特許第6231285号(P6231285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231285永久磁石同期機およびこれを用いた圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231285
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】永久磁石同期機およびこれを用いた圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20171106BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20171106BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H02K1/27 501A
   H02K1/27 501K
   F04B39/00 106C
   H02K7/14 B
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-34280(P2013-34280)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-166016(P2014-166016A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年3月19日
【審判番号】不服2016-19632(P2016-19632/J1)
【審判請求日】2016年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 暁史
(72)【発明者】
【氏名】丸山 恵理
(72)【発明者】
【氏名】浅海 勇介
【合議体】
【審判長】 中川 真一
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−37186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティースを有する固定子と、該固定子に対して径方向にギャップを介して配置される回転子とを備え、
前記回転子は、径方向内側に凸となるように構成され、磁石収容孔と前記磁石収容孔に挿入された永久磁石とで構成された磁極を周方向に複数配置した永久磁石同期機において、
前記永久磁石による固定子コイル一相分の鎖交磁束Ψp(WB)と、電流実効値Irms(Arms)を前記固定子コイルに通電した時の直軸インダクタンスLd(H)および横軸インダクタンスLq(H)と、前記電流実効値Irms(Arms)とが、
【数1】
の関係を満足し、且つ前記磁極の径方向外周部に非磁性体で構成されるスリット配置され、
前記永久磁石は、フェライト磁石であって、1極を構成する前記フェライト磁石が、周方向に2つの屈曲点と、それぞれの屈曲点を始端として径方向外周側に向けて伸びる2つの直線部分と、を有し、且つ前記2つの直線部分が、径方向外周側に向けて前記2つの直線部分の間隔が広がるように、前記回転子の回転中心と前記磁極の磁極中央とを通る中央線に対して傾斜して設けられており、
前記スリットは、前記中央線に向かって凸形状の曲線を描くように円弧状を成して前記中央線の少なくとも片側に設けられ、外周側端部が内周側端部に対して前記中央線に近くなるように、前記中央線に対して傾斜して形成されていることを特徴とする永久磁石同期機。
【請求項2】
請求項に記載の永久磁石同期機において、
前記スリットは、前記中央線の両側に前記中央線に対して線対称に形成されていることを特徴とする永久磁石同期機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石同期機、およびこれを用いた駆動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
永久磁石同期機では、回転子に永久磁石を埋設するInterior Permanent Magnet(以下、IPM)構造が広く採用されている。IPM構造では、直軸インダクタンスLdと横軸インダクタンスLqの比、いわゆる突極比が大きくなるので、磁石トルクに加えリラクタンストルクの活用が可能であるとされてきた。
【0003】
リラクタンストルクを活用する永久磁石同期機の背景技術として、特開2001−119875号公報(特許文献1)に記載された同期機がある。この公報には、ロータ100が、磁気突極型ロータ部102とマグネット型ロータ部101とを軸方向に直列に結合した構造をもち、磁気突極型ロータ部102の磁気突極型界磁極の磁束とマグネット型ロータ部101永久磁石型界磁極の磁束とは、共通の多層電機子コイルと鎖交する。このように構成することにより、磁気突極型界磁極によるリラクタンストルクと永久磁石型界磁極によるマグネットトルクの合成トルクを発生する同期機と比較して、両ロータ部の相対角度を最適に設定することができ、永久磁石量あたりの合成トルクを増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−119875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の同期機では、IPM構造とすることで突極比を大きくして、リラクタンストルクを活用している。しかしながら、用途や出力、およびモ−タ体格によっては、仮にIPM構造としても、すなわち突極比を大きくしてもリラクタンストルクを活用しにくいものがある。これは、リラクタンストルクの大きさが突極比の大小のみに依存するのではなく、磁石トルクとの相対関係にも依存することによる。しかし、従来の設計理論ではこのような観点が見逃されていた。このため、リラクタンストルクが活用できず出力向上や効率向上が図れない一方で、突極比が大きいゆえにインダクタンスが大きくなり、鉄損増加を招いたり、高速化が困難となったりする場合があった。
【0006】
本発明の目的は、永久磁石同期機において、リラクタンストルクの活用が困難な場合においても、トルク向上、効率向上を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、回転子に、径方向内側に凸となる形状の磁極を複数有し、磁極を構成する永久磁石による固定子コイル一相分の鎖交磁束Ψp(WB)と、電流実効値Irms(Arms)を固定子コイルに通電した時の直軸インダクタンスLd(H)および横軸インダクタンスLq(H)とが、(1)式の関係を満足する永久磁石同期機に対して、永久磁石の径方向外周部に非磁性体で構成されるスリットを配置し、横軸インダクタンスLqを低減することにより、固定子鉄心の磁気飽和を緩和する。
【0008】
【数1】
【発明の効果】
【0009】
本発明によればトルクおよび効率が向上する。
【0010】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施例における永久磁石同期機について、固定子と回転子とを回転軸に垂直な横断面で示す図。
図2】本発明に係る(1)式の関係を示す図。
図3】本発明の第1の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に垂直な横断面で示す図。
図4】本発明の第1の実施例におけるトルク特性の説明図。
図5】本発明の第1の実施例におけるモータ特性の一例。
図6】本発明の第2の実施例における圧縮機の断面構造図。
図7A】本発明の第3の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に沿う縦断面で示す部分断面図。
図7B】本発明の第3の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図(図6AのVIB−VIB断面)。
図7C】本発明の第3の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図(図6AのVIC−VIC断面)。
図8】本発明の第4の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図。
図9】6極9スロット三相モータの固定子コイル接続図。
図10】磁石トルクとリラクタンストルクの原理説明図。
図11】永久磁石モータのベクトル図。
図12】本発明との比較例である永久磁石同期機の回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の記号を付してある。それらの名称および機能は同じであり、重複説明は避ける。また、以下の説明では内転型回転子を対象としているが、本発明の効果は内転型回転子に限定されるものではなく、同様の構成を有する外転型回転子にも適用可能である。また、固定子の巻線方式は集中巻でも良いし分布巻でも良い。また、回転子の極数、固定子コイルの相数も、実施例の構成に限定されるものではない。また、以下の説明ではインバータ駆動の永久磁石モータを対象としているが、本発明の効果は自己始動型永久磁石モータにも適用可能である。
【実施例1】
【0013】
以下、図1乃至5を用いて、本発明の第1の実施例について説明する。また、本実施例の説明に当たり、図9乃至12を参照する。図1は、本発明の第1の実施例における永久磁石同期機について、固定子と回転子とを回転軸に垂直な横断面で示す図である。図2は、本発明に係る(1)式の関係を示す図である。図3は、本発明の第1の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に垂直な横断面で示す図である。図4は、本発明の第1の実施例におけるトルク特性の説明図である。図5は、本発明の第1の実施例におけるモータ特性の一例である。図9は、6極9スロット三相モータの固定子コイル接続図である。図10は、磁石トルクとリラクタンストルクの原理説明図である。図11は、永久磁石モータのベクトル図である。図12は、本発明との比較例である永久磁石同期機の回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図である。
【0014】
本実施例の永久磁石同期機について、図1を用いて説明する。
本実施例の永久磁石同期機では、固定子9の内周側に回転子1を備えている。回転子1は固定子9に対してギャップGを介して、図示しない軸受けによって回転自在に保持される。固定子9は固定子鉄心10とティース11に巻回された固定子巻線12とで構成される。固定子巻線12は三相の巻線U、V、Wを順に周方向に配置する。U相、V相及びW相の各相は3つのコイルが直列に接続されている(図9)。全部で9つのコイル12u1、12u2、12u3、12v1、12v2、12v3、12w1、12w2、12w3が各ティース11に分かれて巻き付けられており、集中巻きの永久磁石同期機を構成している。このために、固定子9には、ティース11及びスロットが9つ設けられている。回転子1は永久磁石収容孔4を備えた回転子鉄心2と、6極(極対数p=3)を構成するよう配置された永久磁石3とで構成される。回転子1の中心部には、シャフト(回転軸、出力軸)6が貫通する貫通孔6aが形成され、貫通孔6aにシャフト6が挿通されている。
【0015】
本実施例の永久磁石同期機は、図3に示すように、回転子1が径方向内側に凸となるよう構成された磁石収容孔4を有し、磁石収容孔4には永久磁石3が埋設されている。永久磁石3は磁石収容孔4に挿入され、永久磁石3と磁石収容孔4とが周方向に沿って複数設けられることにより、回転子1の内部に周方向に沿って複数の極30が構成される。永久磁石3による固定子コイル一相分の鎖交磁束Ψp(Wb)と、相電流実効値Irms(Arms)を固定子コイルに通電した時の直軸インダクタンスLd(H)および横軸インダクタンスLq(H)とは、下記の式(1)の関係を有する。
【0016】
【数2】
【0017】
また、回転子1には、永久磁石3の径方向外周部(外周側)に非磁性体で構成されるスリット7が配置されている。
【0018】
ここでまず、上記の物理量ならびにリラクタンストルクの発生原理に関して、図3図9及び図10を用いて説明する。本実施例では、6極9スロットの三相モータについて説明するが、4極6スロット、或いは他の極数及びスロット数を有する三相モータであってもよい。
【0019】
例えば図9に示すように、直列に接続されたU相巻線12u1、12u2、12u3には、インバータから波高値I(このときの実行値をIrmsとする)の交流電流iuが供給される。V相巻線12v1、12v2、12v3、W相巻線12w1、12w2、12w3に関しても同様であるが、各相の電流位相は電気角で120°ずつずれている。IやIrmsの大きさは、ワットメータ等の機器を用いることで求めることができる。或いは、オシロスコープなどで電流波形を取得してフーリエ解析することでも求めることができる。
【0020】
回転子1と機械的に結合されたシャフト6は負荷に連結され、電流Iの大きさと位相を適当に選定することで、負荷と釣り合うような回転トルクMeが発生する。固定子コイル一相分の鎖交磁束Ψpは、図9に示すU、V、Wの端子Tu、Tv、Twを開放した状態で回転子1を外部駆動し、その時の相電圧波高値E0、または線間電圧波高値E0×√3を測定することで求めることができる。具体的には、毎分当たりの回転数N[rpm]で外部駆動した時の角周波数ω[rad/s]を式(2)から求め、それを式(3)に代入して得られる。
【0021】
ω=2π×N/60×p (p:極対数) (2)
Ψp=E0/ω (3)
ところで、磁石モータのトルクMeは一般に、固定子巻線U、V、W各相の通電電流が生成する回転磁界と,回転子磁極との吸引・反発によって発生する。回転子磁極とは、磁石モータの場合、磁石によって形成される磁界を指すことが多いが、リラクタンストルクを考慮するときには、回転磁界の影響により回転子鉄心が磁化することで形成される磁界も磁極の一種として考えるとわかりやすい。なお、磁石モータの同期運転時における電流や磁束は交流量であるため、dq軸座標系(回転座標系)に変換し直流量として扱う方法が一般的である。一般に、dq軸座標系では回転子の磁極中心軸をd軸とし、d軸に対して反時計回りに電気角で90°進んだ軸、すなわち極性の異なる永久磁石間の中心軸をq軸とする。この場合、回転子位置によらず、dq軸と回転磁界との相対的な位置関係のみでトルク等の諸物理量を考察することが可能となる。
【0022】
図10を用いて、磁石モータのトルク発生原理を説明する。図において、反時計回りを正方向としている。(a)は磁石トルクを示す。(b)はd軸電流が負の場合に生じるリラクタンストルクを示しており、回転子q軸の磁化によるものである。(c)はd軸電流が負の場合に生じるリラクタンストルクを示しており、回転子d軸の磁化によるものである。(a)に示すように、磁石トルクはd軸に発生する磁石磁束とq軸電流により形成される磁界との吸引および反発によって生じるトルクである。このとき、磁石磁束とd軸電流磁界との間には径方向の反発力が発生するが、回転力は生じない。一方で、(b)に示すように、q軸電流磁界により回転子q軸が磁化される場合、回転子q軸の磁化とd軸電流磁界との間に吸引力および反発力が生じる。これがリラクタンストルクであり、d軸電流が負の場合、すなわち弱め界磁運転時には正のトルクが得られ、増磁作用時には負のトルクとなる。同様にして、(c)に示すように回転子d軸が磁化されやすい場合も、q軸電流磁界との関係でリラクタンストルクが発生し、こちらは弱め界磁運転時に負のトルク、増磁作用時には正のトルクとなる(一般的には(b)と(c)との和をリラクタンストルクと呼ぶ)。
【0023】
磁石トルクはq軸電流一定の下であれば磁石の発生する磁束量に比例する。すなわち、磁石トルクを増加させるには磁石量を増やしたり、強力な磁石を用いたりする必要があり、コスト増を招く。これに対し、リラクタンストルクはq軸とd軸のインダクタンスの差に比例するため、両者の差が大きくなるように回転子磁気回路を構成することでトルクの増加を図ることができると考えられてきた。
【0024】
さて、式(1)の構成物理量のうち、Ψp、Irmsは上述の要領で求められるのに対し、Ld、Lqの求め方に関しては、ダルトン・カメロン法などのような回転子静止法か、または以下で述べるようなベクトル図から逆算する方法がある。
【0025】
図11のdq軸座標系のベクトル図を用いて、磁石モータの同期運転時における電流、電圧及び磁束について説明する。
【0026】
永久磁石による固定子コイル一相分の鎖交磁束Ψpの位相を基準として、これをd軸とみなし、Ψpの時間微分である誘導起電力E0は位相が90°進んだq軸に発生する。モータに印加される相電圧Vとモータに通電される相電流Iが、E0に対してそれぞれθ、βの位相差をもつとき、V,Iは式(4)、(5)に示すようにd軸成分、q軸成分に分解できる。
【0027】
【数3】
【0028】
【数4】
【0029】
なお、図11の抵抗Rはホイートストーンブリッジなどの抵抗測定器を用いることで計測可能である。また、電圧位相差角θ、電流位相差角βに関しては、E0、V、Iの波形を取得し、各基本波成分の位相関係を割り出すことで求めることができる。図11では相電圧、相電流の波形を用いた場合を表しているが、例えば相電圧の代わりに線間電圧を取得している場合でも、相電圧と線間電圧の位相差を考慮することで、同様にしてθ、βを求めることができる。
【0030】
上記で得られた物理量を用いて、Ld,Lqは式(6)の電圧方程式から求めることができる。
【0031】
【数5】
【0032】
以上、式(1)の物理量ならびにリラクタンストルクの発生原理に関して説明した。
【0033】
次に、本発明の基本原理、すなわち、式(1)の関係を満足し、かつ永久磁石3の径方向外周部にスリット7aを配置することで、トルク向上、効率向上を図ることができる原理を説明する。
【0034】
一般に発生トルクMeは、極対数p、永久磁石による固定子コイル一相分の鎖交磁束Ψp、直軸電流Id、横軸電流Iqを用いて次式で表される。
【0035】
【数6】
【0036】
ただし、Id、Iq、Ψpは波高値である。
【0037】
式(7)において、{ }内第一項が磁石トルクを、第二項がリラクタンストルクを表している。この式から明らかなように、リラクタンストルクはLq−Ld、Id、Iqにそれぞれ比例する。このため、従来はリラクタンストルクの大きさの指標として突極比Lq/Ld、またはLq−Ldが用いられていた。しかしながら、リラクタンストルクが発生トルクMeにどれだけ寄与するかは、磁石トルクとの相対関係で決まる。例えば、リラクタンストルクがマグネットトルクに対して極端に小さい場合は、リラクタンストルクが僅かに変動(増減)しても、発生トルクMeにはほとんど影響しない。したがって、リラクタンストルクの大きさを表す指標には、従来の突極比に加え、磁石トルクとの相対関係を加味できる別の物理量を新たに導入する必要がある。
【0038】
ここで、磁石トルクは電流位相差角β=0のときに最大となり、その最大値Mp,maxは式(5)、(7)より次式で表せる。
【0039】
【数7】
【0040】
一方、リラクタンストルクはβ=π/4(電気角で45 deg.)のときに最大となり、その最大値Mr,maxは式(5)、(7)より次式で表せる。
【0041】
【数8】
【0042】
式(8)と(9)の比が、リラクタンストルクの大きさを表す指標に他ならないので、この比をリラクタンストルク比αと定義する。電流波高値Iを用いる場合は、
【0043】
【数9】
【0044】
となり、電流実効値Irmsを用いる場合は、
【0045】
【数10】
【0046】
となる。本発明では電流実効値Irmsを用いた式(11)を使用する。
【0047】
式(11)から明らかなように、リラクタンストルクの大きさを表す指標として、従来のLd、Lqに加え、Ψp、Irmsが新たに導入されていることがわかる。このうち、Ψpは永久磁石の物性と形状、固定子巻線仕様、モ−タ断面形状によって決定され、一般的な誘導起電力測定試験から求めることができる。同様に、Ld、Lqもモ−タ構成と通電電流Irmsによって決定され、一般的なモ−タインダクタンス測定法によって求めることができる。したがって、Ψp、Ld、Lqはモ−タ毎に決まる定数であり、式(11)はαとIrmsの線形関数として扱うことができる。
【0048】
リラクタンストルク比αは、式(11)の右辺、特に電流値を変化させることで任意の値を採ることができるが、発生トルク向上、効率向上の観点から言えば、図4に示すようにリラクタンストルクMrが最大となるβ=45 deg.において、発生トルクMeが磁石トルク最大値Mp,maxと同等かそれ以上となることが望ましい。もう少し詳しく説明すると、永久磁石同期機は、効率最大化制御を行う場合、電流位相差角が0〜45°の範囲で駆動される。発生トルクMeは電流位相差角が0°と45°のときに最小値となる。そこで、電流位相差角が0°と45°のときに、発生トルクMeが磁石トルク最大値Mp,maxと同等かそれ以上となるようにすることにより、リラクタンストルクを活用できるようにしている。すなわち、
【0049】
【数11】
【0050】
の関係が成り立てば良い。式(12)を整理すると、
【0051】
【数12】
【0052】
となり、さらに式(11)を用いて変形すると次式を得る。
【0053】
【数13】
【0054】
以上より、リラクタンストルクの大きさを表す指標として、従来のLd、Lqに加え、Ψp、Irmsを導入する必要があること、リラクタンストルクを有効活用するためには式(14)の関係式を満足する必要があることを示した。
【0055】
しかしながら、式(14)が成立しない場合、すなわち式(1)の関係が成立する場合は、リラクタンストルクの活用が困難である。このような状況で、図12に示すようなIPM構造としても、出力向上や効率向上が図れない一方で、突極比が大きいゆえにq軸インダクタンスが大きいため、鉄損増加を招いたり、高速化が困難となってしまう。
【0056】
そこで、図3に示すような非磁性体で構成されるスリット7aを配置することでq軸インダクタンスを低減し、固定子鉄心の磁気飽和を緩和する。これによって、図5に示すように、より高速回転まで駆動することが可能になると同時に、トルク向上および効率向上を図ることが可能となる。
【0057】
ところで、上述した永久磁石同期機を駆動する場合、電流位相差角βは制御ソフトの構成によって任意に設定できるが、式(1)を満足するような構成においては、発生トルクが最大となる制御動作点は0 deg.≦ β ≦ 22.5 deg.の範囲に存在する。したがって、前記の位相となるように制御することで、より確実にトルク向上、効率向上を図ることができる。
【0058】
なお、永久磁石3は1極につき周方向に分割されることなく一体で構成しても良いし、複数個を周方向に分割して配置しても良い。本実施例では、磁石収容孔4が、回転軸中心と直交する断面形状において、シャフト6に近接して略直線状に形成された中央部4cと、中央部4cの両端から外周側に向けて略直線状に形成された袖部4a,4bとを有するバスタブ形状に形成されている(図3参照)。磁石収容孔4に収容される永久磁石3も、磁石収容孔4の形状に合わせ、中央部3cと、中央部3cの両端から外周側に向けて略直線状に形成された袖部3a,3bとを有するバスタブ形状に形成されている
さらに具体的に説明すると、1極を構成する磁石収容孔4及び永久磁石3は、周方向に離れて配置された2つの屈曲点B1、B2を有する。さらに、磁石収容孔4及び永久磁石3は、それぞれの屈曲点B1、B2を始端として径方向外周側に向けて伸びる2つの直線部分4a(3a),4b(3b)を有する。2つの直線部分4a(3a),4b(3b)は、径方向外周側に向けて2つの直線部分4a(3a),4b(3b)の間隔が広がるように、磁極の中央を通る磁極中央線30clに対して傾斜して設けられている。屈曲点は3つ以上設けられてもよいが、その場合、2つの直線部分4a(3a),4b(3b)は周方向の両端部に位置する屈曲点B1、B2を始端として設けられる。
【0059】
また、1極を構成する永久磁石3及び磁石収容孔4は、1つのに限定されるわけではない。例えば、1極を構成する永久磁石3を分割し、磁石収容孔4の直線部分(袖部)4a,4bとにそれぞれ永久磁石3(3a,3b)を挿入し、中央部4cは空間とすることもできる。磁石収容孔4も直線部分(袖部)4aと4bとに分割してもよい。
【0060】
また、永久磁石3及び磁石収容孔4は、回転軸方向に複数個を分割して構成しても良いし、分割することなく一体で構成しても良い。また、1極を構成する磁石の配置形状は図2に示すような2ヶ所の屈曲点を有する形状のほか、3カ所以上の屈曲点を有する形状でも良いし、U字形でも良いし、V字形でも良い。回転子鉄心2は軸方向に積み重ねた積層鋼板で構成しても良いし、圧粉磁心などで構成しても良いし、アモルファス金属などで構成しても良い。
【0061】
スリット7aは磁石磁束の透過を妨げないと同時に、q軸磁束の透過を妨げるように配置すればよく、直線状に設けても良いし、円弧状にしても良い。また、一続きで構成しても良いし、リブ等で分割して構成しても良い。また、図3では一極あたり4本を配置しているが、製作可能な範囲で有れば何本であっても良い。また、各スリット7aの幅は均一でも良いし、不均一でも良い。
【0062】
スリット7aは、上述したように、磁石磁束の透過を妨げず、q軸磁束の透過を妨げる。このため、スリット7aは、スリット7aが設けられていない状態で回転子鉄心2の永久磁石3の外周側に生じる磁石磁束とq軸磁束とに対して、q軸磁束を横切るように設けられ、磁石磁束をできるだけ横切らず磁石磁束に沿うように設けられる。この条件に適うようにスリット7aを設けると、スリット7aはq軸磁束を横切る方向(磁石磁束に沿う方向)に長く(寸法が大きく)、磁石磁束を横切る方向(q軸磁束に沿う方向)に短い(寸法が小さい、或いは幅が薄い)形状になる。
【0063】
スリット7aについて、さらに、詳細に説明する。本実施例では、図3に示すように、d軸は回転子1の回転中心(シャフト6の中心)Oと磁石収容孔4の中央4oとを通る。永久磁石3は、d軸に対して線対称となるように、磁石収容孔4の両端部に隙間4sを残し、磁石収容孔4を埋めるように挿入されている。永久磁石3は、隙間4sを残さず、磁石収容孔4を完全に埋めるように挿入されてもよい。本実施例では、d軸は磁極の中央30cを通るので、以下、d軸を磁極中央線30clと呼ぶ。
【0064】
スリット7aは、外周側では磁極中央線30clに近づき、内周側では磁極中央線30clから遠ざかるように、磁極中央線30clに対して傾斜して形成されている。すなわち、スリット7aは、外周側端部が内周側端部に対して磁極中央線30clに近くなるように、磁極中央線30clに対して傾斜して形成されている。具体的には、スリット7aの中心線7aclの外周側端部7aoから磁極中央線30clに下ろした垂線の長さ(外周側端部7aoと磁極中央線30clとの距離)d7aoが、スリット7aの中心線7aclの内周側端部7aiから磁極中央線30clに下ろした垂線の長さ(外周側端部7aiと磁極中央線30clとの距離)d7aiよりも短くなるように、スリット7aは磁極中央線30clに対して傾斜している。
【0065】
スリット7aは、一つの磁極において、磁極中央線30clの少なくとも片側に形成する。本実施例の場合、磁極中央線30clの両側にスリット7aを形成している。また、磁極中央線30clの両側に形成したスリット7aは磁極中央線30clに対して線対称に形成している。スリット7aを磁極中央線30clに対して線対称に形成することにより、磁石磁束とq軸磁束との透過性に関する設計が容易になる。しかし、必ずしもスリット7aを磁極中央線30clに対して線対称に形成する必要はない。
【0066】
スリット7aは、図3では、上述した傾斜を有するように円弧状に形成しているが、直線状に形成してもよい。スリット7aを円弧状に形成する場合、磁石磁束に沿うように、磁極中央線30clに向かって凸形状の曲線を描くようにするとよい。
【0067】
次に、図3に示すスリット7bについて説明する。尚、スリット7bを設けない場合もスリット7aによる効果は得られるため、スリット7bは必ずしも設ける必要はない。しかし、スリット7bを設けることにより、以下で説明する効果が得られる。
【0068】
スリット7bは永久磁石3の径方向内周部(内周側)に設けられ、スリット7aと同様に非磁性体で構成される。
【0069】
このような構成とすることで、q軸インダクタンスの低減効果がより一層高まり、固定子鉄心の磁気飽和をより一層緩和することができる。これによって、永久磁石同期機のさらなる高速回転駆動が可能になると同時に、さらなるトルク向上および効率向上を図ることが可能となる。
【0070】
スリット7bは磁石磁束の透過を妨げないと同時に、q軸磁束の透過を妨げるように配置すればよく、直線状に設けても良いし、円弧状にしても良い。また、一続きで構成しても良いし、リブ等で分割して構成しても良い。また、製作可能な範囲で有れば何本であっても良い。また、各スリットの幅は均一でも良いし、不均一でも良い。
【0071】
次に、永久磁石3について説明する。永久磁石3としては、ネオジウム磁石を用いることができる。しかし、本実施例の構成によれば、永久磁石3をフェライト磁石で構成しても、トルク低下、効率低下を補うことができ、また大きな磁石トルクを発生することが可能となる。以下、これらの構成と効果とについて説明する。
【0072】
常温(20℃)でのフェライト磁石の残留磁束密度(Br)はネオジウム磁石の1/3であることが知られているが、フェライト磁石のBrの温度係数はネオジム磁石の2倍以上であるため、高温になるほどBrの低下、すなわち磁石トルクの低下が顕著となる。具体的には、ネオジム磁石の温度係数が−0.11 %/K程度であるのに対し、フェライト磁石は−0.26 %/K程度である。したがって、周囲温度が上昇するほどネオジム磁石に対するBr比は低下していく。特に、周囲温度が80℃以上の場合にはBrの低下傾向が顕著化する。このような場合において、本発明を適用することで、Br低下によるトルク低下、効率低下を補うことができる。
【0073】
また、永久磁石3をフェライト磁石で構成する場合には、図3図6に示すように1極につき周方向に2ヶ所の屈曲点を有するとともに、それぞれの屈曲点を始端として磁化方向に対して垂直方向かつ極の端部側に向けて伸びるように構成することが有効である。
【0074】
このような磁石形状とすることで、磁石磁束発生面の表面積を大きくできるので、U字形のフェライト磁石を使用したものよりも大きな磁石トルクを発生することが可能となる。なお、永久磁石3は、3カ所以上の複数の屈曲点および直線部分を有するように構成してもよい。
【0075】
なお、スリット追加により回転子コア外周部の重量が低減するため、当該部分に働く遠心力が低下する。このため、回転子強度の制約で高速化が困難な場合においても、本発明の構成とすることで、より高速回転での駆動が可能となる。
【実施例2】
【0076】
以下、図6を用いて本発明の第2の実施例について説明する。図6は、本実施例による圧縮機の断面構造図である。
【0077】
図6において、圧縮機構部は、固定スクロ−ル部材13の端板14に直立する渦巻状ラップ15と、旋回スクロ−ル部材16の端板17に直立する渦巻状ラップ18とを噛み合わせて形成されている。そして、旋回スクロ−ル部材16をクランクシャフト6によって旋回運動させることで圧縮動作を行う。固定スクロ−ル部材13及び旋回スクロ−ル部材16によって形成される圧縮室19(19a、19b、……)のうち、最も外径側に位置している圧縮室19は、旋回運動に伴って両スクロ−ル部材13、16の中心に向かって移動し、容積が次第に縮小する。
【0078】
両圧縮室19a、19bが両スクロ−ル部材13、16の中心近傍に達すると、両圧縮室19内の圧縮ガスは圧縮室19と連通した吐出口20から吐出される。吐出された圧縮ガスは、固定スクロ−ル部材13及びフレ−ム21に設けられたガス通路(図示せず)を通ってフレ−ム21下部の圧力容器22内に至り、圧力容器22の側壁に設けられた吐出パイプ23から圧縮機外に排出される。圧力容器22内に、固定子9と回転子1とで構成される永久磁石モ−タ103が内封されており、回転子1が回転することで、圧縮動作を行う。永久磁石モ−タ103の下部には、油溜め部25が設けられている。油溜め部25内の油は回転運動により生ずる圧力差によって、クランクシャフト6内に設けられた油孔26を通って、旋回スクロ−ル部材16とクランクシャフト6との摺動部、滑り軸受け27等の潤滑に供される。圧力容器22の側壁には固定子コイル12を圧力容器22の外側に引き出すための端子箱30が設けられ、例えば、三相永久磁石モ−タの場合は、U、V、W各巻線の端子が計3個、納められている。永久磁石モ−タ103に、前述の実施例1、後述の実施例3又は実施例4記載の永久磁石同期機を適用することで、より高速回転まで駆動することが可能になると同時に、トルク向上および効率向上を図ることが可能となる。
【0079】
ところで、現在の家庭用・業務用空調機では、圧縮容器22内にR410A冷媒が封入されているものが多く、永久磁石モ−タ103の周囲温度は80℃以上となることが多い。今後、地球温暖化係数がより小さいR32冷媒の採用が進むと周囲温度はさらに上昇するため、磁石のBr低下がより顕著となる。このような場合に、前述の実施例1、後述の実施例3又は実施例4記載の永久磁石同期機を適用することで、Br低下によるトルク低下、効率低下を補うことができる。特に永久磁石3をフェライト磁石で構成する場合には、ネオジウム磁石で問題となる高温減磁が原理的に発生しないので、R32冷媒採用に伴う周囲温度上昇に対して有効な対策となる。尚、本実施例の圧縮機に前述の実施例1、後述の実施例3又は実施例4記載の永久磁石同期機を適用するにあたり、冷媒の種類が制限されるものではない。
【0080】
なお、圧縮機構成は図6記載のスクロ−ル圧縮機でも良いし、ロ−タリ圧縮機でも良いし、その他の圧縮機構を有する構成でも良い。また、本発明によれば、以上に説明したように小形で高出力のモータが実現できる。すると高速運転が可能になるなど、運転範囲を広げることが可能となり、さらには、HeやR32などの冷媒においては、R22、R407C、R410Aなどの冷媒に比べ、隙間からの漏れが大きく、特に低速運転時には循環量に対する漏れの比率が顕著に大きくなるため、効率低下が大きい。低循環量(低速運転)時の効率向上のため、圧縮機構部を小型化し、同じ循環量を得るために回転数を上げることで、漏れ損失を低減させることが有効な手段となりうるが、最大循環量を確保するために最大回転数も上げる必要がある。本発明に係る永久磁石同期機を備えた圧縮機によれば、最大トルクを大きくすることが可能となるため、最大回転数を上げることが可能となり、HeやR32などの冷媒における効率向上に有効な手段となる。
【実施例3】
【0081】
以下、図7a、7b、7cを用いて本発明の第3の実施例について説明する。図7Aは、本発明の第3の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に沿う縦断面で示す部分断面図である。図7Bは、本発明の第3の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図(図7AのVIB−VIB断面)である。図7Cは、本発明の第3の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図(図6AのVIC−VIC断面)である。尚、図7B及び図7Cでは、永久磁石3を記載していないが、磁石収容孔4に実施例1と同様に永久磁石3が設けられる。
【0082】
本実施例の構成が図3と異なる点は、スリット7aを周方向に周期的に配置するのではなく、アンバランスに配置している点である。
【0083】
具体的には、シャフト(出力軸)6が貫通する出力軸貫通孔6aと磁石収容孔4とスリット7aとを有する薄板状の回転子鉄心部材2aをシャフト6の軸方向に積層して回転子1を構成し、積層される一部の回転子鉄心部材2aを、回転子鉄心部材2aの重心位置と回転子鉄心内部に挿入されたシャフト6の重心位置とが一致しないようにスリット7aを配置して、重心位置を偏らせた回転子鉄心部材2aとしたものである。
【0084】
さらに具体的には、1極分だけスリット7aを設けない構成とした。或いは、スリット7aの本数を変えるようにしてもよい。要は、スリット7aが周方向にアンバランスに配置されることにより、回転子1の重心位置が変化すればよい。尚、図7B及び図7Cでは、スリット7bの記載を省略しているが、図3と同様に、スリット7bが設けられていてもよい。
【0085】
本実施例における回転子1の回転子鉄心2は、磁性材料からなり、スリット7aを有する薄板状部材(例えば、電磁鋼板)を積層して構成されている。スリット7aを周方向にアンバランスに配置した薄板状の回転子鉄心部材の積厚を変更することにより、重心位置の調整を容易に行える。
【0086】
図6に示す圧縮機において、内蔵された永久磁石モ−タ103の回転子鉄心2の任意の積厚分だけ、図7Bに示すような回転子鉄心2aの重心と回転子鉄心内部に挿入されたシャフト(出力軸)6の重心とが一致しない構成とすることで、回転子1にバランスウェイト24の機能を担わせることが可能となる。
【0087】
また、回転子鉄心2のうち、回転軸方向の中間(図7AのA−Aで示す位置)を境界として回転軸方向の一方の側の任意の積厚分だけを、図7Aに示すような回転子鉄心2aで構成する。これにより、回転子鉄心2aで構成された回転子部分の重心と回転子コア内部に挿入されたシャフト6の重心とが一致しない構成になる。また、前記境界に対して回転軸方向の他方の側の回転子鉄心部分は、任意の積厚分だけ、図7Bに示すように、回転子鉄心2aを反転(回転軸を中心に180度回転、或いは表裏を反転)させた回転子鉄心2bを積層して構成するとよい。
【0088】
すなわち、積厚の中間を境界として、境界の一方の側に、上記の重心位置を偏らせた回転子鉄心部材2aを任意の積厚分だけ積層し、境界の他方の側に、上記の重心位置を偏らせた回転子鉄心部材2aを、一方の側とは反転させて、任意の積厚分だけ積層する。
【0089】
回転子鉄心2aと回転子鉄心2bとでは、スリット7aを設けていない磁極位置(アンバランス位置)が回転子径方向においてシャフト6を介して反対側に位置している。これにより、回転軸方向の一方の側で回転子鉄心2aを構成することにより、シャフト(出力軸)6の重心に対して回転子鉄心の重心をずらす方向と、回転軸方向の他方の側で回転子鉄心2bを構成することにより、シャフト6の重心に対して回転子鉄心の重心をずらす方向とが、回転子径方向においてシャフト6を介して反対方向になる。
【0090】
この場合、回転子1にバランスウェイト24の機能を担わせることが可能となるほか、回転子鉄心2aだけで構成する場合に比べ、磁気的なアンバランスが解消されるので、トルク脈動や電流脈動を低減でき振動・騒音低減を図ることができる。
【実施例4】
【0091】
以下、図8を用いて本発明の第4の実施例について説明する。図8は、本発明の第4の実施例における永久磁石同期機について、回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図である。
【0092】
本実施例では、磁石収容孔と永久磁石とが、それぞれ磁石収容孔4a,4bと永久磁石4a,4bの二層構造になっている。図示のような1極につき磁石が二層配置されている場合においても、スリット7a,7bを配置することで、実施例1と同様の効果が得られる。ここで、磁石を二層配置とする理由は、磁石表面積拡大により磁石トルクを増加させるためであり、本発明のようなリラクタンストルクの活用が困難な場合においては、二層配置による効果が特に大きい。なお、磁石は二層以上の多層でも良い。
【0093】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…回転子、2,2a,2b…回転子鉄心、3…永久磁石、4…永久磁石収容孔、5…カシメ用リベット、6…シャフト又はクランクシャフト、7a,7b…スリット、9…固定子、10…固定子鉄心、11…ティース、12(12u1,12u2,12v1,12v2,12w1,12w2)…固定子コイル、13…固定スクロ−ル部材、14…端板、15…渦巻状ラップ、16…旋回スクロ−ル部材、17…端板、18…渦巻状ラップ、19(19a,19b)…圧縮室、20…吐出口、21…フレ−ム、22…圧力容器、23…吐出パイプ、24…バランスウェイト、25…油溜部、26…油孔、27…滑り軸受け、30…端子箱、103…永久磁石モ−タ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12