(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231304
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】化粧料用チューブ容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 35/02 20060101AFI20171106BHJP
B65D 35/10 20060101ALI20171106BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20171106BHJP
B32B 1/06 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
B65D35/02 R
B65D35/10 B
B32B15/08 F
B32B1/06
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-126389(P2013-126389)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-744(P2015-744A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156824
【氏名又は名称】関西チューブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117145
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 純
(72)【発明者】
【氏名】大野 二三一
(72)【発明者】
【氏名】伊東 直彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】白井 健太郎
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−006981(JP,A)
【文献】
実開平07−033859(JP,U)
【文献】
特開2000−043210(JP,A)
【文献】
特開2010−143623(JP,A)
【文献】
特公平01−032110(JP,B2)
【文献】
実開昭57−171644(JP,U)
【文献】
実開昭57−111530(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/00−37/00
B32B 1/06
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドシームにより接着され円筒状に加工された積層チューブ容器の胴部において、原反である金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート層の外側方向の表面に凸版印刷による印刷層が形成され、当該印刷層の外側方向の表面全体にシリコーン系材料を含有しないプライマー層が塗布され、当該プライマー層の外側方向の表面全体を透明又は半透明の溶融樹脂によって被覆された押出コート層が形成されていることを特徴とする化粧料用チューブ容器。
【請求項2】
サイドシームにより接着され円筒状に加工された積層チューブ容器の胴部において、原反である金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート層が形成され、当該ラミネート層の外側方向の表面全体にアンカーコート層が形成され、当該アンカーコート層の外側方向の表面にノンインパクト方式により透明又は白色の印刷部分を含み表面全体に印刷層が形成され、更に当該印刷層の外側方向の表面全体を透明又は半透明の溶融樹脂によって被覆された押出コート層が形成されていることを特徴とする化粧料用チューブ容器。
【請求項3】
前記押出コート層に着色樹脂が配合されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一に記載された化粧料用チューブ容器。
【請求項4】
金属層の両面に樹脂層が積層された長尺のラミネート層の表面に凸版印刷を使用して印刷層を形成した後、当該印刷層の外側方向の表面全体にシリコーン系材料を含有しないプライマーを塗布したものを巻き取ることによってロール状の原反とした後、当該ロール状の原反を順次繰り出し、短手方向両端を重ね合わせて重ね合わせ部を形成し、当該重ね合わせ部をサイドシームにより接着して原反を円筒状に加工した後、透明又は半透明の溶融樹脂を円筒状に加工された原反の表面全体に被覆することによって押出コート層を形成した後、当該原反をチューブ容器の胴部の長さに順次切断することを特徴とする化粧料用チューブ容器の製造方法。
【請求項5】
金属層の両面に樹脂層が積層された長尺のラミネート層の表面全体にアンカーコート層を形成し、当該アンカーコート層の表面にノンインパクト方式により透明又は白色の印刷部分を含み表面全体に印刷層を形成したものを巻き取ることによってロール状の原反とした後、当該ロール状の原反を順次繰り出し、短手方向両端を重ね合わせて重ね合わせ部を形成し、当該重ね合わせ部をサイドシームにより接着して原反を円筒状に加工した後、透明又は半透明の溶融樹脂を円筒状に加工された原反の表面全体に被覆することによって押出コート層を形成した後、当該原反をチューブ容器の胴部の長さに順次切断することを特徴とする化粧料用チューブ容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度の印刷層を有する化粧料用チューブ容器に関し、特に印刷層と外層樹脂との剥離を防止するとともに、印刷工程を高速化し、小ロットでの受注生産にも低コストで対応可能な化粧料用チューブ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、メイクアップ剤、ボディーパウダー、スキンケア剤、毛髪手入れ用製剤等の高級化粧品が充填された化粧料用容器が知られている。
かかる化粧料用容器は、内容物に関するブランドイメージを維持向上させるために、歯磨粉等が充填された他の汎用のチューブ容器とは差別化が図られている。例えば、汎用のチューブ容器に見られるサイドシーム部における表面の凹凸が少ない。化粧料用容器においては、サイドシームした後に合成樹脂層を形成することによりサイドシーム部における表面の凹凸を除去することが知られている。
又、化粧料用容器における印刷は、汎用のチューブ容器の印刷よりも金属色や高精細な印刷による高級感が要求される。
例えば、化粧料用容器として高級感を醸し出すために、サイドシーム部への印刷を施すことが知られている。従来の化粧品、薬剤及び歯磨粉等に用いられるラミネートチューブは、胴部に形成されているサイドシーム部に印刷をすることができないのが現状であった。
更にこのような化粧料用容器は短ライフサイクルの商品であり単納期品となる傾向がある。すなわち、期間限定品であったり、色や内容物のフレーバー等は一つのシリーズで少量多品種の企画商品である場合が多い。そのため、製品の販売期間が短く、リニューアルにより製品デザインの変更等が頻繁に行われる点に特徴を有する。
このような高級化粧品が充填される化粧料用容器としては、ポリホイルチューブが知られている。ポリホイルチューブに関する文献としては、特許文献1及び特許文献2などが挙げられる。
【0003】
かかるポリホイルチューブは、原反を円筒状にサイドシームした後に、サイドシームを含むチューブの胴部全体を合成樹脂で被覆する点に特徴を有する。サイドシームした後に合成樹脂を被覆することにより、サイドシーム部における重ね合わせた部分の継ぎ目が見かけ上なくなり、凹凸も減少するため外観が美麗に仕上がる。
またサイドシーム部の凹凸が減少することから、サイドシーム部を含む胴部全体に印刷することが可能となる。
しかし、ポリホイルチューブにおける胴部表面への印刷は、合成樹脂で被覆した後に円筒状に加工された原反を丁寸に切断した後に、1本ずつ曲面印刷機を用いて行っているのが現状である。この際に用いられる曲面印刷機はドライオフセットの凸版印刷機となるため、印刷の再現性や美麗性に劣り、色のかけ合わせができないために、写真印刷のような高精度の印刷は不可能であった。また、チューブの胴部の外周に1本ずつ曲面印刷を行うことから、印刷工程に時間がかかるため、生産効率が低下する原因の一つになっていた。更に、曲面印刷のための特殊な設備が必要であり、曲面印刷機は非常に高価であり、総合的なコストが高騰してしまう。
【0004】
一方、原反を円筒状に加工する前の工程で、原反に直接オフセット印刷、グラビア印刷等の凹版印刷、又はスクリーン印刷を行うことは可能である。又、グラビア印刷等を用いれば、高精度の印刷が可能となる。更に、サイドシーム部を位置合せをした上で印刷を施せば、全面印刷をすることも原理的には可能である。すなわち、従来のラミネートチューブの製造方法によりスリーブを形成することができる。例えば、特許文献3の特許請求の範囲には、原反を円筒状に加工する前の工程で印刷層を形成する態様が開示されている。かかる特許文献3に開示されているチューブに、上述したグラビア印刷等の印刷方式を組み合わせれば、高精度な印刷が可能となり、サイドシーム部の凹凸のないポリホイルチューブを生産することが可能となる。
しかし、特許文献3における
図2及びその説明から明らかなように、グラビア印刷等は通常フィルム層の面上に裏印刷により行われる。これはグラビア印刷は凹版を使用するため、印圧をかけることができず積層されたラミネート原反(通常200〜300μm程度)の偏肉(±30μm)の影響を受け、原反にインキがのらず抜けが発生することから、ラミネート層の上に直接グラビア印刷を施すことができないからである。又、印刷面を保護するとともに、外側方向からみた場合、印刷層の上にフィルム層が存在することから印刷部分に光沢が生じ見栄えを良くするためである。
【0005】
しかし、上述したような裏印刷されたグラビア印刷をポリホイルチューブに用いた場合には、サイドシームした後に合成樹脂層を形成することから、印刷層上にフィルム層(一般的には10〜50μm厚)と合成樹脂層の二層が最低限形成されることなり、印刷がくすんでしまうという問題が生じた。又、グラビア印刷を裏印刷したフィルムと原反となるラミネート層とを張り合わせるため、広巾で対応する必要があり、チューブ容器の生産工程が複雑化するという問題点があった。すなわちグラビア印刷は1200mm巾のフィルムに印刷されるのが一般的である。そして、容器の胴部に用いられる原反が200mmとすると、巾方向に5〜6面程度容器の胴部の印刷を並べる必要がある。この場合、次の工程である円筒状に加工する前に、1本の容器の胴部巾に印刷されたフィルムを裁断する工程が必要となるのである。
一方、グラビア印刷をフィルムの表面に印刷した場合や、凸版印刷を使用して表印刷とした場合、印刷層を保護するために全面にオーバーコートニスを塗布する必要がある。この場合、原反を円筒状に加工する際に、このようなオーバーコートニスが塗布された部分を重ね合わせてサイドシームする必要が生じる。この際の問題点としては、オーバーコートニスを塗布した部分の接着性が低下するという問題があった。そのため、ポリホイルチューブに凸版印刷を用いる場合には、サイドシーム部にはニスを塗れない。すなわちサイドシーム部を含む胴部全体への表印刷は現実には不可能となっている。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本願の発明者は表印刷について研究した。その結果、サイドシームの上記問題点は、オーバーコートニスに含まれるシリコーン系の材料に起因していた。
又、広巾対応やフィルム層への裏印刷が必要となるグラビア印刷に変えて、凸版印刷やノンインパクトによる印刷方式を採用すれば、チューブ容器の生産工程を簡素化できることを見出した。
しかし、凸版印刷に用いられるUVインキは、外層である押出コート層を形成する合成樹脂との密着強度が弱いという問題が生じることが分かった。本発明者は、このような問題点を解決する手段を鋭意研究した結果、本発明に到った。
【0007】
他方、ノンインパクトによる印刷方式によれば、使用するトナー等の大きさなどを調整することによって、表面粗さ(Ra)を調整することが可能であるし、写真印刷のような高精度の印刷も可能である。
しかし、表面粗度の高い原反の表面にノンインパクト方式で印刷するのは技術的に困難であることが分かった。そこで、本願の発明者は、原反の表面全体にアンカーコート層を形成した後にノンインパクト方式による印刷を施すように工夫した。
このようにして原反の表面に高精度な印刷が可能となったが、更なる問題点が生じた。それは、印刷層の外側に被覆層を形成する工程において、印刷層が形成していない下層のアンカーコート層が表面に露出している部分において剥離が散見されたのである。
【0008】
この問題に対して、本願の発明者は、原反の表面全体にアンカーコート層を形成した後、アンカコート層の表面全体を完全に印刷層で被覆した。すなわち、透明な色彩や白色の部分についても、適切な色調のトナー等を用いて、アンカーコート層の表面全体を印刷層で被覆し、アンカーコート層が表面に出てくる部分を完全になくすことにした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−59132号公報
【特許文献2】特開2011−178403号公報
【特許文献3】特公平1−32109号公報
【特許文献4】特願昭54−79988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、化粧料用チューブの容器胴部における積層剥離を防止し、かつ高精度で美麗な印刷が可能な化粧料用チューブ容器を提供することを目的とする。
また、サイドシーム上を含めチューブ胴部の表面全体に印刷することが可能な化粧料用チューブ容器を提供することを目的とする。
さらに、印刷工程を複雑化せず高速化するとともに、狭巾印刷にて小ロットでの受注生産にも低コストで対応可能な化粧料用チューブ容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために以下の構成を採用した。
(1)サイドシームにより接着され円筒状に加工された積層チューブ容器の胴部において、原反である金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート層の外側方向の表面に印刷層が形成され、当該印刷層の外側方向の表面全体を透明又は半透明の溶融樹脂によって被覆された押出コート層が形成されていることを特徴とする化粧料用チューブ容器である。
(2)前記印刷層が凸版印刷によって形成され、当該印刷層の外側方向の表面全体にシリコン系材料を含有しないプライマーが塗布されていることを特徴とする上記(1)に記載された化粧料用チューブ容器である。
【0012】
(3)前記ラミネート層の外側方向の表面全体にアンカーコート層が形成され、当該アンカーコート層の外側方向の表面にノンインパクト方式により印刷層が形成されていることを特徴とする上記(1)に記載された化粧料用チューブ容器である。
(4)前記押出コートに着色樹脂が配合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載された化粧料用チューブ容器。
(5)金属層の両面に樹脂層が積層された長尺のラミネート層の表面に印刷層を形成したものを巻き取ることによってロール状の原反とした後、当該ロール状の原反を順次繰り出し、短手方向両端を重ね合わせて重ね合わせ部を形成し、当該重ね合わせ部をサイドシームにより接着して原反を円筒状に加工した後、透明又は半透明の溶融樹脂を円筒状に加工された原反の表面全体に被覆することによって押出コート層を形成した後、当該原反をチューブ容器の胴部の長さに順次切断することを特徴とする化粧料用チューブ容器の製造方法である。
【0013】
(6)前記印刷層が、凸版印刷により形成されたものであることを特徴とする上記(5)に記載された化粧料用チューブ容器の製造方法である。
(7)前記長尺のラミネート層の表面全体に、アンカーコート層を形成し、当該アンカーコート層の表面にノンインパクト方式により印刷層が形成されることを特徴とする上記(5)に記載された化粧料用チューブ容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、化粧料用チューブの容器胴部における積層剥離を防止し、かつ高精度で美麗な印刷が可能な化粧料用チューブ容器を提供するという効果を奏する。
又、サイドシーム上を含めチューブ胴部の表面全体に印刷することが可能な化粧料用チューブ容器を提供する。
更に、印刷工程を複雑化せず高速化するとともに、狭巾印刷にて小ロットでの受注生産にも低コストで対応可能な化粧料用チューブ容器の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る化粧料用チューブ容器の実施態様1における容器胴部の層構成を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る化粧料用チューブ容器の実施態様2における容器胴部の層構成を示す断面図である。
【
図3】実施例1に係る樹脂密着強度試験に用いた本発明に係る化粧料用チューブ容器の容器胴部
【
図4】実施例2に係る樹脂密着強度試験に用いた本発明に係る化粧料用チューブ容器の容器胴部
【
図5】実施例3に係る樹脂密着強度試験に用いた本発明に係る化粧料用チューブ容器の容器胴部
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る化粧料用チューブ容器の実施態様を
図1及び
図2に則して説明する。以下の記載はあくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
実施形態1
図1に示す如く、本発明に係る化粧料用チューブ容器10は、サイドシームにより接着され円筒状に加工された積層チューブ容器の胴部において、原反である金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート層11の外側方向の表面全体に印刷層13が形成されている点に特徴を有する。
ここで本発明に用いられるラミネート層11は、耐候性、耐薬品性等に鑑み金属箔を有するラミネート材が使用される。かかるラミネート材の具体例としては、最外層側から、PE/着色PE/PET/EMAA/Al/EMAA/共押出しシートの二軸延伸したもの(PE/Ny/EVOH/Ny/PE)/PEが用いられる。他にも、最外層側から、PE/着色PE/PE/PET/PE/EAA/Al/EAA/PEも挙げられる。金属箔を積層し、外側方向に印刷層を形成することができる材料であれば、いずれのラミネート材を使用しても良い。
【0017】
又、本発明に用いられる印刷層13は、凸版印刷によって形成するのが好ましい。凸版印刷としては、LTP印刷、活版印刷及びフレキソ印刷等が挙げられるが、取扱い容易性や製造コストの低廉化の観点から、特にLTP印刷が好ましい。
そして本発明に係る化粧料用チューブ容器10は、印刷層の外側方向の表面全体を透明又は半透明の溶融樹脂によって被覆された押出コート層15が形成されることになる。
ここで本発明に用いられる押出コート層15を形成する材料は、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリメチルメタクリル樹脂(PMMA)等が挙げられる。特に加工性や透過性の観点からは、特にポリエチレン樹脂が好ましい。更に押出コート層15を形成する材料としては、透明の溶融樹脂に代えて、半透明の溶融樹脂や、着色されたペレット樹脂を分散配合することにより予めラメ入り、パール調等に着色した溶融樹脂を用いることができ、独特の加飾効果を醸し出すことも可能である。
【0018】
このような構成を採用することにより、従来の裏印刷されたポリホイルチューブに比べて、印刷層のくすみがなくなり、高精細な印刷層を有した化粧料用チューブ容器10が提供される。
又、本発明に係る化粧料用チューブ容器10は、前記印刷層13を凸版印刷によって形成することができる。凸版印刷としては、LTP印刷、活版印刷及びフレキソ印刷等が挙げられるが、取扱いの容易性や、製造コストの低廉化の観点から、特にLTP印刷が好ましい。
かかるLTP印刷を採用する場合は、印刷層13が形成されるラミネート層11の表面にコロナ処理を施して印刷層13を形成しやすくする。又、UV硬化型インキを塗布することによって印刷し、UV照射により硬化することによって印刷層13を形成する。
また、本発明の印刷層13を前記凸版印刷によって形成した場合は、印刷層13の外側方向の表面全体にシリコーン系材料を含まないプライマー14を塗布することが好ましい。従来は裏面印刷が用いられていたので、押出コート層15とフィルムの接着については問題がなかったが、凸版印刷を用いた場合、印刷層13と押出コート層15とが直接当接することにより、十分な接着強度が得られずに剥離が生じた。そこでサイドシームを阻害しないシリコーン系材料を含まないプライマー14を全面に塗布することによって、外側方向に積層される押出コート層との接着強度の問題を解決し、かつ全面印刷が可能となった。かかるプライマー14は、0.5〜1.0μm厚で塗布することができるので、従来のグラビア印刷におけるフィルム層(10〜50μm厚)による印刷がくすむという問題も解消することができる。
【0019】
ここでプライマー14としては、有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系等、更に具体的には、塩酢ビ−アクリル系プライマー、塩酢ビ−アクリル系プライマー、サファイアコート等が挙げられる。なおプライマーとしては、接着促進剤として用いられるシリコーンを含有しない材料であれば、上記例示に限定されず、いずれの材料を用いることができる。かかるプライマー14を使用した場合、サイドシームにおける接着性の問題は生じなかった。そのため、サイドシーム部を含む容器胴部への全面印刷が可能である。
【0020】
実施形態2
図2に示す如く、本発明に係る化粧料用チューブ容器12は、ラミネート層11の外側方向の表面全体にアンカーコート層16を形成し、かかるアンカーコート層16の外側方向の表面全体にノンインパクト方式により印刷層17を形成したものである。
ここでノンインパクト方式の印刷方法としては、インクジェット方式、複写機やトナー印刷機を用いた電子写真方式、及び昇華型、溶融型熱転写機を用いた感熱転写方式が挙げられる。特に熱や紫外線(UV硬化インキ)で表面に固着し薄く均一な印刷層17を形成することができる電子写真方式が好ましい。
かかる電子写真方式を採用することによって、より高精細の印刷を形成することができる。又、サイドシーム上を含めチューブ胴部の表面全体に印刷することが可能である。更に印刷工程を高速化するとともに、小ロットでの受注生産にも低コストで対応することもできる。
【0021】
ノンインパクト方式を採用する場合は、ラミネート層11への直接印刷が困難であることから、ラミネート層11の外側方向の表面全体にアンカーコート層16を積層するのが好ましい。
又、本発明に用いられるノンインパクト方式による印刷層17の形成においては、アンカーコート層16を完全に印刷層で被覆している点が特徴である。一般的なノンインパクト方式による印刷では、色を付ける部分のみにトナー等を付着させるため、色を付けない部分についてはアンカーコート層16が表面に現わることによる。このような状態で化粧料用チューブ容器を製造すると、押出コート層18と印刷層17との間において剥離が生じることになる。
そこで本発明においては、原反の表面全体にアンカーコート層16を形成した後、アンカーコート層16の透明な色彩や白色の部分についても、適切な色調のトナー等を用いて、アンカーコート層16の表面全体を印刷層で被覆し、アンカーコート層16が表面に出てくる部分を完全になくしている点に特徴を有している。
ここでアンカーコート層16を形成する材料としては、有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系等、更に具体的には、塩酢ビ−アクリル系材料、塩酢ビ−アクリル系材料、シリコーン系材料、サファイアコート等が挙げられる。
【0022】
実施形態3
次に本発明に係る化粧料用チューブ容器の製造方法を以下に説明する。
本発明に係る化粧料用チューブ容器は、第一に金属層の両面に樹脂層が積層された長尺のラミネート層を作成する。ここで金属層はアルミ箔で形成するのがガスバリア性、耐薬品性等の観点から好ましい。また金属層の両面に積層される樹脂層としては、ポリエチレン樹脂(PE)、アイオノマー樹脂(IO)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、熱可塑性ポリエステル樹脂(PET)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、6ナイロン(Ny)、ポリアミド樹脂(PA)等が挙げられる。もちろん、化粧料用チューブ容器の原反として使用可能な樹脂であれば、この他の樹脂を用いても良い。また上記の樹脂を二以上積層して用いても良い。
例えば、PE/着色PE/PET/EMAA/Al/EMAA/(PE/Ny/EVOH/Ny/PE)/PE、PE/着色PE/PE/PET/PE/EAA/Al/EAA/PE等が本発明に用いられるラミネート材として挙げられる。
【0023】
次に、長尺のラミネート層の片面に印刷層を形成する。ここで印刷層はラミネート層の外側方向の全体に形成される。又、この際、アンカーコート層を形成した上に印刷層を形成するのが好ましい。ここでアンカーコート層を形成するアンカーコート剤としては、塩酢ビ−アクリル系材料、塩酢ビ−アクリル系材料、シリコーン系材料、サファイアコート等が挙げられる。もちろん、印刷層を形成するのに好適であれば、この他のアンカーコート剤を用いても良い。
次にアンカーコート層の表面全体にノンインパクト方式により印刷された印刷層を形成する。ここでノンインパクト方式とは、印刷版を用いる印刷方式や、ドットインパクト方式以外の画像形成方式を指す。例えば、インクジェット方式、電子写真方式、感熱転写方式等が挙げられる。これらの方式で印刷することにより、グラビア印刷のように版を用いないで印刷することが可能となることから、印刷工程を高速化するとともに、小ロットでの受注生産にも低コストで対応可能となる。また、特許文献4に開示されているような積層シート作成時に印刷層を形成する、いわゆる裏印刷工程を省略することができる。このような裏印刷工程は版も高価であることから、小ロットでの受注生産に低コストで対応することは困難である。さらに、インクリボン方式のようなドットインパクト方式では困難であった写真印刷も可能となり、化粧料用チューブ容器の胴部を、従来よりもより美麗に仕上げることができる。
【0024】
上記のノンインパクト方式の中でも、特に電子写真方式が最も好ましい。電子写真方式を用いることにより、高精度な画像を高速に印刷することができ、また速乾燥性にも優れるからである。
この際、ノンインパクト方式による印刷は、アンカーコート層の表面全体を完全に印刷する必要がある。電子写真方式では、透明な色彩や白色の部分には、トナーを使用せずに印刷することがあるが、透明や白色の部分であっても、適切な色調のトナーを用いて全体に印刷を施す。アンカーコート層と次の工程で形成される被覆層との接触部分をなくすことによって、被覆層と印刷層との間における剥離の問題が解消される。前記の工程後に、熱風乾燥により硬化し印刷層を形成する。
【0025】
上述の工程によって、原反のアンカーコート層上に印刷層を形成した長尺の原反を、ロール状に巻き取る。その後、かかるロール状の原反を順次繰り出し、短手方向両端を重ね合わせて重ね合わせ部を形成し、かかる重ね合わせ部をサイドシームにより接着して原反を円筒状に加工する。このようにしてパイプ状の部材が完成する。
ここでノンインパクト方式による印刷の場合、印刷層を保護する特殊なオーバーコートニスは不要であることから、サイドシームにおける接着性の問題を解消することができる。そのため、チューブ胴部の表面全体に印刷することが可能となる。
【0026】
次にパイプ状の部材の表面全面に、透明又は半透明の溶融樹脂を均一に塗布することにより押出コート層を形成する。溶融樹脂の塗布は、パイプ状の部材の直径よりやや大きな内径を有した環状の円形ダイスの中央を通過させることにより行う。かかる円形ダイスの内表面には、溶融樹脂の流出口が設けられ、パイプ状の部材が環状の円形ダイスの中央を通過する際に、均一に透明又は半透明の溶融樹脂を流出させることによって、パイプ状の部材の表面全体に溶融樹脂を被覆することができる。このように溶融樹脂によって均一にパイプ状の部材の表面全体を被覆することによって、サイドシーム部の凹凸を均一にならして円滑な表面を得ることができる。
ここで溶融樹脂としては、PE、PS、PVC、PP、AS、PET、PMMA等が挙げられる。
【0027】
次に、押出コート層が形成されたパイプ状の部材を、チューブ容器の胴部の長さに順次切断する。その後、切断された胴部にチューブ容器の肩部を射出成形や圧縮成形によって取りつけ、キャップを螺着することによって、化粧料用チューブ容器が完成する。もちろん、透明又は半透明の押出コート層を形成でき、チューブ容器胴部における印刷層を保護するのに好適であれば、上述に例示した以外の材料を用いても良い。
【実施例】
【0028】
以下、本発明に係る化粧料用チューブ容器の効果を説明するための実施例を記載する。以下の実施例は本発明に係る化粧料用チューブ容器の容器胴部における印刷層と押出コート層間における樹脂密着強度を測定した結果である。
実施例1
アルミ箔の両面にEMAAを積層した芯材を用意し、かかる芯材の上に外側に向ってPE/着色PE/PEを積層し、内側に向ってPE/共押出しシートの二軸延伸したもの(PE/Ny/EVOH/Ny/PE)とPEを積層することによってロール状の長尺の原反を製造した。
最外層であるPE層は不活性であるため、サファイアコート剤を使用してアンカーコート層を形成した。
次にアンカーコート層の表面全体に電子写真方式を使用して印刷層を形成した。本実施例1で使用した印刷機は、HP Indigo WS6000 Digital Press(ヒューレッド・パッカード社製)である。インクとして液体トナーを用い、
図3に示したフルーツ柄を印刷した。ここでフルーツ柄には、
図3に示す如く右端近傍に縦長の白抜きの部分が見られるが、この部分にも白色トナーを用いて印刷が施されている。符号1は最も色が濃い箇所であり、符号2は黄緑色基調、符号3は黄色基調、符号4は黄色−赤色基調となっている。
【0029】
次に印刷層を形成した長尺の原反を、ロール状に巻き取った。その後、かかるロール状の原反を順次繰り出し、短手方向両端を重ね合わせサイドシームにより接着しながら原反を円筒状に加工した。このようにしてパイプ状の部材を製造した。
次にパイプ状の部材の直径よりやや大きな内径を有した環状の円形ダイスの中央にパイプ状の部材を順次送り出し、円形ダイスの内側に形成された流出口より透明なポリエチレン樹脂を流出させ、押出コート層を形成した。押出コート層を乾燥させた後にサイドシーム部を切断して、
図3に示すような試験対象品を得た。
【0030】
実施例2
実施例1と同様にアンカーコート層が形成された長尺の原反を製造し、実施例1で使用した印刷機を用いて、表面に
図4に示した花柄を印刷した。ここで花柄は、
図3に示す如く全体的に白が基調となっており、上方(符号5)はほぼ白色トナーのみで印刷が施され、下方(符号6)は桃色基調で印刷されている。
【0031】
実施例3
実施例1と同様にアンカーコート層が形成された長尺の原反を製造し、実施例1で使用した印刷機を用いて、表面に
図5に示した女児柄を印刷した。ここで女児柄は、
図3に示す上方(符号7)はほぼ白色トナーのみで印刷が施され、符号8は肌色基調、符号9は黄色−紫色等多種類の色調で印刷されている。
【0032】
上記のようにして製造された3種類の試験対象品について、押出コート層と印刷層との間における樹脂の密着強度を測定した。かかる測定は、筒状に形成された検体の胴部を切り開いて15mm巾に切断し、内層より切れ込みを入れ、印刷層と押出コート層の層間を剥離させ、剥離させた両端をオートグラフ試験装置に挟み込み、300mm/minの速度で引っ張った際の密着強度を測定することにより行った。密着強度の測定結果を以下に示す。
【表1】
【0033】
アンカーコート層と押出コート層との樹脂密着強度は「0」と考えられるため、表1より明らかなように、本発明に係る化粧料用チューブ容器用の容器胴部においては、積層剥離が発生し難いことが実証された。
また、化粧料用チューブ容器用の容器胴部に、高精度な写真印刷が可能であることが実証された。
さらに、サイドシーム上を含めチューブ胴部の表面全体に印刷することが可能であることが実証された。
上記の実験では、本発明に係る化粧料用チューブ容器の製造方法を用いることにより、印刷工程を高速化するとともに、小ロットでの受注生産にも低コストで対応可能であることも実証された。
【符号の説明】
【0034】
10,12 化粧料用チューブ容器
11 ラミネート層
13,17 印刷層
14 プライマー
15,18 押出コート層
16 アンカーコート層