(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231281
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20171106BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20171106BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20171106BHJP
H05B 33/28 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
G09F9/30 330
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
H05B33/28
G09F9/30 338
G09F9/30 365
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-10224(P2013-10224)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-142456(P2014-142456A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河原 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】大岡 浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恒平
【審査官】
田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−113568(JP,A)
【文献】
特開2003−178878(JP,A)
【文献】
特開平10−223377(JP,A)
【文献】
特開2011−048973(JP,A)
【文献】
特開2010−165519(JP,A)
【文献】
特開2010−218719(JP,A)
【文献】
特開2007−109645(JP,A)
【文献】
特開2011−077028(JP,A)
【文献】
特開2004−006278(JP,A)
【文献】
特開2009−094347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F9/00−9/46
H01L27/32、51/50
H05B33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に画素が配置された表示領域と、
前記表示領域を囲む額縁領域とを備え、
前記表示領域は、
前記画素毎に配置された画素回路と、
前記画素回路上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成されたスルーホールを介して前記画素回路に接続する画素電極と、
前記画素電極上に配置され、発光層を含む有機層と、
前記有機層上に配置された透明導電膜とを有し、
前記額縁領域は、
導電膜と、
前記導電膜を覆い、前記表示領域から前記額縁領域に連続的に配置された前記絶縁膜に開けられ、底部分に前記導電膜を露出させるコンタクトホールと、
前記コンタクトホールを覆い、前記底部分の前記導電膜に接触して形成された金属膜である第1金属膜と、
平面視において前記第1金属膜と重畳して前記表示領域を囲むシール剤と、を有し、
前記第1金属膜は、前記シール剤の外端から露出しないように、前記表示領域から前記額縁領域に連続的に配置され、前記表示領域の全域を覆い、
前記透明導電膜は、前記表示領域から前記額縁領域に連続的に配置され、前記第1金属膜上に成膜されている、ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記透明導電膜は、前記表示領域の全域を覆う電極である、ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の表示装置であって、
前記透明導電膜の上に、前記表示領域の全域を覆って形成される金属膜である第2金属膜を更に備える、ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置であって、
前記第1金属膜及び前記第2金属膜は、透光性を有する、ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示装置であって、
前記コンタクトホールは、前記表示領域の外側の複数箇所に離散的に形成されている、ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表示装置であって、
前記コンタクトホールは、前記表示領域の矩形を形成する一組の対向する2辺のうち、一方の対向する2辺の外側に形成されている、ことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示装置であって、
前記表示領域に形成される前記画素は、それぞれ自ら発光する有機発光層を有している、ことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に薄膜トランジスタが絶縁基板上に形成された薄型の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報通信端末やテレビ受像機の表示装置として、液晶表示装置や有機EL(Electro-Luminescent)表示装置をはじめとする薄型表示装置が広く用いられている。液晶表示装置は、2つの基板の間に封じ込められた液晶組成物の配向を電界の変化により変え、2つの基板と液晶組成物を通過する光の透過度合いを制御することにより画像を表示させる装置である。一方、有機EL表示装置は、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)等の自発光体を用いた表示装置である。この有機EL表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、液晶表示装置よりも薄型化が可能となっている。
【0003】
特許文献1は、有機EL表示装置の反射アノード電極において、Agを含むAl基合金膜上に酸化物導電膜を積層した構造について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−108459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、特に携帯端末等に用いられる薄型表示装置においては、更なる小型化・薄型化が求められており、表示領域の周囲に形成される額縁領域をより小さくすることが要求される。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてされたものであり、額縁領域をより小さくした表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表示装置は、基板上に画素が配置された表示領域と、前記表示領域を囲む額縁領域とを備え、前記表示領域は、前記画素毎に配置された画素回路と、前記画素回路上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜に形成されたスルーホールを介して前記画素回路に接続する画素電極と、前記画素電極上に配置され、発光層を含む有機層と、前記有機層上に配置された透明導電膜とを有し、前記額縁領域は、導電膜と、前記導電膜を覆い、前記表示領域から前記額縁領域に連続的に配置された前記絶縁膜に開けられ、底部分に前記導電膜を露出させるコンタクトホールと、前記コンタクトホールを覆い、前記底部分の前記導電膜に接触して形成された金属膜である第1金属膜と、を有し、前記透明導電膜は、前記表示領域から前記額縁領域に連続的に配置され、前記第1金属膜上に成膜されている、ことを特徴とする表示装置である。
【0008】
また、本発明の表示装置において、前記透明導電膜は、前記表示領域の全域を覆う電極であってもよい。
【0009】
また、本発明の表示装置において、前記第1金属膜は、前記額縁領域にのみ形成されていてもよいし、前記透明導電膜と共に前記表示領域の全域を覆っていてもよい。
【0010】
また、本発明の表示装置において、前記透明導電膜の上に、前記表示領域の全域を覆って形成される金属膜である第2金属膜を更に備えていてもよい。
【0011】
また、本発明の表示装置において、前記コンタクトホールは、前記表示領域の外側の複数箇所に離散的に形成されていてもよく、前記表示領域の矩形を形成する一組の対向する2辺のうち、一方の対向する2辺の外側に形成されていてもよい。
【0012】
また、本発明の表示装置において、前記表示領域に形成される前記画素は、それぞれ自ら発光する有機発光層を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置について示す図である。
【
図2】
図1の有機ELパネルを構成するガラス基板に形成された回路について概略的に示す図である。
【
図3】
図2のIII−III線における、有機ELパネルの断面を概略的に示す図である。
【
図4】
図2のコンタクトホール付近の成膜について概略的に示す図である。
【
図5】
図4のカソード電極膜の第1変形例が示されている。
【
図6】
図4のカソード電極膜の第2変形例が示されている。
【
図7】比較例1に係るコンタクトホールについて概略的に示す断面図である。
【
図8】比較例2に係るコンタクトホールについて概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置である有機EL表示装置100について示す図である。この図に示されるように、有機EL表示装置100は、有機ELパネル200を挟むように固定する上フレーム110及び下フレーム120と、表示する情報を生成する回路素子を備える回路基板140と、その回路基板140において生成された表示情報を有機ELパネル200に伝えるフレキシブル基板130と、により構成されている。
【0016】
図2には、
図1の有機ELパネル200を構成するガラス基板201に形成された回路について概略的に示されている。ガラス基板201は、有機発光素子を有する画素310がマトリクス状に配置された表示領域300と、表示する階調値に対応するデータ信号を各画素のアノード電極に伝えるデータ信号線222と、データ信号線222に印加する電圧を制御するデータ信号駆動回路221と、各画素のカソード電極であり表示領域300を覆うように配置されたカソード電極膜210と、カソード電極膜210に、カソード電極線212及びコンタクトホール213を介して、カソード電圧を印加するカソード電圧端子211と、を有している。
【0017】
ここで、コンタクトホール213は、矩形の表示領域300を形成する一組の対向する2辺のうち、一方の対向する2辺の外側部分に形成されている。これにより、他方の対向する2辺の外側にはコンタクトホール213を形成することなく、表示領域300の外側の額縁領域を小さくすることができる。
【0018】
なお、この図においては、図が煩雑にならないように画素310の数を省略し、簡略化して記載している。
【0019】
図3には、
図2のIII−III線における、有機ELパネル200の断面が概略的に示されている。この図に示されるように有機ELパネル200は、ガラス基板201上に形成された回路を有し、回路の周囲に水分が侵入しないように、封止基板238及びシール剤239により封止されている。また、ガラスに基板201には、複数の画素が配置された表示領域と表示領域を囲む額縁領域が形成されている。
【0020】
表示領域は、画素毎に配置した画素回路311と、画素回路311上に形成した平坦化膜232と、画素回路311に接続する画素電極235と、画素電極235上に配置した有機層236と、有機層236上に配置したカソード電極膜210を構成する透明導電膜215が対向電極として配置されている。画素電極は陽極であり、電流が供給される。平坦化膜232は画素電極層と画素回路層とを分離する層であり、絶縁性の膜である。画素電極235は平坦化膜232に形成したスルーホールを通って画素回路に接続している。有機層236は単層又は多層で形成され、多層の場合はホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を含む。対向電極はカソード電極であり、透明導電膜215が用いられ、発光層から出射される光をパネル前面側に透過させている。層間絶縁膜231は画素回路層に形成された絶縁層であり、回路と配線の絶縁性を確保している。
【0021】
額縁領域には導電膜であるカソード電極線212が形成されている。層間絶縁膜231、平坦化膜232、画素間絶縁膜233は絶縁膜であり、表示領域と額縁領域に連続的に配置されている。絶縁膜は額縁領域の導電膜を覆って配置されている。
コンタクトホール213は、カソード電極線212にカソード電極膜210を接触させるために形成された穴であり、本実施形態においては、層間絶縁膜231、平坦化膜232及び画素間絶縁膜233の膜で形成されている。画素310は、データ信号線222に接続されたアノード電極235が、カソード電極膜210との間に有機層236を挟むように配置されることにより構成されており、カソード電極膜210とアノード電極235との電位差により流れる電流により有機層236が発光する。発光した光は、カソード電極膜210を透過して封止基板238側の利用者に対して画像として表示される。
【0022】
ここで、本実施形態のカソード電極膜210は、金属膜216及び透明電極膜215が順に成膜されることにより形成されている。なお、本実施形態では、シール剤239は、コンタクトホール213の更に外側に配置されているが、シール剤239は、コンタクトホール213の一部又は全部を覆うように形成されていてもよい。
【0023】
図7は、本実施形態を説明するための比較例1に係るコンタクトホール913について概略的に示す断面図である。この図に示されるように、比較例1では、表示領域を覆うように形成されるカソード電極膜910は、透明電極膜915及び金属膜917の順にコンタクトホール913に積層されて形成されている。透明電極膜915は、例えばITO(Indium Tin Oxide)やInZnOにより形成され、これらは透明度は高いが抵抗値も高い膜であることから、透明度は低いが抵抗値が低い、例えばAg又はMg−Ag合金の薄膜である金属膜917を透明電極膜915上に形成し、高透過率化と低抵抗化を図っている。
【0024】
ここで、透明電極膜915は、スパッタリングにより形成される膜であるが、この製法によれば、コンタクトホールの段差部の形状や被着材料の違いにより、被覆が不十分となることがある。
図7のAの部分は、透明電極膜が、コンタクトホール913の膜に十分に接していない部分であるボイドを表している。
図7の場合には、ボイドは存在するが、透明電極膜915がカソード電極線212と接していない部分の面積は、接している部分の面積と比較して十分に大きいことから、表示装置の動作にはそれほどの影響はないものと考えられる。しかしながら、額縁領域を小さくするために、コンタクトホールを小さくすることを考えると、
図8の比較例2に係るコンタクトホール914に示されるように、カソード電極線212と接していない部分の面積の割合が高くなり、高抵抗化、更には断線してしまうことも考えられる。また、製造時に接触していたとしても、耐久性が低いため、使用により高抵抗化又は断線することも考えられる。
【0025】
そこで、本実施形態では、
図4に示されるように、コンタクトホール213に金属膜216及び透明電極膜215をカソード電極線212上に順に成膜している。金属膜216は、回転成膜若しくは斜方蒸着等の斜め成分を有する真空蒸着法にて形成される。これにより、カソード電極線212は、金属膜216により十分に被覆され、コンタクトホール213におけるカソード電極線212の露出面積が小さい場合であっても低抵抗で接続される。ここで、本実施形態において金属膜216は、表示領域300を覆わずにコンタクトホール213の周囲のみを覆う膜であり、上に形成された透明電極膜215のみが表示領域300を覆うこととしている。この場合には、金属膜216は、Ag又はMg−Ag合金からなる膜の他、不透明なAl、Mg及びW等の高融点の金属を用いることができる。透明電極膜215は、例えばITOやInZnOにより、スパッタリングで形成される。
【0026】
したがって、本実施形態によれば、コンタクトホールの底に露出した配線を、ボイドを作ることなく被覆することができ、コンタクトホールの面積を小さくしても、高抵抗化及び断線を防ぐことができる。これにより、表示領域の周囲に形成されるコンタクトホールの面積を縮小することができるため、表示領域の周囲に形成される額縁領域を小さくすることができる。また、ボイドが発生しないため、水分や薬液が残存することがなく、これらの残存物の拡散による品質の劣化を防ぐことができ、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、コンタクトホール213を離散的に複数箇所に設けているため、いずれかの箇所で断線等の不良が起こったとしても、他の箇所でコンタクトホール213が機能することにより、表示装置を動作させることができる。
【0028】
更に、コンタクトホール213は、矩形の表示領域300を形成する2組の対向する2辺のうち、一方の対向する2辺に沿って設置しているため、他方の対向する2辺の外側の額縁領域を小さくすることができる。
【0029】
図5には、
図4のカソード電極膜210の第1変形例であるカソード電極膜410が示されている。カソード電極膜210との違いは、透明電極膜215上に更に金属膜417が形成されていることである。この金属膜417は、透明電極膜215と共に、表示領域300を覆うように形成されている。この場合、金属膜417は、透過性を有している必要があるため、Ag又はMg−Ag合金により薄膜で形成されることが望ましい。これにより、カソード電極膜410の特に表示領域における低抵抗化を図ることができる。
【0030】
図6には、カソード電極膜210の第2変形例であるカソード電極膜510が示されている。
図4のカソード電極膜210との違いは、
図5と同様に透明電極膜215上に更に金属膜417が形成されると共に、透明電極膜215の下に形成される金属膜516が、表示領域300を覆っている点である。この場合にも、金属膜516は、透過性を有している必要があるため、Ag又はMg−Ag合金により薄膜で形成されることが望ましい。このような構成とすることにより、カソード電極膜510の表示領域における低抵抗化を更に図ることができる。また、図には記載していないが、透明電極膜215上に金属膜を形成せずに、透明電極膜215下の金属膜のみが表示領域を覆っている構成とすることもできる。
【0031】
なお、上述の実施形態においては、コンタクトホールにより接続される電極をカソード電極膜としたが、アノード電極であってもよいし、他の表現で定義される電極であってもよい。
【0032】
また、上述の実施形態においては、トップエミッション型の有機EL表示装置を例としたが、ボトムエミッション型の有機EL表示装置であっても、他の自発光型の表示素子を用いた表示装置であってもよいし、液晶表示装置等の他の表示装置であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
100 有機EL表示装置、110 上フレーム、120 下フレーム、130 フレキシブル基板、140 回路基板、200 有機ELパネル、201 ガラス基板、210 カソード電極膜、211 カソード電圧端子、212 カソード電極線、213 コンタクトホール、215 透明電極膜、216 金属膜、221 データ信号駆動回路、222 データ信号線、231 層間絶縁膜、232 平坦化膜、233 画素間絶縁膜、235 アノード電極、236 有機層、238 封止基板、239 シール剤、300 表示領域、310 画素、311 画素回路、410 カソード電極膜、417 金属膜、510 カソード電極膜、516 金属膜、913 コンタクトホール、914 コンタクトホール、915 透明電極膜、917 金属膜。