(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231255
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】メータの磁気改ざん検出のための方法、デバイス及びコンピュータプログラム成果物
(51)【国際特許分類】
G01R 35/00 20060101AFI20171106BHJP
G01R 21/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
G01R35/00 M
G01R35/00 F
G01R21/00 R
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-248143(P2011-248143)
(22)【出願日】2011年11月14日
(65)【公開番号】特開2012-108128(P2012-108128A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2014年11月5日
【審判番号】不服2016-13573(P2016-13573/J1)
【審判請求日】2016年9月9日
(31)【優先権主張番号】12/948,986
(32)【優先日】2010年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516083760
【氏名又は名称】アクララ ミーターズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・マイケル・プライド
【合議体】
【審判長】
酒井 伸芳
【審判官】
中塚 直樹
【審判官】
須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0229256(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0143525(US,A1)
【文献】
特開平6−281544(JP,A)
【文献】
特表2007−530082(JP,A)
【文献】
特開2007−248363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 35/00
G01R 21/00
G01F 1/00
G01F 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メータ(106)の改ざん検出のための方法であって、
検出した磁場強度に比例したアナログ電圧信号を磁場強度のレベルにかかわらず発生させる磁場強度センサ(302)を用いてメータ(106)の近傍の磁場強度のレベルを連続的に検出するステップと、
前記アナログ電圧信号を前記磁場強度のレベルを表すディジタル電圧信号に連続的に変換するステップと、
変換された前記ディジタル電圧信号をプロセッサ(404)を用いてメモリ(406)内に保存するステップであって、この保存するステップが間欠的に行われる、保存するステップと、
保存された複数の前記ディジタル電圧信号の1以上が、メータ(106)の改ざんの可能性を示す前記磁場強度のレベルの逸脱を表すか否かを判定するため、前記メモリ(406)内に保存された複数の前記ディジタル電圧信号を監視するステップと、
を含み、
前記ディジタル電圧信号を監視する前記ステップは、逸脱を含む保存した複数の前記ディジタル電圧信号に関する平均値を決定するステップを含むと共に前記逸脱はディジタル電圧信号によって表される前記磁場強度のレベルの、該平均値からのある偏差を含む、
方法。
【請求項2】
磁場強度センサ(302)を用いてメータ(106)の近傍の磁場強度のレベルを連続的に検出する前記ステップは、レシオメトリックホール効果センサを用いるステップを含むと共に、磁場強度センサ(302)が発生させるアナログ電圧信号は検出した磁場強度のレベルと直線的に比例している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
決定した前記平均値は規定されたある時間ウィンドウにわたって決定した移動平均値でありかつ該逸脱はディジタル電圧信号によって表される磁場強度のレベルが該平均値から±10パーセントだけ外れることを含む、請求項1乃至2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
改ざんを示すためのアラームをトリガーするステップであって、前記逸脱が規定されたある時間期間にわたって連続して続くときに該アラームがトリガーされるトリガーステップをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
改ざんを示すためのアラームをトリガーするステップであって、メータ(106)に位置する機械式アラームのトリガー、メータ(106)に位置する電気機械式アラームのトリガー及び遠隔箇所に送られる電子式アラーム信号の発生からなる群から選択されるアラームをトリガーする前記ステップをさらに含む請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
磁気改ざん検出を備える公益サービスメータ(106)であって、
メータ(106)の近傍の磁場強度のレベルを検出すると共に該検出した磁場強度のレベルに比例したアナログ電圧信号を連続的に発生させている磁場強度センサ(302)と、
前記アナログ電圧信号を連続して受け取ると共に該アナログ電圧信号を前記検出した磁場強度のレベルを表す、対応するディジタル電圧信号に変換している少なくとも1つのアナログ対ディジタル変換器(ADC)(402)と、
メモリ(406)と、
1つまたは複数のプロセッサ(404)であって、
前記ディジタル電圧信号を各ディジタル電圧信号が表す磁場強度のレベルにかかわらずメモリ(406)内に間欠的に保存して、前記メモリ(406)内に複数の前記ディジタル電圧信号を保存すること、
メータ(106)の改ざんの可能性を示す、磁場強度のレベルの逸脱について保存された前記複数のディジタル電圧信号を監視すること、
保存した複数の前記ディジタル電圧信号によって表される磁場強度のレベルに関する平均値を決定することであって、前記逸脱は前記レベルの該平均値からのある偏差を含んでいる、前記平均値を決定すること、
逸脱が所定の期間にわたって続く場合に、改ざんを示すためのアラームをトリガーすること、
を行うように構成された、1つまたは複数のプロセッサ(404)と、
を含む公益サービスメータ(106)。
【請求項7】
前記磁場強度センサ(302)はレシオメトリックホール効果センサを含んでおり、かつ磁場強度センサ(302)が発生させる前記アナログ電圧信号は検出した磁場強度のレベルと直線的に比例している、請求項6に記載の公益サービスメータ(106)。
【請求項8】
前記ディジタル電圧信号を監視するように構成された前記1つまたは複数のプロセッサ(404)は前記保存したディジタル電圧信号によって表される磁場強度のレベルの平均値を決定するように構成され、前記逸脱はディジタル電圧信号によって表される磁場強度のレベルの該平均値からのある偏差を含んでおり、該1つまたは複数のプロセッサ(404)は規定されたある時間ウィンドウにわたる前記磁場強度の移動平均を決定するように構成され、該1つまたは複数のプロセッサ(404)は1つまたは複数のディジタル電圧信号によって表される磁場強度のレベルが該平均値から±10パーセントだけ外れていることを決定するように構成されている、請求項6乃至7のいずれかに記載の公益サービスメータ(106)。
【請求項9】
前記1つまたは複数のプロセッサ(404)は、改ざんを示すためのアラームをトリガーするように構成されており、メータ(106)に位置する機械式アラーム、メータ(106)に位置する電気機械式アラーム、及び生成され遠隔箇所に送られる電子式アラーム信号からなる群から選択されるアラームをトリガーするように構成されている請求項6乃至8のいずれかに記載の公益サービスメータ(106)。
【請求項10】
非一時的コンピュータ読み取り可能媒体上に保存されたコンピュータ実行可能コードからなるコンピュータプログラムであって、該コンピュータ実行可能コードは、
複数のディジタル電圧信号の各々をメモリ(406)内に間欠的に保存させるための命令であって、前記複数のディジタル電圧信号は磁場強度センサ(302)により連続的に検出されるメータ(106)の近傍の磁場強度のレベルを示しており、磁場強度センサ(302)は検出した磁場強度のレベルに比例したアナログ電圧信号を発生させ、アナログ電圧信号は対応するディジタル電圧信号に連続的に変換を受け、前記ディジタル電圧信号は検出した磁場強度のレベルにかかわらず保存される、命令と、
逸脱についてディジタル電圧信号を監視するための命令であって、該逸脱はメータ(106)の改ざんの可能性を示している命令と、
前記保存した複数のディジタル電圧信号によって表される検出した磁場強度のレベルの平均値を決定するための命令と、
前記保存した複数のディジタル電圧信号の1つ又は複数によって表される検出した磁場強度のレベルを前記平均値と比較する命令と、
を含み、
前記逸脱はディジタル電圧信号の該平均値からの前記複数のディジタル電圧信号の前記1つ又は複数によって表される検出した磁場強度のレベルの偏差を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
公益サービス消費量を計測する公益メータは多くの場合、依然として手作業で読み取られており、このためコストが高く、効率が低くかつ容易に誤りを生じる可能性がある。場合によっては公益提供体は、メータリング対象の負荷に対する公益サービスの切断や接続のスケジュール設定、自動メータ読み取り(AMR)、負荷制限及び負荷制御、自動分配及びスマートグリッド用途、停電報告、インターネット、ビデオ及びオーディオなどの追加的なサービスの提供、その他を含む多くの目的のためにメータと電子的に連絡することを希望する。これらの場合のうちの多くではそのメータは、当業者に周知のような通信ネットワーク(有線式、ワイヤレス式あるいは有線式とワイヤレス式を組み合わせたものとすることが可能)を介して1つまたは複数のコンピュータ処理デバイスと通信するように構成しなければならない。
【背景技術】
【0002】
しかし、AMRやその他の形態の遠隔メータリングを使用することは、公益代理人がメータの改ざんを物理的に検査する機会を阻害することになる。例えば磁場飽和による電子式電力メータの改ざんは、電子式電力メータにより読み取られる電力計測値を低減させるよくある方法となっている。メータの近くに(約600ガウス以上の)磁石を置くことによって、電気公益メータの変流器は外部磁場により飽和される可能性があると共に、最終的にキロワット/時(KWH)計測値が低下する結果となる。さらに、メータ近傍の磁場レベルが低い場合であってもKWH計測値を低下させ、長期にわたる公益の収益を大幅に低下させる可能性がある。しかしながら、このタイプの改ざんは一般に遠隔式に検出することは不可能である。米国特許第7,218,223号はメータ上またはその近くに配置された強力な磁石の検出に使用可能なシステムについて記載しているが、このシステムでは複数のセンサと各センサごとの閾値磁気レベル設定が必要である。さらに‘223特許に記載されたシステムは、閾値を超えた事象のみを記録しており、閾値を超えない低い磁場レベルを検出しないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第20070229256号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、公益サービス消費量に関する計測だけの機能以上の機能を有すると共に当技術分野に存在するそのうちの一部を上述したような問題を克服するように構成されたメータが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書には、磁気改ざん検出を備えたメータの方法、デバイス及びコンピュータプログラム成果物の実施形態を記載している。一般に本発明の実施形態は、磁気改ざんの判定に使用可能な磁場強度を示すディジタル電圧信号を記録する方法を提供することによってメータの磁気改ざん検出に関する目下の方法に対する改良を提供する。
【0006】
本方法の一態様は、磁場強度センサを用いてメータの近傍の磁場強度を連続的に検出するステップを含む。一態様ではその磁場強度センサは、検出した磁場強度に比例したアナログ電圧信号を発生させる。センサのこのアナログ電圧信号はディジタル電圧信号に連続的に変換される。このディジタル電圧信号は間欠方式でメモリ内に保存されており、またこのディジタル電圧信号はメータの改ざんを示す逸脱(aberration)の有無について監視される。改ざんが検出されると、改ざんを示すためのアラームがトリガーされる。
【0007】
本発明の別の態様は、磁気改ざん検出を有する公益サービスメータを含む。一実施形態ではその公益サービスメータは、磁場強度センサを含む。この磁場強度センサは、メータの近傍の磁場強度を検出すると共に、検出した磁場強度に比例したアナログ電圧信号を連続的に発生させている。このメータはさらに、少なくとも1つのアナログ対ディジタル変換器(ADC)を含む。このADCは、検出した磁場強度に比例したアナログ電圧信号を連続して受け取ると共に、該アナログ電圧信号をディジタル電圧信号に変換する。さらに1つのメモリ及び1つまたは複数のプロセッサがこのメータを構成している。この1つまたは複数のプロセッサは、該ディジタル電圧信号をメモリ内に間欠的に保存すると共にディジタル電圧信号の逸脱の有無を監視するように構成されている。その逸脱がメータの改ざんを示す場合、改ざんを示すためのアラームをトリガーさせることが可能である。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体上に保存されたコンピュータ実行可能コード区画を含んだコンピュータプログラム成果物を含む。このコンピュータ実行可能コード区画は、ディジタル電圧信号をメモリ内に間欠的に保存させるための第1の区画を含む。このディジタル電圧信号は、検出した磁場強度に比例したアナログ電圧信号を発生させる磁場強度センサが連続的に検出した際のメータの近傍の磁場強度を表している。このアナログ電圧信号はディジタル電圧信号になるように連続的に変換される。第2のコンピュータ実行可能コード区画は、メータの改ざんを示す逸脱の有無についてディジタル電圧信号を監視するために設けられており、また第3のコンピュータ実行可能コード区画は改ざんの検出を示すためのアラームをトリガーするために設けられている。
【0009】
追加的な利点については以下の説明でその一部を列挙することにするが、また実施によって習得し得るであろう。これらの利点は添付の特許請求の範囲に具体的に記載した要素及び組み合わせによって実現され達成されるものである。上述した一般的な説明と以下の詳細な説明はいずれも、単に例示及び説明のためのものであり限定ではないことを理解すべきである。
【0010】
本明細書の内に組み入れると共にその一部を成している添付の図面は、実施形態を例証していると共に、その記述と一緒になって本方法及びシステムの原理を説明する役割をしている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的な公益分配システムの一区画のブロック図である。
【
図2】メータの近傍に磁石が配置されてメータの変流器と変圧器が外部磁場による影響を受けてキロワット/時(KWH)計測値が低下する可能性があるような公益サービスメータの一実施形態の概略ブロック図である。
【
図3】磁気改ざん検出を備えた公益サービスメータの一実施形態の概略ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるメータマイクロコントローラとして動作可能な実体のブロック図である。
【
図5】メータの磁気改ざんを検出するために実施される動作を表した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本方法及びシステムを開示し記載する前に、本方法及びシステムが特定の統合的方法、特定の構成要素、あるいは具体的な組成に限定されないことを理解すべきである。さらに、本明細書で用いる用語は単に具体的な実施形態を記述する目的によるものであり、限定の意図でないことを理解すべきである。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形をした「a」「an」及び「the」はコンテキストにより明瞭に異なる記述をしない限り複数の言及要素を含むものとする。本明細書においては、値の範囲を「「概ね(about)」ある具体的な値から」かつ/または「「概ね」別の具体的な値まで」のように表現することがある。こうした範囲の表現をした場合、別の実施形態には、このある具体的な値からかつ/またはこの別の具体的な値までが含まれる。同様に、「概ね」の語を前に用いて値を概略値で表現している場合、この具体的な値によって別の実施形態が形成されることを理解されたい。さらに、範囲のそれぞれに関する端点が、もう一方の端点との関連において有意となること並びにもう一方の端点と無関係に有意となることの両方があることを理解されたい。
【0014】
「任意選択の(Optional)」や「任意選択において(optionally)」という表現は、続いて記載される事象や状況が生じることも生じないこともあること、並びにこの記述によって該事象や状況が生じる場合やこれが生じない場合を含めていること、を意味している。
【0015】
本明細書の説明及び特許請求の範囲の全体を通じて単語「comprise」と「comprising」や「comprises」など該単語の活用形は、「〜を含む(ただし、これに限らない)(including but not limited to)」の意味であり、例えばその他の付加物、構成要素、整数またはステップを排除する意図ではない。「例示的な(exemplary)」とは「〜の一例」の意味であり、好ましい実施形態または理想的な実施形態を提示する意図ではない。「などの(such as)」は制限の意味で使用したものではなく、例示の目的で使用している。
【0016】
開示した方法及びシステムの実行に使用可能な構成要素を開示している。本明細書ではこれらの構成要素及びその他の構成要素を開示しているが、これらの構成要素の組み合わせ、部分組、相互連携、グループその他を開示した場合これらに関して様々な個別的や集合的な組み合わせ及び置き換えのそれぞれに関する具体的な言及が明示的に開示されることがなくとも、これら各々はすべての方法及びシステムに関して本明細書において具体的に企図され記載されたものとすることを理解されたい。このことは、開示した方法のステップ(ただし、これに限らない)を含む本明細書のすべての態様に当てはまるものである。したがって、実行可能な多種多様な追加的なステップが存在する場合に、これらの追加ステップの各々を特定の任意の実施形態と共にあるいは開示した方法の実施形態の組み合わせと共に実行することが可能であることを理解されたい。
【0017】
本方法及びシステムは、好ましい実施形態及びその中に含めた例に関する以下の詳細な説明並びに図面及びこれに関する上述及び下記の説明を参照することによってより容易に理解できよう。
【0018】
図1を見ると、本発明の実施形態から恩恵が受けられるあるタイプのシステムの図を提供している。
図1は、例えば電気、水またはガスの分配システムなどの例示的な公益分配システムの一区画のブロック図である。しかし、本発明の実施形態は送達されるサービスや生成物の計測に磁気原理(例えば、変流器)が用いられる任意のメータに恩恵を与えるのに使用可能であるが、本明細書に記載した実施形態は、電力及び需要の計測に用いられる電気公益メータ向けに適用した場合に最も容易に適用可能である。
図1に示したように、公益サービスは、公益提供体100によって分配システム104を介して様々な負荷L
1〜L
n102まで送達される。一態様ではその提供される公益サービスは電力である。負荷102による消費量及び需要は、負荷の箇所においてメータM
1〜M
n106によって計測することが可能である。電気メータではメータ106は、当業者に周知のように負荷102に応じて単相または多相式の電気メータとすることが可能である。消費または需要情報は主として消費者に対する請求のために公益提供体100によって用いられているが、この情報はさらに公益分配システムの計画及びプロファイリングを含む別の目的のためにも使用可能である。メータ106は多くの場合、依然として手作業で読み取られており、このためコストが高く、効率が低くかつ容易に誤りを生じる可能性がある。場合によっては公益提供体100は、負荷102に対する公益サービスの切断または接続のスケジュール設定、自動メータ読み取り(AMR)、負荷制限及び負荷制御、自動分配及びスマートグリッド用途、停電報告、インターネット、ビデオ、オーディオなどの追加的なサービスの提供、その他を含む多くの目的のためにメータ106との電子式通信を希望することがある。これらの場合の多くにおいてメータ106は当業者に周知のように、有線式、ワイヤレス式あるいは有線式とワイヤレス式の組み合わせとすることが可能な通信ネットワーク110を介して1つまたは複数のコンピュータ処理デバイス108と通信するように構成しなければならない。こうしたシステムはメータの読み取り及び請求の処理をより効率よく実施するようになったが、これによって公益代理人が改ざんに関してメータ106を物理的に検査する機会が減少した。例えば磁場飽和による電子式電力メータ106の改ざんは電子式電力メータが読み取る電力計測値を低下させるよくある方法となっている。
図2に示したように、メータ106の近傍に(約600ガウス以上の)磁石202を配置させることによって、電気公益メータ106の変流器204(及び、変圧器206)は外部磁場208によって飽和状態または部分的に飽和状態となる可能性があり、最終的にキロワット/時(KWH)計測値の低下を生じる可能性がある。さらに、メータ106の近傍に低レベルの磁場208を置いた場合であってもKWH計測値が低下し、長期にわたる公益の収益に有意の低下が生じる可能性がある。したがって、
図1及び2に示したシステムなどのシステムのメータ106は単なる公益サービス消費量の計測を超えた機能を有するように構成されることが希望される。本明細書には、磁気改ざん検出を備えた公益サービスメータに関する方法、デバイス及びコンピュータプログラム成果物の実施形態を記載している。本発明の実施形態の技術的効果によれば一般に、磁場208の強度に比例したディジタル電圧情報を保存する方法を提供することによって磁気改ざんを検出する目下の方法に対する改善が提供される。一態様ではこの保存された情報は、メータ106に磁気改ざんが生じているか否かを判定するために使用することが可能である。
【0019】
図3は、磁気改ざん検出をさらに備えたメータ106の一実施形態を表している。一態様ではその磁気改ざん検出は、磁場強度センサ302及びメータ電子回路304を備える。一態様ではその磁場強度センサ302は、メータ106の近傍で磁場208の強度を検出すると共に、検出した磁場208の強度に比例したアナログ電圧信号を連続的に発生させる。例えばある場合ではその磁場強度センサ302は、2.5mV/ガウスの出力アナログ電圧信号を発生させることが可能である。別の非限定の例ではその磁場強度センサは、1.3mV/ガウスの出力アナログ電圧信号を発生させることが可能である。一態様ではその磁場強度センサ302はレシオメトリックホール効果センサを備える。一態様では、磁場強度センサ302が発生させるアナログ電圧信号は検出した磁場208の強度に直線的に比例する。本発明の実施形態の実施に使用可能な磁場強度センサの非限定の例には、Allegro MicroSystems,Inc.(Worcester、Massachusetts)から入手可能なA1301及びA1302連続時間レシオメトリック線形ホール効果センサが含まれる。
【0020】
さらにメータ106の電子回路304が
図3の実施形態を構成している。一態様ではその電子回路304は、少なくとも1つのアナログ対ディジタル変換器(ADC)と、1つのメモリと、1つまたは複数のプロセッサと、を備える。一態様ではそのADCは、検出した磁場強度に比例したアナログ電圧信号を連続して受け取ると共に、このアナログ電圧信号をディジタル電圧信号に変換する。一態様ではそのメータ電子回路304は、メータ106により使用されるようなメータリングマイクロコントローラを備えることが可能である。受容可能なメータリングマイクロコントローラ(ADCを有する)の非限定の例には、Maxim Integrated Products,Inc.(Sunnyvale、California)から入手可能なTeridian6533コントローラやTeridian6521コントローラ(ただし、これらに限らない)が含まれる。
【0021】
ここで
図4を見ると、本発明の一実施形態によるメータマイクロコントローラ400として動作可能な実体のブロック図を表している。メータマイクロコントローラ400として動作可能なこの実体は、本発明の実施形態による1つまたは複数の機能を実行するための本明細書により具体的に図示し記載したような手段を含む様々な手段を含んでいる。しかしこうした実体のうちの1つまたは幾つかは、本発明の精神及び趣旨を逸脱することなく1つまたは複数の同様の機能を実行するための代替的手段を含み得ることを理解すべきである。図示したように、メータマイクロコントローラ400として動作可能なこの実体は一般に、本実体の様々な機能を実行または制御するための1つまたは複数のプロセッサ404などの手段を含むことが可能である。
図4に示したように一実施形態では、マイクロコントローラ400はメータ入力及びフィルタ処理構成要素402を備えることが可能である。一態様ではそのメータ入力及びフィルタ構成要素402は、電圧及び電流入力と、1つまたは複数のADCと、フィルタ処理構成要素と、を備えることが可能である。さらにプロセッサ404及びメモリ406(プロセッサ404とメモリ406のことを一括してファームウェアと呼ぶことができる)が、このマイクロコントローラ400の実施形態を構成している。当業者に周知のように、ADCは入力アナログ信号をディジタル信号に変換する。一態様ではそのADCは、検出した磁場208の強度に比例したアナログ電圧信号を連続して受け取ると共に、このアナログ電圧信号をディジタル電圧信号に連続的に変換している。一態様ではある時間間隔(例えば、毎30秒に1度、1分に1度、2分に1度、その他)でプロセッサ404がADCによりディジタル電圧信号に変換される磁場強度センサ302のアナログ出力電圧を読み取り、このディジタル電圧信号をメモリ406内に保存しており、これによりある時間期間にわたって複数の保存済みディジタル電圧信号が得られる。
【0022】
一実施形態ではその1つまたは複数のプロセッサ404は、コンテンツ、データその他を保存する揮発性及び/または不揮発性メモリなどのメモリ406と連絡するまたはこれを含む。例えばメモリ406は、実体から送られてきたかつ/または実体が受け取ったコンテンツを保存することがある。さらに例えばメモリ406は、本発明の実施形態による実体の動作に関連するステップをプロセッサが実行するためのソフトウェアアプリケーション、命令、その他を保存することがある。具体的には1つまたは複数のプロセッサ404は、本明細書でより詳細に検討しているメータ106の磁気改ざんを検出するための処理を実行するように構成されることがある。例えば一実施形態ではその1つまたは複数のプロセッサ404は、磁場208の強度を表したディジタル電圧信号をメモリ406内に間欠的に保存するように構成することが可能である。さらにプロセッサ404は、メータ106の改ざんを示す可能性がある逸脱についてディジタル電圧信号を監視するように構成することが可能である。一態様ではその1つまたは複数のプロセッサ404は、保存したディジタル電圧信号の平均値を決定するように構成することが可能である。ディジタル電圧信号がこの平均値から外れた場合には、逸脱が生じている可能性がある。非限定の例としてプロセッサ404は、決定したディジタル電圧信号が平均値から±1パーセント、±2パーセント、±5パーセント、±10パーセント、±15パーセント、±50パーセント、±100パーセントその他、あるいはこれらの間の任意の値だけ外れたときに逸脱を判定するように構成することが可能である。一態様ではそのプロセッサ404は、保存したディジタル電圧信号の移動平均(rolling average)を決定するように構成されている。一態様ではその1つまたは複数のプロセッサ404は、規定されたある時間ウィンドウにわたる移動平均を決定するように構成されている。例えば、規定する時間ウィンドウを約30分とすることが可能であり、またこの平均値はこの30分のウィンドウ中にメモリ406内に保存された任意のディジタル電圧信号から決定することが可能である。これより長い期間やこれより短い期間の時間ウィンドウも本発明の実施形態の趣旨の域内にあるものと企図される。決定後にこの移動平均を用いて移動平均から外れており逸脱を示しかつ改ざんの可能性を示し得るディジタル信号をすべて決定することが可能である。一態様ではその時間ウィンドウ並びに逸脱検出の境界は、メータ106の据え付け前にプロセッサ404上で事前設定することが可能である。
【0023】
一態様では、逸脱の検出を用いて改ざんを示すためのアラームをトリガーすることが可能である。一例では、規定されたある時間期間にわたってアラームが連続して生じた後にアラームがトリガーされる。この態様は誤ったアラームを回避するのに役立てることが可能である。例えば様々な場合において、アラームをトリガーする前に10分、20分、1時間、2時間、6時間、その他、あるいはこれらの間の任意の値にわたって生じる逸脱とすることがある。一態様では、アラームをトリガーさせる逸脱に関する規定の時間期間をメータ106の据え付け前にプロセッサ404上で事前設定することが可能である。一態様ではそのアラームのトリガーは、メータ106の位置における機械式または電気機械式のアラームのトリガーを含むことが可能である。例えば、メータ106のウィンドウ内に改ざんを示すようにフラグまたはターゲットを現示させることが可能である。一態様ではそのターゲットやフラグは、改ざんを示すための指定の色(すなわち、赤色、黄色、橙色、その他)とすることが可能である。一態様では、メータ106の改ざんを示すために1つまたは複数のランプを点灯または滅灯させることが可能である。一態様ではそのランプは、改ざんを示すような様々な色(例えば、赤色、黄色、橙色、その他)とすることが可能である。一態様では、遠隔箇所に信号を送ることによってアラームをトリガーすることが可能である。例えば、一例としてプロセッサ404は通信インタフェース408に対して、通信ネットワーク110を介して1つまたは複数のコンピュータ処理デバイス108にアラームを伝達させることが可能である。
【0024】
メモリ406に加えて1つまたは複数のプロセッサ404はさらに、データ、コンテンツその他に関する表示、送信及び/または受信のための少なくとも1つのインタフェースその他の手段と接続させることが可能である。これに関してこのインタフェース(複数のこともある)は、データ、コンテンツその他を送信及び/または受信するための少なくとも1つの通信インタフェース408やその他の手段、並びにディスプレイ410及び/またはユーザ入力インタフェース412を含むことが可能な少なくとも1つのユーザインタフェースを含むことが可能である。一態様ではその通信インタフェース108は、メモリ406内に保存されたディジタル電圧信号の少なくとも一部分を遠隔のコンピュータ処理デバイスに転送するために用いることが可能である。例えば、一例としてその通信インタフェース408は、メータの近傍の磁場強度の変化について転送済みディジタル電圧信号の解析を可能とするようにして、保存したディジタル電圧信号の少なくとも一部分を通信ネットワーク110を介してコンピュータ処理デバイス108に転送するために用いることが可能である。一方このユーザ入力インタフェース412は、キーパッド、タッチディスプレイ、ジョイスティックやその他の入力デバイスなどユーザからデータを受け取るための実体を可能にさせる多数のデバイスのいずれを含むことが可能である。
【0025】
ここで
図5を見ると、メータの磁気改ざんを検出するために実施し得る動作を図示している。ステップ502では、磁場強度センサによってメータの近傍の磁場強度が連続的に検出される。一態様ではその磁場強度センサは、検出した磁場強度に比例したアナログ電圧信号を連続的に発生させている。一態様ではその磁場強度センサはレシオメトリックホール効果センサを備える。一態様ではその磁場強度センサが発生させるアナログ電圧信号は、検出した磁場強度と直線的に比例している。ステップ504では、磁場強度センサが発生させたアナログ電圧信号がディジタル電圧信号に連続的に変換される。一態様では本明細書に記載したように、そのアナログ信号はADCによってディジタル信号に変換されている。ステップ506では、ディジタル電圧信号が間欠方式でメモリ内に保存される。メータ内にあるプロセッサによってこの処理が実行される。この処理によってメモリ内に複数の保存済みのディジタル電圧信号が生成される。ステップ508では、ディジタル電圧信号について逸脱の有無が監視される。逸脱によってメータの改ざんを示すことが可能である。一態様では、ディジタル電圧信号の逸脱の有無を監視することは、保存したディジタル電圧信号に関する平均値を決定することを含むと共に、この逸脱はディジタル電圧信号の該平均値からのある偏差を含む。一態様では決定したその平均値は規定されたある時間ウィンドウにわたって決定した移動平均である。逸脱が改ざんを示した場合、ステップ510においてアラームがトリガーされる。一態様では、改ざんを示すためのアラームをトリガーすることは、該逸脱が規定されたある時間期間にわたって連続的に生じたときにアラームをトリガーすることを含む。本明細書に記載したように改ざんを示すためのアラームのトリガーは例えば、メータの位置での機械式アラームのトリガー、メータの位置での電気機械式アラームトリガー、あるいは遠隔箇所に送られる電子式信号のトリガーを含むことが可能である。
【0026】
上で記載したようにまた当業者であれば理解されるであろうように、本発明の実施形態はシステム、方法またはコンピュータプログラム成果物の形で構成させることがある。したがって本発明の実施形態は、すべてがハードウェアからなる、すべてがソフトウェアからなる、あるいはソフトウェアとハードウェアの任意の組み合わせからなることを含む様々な手段を含むことがある。さらに本発明の実施形態は、記憶媒体の形で具現化したコンピュータ読み取り可能プログラム命令(例えば、コンピュータソフトウェア)を有するコンピュータ読み取り可能記憶媒体上のコンピュータプログラム成果物の形態をとることがある。ハードディスク、CD−ROM、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイスを含む適当な任意の非一時的コンピュータ読み取り可能記憶媒体を利用することができる。
【0027】
上では本発明の実施形態について、方法、装置(すなわち、システム)及びコンピュータプログラム成果物に関するブロック図及び流れ図を参照しながら記載してきた。このブロック図及び流れ図の各ブロック、並びにブロック図及び流れ図のそれぞれのブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令を含む様々な手段によって実現可能であることを理解されたい。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用のコンピュータ、特殊目的のコンピュータ、あるいは
図4に関連して上で検討したような1つまたは複数のプロセッサ404などの別のプログラム可能データ処理装置上にロードして1つのマシンを生成させ、これによりコンピュータやその他のプログラム可能データ処理装置上で実行する命令によって流れ図の1つまたは複数のブロックで指定した機能を実現するための手段を生成することができる。
【0028】
さらに、これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータやその他のプログラム可能データ処理装置(例えば、
図4の1つまたは複数のプロセッサ404)に対して具体的な方式で機能するように指令可能なコンピュータ読み取り可能メモリ内に保存しておき、これによりコンピュータ読み取り可能メモリ内に保存しておいた命令によって流れ図の1つまたは複数のブロックで指定した機能を実現するためのコンピュータ読み取り可能命令を含む製造物を作成することができる。さらにこのコンピュータプログラム命令は、コンピュータやその他のプログラム可能データ処理装置上にロードしてこのコンピュータやその他のプログラム可能装置上でコンピュータ実現の処理を生成するために一連の演算ステップを実行し、これによりコンピュータやその他のプログラム可能装置上で実行される命令に流れ図の1つまたは複数のブロックで指定した機能を実現するためのステップを提供させることができる。
【0029】
したがってブロック図及び流れ図のブロックは、指定の機能を実行するための手段の組み合わせ、指定の機能を実行するためのステップの組み合わせ、並びに指定の機能を実行するためのプログラム命令手段に対応する。さらに、ブロック図及び流れ図の各ブロック並びにブロック図及び流れ図のブロックの組み合わせは、指定の機能やステップを実行する特殊目的のハードウェアベースのコンピュータシステムによって、あるいは特殊目的のハードウェアとコンピュータ命令の組み合わせによって実現可能であることを理解されたい。
【0030】
本明細書に記載した方法はすべて別の明示的な記載がある場合を除き、そのステップが指定の順序で実行されることを要求したものと解釈されるように意図したものではない。したがって、ある方法の請求項がそのステップが従う順序を実際に記載していない場合、あるいはその請求項や記述においてそのステップがある指定の順序に限定されるとの具体的な別の指定がない場合、何かについてある順序が推定されるような意図は全くない。このことは、ステップの配列や演算フローに関するロジック、文法的な組成や句読法から派生する直截的な意味、本明細書に記載した実施形態の数や種類に関することを含む解釈に関する可能なあらゆる非記述の基本について当てはまるものである。
【0031】
本明細書全体を通して、様々な公報を参照することがある。これらの公報の開示は、本方法及びシステムが属する最新の技術をより完全に記載するためにその全体を参照により本明細書に組み込むものとする。
【0032】
本明細書に記載した発明に関して以上の説明及び関連する図面に示した教示の恩恵を有するような多くの修正形態及び別の実施形態が本発明のこれらの実施形態が属する分野の当業者には想起されよう。したがって、本発明の実施形態が開示した特定の実施形態に限定されるものでないこと、並びに修正形態やその他の実施形態が添付の特許請求の範囲の趣旨の域内に含まれるように意図したものであることを理解すべきである。さらに、上述の説明及び付属の図面は例示的な実施形態について要素及び/または機能のある種の例示的な組み合わせのコンテキストで記載しているが、添付の特許請求の範囲の趣旨を逸脱することなく代替的な実施形態によって要素及び/または機能の別の組み合わせを提供し得ることを理解されたい。この点において例えば、添付の特許請求の範囲の一部での記載に従った要素及び/または機能に関する上で明示的に記載したもの以外の別の組み合わせも企図される。本明細書では特定の用語を利用しているが、これらは単に一般的かつ説明的な意味で使用しており、限定を目的としたものではない。
【符号の説明】
【0033】
100 公益提供体
102 様々な負荷L
1〜L
n
104 分配システム
106 メータM
1〜M
n
108 1つまたは複数のコンピュータ処理デバイス
110 通信ネットワーク
202 磁石
204 変流器
206 変圧器
208 磁場
302 磁場強度センサ
304 メータ電子回路
400 メータマイクロコントローラ
402 メータ入力及びフィルタ処理構成要素
404 1つまたは複数のプロセッサ
406 メモリ
408 通信インタフェース
410 ディスプレイ
412 ユーザ入力インタフェース