特許第6231301号(P6231301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231301
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】往復運動を利用する発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/18 20060101AFI20171106BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H02K7/18 Z
   H02K7/06 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-118376(P2013-118376)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-236638(P2014-236638A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】513140422
【氏名又は名称】株式会社エスコム
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】小田 定明
(72)【発明者】
【氏名】今村 弘志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 健二
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−046691(JP,A)
【文献】 実開昭61−058685(JP,U)
【文献】 特開2010−115696(JP,A)
【文献】 特開昭54−048016(JP,A)
【文献】 特開2007−129814(JP,A)
【文献】 実開平03−119601(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0207309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00−7/20
B21D 24/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線運動である上下往復運動を生じさせる設備の上方への運動を受ける受圧部と、
前記受圧部に接続されて、前記受圧部が受ける上方への運動を受けて圧力を伝達する伝達部と、
前記伝達部が伝達する圧力を回転運動に変化する回転変換部と、
前記回転変換部の回転力を受けて動作するタービンと、を備え、
前記上下往復運動は下降する際より上昇する際の方が高速であり、
前記回転変換部は、前記伝達部が伝達する前記設備の直線運動を、回転運動に変換する、上下往復運動を利用する発電装置。
【請求項2】
前記設備は、プレス機、掘削機および圧力付与を行う工作機器のいずれかである、請求項1記載の上下往復運動を利用する発電装置。
【請求項3】
前記設備および前記往復運動を利用する発電装置は、前記設備が設置されている工場もしくは施設内に設置される、請求項1又は2記載の上下往復運動を利用する発電装置。
【請求項4】
前記伝達部は、前記受圧部と前記回転変換部とを接続する管路であり、前記管路中には、気体および液体の少なくとも一方が充填されている、請求項1から3のいずれか記載の往復運動を利用する発電装置。
【請求項5】
前記気体は、前記管路において気圧を伝達し、前記液体は、前記管路において油圧を伝達する、請求項記載の上下往復運動を利用する発電装置。
【請求項6】
前記回転変換部は、前記伝達部から伝達される圧力に基づいて、直線方向に基準位置を移動させる直線歯車を有する直線運動生成部材と、前記直線運動生成部材と連結して回転運動を生成する回転運動生成部材と、を有する、請求項1からのいずれか記載の上下往復運動を利用する発電装置。
【請求項7】
前記直線運動生成部材は、前記伝達部からの複数回の圧力伝達に基づいて、前記基準位置を所定量移動させ、
前記回転運動生成部材は、前記基準位置の前記所定量の移動によって、回転運動を行う、請求項記載の上下往復運動を利用する発電装置。
【請求項8】
前記圧力伝達の回数は、前記設備の往復運動回数に相応する、請求項記載の上下往復運動を利用する発電装置。
【請求項9】
前記回転運動生成部材は回転軸を有し、前記回転軸は、前記タービンを回転させる、請求項からのいずれか記載の上下往復運動を利用する発電装置。
【請求項10】
前記直線運動生成部材は、前記伝達部からの圧力で延びる弾性体を有し、前記弾性体が所定長さまで延びたところで、前記直線運動生成部材は、前記回転運動生成部材を回転させる、請求項からのいずれか記載の上下往復運動を利用する発電装置。
【請求項11】
前記弾性体は、前記所定長さまで延びたところで、弾性力を開放し、当該弾性力の開放に伴って、前記直線運動生成部材と連結する前記回転運動生成部材が回転する、請求項10記載の上下往復運動を利用する発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場に設置されているプレス機などの上下運動を生じさせる機器や左右運動などを生じさせる機器に接続されて、このような往復運動を回転運動に変化させることで、発電を行なう往復運動を利用する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の化石燃料(石油や天然ガス)の価格高騰、環境保護意識の高まりを背景に、化石燃料を用いた火力発電以外の発電装置の普及が求められている。特に、再生可能エネルギーによる発電装置の普及が求められている。再生可能エネルギーによる発電の例として、太陽光発電、水力発電、風力発電、潮力発電、海流発電、波力発電、バイオマス発電、地熱発電などがある。これらは、いずれも自然環境に存在する熱源や動力源を用いて発電機を回すことで、電力を発生させる。
【0003】
これら再生可能エネルギーを用いた発電は、化石燃料と異なり、有限資源を枯渇させることが無く、バイオマス発電を除けば、燃料の燃焼による二酸化炭素発生も生じない。このため、再生可能エネルギーによる発電装置は、環境への負荷が少なく、近年の環境保護意識の高まりに対応できる。
【0004】
加えて、火力発電に代わる発電装置として、原子力発電が従来から普及しているが、事故や維持コストなどの問題点が明らかになるにつれて、原子力発電に代わる再生可能エネルギーを用いる発電装置が求められている。
【0005】
このような状況で、わが国においては、国家プロジェクトや様々なプロジェクトによって風力発電装置や太陽光発電装置の設置や普及が進んでいる。風力発電装置は、風の強い山間部に設置されたり、洋上に設置されたりしており、少ないながらも一定の電力を供給するに至っている。しかしながら、風力発電装置は、非常に大掛かりであってコストも高い。加えて、発電後の電力の送電などの難しさもあり、資本力のある企業や電力会社などに、風力発電の参入が限られている現状がある。
【0006】
太陽光発電は、太陽光発電パネルの普及に伴って、大型太陽光発電システムと家庭用太陽光発電の両面で普及が進んでいる。太陽光発電装置も、再生可能エネルギーである太陽光を用いるだけであるので、環境負荷が少なく、資源枯渇の心配を生じさせない。しかしながら、大型太陽光発電システムを設置するには、大きな資本や技術を必要とするので、普及にはネックが多い。一方、家庭用太陽光発電は、個々の家庭や事業場に普及させやすいが、発電量は小さく、家庭で必要とする電力程度しかまかなえない問題がある。
【0007】
他の潮力発電や海流発電は、まだ実験段階であったり試作段階であったりして、普及するにはかなりの時間と技術解決を必要とする。
【0008】
これらのように、太陽光発電、風力発電、潮力発電、海流発電などの再生可能エネルギーを用いる発電装置は、資本力、設備投資、発電量などの問題を有している。このため、再生可能エネルギーを用いる発電装置であって、これら問題の少ない発電装置の導入と普及が求められている。
【0009】
このような状況において、必ずしも発電された電力が、周囲の地域に供給される必要があるとは限らない。住居や店舗などの一般向けに供給される電力を発電する必要のある発電装置の場合には、(1)一定の発電量、(2)発電量の維持、(3)送電の確保、などの問題を解決する必要がある。住居や店舗などの一般向けであって一定範囲をカバーするための発電装置の場合には、このような(1)〜(3)の問題(要望)を解決する必要がある。
【0010】
しかしながら、発電を必要とするのは、一般向けの一定範囲だけではない。例えば、工場や施設などの単位において、工場や施設などのそれぞれで必要とする電力が発電されることも求められる。特に、近年の化石燃料の値上がり、原子力発電の継続や拡大の困難性から、電力料金は上昇する傾向がある。一般家庭や小規模店舗などにおいては、電力料金の上昇が、家計や経理に占める割合はそこまで大きくない。これに対して、工場や施設などにおいては、製造工程や特定工程により、大きな電力を消費する。
【0011】
特に、製造工程を有する工場では、非常に大きな電力を消費する。このような工場においては、電力料金の上昇は、製造コストおよび経営にとって非常にシビアである。特に、我が国の工場においては、発展途上国の低賃金や低コストでの製造と伍する必要がある。このような厳しい環境において、電力料金の上昇による電力コストの上昇は、我が国の工場にとっては好ましくない。また、昨今では、電力会社の事情によって、工場が節電要求を受けることもあり、電力コストおよび電力確保の両面で、我が国の工場が電力の使用に不便や困難を受けている状況である。
【0012】
このような状況で、工場の各々は、自家発電装置を設置するなどの自衛策を講じている。しかしながら、自家発電装置の設置にはコストがかかる。加えて、自家発電の多くは軽油や灯油などの化石燃料を必要とするので、ランニングコストも抑えるのは難しい。
【0013】
以上のような環境で、多くの電力を消費する工場や施設などにおいて、イニシャルコストおよびランニングコストの両方を抑えつつ、必要な電力の少なくとも一部を自前で用意できる発電装置の必要性が高まっている。例えば、いくつかの技術提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2012−207646号公報
【特許文献2】特開2013−48536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1は、橋梁等の構造物そのものの上下方向の運動を回転運動に変換して発電機を回すのではなく、橋梁等の構造物の振動に共振して大きく運動する錘体の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。また錘体の運動エネルギーのうち、上下方向の運動成分のみを被駆動体に伝達してこの被駆動体を上下運動させるので、被駆動体の上下運動を支持する機構に水平方向の運動成分が作用することがなく、摩擦や変形等によって被駆動体の上下方向の運動エネルギーをロスすることがない。被駆動体の上下方向の運動エネルギーを回転運動に変換して増倍した後、ステッピングモータである発電機を回転駆動して発電する発電装置を開示する。
【0016】
特許文献1は、橋梁等の構造物の振動を、共振として拾うことで運動エネルギーを電気エネルギーに変換する技術を開示している。
【0017】
しかしながら、特許文献1の発電装置は、橋梁等の大型構造物であるからこそ発生する振動を基礎として発電する。振動の発生源およびこれを共振として拾う装置のいずれであっても大型の装置を必要とする。このような仕組みであれば、当然ながら、工場や施設内部において適用することは困難である。
【0018】
特許文献2は、発電用コイル8、12とこれに対向する位置にある永久磁石のいずれかが摺動して発電するリニア発電装置の摺動套4、14及び中間円筒20の数を増やして多連化し、コイル8、12と永久磁石とから成る発電ユニットの数を増加させ、これによって発電機能を強化する。上記の装置へエアーダンパー、又はコイルスプリングを附設して緩衝機能を付加するリニア発電機を開示する。
【0019】
特許文献2は、リニア発電機を開示するが、この技術も工場や施設において適用することに適しているとは言いがたい。特許文献1と同様に、専用の装置や専用の電力発生源を整備する必要があるからである。
【0020】
従来技術は、このように、装置が大掛かりであったり電力発生源を別途設けなければならなかったりする問題を残したままであった。
【0021】
工場や施設においては、これら工場や施設において既に設置されている機器や設備であって、エネルギー源(電力発生源)として活用されていないものを、活用して電力を生成する発電装置が求められている。従来技術では、この視点が欠けている。
【0022】
本発明は、工場や施設に既に設置されている設備であって、エネルギー源として活用されていない設備を利用して、当該工場や施設などで使用される電力を生成する往復運動を利用する発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題に鑑み、本発明の上下往復運動を利用する発電装置は、直線運動である上下往復運動を生じさせる設備の上方への運動を受ける受圧部と、前記受圧部に接続されて、前記受圧部が受ける上方への運動を受けて圧力を伝達する伝達部と、前記伝達部が伝達する圧力を回転運動に変化する回転変換部と、前記回転変換部の回転力を受けて動作するタービンと、を備え、前記上下往復運動は下降する際より上昇する際の方が高速であり、前記回転変換部は、前記伝達部が伝達する前記設備の直線運動を、回転運動に変換する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の往復運動を利用する発電装置は、プレス機や掘削機など、上下振動をその機能の一部とする設備の振動を利用して、効率的に発電を行なうことができる。これらの設備の振動は、本来は全く活用されていないものであり、活用されていなかった動力が有効活用される。
【0025】
また、往復運動を利用する発電装置は、振動を機能の一部とする設備の振動を利用して発電するものであり、これら設備は工場や施設に備わっている。すなわち、往復運動を利用する発電装置が発電した電力は、そのまま電力を必要とする工場や施設で使用できる。このため、送電や蓄電などの設備や手間が不要となり、発電に伴う懸念が解消される。
【0026】
結果として、未活用の動力を活用しつつ発電された電力が、その場でそのまま利用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態の往復運動を利用する発電装置が適用される態様の一例を示す写真である。
図2】本発明の実施の形態における往復運動を利用する発電装置を用いた全体の発電システムを示す模式図である。
図3】本発明の実施の形態における往復運動を利用する発電装置のブロック図である。
図4】本発明の実施の形態における伝達部の内部模式図である。
図5】本発明の実施の形態における直線運動生成部材の模式図である。
図6】本発明の実施の形態における回転変換部の模式図である。
図7】本発明の実施の形態における回転変換部の内部模式図である。
図8図7の構造を上方から見た図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の発明に係る上下往復運動を利用する発電装置は、直線運動である上下往復運動を生じさせる設備の上方への運動を受ける受圧部と、受圧部に接続されて、受圧部が受ける上方への往復運動を受けて圧力を伝達する伝達部と、伝達部が伝達する圧力を回転運動に変化する回転変換部と、回転変換部の回転力を受けて動作するタービンと、を備え、前記上下往復運動は下降する際より上昇する際の方が高速であり、回転変換部は、伝達部が伝達する設備の直線運動を、回転運動に変換する
【0029】
この構成により、上下往復運動を利用する発電装置は、直線運動である上下往復運動を回転運動に変える。この回転運動をタービンの回転に利用することで、電力を生成できる。
【0030】
本発明の第2の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第1の発明に加えて、設備は、往復運動を生じさせる。
【0031】
この構成により、往復運動を利用する発電装置は、設備が生じさせる往復運動を活用した発電を行なえる。
【0032】
本発明の第3の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第1又は第2の発明に加えて、設備は、プレス機、掘削機および圧力付与を行う工作機器のいずれかである。
【0033】
この構成により、往復運動を利用する発電装置は、エネルギーを無駄にしていた往復運動を生じさせる機器から、発電を行なえる。
【0034】
本発明の第4の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、設備および往復運動を利用する発電装置は、設備が設置されている工場もしくは施設内に設置される。
【0035】
この構成により、往復運動を利用する発電装置は、往復運動を発生させる設備の傍で発電して、発電した電力を供給できる。
【0036】
本発明の第5の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、伝達部は、受圧部が受ける上方への運動を受けて圧力を伝達する。
【0037】
この構成により、往復運動を生じさせる設備において、特に特段の工作等に用いられていない上方への運動をエネルギー源として発電できる。
【0038】
本発明の第6の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第5の発明に加えて、伝達部は、受圧部と回転変換部とを接続する管路であり、管路中には、気体および液体の少なくとも一方が充填されている。
【0039】
この構成により、伝達部は気圧や液圧によって、往復運動による直線運動を、回転変換部に伝達できる。
【0040】
本発明の第7の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第6の発明に加えて、気体は、管路において気圧を伝達し、液体は、管路において油圧を伝達する。
【0041】
この構成により、伝達部は、ロスを少なくして、往復運動による直線運動を伝達できる。
【0042】
本発明の第8の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、回転変換部は、伝達部から伝達される圧力に基づいて、直線方向に基準位置を移動させる直線歯車を有する直線運動生成部材と、直線運動生成部材と連結して回転運動を生成する回転運動生成部材と、を有する。
【0043】
この構成により、回転変換部は、容易に直線運動を回転運動に変換できる。
【0044】
本発明の第9の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第8の発明に加えて、 直線運動生成部材は、伝達部からの複数回の圧力伝達に基づいて、基準位置を所定量移動させ、回転運動生成部材は、基準位置の所定量の移動によって、回転運動を行う。
【0045】
この構成により、直線運動生成部材は、伝達部からの圧力による直線運動を、回転運動に変換できる。
【0046】
本発明の第10の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第9の発明に加えて、圧力伝達の回数は、設備の往復運動回数に相応する。
【0047】
この構成により、直線運動生成部材は、複数の往復運動伝達を蓄積した上で、回転運動に変換できる。
【0048】
本発明の第11の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第8から第10のいずれかの発明に加えて、回転運動生成部材は回転軸を有し、回転軸は、タービンを回転させる。
【0049】
この構成により、回転運動生成部材は、タービンの回転を実現して電力を生成できる。
【0050】
本発明の第12の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第8から第11のいずれかの発明に加えて、直線運動生成部材は、伝達部からの圧力で延びる弾性体を有し、弾性体が所定長さまで延びたところで、直線運動生成部材は、回転運動生成部材を回転させる。
【0051】
この構成により、直線運動生成部材は、回転運動生成部材をより強力に回転させることができる。
【0052】
本発明の第13の発明に係る往復運動を利用する発電装置では、第12の発明に加えて、弾性体は、所定長さまで延びたところで、弾性力を開放し、当該弾性力の開放に伴って、直線運動生成部材と連結する回転運動生成部材が回転する。
【0053】
この構成により、直線運動生成部材は、回転運動生成部材をより強力に回転させることができる。
【0054】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0055】
(実施の形態)
【0056】
(全体概要)
まず、本発明の往復運動を利用する発電装置の全体概要を説明する。全体概要の説明に当たって、本発明の往復運動を利用する発電装置が適用される態様について説明する。
【0057】
なお、往復運動とは、上下運動、左右運動、上下振動、左右振動などの一つの方向に沿った双方向の運動を行う場合を含み、往復運動の利用とは、往復運動の片道運動のみを利用する場合も含む。要は、往復運動における往路および復路の少なくとも一方の運動(当然に両方の運動も)を、一つの直線運動としてとらえ、この直線運動を回転運動に変換することで、発電の動力源とすることを意味する。このため、運動の周波数によって、振動や運動と厳密に区別される必要は無く、振動や運動などの様々な往復運動を利用する場合を含む。なお、上下運動、左右運動だけでなく、斜め方向の往復運動も含まれる。
【0058】
なお、本明細書では、説明の便宜のために、往復運動を生じさせるプレス機などの機器を例に説明するが、往復運動がその周波数レベルで、振動と呼べる場合であるのか往復の直線運動程度であるのかを、特段に区別するものではない。要は、往復運動の周波数に限らず、往復運動を動力源とすることを、幅広く含むのが、本発明の概念である。
【0059】
図1は、本発明の実施の形態の往復運動を利用する発電装置が適用される態様の一例を示す写真である。図1に示される写真は、工場などで多く用いられるプレス機の一例を示している。プレス機100は、圧力を付与する必要のある様々な加工に用いられる。
【0060】
例えば、プレス機100は、厚みのある板材や角材の厚みを薄くするための圧力を付与する。圧力付与によって、これら板材や角材の厚みが薄くなる。このように、部材の厚みを薄くする場合にプレス機100が用いられる場合には、部材に対して何度も圧力が付与される。
【0061】
この圧力の付与のために、プレス機100は、部材に実際に圧力を付与する押し当て器具101を有しており、この押し当て器具101が上下に動くことで、押し当て器具101の下方に設置されている部材に、押し当て器具101が衝突することで、部材に圧力が直接的に付与されて、部材を薄くできる。この場合には、押し当て器具101が上下に往復運動して、部材に衝突を繰り返しつつ部材に圧力を付与する。
【0062】
あるいは、プレス機100は、板材の形状を加工するのに用いられることもある。例えば、板材に押し当て器具101が押し当てられることで、板材が所定の形状に折り曲げられる。この場合にも、押し当て器具101が上下に往復運動して、プレス機100は、板材に圧力を付与する。
【0063】
さらには、プレス機100は、部材の表面処理を行うために、部材に圧力を付与することもある。部材表面に適当な圧力が付与されることで、凸凹を有する部材の表面を平滑化処理することもできる。この場合にも、プレス機100は、押し当て器具101を上下に往復運動させる。
【0064】
プレス機100は、図1の写真に示されるものだけでなく、様々な種類のものがある。例えば、加工の種類、必要な圧力度合いなどによって、その種類は様々になる。
【0065】
また、多くの工場では、上述のような厚みを薄める加工、折り曲げ加工、表面処理加工などを始めとした圧力を付与することによる工程を様々に必要とする。このため、多くの工場では、プレス機100を備えている。あるいは、プレス機
100だけでなく、掘削機、圧力付与を行う工作機器などが、様々な工場には設置されている。
【0066】
これらのプレス機100、掘削機、工作機器などは、図1に示されるように上下運動を行う部分を有している。この上下運動は、強い圧力を種々の部材に付与するために、非常に強い圧力をもって運動する。すなわち、プレス機100などの有する上下運動は、高い運動エネルギーを有している。
【0067】
このようなプレス機100などの上下運動の特性として、押し当て器具101が下降する際より上昇する際の方が、押し当てていた圧力を一気に放出するようにして、高速かつ一気に上昇する。この高速かつ高圧の上昇は、再び下降して圧力をじっくりと付与するために、行われる。
【0068】
ここで押し当て器具101の下降は、部材に直接的に圧力を付与するための加工に直接関係する動作である。一方、押し当て器具101の上昇は、部材から離れていく(部材に押し当てていた圧力を開放する)動作であり、加工に直接関係しない動作である。すなわち、上下往復運動における上昇動作は、加工のための準備動作とも言え、その上昇時のエネルギーは、工場での加工動作には活用されていないといえる。
【0069】
実施の形態における往復運動を利用する発電装置は、このような押し当て器具101の上下往復運動における上昇時に生じる圧力であって、加工動作に直接利用されていなかった圧力を利用する。加工動作に直接利用されていなかった上昇時の圧力を利用することで、新たな動力源やエネルギー源を用意することなく、発電を行なうことができる。すなわち、廃棄されていたエネルギーを活用した発電によって、発電コストや環境負荷の様々な問題を解消できる。
【0070】
図2は、本発明の実施の形態における往復運動を利用する発電装置を用いた全体の発電システムを示す模式図である。図2は、ある工場200において、元々設置されているプレス機100を利用した往復運動発電とその利用を示している。
【0071】
工場200には、上述の通り、様々な加工・工作のためのプレス機100が設置されている。場合によっては、複数台のプレス機100が設置されている。このプレス機100は、上述の通り、上下往復運動を生じさせる。
【0072】
実施の形態の往復運動を利用する発電装置1は、このプレス機100の上下往復運動の圧力を受圧できるように接続されている。図2に示されるように、プレス機100の上下往復運動を生じさせる部位にプレート102が備えられる。プレート102は、上下往復運動を生じさせる部位に接続されているので、プレス機100の上下往復運動に対応して上下に往復運動する。
【0073】
プレート102は、往復運動を利用する発電装置1が備える受圧部2と接触する。この接触により、プレート102の上下往復運動が、受圧部2に伝わる。すなわち、受圧部2は、プレス機100の上下往復運動により生じる圧力を受けることができる。
【0074】
往復運動を利用する発電装置1は、この受圧部2からの圧力を受けて、プレス機100の上下運動を回転運動に変換する。回転運動は、そのまま往復運動を利用する発電装置1が備えるタービンを回転させる。このタービンの回転によって、往復運動を利用する発電装置1は、電気を発生させる(発電する)。
【0075】
往復運動を利用する発電装置1は、プレス機100の設置されている工場200において設置される(あるいは、工場200に隣接して設置される)。このため、往復運動を利用する発電装置1が発電して生じさせる電力は、そのまま工場200に送電される。送電においても、ほぼ同じ敷地内での送電で済むので、送電線や変圧などの余分な機器やインフラを最小限で済ませることができる。図2に示されるように、往復運動を利用する発電装置1は、そのまま工場200に送電することが可能である。
【0076】
工場200では、往復運動を利用する発電装置1から送電された電力を利用して、種々の機器のエネルギー源とできる。例えば、往復運動を利用する発電装置1で発電された電力を、工場200の照明設備に用いたり、プレス機100を始めとした工作機械に用いたりできる。このように、多大な電力を必要とする工場200において、活用されていなかったプレス機100の上下往復運動(特に、上昇)のエネルギーを、工場200で使用する電力に変換することで、工場200における電力コストを低減できるだけでなく、環境負荷も低減できる。
【0077】
(往復運動を利用する発電装置の構成)
次に、往復運動を利用する発電装置の構成について説明する。
【0078】
図3は、本発明の実施の形態における往復運動を利用する発電装置のブロック図である。往復運動を利用する発電装置1は、受圧部2、伝達部3、回転変換部5、タービン6を備える。
【0079】
受圧部2は、図2に示されるように、プレス機100の上下往復運動部位に接触ないしは接続される。すなわち、受圧部2は、プレス機100を始めとした往復運動を生じさせる設備の往復運動を受けることができる。なお、図3では、2つの受圧部2が示されているが、受圧部2の数は幾つでもよい。受ける往復運動を発生させる設備の形状や構造に合わせた個数の受圧部2を、往復運動を利用する発電装置1は、備えればよい。
【0080】
例えば、往復運動を発生する設備が図2に示されるようなプレス機100である場合には、プレス機100の上下する部位の両端に受圧部2が設けられればよい。このため、この場合には、往復運動を利用する発電装置1は、2つの受圧部2を備える。もちろん、上下する部位が複数の端部を有する場合には、この複数の端部に合わせた個数の受圧部2が設けられてもよい。
【0081】
受圧部2は、往復運動を利用する発電装置1の備える要素であるが、プレス機100など往復運動を発生する設備そのものに備えられてもよい。
【0082】
伝達部3は、受圧部2に接続される。更に、受圧部2に接続されることで、受圧部2が受ける往復運動による圧力を伝達する。受圧部2は、往復運動を発生させる設備の往復運動を受けることで、圧力を受ける。伝達部3は、この圧力を、回転変換部5に伝達する。例えば、伝達部3は、内部に密封された気体や液体を備えた管路であり、受圧部2の圧力により、この気体や液体が管路を移動する。この気体や液体の管路中の移動が、圧力伝達を行う。
【0083】
伝達部3は、回転変換部5に圧力を伝達する。上述のように、気体や液体の移動による物理的現象によって、伝達部3は、回転変換部5に圧力を伝える。この圧力が、回転変換部5の動作の動力源となる。ここで、伝達部3は、プレス機100などの上下往復運動である直進運動をそのままの状態で圧力として伝えている。このため、伝達部3が伝達する圧力は、直線運動である。すなわち、伝達部3によって回転変換部5には、直線運動が付与されていることと同等である。
【0084】
回転変換部5は、この直線運動として付与される圧力を回転運動に変換する。回転運動に変換することで、この回転運動をタービン6に伝達できる。回転運動は、タービン6を回転させることができる。タービン6は、公知の技術であり、詳細の説明を省略するが、タービン6が備える回転部材が磁界の中で回転することにより、電気を生じさせる。
【0085】
このようにして、往復運動を利用する発電装置1は、直線運動である上下往復運動を基礎として、電力を生成できる。往復運動を利用する発電装置1は、図3に示されるように、工場などの製造工程で必要となって工場内に設置される往復運動を生じさせる機器の上下往復運動を、受圧部2で受けることから発電を開始する。このため、往復運動を利用する発電装置1は、工場内に設置されることが容易であり、必然的に工場内や工場に近接して設置される。
【0086】
結果として、往復運動を利用する発電装置1は、工場で必要となる種々の電力を生成できる。加えて、生成した電力は、そのまま工場内で使用できる。離隔した場所に送電する必要がないので、送電ロスも少なく、発電場所で生成した電力を使用できる。このため、発電された電力の活用度が非常に高い。
【0087】
例えば、往復運動を発生させる設備として、プレス機100である場合には、往復運動を利用する発電装置1は、このプレス機100の上下往復運動を利用して、電力を発生させる。そしてそのまま往復運動を利用する発電装置1が発電した電力が、プレス機100の動力源として供給されてもよい。この場合には、送電ロスも極めて小さく、工場管理の点で、電力コストの管理も見える化しやすくなる。近年の電力コスト上昇において、極めて好適である。
【0088】
このように、上下往復運動を生じさせる設備の上下往復運動を活用して、設備の設置されている場所で発電し、設備の設置されている場所で消費することで、電力コスト削減や環境負荷の削減を実現できる。
【0089】
次に各部の詳細について説明する。
(設備)
【0090】
往復運動を利用する発電装置1が、エネルギー源として用いる設備は、往復運動を生じさせる設備である。特に、上下往復運動を生じさせる設備であることが好適である。例えば、プレス機、掘削機および圧力を付与する工作機器などが、設備として用いられることが好適である。
【0091】
また、これらの設備は、この設備による工程を必要とする工場や施設内部に設置されることが適当である。同様に、往復運動を利用する発電装置1も、この設備が設置される工場や施設内部に設置されることが好適である。いずれもがこの工場や施設内部に設置されることで(工場や施設の建屋内部という物理的な位置に限定されるのではなく、これら工場や施設とみなされる敷地内であれば同様である)、往復運動を利用する発電装置1の動力源から往復運動を利用する発電装置1までの圧力伝達ロスおよび、往復運動を利用する発電装置1から電力を必要とする機械等への送電ロスを低減できるからである。
【0092】
また、設備は、上下往復運動を受圧部2に与える。例えばプレス機100のような設備の場合には、部材等に実際に圧力を付与する押し当て部材が、上下往復運動する(上下運動する)。受圧部2は、この上下往復運動する押し当て部材の端部などに接触可能であるか接続されることが好ましい。このため、設備は、上下往復運動する部材に、受圧部2を接触可能あるいは接続可能な端部を備えることが好適である。
【0093】
また、受圧部2は、上下往復運動の圧力を受けやすいことが適当である。このため、上下往復運動する部材は、複数の端部において往復運動を受圧部2に付与しやすいように、複数の端部あるいは複数の端部を構成しやすい構造を有していることが好適である。実際の設備において、このような複数の端部を有していない場合には、上下往復運動する部材に、受圧部2と接触可能あるいは接続可能な突出部やプレートが、設けられることも好適である。図2においては、プレス機100の押し当て部材にプレート102が設けられている。
【0094】
(受圧部)
受圧部2は、上述のようなプレート102と接触可能であったり、上下往復運動する部材の端部と接触可能であったりする。あるいは、接触ではなく、接続されていることでもよい。
【0095】
受圧部2は、上下往復運動による圧力を受ける。特に、上下往復運動する部材の上方への運動を受ける。上下往復運動する部材は、下方への運動は圧力付与を行うためにじっくりと時間をかけて圧力を付与する。このため、下方への運動は、その作用時間もゆっくりとなりがちである。また受圧部2は、気圧や油圧を利用する伝達部3を介して、回転変換部5に圧力を付与する。このため、下方への運動は、伝達部3の生じさせる気圧や油圧を増加させにくい。
【0096】
一方、上下往復運動する部材の上方への運動は、短い時間で動作する。上方への運動は、上下往復運動する部材が付与していた圧力を、一気に開放する動作だからである。受圧部2は、上下往復運動において、この上下往復運動する部材の上方への運動を受ける。上方への短時間での即座の動作を受けることで、受圧部2は、瞬間的な圧力を受けることができるからである。
【0097】
また、受圧部2は、気圧や油圧によって圧力を伝達する伝達部3を介して、圧力を回転変換部5に付与する。このとき、伝達部3は、内部に気体や液体を充填した管路で形成される事が多い。受圧部2が、上下往復運動する部材の上方への運動を主として受けることで、受圧部2に上向きの圧力が付与される。
【0098】
受圧部2は、この上向きの圧力を主として受けて、伝達部3に伝える。受圧部2は、上下往復運動する部材の上向きの運動を、繰り返し受けつつ、その上向き圧力を伝達部3に繰り返し伝達する。
【0099】
(伝達部)
伝達部3は、受圧部2が受ける上方への往復運動(に基づく上向き圧力)を受けて圧力を伝達する。伝達部3は、管路であることが好ましい。図4は、本発明の実施の形態における伝達部の内部模式図である。
【0100】
伝達部3は、管路31となっている。管路31であるので、内部空間32を備えている。この内部空間32は、気体および液体の少なくとも一方を充填している。一例として、内部空間32は、図4に示されるように液体33を充填している。液体33は、油、水、特殊液体など、内部空間32での移動によって圧力を伝達できる機能を有するものであればなんでもよい。
【0101】
受圧部2が上向きの圧力を伝達部3に付与すると、伝達部3には、受圧部2側の端部から、回転変換部5側の端部に向けて圧力が付与される。この圧力によって、内部空間32に充填されている液体33は、矢印Bの方向に移動する。この矢印Bの方向への移動によって、液体33は、管路31全体において矢印Aの方向に移動する。
【0102】
矢印Aは、受圧部2から回転変換部5への方向である。液体33が矢印Bの方向に移動していくことが蓄積されていくことで、液体33は矢印Aの方向に移動する。この移動によって、液体33は、回転変換部5に圧力を付与できる。図4の場合には、液体33が充填されているので、液体33による液圧(例えば油圧)が、回転変換部5に付与される。
【0103】
逆に、管路31の内部空間32に気体(密封された状態で)が充填されている場合には、気体による気圧が、回転変換部5に付与される。
【0104】
以上のように、伝達部3は、気体や液体を密封充填している管路であることが、受圧部2からの圧力伝達に好適である。もちろん、伝達部3が、気圧や液圧による物理的な圧力伝達ではなく、例えば電気的あるいは機械的な圧力伝達を行っても良い。
【0105】
(回転変換部)
回転変換部5に伝達される伝達部3からの圧力を用いて回転運動を生成する。ここで、図4で説明したように、伝達部3が伝達する圧力(運動エネルギー)は、直線方向の運動である。この直線方向の運動を回転運動に変換する。最終的には往復運動を利用する発電装置1は、タービン6を回転させる必要がある。このために、回転変換部5は、タービン6を回転させるための回転運動を生成する。
【0106】
図3に示されるように、回転変換部5は、伝達部3から伝達される直線方向の圧力に基づいて、直線方向の直線運動を生成する直線運動生成部材51を有する。加えて、この直線運動生成部材51が生成する直線運動を回転運動に変換して、回転運動を生成する回転運動生成部材52を備える。すなわち、回転変換部5は、伝達部3から伝達される直線運動の圧力を即座に回転運動に変換するのではなく、まず直線運動を生成する。
【0107】
図5は、本発明の実施の形態における直線運動生成部材の模式図である。図5は、伝達部3から伝達される圧力によって、直線運動生成部材51が、直線方向に基準位置移動させる状態を示している。直線運動生成部材51は、直線歯車511を備えている。更に直線運動生成部材51は、直線状の部材である。この直線状の部材の端部から(図5では右端)、伝達部3からの圧力が付与される。
【0108】
この圧力の付与によって、直線運動生成部材51は、次第にその位置を図5の左側に移動させていく。この左側への移動に伴って、直線運動生成部材51の基準位置も左側に移動していく。すなわち、直線運動生成部材51は、伝達部3からの直線運動に基づく圧力を受けて、直線方向に移動する。加えて、伝達部3から伝達される圧力を、複数回受けて、その基準位置を所定距離だけ移動させる。
【0109】
すなわち、伝達部3は、上下運動の往復運動を複数回にわたって、直線運動生成部材51に付与する。この複数回の圧力付与によって、直線運動生成部材51は、基準位置を徐々に移動させる。このようにして、直線運動生成部材51は、複数回の上下運動の往復運動圧力を蓄積していく。
【0110】
直線運動は、直線運動生成部材51から、これと連結する回転運動生成部材へ伝達される。図6は、本発明の実施の形態における回転変換部の模式図である。回転変換部5は、直線運動生成部材51に回転運動生成部材52が連結されている状態を模式的に示している。
【0111】
回転運動生成部材52は、直線運動生成部材51からの運動を受けることが可能なように連結している。この連結によって、回転運動生成部材52は、直線運動生成部材51からの運動を受けて回転できる。
【0112】
連結および運動伝達の手段は様々でよい。例えば、直線運動生成部材51の有する直線歯車511と嵌合する回転歯車を、回転運動生成部材52が備えていても良い(図6では、回転歯車は示されていない)。直線歯車511と回転歯車が嵌合している場合には、直線運動生成部材51の直線方向の移動運動によって、回転運動生成部材52は、歯車の嵌合に基づいて回転する。
【0113】
図6は、このように、直線運動生成部材51の備える直線歯車511と回転運動生成部材52が備える回転歯車との嵌合による回転生成を示している。直線運動生成部材52は、図5を用いて説明したように、伝達部3からの圧力付与によって、矢印Cの方向に移動する。この矢印Cの方向に沿った移動に伴って、嵌合する歯車の力により、回転運動生成部材52は、矢印Dに向けて回転する。
【0114】
この場合には、回転運動生成部材52は、直線運動生成部材51の直線移動のたびに回転する。すなわち、伝達部3から圧力が、直線運動生成部材51に付与されるたびに、回転運動生成部材52が回転する。
【0115】
あるいは、直線運動生成部材51と連結軸や連結部材などで、回転運動生成部材52が連結されていてもよい。この場合には、回転運動生成部材52は、直線歯車511との嵌合を有さなくてもよい。このような連結の場合には、回転運動生成部材52は、直線運動の伝達に基づいて回転する。
【0116】
また、回転運動生成部材52が、連結部材などで、直線運動生成部材51と連結されていることもある。図7は、本発明の実施の形態における回転変換部の内部模式図である。図7は、直線運動生成部材51と、回転運動生成部材52が連結部材等で連結されている状態を示している。図示するとみにくくなるので、回転運動生成部材52の表示は省略しているが、直線運動生成部材51の向こう側に回転運動生成部材52が連結される。
【0117】
このような構成を有する場合には、例えば、直線運動生成部材51が弾性体を備えていることもよい。例えば、直線運動生成部材51は、図7のように、移動方向に沿って弾性体512を備えている。
【0118】
弾性体512は、直線運動生成部材51に付与される伝達部3からの圧力を蓄積する。この蓄積に合わせて、弾性体512は、伸びる。あるところまで伸びると弾性体512は、元に戻る力で元に戻る。矢印Eは、この元に戻る方向を示す。
【0119】
回転運動生成部材52は、この直線運動生成部材51に連結しており、この矢印Eの方向に戻る力を受ける。この戻る力に従って、回転運動生成部材52は、回転する。すなわち、回転運動生成部材52は、複数回に渡っての伝達部3からの圧力を蓄積した直線運動生成部材51によって、回転させられる。このように、図7に示されるように弾性体で蓄積した力を回転運動生成部材52に付与する場合には、回転運動生成部材52は、より強力に回転できる。
【0120】
図8は、図7の構造を上方から見た図面である。
【0121】
図8に示されるように、回転運動生成部材52は、連結部材522によって、直線運動生成部材51と連結されている。また、図8では示されていないが、図8の直線運動生成部材51には、図7で示される弾性体512が取り付けられている。
【0122】
この弾性体512が所定量伸びた後で、弾性体512は、戻る。この戻りに合わせて、連結部材522で連結されている回転運動生成部材52は、回転する。
【0123】
図6の場合でも、図7の場合でも、回転運動生成部材52は、回転軸61を有している。この回転軸61で、回転運動生成部材52は、タービン6に連結している。回転軸61は、回転運動生成部材52の回転に合わせて回転する。すなわち、直線運動生成部材51から回転運動を生じさせた回転運動生成部材52は、回転軸61を回転させる。
【0124】
この回転軸61は、タービン6を回転させる。このようにして、タービン6が回転運動を行って、発電を実現する。
【0125】
このように、回転変換部5は、上下往復運動という直線運動を元に、回転運動を生成してタービン6を回転させることができる。
【0126】
なお、図7では、直線運動生成部材51に、複数回の圧力伝達が付与されて、弾性体512がこれを蓄積する。この場合の弾性体512での蓄積から開放に至る期間での圧力伝達の回数は、上下往復運動を生じさせる設備の特性や往復運動回数などに応じて定められれば良い。
【0127】
以上のように、実施の形態における往復運動を利用する発電装置1は、往復運動を生じさせる設備の往復運動であって、未活用であったエネルギーから、電力を生成できる。結果として、省エネはもちろん、環境負荷の低減などのメリットももたらす。
【0128】
なお、実施の形態〜2で説明された往復運動を利用する発電装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0129】
1 往復運動を利用する発電装置
2 受圧部
3 伝達部
5 回転変換部
51 直線運動生成部材
52 回転運動生成部材
6 タービン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8