(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
酸素と水素の混合ガスは酸水素ガスと呼ばれ、耐火物製造時のトーチやガス溶接等の燃料として使われる。酸水素ガスは、水の電気分解によって酸素と水素を発生させ、それらの混合ガスとして得ることができる。
【0003】
このような酸水素ガスをLPG等の液化石油ガスと混合したガスは、鋼材などの溶断ガスとしても使われる。酸水素ガスとLPG等の液化石油ガスとの混合ガスからなる溶断ガスは、LPGのみからなる溶断ガスに比べ、溶断性能に優れていることが報告されている(下記の特許文献1:特開2003−129072)。
【0004】
溶断作業の効率化を図るためには、溶断性能のよいガスに変更することが望ましい。このため、LPG等の液化石油ガスのみを溶断ガスとしていた設備を、水の電気分解による酸水素ガスと液化石油ガスとの混合ガスによる設備に切り替えることが望まれている。
【0005】
ここで問題となるのが、電気分解によって得られた酸水素ガスによる配管の腐食である。
【0006】
上記酸水素ガスは、水の電気分解によって発生させることから、飽和水蒸気を含む。
【0007】
また、電気分解に使用する水は、通電しやすくするためにあらかじめ電解質を加えた電解液として調製されている。上記電解質としては、電気分解しやすい電解液が得られる水酸化カリウムを用いるのが一般的である。このため、電解液のpHはアルカリ性である。電気分解で得られるガス中には、わずかにアルカリミストが混入する。
【0008】
したがって、ガスが冷却されて飽和水蒸気が凝縮すると、その凝縮水はpH10程度のアルカリ性を示す。
【0009】
このアルカリ性の凝縮水が、配管を腐食させるのである。
【0010】
酸水素ガスやそれを含む溶断ガスの配管は、SPG管などの鉄製では、アルカリ性の凝縮水によって経時的に発生する腐食を避けられない。ここで、SPG管とは、日本工業規格G3452に示される配管用炭素鋼管である(非特許文献1:日本規格協会編;JISハンドブック6−2配管II、財団法人日本規格協会、p.53〜57、(2005))。
【0011】
このため、電気分解により生成する酸水素ガスを溶断ガスに使うためには、SUS304等を素材としたステンレス管を供給配管にする必要がある。ところが、ステンレス管はSPG管に比べて相当に高価である。
【0012】
したがって、溶断設備を新設する場合には、高価なステンレス管にかかるコストが採用を妨げる要因となっている。
【0013】
液化石油ガスのみを溶断ガスとする既存の設備を、電気分解による酸水素ガスを加えた混合ガスの設備に変更する場合、既存の配管をステンレス管に交換したり、新たにステンレス管を新設したりしなければならない。しかしながら、大規模工場では、すでにSPG管などの鉄製の配管が相当な距離で設置されている。このような規模でステンレス管に取替えることは、工事自体も大規模になり、設備コストが嵩むことになる。
【0014】
したがって、溶断設備を酸水素ガス仕様に更新する場合も、配管の取替えにかかるコストが、採用を妨げる要因となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、電気分解による酸水素ガスにおいて生じるアルカリ性の凝縮水が腐食を発生させる原因となっている。そこで、従来から、アルカリ性の凝縮水を除去する方法が検討されてきた。
【0018】
非特許文献2(社団法人化学工学会編;改訂六版化学工学便覧,丸善株式会社,p.749〜752,(2001))には、ガス中の水分の減湿装置としてつぎの4分類が示されている。第1は「冷却減湿装置」、第2は「吸収減湿装置」、第3は「吸着減湿装置」、第4は「圧縮減湿装置」である。
【0019】
第1の「冷却減湿装置」は、熱交換器でガスを冷却して凝縮水を分離する。分離した凝縮水は電解液槽に戻して再利用する。除湿されたガスはそれ以下の工程で用いる。
第2の「吸収減湿装置」では、塩化カルシウムや生石灰などの吸収剤によって水分を吸収除去する。
第3の「吸着減湿装置」は、熱交換器でガスを冷却した後、さらにシリカゲルや活性アルミナなどの吸着剤で水分を吸着除去する。
第4の「圧縮減湿装置」では、含湿したガスを一定の温度の下で圧縮して水分を除去する。
【0020】
上述した4分類のガス中の水分減湿装置にあっては、それぞれ以下のような問題がある。
【0021】
第1の空冷式の「冷却減湿装置」では、空冷によって凝縮水を除いたガスは、装置周囲の雰囲気温度にまでしか冷却されない。したがって、露点は装置周囲の雰囲気温度以上である。露点とはガス中に露ができ始める温度である。そのため、配管途中のどこかでガスの温度が低下すると、そこで凝縮水が発生してしまう。ここで発生した凝縮水を排出するため、配管途中にドレン抜きバルブを設ける必要がある。また、この冷却方式で露点を装置周囲における雰囲気の温度以下にしようとすると、空冷ではなく、冷凍機を搭載したチラー等を用いれば露点を下げることができるが、0℃以下にする場合には凝縮水が凍結してしまう。凝縮水の凍結が起こるのであれば、冷却部の面積をもっと広くしたり、凍結によって生じた凝固物を溶解する機構を設けたりする必要が生じてくる。このため、全体の設備が複雑化してしまい、設備自体のコストや複雑になった設備のメンテナンスコストがかさむことになる。
【0022】
第2の「吸収減湿装置」では、吸収剤を用いることによってより低い湿度にすることが可能である。ところが、凝縮水により吸収剤の濃度が低下する。したがって、吸収剤中の水分を蒸発させるための「再生部」を設置する必要がある。このように、吸収剤の再生工程が複雑でコストがかかり、設備自体が複雑化し高コストなものになる。
【0023】
第3の「吸着減湿装置」では、吸着剤で水分をとり除くために、多量の吸着剤が必要となる。さらに、吸着終了後に吸着剤を再生する作業を行わなければならない。この再生作業は、吸着剤を加熱しながらドライガスを流す工程と、酸水素ガスでパージする工程を行う。このように、吸着剤の再生工程が複雑でコストがかかり、設備自体が複雑化し高コストなものになる。
【0024】
第4の「圧縮減湿装置」では、設備にガスコンプレッサーの設置が必要となる。ところが、液化石油ガスと酸水素ガスの混合ガスが可燃性のガスであるため、対応するコンプレッサーとして可燃ガス用の特別仕様にしなければならない。このため、設備自体が高コストなものになる。
【0025】
以上のように、電気分解による酸水素ガスを溶断ガスに使用するにあたって、既存の減湿装置を適用しようとすると、様々な問題がある。結果的に、現在のところ、酸水素ガスを利用した設備の採用には至っていないのが実情である。
【0026】
また、電気分解によって得られた酸素と水素を酸水素ガスとして利用する場合だけでなく、酸素や水素を単体ガスとして利用する場合においても、同様の問題が起こりうる。
【0027】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、電気分解で得られた酸素や水素を含む減湿対象ガスについて、簡素な工程により低コストで確実に減湿し、設備コストを大幅に削減できるガスの減湿装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するため、本発明のガスの減湿装置は、
電解液を電気分解することにより酸素と水素を生成する電解槽と、
上記電解液を貯留するとともに、上記電解槽で発生した酸素と水素を一時的に貯留するバッファ槽と、
上記
バッファ槽に一時的に貯留された酸素と水素の少なくともいずれかを含む減湿対象ガスが導入され
るとともに、上記バッファ槽の上記電解液の一部が導入され、導入された上記減湿対象ガスを
上記電解液に接触させることにより、上記減湿対象ガスに含まれる水分を除去する気液接触槽とを備えて構成された
ことを要旨とする。
【0029】
上記目的を達成するため、本発明のガスの減湿方法は、
電解液を電気分解することにより酸素と水素を生成する電解工程と、
上記電解液を貯留するとともに、上記電解工程で発生した酸素と水素を一時的に貯留するバッファ工程と、
上記
バッファ工程で一時的に貯留された酸素と水素の少なくともいずれかを含む減湿対象ガスが導入され
るとともに、上記バッファ工程の上記電解液の一部が導入され、導入された上記減湿対象ガスを
上記電解液に接触させることにより、上記減湿対象ガスに含まれる水分を除去する気液接触工程と
を備えて構成されたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、電気分解で生成した酸素と水素の少なくともいずれかを含む減湿対象ガスを
電解液に接触させることにより、上記減湿対象ガスに含まれる水分を除去する。このように、電気分解で得られた酸素と水素の少なくともいずれかを含む減湿対象ガスについて、
電解液への気液接触という簡素な工程・設備により、低コストで確実に減湿することができる。これにより、上記減湿対象ガスからのアルカリ性の凝結水の発生が激減する。したがって、電気分解で得られた酸素や水素を利用する設備において問題となっていた配管の腐食が解消し、設備コストを大幅に削減できる。
また、上記バッファ槽の上記電解液の一部を上記気液接触槽に導入して上記減湿対象ガスに接触させる。上記電解液はそれ自体の凝固温度が低いため、凍結させることなく低い温度に冷却することができる。したがって、より低い温度に冷却した電解液と気液接触させることにより、酸水素ガスの露点を下げられる。
【0031】
本発明において、上記気液接触槽は、
導入された電解液を冷却する冷却器を付設し
、上記冷却器で冷却された電解液を上記減湿対象ガスに接触させる場合には、
冷却器で冷却した
電解液と減湿対象ガスを接触させることにより、減湿対象ガスの温度を下げた状態で水分を除去する。その後、減湿対象ガスの温度が室温に戻ることにより、減湿対象ガスの相対湿度はさらに低下する。この相対湿度の低下により、配管はさらに腐食が防がれる。
【0033】
本発明において、上記気液接触槽において上記減湿対象ガスに接触させることにより、減湿対象ガスに含まれる水分を取り込んだ
電解液は、上記
バッファ槽に還流させる場合には、
水分を取り込んで薄くなった
電解液は、電気分解することにより水分が消費されて濃縮される。この濃縮された電解液を再び、気液接触に使用することができる。このように、減湿に用いる液の再生を電気分解でまかなうことができる。したがって、従来の「吸収減湿装置」や「吸着減湿装置」で必要とされた吸収剤や吸着剤の「再生処理部」が不要となった。
【0034】
本発明において、上記減湿対象ガスは、電解槽で生成した酸素と水素に対して液化石油ガスを混合した混合ガスである場合には、
電気分解による酸水素ガスと液化石油ガスの混合ガスを利用する設備――例えば、溶断設備――において、配管の腐食を解消し、設備コストを大幅に削減できる。
【0035】
本発明において、上記減湿対象ガスは、電解槽で生成した酸素または水素である場合には、
電気分解による酸素や水素を利用する設備――例えば、燃料電池や酸素溶断設備――において、配管の腐食を解消し、設備コストを大幅に削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0038】
図1は、本発明が適用されるガスの減湿装置の第1実施形態を示す。
【0039】
このガスの減湿装置は、酸水素ガスと液化石油ガスとの混合ガスを発生する混合ガス発生部1と、上記混合ガス発生部1で発生した混合ガスの湿度を減少させる減湿部2とを備えて構成されている。
【0040】
上混合ガス発生部1は、電解液を電気分解することにより酸素と水素を生成し、酸素と水素が混合した酸水素ガスを生成する電解槽10を備えている。
上記電解槽10で生成した酸水素ガスには液化石油ガス(図示した例ではLPG)が混合される。この実施形態では、上記混合ガスが減湿対象ガスである例を説明する。
上記減湿部2は、上記電解槽10で生成した上記酸水素ガスに液化石油ガスが混合された混合ガスが導入され、導入された上記混合ガスを液体に接触させることにより、上記混合ガスに含まれる水分を除去する気液接触槽20を備えている。
【0042】
上記混合ガス発生部1は、電気分解により酸水素ガスを生成する電解槽10と、電解液を貯留するとともに発生した酸水素ガスを一時的に貯留するバッファ槽11と、バッファ槽11に貯留された酸水素ガスを減湿部2に送る前に水分除去する水分除去タンク12を備えている。
【0043】
上記電解槽10は、積層状に配置された複数の電極に、図示しない電源から直流電圧が印加されて電解液中の水を電気分解する。電気分解で発生した酸素と水素は、それらが混合された酸水素ガスとして配管17で取り出されてバッファ槽11に導入される。
【0044】
上記バッファ槽11には、半分程度が電解液で満たされている。上部空間には酸水素ガスが貯留される。上記バッファ槽11の上部空間には、液化石油ガス(図示した例ではLPGである)が導入される。ここで酸水素ガスと液化石油ガスが所定の混合比で混合され、混合ガスが得られる。上記混合ガスが減湿対象ガスとなって減湿部2へ送られる。
【0045】
上記バッファ槽11に満たされた電解液は、電解液補充ポンプ14により電解槽10に送られる。上記電解槽10の電解液は、電気分解によって消費され減少する。このようにして減少した電解槽10内の電解液は、図示しない純水供給ポンプにより水が補充される。
【0046】
バッファ槽11の電解液は、電解液循環ポンプ15および気液接触ポンプ26により循環される。電解液循環ポンプ15は、バッファ槽11の電解液を電解液循環路27Aを介して気液接触槽20に送る。気液接触槽20の水位が高くなったときに気液接触ポンプ26で電解液循環路27Bを介して電解液をバッファ槽11に戻し、気液接触槽20の水位を一定に保つようになっている。
【0047】
バッファ槽11の上部空間に溜められた混合ガスは、まず、第1熱交換器24で室温近傍まで冷却される。冷却された混合ガスは、水分除去タンク12に送られて水分が除去される。水分除去タンク12は、縦長のタンク内で混合ガスを下から上に流す間に、重量比によって大粒のミストと第1熱交換器24での凝縮水が除去される仕組みである。
【0048】
上記減湿部2は、上記混合ガスに含まれる水分を気液接触により除去する気液接触槽20と、上記気液接触槽20において混合ガスに接触させる液体を冷却する冷却器23とを備えている。
【0049】
上記気液接触槽20は、縦長の塔状になった槽である。上記気液接触槽20の下部には混合ガスと接触させる液体として電解液が貯留されている。上記気液接触槽20の上部には、混合ガスと電解液を向流接触させるための向流接触部材30が充填されている。気液接触槽20の下部に貯留された電解液は、気液接触ポンプ26で取り出されて気液接触槽20の塔頂部から槽内に還流させる。これにより、電解液は向流接触部材30の中を上から下に流下する。向流接触部材30の下端部より少し下に、混合ガス発生部1から送られた混合ガスが導入される。これにより、混合ガスは向流接触部材30の中を下から上に吹き上げる。このように、向流接触部材30の中で、電解液を上から下に流下させながら混合ガスを下から上に吹き上げ、混合ガスと電解液を気液接触させる。この気液接触により、混合ガスに含まれる水分が電解液中に取り込まれ、混合ガスが減湿される。
【0050】
上記向流接触部材30は、混合ガスが不自由なく流通し、液体が微細な流れや滴になって流れ落ちる構造物を用いることができる。たとえば、エンボス加工、皺加工、穴あけ加工等を行ったシートやメッシュを積層したり集積したりすることによって構成した規則充填物や不規則充填物等を用いることができる。例えば、マツイマシン株式会社から規則充填物や不規則充填物として提供されているものを適用することができる。
【0051】
上記混合ガスに接触させるために上記気液接触槽20に導入する液体は、上記電解槽10において使用される電解液の一部である。
【0052】
この例では、混合ガス発生部1に備えた電解液循環ポンプ15により、バッファ槽11の下部から取り出した電解液を電解液循環路27Aを経由して気液接触槽20の下部に導入する。このとき、電解液は、第2熱交換器25により室温程度まで冷却される。
【0053】
上記気液接触槽20は、混合ガスに接触させる液体を冷却する冷却器23を付設している。
【0054】
上記冷却器23としては、例えば、フロン等の冷媒を使った冷凍機と、水を循環させる水回路を備え、熱交換器を通して冷媒と水を熱交換させるものである。冷却方式としては空冷式と水冷式のいずれも採用できる。
【0055】
上記気液接触槽20に導入する混合ガスは、混合ガス発生部1から送られたものを、上述したように、気液接触槽20の向流接触部材30より少し下に導入される。そして、向流接触部材30の中を上昇するときに電解液と向流接触して減湿される。
【0056】
上記気液接触槽20では、冷却器23で冷却した電解液を混合ガスに向流接触させる。この向流接触によって混合ガスに残っていた微細なミストは電解液に取り込まれる。また、混合ガスは冷却された電解液と接触して冷却される。この冷却によって混合ガスは凝縮水を発生する。その凝縮水が向流接触によって電解液にとりこまれ、混合ガスが減湿される。
【0057】
上記気液接触槽20で減湿された混合ガスは、槽の塔頂部から取り出され、気液分離器22に導入される。気液分離器22では、混合ガスに含まれる大粒のミストが除去される。除去した水は、気液接触槽20に戻して再利用する。
【0058】
気液分離器22でミストが除去された混合ガスは、減湿部2から取り出され、溶断機等の設備に供給される。このとき、電解液との接触で冷却された混合ガスは、供給配管31内での熱交換によって室温まで加温される。
【0059】
上記気液接触槽20において上記混合ガスに接触させた液体は、上記電解槽10に還流させる。
【0060】
この例では、気液接触槽20に貯留された電解液は、気液接触ポンプ26および電解液循環路27Bを経由してバッファ槽11に戻し、電解槽10で再利用される。
【0062】
上述した通り、液化石油ガスと酸水素ガスの混合ガスによる溶断システムは、アルカリ性の凝縮水による鉄製配管の腐食が問題であった。
【0063】
非特許文献3(H.H.ユーリック,R.W.レヴィー;腐食反応とその制御,産業図書株式会社,p.172〜174,(1989))によれば、鋼、銅、ニッケル、亜鉛の場合、腐食の臨界相対湿度は一般に50%から70%の間にある。
【0064】
この内容を前提として、液化石油ガスと酸水素ガスを混合した混合ガスである溶断ガスに適用可能な配管の材質と溶断ガスの湿度条件について検討した。検討した配管の材質は、表面に亜鉛メッキを施している「SPG白」、亜鉛メッキを施していない「SPG黒」、ステンレスの「SUS304」である。これらの配管のサンプルを恒温槽に装入し、相対湿度を99%または50%とした混合ガスを流し、試験後のサンプルの腐食状態を評価した。
【0065】
その結果は、相対湿度が99%のときは「SUS304」に腐食はみられないものの、「SPG白」と「SPG黒」に腐食がみられた。また、相対湿度が50%のときは「SUS304」「SPG白」「SPG黒」のいずれにも腐食はみられなかった。
【0066】
この結果より、混合ガスの相対湿度を50%以下に保てば、SPG管の腐食を防止できることがわかった。混合ガスの相対湿度を50%以下に保つように減湿を行った。
【0067】
図1に示す減湿装置により、電気分解で発生させた酸水素ガスとLPGとの混合ガスの減湿を行った。
【0068】
電解槽10で発生した酸水素ガスをとLPGとの混合ガスを空冷の第1熱交換器24で室温近くまで冷却し、水分除去タンク12で凝縮水を分離して、電解槽10に戻して再利用する。
気液接触槽20において、冷却器23で冷却されている電解液と混合ガスを接触させ、空冷後の混合ガスをさらに冷却する。気液接触槽20には不規則充填物を内包させ、混合ガスと電解液を向流で流す。
冷却されたガスは凝縮水を発生し、そのガスのみを供給配管31で外気温まで再度昇温する。これにより相対湿度が下がる。
【0069】
このときの相対湿度を50%以下にするために必要なガスの冷却温度はつぎのとおりである。
【0070】
まず、相対湿度は下記式によって表される。
RH=(mw/mwmax)×100%・・・式0
RH=相対湿度
mw=ある気温でガス中に含まれる水蒸気の量
mwmax=ある気温でガス中に含まれる飽和水蒸気の量
【0071】
ここで飽和水蒸気の量を計算するため、飽和水蒸気圧を求める近似式を用いる。
θ℃における空気中の飽和水蒸気圧を求める式は多数提案されているが気象の分野では、次のMagnas Teten(1967)の近似式が一般的である。
log
10Ps=7.5θ/(θ+237.3)+0.7858
もしくは、対数の定義より
Ps=6.1066×10
7.5θ/(θ+237.3)(hPa)・・・式1
【0072】
1kgのガス中に含まれる飽和水蒸気の量(g)は次式で求められる。
1kgのガス中に含まれる飽和水蒸気の量(g)=飽和水蒸気圧kPa/(101.3+130−飽和水蒸気圧)kPa×1000/ガスの分子量g/mol×水の分子量g/mol・・・式2
【0073】
式1で求められるθ℃の飽和水蒸気圧を式2に代入し、計算するとθ℃の飽和水蒸気の量が計算できる。
まず、式1、2で外気温条件での飽和水蒸気の量mwmaxを求める。
そして、式0にRH=50%、mwmaxを代入し、mwを求める。得られたmwを1kgのガス中に含まれる飽和水蒸気の量として式2に代入し、飽和水蒸気圧を得る。それを式1に代入し、その時の温度θを求める。この温度がRH=50%とするために必要なガスの冷却温度となる。
【0074】
混合ガスを冷却する電解液がこの温度以下となるように冷却器23で冷却する。
冷却器23の設定温度は外気温によって変化させる。
外気 35℃→設定温度 23℃
外気 0℃→設定温度 −10℃
【0075】
気液接触槽20の下部に貯留された電解液槽は、バッファ槽11より電解液を導入し、電解質であるKOHの濃度を一定以上に保つようにする。
第2気液分離器22で混合ガスのミストを除去した後、減湿システム以降の供給配管31での熱交換で混合ガスを室温にする。これにより、水の電解ガスの相対湿度を約50%とすることができる。
【0076】
図2は、本発明の第2実施形態を示す。
この例は、気液接触槽20に向流接触部材30が設けられていない。それに替えて、気液接触槽20の下部に貯留した電解液を塔頂部からスプレー噴射するスプレーノズル32を備えている。これにより、気液接触槽20の電解液の液面より少し上に導入されて下から上に流れる混合ガスに対し、電解液をスプレー噴射して気液接触させる。それ以外は、第1実施形態と同様である。同様の部分には同じ符号を付している。
【0077】
図3は、本発明の第3実施形態を示す。
この例は、気液接触槽20に向流接触部材30が設けられていない。気液接触槽20は塔頂部近傍まで電解液で満たされている。そして、混合ガス発生部1から送られた混合ガスを、気液接触槽20に貯留された電解液のなかでバブリングさせるバブリングノズル33を備えている。これにより、気液接触槽20に満たされた電解液の中に混合ガスをバブリングすることにより気液接触させる。それ以外は、第1実施形態と同様である。同様の部分には同じ符号を付している。
【0078】
上記実施形態は、電気分解で生成した酸素と水素を含む混合ガスを液体に接触させることにより、上記混合ガスに含まれる水分を除去する。このように、電気分解で得られた酸素と水素を含む混合ガスについて、液体への気液接触という簡素な工程・設備により、低コストで確実に減湿することができる。これにより、混合ガスからのアルカリ性の凝結水の発生が激減する。したがって、混合ガスを利用する設備において問題となっていた配管の腐食が解消し、設備コストを大幅に削減できる。
【0079】
また、上記気液接触槽20は、混合ガスに接触させる液体を冷却する冷却器23を付設しているため、
冷却器23で冷却した液体と混合ガスを接触させることにより、混合ガスの温度を下げた状態で水分を除去する。その後、混合ガスの温度が室温に戻ることにより、混合ガスの相対湿度はさらに低下する。この相対湿度の低下により、配管はさらに腐食が防がれる。
【0080】
また、上記混合ガスに接触させるために上記気液接触槽20に導入する液体は、上記電解槽10において使用される電解液の一部であるため、
電解液は0℃以下でも凝固しないため、それを冷却して気液接触させることにより、混合ガスの露点が0℃以下になるまで減湿することができる。
また、電解液はそれ自体の凝固温度が低いため、冷却器23で冷却して露点を下げても凍結に至らない範囲で運転することができる。
【0081】
また、上記気液接触槽20において上記混合ガスに接触させた液体は、上記電解槽10に還流させるため、
凝縮水を取り込んで薄くなった冷却液を電解槽10に還流させ、電気分解することにより水分が消費されて濃縮される。この濃縮された電解液を再び、気液接触に使用することができる。このように、減湿に用いる液の再生を電気分解でまかなうことができる。したがって、従来の「吸収減湿装置」や「吸着減湿装置」で必要とされた吸収剤や吸着剤の「再生処理部」が不要となった。
【0082】
また、上記減湿対象ガスは、電解槽で生成した酸素と水素に対して液化石油ガスを混合した混合ガスであるため、
電気分解による酸水素ガスと液化石油ガスの混合ガスを利用する設備――例えば、溶断設備――において、配管の腐食を解消し、設備コストを大幅に削減できる。
【0083】
このように、本実施形態の装置は「冷却減湿装置」に分類される装置である。冷却用の液体として電解液を利用することにより、減湿対象ガスを最大−20℃程度まで冷却することが可能となる。電解液として25%水酸化カリウム水溶液を用いることによる凝固点の降下があるためである。
【0084】
ここで、25%水酸化カリウム水溶液の凝固点は以下の式で算出できる。
25%水酸化カリウム水溶液=5.9mol/kg
水の凝固点降下が1.86K・kg/mol
水酸化カリウム(KOH)は1つの分子が2つのイオンヘ完全に解離すると考え、
凝固点降下温度=5.9mol/kg×2×1.86K・kg/mol=21.9K
よって、25%水酸化カリウム水溶液の凝固点は−21.9℃である。
すなわち、この水溶液は、−20℃にしても液体状態であり、接触する減湿対象ガスについては、この露点が−20℃になるまで減湿することが可能となった。
【0085】
気液接触槽20の減湿に用いる電解液は、減湿対象ガスの露点を0℃以下にするまで減湿することが可能となるよう、凝固点が0℃以下になる濃度とすることが望ましい。
【0086】
さらに、気液接触槽20での減湿によって凝縮水で薄くなった電解液は、電解槽10で再利用する。薄くなった電解液は、電解槽10内の電気分解により水が分解消費されて濃縮される。その濃縮された電解液を気液接触槽20で減湿に利用する。このように、電解液の再生リサイクル利用を図る。これにより、「吸着減湿装置」「吸収減湿装置」などで必要とされる吸着剤や吸収剤の「再生部分」が不要となった。
【0087】
以上のように、従前からのLPGやLNGなどの液化石油ガスを溶断ガスとする装置を、液化石油ガスと酸水素ガスとを混合させた溶断ガスに変更する場合、配管の腐食を問題にせずに稼動させることが可能である。したがって、資源的にも、メンテナンス的にも、コスト的にも有用に溶断システムを導入・稼動させることができる。
【0088】
図4は、本発明の第4実施形態を示す図である。
【0089】
この例は、上記減湿対象ガスを、電解槽10で生成した酸素または水素とする例である。
【0090】
この例では、電解槽10として、電気分解で生成した酸素と水素を分離して取り出すことができるものを使用している。そして、電解槽10で生成した酸素を酸素バッファ11Aの上部空間に一時的に貯留し、電解槽10で生成した水素を水素バッファ11Bの上部空間に一時的に貯留する。酸素バッファ11Aおよび水素バッファ11Bの下部には、半分程度の電解液が満たされている。
【0091】
酸素バッファ11Aの上部空間に貯留された酸素は、第1熱交換器24で室温近くまで冷却されてから第1水分除去タンク12Aで水分を除去される。得られた酸素は、後の利用のために貯留してもよいし、酸素ガス利用設備で利用に供することもできる。
【0092】
水素バッファ11Bの上部空間に貯留された水素は、第1熱交換器24で室温近くまで冷却されてから第2水分除去タンク12Bで水分を除去され、上述した各実施形態と同様の減湿部2へ送られる。減湿された水素は、例えば燃料電池等の水素ガス利用設備に供給して利用することができる。
【0093】
図示した例とは反対に、酸素バッファ11A上部空間に貯留された酸素を、熱交換および水分除去ののち、上述した各実施形態と同様の減湿部2へ送ることもできる。減湿した酸素は、例えば酸素溶断装置等の酸素利用設備で利用することができる。
【0094】
また、酸素バッファ11A上部空間に貯留された酸素と、水素バッファ11Bの上部空間に貯留された水素を、それぞれ別個の減湿部2に送って減湿して利用することもできる。さらに、酸素バッファ11A上部空間に貯留された酸素と、水素バッファ11Bの上部空間に貯留された水素を、共通の減湿部2に交互に送って減湿して利用することもできる。
【0095】
この実施形態は、上記減湿対象ガスは、電解槽で生成した酸素または水素であるため、
電気分解による酸素や水素を利用する設備――例えば、燃料電池や酸素溶断設備――において、配管の腐食を解消し、設備コストを大幅に削減できる。
【0096】
それ以外は上述した各実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。