(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ成型後の外観検査では、タイヤ表面に対してレーザ光をタイヤ半径方向に延長させて照射し、この光の照射された部位をレーザ光の光軸に対して所定角度傾斜させた位置からカメラで撮影してタイヤ表面の3次元形状を画像として取得する光切断法が知られている。この取得された画像は、画像処理手段により画像処理を施し、例えば、良品データとして記録されたマスターデータと比較することで、撮影した画像からタイヤ成型の良否を判定している(特許文献1)。
また、タイヤ製造における最終検査では、検査員がタイヤの所定の部位を目視や触診することで、タイヤの製品としての総合的な異常の有無が検査される。このような検査では、検査員への検査作業の負担が大きいため、検査員の作業状態をカメラで撮影し、最終検査に携わる交代検査員が待機する待機室のモニタに映し出し、待機室で待機する交代検査員に作業中の検査員を監視させて、検査員の疲労が見受けられたときには、交代検査員と検査作業を交代するようにしている。
しかしながら、上記いずれの検査においても、検査員にかかる負担が大きく、検査効率の向上や検査の質を安定化させる上で問題となっている。
前者の場合、検査員によってタイヤ表面に照射するレーザ光の向きを調整する必要がある。特にタイヤのトレッド部には、タイヤのモデル毎に異なるトレッドパターンやサイプ形状が成型されるため、溝やサイプの底までレーザ光を到達させるようにレーザの向きを調整した上で、カメラの視野内においてレーザ光の照射部位が収まるようにレーザとカメラの位置関係を調整する必要がある。この作業は、作業者の熟練度によって調整の精度や早さが変わるため、検査効率や検査精度にムラが生じてしまう。例えば、調整が正確に行われない場合には、正常に撮影されなかった部位が画像処理の段階で不良として判定されるため、この検出個所を検査員の目視によって再検査する必要が生じ、検査員への負担を増加させているという問題がある。
また、後者の場合、交代検査員が検査員の検査作業から疲労の有無を判断するため、監視する交代検査員によってその交代すべきタイミングが異なるという問題がある。例えば、検査員の疲労の状態を初期段階で気付いた場合には検査ミスを防止することができるが、初期段階以降で気付いた場合には検査員の交代に至るまでの間に検査ミスや検査不足が生じている可能性があるという懸念があった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1は、実施形態1に係る検査補助装置の概略構成図である。以下、同図を用いて検査補助装置の装置構成について説明する。なお、本実施形態では、検査補助装置をタイヤの外観検査に適用した場合について説明する。この場合、検査補助装置は、タイヤ外観検査装置として機能する。
検査補助装置1は、画像取得手段2と、画像処理手段3とにより概略構成される。
【0008】
画像取得手段2は、検査対象であるタイヤTを撮影するカメラ11と、距離画像センサ12とを備える。カメラ11は、人の目により色調が認識可能な範囲の可視光を受光するいわゆるカラービデオカメラであって、検査室等に設置された照明や、窓からの採光による明かり等の拡散光の反射光を受光して、背景とともにタイヤTを撮影する。
【0009】
距離画像センサ12は、例えば赤外線投光器13と、赤外線投光器13から照射された赤外線の反射光を受光する赤外線カメラ14と、内部処理手段12Aとを備える。赤外線投光器13は、複数の点群から赤外線を照射する。この点群から照射される赤外線は、特定の照射パターンに設定される。このような赤外線の照射には、例えば、Structured Light照射素子が用いられる。赤外線には、波長が近赤外線の範囲のものを使用すると良い。
【0010】
赤外線カメラ14は、赤外線投光器13から照射された赤外線の反射光を受光するCMOSやCCD等の受光素子を有するカメラである。赤外線カメラ14は、受光する光軸が赤外線投光器13の光軸やカメラ11の光軸と互いに平行となるようにタイヤTに対して所定距離離間して配置される。赤外線カメラ14の光軸とカメラ11の光軸とが離間する距離は、あらかじめ既知のものとして設定しておくことで、カメラ11で撮影された画像との重ね合わせの処理を簡素化できる。なお、赤外線投光器13から照射される赤外線の照射野と、赤外線カメラ14の視野はほぼ同じ範囲となるように設定される。
【0011】
内部処理手段12Aは、赤外線投光器13から投光された赤外線の照射パターンと赤外線カメラ14で受光した受光パターンとを比較し、照射パターンに対する受光パターンのひずみの度合いによって対象物までの距離を計算し、近い距離で反射した反射光ほど明るく、遠い距離で反射した反射光ほど暗い濃淡画像に処理をする。つまり、画像の濃淡が、赤外線カメラ14から対象物までの距離を示す距離情報となって、対象物の3次元形状を示す。
【0012】
本実施形態では、距離画像センサ12の赤外線投光器13から照射される赤外線は、タイヤ表面に照射される。赤外線は、タイヤTの回転中にトレッド部の溝やサイプなどに入り込んで、タイヤTの外周にトレッド部として成型された接地面から溝底やサイプ底までの深さや、溝により区画されるトレッドブロックの3次元形状の取得を可能とする。
【0013】
画像処理手段3は、いわゆるコンピュータであって、ハードウェア資源として設けられた演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROM,RAM、通信手段としての入出力インターフェイス等を備える。CPUは、記憶手段に格納されたプログラムに従ってタイヤの外観検査にかかる処理を実行する。また、画像処理手段3には、キーボードやマウス等の入力手段4、撮影した画像や欠陥の有無を表示する表示手段5とが接続される。記憶手段には、検査対象検出プログラム、モデリングプログラム、マッチング率算出プログラム、追跡判定プログラムが格納される。CPUが、上記各プログラムを実行することで、画像処理手段3が検査対象検出手段21、モデリング手段22、追跡判定手段24として機能する。
【0014】
検査対象検出手段21は、検査対象物であるタイヤTのタイヤ表面に成型される成型物の比較モデルMを記憶手段からロードし、距離画像と比較モデルMとをパターンマッチングさせて距離画像から検査対象物を検出する。
【0015】
図2(a)は、良品タイヤのトレッド部T1を距離画像センサ12により撮影したある瞬間における距離画像のフレームの部分拡大図である。トレッド部T1に対する比較モデルMとしては、
図2の破線(a)四角で囲むように、トレッドパターンを構成するトレッドブロックと溝とを含む部分的な要素を画像データとして用意する。好ましくは、
図2(a)のトレッドブロックB1に示すエッジEを含むように作成すると良い。また、図示しないが、同様に側面部T2に対しても、側面部T2に成型される文字列を構成する各文字を形成する要素の一部分を比較モデルとして用意する。また、作成した比較モデルMは、検査対象となる品番の異なるタイヤ毎に用意して記憶手段に記憶させる。このような比較モデルMは、回転するタイヤTを斜め上方等から異なる角度で撮影したものについても上記と同様に作成し、記憶手段に記憶させておく。
【0016】
上記比較モデルMは、
図2(b)に示すように、タイヤ毎にトレッドパターンを構成するトレッドブロックや溝等の要素の関係に一致するように比較モデルM同士の関係を紐付けする決定木Zを作成し、記憶手段に記憶させる。例えば、
図2(a)に示すように、トレッドブロックB1の特徴部分であるエッジEを含むようなトレッドブロックB1の一部を含む比較モデルM1を決定木Zの頂点に位置させ、次に、当該トレッドブロックB1の他の部分や比較モデルM1を囲むように隣接する比較モデルM2乃至M9をその下位に位置させ、さらに、トレッドブロックB1を囲む他のトレッドブロックやトレッドブロックB1を囲む溝を含む比較モデルが下位に位置するようなツリー状の決定木Zを作成すると良い。このような決定木Zの作成は、機械学習により自動的に作成すれば良い。
また、異なる型番のタイヤTにおけるトレッド部T1を構成するトレッド部比較モデル群やサイド部比較モデル群としてタイヤTにおける部位毎に比較モデル群を作成しておくと良い。距離画像に含まれる形状において、トレッド部T1は最も特徴的であることから、まず複数の異なる型番のタイヤのトレッド部T1を構成する要素の集合であるトレッド部比較モデル群からマッチングを開始して、最もマッチング率の高い比較モデルMを有する型番の決定木を記憶手段から読み出して、距離画像にマッチングさせることで、距離画像からタイヤT全体を検出することができる。
【0017】
このように、比較モデルMを成型物全体ではなく、成型物全体を網羅するように複数の部分に分割して局所的な比較モデルMを用意しておくことで、タイヤTの大きさや型番にかかわらず、距離画像からタイヤ表面の成型物を検出させて検査対象であるタイヤT全体を検出することができる。また、タイヤTは、型番が異なれば側面部T2に成型されるタイヤ名やメーカー名を含む文字列等の成型物や、トレッド部T1に成型されるトレッドパターン等の成型物の形状が異なり、同一の型番であっても偏平率やタイヤサイズが異なれば成型物の大きさも異なるため、効率よく比較モデルMをマッチングさせて、距離画像からタイヤT全体を検出できる。
【0018】
すなわち、検査対象検出手段21は、タイヤTに成型される成型物の部分的な要素である比較モデルを識別器とし、この識別器を距離画像センサ12により取得された距離画像にマッチングさせ、さらに比較モデル同士の関係を紐付けした決定木によりタイヤ全体に対して成型物であるトレッドブロックや文字の各要素に対応する比較モデルMを連鎖的にマッチングさせることで、距離画像からタイヤTの表面全体を効率良く検出できる。
【0019】
検査対象検出手段21による検査対象物の検出動作は、次のように実行される。各フレーム内の距離画像に対して記憶手段にあらかじめ記憶させておいた決定木の上位に位置する比較モデルMをタイヤTに対してマッチングさせる。例えば、前述したように、トレッドブロックの溝を含むエッジ部分の比較モデルMからマッチングを開始して複数のトレッドブロックからいずれか1つを特定し、このトレッドブロックが採用されているタイヤTに関する決定木を呼び出し、このマッチングした比較モデルMに紐付けされた他の要素の比較モデルMを順次マッチングさせることで、距離画像から検査対象物であるタイヤTの表面全体が検出される。
【0020】
モデリング手段22は、検査対象検出手段21により距離画像から検出されたタイヤTのモデル化を行う。具体的には、成型物を含むタイヤTの輪郭形状を線画に変換する。例えば、トレッドパターンの成型不良を検出する場合、トレッドパターンを形成する個々のトレッドブロックは、周方向の長さや溝深さ等が所定寸法で設定されたものであり、その寸法は既知のものである。したがって、モデリング手段22でモデル化されたタイヤ表面の形状に対して、マッチングした比較モデルとの差異を後述の比較判定手段(追跡判定手段24)で比較することにより、成型物が所定の形状で成型されているかどうかを判定するときの処理速度を向上させることができる。このモデリング手段22による処理は、検査対象検出手段21による距離画像からのタイヤTの検出と同時に実行される。
【0021】
追跡判定手段24は、各フレームに含まれる同一部位のマッチング率の変化を追跡し、マッチング率の変化に基づいてタイヤTの良否を判定する。例えば、
図3(a)に示すような、ある瞬間におけるフレームF1において、同図に示すトレッドブロックB2は、タイヤTが回転しているため、次のフレームF2では
図3(b)に示すように位置が移動している。フレームF1において比較モデルMjがマッチングしたトレッドブロックB2のエッジE2を含む部分は、フレームF2では比較モデルMj+1がエッジE2を含む部分にマッチングし、この部分は同一部分と見なすことができる。
これはトレッドブロックB2のエッジE2を含む同一の部分を異なる角度で見たものであり、記憶手段に記憶した比較モデルMがいずれかの部分にマッチングすることになる。そこで、追跡判定手段24では、成型物の同一部分の時間的な変化におけるマッチング率を追跡し、着目した同一部分におけるマッチング率の開きが所定の閾値以上のときに、該当する部分に異常有りと判定することで外観検査、換言すれば、成型物の良否を判定することができる。例えば、検査員が外観検査をする場合、タイヤTが静止又は回転していても成型物全体を自身の記憶と比較し、全体の中から違和感を感じた部位に対して焦点を移すことで異常を確認している。つまり、追跡判定手段24では、人目と同様に連続するフレームに含まれる同一部分のマッチング率の変化を追跡することで異常を検出することができる。なお、追跡判定手段24による追跡は、各フレームに含まれ、比較モデルMがマッチングするすべての部分について実行される。このように、距離画像にマッチングした比較モデルMと、タイヤTの輪郭画像とを比較することで、処理する情報量を少なくして、回転するタイヤTを撮影している最中にリアルタイムで成型の良否の判定処理が可能となる。
したがって、後工程で複雑な画像処理を必要としないので検査時間を短縮できる。また、検査対象物を線画としても、成型時の欠損が発生した場合、周方向の同一位置の線素と比較することで、不良個所の検出が可能となる。
【0022】
以下、本発明にかかる検査補助装置1の動作について説明する。
図1に示すような載置台に被検体であるタイヤTを横向きにテーブル10上に載置する。テーブル10は、回転機構により回転自在に構成され、検査対象であるタイヤTをテーブル10とともに回転させることで外観検査が実行される。
画像取得手段2は、撮影方向をテーブル上に載置したタイヤTのトレッド部T1に対向した状態でタイヤTに対して所定距離離間して配置される。所定距離とは、例えば、トレッド部T1が、カメラ11や距離画像センサ12の視野内に納まる距離である。距離画像センサ12の赤外線投光器13や赤外線カメラ14は、所定範囲の視野をそれぞれ有しているので、従来の光切断法による画像の取得方法のように、光源からの光が溝底やサイプ底に到達するように正確に配置する必要がない。
【0023】
例えば、距離画像センサ12の赤外線投光器13から照射された赤外線は、所定の範囲に広がりを持って照射されるとともに、その反射光を受光する赤外線カメラ14も同様な視野角の広がりがあるので、回転するタイヤを連続的に動画として撮影すれば、いずれかのフレームにおいてすべての溝底が撮影されることになるため、トレッド部T1の形状全てについて確実に取得することができる。
【0024】
次に、テーブル10を回転駆動させてタイヤTを回転させる。カメラ11と距離画像センサ12により撮影されたカラー画像及び距離画像は、例えば、20フレームパーセコンド(FPS)の動画データとして画像処理手段3に逐次出力される。
画像処理手段3では、カメラ11で撮影されたカラー画像と、赤外線カメラ14により撮影された距離画像とをフレーム毎に重ね合わせて、表示手段5に出力表示する。
タイヤTを回転させることで、検査対象検出手段21がフレーム毎にタイヤTを距離画像から検出し、モデリング手段22によりトレッド部T1の凹凸として成型されたトレッドパターンを輪郭線にモデル化処理する。次に、追跡判定手段24により、トレッドパターンに比較モデルMがマッチングした部分毎のマッチング率の変化を追跡する。追跡判定手段24は、時間的に移動した各同一部分におけるマッチング率の開きが閾値以上のときには、不良あり、閾値よりも小さいときには異常なしとして判定する。例えば、
図4(a)に示すように、トレッドブロックB1が傾斜して撮影された場合には、エッジE2を含むトレッドブロックB1の表面の形状には、ほとんど不良としては見られず、比較モデルMiがあるマッチング率でマッチングすることになるが、
図4(b)に示すように、次フレームにおけるトレッドブロックB1は、ほぼ正面から撮影されたことで、本来、比較モデルMi+1が、比較モデルMiとのマッチング率に近いマッチング率でマッチングするところ、エッジE2を含む形状に異常があるため、マッチング率が悪化することになり、このトレッドブロックB1の形状には異常がありと判定される。なお、異常ありとして検出された部分は、カメラ11により撮影されたカラー画像とともに、その位置が表示手段5上に表示される。これにより、検査員による不良箇所の確認動作が容易なものとなる。
【0025】
上記構成の検査補助装置1によれば、従来のような光切断法のように光の照射されない部位の画像を取得することができなかったが、本願発明では、ほぼ拡散光に近い状態で照射される赤外線により撮影することで、距離画像取得時の死角を無くすことができる。動画のままの処理を可能とし、検査において必要な各部の寸法の測定を同時に処理できるので、処理時間を削減して処理速度を向上させるとともに、再検査数を減少できるので、検査員に対する負担を軽減させることができる。
なお、3次元で画像形状を取得する類似する方法として、2台のカメラにより撮影して奥行き情報を計算するステレオカメラによる方法が知られているが、この場合、各カメラにより撮影される2つの画像の対応点を検出し、一致させた上で奥行きを計算する必要があり、画像同士がミスマッチングしたり、処理に時間を要したりすることになる。本願発明では、距離画像センサ12により検査対象物の形状と奥行き情報とを同時に取得するため、ステレオカメラを用いるときのような画像同士のミスマッチングや対応点の検出など不要な処理時間を短縮することができる。
【0026】
実施形態2
図5は、実施形態2に係る検査補助装置の概略構成図である。同図では、検査員Hによる動作が確認できるように、検査対象であるタイヤTを含み、このタイヤTを検査する検査員Hの動作が撮影できるように、検査員Hの左前方に画像取得手段2を配置したものである。
本発明の検査補助装置1の他の適用例として、タイヤの検査を実施する検査員の動作を監視する監視装置として機能させることも可能である。なお、検査補助装置1の構成は、同一であり、画像処理手段3により処理される検査対象が異なる点で相違する。上記実施形態1で示した同一構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0027】
本実施形態2では、画像取得手段2の距離画像センサ12で撮影された距離画像から画像処理手段3の検査対象検出手段21により検査対象である検査員Hを検出し、検出された検査員Hをモデリング手段22により人体の骨格モデルを作成し、フレーム毎に作成される骨格モデルを追跡することで検査員の動作や姿勢の良否を追跡判定手段24により判定する。
【0028】
検査対象検出手段21による検査員Hの検出は、記憶手段にあらかじめ人体の部位別の比較モデルを記憶させ、機械学習させておくことで実行される。例えば、検査員Hは、それぞれ体型が異なるため、特定の人モデルによって、検査員による検査動作を登録しても体型の違いによって検出できない場合がある。そこで、検査員全員に対して個別に所定の動作を行わせ、そのときの動きを複数の方向から距離画像センサ12により撮影して、動作に関する距離画像を取得する。
そして、この距離画像の各フレームに撮影された検査員Hについて、頭部,左右肩,肩中心,左右肩,肩中心,左右肘,左右手首,左右手,左右尻,尻中心,左右膝,左右足首,左右足,脊椎など体の部位のうち、連続する体の部位が含まれるように距離画像から比較モデルMを作成する。具体的には、頭部と肩中心を結ぶ頸部、肩中心と左右肩とを結ぶ肩峰部、左右肩と左右肘とを結ぶ上腕部、左右肘から左右手首までを結ぶ前腕部、肩中心から尻中心までを結ぶ脊柱部、尻中心から左右尻を結ぶでん部、左右尻から左右膝までを結ぶ大腿部、左右膝から足首までを結ぶ下腿部などを含むように比較モデルMを作成し、体の全身の動作を紐付けする。このように分類された比較モデルMは、上記体の部位毎に分類し、さらに部位毎の関係について紐付けされるように機械学習させて決定木を作成して記憶手段に記憶させる。つまり、上記体の各部位を繋ぐ名称毎に分類して記憶手段に記憶させておく。
【0029】
このように人体の各部位をあらかじめ学習させておくことで、距離画像から検査員と検査員以外のものとを区別できるとともに、距離画像センサ12のフレーム内に複数の検査員Hが撮影された場合でも、距離画像に含まれる距離情報から対応する距離の近傍に比較モデルをマッチングさせて人を検出できるので、例えば、距離画像で同じ大きさで撮影されても、遠くにいる背の高い検査員や近くにいる背の低い検査員とを区別して対象となる検査員を検出できる。また、距離画像に比較モデルをマッチングさせるだけで体型や姿勢にかかわらず、検査員を距離画像からリアルタイムに検出することができる。
【0030】
上記検査対象検出手段21による検査員の検出は、動画として撮影された距離画像のフレーム毎に、記憶手段にあらかじめ記憶させておいた比較モデルをマッチングさせ、決定木により人体の各部位のどこに相当するかの識別がなされる。本実施形態では、上述の人体の20の部位のうち、
図6(a)乃至(c)に示すように、上半身の部位を検出するものとして説明する。
【0031】
モデリング手段22は、距離画像にマッチングした比較モデルMにより頭部30,左右肩31L,R、肩中心32、左右肘33L,R、左右手首34L,R、左右手35L,R、左右尻36L,R、尻中心37、脊椎38に相当する位置を設定し、頭部30と肩中心32とを結ぶ頸部40、肩中心32と左右肩31L,Rとを結ぶ左右肩峰部41L,R、左右肩31L,Rと左右肘33L,Rとを結ぶ左右上腕部42L,R、左右肘33L,Rから左右手首34L,Rまでを結ぶ左右前腕部43L,R、肩中心32から尻中心37までを結ぶ脊柱部からなる検査員Hの骨格モデルを生成する。
【0032】
追跡判定手段24は、上記のように生成された骨格モデルの動きに基づいて検査員の検査動作や検査姿勢を検出し、記憶手段に記憶された検査手順や検査手順に応じた動作及び疲労の状態を判定する。
検査動作は、検査手順に設定される複数の検査項目の各項目毎に動作が規定されるため、あらかじめ検査動作の検査用比較モデルを作成し、記憶手段に記憶させておく。
追跡判定手段24では、検査対象検出手段22でモデル化された骨格モデルに対して検査用比較モデルをマッチングさせて、マッチング率の変化を追跡することで、骨格モデルの動きを追跡し、マッチング率の変化が閾値以上のときには記憶手段に登録された検査手順と異なる動作を行なったものとして判定する。例えば、検査員が異なる手順や異なる検査方法を行なったときには、検査エラーを図外の報知手段により検査員に対して報知する。これにより、検査の質を向上させることができる。
【0033】
例えば、検査員に疲労が生じた場合、検査動作が鈍くなったり、緩慢が生じたりすることで、検査姿勢や検査の腕の動く範囲が狭まったりする。このような場合、タイヤ一本当たりの検査に要する検査時間を超過したり、正規の範囲を検査しなくなったりする虞があるとともに、検査中の不注意によるケガや検査ミスを防止するため、このような状態が継続した場合には追跡判定手段24は、検査員の交代要員が常駐する待機室に交代を報知することで、十分に休憩した検査員に交代させることができるので、検査効率の向上とともに、検査精度を向上させることができる。
【0034】
図6(a)乃至(c)は、検査員の検査動作の一例を示すものであって、検査補助装置1により作業者の姿勢及び動作をリアルタイムで監視する。同図では、検査員Hによる動作を撮影したときの人影及び骨格モデルを示したものである。
【0035】
以下、
図6(a)乃至図(c)を用いて、実施形態2にかかる検査補助装置1の動作について説明する。
タイヤ検査作業場のタイヤを検査する所定位置に検査員を配置して、検査員Hに両腕を広げたり、両腕を回転させたりして、画像取得手段2によりその動作を撮影させる。この検査員Hによる動作は、カメラ11と赤外線カメラ14により撮影されたカラー画像及び距離画像は、動画として画像処理手段3に逐次出力され、距離画像において検査員Hが認識されるとともに、モデリング手段22により骨格モデルとしてモデル化され、表示手段5上にカラー画像に重ね合わせて表示される。
【0036】
撮影された距離画像は、検査対象検出手段21によりフレーム毎に比較モデルMがマッチングされて、フレーム毎に人の各部位、ここでは、頭部30、左右肩31L,R、肩中心32、左右肘33L,R、左右手首34L,R、左右手35L,R、左右尻36L,R、尻中心37、脊椎38が検出される。検出された前述の部位は、モデリング手段22により骨格モデルとして逐次処理され、検査員Hの動作が追跡されることになる。
【0037】
追跡判定手段24は、骨格モデルを構成する要素の時間毎のマッチング率の変化を追跡して検査員Hの動作や姿勢を比較判定する。
図6(a)乃至(c)に示す動作は、タイヤ表面を検査員Hが右手35Rで、タイヤ側面の上から円周方向に左向きに撫でて、触感により異常の有無を検査している様子を示している。このとき、追跡判定手段24では、右手35Rと頭部30の動く範囲を追跡して所定の検査動作を行っているかどうかを判定する。
例えば、右手35Rによる触感とともにその部位を目視により検査するためには右手35Rとともに視線が移動する必要があり、右手35R及び頭部30の動きが連動しているかどうかを、検査用比較モデルをフレーム毎にマッチングさせることで、正しく検査をしているか、或いは疲れていないかを判定できる。
【0038】
具体的には、右肩31Rから右肘33R、右手首34R、右手35Rまでの動きを追跡する。
検査開始位置では、
図6(a)に示すように、右上腕部42Rが右肩31Rよりも上に上がり、右肘33R、右手首34R、右手35Rの順に上方に向けられている。次に検査員Hは、タイヤ表面の左上側を検査するために、タイヤ表面に手を接触させた状態で、右手35Rをタイヤ円周方向に沿って左に移動させる。このとき、
図6(b)に示すように、検査員Hは、右肘33Rを下げながら右前腕部43Rを回転させ、
図6(c)に示すように、右前腕部43Rをほぼ横向きにして右手35Rを回転させることで、1つの検査動作が終了する。
【0039】
このような検査動作において、例えば、頭部30、右肩31R、右上腕部42R及び右前腕部43Rの動きを撮影した距離画像に検査用比較モデルをマッチングさせて、マッチング率の変化を追跡することで、所定の動作が行われているかどうかが判定される。
例えば、検査員Hの疲労状態を判定するときには、検査開始位置における検査員Hの右上腕部42Rや右前腕部43Rの延長方向と、右肩31Rの位置の変化を追跡することで疲労状態にあるかそうでないかを判定できる。疲労状態の場合、右上腕部42Rを含む腕をあげるのが困難になるため、右肩31Rの位置が徐々に下がり始めることになり、この場合タイヤ側面の最上部に右手35Rが届かなくなるため、右上腕部42Rの角度が正規の検査位置よりも傾斜することになり、検査開始位置における検査用比較モデルとマッチングしないため、疲労状態であることが検出できる。
【0040】
また、疲労ではなく正しく検査動作が行われていない場合、上記疲労状態とは異なり、右肩31Rの位置が正しい位置まで上がっているものの右上腕部42Rの角度が正規の検査位置よりも傾斜しているときには、右上腕部42Rに関する検査用比較モデルとのマッチング率が悪化するため、タイヤ側面の最上部に右手35Rが届いていないものとして判定され、正しい検査動作を実行していないものとして検出させることができる。
したがって、上記構成の検査補助装置1によれば、従来のように別室で控える交代作業員に監視させることなく、現在検査している検査員Hの検査動作の疲労状態などを自動で検出できる。
【0041】
なお、距離画像センサ12は、赤外線投光器13から照射された赤外線を短周期でタイヤ表面に点滅照射させて、タイヤ表面からの反射光が、受光素子の画素毎に到達する時間の時間差を計算して距離画像センサ12から対象物までの距離を検出するように構成しても良い。この場合、一般的には赤外線などの不可視光をパルス変調して赤外線カメラの視野内に照射し,赤外線カメラの受光部であるイメージ・センサ側でこのパルスの位相遅れを計測し、対象物までの往復の距離を割り出すことで3次元情報を取得できる。
【0042】
なお、例えば、本願発明の検査補助装置1として、MICROSOFT CORPORATION(登録商標)のKINECT(登録商標)を用いると装置構成を単純化することができる。