(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の液晶パネルは平板状であり、当該液晶パネルを縦姿勢の円柱に巻き付けた場合、液晶パネルは円柱の表面に沿って円筒面状に湾曲する。このとき、各画素に設けられているドメイン同士の面積比が大幅に変化して、液晶パネルの視野角特性が悪化することがある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、平板状から円筒面状に湾曲した状態でも視野角特性の悪化を抑制することができる液晶パネル及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液晶パネルは、液晶層と、該液晶層の正面側及び背面側に接し、前記液晶層を構成する液晶分子を配向させるための筋状部が夫々に設けられている正面側配向膜及び背面側配向膜とを備え、円筒面状に湾曲した液晶パネルであって、前記正面側配向膜に設けられている筋状部の長さ方向は、円筒面の周方向であり、前記背面側配向膜に設けられている筋状部の長さ方向は、前記周方向に交差する方向であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る液晶パネルは、前記周方向に長い周方向遮光部と、前記周方向に交差する方向に長い交差方向遮光部とを更に備え、前記周方向遮光部及び交差方向遮光部は画素同士を区画しており、前記交差方向遮光部は、前記背面側配向膜よりも背面側に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る液晶パネルは、開口と前記周方向遮光部及び交差方向遮光部とを有する遮光層を更に備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る液晶パネルは、前記交差方向遮光部は、前記周方向に交差する方向に長く、前記液晶分子を駆動するための配線であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る液晶パネルは、前記液晶分子を駆動するためのスイッチング素子と、前記正面側配向膜よりも正面側に設けられており、前記スイッチング素子を遮光するための遮光性部材とを更に備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る液晶表示装置は、本発明に係る液晶パネルと、該液晶パネルを背面側から照明する照明装置とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、正面側配向膜による液晶分子の配向方向は、円筒面状に湾曲した液晶パネルの周方向(以下、単に周方向という)である。一方、背面側配向膜による液晶分子の配向方向は、周方向に交差する方向である。
円筒面状に湾曲した液晶パネルは、平板状の液晶パネルを円筒面状に湾曲することによって得られる。以下では、円筒面状に湾曲した液晶パネルを湾曲後の液晶パネルといい、平板状の液晶パネルを湾曲前の液晶パネルという。
【0016】
湾曲前の液晶パネルの湾曲に伴い、正面側配向膜及び背面側配向膜に設けられている筋状部の配置位置は、液晶層の背面側の各部(例えばTFT層の画素電極)の配置位置に対して、湾曲方向(即ち周方向)に位置ずれを起こすことがある。
【0017】
正面側配向膜に設けられている筋状部(以下、正面側筋状部という)の長さ方向と背面側配向膜に設けられている筋状部(以下、背面側筋状部という)の長さ方向とは、各画素におけるドメイン同士の境界線の長さ方向に対応する。
正面側配向膜と液晶層の背面側の各部との離隔距離は比較的長いので、正面側筋状部の位置ずれは比較的大きい。しかしながら、正面側筋状部の位置ずれの方向は正面側筋状部の長さ方向である。故に、ドメイン同士の境界線の内、正面側筋状部の長さ方向に沿う境界線は、自身の長さ方向に位置ずれする。このような位置ずれが起きても、ドメイン同士の面積比の変化は起こらない。
【0018】
背面側配向膜と液晶層の背面側の各部との離隔距離は比較的短いので、背面側筋状部の位置ずれは比較的小さい。背面側筋状部が周方向に位置ずれを起こした場合、ドメイン同士の境界線の内、背面側筋状部の長さ方向に沿う境界線は、自身の長さ方向に交差する方向に位置ずれする。このような位置ずれが起きれば、ドメイン同士の面積比の変化が起こる。とはいえ、位置ずれの量は微小であるので、ドメイン同士の面積比の変化はほとんどない。
【0019】
本発明にあっては、周方向遮光部の長さ方向は、周方向である。一方、交差方向遮光部の長さ方向は、周方向に交差する方向である。
周方向遮光部(及び交差方向遮光部)は、例えば矩形状の画素の周方向の一辺部(及び周方向に交差する方向の他辺部)に対応する。
湾曲前の液晶パネルの湾曲に伴い、周方向遮光部及び交差方向遮光部の配置位置は、液晶層の背面側の各部の配置位置に対して、周方向に位置ずれを起こすことがある。
【0020】
しかしながら、周方向遮光部が周方向に位置ずれを起こしたとしても、周方向遮光部は、例えば矩形状の画素の一辺部に沿って位置ずれするだけである。故に、周方向遮光部が画素の内部を無用に遮光してしまう虞はない。つまり、各画素におけるドメイン同士の面積比は変化しない。
【0021】
一方、交差方向遮光部が周方向に位置ずれを起こした場合、交差方向遮光部は、例えば矩形状の画素の他辺部に交差する方向に位置ずれする。故に、交差方向遮光部は画素の内部を無用に遮光してしまう虞がある。このとき、ドメイン同士の面積比は変化する。
とはいえ、背面側配向膜よりも背面側に設けられている交差方向遮光部の位置ずれは、交差方向遮光部が正面側配向膜よりも正面側に設けられている場合に比べて小さい。つまり、ドメイン同士の面積比の変化は、無視することができるほど小さい。
【0022】
本発明にあっては、遮光層が背面側配向膜よりも背面側に設けられている。従って、各画素におけるドメイン同士の面積比の変化は、無視することができるほど小さい。
【0023】
本発明にあっては、配線は、例えば矩形状の画素の周方向の一辺部に対応する。
配線が周方向に位置ずれを起こしたとしても、配線は、例えば矩形状の画素の一辺部に沿って位置ずれするだけである。故に、配線が画素の内部を無用に遮光してしまう虞はない。つまり、各画素におけるドメイン同士の面積比は変化しない。
【0024】
本発明にあっては、遮光性部材が正面側配向膜よりも正面側に設けられているので、遮光性部材を構成する物質が液晶層の背面側に無用に浸出することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の液晶パネル及び液晶表示装置による場合、平板状の液晶パネルを円筒面状に湾曲した状態でも、各画素におけるドメイン同士の湾曲前に比べた面積比の変化は無視することができるほど小さい。
故に、面積比の大幅な変化に起因する液晶パネルの視野角特性(延いては液晶表示装置の視野角特性)の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。以下の説明では、図において矢符で示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0028】
実施の形態 1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る液晶表示装置1の構成を模式的に示す断面図である。
本実施の形態の液晶表示装置1は、テレビジョン受信機、又はパーソナルコンピュータのディスプレイ等として構成されている。液晶表示装置1は、RGB三原色を用いてカラー画像を表示する。
【0029】
液晶表示装置1は円筒面状に湾曲している。ここで、円筒面の周方向は液晶表示装置1の湾曲方向である。円筒面の軸方向は周方向に交差する方向であり、本実施の形態では上下方向である。
以下では、湾曲していない平面状の矩形及びマトリクス、及びこれらを円筒面状に湾曲したものを、特に区別せず何れも矩形及びマトリクスという。
【0030】
液晶表示装置1は、矩形状の液晶パネル11及び照明装置12を備えている。液晶パネル11は、液晶表示装置1の前部を構成しており、照明装置12は、液晶表示装置1の後部を構成している。液晶パネル11及び照明装置12は、夫々円筒面状の湾曲形状である。
【0031】
液晶パネル11は、TFT基板2、対向基板3、拡散板41、偏光板42,44、液晶層43、保護ガラス45、及び封止部46を備えている。
TFT基板2には、ガラス基板21、TFT層22、及び配向膜23(背面側配向膜)が含まれている。TFT層22は、画素電極24,24,…及びTFT25,25,…、並びに図示しない各複数本の信号配線及びゲート配線を有している。
図1に示す右下がりのハッチングは、TFT層22における画素電極24,24,…及びTFT25,25,…以外を表わしている。
対向基板3には、ガラス基板31、カラーフィルタ層32、透明電極層33、及び配向膜34(正面側配向膜)が含まれている。カラーフィルタ層32は、BM35(遮光層)及び着色層36,36,…を有している。カラーフィルタ層32のBM35は、非遮光部である開口37,37,…と、遮光部とを有する。
図1に示す右上がりのハッチングは、BM35の遮光部を表わしている。
【0032】
液晶パネル11は、平板状の湾曲パネルを円筒面状に湾曲したものである。湾曲前の液晶パネル11の上下方向及び左右方向は、湾曲後の液晶パネル11の上下方向及び周方向である。湾曲前の液晶パネル11の前後方向は、湾曲後の液晶パネル11の円筒面の法線方向である。以下では、湾曲前の液晶パネル11の左方向/右方向(前方向/後方向)に対応するものを、左周方向/右周方向(手前方向/奥方向)という。
【0033】
液晶パネル11は、矩形状の表示領域と、表示領域を囲繞する矩形枠状の額縁領域とを有する。液晶パネル11の表示領域には、複数個の画素がマトリクス状に並設されている。本実施の形態の各画素は、マルチ画素の副画素でもよく、マルチ画素ではない通常の画素でもよい。画素同士の大きさ又は形状は均一でもよく不均一でもよい。以下では、説明を簡単にするために、各画素が合同の矩形状であるものとして説明する。
【0034】
液晶パネル11の拡散板41、偏光板42、TFT基板2、液晶層43、対向基板3、偏光板44、及び保護ガラス45は、後側から前側へこの順に配されている。
拡散板41及び偏光板42は各矩形状であり、夫々透光性を有する。偏光板42は、拡散板41の前面に積層されている。
【0035】
TFT基板2のガラス基板21、TFT層22、及び配向膜23は、後側から前側へこの順に配されている。
ガラス基板21は矩形状であり、透光性を有する。ガラス基板21は、偏光板42の前面に積層されている。
TFT層22は、ガラス基板21の前面に積層された矩形状である。
TFT層22の信号配線及びゲート配線は夫々遮光性を有する。信号配線は、周方向に複数本並設されている。信号配線の長さ方向は上下方向である。ゲート配線は、上下方向に複数本並設されている。ゲート配線の長さ方向は周方向である。信号配線と信号配線とは互いに絶縁された状態で格子状に交差している。
【0036】
画素電極24,24,…とTFT25,25,…とは夫々マトリクス状に並設されている。各画素は、画素電極24及びTFT25を1個ずつ有する。
画素電極24,24,…夫々は透光性を有する。各画素電極24の配置位置は、画素の中心である。
各TFT25のソース電極、ゲート電極、及びドレイン電極は、何れか1本の信号配線、何れか1本のゲート配線、及び何れか1個の画素電極24に電気的に接続されている。TFT25は、ゲート配線又はBM35の遮光部等によって遮光されている。
【0037】
配向膜23は透光性を有する。配向膜23は、TFT層22の前面における表示領域に積層された矩形状である。配向膜23の前面には、ストライプ状の配向領域が設けられている。
【0038】
対向基板3のガラス基板31、カラーフィルタ層32、透明電極層33、及び配向膜34は、前側から後側へこの順に配されている。
ガラス基板31は矩形状であり、透光性を有する。
【0039】
カラーフィルタ層32は、ガラス基板31の後面に積層された矩形状である。
カラーフィルタ層32が有するBM35の開口37,37,…は各矩形状であり、BM35における表示領域にマトリクス状に並設されている。BM35の遮光部は、BM35の開口37,37,…以外であり、上下方向に長い部分と、周方向に長い部分とが格子状に交差している。
BM35は、ガラス基板31の後面上に形成された遮光材料層に対してフォトリソグラフィを行なうことによって設けられる。
【0040】
各画素は、1個の開口37を有していてもよい。この場合、画素同士はBM35の遮光部によって区画される。或いは、複数個の画素が、1個の開口37の相異なる一部分ずつを有していてもよい。この場合、画素同士はBM35の遮光部と、BM35の遮光部以外の非透光部(例えばTFT層22のゲート配線、又は透明電極層33に設けられたギャップ等)によって区画される。
着色層36,36,…は、BM35の遮光部上及び開口37,37,…夫々の内部に形成された着色材料層に対してフォトリソグラフィを行なうことによって設けられる。各着色層36は透光性を有し、且つ、R色、G色、及びB色の何れか1色を有している。各開口37は、何れか1色の着色層36によって閉塞されている。
【0041】
透明電極層33は、カラーフィルタ層32の後面における表示領域に積層された矩形状である。透明電極層33は、画素電極24,24,…に対向する共通電極として機能する。
配向膜34は透光性を有する。配向膜34は、透明電極層33の後面に積層された矩形状である。配向膜34の後面には、ストライプ状の配向領域が設けられている。
【0042】
偏光板44及び保護ガラス45は各矩形状であり、夫々透光性を有する。偏光板44は、ガラス基板31の前面に積層されており、保護ガラス45は、拡散板41の前面に積層されている。
偏光板42,44は、互いに直交する直線偏光を夫々透過する。
【0043】
TFT基板2と対向基板3とは、配向膜23,34が対面するようにして、対向配置されている。
封止部46は矩形枠状であり、遮光性を有する。封止部46は、TFT基板2と対向基板3との間にて、TFT基板2及び対向基板3夫々の額縁領域に接着している。つまり、TFT基板2と対向基板3とは封止部46を介して接着されている。
液晶層43は透光性を有し、TFT基板2と対向基板3との間、且つ、封止部46に囲繞された空間に配されている。換言すれば、液晶層43は、封止部46によって、TFT基板2と対向基板3との間に封止されている。
液晶層43の後面(背面側の面)は配向膜23の配向領域に接触しており、液晶層43の前面(正面側の面)は配向膜34の配向領域に接触している。
【0044】
照明装置12は、直下型又はエッジライト型の照明装置である。照明装置12は、平板状の光学シートを円筒面状に湾曲したもの、及び円筒面状に形成された導光板等(各不図示)を備えている。照明装置12は、自身よりも前側を照明する。
【0045】
次に、液晶表示装置1におけるカラー画像の表示について説明する。
照明装置12は、液晶パネル11を後側から照明する。
照明装置12が発した光は、拡散板41を透過することによって拡散する。拡散した光は、偏光板42を透過してからTFT基板2に入射する。
TFT基板2に入射した光は、ガラス基板21、画素電極24,24,…、及び配向膜23を順に透過してから、液晶層43に入射する。
【0046】
TFT25,25,…夫々は、液晶層43を構成する液晶分子を駆動するためのスイッチング素子であり、TFT層22の信号配線及びゲート配線は液晶層43を構成する液晶分子を駆動するための配線である。
ゲート配線を介してTFT25がオンされると、信号配線及びTFT25,25,…を介して画素電極24,24,…と透明電極層33との間に電圧が印加される。この結果、液晶層43に電圧が印加される。
液晶層43に電圧が印加されていない場合、液晶層43に入射した光は、そのまま液晶層43を透過する。
一方、液晶層43に電圧が印加された場合、液晶層43を構成する液晶分子の配列が変化する。液晶層43に入射した光は、液晶層43によって偏光されてから液晶層43を透過する。
【0047】
液晶層43を透過した光は、対向基板3に入射する。
対向基板3に入射した光は、配向膜34、透明電極層33、着色層36,36,…、及びガラス基板31を順に透過してから出射する。
液晶層43をそのまま透過した光は、対向基板3から出射した後、偏光板44によって遮断される。液晶層43によって偏光された光は、対向基板3から出射した後、偏光板44、及び保護ガラス45を順に透過し、外部へ出射する。
以上の結果、液晶パネル11の表示領域にカラー画像が表示される。
【0048】
図2は、液晶表示装置1が備える液晶パネル11の湾曲前及び湾曲後の状態を模式的に示す断面図である。
図2には、液晶パネル11のTFT基板2(右下がりのハッチング部分)、対向基板3(右上がりのハッチング部分)、及び液晶層43が示されている。
図中20,30は、液晶パネル11の湾曲に伴う周方向の位置ずれを説明するための仮想的な指標である。
各指標20(及び各指標30)は、TFT基板2(及び対向基板3)に配されている。以下では、添え字Cは、左右方向の中心位置の指標であることを意味している。添え字L(及び添え字R)は、中心位置よりも左側(及び右側)の指標であることを意味している。添え字a(添え字b)は、TFT基板2(又は対向基板3)の内部における前側(及び後側)の指標であることを意味している。
【0049】
湾曲前の液晶パネル11は平板状である。このとき、指標20C,30Ca,30Cbは前後方向に並んでいる。即ち、指標20C,30Ca,30Cb夫々の左右方向の位置は同じである。同様に、指標20L,30La,30Lb(及び指標20R,30Ra,30Rb)夫々の左右方向の位置は同じである。
【0050】
液晶パネル11を湾曲させた場合、指標20C,30Ca,30Cb夫々の左右方向の位置が同じであるとき、指標20Lは、指標30La,30Lbに対して周方向(更に詳細には右周方向)に位置ずれを起こし、指標20Rは、指標30Ra,30Rbに対して周方向(更に詳細には左周方向)に位置ずれを起こす。何故ならば、TFT基板2及び対向基板3は、夫々相異なる曲率半径の円筒面状に湾曲するからである。
【0051】
ところで、指標30La,30Raも指標30Lb,30Lbに対して周方向に位置ずれを起こす。しかしながら、これらの法線方向の離隔距離は、指標20Lと指標30La,30Lbとの法線方向の離隔距離(又は指標20Rと指標30Ra,30Rbとの法線方向の離隔距離)に比べて十分に短いので、指標30Lb,30Lbに対する指標30La,30Raの位置ずれは無視することができるほど小さい。
【0052】
図3及び
図4は、液晶パネル11の湾曲前及び湾曲後の画素P,Pを模式的に示す正面図である。
図3及び
図4に示す太い実線は、各画素Pの周縁部を表わしている。各画素Pの周縁部の形状及び配置位置は、TFT層22のアレイ構造によって決定づけられる。
図3及び
図4の左側は、配向膜23及び配向膜34夫々の配向領域を模式的に示す正面図であり、
図3及び
図4の右側は、左右方向(又は周方向)に隣り合う2個の画素P,Pを示す正面図である。
【0053】
配向膜23の配向領域には、筋状部26,26,…が含まれている。筋状部26,26,…は、配向膜23に形成された凹凸を用いてなり、左右方向(又は周方向)に複数本並設されている。各筋状部26の長さ方向は上下方向である。
液晶層43を構成する液晶分子は、筋状部26の長さに沿って配向される。一部の筋状部26,26,…は、液晶分子を長さ方向の一側に配向させ、残部の筋状部26,26,…は、液晶分子を長さ方向の他側に配向させる。配向膜23には、液晶分子を長さ方向の一側に配向させる複数本の筋状部26,26,…と、液晶分子を長さ方向の他側に配向させる複数本の筋状部26,26,…とが左右方向(又は周方向)に交互に並設されている。
【0054】
配向膜34の構成は、配向膜23の構成と略同様である。ただし、配向膜34の配向領域には、筋状部38,38,…が含まれている。筋状部38,38,…は、上下方向に複数本並設されている。各筋状部38の長さ方向は左右方向(又は周方向)である。配向膜34には、液晶分子を長さ方向の一側に配向させる複数本の筋状部38,38,…と、液晶分子を長さ方向の他側に配向させる複数本の筋状部38,38,…とが上下方向に交互に並設されている。
【0055】
液晶層43を構成する液晶分子が筋状部26,26,…及び筋状部38,38,…に沿って配向されることにより、各画素Pに、マトリクス状に配された各矩形状の4個のドメインが設けられる。異なるドメインに配されている液晶分子同士は、配向方位が互いに異なる。
図3及び
図4に示す破線は、ドメインの境界線B1,B2を表わしている。各画素Pには、長さ方向が上下方向の境界線B1と左右方向(又は周方向)の境界線B2とが十字状に生じる。境界線B1の長さ方向及び配置位置は、筋状部26,26,…の長さ方向及び配置位置に対応しており、境界線B2の長さ方向及び配置位置は、筋状部38,38,…の長さ方向及び配置位置に対応している。
【0056】
筋状部26,26,…及び筋状部38,38,…は、液晶パネル11の湾曲に伴って、TFT層22の各部に対し周方向に位置ずれする。
筋状部26,26,…が周方向に位置ずれすると、境界線B1は自身の長さ方向に交差する方向に位置ずれする。しかしながら、配向膜23はTFT層22に隣接している。故に、筋状部26,26,…の周方向の位置ずれは無視することができるほど小さい。従って、境界線B1の長さ方向に交差する方向の位置ずれは無視することができるほど小さい。
【0057】
一方、配向膜34はTFT層22から離隔している。筋状部38,38,…の周方向の位置ずれは筋状部26,26,…の周方向の位置ずれに比べて大きい。従って、境界線B2は、境界線B2の長さ方向に位置ずれする。ただし、境界線B2は、境界線B2の長さ方向に交差する方向に位置ずれすることはない。
つまり、境界線B1,B2は、各画素Pにおけるドメイン同士の面積比の大幅な変化が起きるような位置ずれを起こさない。
【0058】
以上のような液晶表示装置1の場合、湾曲前の液晶パネル11は各画素Pの配向分割がなされている。従って、配向分割がなされていない場合よりも視野角特性が向上されている。
一方、湾曲後の液晶パネル11は、各画素におけるドメイン同士の面積比は湾曲前と略同じである。故に、面積比の大幅な変化に起因する視野角特性の悪化を抑制することができる。
【0059】
図5は、液晶パネル11の作用効果を説明するための正面図である。
図5は
図4に対応する。しかしながら、配向膜23には、筋状部38,38,…が並設されており、配向膜34には筋状部26,26,…が並設されている。
この場合、筋状部38,38,…の周方向の位置ずれは無視することができるほど小さい。従って、境界線B2の長さ方向の位置ずれは無視することができるほど小さい。
一方、筋状部26,26,…の周方向の位置ずれは筋状部38,38,…の周方向の位置ずれに比べて大きい。従って、境界線B1は、境界線B1の長さ方向に交差する方向に大幅に位置ずれする。
【0060】
つまり、境界線B2は、各画素Pにおけるドメイン同士の面積比の大幅な変化が起きるような位置ずれを起こさないが、境界線B1は、ドメイン同士の面積比の大幅な変化が起きるような位置ずれを起こす。この結果、液晶パネル11の視野角特性が悪化する。
【0061】
実施の形態 2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る液晶表示装置1の構成を模式的に示す断面図である。
図6は
図1に対応する。
本実施の形態の液晶表示装置1は、実施の形態1の液晶表示装置1と略同様の構成である。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
本実施の形態の対向基板3には、カラーフィルタ層32は含まれていない。故に、透明電極層33は、ガラス基板31の後面における表示領域に積層されている。
本実施の形態のTFT基板2には、カラーフィルタ層32が含まれている。カラーフィルタ層32は、ガラス基板21とTFT層22との間に介在している。即ち、カラーフィルタ層32は、配向膜23よりも背面側に設けられている。
【0062】
図7は、液晶表示装置1が備える液晶パネル11の画素を模式的に示す正面図である。
図7に示す太い実線は、画素Pの周縁部を表わしている。
図7には、上下方向及び周方向に隣り合う4個の画素P,P,…を示している。
図7に示すハッチングは、BM35の遮光部を表わしている。
各画素Pは、1個の開口37を有している。
BM35においては、各複数本の周方向遮光部351,351,…及び交差方向遮光部352,352,…が格子状に交差している。周方向遮光部351,351,…は、BM35の遮光部における周方向に長い部分であり、交差方向遮光部352,352,…は、BM35の遮光部における上下方向に長い部分である。
【0063】
各画素Pは、上下方向に隣り合う2本の周方向遮光部351,351と、周方向に隣り合う2本の交差方向遮光部352,352に囲繞されている。即ち、画素P,P,…同士はBM35の遮光部によって区画されている。
カラーフィルタ層32はTFT層22に隣接している。従って、TFT層22の各部に対する周方向遮光部351,351,…及び交差方向遮光部352,352,…夫々の周方向の位置ずれは無視することができるほど小さい。
以上の結果、液晶パネル11の湾曲前の各画素Pにおけるドメイン同士の面積比と、液晶パネル11の湾曲後の各画素Pにおけるドメイン同士の面積比とは、略等しい。
【0064】
以上のような液晶表示装置1の場合、実施の形態1の液晶表示装置1と同様の作用効果を奏することができる。しかも、湾曲に伴うBM35の遮光部の位置ずれに起因する視野角特性の悪化を抑制することができる。
【0065】
図8は、液晶パネル11の作用効果を説明するための正面図である。
図8は
図7に対応する。しかしながら、カラーフィルタ層32は、実施の形態1と同様に対向基板3に含まれている。
この場合、TFT層22の各部に対する周方向遮光部351,351,…及び交差方向遮光部352,352,…夫々の周方向の位置ずれは、カラーフィルタ層32がTFT基板2に含まれている場合に比べて大きい。
【0066】
周方向に位置ずれを起こした周方向遮光部351が画素Pの内部に侵入することはない。
しかしながら、周方向に位置ずれを起こした交差方向遮光部352は画素Pの内部に侵入することがある。このとき、複数個のドメインの内の一部が交差方向遮光部352によって遮光されてしまう。
【0067】
以上の結果、液晶パネル11の湾曲前の各画素Pにおけるドメイン同士の面積比と、液晶パネル11の湾曲後の各画素Pにおけるドメイン同士の面積比とは、大幅に異なる。この結果、液晶パネル11の視野角特性が悪化する。
また、交差方向遮光部352が画素Pの内部に侵入することによる開口率の低下、及び、交差方向遮光部352が本来遮光すべき部分(例えばドメイン不良領域)が遮光されないことによって、表示品位が悪化する虞がある。
【0068】
なお、カラーフィルタ層32が実施の形態1と同様に対向基板3に含まれている場合であっても、湾曲の前後でドメイン同士の面積比が変化しない場合がある。それは、湾曲に伴って周方向に位置ずれを起こした周方向遮光部351が、画素Pの内部以外(例えば、BM35の遮光部以外の遮光部材によって遮光されている部分)に配される場合である。
【0069】
実施の形態 3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る液晶表示装置1の構成を模式的に示す断面図である。
図9は
図1に対応する。
図10は、液晶表示装置1が備える液晶パネル11の画素を模式的に示す正面図である。
図10に示す太い実線は、画素Pの周縁部を表わしている。
図10には、上下方向及び周方向に隣り合う4個の画素P,P,…を示している。
本実施の形態の液晶表示装置1は、実施の形態1の液晶表示装置1と略同様の構成である。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0070】
本実施の形態のカラーフィルタ層32は、BM35を有しておらず、複数個の遮光性部材39,39,…を有している。
図9に示すハッチングは、遮光性部材39を表わしている。
遮光性部材39,39,…は、TFT25,25,…を遮光するためのものである。故に、遮光性部材39,39,…の配置位置は、TFT25,25,…配置位置に対応している。遮光性部材39,39,…は、ガラス基板31の後面上に形成された遮光材料層に対してフォトリソグラフィを行なうことによって設けられる。
【0071】
着色層36,36,…は、BM35の開口37,37,…を閉塞していないという点以外、実施の形態1における着色層36,36,…と同様のものである。このために、着色層36,36,…は、遮光性部材39,39,…上及びガラス基板31の後面上に形成された着色材料層に対してフォトリソグラフィを行なうことによって設けられる。
【0072】
本実施の形態のTFT層22は、画素電極24,24,…及びTFT25,25,…、並びに各複数本の信号配線27,27,…及びゲート配線28,28,…を有している。
図10に示す右上がりのハッチングは信号配線27を表わしており、右下がりのハッチングはゲート配線28を表わしている。
信号配線27,27,…及びゲート配線28,28,…は実施の形態1のTFT層22の信号配線及びゲート配線と同様のものである。
各画素Pは、上下方向に隣り合う2本のゲート配線28,28と、周方向に隣り合う2本の信号配線27,27に囲繞されている。即ち、画素P,P,…同士は、信号配線27,27,…及びゲート配線28,28,…によって区画されている。信号配線27は交差方向遮光部であり、ゲート配線28は周方向遮光部である。
【0073】
信号配線27,27,…及びゲート配線28,28,…はTFT層22に含まれている。従って、TFT層22の他の各部に対する信号配線27,27,…及びゲート配線28,28,…夫々の周方向の位置ずれは無視することができるほど小さい。
遮光性部材39は、湾曲に伴う周方向の位置ずれによって画素Pの内部を遮光することがある。しかしながら、遮光性部材39が画素Pを遮光し得る面積は、例えばBM35の遮光部が画素Pの内部を遮光し得る面積に比べて、無視することができるほど小さい。
以上の結果、液晶パネル11の湾曲前の各画素Pにおけるドメイン同士の面積比と、液晶パネル11の湾曲後の各画素Pにおけるドメイン同士の面積比とは、略等しい。
【0074】
以上のような液晶表示装置1の場合、実施の形態1の液晶表示装置1と同様の作用効果を奏することができる。しかも、湾曲に伴うBM35の遮光部の位置ずれに起因する視野角特性の悪化を防止することができる。
遮光性部材39は対向基板3に含まれているので、遮光性部材39を構成する遮光材料が、TFT基板2に含まれているTFT層22に悪影響を及ぼす虞はない。
【0075】
実施の形態 4.
本実施の形態の液晶表示装置1は、実施の形態1の液晶表示装置1と略同様の構成である。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
複数個の画素P,P,…は、1個の開口37の相異なる一部分ずつを有している。画素P,P,…同士はBM35の周方向遮光部351,351,…(実施の形態2参照)とTFT層22の信号配線27,27,…(実施の形態3参照)によって区画される。
【0076】
以上のような液晶表示装置1の場合、実施の形態2の液晶表示装置1と同様の作用効果を奏することができる。何故ならば、周方向遮光部351,351,…の周方向の位置ずれはドメイン同士の面積比に悪影響を及ぼさないからである。また、信号配線27,27,…は周方向の位置ずれのほとんど起こさないのでドメイン同士の面積比の変化に悪影響を及ぼさないからである。
なお、実施の形態1〜4の液晶表示装置1は前側が凸状に湾曲しているが、後側が凸状に湾曲していてもよい。また、円筒面状の液晶表示装置1の軸方向は上下方向以外(例えば左右方向)でもよい。
【0077】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、請求の範囲と均等の意味及び請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
また、本発明の効果がある限りにおいて、液晶パネル11又は液晶表示装置1に、実施の形態1〜4に開示されていない構成要素が含まれていてもよい。
各実施の形態に開示されている構成要件(技術的特徴)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせによって新しい技術的特徴を形成することができる。