(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボア(3a)を有する超伝導磁石(3)と、この超伝導磁石(3)のボア(3a)内に貫通配置されていて磁性付与の被分離物質を含有する泥水を流動させる流動管(4)と、この流動管(4)内で泥水中の被分離物質を吸着可能な多数枚の磁気フィルタ(5)と、この磁気フィルタ(5)を流動管(4)内外に移動させるフィルタ移動機構(6)とを備えた磁気分離装置であって、
前記フィルタ移動機構(6)は、磁気フィルタ(5)を間隔をおいて装着しかつ流動管(4)の内側から外側を通って再び内側に戻る環状の索条体(7)と、流動管(4)内において磁気フィルタ(5)を泥水流動方向に対面する姿勢に保持する姿勢保持手段(8)とを有しており、
前記磁気フィルタ(5)は、水貫通流動可能な多孔の磁性フィルタ材(11)と、隣接する磁性フィルタ材(11)との間隔を確保する間隔保持部材(12)とを有していることを特徴とする磁気分離装置。
前記フィルタ移動機構(6)は、索条体(7)が磁気フィルタ(5)をリンク(13a)に取り付けたチェーン(13)で形成され、索条体(7)を流動管(4)内の下流から上流に案内する下流スプロケット(14)及び上流スプロケット(15)と、上流スプロケット(15)から流動管(4)外上方へ移動しかつ下流スプロケット(14)へ案内する駆動スプロケット(16)とを有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気分離装置。
【背景技術】
【0002】
泥水処理や排水処理で処理能力の大容量化のため、有害物質を吸着する鉄粉と外磁場を使った磁気分離装置が、特許文献1に開示されているように、重金属を含有する汚染土壌を浄化する重金属汚染土壌の処理システムとして利用されている。
特許文献1に開示された重金属汚染土壌の処理システムは、重金属を含有する汚染土壌に水を混合し、汚染土壌と水とを含むスラリーを生成するスラリー生成装置と、スラリー生成装置によって生成されたスラリーに鉄を含有する鉄含有粒子を混合して、重金属を鉄含有粒子に付着させる混合装置と、混合装置によってスラリーに混合された鉄含有粒子をスラリーから磁気により分離して回収する磁気分離装置と、磁気分離装置によって回収された鉄含有粒子を、再度スラリーに混合するために混合装置に返送する返送路と、を備えている(請求項1)。
【0003】
前記磁気分離装置は、搬送されてくるスラリーを貯溜可能でありかつ鉛直方向に長く循環するベルトを配置した本体部と、この本体部の外面に当接して配置されていて磁界(外磁場)を発生させる磁界発生部とを備えている。磁界発生部から発生される磁界は、本体部の下側では強く、上側になるにつれて弱くなるように設定されており、本体部は上下中途部にスラリーの流入口が形成され、下部に排出口が形成されている。磁界によってベルトに吸着されて上昇してくる鉄粉を、本体部の上部に設けた鉄粉回収口で吸引回収するように構成されている。
【0004】
また、工場廃水、地下廃水等の廃水の処理に、被分離物質に磁性を付与して磁力で水から分離させる磁気分離装置が、特許文献2に開示されているように、廃水処理システムとして利用されている。
特許文献2に開示された廃水処理システムは、廃水中に含まれる被分離物質に磁性を付与する磁性付与手段と、磁性の付与された被分離物質をソレノイド型超伝導磁石が発生する磁場で捕獲することにより被分離物質を廃水から分離する超伝導磁気分離手段とを備え、前記超伝導磁気分離手段が、単位磁気フィルタを着脱自在に積層して構成した積層磁気フィルタを超伝導磁石のボア内に備え、この積層磁気フィルタの長さが少なくとも超伝導磁石の長手方向の長さ以上ある廃水処理システムにおいて、超伝導磁石の励磁中に前記積層磁気フィルタの下流側(清浄水側)に単位磁気フィルタを押し込むことにより上流側(汚水側)から単位磁気フィルタを取り出し、洗浄した後に再度下流側に戻すよう構成された移送・洗浄手段をさらに備えている(請求項1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記前者従来技術は、重金属を含有するスラリーを連続処理できる一方で、超伝導磁石の最も磁場の強いボア内ではなく、そこより磁場の弱い外側で磁化するベルトに磁性体を回収する方法であるため、鉄粉などの強磁性体を回収するのに適しているが、鉄粉よりも弱磁性体である有害物質を吸着する機能性材料を使用する場合には、処理量が多い場合に回収ロスが生じるという問題があった。
【0007】
また、前記後者従来技術は、単位磁気フィルタを着脱自在に積層して構成した積層磁気フィルタに対して、下流側から清浄な単位磁気フィルタを押し込むことにより上流側の単位磁気フィルタを順次取り出して洗浄し、洗浄した後に下流側に戻すことができ、連続した磁気分離及び被分離物質の回収が可能であるが、単位磁気フィルタの移動は、超伝導磁石のボア内では単位磁気フィルタ自体の押動であり、ボア内外の移動は、ボア内の積層磁気フィルタから分離する方向の単位磁気フィルタ1枚ずつの押し込み・戻し動作であるため、作業効率を高めることが困難になっている。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした磁気分離装置及び磁気分離方法を提供することを目的とする。
本発明は、多数枚の磁気フィルタを環状の索条体に装着してエンドレス状に移動させることにより、磁気分離作業効率を向上できるようにした磁気分離装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、超伝導磁石のボア内外で多数枚の磁気フィルタを環状の索条体に装着して多数枚同時に等速移動させることにより、強磁場内で円滑にかつ高効率の磁気分離ができるようにした磁気分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
磁気分離装置は第1に、ボア3aを有する超伝導磁石3と、この超伝導磁石3のボア3a内に貫通配置されていて磁性付与の被分離物質を含有する泥水を流動させる流動管4と、この流動管4内で泥水中の被分離物質を吸着可能な多数枚の磁気フィルタ5と、この磁気フィルタ5を流動管4内外に移動させるフィルタ移動機構6とを備えた磁気分離装置であって、
前記フィルタ移動機構6は、磁気フィルタ5を間隔をおいて装着しかつ流動管4の内側から外側を通って再び内側に戻る環状の索条体7と、流動管4内において磁気フィルタ5を泥水流動方向に対面する姿勢に保持する姿勢保持手段8とを有
しており、
前記磁気フィルタ5は、水貫通流動可能な多孔の磁性フィルタ材11と、隣接する磁性フィルタ材11との間隔を確保する間隔保持部材12とを有していることを特徴とする。
【0011】
磁気分離装置は第2に、
ボア3aを有する超伝導磁石3と、この超伝導磁石3のボア3a内に貫通配置されていて磁性付与の被分離物質を含有する泥水を流動させる流動管4と、この流動管4内で泥水中の被分離物質を吸着可能な多数枚の磁気フィルタ5と、この磁気フィルタ5を流動管4内外に移動させるフィルタ移動機構6とを備えた磁気分離装置であって、
前記フィルタ移動機構6は、磁気フィルタ5を間隔をおいて装着しかつ流動管4の内側から外側を通って再び内側に戻る環状の索条体7と、流動管4内において磁気フィルタ5を泥水流動方向に対面する姿勢に保持する姿勢保持手段8とを有しており、
前記姿勢保持手段8は索条体7の上面を流動管4の管内上部に倣わせる案内部材8aを有しており、磁気フィルタ5は流動管4内で管軸心と略直交する姿勢で索条体7から吊り下げられていることを特徴とする。
【0012】
磁気分離装置は第3に、前記磁気フィルタ5は、水貫通流動可能な多孔の
磁性フィルタ材11と、隣接する
磁性フィルタ材11との間隔を確保する間隔保持部材12とを有していることを特徴とする。
磁気分離装置は第4に、前記フィルタ移動機構6は、索条体7が磁気フィルタ5をリンク13aに取り付けたチェーン13で形成され、索条体7を流動管4内の下流から上流に案内する下流スプロケット14及び上流スプロケット15と、上流スプロケット15から流動管4外上方へ移動しかつ下流スプロケット14へ案内する駆動スプロケット16とを有していることを特徴とする。
【0013】
磁気分離装置は第5に、前記流動管4の上流側の外上方に、流動管4内を通って外上方へ移動してくる磁気フィルタ5から被分離物質を吸着した
磁性担材を回収する回収機構18を設けていることを特徴とする。
磁気分離装置は第6に、前記回収機構18は、磁気フィルタ5にエアー及び/又は水を噴出して被分離物質を吸着した
磁性担材を剥離させる流体噴射手段を有することを特徴とする。
【0014】
磁気分離方法は第1に、超伝導磁石3のボア3a内に貫通配置された流動管4内に磁性付与の被分離物質を含有する泥水を流動させる泥水流動工程と、
流動管4内で泥水中の被分離物質を吸着可能な多数枚の磁気フィルタ5を泥水下流側から上流側へ移動させるフィルタ移動工程とを備えており、
前記フィルタ移動工程は、流動管4の内側から外側を通って再び内側に戻る環状の索条体7に定間隔に装着された磁気フィルタ5を多数枚同時に等速移動
しており、
前記
磁気フィルタ5は、索条体7から吊り下げられかつ水貫通流動可能な多孔の磁性フィルタ材11に間隔保持部材12を設けて隣接する磁性フィルタ材11との間隔を確保しながら移動することを特徴とする。
【0015】
磁気分離方法は第2に、
超伝導磁石3のボア3a内に貫通配置された流動管4内に磁性付与の被分離物質を含有する泥水を流動させる泥水流動工程と、
流動管4内で泥水中の被分離物質を吸着可能な多数枚の磁気フィルタ5を泥水下流側から上流側へ移動させるフィルタ移動工程とを備えており、
前記フィルタ移動工程は、流動管4の内側から外側を通って再び内側に戻る環状の索条体7に定間隔に装着された磁気フィルタ5を多数枚同時に等速移動しており、
前記索条体7は磁気フィルタ5を吊り下げていてその上面が流動管4の管内上部に設けた案内部材8aに倣って移動しており、
前記流動管4内を通って外上方へ移動してくる磁気フィルタ5にエアー及び/又は水を噴射して、磁気フィルタ5から被分離物質を吸着した
磁性担材を剥離しかつ回収する回収工程を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、磁気フィルタの移動を円滑にして、磁気分離作業効率を向上できる。
即ち、請求項1に係る発明は、フィルタ移動機構6は、磁気フィルタ5を間隔をおいて装着しかつ流動管4の内側から外側を通って再び内側に戻る環状の索条体7と、流動管4内において磁気フィルタ5を泥水流動方向に対面する姿勢に保持する姿勢保持手段8とを有するので、多数枚の磁気フィルタ5を環状の索条体7に装着してエンドレス状に移動させることができ、磁気分離作業効率を向上でき
、かつ、磁気フィルタ5は、水貫通流動可能な多孔の磁性フィルタ材11と、隣接する磁性フィルタ材11との間隔を確保する間隔保持部材12とを有しているので、流動管4の内で隣接間隔及び吊り下がり姿勢を適正に維持できる。
【0017】
請求項2に係る発明は、
多数枚の磁気フィルタ5を環状の索条体7に装着してエンドレス状に移動させることができ、磁気分離作業効率を向上でき、かつ、索条体7は上面が案内部材8aによって流動管4の管内上部に倣わされ、磁気フィルタ5は流動管4内で索条体7から吊り下げられているので、磁気フィルタ5は流動管4と摺接することなく流動管4内で管軸心と略直交する適正姿勢のまま移動できる。
【0018】
請求項3に係る発明は、磁気フィルタ5は、水貫通流動可能な多孔の
磁性フィルタ材11と、隣接する
磁性フィルタ材11との間隔を確保する間隔保持部材12とを有しているので、流動管4の内で隣接間隔及び吊り下がり姿勢を適正に維持できる。
請求項4に係る発明は、フィルタ移動機構6は、索条体7が磁気フィルタ5をリンク13aに取り付けたチェーン13で形成され、下流スプロケット14、上流スプロケット15及び駆動スプロケット16で移動案内されるので、多数枚の磁気フィルタ5を間隔一定のまま確実かつ円滑に移動できる。
【0019】
請求項5に係る発明は、流動管4の上流側の外上方に、流動管4内を通って外上方へ移動してくる磁気フィルタ5から被分離物質を吸着した
磁性担材を回収する回収機構18を設けているので、流動管4外に出た磁気フィルタ5から被分離物質を速やかに離脱させることができる。
請求項6に係る発明は、回収機構18は、磁気フィルタ5にエアー及び/又は水を噴出して被分離物質を吸着した
磁性担材を剥離させる流体噴射手段を有するので、エアー及び/又は水の噴出で磁気フィルタ5から被分離物質を剥離させることができる。
【0020】
請求項7に係る発明は、超伝導磁石3のボア3a内外で多数枚の磁気フィルタ5を環状の索条体に装着して多数枚同時に等速移動させ、
かつ、磁気フィルタ5の磁性フィルタ材11に間隔保持部材12を設けて隣接する磁性フィルタ材11との間隔を確保しながら移動させることにより、強磁場内で円滑にかつ高効率の磁気分離ができる。
請求項8に係る発明は、
超伝導磁石3のボア3a内外で多数枚の磁気フィルタ5を環状の索条体に装着して多数枚同時に等速移動させ、かつ、磁気フィルタ5を吊り下げていている索条体7の上面を流動管4の管内上部に設けた案内部材8aに倣って移動することにより、強磁場内で円滑にかつ高効率の磁気分離ができ、かつ、流動管4内を通って外上方へ移動してくる磁気フィルタ5からエアー及び/又は水の噴出
で被分離物質を吸着した
磁性担材を確実に剥離して回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2において、泥水処理システム30の全体を示しており、泥水処理システム30は、超伝導磁石3を有していて、磁気フィルタ5を循環して泥水から被分離物質を取り出す磁気分離装置1と、泥水中の被分離物質に磁性を付与するための吸着材を混入して磁気分離装置1へ供給する吸着材混入装置31と、磁気分離装置1で循環する磁気フィルタ5から被分離物質を分離して回収する回収処理装置32とを備えている。
【0023】
磁気分離装置1を支持する支持枠34上に超伝導磁石3が設置されており、超伝導磁石3には冷凍機35及び永久電流スイッチ等が装備されている。
前記泥水処理システム30で処理する泥水とは、例えば、シールドトンネル工事等の地盤掘削時に発生する土と水の混合物である泥水、汚染土壌に水を混合したスラリー、工場廃水、地下廃水等の廃水又は排水と呼称されるものである。
【0024】
また、被分離物質に磁性を付与するための吸着材は機能性磁性担体であり、吸着材混入装置31で混入される機能性磁性担体としては、磁性吸着剤(物理的)、磁性反応剤(化学的)及び磁性凝集剤等がある。例えば、磁性吸着剤(物理的)としては、有機物、フッ素、セシウム等の無機物も含めて多用途に磁性活性炭、無機物用に磁性ゼオライト、セシウム用にプルシアンブルー担持磁性剤等が用いられ、磁性反応剤(化学的)としては、砒素、鉛等重金属用に機能性鉄粉、重金属用に磁性キレート担体、タンパク酵素用に磁性ビーズ(磁気ビーズ)、フッ素用に磁性アパタイト、マイナスイオン有機物用に磁性水酸化鉄等が用いられ、磁性凝集剤はSS等微細浮遊物に適用されている。
【0025】
これらの機能性磁性担体は、対象物質が含まれている泥水に分離処理前に混入・撹拌して、被分離物質を含浸・吸着して、被分離物質に磁性を与える。泥水に含まれる分離対象の物質は、機能性磁性担体の吸着材に吸着されて磁性のある被分離物質となる。
図1〜3において、前記磁気分離装置1は大別して、ボア3aを有する超伝導磁石3と、この超伝導磁石3のボア3a内に貫通配置されていて磁性付与の被分離物質を含有する泥水を流動させる流動管4と、この流動管4内で泥水中の被分離物質を吸着可能な多数枚の磁気フィルタ5と、この磁気フィルタ5を流動管4内外に移動させるフィルタ移動機構6と、磁気フィルタ5から吸着被分離物質を離脱させる回収機構18とを備えている。
【0026】
超伝導磁石3は永久電流が流動可能な超伝導コイルを円筒形状に巻いていて、その内部が円形のボア3aになっており、流動管4はボア3aの全長より長い管材で形成され、ボア3aと略同心に配置されている。
図1中の符号CLは超伝導磁石3の磁場中心を示しており、例えば、直径30cmのボア3aで磁場強度が2万ガウスとなっている。
前記流動管4は、中央部が略水平な断面略円筒形でかつ軸心が略水平に配置されており、この中央部の上流側に上部が開放された泥水受入部4Aが接続され、下流側に上部に排出口を有する泥水排出部4Bが接続されている。
【0027】
吸着材混入装置31通過後の泥水は、泥水受入部4Aから受け入れられて、流動管4の中央部の内部を通って泥水排出部4Bへ至り、泥水排出部4Bから水槽38へ排出される(
図1、2に泥水流動方向を羽根付き矢印で示す。)。
図1〜5において、前記フィルタ移動機構6は、磁気フィルタ5を間隔をおいて装着しかつ流動管4の内側から外側を通って再び内側に戻る環状の索条体7と、流動管4内において磁気フィルタ5を泥水流動方向に対面する姿勢に保持する姿勢保持手段8とを有する。
【0028】
索条体7は左右一対のリンク13aをピン13bで連結し、そのピン13bに移動方向前後の左右一対のリンク13aを連鎖的に連結したチェーン13で形成されており、ピン13bには左右リンク13a間にコロ21が嵌装されており、このコロ21が流動管4の内面上部に当接している。前記コロ21の外周面がチェーン13(索条体7)の上面を形成する。
【0029】
前記姿勢保持手段8はチェーン13の上面を流動管4の管内上部に倣わせる案内部材8aを有している。この案内部材8aとしては、流動管4の管内面上部に下面が平坦なレールを別途設けて構成しても良いが、
図1〜5においては、流動管4の内面上部の断面円弧面自体とチェーン13のコロ21とが案内部材8aとなっており、コロ21が流動管4の内面上部を転動することにより、チェーン13の上面は流動管4の内面上部に近接して倣い移動する。
【0030】
流動管4内では磁気フィルタ5が磁気を帯び、強磁性体で形成されたチェーン13も磁気を帯びることにより、流動管4の内面上部側に吸引されるので、この磁気作用もチェーン13の上面を流動管4の管内上部に倣わせる姿勢保持手段8となる。
チェーン13が流動管4の内面上部に倣い、各リンク13aの前後に位置するコロ21が案内部材8aに当接することにより、リンク13aが流動管4の軸心と平行な姿勢が保持され、磁気フィルタ5は流動管4内で流動管4の軸心に対して傾くことなく略直交した状態で、かつ索条体7のチェーン13から吊り下げられた状態で移動できる。
【0031】
前記リンク13aには左右外側方に突出する取り付け部13cが一体成形されており、左右一対のリンク13aの取り付け部13cに磁気フィルタ5の外周部が固定されている。
磁気フィルタ5は、水貫通流動可能な多孔形状で磁気高勾配を発生する
磁性フィルタ材11と、
磁性フィルタ材11の表面及び/又は裏面に装着されていて隣接する
磁性フィルタ材11との間隔を確保する間隔保持部材12とを有している。
【0032】
磁性フィルタ材11は、流動管4の水流れ方向から見た正面視が略円形状であって、その外周は流動管4の内周より小径であり、流動管4内を接触することなく、また泥水の流動を阻害することなく移動できる多孔形状である。
図1〜5は磁気フィルタ5の第1例を示しており、
磁性フィルタ材11は熱間圧延軟鋼板(SPHC)又はバネ鋼の薄帯板に穿孔及び縁部の凹凸を形成し、これを正面視略円形に近いC形状に湾曲し、この湾曲の曲率の異なるものを複数枚用意し、その複数枚のC型帯板を重ねて端部同士を左右リンク13aの取り付け部13cにボルト13dで締結している。
【0033】
前記磁気フィルタ5は複数枚のC型帯板の間が水貫通流動可能な孔であり、各C型帯板の孔周縁及び縁部の凹凸が磁気高勾配部位となる。
間隔保持部材12は、水流れ方向水平状の平板部12aから下流側がL字状に折曲された板材で形成されており、L字状折曲部12bが
磁性フィルタ材11の正面に固定され、平板部12aの先行側はスリット12cを形成していて、上流側の
磁性フィルタ材11に係合してオーバラップ配置可能にしている。
【0034】
取り付け部13cは移動方向1つ置きに位置する左右外側のリンク13aに形成されており、従って、磁気フィルタ5はチェーン13の1つ置きのリンク13aに装着されている。
1つ置きのリンク13aに外周上部(
図4、5に示す上部)が取り付けられた
磁性フィルタ材11は、上下中途部に設けた間隔保持部材12が上流側の
磁性フィルタ材11に係合して近づくのを阻止することになり、多数の磁気フィルタ5は流動管4内で常に平行であることが維持される。間隔保持部材12はスリット12cによって
磁性フィルタ材11同士が平行状態から離れることは許容でき、チェーン13がスプロケットの廻りを回るとき、隣接する
磁性フィルタ材11が扇形状に開くのを可能にいている。
【0035】
間隔保持部材12によって
磁性フィルタ材11の間隔を適正に維持することは、流動管4内での磁気フィルタ5を管軸心と略直交する姿勢に保持する姿勢保持手段8の機能も兼ねる。
前記フィルタ移動機構6は正面視略四角形であって、流動管4内を通る作業経路6Aと、作業経路6Aの上流側で上向きの立ち上がり経路6Bと、立ち上がり経路6Bの上端から後方へ至る上水平経路6Cと、上水平経路6Cの後端から下降して作業経路6Aの下流側に繋がる戻り経路6Dとを有していて、索条体7は正面視略四角形の無端環状になっている。前記作業経路6A、立ち上がり経路6B、上水平経路6C及び戻り経路6Dは管材で経路が形成されている。
【0036】
フィルタ移動機構6は索条体7を案内するために、作業経路6Aの前後で流動管4内の下流から上流に案内する下流スプロケット14及び上流スプロケット15と、立ち上がり経路6Bの上下で上流スプロケット15から流動管4外上方へ移動しかつ下流スプロケット14側へ案内する駆動スプロケット16と、上水平経路6Cと戻り経路6Dとの間でテンション調整ができるテンションスプロケット17とを有している。
【0037】
作業経路6Aの流動管4の上流側には泥水受入部4Aが設けられ、この泥水受入部4Aは上部が開放されており、機能性磁性担体を混入して被分離物質に磁性を付与した泥水を吸着材混入装置31から流入可能になっている。作業経路6Aの流動管4の下流側には泥水排出部4Bが設けられ、この泥水排出部4Bの上側部は泥水口が形成され、被分離物質分離後の泥水を水槽38へ排出可能になっている。
【0038】
前記立ち上がり経路6Bは流動管4内を通った磁気フィルタ5が流動管4の上流側で外上方に移動して来る部位であり、この立ち上がり経路6Bには、磁気フィルタ5から被分離物質を吸着した
磁性担材を回収する回収機構18が設けられている。
回収機構18は、磁気フィルタ5にエアーを噴出して吸着被分離物質を剥離させるエアー噴射手段19と、このエアー噴射手段19の上位側で磁気フィルタ5に水を噴出して吸着被分離物質を剥離させる水洗手段20とを有している。
【0039】
水洗手段20は、立ち上がり経路6B内で略水平姿勢で上昇してくる磁気フィルタ5に対して、複数本のノズル20aで斜め上方から高圧水を吹きつけ、
磁性フィルタ材11、間隔保持部材12及びチェーン13に吸着されている被分離物質を剥離して落下させる。
エアー噴射手段19は、立ち上がり経路6Bを挟んでエアーを噴出するブロア部22と、噴射されたエアーを受け取る回収部23とを有している。ブロア部22はエアーを磁気フィルタ5に直接吹き付けるだけでなく、上方の水洗手段20で剥離された被分離物質を含む水も回収部23側に向けて吹き流すことができる。
【0040】
前記ブロア部22及び回収部23は外部の回収処理装置32に接続されている。この回収処理装置32は気液分離器36とこの気液分離器36内からエアーを吸引するブロア装置37とを有しており、回収部23は気液分離器36の被分離物質吸入路36aに接続され、ブロア部22はブロア装置37の排出路37aに接続されている。
エアー噴射手段19のブロア部22から噴出されるエアーによって磁気フィルタ5から被分離物質が剥離され、その剥離された被分離物質及び上方の水洗手段20で洗浄された被分離物質は、水及びエアーと共に気液分離器36に送られ、気液分離器36でエアーと分離され、吸着材と分離する装置へ送られる。また、気液分離器36通過後のエアーは、ブロア装置37によってブロア部22へ送られて再利用される。
【0041】
前記上水平経路6Cの管材6Caの下部にはドレン6Cbが接続されており、回収機構18通過後の磁気フィルタ5から滴り落ちる水を回収できるようにしている。この管材6Caの上部に水シャワー噴出手段を設けて、この上水平経路6Cでも前記水洗手段20と同様に、磁気フィルタ5を水洗いして被分離物質を剥離させる回収機構18を構成してもよい。
【0042】
前記回収機構18は、立ち上がり経路6Bのエアー噴射手段19及び水洗手段20、上水平経路6Cの水シャワー噴出手段は、エアー及び/又は水を噴出して被分離物質を吸着した
磁性担材を剥離させる流体噴射手段であり、少なくともひとつ備えておればよく、また、磁気フィルタ5で捕獲した被分離物質及び吸着材を回収する回収処理装置32の構成の一部にもなっている。
【0043】
次に、泥水処理システム30における泥水処理方法、特に磁気分離方法を説明する。
泥水流動工程:
吸着材混入装置31内に泥水を供給しそれに吸着材を添加して混合し、被分離物質に吸着材を吸着させ、その泥水を磁気分離装置1の泥水受入部4Aへ供給する。
泥水受入部4Aに入った被分離物質含有泥水は流動管4を上流から下流に流れ、流れ途中で下流から上流へ移動してくる多数枚の磁気フィルタ5を貫通する。泥水中から磁気フィルタ5によって被分離物質が捕獲され、被分離物質の無くなった清浄な泥水が泥水排出部4Bに溜められ、そして水槽38へ排出される。
【0044】
超伝導磁石3のボア3a内に貫通配置された流動管4内では、磁性付与の被分離物質を含有する泥水を流動させる泥水流動工程が行われる。
フィルタ移動工程:
超伝導磁石3はボア3a内に強力な磁場を形成しており、ボア3a内に配置された流動管4内では、無端環状のチェーン13(索条体7)に一定間隔で多数枚装着された磁気フィルタ5が、泥水の流れに対向して下流側から上流側へ移動し、超伝導磁石3の磁場によって高勾配磁気を帯び、磁気フィルタ5内を通過する泥水から吸着材を吸着する。
【0045】
流動管4内では、下流スプロケット14及び上流スプロケット15の案内、磁気フィルタ5及びチェーン13が磁気で吸引されること等によって、チェーン13が姿勢保持手段8によって流動管4の管内面上部に案内され、磁気フィルタ5の
磁性フィルタ材11は流動管4の軸心に略直交する姿勢が維持され、また、磁気フィルタ5はチェーン13に吊り下がった状態、流動管4の内周面と接触しない状態で移動される。
【0046】
多数枚の磁気フィルタ5はチェーン13に装着されたまま無端軌道を移動し、作業経路6Aの流動管4内から上流スプロケット15によって上向きに移動方向が変えられ、泥水内から立ち上がり経路6Bへ移行する。
環状の索条体7に定間隔に装着された多数枚の磁気フィルタ5は、流動管4内で泥水中の被分離物質を吸着しながら泥水下流側から上流側へ移動させ、さらに流動管4の内側から外側を通って再び内側に戻り移動をし、磁気フィルタ5を多数枚同時に等速移動するフィルタ移動工程を行う。
【0047】
回収工程:
立ち上がり経路6B内に入った磁気フィルタ5は、まず回収機構18のエアー噴射手段19のエアー噴射を受け、
磁性フィルタ材11、間隔保持部材12及びチェーン13に吸着されている被分離物質が剥離され、回収部23へ送給される。
次に磁気フィルタ5は回収機構18の水洗手段20によって高圧水が吹きつけられ、エアーで剥離できなかった吸着被分離物質を剥離し、水とともに落下させる。この落下した被分離物質及び水はその下方のエアー噴射手段19のエアーによって回収部23へ送給される。
【0048】
チェーン13に装着された連続した磁気フィルタ5は、立ち上がり経路6Bから駆動スプロケット16によって方向を変えて上水平経路6Cに至り、さらに上水平経路6Cからテンションスプロケット17を経て戻り経路6Dに至り、戻り経路6Dの下部で泥水排出部4B内に入り、下流スプロケット14を経て作業経路6Aに戻される。
流動管4内を通って外上方へ移動してくる磁気フィルタ5にエアー及び/又は水を噴射して、磁気フィルタ5から被分離物質を吸着した
磁性担材を剥離しかつ回収する回収工程を行う。
【0049】
この回収工程で回収された被分離物質を吸着した
磁性担材は回収処理装置32の気液分離器36へ空気搬送され、エアーと分離されて回収される。
磁気フィルタの他の実施形態:
図6、7は第2例の磁気フィルタ5Bを示しており、
磁性フィルタ材11は熱間圧延軟鋼板(SPHC)又はバネ鋼の薄帯板に縁部の凹凸を形成し、これを正面視略円形に近いC形状に湾曲し、この湾曲の曲率の異なるものを複数枚用意し、その複数枚のC型帯板を重ねて端部同士を左右リンク13aの取り付け部13cにボルト13dで締結している。
【0050】
取り付け部13cは左右外側のリンク13aだけでなく左右内側のリンク13aにも形成されており、従って
磁性フィルタ材11はチェーン13の連続したリンク13aの総てに配置されており、長手方向1つ置きの
磁性フィルタ材11がその間の
磁性フィルタ材11の間隔保持部材となっており、総ての磁気フィルタ5Bは流動管4内で近接状態になり、互いに傾斜することを阻止するので常に平行状態が維持される。
【0051】
なお、
図6に示すコロ21は、外周がストレートの円筒形ではなく、流動管4の管内面の曲率と略同曲率の太鼓形状であり、コロ21の太鼓形外周面の略全域が流動管4の内面上部の断面円弧面と接するようにしている。
また、第2例の磁気フィルタ5Bは、
磁性フィルタ材11の正面又は背面に間隔保持部材を設けて、長手方向1つ置きのリンク13aに装着してもよく、その間隔保持部材は板材であっても支え棒的な棒材であってもよい。
【0052】
図8、9は第3例の磁気フィルタ5Cを示しており、
磁性フィルタ材11は磁性ステンレス鋼(SUS)を打ち抜いたパンチングプレートを2枚対面させて上部を連結板24aで連結しており、後行側のパンチングプレートには上下中間部に複数枚の薄板製の間隔板24bを固着しており、先行側のパンチングプレートには複数枚の間隔板24bに対応する位置に薄板製の間隔保持部材12を固着している。
【0053】
即ち、後行側パンチングプレート及び間隔板24bと、先行側パンチングプレート及び間隔保持部材12は略同一形状であって、これらの上部を連結板24aで連結して1枚の磁気フィルタ5Cを形成している。前記複数枚の間隔板24b及び間隔保持部材12も
磁性フィルタ材11と同様にパンチングプレートで形成されており、パンチングプレートは磁気高勾配部位を形成し、多数の孔は水の貫通流動を可能にする。
【0054】
前記第3例の磁気フィルタ5Cは連結板24aがチェーン13の1つ置きのリンク13aに配置され、
磁性フィルタ材11のパンチングプレートがピン13b毎に対応して位置し、先行側のパンチングプレートに固定の間隔保持部材12の先端が隣り合うパンチングプレートと当接することにより
磁性フィルタ材11同士の間隔を形成する。
この磁気フィルタ5Cも、
磁性フィルタ材11及び間隔保持部材12が磁性ステンレス鋼のパンチングプレートで形成されていることにより、高勾配磁気を帯びて被分離物質を効率良く補足でき、泥水、水、エアーを良く通すことができる。
【0055】
図10、11は第4例の磁気フィルタ5Dを示しており、
磁性フィルタ材11は断面が円形、矩形の磁性有りのステンレス線材(SUS)を金網形状にし、その金網を間隔をおいて2枚平行に配置し、それらを円筒枠25内に固定し、円筒枠25に一対の支持板26を設けてリンク13aの取り付け部13cに取り付けるように構成している。
間隔保持部材12は、水流れ方向水平状の水平板と垂直な垂直板とを十字板状に連結して
磁性フィルタ材11の正面に固定している。水平板及び垂直板は金網又はパンチングプレートで形成することもできる。
【0056】
前記第4例の磁気フィルタ5Dはチェーン13の1つ置きのリンク13aに配置され、十字板の上流側が隣接配置される
磁性フィルタ材11に当接することにより、
磁性フィルタ材11間同士の間隔が確保される。
この磁気フィルタ5Dも、
磁性フィルタ材11が磁性ステンレス鋼の金網で形成されていることにより、高勾配磁気を帯びて被分離物質を効率良く補足でき、多数の網目が水貫通流動孔となって、泥水、水、エアーを良く通すことができる。
【0057】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、部材の形状、構成及び組み合わせ等を変更したりすることもできる。
例えば、フィルタ移動機構6の環状の索条体7は、チェーン13の代わりにワイヤを用いて、プーリで案内するようにしてもよい。
また、超伝導磁石3のボア3aの軸心及び流動管4を略水平に配置しているが、これらを略垂直に配置することもできる。
【0058】
フィルタ移動機構6の下流スプロケット14、上流スプロケット15又は駆動スプロケット16にテンション調整機能を持たせて、テンションスプロケット17を割愛してもよい。
流動管4内において磁気フィルタ5を泥水流動方向に対面する姿勢に保持する姿勢保持手段8として、流動管4の内面側部に流動管4の軸心と平行に延びるレールを敷設し、そのレールで磁気フィルタ5の外周側部を摺動案内し、磁気フィルタ5の移動中の横振れも防止できるようにしてもよい。
【解決手段】 ボア3aを有する超伝導磁石3と、この超伝導磁石3のボア3a内に貫通配置されていて磁性付与の被分離物質を含有する泥水を流動させる流動管4と、この流動管4内で泥水中の被分離物質を吸着可能な多数枚の磁気フィルタ5と、この磁気フィルタ5を流動管4内外に移動させるフィルタ移動機構6とを備えている。前記フィルタ移動機構6は、磁気フィルタ5を間隔をおいて装着しかつ流動管4の内側から外側を通って再び内側に戻る環状の索条体7と、流動管4内において磁気フィルタ5を泥水流動方向に対面する姿勢に保持する姿勢保持手段8とを有する。