特許第6231329号(P6231329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6231329-車両の前部構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231329
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20171106BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B62D25/20 F
   B62D25/08 E
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-176664(P2013-176664)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-44480(P2015-44480A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077780
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 泰甫
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 文信
(72)【発明者】
【氏名】辻本 尚之
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−347662(JP,A)
【文献】 特開2013−001235(JP,A)
【文献】 特開2014−034382(JP,A)
【文献】 特開平06−008854(JP,A)
【文献】 特開平02−212280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08,25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側壁の下端縁部を構成して車体の前後方向に延びるロッカと、このロッカの前端
部の前方近傍に配置される前車輪とを備え、この前車輪が、その軸心上に位置してタイヤ
を支持するリムと、このリムの車体の幅方向における外側端部がわとハブとを連結する環
状連結材とを有し、上記リムの車体の幅方向における内側端縁部をこのリムの径方向外方
に向かうよう屈曲させた車両の前部構造において、
上記ロッカは、車体の幅方向で互いに対面するアウタパネルおよびインナパネルと、これら両パネルの間に挟まれるように介設される補強パネルとを有し、
車体の平面視で、上記ロッカの前端部における上記アウタパネルを、その前端面が車体の後方に向かうに従い外側方に向かう傾斜面となるよう屈曲形成し、この傾斜面を上記前車輪の環状連結材の後方に位置させると共に、上記ロッカの前端部におけるインナパネルを、車体の前後方向に向かって直線的に形成し、上記傾斜面における車体の内側方の前端部で上記アウタパネル、インナパネルおよび補強パネルの前端縁部同士を接合し、その接合部を、上記リムの内側端縁部の車体の外側方がわ近傍に位置させ、前突時の衝撃力により上記リムの内側端縁部が上記接合部に掛止可能とされたことを特徴とする車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が、前進走行時に、その前方の何らかの物体に衝突(前突)したとき、この前突時に車両に与えられる衝撃力を、車体の変形を抑制しつつ効果的に緩和できるようにするための車両の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の前部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の前部構造は、車体の側壁の下端縁部を構成して車体の前後方向に延びるロッカと、車体に懸架され、上記ロッカの前端部の前方近傍に配置される前車輪とを備えている。また、上記前車輪は、その軸心上に位置してタイヤを支持するリムと、このリムの車体の幅方向における外側端部がわとハブとを連結する環状連結材とを有し、上記リムの車体の幅方向における内側端縁部はこのリムの径方向外方に向かうよう屈曲させられている。
【0003】
ここで、上記ロッカは、車体の前後方向に延びるものであって、車体の前後方向からの外力に対して大きい剛性を有するものである。このため、車両の前突時に、その衝撃力により、上記前車輪が上記ロッカに対し後方移動してこのロッカの前端部に衝突したときには、上記衝撃力はほとんど緩和されることなく、そのまま車体に与えられるおそれがあり、これは、乗員にとって好ましくない。
【0004】
そこで、上記従来の技術では、車両の前突時の衝撃力により、上記前車輪が縦向き軸心回りで左右に回動することとされる。これによれば、上記前車輪がロッカの前端部に対し上記前突後に直ちに衝突することは防止されて、このロッカの前端部への衝突に至るまでの前車輪の後方移動距離が長くされる。そして、その分、上記衝撃力により車体がより大きく塑性変形させられることとなって、上記衝撃力が、より確実に緩和されることとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−85414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の技術では、車両の前突時に、その衝撃力をより確実に緩和させようとして、車体をより大きく塑性変形させるようにしているが、このような車体の大きい塑性変形は、乗員の保護を低下させる原因となるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の前突時に、車体の構成部分であるロッカと、前車輪とのうち、前車輪を前突時の衝撃力によって変形させ、もって、車体の変形を抑制しつつ上記衝撃力を効果的に緩和できるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、車体3の側壁11の下端縁部を構成して車体3の前後方向に延びるロッカ12と、このロッカ12の前端部の前方近傍に配置される前車輪5とを備え、この前車輪5が、その軸心18上に位置してタイヤ19を支持するリム20と、このリム20の車体3の幅方向における外側端部がわとハブ24とを連結する環状連結材21とを有し、上記リム20の車体3の幅方向における内側端縁部20aをこのリム20の径方向外方に向かうよう屈曲させた車両の前部構造において、
上記ロッカ12は、車体3の幅方向で互いに対面するアウタパネル13およびインナパネル14と、これら両パネル13,14の間に挟まれるように介設される補強パネル15とを有し、
車体3の平面視(図1)で、上記ロッカ12の前端部における上記アウタパネル13を、その前端面が車体3の後方に向かうに従い外側方に向かう傾斜面27となるよう屈曲形成し、この傾斜面27を上記前車輪5の環状連結材21の後方に位置させると共に、上記ロッカ12の前端部におけるインナパネル14を、車体3の前後方向に向かって直線的に形成し、上記傾斜面27における車体3の内側方の前端部で上記アウタパネル13、インナパネル14および補強パネル15の前端縁部同士を接合し、その接合部を、上記リム20の内側端縁部20aの車体3の外側方がわ近傍に位置させ、前突時の衝撃力により上記リム20の内側端縁部20aが上記接合部に掛止可能とされたことを特徴とする車両の前部構造である。
【0009】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果は、次の如くである。
【0011】
請求項1の発明は、車体の側壁の下端縁部を構成して車体の前後方向に延びるロッカと、このロッカの前端部の前方近傍に配置される前車輪とを備え、この前車輪が、その軸心上に位置してタイヤを支持するリムと、このリムの車体の幅方向における外側端部がわとハブとを連結する環状連結材とを有し、上記リムの車体の幅方向における内側端縁部をこのリムの径方向外方に向かうよう屈曲させた車両の前部構造において、
上記ロッカは、車体の幅方向で互いに対面するアウタパネルおよびインナパネルと、これら両パネルの間に挟まれるように介設される補強パネルとを有し、車体の平面視で、上記ロッカの前端部における上記アウタパネルを、その前端面が車体の後方に向かうに従い外側方に向かう傾斜面となるよう屈曲形成し、この傾斜面を上記前車輪の環状連結材の後方に位置させると共に、上記ロッカの前端部におけるインナパネルを、車体の前後方向に向かって直線的に形成し、上記傾斜面における車体の内側方の前端部で上記アウタパネル、インナパネルおよび補強パネルの前端縁部同士を接合し、その接合部を、上記リムの内側端縁部の車体の外側方がわ近傍に位置させ、前突時の衝撃力により上記リムの内側端縁部が上記接合部に掛止可能とされている。
【0012】
このため、車両の前突時に、その衝撃力により、上記前車輪が上記ロッカに対し後方移動したときには、まず、上記前車輪のリムの内側端縁部がわが、上記ロッカの前端部の傾斜面における車体の内側方の端部がわに衝突する。また、その一方、上記傾斜面の形成によりこの傾斜面の前方には空間が形成されたことから、上記したように前車輪のリムの内側端縁部がわが上記傾斜面の端部がわに衝突したとき、上記前車輪において剛性が大きい環状連結材が上記ロッカの前端部に衝突することは上記傾斜面の前方の空間の存在により防止される。そして、この際、前車輪のリムの内側端縁部がわは、その断面で見て上記環状連結材に対し片持ち支持されたものであることから、上記リムの内側端縁部がわは、上記傾斜面の端部がわから上記衝撃力に基づく大きい反力が与えられて、屈曲するよう変形させられる。
【0013】
よって、車両の前突時には、車体の構成部分であるロッカと、前車輪とのうち、前車輪が前突時の衝撃力によって変形させられることから、車体の変形を抑制しつつ上記衝撃力を効果的に緩和させることができ、これは、乗員保護にとって極めて有益である。
【0014】
また、上記衝撃力により、前車輪が更に後方移動して上記前車輪のリムの内側端縁部がわの屈曲が進行すると、上記前車輪は車体の後方かつ外側方に移動しがちとなる。
【0015】
しかし、上記したように前車輪のリムの内側端縁部はこのリムの径方向外方に向かうよう屈曲させられているため、上記した前車輪の後方移動に伴い上記リムの内側端縁部は、上記傾斜面における車体の内側方の端部がわに掛止させられる。
【0016】
よって、前突時の衝撃力により上記前車輪が車体の外側方に大きく突出することは防止されると共に、上記前車輪のリムの内側端縁部がわは更に屈曲するよう変形させられることとなって、車体の変形を抑制しつつ上記衝撃力がより効果的に緩和される。
【0017】
なお、上記前突時には、その衝撃力により、前車輪の特に後部が車体の外側方に向けて直ちに大きく変位することが考えられる。そして、この場合、上記前車輪のリムの内側端縁部がわが上記傾斜面における端部がわに衝突しないとすると、上記したリムの内側端縁部がわの屈曲による変形は得られず、つまり、上記衝撃力は緩和されないこととなる。
【0018】
しかし、上記したように、前突時の衝撃力により上記前車輪の後部が直ちに車体の外側方に変位しようとしても、この際、上記リムの内側端縁部は、上記傾斜面における上記端部がわに掛止可能とされる。よって、この掛止によれば、上記前車輪のリムの内側端縁部がわは、より確実に上記傾斜面における端部がわに衝突することとなり、この結果、前記したリムの内側端縁部がわの屈曲による変形が得られて、上記衝撃力が緩和される。
【0019】
また、上記した前突時における衝撃力の効果的な緩和は、上記前車輪とロッカとの各構造や相対配置を工夫することにより達成されるのであって、衝突エネルギーを吸収するための吸収材や脆弱部を別途に設けないで足りる。よって、上記衝撃力の効果的な緩和は簡単な構成により達成され、これは、車体の生産性の点で有益である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車両の前側部の平面断面図である。
図2】車両の全体側面図である。
図3】前突時の作用を説明する図で、図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の車両の前部構造に関し、車両の前突時に、車体の構成部分であるロッカと、前車輪とのうち、前車輪を前突時の衝撃力によって変形させ、もって、車体の変形を抑制しつつ上記衝撃力を効果的に緩和できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0022】
即ち、車両の前部構造は、車体の側壁の下端縁部を構成して車体の前後方向に延びるロッカと、このロッカの前端部の前方近傍に配置される前車輪とを備える。この前車輪は、その軸心上に位置してタイヤを支持するリムと、このリムの車体の幅方向における外側端部がわとハブとを連結する環状連結材とを有する。上記リムの車体の幅方向における内側端縁部はこのリムの径方向外方に向かうよう屈曲させられる。
【0023】
車体の平面視で、上記ロッカの前端面は、車体の後方に向かうに従い外側方に向かう傾斜面となるよう形成される。この傾斜面は上記環状連結材の後方に位置させられると共に、上記傾斜面における車体の内側方の端部は、上記リムの内側端縁部の車体の外側方がわ近傍に位置させられる。
【実施例】
【0024】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0025】
図1,2において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0026】
車両1は、内部空間が車室2とされる車体3と、この車体3にサスペンション4により懸架されるそれぞれ左右一対の前車輪5および後車輪6とを備え、車体3は、上記前、後車輪5,6によって走行面7上に支持される。
【0027】
上記車室2の側面は車体3の側壁11により形成される。この側壁11の下端縁部は車体3の前後方向に延びるロッカ12で構成される。このロッカ12は板金製であって、車体3の幅方向で互いに対面するアウタ、インナパネル13,14と、これら両パネル13,14の間に挟まれるように介設される補強パネル15とを有している。
【0028】
上記ロッカ12の各パネル13〜15の各前端縁部は互いに重ね合わされてスポット溶接Sにより強固に結合される。また、上記ロッカ12は、その長手方向の各部断面が中空閉断面構造とされて大きい剛性を有し、車体3の骨格部材とされる。特に、上記ロッカ12は、車体3の前後方向に延びて車体3の骨格部材をなすものであることから、車体3の前後方向からの外力に対して大きい剛性を有している。
【0029】
上記前車輪5は、その軸心18上で、弾性変形可能なタイヤ19を支持するリム20と、このリム20と同じ軸心18上に位置してこのリム20の幅方向における外側端部がわに結合される円板形状の環状連結材21と、この環状連結材21の軸心18上に形成され、車体3がわに支持されるロータ22に対し締結具23により連結されるハブ24とを有している。上記リム20、環状連結材21、およびハブ24はアルミ合金や鉄等の金属製であって、鋳造により一体的に形成される。この場合、上記リム20とハブ24とを連結する環状連結材21は、走行面7上に車体3を支持するという機能上、径方向からの外力に対して大きい剛性を有している。なお、上記リム20と環状連結材21とは別体であってもよく、上記環状連結材21はスポークであってもよい。
【0030】
上記リム20の車体3の幅方向での内、外側端縁部20a,20bは、それぞれ車体3の幅方向の中途部20cの各端縁部から、このリム20の径方向外方に向かうよう屈曲させられる。
【0031】
車体3の平面視(図1)で、上記ロッカ12の前端部におけるアウタパネル13は、その前端面が車体3の後方に向かうに従い外側方に向かう傾斜面27となるよう屈曲形成される。この傾斜面27は上記前車輪5の環状連結材21の後方に位置させられる。一方、上記ロッカ12の前端部におけるインナパネル14は車体3の前後方向に向かって直線的に形成される。また、上記傾斜面27における車体3の内側方の端部27a、つまり、上記パネル13〜15同士の接合部は、上記リム20の内側端縁部20aの車体3の外側方がわ近傍に位置させられる。
【0032】
ここで、上記ロッカ12の前端部におけるアウタパネル13に傾斜面27を形成したことにより、上記ロッカ12の前端部は前方に向かってのテーパ形状となり、外力に対しての剛性が低下しがちとなる。
【0033】
そこで、前記したように、ロッカ12の前端部には、上記アウタ、インナパネル13,14に加えて補強パネル15が設けられており、かつ、これら各パネル13〜15の各前端縁部がスポット溶接Sにより強固に結合されている。そして、この結合部は、上記傾斜面27における車体3の内側方の端部27aがわに相当している。
【0034】
上記構成によれば、車体3の平面視(図1)で、上記ロッカ12の前端面を、車体3の後方に向かうに従い外側方に向かう傾斜面27となるよう形成し、この傾斜面27を上記環状連結材21の後方に位置させると共に、上記傾斜面27における車体3の内側方の端部27aを、上記リム20の内側端縁部20aの車体3の外側方がわ近傍に位置させている。
【0035】
このため、車両1の前突時に、その衝撃力Fにより、上記前車輪5が上記ロッカ12に対し後方移動したときには、まず、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわが、上記ロッカ12の前端部の傾斜面27における車体3の内側方の端部27aがわに衝突する。また、その一方、上記傾斜面27の形成によりこの傾斜面27の前方には空間が形成されたことから、上記したように前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわが上記傾斜面27の端部27aがわに衝突したとき、上記前車輪5において剛性が大きい環状連結材21が上記ロッカ12の前端部に衝突することは上記傾斜面27の前方の空間の存在により防止される。そして、この際、前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわは、その断面で見て(図1)上記環状連結材21に対し片持ち支持されたものであることから、上記衝撃力Fに基づき屈曲するよう変形(塑性、弾性変形含む、以下同じとする)させられる。
【0036】
よって、車両1の前突時には、車体3の構成部分であるロッカ12と、車体3に懸架された前車輪5とのうち、前車輪5が前突時の衝撃力Fによって変形させられることから、車体3の変形を抑制しつつ上記衝撃力Fを効果的に緩和させることができ、これは、乗員保護にとって極めて有益である。
【0037】
また、上記衝撃力Fにより、前車輪5が更に後方移動して上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわの屈曲が進行すると、上記前車輪5は車体3の後方かつ外側方に移動し、車体3の外側方に突出しがちとなる。
【0038】
しかし、上記したように上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aはこのリム20の径方向外方に向かうよう屈曲させられているため、上記した前車輪5の後方移動に伴い上記リム20の内側端縁部20aは、上記傾斜面27における車体3の内側方の端部27aがわに掛止させられる。
【0039】
よって、前突時の衝撃力Fにより上記前車輪5が車体3の外側方に大きく突出することは防止されると共に、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわは更に屈曲するよう変形させられることとなって、車体3の変形を抑制しつつ上記衝撃力Fがより効果的に緩和される。
【0040】
なお、上記前突時には、その衝撃力Fにより、前車輪5の特に後部が車体3の外側方に向けて直ちに大きく変位することが考えられる。そして、この場合、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわが上記傾斜面27における端部27aがわに衝突しないとすると、上記したリム20の内側端縁部20aがわの屈曲による変形は得られず、つまり、上記衝撃力Fは緩和されないこととなる。
【0041】
しかし、上記したように、前突時の衝撃力Fにより上記前車輪5の後部が直ちに車体3の外側方に変位しようとしても、この際、上記リム20の内側端縁部20aは、上記傾斜面27における上記端部27aがわに掛止可能とされる。よって、この掛止によれば、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわは、より確実に上記傾斜面27における端部27aがわに衝突することとなり、この結果、前記したリム20の内側端縁部20aがわの屈曲による変形が得られて、上記衝撃力Fが緩和される。
【0042】
また、上記した前突時における衝撃力の効果的な緩和は、上記前車輪5とロッカ12との各構造や相対配置を工夫することにより達成されるのであって、衝突エネルギーを吸収するための吸収材や脆弱部を別途に設けないで足りる。よって、上記衝撃力の効果的な緩和は簡単な構成により達成され、これは、車体3の生産性の点で有益である。
【0043】
なお、前記したようにロッカ12の前端部は前方に向かってのテーパ形状となっており、このため、特に、上記ロッカ12の前端部の傾斜面27における車体3の内側方の端部27aがわは、上記テーパ形状の先端部となって剛性が低くなりがちである。
【0044】
このため、前記したように、車両1の前突時に、その衝撃力Fにより、上記前車輪5が上記ロッカ12に対し後方移動して、上記前車輪5のリム20の内側端縁部20aがわが、上記ロッカ12の前端部の上記端部27aがわに衝突したときには、図3で示すように、上記ロッカ12の前端部の上記端部27aがわは上記衝撃力Fによって変形しがちとなる。しかし、これは車体3の一部のわずかな変形にとどまるため、乗員に大きな影響を与えることは防止される。
【符号の説明】
【0045】
1 車両
2 車室
3 車体
4 サスペンション
5 前車輪
6 後車輪
7 走行面
11 側壁
12 ロッカ
13 アウタパネル
14 インナパネル
15 補強パネル
18 軸心
19 タイヤ
20 リム
20a 内側端縁部
20b 外側端縁部
20c 中途部
21 環状連結材
24 ハブ
27 傾斜面
27a 端部
F 衝撃力
S スポット溶接
図1
図2
図3