(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231241
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】流量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/692 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
G01F1/692 A
G01F1/692 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-140538(P2017-140538)
(22)【出願日】2017年7月20日
(62)【分割の表示】特願2016-207465(P2016-207465)の分割
【原出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2017-187512(P2017-187512A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 保夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−518119(JP,A)
【文献】
特開2009−270930(JP,A)
【文献】
特許第2784286(JP,B2)
【文献】
特許第3610484(JP,B2)
【文献】
特開2000−40773(JP,A)
【文献】
特許第6033935(JP,B2)
【文献】
特許第5814192(JP,B2)
【文献】
特許第6182657(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムに設けられた発熱抵抗体と、
金属製のワイヤによって外部と電気的に接続するためのパッドと、
該パッドと該発熱抵抗体とを電気的に接続する配線と、を有する半導体センサ素子であって、
前記半導体センサ素子は、
前記発熱抵抗体が形成される側の表面であって、前記ダイアフラムと前記パッドとの間に、少なくとも第一の有機保護膜と第二の有機保護膜とを有しており、
前記第一の有機保護膜と前記第二の有機保護膜は、有機保護膜が形成されない領域によって分離されており、
前記第一の有機保護膜は、前記有機保護膜が形成されない領域より前記ダイアフラム側に形成され、
前記第二の有機保護膜は、前記有機保護膜が形成されない領域より前記パッド側に形成され、
前記第一の有機保護膜の前記パッド側の端部は、前記発熱抵抗体から所定の距離離れており、
前記シール材の端部は、前記第一の有機保護膜の前記パッド側の端部から、前記第二の有機保護膜の前記パッド側の端部の間にある半導体センサ素子。
【請求項2】
前記第一の有機保護膜は、前記発熱抵抗体にかからない請求項1に記載の半導体センサ素子。
【請求項3】
前記第一の有機保護膜は、前記ダイアフラムの端部を覆う請求項2に記載の半導体センサ素子。
【請求項4】
前記第一の有機保護膜または前記第二の有機保護膜は、ポリイミドシリコーンである請求項2または3に記載の半導体センサ素子。
【請求項5】
前記パッドおよび前記ワイヤはシール材によって保護される請求項1ないし4に記載の半導体センサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量を測定する流量測定装置に係り、特に、内燃機関の空気流量を測定する流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2001−12987号公報(特許文献1)がある
。特許文献1には、積層基板に窪みを設けそこに半導体センサ素子を配置する構造では段差ができないため、印刷法で所定の位置に再現性よく樹脂封止膜を形成することが可能である。と記載されている。特に、センサ自身が小さい半導体センサ素子では、センサ近傍に形成された樹脂封止膜の形状がばらつくと、それが直接出力特性のばらつきに繋がるため重要である。このような構造をとることにより、精度向上や高信頼性の熱式空気流量センサを提供できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−12987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体センサ素子は、空気通路中にむき出しに配置されるため、腐食性ガスやガソリン、エジンオイル等に直接さらされる環境下におかれる。そのため、ボンディングパッドおよび、接続ワイヤをシール材で腐食から保護する必要がある。シール材の形状がばらつくとそれ自体が直接出力特性のばらつきとなるため、形状、位置を高精度に決める必要がある。特許文献1によれば、積層基板の窪みに半導体センサ素子を配置することでシール材に相当する樹脂封止膜所定の位置に再現性よく形成することが可能とある。しかし、一般的にシール材として用いられるエポキシ樹脂、フッ素樹脂、ゲル等は、熱硬化を必要とする。例えば、エポキシ樹脂の粘度の温度依存性を見ると、硬化シーケンス中に粘度が大きく低下することが知られている。このため、位置決めを精度良く行っても、シール材が流動してしまい、結果として意図した位置、形状が得られず流量測定装置の特性のばらつきを低減するのが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、特性ばらつきの少ない高精度の流量測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、前記有機保護膜は、前記ダイアフラムと前記パッドとの間に、前記有機保護膜を形成しない領域を設けることにより、前記ダイアフラム側に形成される第一の有機保護膜と、前記パッド側に形成される第二の有機保護膜とに分離されており、前記第一の有機保護膜の前記パッド側の端部は、前記発熱抵抗体から所定の距離離れており、前記シール材の発熱抵抗体側の端部は、前記第一の有機保護膜の前記パッド側の端部から、前記第二の有機保護膜の前記パッド側の端部の間にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特性ばらつきの少ない高精度の流量測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による流量測定装置の実装基板の断面図の例である。
【
図2】本発明による流量測定装置の流量検出素子の平面図の例である。
【
図3】本発明の流量検出素子の断面図の他の実施例である。
【
図4】本発明の流量検出素子の断面図の他の実施例である。
【
図5】本発明の流量検出素子の断面図の他の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について
図1乃至5を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず初めに本発明の一実施例である実施例1について説明する。
【0012】
図1に示されるように、実装基板101に窪み107が設けられ、ダイアフラム106上に設けられた発熱抵抗体を持つ流量検出素子108と制御回路素子104が実装されている。流量検出素子108の信号は、実装基板上配線部102に例えば、金ワイヤ105aで接続される。また、実装基板上配線102と制御回路素子104が例えば、金ワイヤ105bで接続されて信号処理を行い、出力信号としてパッド103から出力端子へ接続され出力される。
【0013】
流量検出素子実装部Aは、外部に直接さらされるため、腐食性ガスやガソリン、エンジンオイル等からアルミパッド部や金ワイヤ105aを保護する必要がある。本実施例では
、シール材110をポッティング塗布し、アルミパッド部および金ワイヤ105aを保護している。このような実装構成の場合、シール材110の位置、形状が重要となる。
【0014】
流量検出素子108とシール材110の線膨張係数の違いによる応力や、シール材110の残留応力によって、抵抗値が変化するためである。線膨張係数の違いによる応力この影響は、温度特性に現れる。例えば、常温で、出力特性を調整しても、周囲温度変化によって流量検出素子108にかかる応力が変わるため特性が変化する。
【0015】
また、シール材110の残留応力の影響は、耐久特性変化として現れる。高温環境や、熱サイクルによって、シール材110物性値が変動し、特性が変化する。これらの影響は
、当然ながら、シール材110が発熱抵抗体106に近いほど大きくなる。従って、シール材110とダイアフラム106上に設けられた発熱抵抗体201は一定の距離を保つ必要がある。
【0016】
ところが、シール材110が熱硬化中に粘度が低下し、精度良くシール材110を塗布しても、硬化シーケンス中に形状が変化し、ダイアフラム106上に設けられた発熱抵抗体との距離がばらつき、距離を保てなく場合が発生する問題がある。
【0017】
図2に流量検出素子108の平面図を示す。ダイアフラム106には、発熱抵抗体201(詳細パターンは図示していない)が形成されており、引き出し線202とアルミパッド203に接続されている(配線パターンは図示していない)。本実施例では、発熱抵抗
体106から一定の距離に、撥水性有機膜109を設けている。撥水性有機膜109によって、硬化シーケンス中にシール材110の粘度低下による形状変化が発生しても、発熱抵抗体201側に流れることがなくなり、特性変化を防ぐことができる。そのため、撥水性有機膜109はシール材110が塗布される近傍に設けられている。
【0018】
また、撥水性有機膜109として、ポリイミドシリコーンを用いれば、通常、半導体製造プロセスで保護膜として使用されている材料であり、流量検出素子108製造時に同時に形成することができ、低コスト化を図れる。
【実施例2】
【0019】
図3は、実施例2における流量測定装置の流量検出素子108の平面図を示す。本実施例では、シール材が塗布される領域以外に撥水性有機膜109を形成している。これによって、流量検出素子108に衝突するダストから、流量検出素子108を保護することができ、耐ダスト耐性が向上する。
【実施例3】
【0020】
図4は、実施例3における流量測定装置の流量検出素子108の平面図を示す。本実施例では、シール材が塗布される領域および、ダイアフラム106内の発熱抵抗体201以外に撥水性有機膜109bを形成している。ダイアフラム106内の発熱抵抗体201上には撥水性有機膜を形成していないため、熱伝達の悪化による感度低下が起こらず、ダイアフラム106内の発熱抵抗体201以外のダストによる表面の損傷を防止することができる。
【0021】
また、撥水性有機膜109aを撥水性有機膜109bと分離して形成している。これによって、製造工程中に、シール材端部の位置検出が容易になる。例えば、シール材で覆う必要がある位置が、撥水性有機膜109
aの下端部(アルミパッド202側)であり、シール材と発熱抵抗体201の必要距離が撥水性有機膜109
bの下端部(アルミパッド202側)の位置とすれば、シール材端部位置は、撥水性有機膜109aの下端部から撥水性有機膜109bの下端部の領域にあればよく、自動検査でパターン検出が可能になる。
【0022】
本実施例では、撥水性有機膜は、2つに分離した例を示したが、必要であれば2つ以上に分離しても良い。
図5に示すように中抜きパターンとしても良い。これにより、パターンが分離されていないので、膜の剥がれが起こり難くなる。
【符号の説明】
【0023】
101…実装基板
102…実装基板上配線
104…制御回路素子
105a,b…金ワイヤ
106…ダイアフラム
107…窪み
108…流量検出素子
109、109a、109b…撥水性有機膜
201…発熱抵抗体
202…引き出し線
203…アルミパッド