(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231223
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】高圧及び低圧の冷却流体を用いる冷却システムを備えたタービン翼
(51)【国際特許分類】
F01D 5/22 20060101AFI20171106BHJP
F01D 5/18 20060101ALI20171106BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
F01D5/22
F01D5/18
F02C7/18 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-555992(P2016-555992)
(86)(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公表番号】特表2017-518452(P2017-518452A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】US2015019350
(87)【国際公開番号】WO2015134959
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】14/200,168
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジャン エイチ. マーシュ
(72)【発明者】
【氏名】カーメン アンドルー スクリブナー
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ジョン メスマン
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−121672(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0056716(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0194939(US,A1)
【文献】
特開昭56−143302(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/001655(WO,A1)
【文献】
特表2013−515893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/12, 5/30, 9/00−11/24
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼(20)であって、
外側壁(34)により形成された概して細長い中空翼(32)であって、前縁(36)と、後縁(38)と、正圧面(40)と、負圧面(42)と、前記翼(20)の第1の端部(46)における根元部(44)と、前記第1の端部(46)とは反対側の第2の端部(50)における先端(48)と、前記概して細長い中空翼(32)の内側に位置している翼冷却システム(10)と、を有する中空翼(32)と、
前記概して細長い中空翼(32)を形成する前記外側壁(34)から、前記概して細長い中空翼(32)を含む翼(20)の列(52)内に位置する隣接するタービン翼(20)に向かって延在するスナッバ(26)と、
前記スナッバ(26)内に位置し下方の根元部スロット(28)へと延在しているスナッバ冷却システム(16)と、
低圧冷却空気を前記翼冷却システム(10)へと供給するために、低圧空気源(30)に流体連通しておりかつ前記概して細長い中空翼(32)内の前記翼冷却システム(10)の低圧サブシステム(7)に連通している低圧空気冷却システム(18)と、
高圧冷却空気を前記スナッバ冷却システム(16)に供給するために、高圧空気源(14)と、前記翼冷却システム(10)の前記スナッバ冷却システム(16)とに流体連通されている高圧冷却システム(24)であって、前記高圧冷却空気は、前記低圧冷却空気よりも高い圧力を有している、高圧冷却システム(24)と、
を備えるタービン翼(20)。
【請求項2】
前記低圧空気冷却システム(18)は、周囲空気を前記翼冷却システム(10)へと供給するために、周囲空気源(30)に流体連通しておりかつ前記概して細長い中空翼(32)内の前記翼冷却システム(10)に連通している周囲空気冷却システム(18)である、請求項1記載のタービン翼(20)。
【請求項3】
前記高圧冷却システム(24)は、圧縮機抽気を前記スナッバ冷却システム(16)に供給するために、圧縮機(14)と前記スナッバ冷却システム(16)とに流体連通された圧縮機抽気冷却システム(24)である、請求項1記載のタービン翼(20)。
【請求項4】
前記圧縮機抽気冷却システム(24)に流体連通している前記圧縮機(14)は、前記タービン翼(20)が取り付けられているガスタービンエンジン(12)のタービン(54)に圧縮機抽気を供給する、請求項3記載のタービン翼(20)。
【請求項5】
前記概して細長い翼(32)の前記根元部(44)の半径方向内側に位置する下方の根元部スロット(28)と、前記概して細長い翼(32)の前記根元部(44)の半径方向内側に位置する圧縮機空気マニホルド(60)と、をさらに備え、前記圧縮機空気マニホルド(60)は、前記下方の根元部スロット(28)の半径方向内側でディスク(80)内に位置している、請求項1記載のタービン翼(20)。
【請求項6】
少なくとも1つの可動の空気供給管(62)をさらに備え、該空気供給管は、前記圧縮機空気マニホルド(60)における入口(64)と、前記概して細長い翼(32)内の通路(68)との係合と、該通路(68)との非係合との間で可動な出口(66)であって、前記下方の根元部スロット(28)内に位置している出口(66)と、を有している、請求項5記載のタービン翼(20)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの可動の空気供給管(62)はさらに、前記少なくとも1つの可動の空気供給管(62)が圧縮機抽気を含んでいる場合に、前記圧縮機空気マニホルド(60)に対して前記少なくとも1つの可動の空気供給管(62)をシールするために、前記圧縮機空気マニホルド(60)を形成する内壁(70)に適合するようになっている、前記入口(64)に隣接して位置するカラー(74)を有している、請求項6記載のタービン翼(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明の開発は、米国エネルギー省の高度タービン開発プログラム、契約番号DE−FC26−05NT42644によって部分的に支援されたものである。従って、米国政府は本発明において一定の権利を有することがある。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般にタービンエンジンに関し、特にガスタービンエンジン内のタービン翼のための周囲冷却空気を用いた冷却流体供給システムに関する。
【背景技術】
【0003】
通常、ガスタービンエンジンは、空気を圧縮するための圧縮機と、圧縮空気を燃料と混合し混合物に点火するための燃焼器と、電力を発生するためのタービンブレードアセンブリとを備える。燃焼器はしばしば、華氏2500度を超過し得る高温で作動する。典型的なタービン燃焼器構成は、タービンブレードアセンブリをこのような高温に曝す。従って、タービンブレード及びタービンベーンは、このような高温に耐え得る材料から製造されなければならない。タービンブレード、ベーン、及びその他の構成要素はしばしば、これらの部材の耐用寿命を拡大し、過度に高い温度の結果として生じる故障の可能性を減じるために、冷却システムを含んでいる。
【0004】
通常、タービンベーンは、ベーン支持体から半径方向内側に向かって延在し、ロータアッセンブリの近位で終端しており、タービンブレードは半径方向外側に向かって延在し、ベーン支持体の近位で終端している。タービンベーンとブレードとは通常、燃焼器排ガスから発生する熱からベーンとブレードを冷却するために、これらの内面に位置する複数の冷却通路を有している。いくつかの大きなタービンブレードは相違なく、同様に内部冷却システムを必要とする。さらに、特により大きな下流の段における大きなタービンブレードは、構造的支持のために、隣接するブレード間に延在するスナッバを備えている場合がある。スナッバは、このスナッバを形成する外壁を冷却する内部冷却システムを有していてよい。エンジンはますます高い負荷で運転されるようになっているので、従来の冷却システムの非効率性を減じる、タービン翼及びスナッバ用の新規の冷却システムに対するニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ガスタービンエンジンのタービン翼用の低圧冷却システムと高圧冷却システムとを含むタービン翼冷却システムが開示されている。少なくとも1つの態様では、低圧冷却システムは周囲空気冷却システムであってよく、高圧冷却システムは圧縮機抽気冷却システムであってよい。少なくとも1つの実施の形態では、圧縮機抽気冷却システムは、高圧サブシステムと連通していて、この高圧サブシステムは、スナッバ内に位置するスナッバ冷却システムであってよい。可動の空気供給管を含む供給システムは、低圧冷却サブシステムと高圧冷却サブシステムとを分離するために使用することができる。供給システムは、スナッバ冷却システムに引きわたされるべき高圧冷却空気を、低圧冷却システムによりタービン翼冷却システムの別の部分へと供給される低圧冷却流体から分離することを可能にする。
【0006】
少なくとも1つの実施の形態では、冷却システムは、スナッバ冷却システムを冷却するために、圧縮機からの冷却流体をスナッバ冷却システムへと向けることができ、さらに冷却システムは、翼の別の側面を冷却するために、周囲空気源からの冷却流体を翼内の周囲空気冷却システムへと向けることができる。スナッバ冷却システムは、圧縮機抽気を受け取るために圧縮機抽気冷却システムに連通していてよい。スナッバ冷却システムは、スナッバ内に位置していてよく、下方の根元部スロットへと延在していてよい。周囲空気冷却システムは、スナッバ冷却システム以外の翼冷却システムの部分に周囲空気を供給するために、周囲空気源に流体連通していてよい。圧縮機抽気冷却システムは、圧縮機抽気をスナッバ冷却システムに供給するために、圧縮機に流体連通していてよい。従って、圧縮機抽気と周囲空気とは使用時に、タービン翼冷却システム内で分離されたまま維持される。
【0007】
冷却システムは、少なくとも部分的にタービン翼内に位置していてよく、このタービン翼は、外側壁により形成された概して細長い中空翼から成っていてよく、中空翼は、前縁と、後縁と、正圧面と、負圧面と、翼の第1の端部における根元部と、前記第1の端部とは反対側の第2の端部における先端と、概して細長い中空翼の内側に位置している翼冷却システムとを有している。タービン翼は、概して細長い中空翼を形成する外側壁から、概して細長い中空翼を含む翼の列内に位置する隣接するタービン翼に向かって延在するスナッバを有していてよい。冷却システムはさらに、スナッバ内に位置していて、下方の根元部スロットへと延在しているスナッバ冷却システムを有していてよい。冷却システムは、翼内の周囲冷却システムに周囲空気を供給するために、周囲空気源に流体連通している周囲空気冷却システムを有していてよい。周囲空気冷却システムは、タービン翼内にある1つ以上の冷却通路の任意の適切な構造から形成されていてよい。冷却システムはさらに、スナッバ冷却システムに圧縮機抽気を供給するために、圧縮機とスナッバ冷却システムとに流体連通している圧縮機抽気冷却システムを含んでいてよい。
【0008】
少なくとも1つの実施の形態では、圧縮機抽気冷却システムは、タービン翼が取り付けられているガスタービンエンジンのタービンに圧縮機抽気を供給する圧縮機に流体連通していてよい。圧縮機は、タービンの上流、かつタービンエンジンの燃焼器の上流に位置していてよい。別の実施の形態では、圧縮機抽気冷却システムは、タービン翼が取り付けられているガスタービンエンジンのタービンに流体連通していない第2の圧縮機に流体連通していてよい。少なくとも1つの実施の形態では、第2の圧縮機は、必要時に、スナッバを冷却するために流入する周囲空気を加圧するために作動させることができる外部の圧縮機ファンであってよい。第2の圧縮機は、タービン翼が取り付けられているガスタービンエンジンのタービンに圧縮機抽気を供給する圧縮機に対して付加的なものであってよい。
【0009】
少なくとも1つの実施の形態では、冷却システムは、概して細長い翼の根元部の半径方向内側に位置する下方の根元部スロットと、概して細長い翼の根元部の半径方向内側に位置する圧縮機空気マニホルドとを有していてよい。圧縮機空気マニホルドは、下方の根元部スロットの半径方向内側に位置していてよく、ディスクに位置していてもよい。冷却システムはさらに、1つ以上の可動の空気供給管を有していてよく、該空気供給管は、圧縮機空気マニホルドにおける入口と、概して細長い翼内の通路との係合と、該通路との非係合との間で可動な出口であって、下方の根元部スロットに位置している出口と、を有している。可動の空気供給管はさらに、可動の空気供給管が圧縮機抽気を含んでいる場合に、圧縮機空気マニホルドに対して可動の空気供給管をシールするために、圧縮機空気マニホルドを形成する内壁に適合するようになっている、入口に隣接して位置するカラーを有していてよい。可動の空気供給管の出口は、概して細長い翼内の通路に対する可動の空気供給管の係合を容易にするために、面取りされた外側縁部を有していてもよい。概して細長い翼内の通路と可動の空気供給管とは、概して細長い中空翼を形成する外壁の内面に接触しない外面を有していてよい。
【0010】
別の実施の形態では、タービン翼は、低圧冷却空気を翼冷却システムへと供給するために、低圧空気源に流体連通しかつ概して細長い中空翼内の翼冷却システムの低圧サブシステムに連通している低圧空気冷却システムを有していてよい。タービン翼はさらに、高圧冷却空気を高圧冷却サブシステムに供給するために、高圧空気源と、翼冷却システムの高圧冷却サブシステムとに流体連通されている高圧冷却システムを有していてよく、前記高圧冷却空気は、前記低圧冷却空気よりも高い圧力を有している。少なくとも1つの実施の形態では、高圧冷却サブシステムは、スナッバ冷却システムから成っていてよい。少なくとも1つの実施の形態では、低圧空気冷却システムは、周囲空気を翼冷却システムへと供給するために、周囲空気源に流体連通しかつ概して細長い中空翼内の翼冷却システムに連通している周囲空気冷却システムであってよい。高圧冷却システムは、スナッバ冷却システムに圧縮機抽気を供給するために、圧縮機とスナッバ冷却システムとに流体連通している圧縮機抽気冷却システムであってよい。
【0011】
別の実施の形態では、タービン翼は、概して細長い翼と、翼冷却システム、即ち前述したように、低圧空気冷却システムと、高圧空気冷却システムと、高圧空気冷却システムを翼冷却システムの高圧部分に連結するための少なくとも1つの可動の空気供給管と、を備えた翼冷却システムと、を有していてよい。可動の空気供給管は、圧縮機空気マニホルドにおける入口と、概して細長い翼内の通路との係合と、該通路との非係合との間で可動な出口であって、下方の根元部スロットに位置している出口と、を有していてよい。
【0012】
タービン翼冷却システムの利点は、低圧冷却システムがタービン翼の一部を冷却し、低圧冷却システムによっては適切に冷却することはできないタービン翼のその他の側面は、高圧冷却システムによって冷却されることにある。従って、タービン翼を冷却するために必要な高圧空気の量は減じられ、従って、圧縮機又はタービンエンジンのその他の構成部分によって形成される高圧空気の非効率的な使用を減じることができる。
【0013】
これらの実施の形態及びその他の実施の形態を以下でさらに詳細に説明する。
【0014】
明細書の一部に組み込まれ、明細書の一部を形成する添付の図面は、ここに開示される発明の実施の形態を例示し、詳細な説明と共に本発明の原理を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】圧縮機抽気を供給する圧縮機抽気冷却システムと、スナッバ冷却システムに周囲空気を供給する周囲空気冷却システムと、から成る冷却システムを有するタービンエンジンを概略的に示す図である。
【
図2】スナッバ冷却システムを有するスナッバを備えるタービン翼を概略的に示す側面図である。
【
図3】
図2の3−3線に沿って切断した、スナッバ冷却システムと、隣接する冷却システム内におけるスナッバ冷却システムとを示す部分断面図である。
【
図4】冷却システムの一実施形態を有する
図2のタービン翼の根元部を示す部分断面図である。
【
図5】
図4に示した冷却システムを有するタービン翼の根元部を示す部分断面図であって、圧縮機抽気が圧縮機空気マニホルドに充填されており、可動の空気供給管が半径方向外側に摺動され通路に係合した状態を示す図である。
【
図6】
図5に示した冷却システムを有するタービン翼の根元部の正面を示す部分断面図である。
【
図7】圧縮機抽気を供給する圧縮機抽気冷却システムと、スナッバ冷却システムに周囲空気を供給する周囲空気冷却システムと、から成る冷却システムを有する別の実施の形態のタービンエンジンを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図7に示すように、ガスタービンエンジン12のタービン翼20用の低圧冷却システム6と高圧冷却システム8とを含むタービン翼冷却システム10が開示されている。少なくとも1つの実施の形態では、低圧冷却システム6は周囲空気冷却システム18であってよく、高圧冷却システム8は圧縮機抽気冷却システム24であってよい。少なくとも1つの実施の形態では、圧縮機抽気冷却システム24は、高圧冷却サブシステム9と連通していて、この高圧冷却サブシステム9は、スナッバ26内に位置するスナッバ冷却システム16であってよい。1つ以上の可動の空気供給管62を有する供給システム11を、低圧冷却サブシステム7と高圧冷却サブシステム9とを分離するために使用することができる。供給システム11は、スナッバ冷却システム16に引きわたされるべき高圧冷却空気を、低圧冷却システム6によって、タービン翼冷却システム10の別の部分へと供給される低圧冷却流体から分離することを可能にする。
【0017】
少なくとも1つの実施の形態では、タービンエンジン12用のタービン翼冷却システム10は、高圧源からの高圧冷却流体を高圧サブシステム9へと向け、低圧源からの低圧冷却流体をタービン翼20内の低圧冷却サブシステム7へと向ける。少なくとも1つの実施の形態では、高圧冷却システム8は圧縮機抽気冷却システム24であってよく、高圧冷却サブシステム9はスナッバ冷却システム16であってよい。さらに、低圧冷却システム6は周囲空気冷却システム18であってよく、低圧冷却サブシステム7は、スナッバ冷却システム16以外の、タービン翼20内のタービン翼冷却システム10の側面であってよい。従って、タービンエンジン12用のタービン翼冷却システム10は、圧縮機14からの冷却流体をスナッバ冷却システム16へと向けてよく、周囲空気源30からの冷却流体を、タービン翼20の別の側面を冷却するために周囲空気冷却システム18へと向けてよい。
【0018】
少なくとも1つの実施の形態では、タービンエンジン12用のタービン翼冷却システム10は、圧縮機14からの冷却流体をスナッバ冷却システム16へと向ける。タービン翼冷却システム10はさらに、周囲空気源30からの冷却流体を、タービン翼20の別の側面を冷却するために周囲空気冷却システム18へと向けてよい。スナッバ冷却システム16は、圧縮機抽気を受け取るために圧縮機抽気冷却システム24に連通していてよい。スナッバ冷却システム16は、スナッバ26内に位置していてよく、下方の根元部スロット28へと延在していてよい。周囲空気冷却システム18は、スナッバ冷却システム16以外の、タービン翼20内のタービン翼冷却システム10の側面に周囲空気を供給するために、周囲空気源30に流体連通していてよい。圧縮機抽気冷却システム24は、スナッバ26を冷却するためにスナッバ冷却システム16に圧縮機抽気を供給するために、圧縮機14及びスナッバ冷却システム16に流体連通していてよい。従って、周囲空気と圧縮機抽気とは、タービン翼冷却システム10内で分離されたまま維持される。
【0019】
図2に示すように、タービン翼冷却システム10は、少なくとも部分的にタービン翼20内に位置していてよく、タービン翼20は、外側壁34から形成された概して細長い中空翼32によって形成されていてよく、さらに前縁36と、後縁38と、正圧面40と、負圧面42と、翼32の第1の端部46における根元部44と、この第1の端部46とは反対側の第2の端部50における先端48と、概して細長い中空翼32の内側に位置している翼冷却システム10とを有している。タービン翼20は、概して細長い中空翼32を形成する外側壁34から、概して細長い中空翼32を含む翼20の列52内に位置する隣接するタービン翼20に向かって延在するスナッバ26を有していてよい。冷却システム10はさらに、スナッバ26内に位置していて下方の根元部スロット28へと延在するスナッバ冷却システム16を含んでいてよい。タービン翼冷却システム10は、周囲空気源30と、高圧冷却システム8内又はスナッバ冷却システム16内にはないタービン翼冷却システム10の側面とに、流体連通している周囲空気冷却システム18を含んでいてよい。周囲空気冷却システム18は、タービン翼20内にある1つ以上の冷却通路の任意の適切な構造から形成されていてよい。冷却システム10はさらに、スナッバ冷却システム16に圧縮機抽気を供給してスナッバ26を冷却するために、圧縮機14とスナッバ冷却システム16とに流体連通している圧縮機抽気冷却システム24を含んでいてよい。
【0020】
図2に示すように、翼20内のタービン翼冷却システム10は、半径方向に延在する3つの通路システムから成っていてよいが、これに限定されるものではない。スナッバ26の半径方向外側の点では、タービン翼冷却システム10は、前縁冷却通路82と後縁冷却通路84とによって形成される半径方向に延在する2つの通路に減じられてよい。前縁冷却通路82と後縁冷却通路84との間に中央冷却通路86が位置していてよく、この中央冷却通路86は、スナッバ冷却システム16に圧縮空気を供給してよい。中央冷却通路86は、半径方向外側に移動するにつれ先細りしてよく、スナッバ26で終端していてよい。従って、翼20の半径方向内側部分は3経路冷却システムを有しており、翼20の半径方向外側部分は2経路冷却システムを有している。
【0021】
スナッバ冷却システム16は、翼20の正圧面40及び負圧面42から延在する各スナッバ26内全体に延在していてよい。スナッバ冷却システム16は、横方向に延在する通路92によって形成されていてよく、この通路92は複数の排出出口94に連通しており、これらの排出出口94は、スナッバ26の下流側96で終端している。少なくとも1つの実施の形態では、スナッバ冷却システム16は、スナッバ冷却システム16内の3つの排出出口94によって形成されてよい。少なくとも1つの実施の形態では、スナッバ26は、管状の形状のハウジングによって形成されてよい。
【0022】
図1に示すように、少なくとも1つの実施の形態では、圧縮機抽気冷却システム24は、タービン翼20が取り付けられているガスタービンエンジン12のタービン54に圧縮機抽気を供給する圧縮機14に流体連通していてよい。圧縮機14は、タービン54の上流、かつタービンエンジン12の燃焼器88の上流に位置していてよい。圧縮機抽気冷却システム24は、圧縮機14の早期段からの圧縮空気を受け取ることができる。
【0023】
図7に示すように、別の実施の形態では、圧縮機抽気冷却システム24は、タービン翼20が取り付けられているガスタービンエンジン12のタービン54に流体連通していない第2の圧縮機56に流体連通していてよい。少なくとも1つの実施の形態では、第2の圧縮機56は、必要時に、周囲空気冷却システム18のためにポンプ作用を行わせるために作動させることができる外部の圧縮機ファン58であってよい。第2の圧縮機56は、タービン翼20が取り付けられているガスタービンエンジン12のタービン54に圧縮機抽気を供給する圧縮機14に対して付加的なものであってよい。第2の圧縮機56は、タービン翼20を冷却するために周囲空気冷却システム18内で使用される周囲空気の全てを、又はスナッバ冷却システム16内で使用される冷却空気の一部のみを加圧するために使用することができる。
【0024】
図2〜
図6に示すように、タービン翼冷却システム10は、高圧冷却サブシステム9に高圧冷却流体を供給するために供給システム11を有していてよい。少なくとも1つの実施の形態では、供給システム11は概して細長い翼32の根元部44の半径方向内側に位置する下方の根元部スロット28と、概して細長い翼32の根元部44の半径方向内側に位置する圧縮機空気マニホルド60とを有していてよい。圧縮機空気マニホルド60は、下方の根元部スロット28の半径方向内側でディスク80に位置していてよい。タービン翼冷却システム10はさらに、1つ以上の可動の空気供給管62を有していてよく、この空気供給管62は、圧縮機空気マニホルド60における入口64と、概して細長い翼32内の通路68との係合と、この通路68との非係合との間で可動な出口66であって、下方の根元部スロット28に位置している出口66と、を有している。可動の空気供給管62は、組み立てを可能にするために使用可能である。少なくとも1つの実施の形態では、タービン翼冷却システム10は、可動の空気供給管62の代わりに固定の管路を有していてよい。
【0025】
可動の空気供給管62はさらに、可動の空気供給管62が圧縮機抽気を含んでいる場合に、圧縮機空気マニホルド60に対して可動の空気供給管62をシールするために、圧縮機空気マニホルド60を形成する内壁70に適合するようになっている、入口64に隣接して位置するカラー74を有していてよい。可動の空気供給管62の出口66は、概して細長い翼32内の通路68に対する可動の空気供給管62の係合を容易にするために、面取りされた外側縁部72を有していてもよい。概して細長い翼32内の通路68と可動の空気供給管62とは、概して細長い翼32を形成する外壁34の内面78に接触しない外面76を有していてよい。
【0026】
タービンエンジン12の作動中、冷却流体は冷却システム10へと供給されてよい。冷却システム10の少なくとも1つの側面に接続されて、周囲空気源30からの周囲空気は、空気源30から周囲空気冷却システム18へと、及びタービン翼20内の低圧冷却サブシステム7へと通されてよい。高圧冷却流体、例えばこれに限定されるものではないが圧縮機抽気は、スナッバ26を冷却するには適当ではない全ての周囲空気冷却システムが存在している翼内で、スナッバ26を冷却するためのスナッバ冷却システム16のような、高圧冷却サブシステム9へと通されてよい。
【0027】
少なくとも1つの実施の形態では、圧縮機抽気は、タービン翼20を支持するディスク80内に位置する圧縮機空気マニホルド60内で捕集されてよい。圧縮機空気マニホルド60は、下方の根元部スロット28によってタービン翼20の根元部44から分離されていてよい。圧縮機抽気が圧縮機空気マニホルド60を満たすと、可動の空気供給管62は圧縮機空気マニホルド60内の開口を通って摺動し、これにより出口66は通路68に係合し、入口64を取り囲むカラー74は、可動の空気供給管62を圧縮機空気マニホルド60に対してシールするために、圧縮機空気マニホルド60を形成する内壁70に対するシールを形成する。圧縮機抽気は、スナッバ26を冷却するためにスナッバ冷却システム16へと通されてよい。
【0028】
上記説明は、本発明を例示、説明及び記述するという目的で提供されている。これらの実施の形態に対する変更及び適応は、当業者に明らかになるであろうし、本発明の範囲又は思想から逸脱することなく成し得るものである。