特許第6231318号(P6231318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西川ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000002
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000003
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000004
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000005
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000006
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000007
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000008
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000009
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000010
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000011
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000012
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000013
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000014
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000015
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000016
  • 特許6231318-センサー付きプロテクター 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231318
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】センサー付きプロテクター
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20171106BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B60J5/00 D
   G01L5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-149583(P2013-149583)
(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公開番号】特開2015-20549(P2015-20549A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】松本 美智彦
(72)【発明者】
【氏名】馬場 英一
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−137808(JP,A)
【文献】 特開平07−096740(JP,A)
【文献】 実開昭60−165246(JP,U)
【文献】 特開平10−100678(JP,A)
【文献】 特開2012−194173(JP,A)
【文献】 特開平10−048071(JP,A)
【文献】 特開2010−015696(JP,A)
【文献】 特許第3291233(JP,B2)
【文献】 特開2005−114395(JP,A)
【文献】 特開2001−297842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアやサンルーフなどのように、車体の開口部を開閉する開閉物の周縁や、前記開口部の周縁に取付けられる取付基部と、その取付基部に一体成形され、それぞれ導電材で覆われた2本の芯線が空間部を介して設けられた中空部を備え、前記開閉物の閉時に前記開閉物と前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知し、端末部分では前記芯線が、制御装置又は電気部品に接続されたリード線に電気的に接続されるとともに、前記空間部を塞ぐように、インサートの一端側が圧入された状態で型成形されてなるセンサー付きプロテクターであって、
前記インサートは、その一端側を、非導電材からなる中央板を導電材からなる上下板で挟み込んだ構造として、前記インサートが圧入された状態では前記上下板を、前記2本の芯線を覆う導電材にそれぞれ接触させるとともに、前記上下板には前記リード線がそれぞれ固定されてなり、
しかも、前記上下板の表面には、前記リード線がそれぞれ納められる配線溝部が形成されるとともに、前記配線溝部に納められた前記リード線が前記上下板の表面から浮き上がることを前記リード線に当接して規制する押さえ部材が設けられていることを特徴とするセンサー付きプロテクター。
【請求項2】
自動車のドアやサンルーフなどのように、車体の開口部を開閉する開閉物の周縁や、前記開口部の周縁に取付けられる取付基部と、その取付基部に一体成形され、それぞれ導電材で覆われた2本の芯線が空間部を介して設けられた中空部を備え、前記開閉物の閉時に前記開閉物と前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知し、端末部分では前記芯線が、制御装置又は電気部品に接続されたリード線に電気的に接続されるとともに、前記空間部を塞ぐように、インサートの一端側が圧入された状態で型成形されてなるセンサー付きプロテクターであって、
前記インサートは、その一端側を、非導電材からなる中央板を導電材からなる上下板で挟み込んだ構造として、前記インサートが圧入された状態では前記上下板を、前記2本の芯線を覆う導電材にそれぞれ接触させるとともに、前記上下板には前記リード線がそれぞれ固定されてなり、
しかも、前記上下板の表面には、前記リード線がそれぞれ差し込まれる穴が形成されていることを特徴とするセンサー付きプロテクター。
【請求項3】
自動車のドアやサンルーフなどのように、車体の開口部を開閉する開閉物の周縁や、前記開口部の周縁に取付けられる取付基部と、その取付基部に一体成形され、それぞれ導電材で覆われた2本の芯線が空間部を介して設けられた中空部を備え、前記開閉物の閉時に前記開閉物と前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知し、端末部分では前記芯線が、制御装置又は電気部品に接続されたリード線に電気的に接続されるとともに、前記空間部を塞ぐように、インサートの一端側が圧入された状態で型成形されてなるセンサー付きプロテクターであって、
前記インサートは、その一端側を、非導電材からなる板状の構造として、その上下面からそれぞれ突出するように前記リード線を固定し、
前記インサートが圧入された状態では前記固定したリード線を、前記2本の芯線を覆う導電材にそれぞれ接触させてなることを特徴とするセンサー付きプロテクター。
【請求項4】
前記インサートの一端側の表面には、前記インサートが圧入された状態を保持する返し部材が設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のセンサー付きプロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワゴン車やワンボックスカーなどのように車体の前後に移動するスライドドアやバックドア等のドアやサンルーフなどのように、車体の開口部を開閉する開閉物と、開口部との間に指等の異物が挟み込まれると対応する信号を出力して異物の存在を検知するセンサーが組込まれたセンサー付きプロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、ワゴン車などのようにスライドドア1(あるいはバックドア)によって車体の開口部を開閉する自動車や、図10に示すように、サンルーフ2によって車体の開口部を開閉する自動車においては、センサー付きプロテクター10,20が取付けられている。
【0003】
例えば、スライドドア1の前端面には、車体前側に向けて突設され、図11に示すような、上下に延びるセンサー付きプロテクター10が取付けられている。
センサー付きプロテクター10は、図12及び図13に示すように、スライドドア1の前端面に取付けられる、車内側壁11a,車外側壁11b及び連結壁11cからなる断面略U字状の取付基部11とそれに一体成形された中空部12を備え、中空部12には、スライドドア1とボディ側開口部(フロントドア(サイドドア)の場合もある)との間に人体の一部(指や手足)などの異物が挟まった場合にその挟み込みを検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sが取付けられている(例えば、特許文献1乃至特許文献4参照)。
なお、センサー付きプロテクター10の下部では、取付基部11の車内側壁11a側に断面C字形状のチャンネル部13が一体成形されていて、感圧センサーSに接続されるワイヤーハーネスWを保持している。また、取付基部11の内側には複数の保持リップ14,14が設けられ、また取付基部11には剛性をアップさせるために断面略U字形状の芯材15が埋設されている。さらに取付基部11の車外側壁11bには装飾用リップ16が設けられている。
【0004】
センサー(感圧センサー)Sは、上下方向(長手方向)に延びる2本の芯線(電極線)31,32が、空間部33を介して設けられた導電性のゴム様弾性体34,35に埋設されるようにして中空部12内に固定されてなるもので、スライドドア1の閉時にスライドドア1とボディ側開口部との間に異物が挟み込まれると中空部12が部分的に押圧されて潰れ、ゴム様弾性体34,35が接触して2本の芯線31,32が短絡するようになっている。そして、この電気信号の変化が、センサー付きプロテクター10の下側端末部分で2本の芯線31,32に結線されたリード線36に接続された制御装置40に伝えられることによって異物の存在が検知される。なおリード線36は絶縁体で被覆された状態でワイヤーハーネスWで束ねられているが、先端は被覆部37からむき出した裸線となっている。
【0005】
センサー付きプロテクター10の下側端末部分では、図14に示すように、長手方向(図14では左方向)に引き出された2本の芯線31,32に対して、リード線36が重ね合わされ抵抗溶接やハンダ付によって結線される(図14(b))とともに、端部では空間部33が露出しているのでインサート25で塞いた後(図14(c))、図15に示すように、型成形することによって結線部M,インサート25及びワイヤーハーネスWの一部を型成形内部に埋めて露出しないようにしている。インサート25で空間部33を塞ぐのは、型成形時に型成形材料が空間部33に流れ込みセンサー機能が損なわれることを防止するためである。
また、センサー付きプロテクター10の上側端末部分でも、図16に示すように、長手方向(図16では右方向)に引き出された2本の芯線31,32に対して、抵抗器39の足が重ね合わされ抵抗溶接やハンダ付によって結線されるとともに、インサート26で空間部33を塞いた後、型成形することによって結線部M,インサート26及び抵抗器39を型成形内部に埋めて露出しないようにしている。
なお、図15及び図16では型成形の部位を点線で示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−15696号公報
【特許文献2】特許第3291233号公報
【特許文献3】特開2005−114395号公報
【特許文献4】特開2001−297842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、結線部Mや抵抗器39は型成形内部に埋められる際に射出成形圧の影響を受けるため、型成形部から露出しないように、または線が破損しないようにセンサー付きプロテクター10の下側端末部分では結線部M及びリード線36をインサート25の表面に接着剤で強固に固定して位置決めする必要があり、また、センサー付きプロテクター10の上側端末部分でも結線部M及び抵抗器39をインサート26の表面に接着剤で強固に固定して位置決めする必要があった。
このため接着工程が新たに必要になるとともに接着剤の使用が多くなると接着不良の原因になるという不具合があった。また、接着剤の使用にはバラツキが生じ易く、結線部Mや抵抗器39を安定した状態で固定することが難しい。さらに接着剤による固定では、一旦取付けられると補修や交換などの際に容易に取り外すことはできないといった問題がある。
また、2本の芯線31,32とリード線36との結線作業や、同じく2本の芯線31,32と抵抗器39の足との結線作業にバラツキが生じた場合、リード線36や抵抗器39の足が端末部の表面から飛び出すといった問題もある。
【0008】
一方、特許文献1には、端末部を型成形する際に樹脂が中空部に入り込まないようにエンドキャップを挿入するものが記載されていて、特に接着剤を使用するものではないが、型成形の際に結線部を固定する点については記載されていない。
また、特許文献2には、コードの接続部をかしめ固定できる金属片を使用するものが記載されているが溶接により固着されるので手間がかかり構造も複雑であるのに加え、インサートを含め、型成形の際に型成形材料が中空部に流れ込むことを防止する点については記載されていない。
さらに、特許文献3には、自動化しやすい工程により簡便に端末部を成型する方法が記載されているが、一回で型成形するものではなく複数回に分けて成形するものである。
また、特許文献4には、挟み込みセンサと電線端末とをコネクタにより導通接続するものが記載されているが、コネクタには挟み込みセンサの中空部に差し込まれる挿入連結部とは別に2本の端子が挟み込みセンサ側に突出するものであるので構造が複雑であるのに加え、2本の端子を挟み込みセンサ側に設けられた金属電極の下縁に接触するように上手に位置決めしつつ挿入させる必要があるため組付けに手間がかかるといった問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、結線部を、型成形材料流れ込み防止用インサートに対して接着剤のみに頼ることなく簡易に固定しうるセンサー付きプロテクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のセンサー付きプロテクターは、自動車のドア(1)やサンルーフ(2)などのように、車体の開口部を開閉する開閉物の周縁や、前記開口部の周縁に取付けられる取付基部(11)と、その取付基部(11)に一体成形され、それぞれ導電材(34,35)で覆われた2本の芯線(31,32)が空間部(33)を介して設けられた中空部(12)を備え、前記開閉物の閉時に前記開閉物と前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部(12)が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知し、端末部分では前記芯線(31,32)が、制御装置(40)又は電気部品に接続されたリード線(36,39a,39b)に電気的に接続されるとともに、前記空間部(33)を塞ぐように、インサート(50)の一端側が圧入された状態で型成形されてなるセンサー付きプロテクター(10)であって、
前記インサート(50)は、その一端側を、非導電材からなる中央板(50C)を導電材からなる上下板(50A,50B)で挟み込んだ構造として、前記インサート(50)が圧入された状態では前記上下板(50A,50B)を、前記2本の芯線(31,32)を覆う導電材(34,35)にそれぞれ接触させるとともに、前記上下板(50A,50B)には前記リード線(36,39a,39b)がそれぞれ固定されてなり、
しかも、前記上下板(50A,50B)の表面には、前記リード線(36,39a,39b)がそれぞれ納められる配線溝部(53a,53b)が形成されるとともに、前記配線溝部(53a,53b)に納められた前記リード線(36,39a,39b)が前記上下板(50A,50B)の表面から浮き上がることを前記リード線(36,39a,39b)に当接して規制する押さえ部材(54a,54b)が設けられていることを特徴とする。
なお、ここで、「電気信号の変化」には、2本の芯線が短絡することによる変化や、静電容量の変化が含まれる。
【0012】
また本発明は、自動車のドア(1)やサンルーフ(2)などのように、車体の開口部を開閉する開閉物の周縁や、前記開口部の周縁に取付けられる取付基部(11)と、その取付基部(11)に一体成形され、それぞれ導電材(34,35)で覆われた2本の芯線(31,32)が空間部(33)を介して設けられた中空部(12)を備え、前記開閉物の閉時に前記開閉物と前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部(12)が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知し、端末部分では前記芯線(31,32)が、制御装置(40)又は電気部品に接続されたリード線(36,39a,39b)に電気的に接続されるとともに、前記空間部(33)を塞ぐように、インサート(50)の一端側が圧入された状態で型成形されてなるセンサー付きプロテクター(10)であって、
前記インサート(50)は、その一端側を、非導電材からなる中央板(50C)を導電材からなる上下板(50A,50B)で挟み込んだ構造として、前記インサート(50)が圧入された状態では前記上下板(50A,50B)を、前記2本の芯線(31,32)を覆う導電材(34,35)にそれぞれ接触させるとともに、前記上下板(50A,50B)には前記リード線(36,39a,39b)がそれぞれ固定されてなり、
しかも、前記上下板(50A,50B)の表面には、前記リード線(36,39a,39b)がそれぞれ差し込まれる穴(55a,55b)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、自動車のドア(1)やサンルーフ(2)などのように、車体の開口部を開閉する開閉物の周縁や、前記開口部の周縁に取付けられる取付基部(11)と、その取付基部(11)に一体成形され、それぞれ導電材(34,35)で覆われた2本の芯線(31,32)が空間部(33)を介して設けられた中空部(12)を備え、前記開閉物の閉時に前記開閉物と前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部(12)が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知し、端末部分では前記芯線(31,32)が、制御装置(40)又は電気部品に接続されたリード線(36,39a,39b)に電気的に接続されるとともに、前記空間部(33)を塞ぐように、インサート(50)の一端側が圧入された状態で型成形されてなるセンサー付きプロテクター(10)であって、
前記インサート(50)は、その一端側を、非導電材からなる板状の構造として、その上下面からそれぞれ突出するように前記リード線(36,39a,39b)を固定し、前記インサート(50)が圧入された状態では前記固定したリード線(36,39a,39b)を、前記2本の芯線(31,32)を覆う導電材(34,35)にそれぞれ接触させてなることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記インサート(50)の一端側の表面には、前記インサート(50)が圧入された状態を保持する返し部材(56)が設けられたことを特徴とする。
【0015】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセンサー付きプロテクターによれば、端末部分を型成形するときには、インサートの一端側を、非導電材からなる中央板を導電材からなる上下板で挟み込んだ構造とししかも上下板にリード線をそれぞれ固定して、インサートを導電材で覆われた2本の芯線間の空間部に圧入するだけで上下板は2本の芯線を覆う導電材にそれぞれ接触するようにしたので、芯線の先端とリード線の先端同士を直接結線しなくてもさらには重ね合わせなくても両者は電気的に接続される。
よって、従来例で示したように特に接着剤を使用することはなくまた抵抗溶接やハンダ付による結線も不要である。その結果、余分な工程が不要で接着不良となることもなく、一旦取付けられた後でも補修や交換などの際にはインサートを引き抜くだけで容易に取外すことができる。
【0017】
また、本発明では、上下板の表面にリード線がそれぞれ納められる配線溝部を形成するとともに納められたリード線が上下板の表面から浮き上がることをリード線に当接して規制する押さえ部材を設ける構成としたり、あるいは、上下板の表面にリード線がそれぞれ差し込まれる穴を形成した構成としたので、インサートの一端側の上下板に対するリード線の先端の固定を容易に行うことができる。
【0018】
また、本発明によればインサートの一端側を、非導電材からなる板状の構造としその上下面からそれぞれ突出するようにリード線を固定し、インサートが圧入された状態では固定したリード線自体を2本の芯線を覆う導電材にそれぞれ直接接触させるようにすることもできる。この場合も、接着剤を使用することはなくまた抵抗溶接やハンダ付による結線も不要である。そして、インサートの一端側を非導電材からなる板状の構造とするように極めて単純化できる。
【0019】
また、本発明では、インサートの一端側の表面にインサートが圧入された状態を保持する返し部材を設けたのでインサートを一旦、導電材で覆われた2本の芯線間の空間部に圧入するとインサートが容易に外れたりずれたりすることは防止される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクターの上側端末部分の要部を示す斜視図である。
図2図1に示すセンサー付きプロテクターのインサートを示す斜視図である。
図3図2に示すインサートに抵抗器を取付けた状態を示すもので、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクター下側端末部分の要部を示す斜視図である。
図5図2に示すインサートとは別の態様のインサートに抵抗器を取付けた状態を示すもので、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図6図2に示すインサートとはさらに別の態様のインサートに抵抗器を取付けた状態を示すもので、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図7図2に示すインサートの表面に返し部材を設けたものを示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る別のセンサー付きプロテクターの上側端末部分の要部を示す斜視図である。
図9】スライドドアによって開閉する自動車の側面図である。
図10】サンルーフが設けられた自動車の斜視図である。
図11図9に示すセンサー付きプロテクターを示す側面図である。
図12図11のA−A線拡大断面図である。
図13図11のB−B線拡大断面図である。
図14】従来例に係るセンサー付きプロテクター下側端末部分の型成形前の工程を順に示す斜視図である。
図15】従来例に係るセンサー付きプロテクター下側端末部分の型成形後の構成概要を示す斜視図である。
図16】従来例に係るセンサー付きプロテクター上側端末部分の型成形後の構成概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクターについて説明する。
本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクター10は、図9で示したようなスライドドア1によって車体の開口部を開閉する自動車におけるそのスライドドア1の前端面に車体前側に向けて突出するように取付けられ、スライドドア1とボディ側開口部(フロントドア(サイドドア)の場合もある)との間に人体の一部(指や手足)などの異物が挟まった場合にその挟み込みを検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sが取付けられたものであり、図11乃至図13で示した部分では、従来例で示したものと同一の構成であるが、インサート50の構成が従来例で示したインサート25とは相違するとともに、図1乃至図3に示すように、芯線(電極線)31,32と抵抗器39の足39a,39bとを電気的に接続する部分の構造が相違するものであり、又は図4に示すように、芯線(電極線)31,32と電気信号の変化から異物存在の判定を行う制御装置40に接続されたリード線36とを電気的に接続する部分の構造が相違するものである。従来例と同一部分には同一符号を付した。なお、ここで、「電気信号の変化」には、2本の芯線31,32が短絡することによる変化や、静電容量の変化が含まれる。
【0022】
このセンサー付きプロテクター10は、スライドドア21に形成されたフランジ(図示しない)に直接、取付けられる取付基部11と、その取付基部11に一体成形され、スライドドア1の閉時にスライドドア1の前端面とその前端面が対向するボディ側開口部との間に指等の異物があるとその異物に弾接する中空部12と、その中空部12に組み込まれ異物を検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sを備え、センサー(感圧センサー)Sは、上下方向(長手方向)に延びる2本の芯線(電極線(撚り線も含まれる))31,32が、空間部33を介して設けられた導電性のゴム様弾性体34,35に埋設されるようにして中空部12内に固定されてなる。
そして、センサー付きプロテクター10の上側端末部分では、図1に示すようにインサート50によって上側端末部分において開口した中空部12の空間部33が塞がれる。
【0023】
インサート50は、非導電材からなる中央板50Cを、導電材からなる上板50A及び下板50Bで挟み込んだ板状の構造で、一端側は中空部12内の空間部33に圧入される挿入部51となっていて、他端側は中空部12から外側に露出した突出部52となっている。中央板50Cは、例えば、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリエチレン・テレフタレート,ナイロン,6ナイロン、6−6ナイロン,各種熱可塑性エラストマー(TPE),TPEの内でもオレフィン系のTPOやスチレン系のTPSからなる。ここでは、インサート50の全体について中央板50Cを上下板50A,50Bで挟み込んでなる三層構造にしたが、挿入部51だけを三層構造にしてもよい。
特に限定されるわけではないが、ここでは、挿入部51の横幅よりも突出部52の横幅を小さくして段部51Sを設け、これらを覆う型成形材料に対する接触部分を多くしている。
挿入部51は、中空部12の空間部33に圧入されるように空間部33とほぼ同じ又は少し大きな断面形状により、空間部33を隙間なく塞ぐことで、その後の型成形時に型成形材料が空間部33に流れ込みセンサー機能が損なわれることを防止している。
【0024】
また、上下板50A,50Bの表面には、抵抗器39の足39a,39bの先端側がそれぞれ納められる配線溝部53a,53bが形成されている。配線溝部53a,53bは、突出部52から挿入部51側にかけて徐々に深くされた溝で抵抗器39の足39a,39bを斜めに納めて、これにより抵抗器39の足39a,39bの挿入性をよくしている。なお、配線溝部53a,53bの溝の深さは抵抗器39の足39a,39bの直径とほぼ同じ又は小さく、配線溝部53a,53bに納められた抵抗器39の足39a,39bは、上下板50A,50Bの表面から突出するようにしている。このとき、配線溝部53a,53bに納められた抵抗器39の足39a,39bの先端同士は接触しないようにしている。
【0025】
さらに、上下板50A,50Bの表面には、配線溝部53a,53bに納められた抵抗器39の足39a,39bに当接して、抵抗器39の足39a,39bが上下板50A,50Bの表面から浮き上がることを規制する押さえ部材54a,54bが設けられている。押さえ部材54a,54bの形状は特に限定されるわけではないが、ここでは配線溝部53a,53bを跨ぐ半リング状のもので抵抗器39の足39a,39bを押さえながら固定している。また、押さえ部材54a,54bについては上下板50A,50Bの表面に一つずつ設けたが複数設けるようにしてもよい。また、押さえ部材54a,54bの材質については、抵抗器39の足39a,39bが常に導電材からなる上下板50A,50Bの一部に接するものであれば非導電材で構成してもよいがここでは金属製(導電材)のものを使用した。
【0026】
そして、インサート50の挿入部51を中空部12の空間部33に圧入した状態では上下板50A,50Bを、2本の芯線31,32を覆う導電材34,35にそれぞれ接触させるようにしている。ここでは、配線溝部53a,53bに納められた抵抗器39の足39a,39bは上下板50A,50Bの表面よりも突出しているので、インサート50を圧入させると、少なくとも抵抗器39の足39a,39bは直接、2本の芯線31,32を覆う導電材34,35にそれぞれ接触させられるようになっている。
【0027】
なお、抵抗器39の本体部は、突出部52の端部に設けられた凹部52aに嵌め込まれ、安定した状態で保持されている。
【0028】
このようにインサート50の挿入部51を、上端端末部分において開口した中空部12の空間部33に圧入することで開口した部位は塞がれるとともに、導電材からなり抵抗器39の足39a,39bの先端が固定された挿入部51の表面(上板50A及び下板50B)が、2本の芯線31,32を覆う導電材34,35に接触して芯線31,32と抵抗器39が電気的に接続される。
その後、センサー付きプロテクター10の上側端末部分は型成形され、インサート50及び抵抗器39が型成形内部に埋められ露出しないようにされる。
【0029】
このようなセンサー付きプロテクター10によれば、端末部分を型成形するときには、インサート50を、非導電材からなる中央板50Cを導電材からなる上下板50A,50Bで挟み込んだ構造とししかも上下板50A,50Bには抵抗器39の足39a,39bの先端をそれぞれ固定して、インサート50を導電材34,35で覆われた2本の芯線31,32間の空間部に圧入するだけで上下板50A,50Bは2本の芯線31,32を覆う導電材34,35にそれぞれ接触するようにしたので、芯線31,32の先端と抵抗器39の足39a,39bの先端同士を直接結線しなくてもさらには重ね合わせなくても両者は電気的に接続される。
よって、従来例で示したように特に接着剤を使用することはなくまた抵抗溶接やハンダ付による結線も不要である。その結果、余分な工程が不要で接着不良となることもなく、一旦取付けられた後でも補修や交換などの際にはインサート50を引き抜くだけで容易に取外すことができる。
【0030】
また、上下板50A,50Bの表面に抵抗器39の足39a,39bがそれぞれ納められる配線溝部53a,53bを形成するとともに納められた抵抗器39の足39a,39bが上下板50A,50Bの表面から浮き上がることを抵抗器39の足39a,39bに当接して規制する押さえ部材54a,54bを設ける構成としたので、インサート50の一端側の上下板50A,50Bに対する抵抗器39の足39a,39bの先端の固定を容易に行うことができる。
【0031】
なお、本発明の実施形態では、センサー付きプロテクター10の上側端末部分において開口した中空部12の空間部33にインサート50の挿入部51を圧入して塞ぐものについて説明したが、図4に示すように、センサー付きプロテクター10の下側端末部分において開口した中空部12の空間部33にインサート50の挿入部51を圧入して塞ぐものについても適用可能である。
このとき、制御装置40に接続された2本のリード線36が被覆部37から剥き出しにされた状態で上下板50A,50Bに形成された配線溝部53a,53bに納められ、押さえ部材54a,54bが当接することによって固定される。そして、インサート50の圧入によって上下板50A,50Bの表面から突出したリード線36が直接、2本の芯線31,32を覆う導電材34,35にそれぞれ接触する。
これにより、芯線31,32の先端とリード線36の先端同士を直接結線しなくてもさらには重ね合わせなくても両者は電気的に接続される。
【0032】
また、本発明の実施形態では、上下板50A,50Bに形成された配線溝部53a,53bに抵抗器39の足39a,39bやリード線36を納めるようにしたが、図5に示すように、上下板50A,50Bに形成した穴55a,55bの中に差し込んで押さえ部材54a,54bで固定してもよい。
このとき、抵抗器39の足39a,39bは表面に突出していないので、インサート50の圧入によって抵抗器39の足39a,39bが直接、2本の芯線31,32を覆う導電材34,35にそれぞれ接触するものではないが、上下板50A,50Bの部位が導電材34,35にそれぞれ接触することで抵抗器39と2本の芯線31,32は電気的に接続されるようになっている。また、抵抗器39がインサート50に良く固定される。そして中空部12の空間部33に圧入する際にも、抵抗器39の足39a,39bの端部が2本の芯線31,32を覆う導電材34,35に引っかかったり、これらを傷付けたりすることが無い。なお穴55a,55bは予めに成形してあってもよいが、抵抗器39の足39a,39bを上下板50A,50Bに差し込んで埋めることで成形されるものでもよい。
【0033】
また、本発明の実施形態では、インサート50の全体を中央板50Cを上下板50A,50Bで挟み込んだ三層構造にしたが、非導電材を導電材で挟み込む構造であればよいので三層構造に限定されるわけではない。
また、図6に示すように、インサート50の全体(挿入部51側だけであってもよい)を非導電材からなる板状の構造として、その上下面からそれぞれ突出するように抵抗器39の足39a,39bを固定し、インサート50が圧入された状態では固定した抵抗器39の足39a,39bを、直接、2本の芯線31,32を覆う導電材34,35にそれぞれ接触させるようにしてもよい。インサート50の上下面に配線溝部53a,53bを形成してそれら配線溝部53a,53bに抵抗器39の足39a,39bの一部分が突出するように抵抗器39の足39a,39bを納めてもよいが、ここでは配線溝部53a,53bを形成することなくインサート50の上下面に抵抗器39の足39a,39bをそのまま固定している。
【0034】
さらに、図7に示すように、インサート50の上下板50A,50Bの表面に、インサート50が圧入された状態を保持するための返し部材56を複数設けるようにしてもよい。
このようにすると、返し部材56が2本の芯線31,32を覆う導電材34,35に食い込み、インサート50が中空部12の空間部33に固定されるとともに、電気的な接触も良くなる。
【0035】
また、本発明の実施形態では、図1に示したように、断面略U字状の取付基部11に一体成形された中空部12の空間部33にインサート50を圧入したが、図8に示すように、取付基部11に相当する部分がない中空部12にインサート50を圧入するものであってもよい。
また、端末部分の型成形についても、図8に示すように、インサート50の突出部52と抵抗器39の本体及び足39a,39bの外側を覆うように型成形材料によって1次シールXを施した後に、その1次シールXが施された部分と端末部分のさらに外側を覆うように同じく型成形材料によって2次シールYを施すようにしてもよい。なお、図8(a)は、2次シールYを中空部12の端末断面だけでなく端末周縁に重なるように接着させるように型成形(オーバーモールディング)したものであり、図8(b)は、2次シールYを中空部12の端末断面のみに接着させるように型成形したものであり、図1及び図4で示した型成形についても種々な方法を採ることができる。
【0036】
なお、本発明の実施形態では、スライドドア1が前後方向に移動する自動車において、スライドドア1側にセンサー付きプロテクター10を取付けたものを例にして説明したが、ボディ側開口部にセンサー付きプロテクター10を取付け、スライドドア1との間の異物を検知するようにしてよい。
また、センサー付きプロテクター10をバックドアやサンルーフ2(図10)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 スライドドア
2 サンルーフ
10 センサー付きプロテクター
11 取付基部
11a 車内側壁
11b 車外側壁
11c 連結壁
12 中空部
13 チャンネル部
14 保持リップ
15 芯材
16 装飾用リップ
20 センサー付きプロテクター
25 インサート
31,32 芯線
33 空間部
34,35 ゴム様弾性体
36 リード線
37 被覆部
39 抵抗器
39a,39b 抵抗器の足
40 制御装置
50 インサート
50A 上板
50B 下板
50C 中央板
51 挿入部
51S 段部
52 突出部
52a 凹部
53a,53b 配線溝部
54a,54b 押さえ部材
55a,55b 穴
56 返し部材
60 インサート
61 挿入部
62 突出部
63,64 リップ部
65 凹部
M 結線部
S センサー(感圧センサー)
W ワイヤーハーネス
X 1次シール
Y 2次シール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16