(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231321
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】洗車用ブラシの製造方法
(51)【国際特許分類】
A46B 13/02 20060101AFI20171106BHJP
A46D 1/04 20060101ALI20171106BHJP
B60S 3/06 20060101ALI20171106BHJP
C08J 9/06 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
A46B13/02
A46D1/04
B60S3/06
C08J9/06
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-157170(P2013-157170)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-24101(P2015-24101A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177380
【氏名又は名称】三和化工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植木 裕士
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−180780(JP,A)
【文献】
特開2011−206270(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/001473(WO,A1)
【文献】
特開2009−18597(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0104332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00−17/08
A46D 1/00−99/00
B60S 3/06
C08J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン系ポリエチレン40〜60重量部に対して、EPDM60〜40重量部からなる組成物に有機過酸化物、発泡剤、発泡助剤を添加・混練して加熱、発泡させてなり、引裂強度が70N/cm以上、95N/cm未満であるメタロセン−EPDM系独立気泡発泡体から構成されることを特徴とする洗車用ブラシの洗浄片。
【請求項2】
メタロセン系ポリエチレン40〜60重量部に対して、EPDM60〜40重量部からなる組成物に有機過酸化物、発泡剤、発泡助剤を添加・混練して架橋発泡性組成物を得、続いて、該架橋発泡性組成物を加圧下にて加熱した後、除圧して発泡体を生成させてなり、引裂強度が70N/cm以上、95N/cm未満であるメタロセン−EPDM系独立気泡発泡体から構成されることを特徴とする洗車用ブラシの洗浄片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車用ブラシの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンド等で使用されている洗車用ブラシに関し、従来より、エチレン−酢酸ビニル(EVA)樹脂の発泡体を材質とする洗浄片が知られている。しかし、EVA樹脂発泡体を材質とする洗浄片は洗車の際に車体の突起物に絡みつき、その突起物を損傷させるという問題が指摘されている。
【0003】
そこで上記の問題点を解決するために、優れた柔軟性を持つSBRやCR、EPDM等の合成ゴムや、ポリ塩化ビニル樹脂発泡体を材質とする洗浄片が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−180780号公報
【特許文献2】特開2011−206270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、合成ゴムやポリ塩化ビニル樹脂を材質とする洗浄片は車体を損傷させることはないが、引裂強度や引張強度といった機械的強度が充分でないため、長期の使用において耐久性に劣り、洗浄ブラシの断裂や摩耗をおこしてしまう問題を内在している。
【0006】
本発明者らは、重合触媒としてメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン樹脂(メタロセン系ポリエチレン)とエチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(以下、EPDMと云う)をブレンドし、有機過酸化物を添加することにより、得られる発泡体の硬度や引裂強度を制御し、洗車の際に車体を損傷させることなく、さらに優れた耐久性をもつ洗浄片及びその製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るメタロセン−EPDM系独立気泡発泡体から構成される洗浄片は、メタロセン系ポリエチレン40〜60重量部、EPDM60〜40重量部からなる組成物に有機過酸化物、発泡剤、発泡助剤を添加混練して加熱発泡させてなるものである。
【0008】
本発明に係るメタロセン−EPDM系独立気泡発泡体から構成される洗浄片の製造方法は、メタロセン系ポリエチレン40〜60重量部、EPDM60〜40重量部からなる組成物に有機過酸化物、発泡剤、発泡助剤を添加混練して加熱発泡させてなる製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、引裂強度、柔軟性、弾力性に優れたメタロセン−EPDM系独立気泡を得ることが出来るため、良好な耐久性をもち、さらに洗車の際に車体を損傷させることのない柔軟な洗浄片を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
本実施形態に係る洗車用ブラシに好適に採用し得る洗浄片はメタロセン系ポリエチレンとEPDMとをブレンドし、得られる発泡体から構成される。
【0011】
本発明でいうメタロセン系ポリエチレンとは、重合触媒としてメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂である。
【0012】
本発明でいうEPDMには、第3成分としてエチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどがあるが、特に限定されない。
【0013】
前記メタロセン系ポリエチレンとEPDMの混合割合は、メタロセン系ポリエチレン40〜60重量部に対してEPDM60〜40重量部とする。このような混合割合とすることで、好適な機械的強度と硬さを制御することができる。
【0014】
本発明でいう有機過酸化物とは、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α、α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等である。
【0015】
本発明でいう発泡剤とは、アゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等である。
【0016】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【0017】
本発明の洗浄片を構成するメタロセン−EPDM系独立気泡発泡体の製造方法は、用いた有機過酸化物や発泡剤などによる発泡温度や架橋開始温度などにより、従来公知の方法及び適宜の条件で行うことができる。特に好ましい方法及び条件を下記に記述する。
【0018】
メタロセン系ポリエチレン40〜60重量部に対してEPDM60〜40重量部からなる組成物に有機過酸化物、発泡剤、発泡助剤を添加し、これをミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。次いで、得られた発泡性樹脂組成物をプレス中の金型に充填し、一定時間加圧下にて130〜170℃で加熱し、発泡剤及び架橋剤を完全に分解させ、除圧して発泡体を得る。
【0019】
本発明において洗浄片を構成する発泡体を評価する物性としては、長期使用における耐久性を示す機械的強度として引裂強度が、柔軟性を示す硬さとして圧縮応力が挙げられる。
【0020】
本発明でいう引裂強度は、JIS K6252「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引裂強さの求め方」に記載されている方法で求めた。引裂強度が70N/cm未満の場合、通常使用時において破断することはないが、長期に渡る使用においては耐久性に劣り、95N/cm以上の場合、洗浄時に車体を損傷する可能性が高くなってしまう。
【0021】
本発明でいう圧縮応力は、ASTM D1056「Standard Specification for Flexible
Cellular Materials−Sponge or Expanded Rubber」に記載されている方法で求めた。圧縮応力が100kPa未満の場合、柔軟ではあるが長期に渡る使用においては耐久性に劣り、200kPa以上の場合、洗車時に車体を損傷する可能性が高くなってしまう。
【実施例】
【0022】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
メタロセン系ポリエチレン(商品名:INFUSE9007、密度:0.866g/cm3、MFR:0.5g/10分、ダウケミカル日本株式会社製)50重量部と、EPDM(商品名:三井EPT
K−9720、MFR:2.0g/10分、エチレン含量:77%、ジエン含量:10.4%、三井化学株式会社製)50重量部、ジクミルパーオキサイド0.4重量部、アゾジカルボンアミド1.8重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸亜鉛0.3重量部からなる組成物を160℃に加熱された、プレス内の金型(22×200×200mm)に充填し、70kg/cm2の圧力で45分間加熱し、除圧して発泡体(320×320mm)を得た。
【0024】
得られた発泡体の見掛け密度は211kg/m
3であり、引裂強度を測定したところ、89N/cmであり、耐久性に優れ、圧縮応力は152.7kPaであり、洗車の際に車体を損傷させることのない柔軟性、弾力性のある発泡体が得られた。
【実施例2】
【0025】
メタロセン系ポリエチレンの量を60重量部、EPDMの量を40重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0026】
得られた発泡体の見掛け密度は217kg/m
3であり、引裂強度を測定したところ、91N/cmであり、耐久性に優れ、圧縮応力は155.5kPaであり、洗車の際に車体を損傷させることのない柔軟性、弾力性のある発泡体が得られた。
【実施例3】
【0027】
メタロセン系ポリエチレンの量を40重量部、EPDMの量を60重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0028】
得られた発泡体の見掛け密度は221kg/m
3であり、引裂強度を測定したところ、91N/cmであり、耐久性に優れ、圧縮応力は188.3kPaであり、洗車の際に車体を損傷させることのない柔軟性、弾力性のある発泡体が得られた。
比較例1
【0029】
メタロセン系ポリエチレンの量を70重量部、EPDMの量を30重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0030】
得られた発泡体の見掛け密度は217kg/m
3であり、引裂強度を測定したところ、101N/cmであり、洗浄時に車体を損傷する可能性が高い。
比較例2
【0031】
メタロセン系ポリエチレンの量を30重量部、EPDMの量を70重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0032】
得られた発泡体の見掛け密度は229kg/m
3であり、引裂強度を測定したところ、96N/cmであり、また、圧縮応力を測定したところ、208.3kPaであり、洗車時に車体を損傷する可能性が高い。
比較例3
【0033】
メタロセン系ポリエチレンの量を80重量部、EPDMの量を20重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0034】
得られた発泡体の見掛け密度は213kg/m
3であり、引裂強度を測定したところ、97N/cmであり、洗浄時に車体を損傷する可能性が高い。
比較例4
【0035】
メタロセン系ポリエチレンの量を20重量部、EPDMの量を80重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0036】
得られた発泡体の見掛け密度は223kg/m
3であり、引裂強度を測定したところ、93N/cmであり、耐久性に優れるが、25%圧縮応力を測定したところ、207.1kPaであり、洗車時に車体を損傷する可能性が高い。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明の方法によれば、メタロセン−EPDM系独立気泡発泡体から構成される洗車用ブラシの洗浄片を得ることが出来る。本発明の方法によって製造された洗浄片は柔軟であるため、洗車時に車体を損傷させることがなく、かつ耐久性に優れるため、長期間の使用に耐え得る。