【実施例】
【0024】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0025】
図1,2において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0026】
車両1は、内部空間が車室2とされる車体3と、この車体3にサスペンション4により懸架されるそれぞれ左右一対の前車輪5および後車輪6とを備え、車体3は、上記前、後車輪5,6によって走行面7上に支持される。
【0027】
上記車室2の側面は車体3の側壁11により形成される。この側壁11の下端縁部は車体3の前後方向に延びるロッカ12で構成される。このロッカ12は板金製であって、車体3の幅方向で互いに対面するアウタ、インナパネル13,14と、これら両パネル13,14の間に挟まれるように介設される補強パネル15とを有している。
【0028】
上記ロッカ12の各パネル13〜15の各前端縁部は互いに重ね合わされてスポット溶接Sにより強固に結合される。また、上記ロッカ12は、その長手方向の各部断面が中空閉断面構造とされて大きい剛性を有し、車体3の骨格部材とされる。特に、上記ロッカ12は、車体3の前後方向に延びて車体3の骨格部材をなすものであることから、車体3の前後方向からの外力に対して大きい剛性を有している。
【0029】
上記前車輪5は、その軸心18上で、弾性変形可能なタイヤ19を支持するリム20と、このリム20と同じ軸心18上に位置してこのリム20の幅方向における外側端部がわに結合される円板形状の環状連結材21と、この環状連結材21の軸心18上に形成され、車体3がわに支持されるロータ22に対し締結具23により連結されるハブ24とを有している。上記リム20、環状連結材21、およびハブ24はアルミ合金や鉄等の金属製であって、鋳造により一体的に形成される。この場合、上記リム20とハブ24とを連結する環状連結材21は、走行面7上に車体3を支持するという機能上、径方向からの外力に対して大きい剛性を有している。なお、上記リム20と環状連結材21とは別体であってもよく、上記環状連結材21はスポークであってもよい。
【0030】
上記リム20の車体3の幅方向での内、外側端縁部20a,20bは、それぞれ車体3の幅方向の中途部20cの各端縁部から、このリム20の径方向外方に向かうよう屈曲させられる。
【0031】
車体3の平面視(
図1)で、上記ロッカ12の前端部におけるアウタパネル13は、その前端面が車体3の後方に向かうに従い外側方に向かう傾斜面27となるよう屈曲形成される。この傾斜面27は上記前車輪5の環状連結材21の後方に位置させられる。一方、上記ロッカ12の前端部におけるインナパネル14は車体3の前後方向に向かって直線的に形成される。また、上記傾斜面27における車体3の内側方の端部27a、つまり、上記パネル13〜15同士の接合部は、上記リム20の内側端縁部20aの車体3の外側方がわ近傍に位置させられる。
【0032】
ここで、上記ロッカ12の前端部におけるアウタパネル13に傾斜面27を形成したことにより、上記ロッカ12の前端部は前方に向かってのテーパ形状となり、外力に対しての剛性が低下しがちとなる。
【0033】
そこで、前記したように、ロッカ12の前端部には、上記アウタ、インナパネル13,14に加えて補強パネル15が設けられており、かつ、これら各パネル13〜15の各前端縁部がスポット溶接Sにより強固に結合されている。そして、この結合部は、上記傾斜面27における車体3の内側方の端部27aがわに相当している。
【0034】
上記構成によれば、車体3の平面視(
図1)で、上記ロッカ12の前端面を、車体3の後方に向かうに従い外側方に向かう傾斜面27となるよう形成し、この傾斜面27を上記環状連結材21の後方に位置させると共に、上記傾斜面27における車体3の内側方の端部27aを、上記リム20の内側端縁部20aの車体3の外側方がわ近傍に位置させている。
【0035】
このため、車両1の前突時に、その衝撃力Fにより、上記前車輪5が上記ロッカ12に対し後方移動したときには、まず、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわが、上記ロッカ12の前端部の傾斜面27における車体3の内側方の端部27aがわに衝突する。また、その一方、上記傾斜面27の形成によりこの傾斜面27の前方には空間が形成されたことから、上記したように前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわが上記傾斜面27の端部27aがわに衝突したとき、上記前車輪5において剛性が大きい環状連結材21が上記ロッカ12の前端部に衝突することは上記傾斜面27の前方の空間の存在により防止される。そして、この際、前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわは、その断面で見て(
図1)上記環状連結材21に対し片持ち支持されたものであることから、上記衝撃力Fに基づき屈曲するよう変形(塑性、弾性変形含む、以下同じとする)させられる。
【0036】
よって、車両1の前突時には、車体3の構成部分であるロッカ12と、車体3に懸架された前車輪5とのうち、前車輪5が前突時の衝撃力Fによって変形させられることから、車体3の変形を抑制しつつ上記衝撃力Fを効果的に緩和させることができ、これは、乗員保護にとって極めて有益である。
【0037】
また、上記衝撃力Fにより、前車輪5が更に後方移動して上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわの屈曲が進行すると、上記前車輪5は車体3の後方かつ外側方に移動し、車体3の外側方に突出しがちとなる。
【0038】
しかし、上記したように上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aはこのリム20の径方向外方に向かうよう屈曲させられているため、上記した前車輪5の後方移動に伴い上記リム20の内側端縁部20aは、上記傾斜面27における車体3の内側方の端部27aがわに掛止させられる。
【0039】
よって、前突時の衝撃力Fにより上記前車輪5が車体3の外側方に大きく突出することは防止されると共に、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわは更に屈曲するよう変形させられることとなって、車体3の変形を抑制しつつ上記衝撃力Fがより効果的に緩和される。
【0040】
なお、上記前突時には、その衝撃力Fにより、前車輪5の特に後部が車体3の外側方に向けて直ちに大きく変位することが考えられる。そして、この場合、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわが上記傾斜面27における端部27aがわに衝突しないとすると、上記したリム20の内側端縁部20aがわの屈曲による変形は得られず、つまり、上記衝撃力Fは緩和されないこととなる。
【0041】
しかし、上記したように、前突時の衝撃力Fにより上記前車輪5の後部が直ちに車体3の外側方に変位しようとしても、この際、上記リム20の内側端縁部20aは、上記傾斜面27における上記端部27aがわに掛止可能とされる。よって、この掛止によれば、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわは、より確実に上記傾斜面27における端部27aがわに衝突することとなり、この結果、前記したリム20の内側端縁部20aがわの屈曲による変形が得られて、上記衝撃力Fが緩和される。
【0042】
また、上記した前突時における衝撃力の効果的な緩和は、上記前車輪5とロッカ12との各構造や相対配置を工夫することにより達成されるのであって、衝突エネルギーを吸収するための吸収材や脆弱部を別途に設けないで足りる。よって、上記衝撃力の効果的な緩和は簡単な構成により達成され、これは、車体3の生産性の点で有益である。
【0043】
なお、前記したようにロッカ12の前端部は前方に向かってのテーパ形状となっており、このため、特に、上記ロッカ12の前端部の傾斜面27における車体3の内側方の端部27aがわは、上記テーパ形状の先端部となって剛性が低くなりがちである。
【0044】
このため、前記したように、車両1の前突時に、その衝撃力Fにより、上記前車輪5が上記ロッカ12に対し後方移動して、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわが、上記ロッカ12の前端部の上記端部27aがわに衝突したときには、
図3で示すように、上記ロッカ12の前端部の上記端部27aがわは上記衝撃力Fによって変形しがちとなる。しかし、これは車体3の一部のわずかな変形にとどまるため、乗員に大きな影響を与えることは防止される。