【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明の天井材の落下防止装置は、上部の躯体から懸垂した吊り材に支持される天井材の下面に直接、もしくは間接的に接触し得る状態で配置され、前記上部の躯体の周囲に位置する周囲の躯体の内、少なくとも一方向に対向する側面間に架設される伸縮可能な補強材と、この補強材の長さ方向両端部を前記周囲の躯体に定着させる定着部材とを備え、前記定着部材が前記補強材の端部を保持する受け材と、この受け材を貫通して前記周囲の躯体に定着され、前記受け材を前記周囲の躯体に密着させる定着材からなり、前記受け材が板状であり、
前記補強材に面で接触しながら、前記補強材を前記躯体の側面に面で接触させ、前記補強材を前記周囲の躯体の側面との間に挟持することを構成要件とする。
【0010】
「天井材の下面に直接、もしくは間接的に接触し得る状態で配置され」とは、補強材が天井材の下面に直接、接触している場合と、後述の台座、あるいは例えば補強材を被覆、もしくは保護するための何らかの線材や面材を介して間接的に接触している場合の他、
図4〜
図10に示すように天井材が落下、もしくは降下した直後に接触する状態になる程度に、補強材が天井材の直下に配置されている場合があることを言う。補強材が天井材に接触していなくとも、天井材との間のクリアランスは天井材の落下等があったときに直ちに直接、もしくは間接的に接触可能な程度の大きさに留まる。いずれの場合にも天井材が平常時の状態から僅かでも落下、もしくは降下しようとすれば、補強材が天井材を直ちに受け止める状態にある。天井材は吊り材の下端部に支持される野縁受けに接続される野縁に接続されることにより吊り材に支持される。
【0011】
「上部の躯体」は鉄筋コンクリート造の場合であれば、上階側のスラブ等であり、鉄骨造の場合であれば、梁や桁、トラス等の構造部材である。「周囲の躯体」は上部の躯体の下面側を周囲から包囲する壁、梁、桁等の構造部材を指し、柱を含む。補強材が架設される「周囲の躯体」は既設の構造物であるか、新設の構造物であるかを問わず、鉄筋コンクリート造であるか鉄骨造であるか等の構造種別も問わない。「周囲の躯体の対向する側面」は周囲の躯体が互いに対向する面を指す。
【0012】
補強材が天井材の下面に直接、もしくは間接的に接触し得る状態で配置されることで、天井材が吊り材等から落下し、補強材に受け止められたときに天井材が運動エネルギを持つことがないため、補強材が受ける衝撃は小さく、補強材が破損する可能性は低い。補強材の破損の可能性が低いことで、補強材が確実に天井材を受け止めることが可能になり、天井材が補強材から下方へ落下することによる人への被害の発生と、床面への落下による破損と飛散が防止される。天井材が野縁や野縁受け、または吊り材ごと落下した場合にも、補強材の端部が周囲の躯体に定着されていることと、補強材自身が伸縮可能であることで、補強材が平常時より伸長するだけで済ませることが可能であるため、天井材の床面上への落下防止の確実性は高い。
【0013】
補強材には軽量で、高強度の繊維材と、耐火性と耐熱性に優れる鋼材があり、繊維材は例えば炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等、引張力の作用方向に補強効果を発揮する補強繊維シート、もしくは補強繊維メッシュ等であり、繊維素材の種類は限定されず、エポキシ樹脂その他の樹脂を補強繊維シート等に含浸させた連続繊維補強材を含む。繊維材は面状の場合はシート、もしくはメッシュ等の形で使用され、線状の場合はストランド、あるいはケーブル状に加工された形で使用される。繊維材は主に面状(帯状)、もしくは線状(棒状)等の形状に形成されるが、形態は問われない。鋼材には主に高張力の鋼板や鋼製ワイヤ等があるが、繊維材と同様に形態は問われない。
【0014】
繊維材は引張強度の発揮可能な方向で分類すれば、1軸方向強化繊維、2軸方向強化繊維、多軸方向強化繊維がある。繊維材は面状か線状かを問わず、周囲の躯体の側面が対向する方向に架設される。繊維材は1軸方向強化繊維であるか、2軸、あるいは多軸方向強化繊維であるかを問わず、基本的には補強材としての引張強度の発揮方向を周囲の躯体の対向する側面間の方向に向けて架設される。補強材の長さ方向は主に引張強度の発揮方向であるが、2軸方向強化繊維と多軸方向強化繊維の場合には、必ずしも長さ方向が引張強度の発揮方向に一致している必要はない。
【0015】
請求項1における「補強材が少なくとも一方向に対向する側面間に架設される」とは、補強材6が
図2−(a)、(b)に示すように天井材3の下方に平面上、一方向にのみ架設される場合と、
図1−(b)、
図2−(c)、(d)に示すように二方向以上(複数の方向)に架設される場合があることを言う。
【0016】
天井面の平面形状が正方形でない長方形である場合、補強材の架設状態での撓み量を低減する効果を得る上では、補強材は短辺方向に架設される方が有利である。補強材の長さ方向中央部の撓み量は架設方向のスパン(架設区間長)が小さい程、小さいことによる。但し、撓み量を低減しようとすれば、補強材の張力を増す必要から、補強材の端部を周囲の躯体に定着させる定着材の軸部に作用する引き抜き力が増大するため、補強材に与えられる張力は架設方向に応じ、補強材の撓み量を一定程度以内に抑えながら、定着材の引き抜き力が過大にならないよう調整される。
【0017】
補強材は伸縮可能で、天井材の下面に直接、もしくは間接的に接触し得る状態にあることで、平常時から天井材を支持、あるいは保持した状態、または支持、あるいは保持し得る状態にあり、天井材の落下があったときにも、補強材に生じる張力が僅かに増加する程度の変化で済むため、補強材の撓み量が格別、増加することはない。補強材が天井材の下面に直接、接触する場合、補強材は天井材の下面に接着させられることもある。
【0018】
補強材6の長さ方向の端部を周囲の躯体4に定着させる定着部材7は、例えば
図3−(a)〜(d)に示すように補強材6の端部を貫通しながら周囲の躯体4に定着されるアンカー(アンカーボルト)、ボルト等の定着材71
を含む、受け材72や連結部材9の複数の部材から構成される
。周囲の躯体4が鉄筋コンクリート造の場合には、定着部材7(定着材71)はコンクリート中に埋設されるアンカー(アンカーボルト)になるが、鉄骨造の場合には鉄骨部材(鋼材)を貫通するか、鉄骨部材に溶接されるボルト等になる。定着材71がアンカーの場合、定着材71はコンクリート中に埋設される軸部71aとコンクリートの表面から突出する頭部71bを持つ。ボルト(アイボルト)の場合も、定着材71は軸部71aと頭部71bからなる。
【0019】
請求項1における「補強材を躯体に定着させる定着部材」とは
、図3〜
図13に示すように定着部材7が補強材6を直接、躯体4に定着させる定着材71を含む複数の部材から構成される
こと(請求項
1〜請求項
5)
を言う。定着部材7
が定着材71を主な構成要素とする場合(請求項
1)には、
図3に示すように定着部材7(定着材71)が直接、補強材6を周囲の躯体4に定着させる。
【0020】
定着部材7が定着材71を含む複数の部材から構成される場合(請求項
2〜請求項
5)には、
図4〜
図6に示すように
図3の例と同様に定着材71が補強材6を周囲の躯体4に定着させる場合(請求項
2、請求項
3)の他、
図7〜
図13に示すように定着部材7を構成する連結部材9の一部である連結材91が補強材6を連結部材9の一部であるつなぎ材92に接続し、定着材71がつなぎ材92を周囲の躯体4に定着させる場合(請求項
4、請求項
5)がある。
【0021】
周囲の躯体4が鉄筋コンクリート造の場合、周囲の躯体4は前記のように既存の場合と新設の場合があり、既存の場合、定着材71(定着部材7)は軸部71aにおいてあと施工アンカーとしてコンクリート中に埋設されて定着され、新設の場合には定着材71は軸部71aにおいてコンクリートの打設時に埋設され、そのまま定着される。いずれの場合も、定着材71の軸部71aの軸方向と補強材6の長さ方向が平行である場合には、定着材71は主に軸部71aの表面に生ずる摩擦力と付着力によって補強材6の張力に抵抗するが、軸部71aに凹凸が形成されているような場合には抵抗力に支圧力が加算される。
【0022】
請求項2に記載の発明の天井材の落下防止装置は、上部の躯体から懸垂した吊り材に支持される天井材の下面に直接、もしくは間接的に接触し得る状態で配置され、前記上部の躯体の周囲に位置する周囲の躯体の内、少なくとも一方向に対向する側面間に架設される伸縮可能な補強材と、この補強材の長さ方向両端部を前記周囲の躯体に定着させる定着部材とを備え、前記定着部材が前記補強材の端部が連結される連結部材と、この連結部材に接続された状態で前記周囲の躯体に定着される定着材からなり、前記定着材が前記周囲の躯体に接合される軸部と、この軸部に分離自在に連結され、前記周囲の躯体の表面に露出する頭部からなり、前記連結部材が前記定着材の前記軸部、もしくは前記頭部に螺合して接続されることを構成要件とする。
【0024】
図3に示すように定着材71に補強材6の張力を分散させる板(プレート)等の受け材72が付属し、受け材72が定着材71の頭部71bの軸部71a側に配置される場合には、受け材72が補強材6の張力を分散して負担し、補強材6の破断を防止する働きをするため、必ずしも定着材71の頭部71bに上記の面積を与える必要はない。この場合、定着部材7は補強材6の端部を保持する受け材72と、受け材72を貫通して周囲の躯体4に定着され、受け材72を周囲の躯体4側へ押圧し、受け材72を周囲の躯体4に密着させる定着材71から構成される(請求項
1)。
図3では定着材71の軸部71aが補強材6を貫通しているが、軸部71aは補強材6を貫通しないこともある。
【0025】
定着材71に受け材72が付属する場合に、
図3−(a)、(b)に示すように補強材6の長さ方向(架設方向)と定着材71の軸方向が平行な場合には、補強材6が天井材3に平行な区間と、天井材3に垂直な、受け材72に重なる区間に区分されることで、天井材3に平行な区間と垂直な区間の境界に角部が形成される。この角部は受け材72が常に負担する張力による応力の集中により破断し易くなるため、破断に対する安全性を高める上では、補強材6に角部が形成されないよう、補強材6の方向が変化する境界における受け材72の補強材6との接触面は曲面状に形成される。
図3−(c)、(d)は受け材72自体を曲面を有する形状に、薄肉の板から形成(加工)した様子を示している。
【0026】
定着部材7は
図4、
図5に示すように補強材6の端部が連結される連結部材9と、連結部材9に接続された状態で周囲の躯体4に定着される定着材71からなる場合もある(請求項
2)。補強材6が線状の場合に、補強材6の端部を直接、定着材71の頭部71bに巻き付ける等により連結することができる場合以外、定着材71との連結状態で定着材71との間で張力の伝達が図られるよう、補強材6の端部には
図4−(a)、(b)に示すように定着材71との接続(連結)に適した、挿通孔(連結部62a)を有する定着部
62が形成されるか、接続される。
【0027】
図4は補強材6が線状の場合に、挿通孔を有する定着部62が補強材6の端部に接続されている様子を示しているが、挿通孔を有する定着部62は補強材6が面状(帯状)の場合にも形成、あるいは接続可能である。例えば面状の補強材6の端部を幅方向に複数の束に区分し、その区分された束毎に定着部62を形成するか、接続することも可能である。
【0028】
補強材6の端部に、挿通孔を有する定着部62が形成等される場合、定着部62の挿通孔には
図4に示すように連結部材9の一端が挿通し、連結部材9の他端は定着材71の軸部71a、もしくは頭部71bに螺合等により接続される。
図4は連結部材9が定着部62の挿通孔に挿通するリング
9aを持つボルト(アイボルト)である場合の例を示している。
図4に示す連結部材9(アイボルト)は軸部9bにおいて定着材71の軸部71aや頭部71bにナット等により接続される。
図4におけるアイボルトは
図5の例(請求項
3)における連結材91に当たる。アイボルトの軸部9bが定着材71の軸部71aに接続される場合、頭部71bがナットを兼ねることもある。
【0029】
図4に示す例では補強材6が線状、もしくは帯状等の場合に、補強材6の軸方向と定着材71の軸部71aの軸方向が一致し、補強材6と定着部62、及び定着材71の軸部71aが同一直線上に位置するため、補強材6の端部に応力集中の発生がなく、連結部材9のいずれかの部分に曲げモーメントやせん断力を発生させることがない利点がある。この場合、補強材6の張力は主に定着材71の軸部71aに生じるコンクリートとの付着力と摩擦力により周囲の躯体4に負担される。軸部71aに生じる付着力等には、軸部71aの形状によっては支圧力が付加される。
【0030】
連結部材9は
図5、
図6に示すように補強材6の端部が直接、連結される連結材91と、連結材91と定着材71の双方に連結されるつなぎ材92からなる場合もある(請求項
3)。
図5は連結部材9が連結材91としての、
図4におけるアイボルトと、つなぎ材92としての鋼材(形鋼)等の金物からなる場合の例を示している。つなぎ材92としての鋼材の種類(形態)は問われない。
図6は連結部材9が補強材6の一部区間を被覆する連結材91としての被覆材と、つなぎ材92としての鋼材(形鋼)からなる場合の例を示している。
【0031】
図4、
図5の例では補強材6の端部が連結部材9、もしくは連結材91(アイボルト)に接続されることで、1本の線状の補強材6が1本の状態で対向する周囲の躯体4、4間に架設されるが、
図6の例ではつなぎ材92としての溝形鋼のフランジを、補強材6の長さ方向に直交する水平方向に対向させた状態で、連結材91としての被覆材を両フランジに挿通させることで、1本の補強材6を水平方向に並列させた状態で架設している。
図6の例では1本の補強材6が水平方向に並列することで、天井材3を受け止める上では、並列する補強材6の幅に相当する幅を持つ面状(帯状)の場合と同等の能力を持つため、少ない補強材6の使用量でありながら、天井材3を受け止めることができ、補強材6の使用効率が向上する利点がある。
【0032】
補強材6の端部(定着部62)が定着される周囲の躯体4は鉄筋コンクリート造の場合には、前記のように壁、梁、柱等であるが、例えば補強材6の架設方向に直交する水平方向に隣接する柱41、41間に連続する壁がなく、補強材6の端部を直接、周囲の躯体4に定着させることができない場合には、
図7〜
図13に示すように補強材6の端部に接続されたつなぎ材92が周囲の躯体4としての柱41に重なる区間において柱41に密着して接合されることにより補強材6が間接的に周囲の躯体4に定着される(請求項
4)。この場合、つなぎ材92は少なくとも隣接する柱41、41間に跨る長さを持ち、定着材71はつなぎ材92の、柱41に重なる区間に配置され、つなぎ材92を貫通して柱41に定着されることによりつなぎ材92を柱41に接合する。
【0033】
この場合、補強材6は
図7〜
図13に示すように基本的にはつなぎ材92の、柱41に重なる区間以外の区間に接続(連結)され、つなぎ材92は上記のように柱41に重なる区間において定着材71により柱41に接合される。補強材6が接続されるつなぎ材92の区間の背面側(周囲の躯体4側)には柱41がなく、定着されるべき躯体4が存在しないため、補強材6の端部(定着部62)には定着材71は接続されず、補強材6の端部には補強材6をつなぎ材92に接続するためのボルト(アイボルト)等の連結材91が接続(連結)される。
【0034】
つなぎ材92は柱41の、補強材6が架設される側の面に接合される場合と、その面に交差する面に接合される場合(請求項
5)がある。「補強材6が架設される側の面」は請求項1で言う「対向する側面5」であるが、本項目では特に周囲の躯体4としての柱41が補強材6の架設方向に対向する面をなす意味で対向面51と言う。柱41の対向面51に交差する面を以下、交差面52と言う。
【0035】
つなぎ材92が柱41の対向面51に接合される場合には、つなぎ材92は
図7〜
図10に示すように対向面51に重なる面において定着材71により接合される。つなぎ材92が柱41の交差面52に接合される場合には、
図11〜
図13に示すように交差面52に平行な面をなし、交差面52に重なる接合板92bがつなぎ材92の背面側である柱41側に突設され、この接合板92bが定着材71により柱41に接合される。接合板92b、92bは補強材6の長さ方向に直交する方向に柱41を挟み込むように並列してつなぎ材92の背面側に突設される。
【0036】
図7、
図8に示すようにつなぎ材92が柱41の対向面51に接合される場合、定着材71の軸部71aが補強材6の長さ方向に平行になるため、定着材71は軸部71aに生じる付着力と摩擦力等により補強材6の張力に抵抗するが、
図11〜
図13に示すように接合板92bにおいて交差面52に接合される場合には、軸部71aのせん断力により補強材6の張力に抵抗することになる。
【0037】
定着材71が軸部71aに生じる付着力等の抵抗力により補強材6の張力に抵抗する場合には、張力により軸部71aに生じる引き抜き力の作用方向と軸部71aの方向が一致することで、引き抜き力が抵抗力を上回ることがあれば、可能性として軸部71aが躯体(コンクリート)4から抜け出すことが想定される。これに対し、定着材71が軸部71aのせん断力で抵抗する請求項
5では仮に軸部71aにおける付着力が低下し、引き抜き力が抵抗力を上回ったときにも軸部71aの抜け出しの可能性はないため、抜け出しに対する安全性が高い利点がある。請求項
5(
図11〜
図13)ではまた、つなぎ材92がその背面側に突設された接合板92bにおいて柱41に接合されることで、
図7等の場合に露出する定着材71がつなぎ材92の表面側に露出しないため、つなぎ材92の柱41への接合状態での見栄えが向上する利点もある。
【0038】
補強材6は張力を与えられた状態で、天井材3の下面に接触した状態で配置されているとしても、補強材6が水平に、あるいは水平に近い状態で架設されている場合には、補強材6の張力は平常時に天井材3を上部の躯体1側へ押し付けるようには作用しにくいため、天井材3が吊り材2から離脱したとき、または吊り材2が上部の躯体1から離脱したときに、天井材3等を受け止めた補強材6が垂れ下がり、更なる振動時に落下する可能性が想定され得る。このような場合に、補強材6が離脱した天井材3を受け止めたときに、補強材6の垂れ下がりを防止するために、
図14、
図15に示すように天井材3と補強材6との間に、天井材3と補強材6の双方に接触し、補強材6の張力を天井材3に付与する台座10を介在させることがある(請求項
6、7)。
【0039】
この場合、天井材3と補強材6との間に台座10が介在することで、補強材6は下に凸の曲線状に、あるいは多角形状に架設されるため、補強材6の張力が天井材3に鉛直方向上向きに作用し、天井材3を押し上げた状態に保つことが可能になる。この結果、天井材4は平常時から落下が阻止された状態になるため、天井材3の吊り材2からの離脱があったときにも、天井材3自体の落下に対する安全性が向上する。
【0040】
また天井材3が吊り材2から落下することがあったとしても、天井材3が補強材6に密着した状態にあることで、落下による衝撃が補強材6に作用することはないため、天井材3等を受け止めた補強材6が垂れ下がり、更なる振動時に落下する可能性は低下する。請求項
6、7では天井材3の下面と補強材6との間に台座10が介在することで、補強材6と天井材3の下面との間には実質的にクリアランスが存在しない状態になる。
【0041】
台座10は補強材6から上向きの力を受けることで、天井材3と補強材6に挟まれ、両者から圧縮力を受けた状態になり、天井材3と補強材6に挟まれた状態で安定するため、台座10を使用する上では補強材6が面状であるか、線状であるかは問われない。
【0042】
補強材6は張力を与えられた状態で、対向する周囲の躯体4、4間に架設されるが、架設区間の距離、すなわち周囲の躯体4、4の対向する側面5、5間距離が大きくなれば、長さ方向中央部の撓み量が生じ易くなり、撓み量の大きい区間に配置された台座10に作用する圧縮力が小さくなる。そこで、
図15−(a)に示すように予め補強材6の架設曲線が懸垂曲線になるように補強材6の長さ方向の位置に応じて各台座10の高さを相違させることで、補強材6に撓みを生じさせずに済みながら、全台座10に作用する圧縮力を一定の範囲内に納めることが可能になる。
【0043】
この結果、天井材3の各部が補強材6から上向きに受ける力が均等になるため、天井材3の各部の落下に対する安全性を補強材6の長さ方向の位置に拘わらず、均等にすることができ、天井材3のいずれかの部位の落下の可能性が他の部位の可能性より高まるようなことがなくなる。また全台座10に作用する圧縮力がほぼ一様になることで、隣接する台座10、10間に生じる補強材6の張力もほぼ一様になり、補強材6の一部の区間の張力が過大になることがない。