁から離れる方向へ向けられていてよい。これにより、環作動後の左心室流出路の閉塞のリスクが低減される。
【0054】
また、例えば、(および選択的に上記のように最初の側部調節の結果として)、弁輪形成術リングおよびひいては弁輪形成術領域は、より解剖学的な形状を有する。
【0055】
(E)(選択的に機械的な力の伝達のための)伝達ラインは、少なくとも1つのらせん形または非らせん形のコイルを備えてもよく、複数のコイル巻回部を有する。コイル巻回部は、軸方向圧縮力の不在時に伝達ラインの軸方向柔軟性を可能にするように構成されていてもよく、コイル巻回は、軸方向圧縮力に応答して互いに対して軸方向に支持し、これにより、伝達ラインに沿って軸方向圧縮力を伝達するためのコラム強度を提供する。
【0056】
伝達ラインは、管腔を有するカテーテルとして構成されていてもよい。
【0057】
上記態様は独立して使用されてもよいが、有利には組み合わせて使用されてもよい。好適な実施の形態は、全ての態様が組み合わされたものを示している。
【0058】
別の独立した態様は、支持リングと、少なくとも部分的に支持リング内にはめ込まれた、調節可能なリングと、支持体として支持リングを使用して、調節可能なリングを変形させるための、展開可能な少なくとも1つの押付けエレメントと、を備える、調節可能な弁輪形成術リングアセンブリを提供する。複数の押付けエレメントは、リングの周囲の異なる位置において使用されてもよい。各押付けエレメントは、押付けエレメントの位置において、調節可能なリングの変形の程度を変化させるために、可変の程度の展開を有してもよい。各押付けエレメントは、たわみ可能なブレードを備えてもよく、ブレードの状態は、ラチェットによって保持されてもよい。押付けエレメントは、所定の制御されたシーケンスで作動させられてもよい。
【0059】
幾つかの態様、特徴および概念が、上記および添付の請求項に示されているが、保護は、それが強調されているか否かにかかわらず、本明細書に説明されたおよび/または図面に例示されたあらゆる新規の概念または特徴の組み合わせのために請求されている。
【0060】
本発明の限定ではない実施の形態を、添付の図面に関連して、例示のみを目的として説明する。