特許第6231333号(P6231333)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231333
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】火災検知装置及び火災検知方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/107 20060101AFI20171106BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20171106BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20171106BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G08B17/107 Z
   G08B17/00 C
   G06T7/60 200H
   G06T1/00 280
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-184022(P2013-184022)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-52824(P2015-52824A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】江幡 弘道
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−533966(JP,A)
【文献】 特開2012−118698(JP,A)
【文献】 特開2000−137877(JP,A)
【文献】 特開平6−233309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/107
G06T1/00
G06T7/60
G08B17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段に略対向して配置され、前記撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、前記撮像手段から見た監視領域を背光照明する照明手段と、
前記撮像手段で撮像した画像から稜線を抽出する稜線抽出手段と、
前記稜線抽出手段で抽出した稜線の直線成分を抽出し、前記抽出した直線成分の中から煙による特徴的な所定の直線成分を検知して火災を判断する火災判断手段と、
備えたことを特徴とする火災検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の火災検知装置に於いて、前記照明手段の照明光軸に交差する前記撮像手段の撮像光軸が所定の立体構成角となるように、前記照明手段及び前記撮像手段前記監視領域に配置されたことを特徴とする火災検知装置。
【請求項3】
請求項1記載の火災検知装置に於いて、前記稜線抽出手段は、前記撮像手段で撮像した画像に含まれる照明領域を除く画像を切り出して稜線を抽出することを特徴とする火災検知装置。
【請求項4】
監視領域の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段に略対向して配置され、前記撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、前記撮像手段から見た監視領域を背光照明する照明手段と、
前記撮像手段で撮像した画像から稜線を抽出する稜線抽出手段と、
前記稜線抽出手段で抽出した稜線の中から煙による特徴的な所定の稜線を検知して火災を判断する火災判断手段と、
を備えた火災検知装置に於いて
前記撮像手段により撮像した画像に、前記照明手段の照明領域が入らないように、前記照明手段及び前記撮像手段前記監視領域に配置されたことを特徴とする火災検知装置。
【請求項5】
監視領域の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段に略対向して配置され、前記撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、前記撮像手段から見た監視領域を背光照明する照明手段と、
前記撮像手段で撮像した画像から稜線を抽出する稜線抽出手段と、
前記稜線抽出手段で抽出した稜線の中から煙による特徴的な所定の稜線を検知して火災を判断する火災判断手段と、
を備え火災検知装置に於いて、
前記稜線抽出手段は、前記撮像手段で撮像した画像にエッジ強調処理を施して稜線を抽出し、
前記火災判断手段は、
前記稜線抽出手段で抽出した稜線の画像を複数の画像領域に分割し、前記画像領域毎に前記稜線の直線成分を抽出する直線成分抽出手段と、
前記画像領域毎に、前記直線成分抽出手段で抽出し直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化を求める時系列変化検出手段と、
前記時系列変化検出手段で検出した直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化の中から煙による特徴的な直線成分の傾きと発生累積頻度となる所定の時系列変化を検知した場合に火災と判断する火災検知手段と、
を備えたことを特徴とする火災検知装置。
【請求項6】
請求項記載の火災検知装置に於いて、前記火災検知手段は、傾きが一定で発生頻度の異なる直線成分の時系列変化を1又は複数検知した場合に、火災と判断することを特徴とする火災検知装置。
【請求項7】
撮像手段により監視領域の画像を撮像し、
前記撮像手段に略対向して配置された照明手段により、前記撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、前記撮像手段から見た監視領域を背光照明
前記撮像手段で撮像した画像から稜線を稜線抽出手段により抽出し、
火災判断手段により、前記稜線抽出手段で抽出した稜線の直線成分を抽出し、前記抽出した直線成分の中から煙による特徴的な所定の直線成分を検知して火災を判断することを特徴とする火災検知方法。
【請求項8】
請求項記載の火災検知方法に於いて、前記照明手段の照明光軸に交差する前記撮像手段の撮像光軸が所定の立体構成角となるように、前記照明手段及び前記撮像手段を前記監視領域に配置したことを特徴とする火災検知方法。
【請求項9】
請求項記載の火災検知方法に於いて、前記稜線抽出手段は、前記撮像手段で撮像した画像に含まれる照明領域を除く画像を切り出して稜線を抽出することを特徴とする火災検知方法。
【請求項10】
撮像手段により監視領域の画像を撮像し、
前記撮像手段に略対向して配置された照明手段により、前記撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、前記撮像手段から見た監視領域を背光照明し、
前記撮像手段で撮像した画像から稜線を稜線抽出手段により抽出し、
前記稜線抽出手段で抽出した稜線の中から火災判断手段により煙による特徴的な所定の稜線を検知して火災を判断する火災検知方法に於いて
前記撮像手段により撮像した画像に、前記照明手段の照明領域が入らないように、前記照明手段及び前記撮像手段を前記監視領域に配置したことを特徴とする火災検知方法。
【請求項11】
撮像手段により監視領域の画像を撮像し、
前記撮像手段に略対向して配置された照明手段により、前記撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、前記撮像手段から見た監視領域を背光照明し、
前記撮像手段で撮像した画像から稜線を稜線抽出手段により抽出し、
前記稜線抽出手段で抽出した稜線の中から火災判断手段により煙による特徴的な所定の稜線を検知して火災を判断する火災検知装置に於いて、
前記撮像手段で撮像した画像に前記稜線抽出手段によりエッジ強調処理を施して稜線を抽出し、
前記火災判断手段は、
直線成分抽出手段により、前記稜線抽出手段で抽出した稜線の画像を複数の画像領域に分割し、前記画像領域毎に前記稜線の直線成分を抽出し、
時系列変化検出手段により、前記画像領域毎に、前記直線成分抽出手段で抽出し直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化を求め、
火災検知手段により、前記時系列変化検出手段で検出した直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化の中から煙による特徴的な直線成分の傾きと発生累積頻度となる所定の時系列変化を検知した場合に火災と判断する、
ことを特徴とする火災検知方法。
【請求項12】
請求項11記載の火災検知方法に於いて、前記火災検知手段は、傾きが一定で発生頻度の異なる直線成分の時系列変化を1又は複数検知した場合に、火災と判断することを特徴とする火災検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域を照明しながらカメラで撮像した画像から火災初期における煙を検知する火災検知装置及び火災検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視カメラで撮像した監視領域の画像に対し画像処理を施すことにより、火災を検知するようにした様々な装置やシステムが提案されている。
【0003】
このような火災検知装置にあっては、火災発生に対する初期消火や避難誘導の観点から火災の早期発見が重要である。
【0004】
このため従来装置(特許文献1)にあっては、画像から火災に伴う煙により起きる現象として、透過率又はコントラストの低下、輝度値の特定値への収束、輝度分布範囲が狭まって輝度の分散の低下、煙による輝度の平均値の変化、エッジの総和量の低下、低周波帯域の強度増加を導出し、これらを総合的に判断して煙の検出を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−046916号公報
【特許文献2】特開平7−245757号公報
【特許文献3】特開2010−238028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、火災初期の段階で多い燻焼燃焼では、ごく微量の煙が立ち上がり、時間の経過と共に煙の量が増し、最終的には煙層が天井面に沿って発生し、従来の煙感知器は、天井面に発生した煙層を検知するようにしている。
【0007】
このように、ごく微量の煙が立ち上がる火災初期の段階で火災を検知することが重要になる。従来の画像に対し画像処理を施して煙を検知する装置にあっては、例えば立ち立ち上る煙の動き(流動)を検知するようにしているが、この流動検知のためには十分な量の煙が立ち昇る段階にならないと検知することが困難であり、細い筋のようになってごく微量の煙が立ち上がる火災の初期で検知することはできないという問題があった。
【0008】
この問題を解決するため本願出願人にあっては、監視カメラにより撮像した監視領域の画像から、煙により発生する稜線の直線成分を抽出し、その傾きと発生頻度について時系列での変化を求め、煙による特徴的な変化を検知することで、火災の初期の段階で多い燻焼燃焼により発生するごく微量の煙の立ち上りを検知して火災を判断する火災検知装置を提案している(特願2013−101883)。
【0009】
しかしながら、就寝などに伴い監視領域となる部屋の明かりを消した場合、監視カメラにより撮像する監視領域の画像が暗くなり、煙画像から火災を判断する機能が失われる問題がある。
【0010】
この問題を解決するめには夜間などに照明を消灯せずに点けたままとすればよいが、使用していない部屋などで明かりをつけたままにするようなことは、現実的な解決にはならない。
【0011】
そこで、照明装置を完全に消灯せずに、例えば豆電球のようなワット数の小さい照明装置を点灯し、このままでは明るさが不足することから、監視カメラを高感度に切替えて煙画像を撮像するような方法が考えられる。しかし、本願出願人が提案している火災初期の段階で多い燻焼燃焼で立ち上がるごく微量の煙をカメラで撮像して火災を検知する場合には、明るさが大幅に不足し、ごく微量の煙をカメラで撮像することができず、暗い中では、火災検知機能が失われてしまう問題がある。
【0012】
本発明は、夜間などに照明を消した状態で、火災初期の段階で多い燻焼燃焼で立ち上がるごく微量の煙をカメラで撮像して火災を検知可能とする火災検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(装置)
本発明は、火災検知装置に於いて、
監視領域の画像を撮像する撮像手段と、
撮像手段に略対向して配置され、撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、撮像手段から見た監視領域を背光照明する照明手段と、
撮像手段で撮像した画像から稜線を抽出する稜線抽出手段と、
稜線抽出手段で抽出した稜線の直線成分を抽出し、抽出した直線成分の中から煙による特徴的な所定の直線成分を検知して火災を判断する火災判断手段と、
備えたことを特徴とする。
【0014】
(背光照明による煙散乱光像)
撮像手段は、監視領域に煙が存在した場合に、照明手段の背光照明による煙の散乱光画像を撮像する。
【0015】
(照明光軸と撮像光軸の立体構成角)
照明手段の照明光軸に交差する撮像手段の撮像光軸が所定の立体構成角となるように、照明手段及び撮像手段監視領域に配置される。
【0016】
(照明領域を除く画像切出し)
稜線抽出手段は、撮像手段で撮像した画像に含まれる照明領域を除く画像を切り出して稜線を抽出する。
【0017】
(照明領域を含まない画像撮像)
本発明は、火災検知装置に於いて、
監視領域の画像を撮像する撮像手段と、
撮像手段に略対向して配置され、撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、撮像手段から見た監視領域を背光照明する照明手段と、
撮像手段で撮像した画像から稜線を抽出する稜線抽出手段と、
稜線抽出手段で抽出した稜線の中から煙による特徴的な所定の稜線を検知して火災を判断する火災判断手段と、
を備え、
撮像手段により撮像した画像に、照明手段の照明領域が入らないように、照明手段及び撮像手段検煙空間に配置されたことを特徴とする
【0018】
(火災検知の詳細)
本発明は、火災検知装置に於いて、
監視領域の画像を撮像する撮像手段と、
撮像手段に略対向して配置され、撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、撮像手段から見た監視領域を背光照明する照明手段と、
撮像手段で撮像した画像から稜線を抽出する稜線抽出手段と、
稜線抽出手段で抽出した稜線の中から煙による特徴的な所定の稜線を検知して火災を判断する火災判断手段と、
を備え、
稜線抽出手段は、撮像手段で撮像した画像にエッジ強調処理を施して稜線を抽出し、
火災判断手段は、
稜線抽出手段で抽出した稜線の画像を複数の画像領域に分割し、画像領域毎に稜線の直線成分を抽出する直線成分抽出手段と、
画像領域毎に、直線成分抽出手段で抽出し直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化を求める時系列変化検出手段と、
時系列変化検出手段で検出した直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化の中から煙による特徴的な直線成分の傾きと発生累積頻度となる所定の時系列変化を検知した場合に火災と判断する火災判断手段と、
を備えたことを特徴とする
【0019】
(火災判断)
火災判断手段は、傾きが一定で発生頻度の異なる直線成分の時系列変化を1又は複数検知した場合に、火災と判断する。
【0020】
(方法)
本発明は、火災検知方法に於いて、
撮像手段により監視領域の画像を撮像し、
撮像手段に略対向して配置された照明手段により、撮像手段を除く監視領域に所定波長の赤外線光を照射し、撮像手段から見た監視領域を背光照明し、
撮像手段で撮像した画像から稜線を稜線抽出手段により抽出し、
火災判断手段により、稜線抽出手段で抽出した稜線の直線成分を抽出し、抽出した直線成分の中から煙による特徴的な所定の直線成分を検知して火災を判断することを特徴とする。
【0021】
本発明の火災検知方法による他の特徴は、前述した火災検知装置の場合と基本的に同じになることから、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0022】
(基本的な効果)
本発明の火災検知装置及び火災検知方法によれば、撮像手段に対向して配置した照明手段により所定波長の赤外線光を照射して監視領域を撮像手段から見て背光照明し、撮像部により撮像した監視領域の画像から、煙により発生する稜線の直線成分を抽出し、その傾きと発生頻度について時系列での変化を求め、煙による特徴的な時系列変化を検知するようにしたため、夜間の就寝などに伴い監視領域となる部屋の照明を消した暗い状態であっても、赤外線光の照射による背光照明で監視領域の鮮明な画像を撮像手段で撮像することができ、暗い中であっても、火災の初期の段階で多い燻焼燃焼により発生するごく微量の煙の立ち上りを確実に検知し、火災を早期に判断して報知することを可能とする。
【0023】
(背光照明による煙散乱光像による効果)
また、撮像手段は、監視領域に煙が存在した場合に、照明手段の背光照明による煙の散乱光画像を撮像するようにしたため、火災初期の段階で多い燻焼燃焼で立ち上がるごく微量の煙であっても、立ち上がる微量の煙に撮像手段の反対側から照明手段により赤外線光を照射して背光照明することで、赤外線光が煙粒子に当って散乱光を発生し、これを撮像手段で撮像すると、暗闇の中に、煙の散乱光画像が明るく浮かび上がるように見える煙画像を撮像することができる。
【0024】
これは、監視領域を検煙空間と看做し、ここに照明手段を光源とし、撮像手段を受光部として両者の光軸が所定の立体構成角をもつように配置することで散乱光式検煙構造を構成しており、これによりごく微量の煙であっても、十分な輝度をもつ散乱光による煙画像として撮像することを可能とし、その稜線画像の抽出に基づいて確実に火災を検知可能とする。
【0025】
(照明領域を除外した画像処理)
また、撮像手段により撮像した画像から照明領域を除く領域を切り出したり、照明領域を含まない画像を撮像することで、照明手段による赤外線光が当って照明されている背景画像を処理対象から除外し、背景が暗闇となる検煙空間の部分のみを撮像することで、暗闇の中に背光照明による散乱光の発生で鮮明に浮き上がる微弱な煙の筋を確実に捕らえて火災を検知可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の火災検知装置を設置した監視領域を示した説明図
図2】監視領域の平面と対角方向の立面を示した説明図
図3】明るい状態で撮像した監視領域の画像を示した説明図
図4】ごく微量の煙が立ち上がる状態をモデル化して示した説明図
図5】画像処理装置の機能構成の概略を示したブロック図
図6】赤外線照明器により背光照明した暗い状態で撮像した監視領域の画像と照明領域を除いて切り出した画像を示した説明図
図7】画像の領域分割を示した説明図
図8】ごく微量の煙が立ち上がる状態の時間変化を画像処理の対象とする領域を特定して示した説明図
図9】ゴミ入れの直上の領域A1の直線成分の時系列変化を示した説明図
図10図9の直線成分の傾きと発生頻度を表したベクトルの時系列変化を示した説明図
図11図9の領域A1の上となる領域A2の直線成分の時系列変化を示した説明図
図12図11の直線成分の傾きと発生頻度を表したベクトルの時系列変化を示した説明図
図13】明るい状態で画像処理の対象とする領域を特定して示した説明図
図14】背景となる領域A3の直線成分の時系列変化を示した説明図
図15図14の直線成分の傾きと発生頻度を表したベクトルの時系列変化を示した説明図
図16図5の画像処理装置の動作を示したフローチャート
図17】監視領域における監視カメラと赤外線照明器の他の配置を示した説明図
図18】撮像画面に照明領域が入らないようにする監視カメラと赤外線照明器の配置を示した明図
図19】照明光軸と撮像光軸を交差しないようにする監視カメラと赤外線照明器の配置を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
[火災検知装置の概要]
図1は本発明による火災検知装置を設置した監視領域を透視して示した説明図であり、図2(A)は監視領域を平面で示し、図2(B)は監視領域を対角線上の立面で示し、更に図3に明るい状態で撮像した画面を示す。
【0028】
図1に示すように、監視領域18には撮像手段として機能する監視カメラ10がと照明手段として機能する赤外線照明器12を設置し、監視領域18が明るく赤外線照明器12を消灯している場合には、図3に示す監視領域の画像30を監視カメラ10で撮像している。
【0029】
監視カメラ10は、上下、左右及び前後に仕切られた監視領域(監視空間)の所定のコーナ上部に設置し、その撮像光軸10aを床面の対角線15上のQ点に向うように斜め下向きに設定して監視領域を撮像可能としている。
【0030】
赤外線照明器12は、監視カメラ10に対向する対角線方向のコーナ上部に配置し、その照明光軸12aを床面の対角線15上のR点に向うように斜め下向きに設定し、監視カメラ10を除く監視領域18に所定波長の赤外線光、例えば波長820ナノメートル又は波長940ナノメートルの赤外線光を照射し、監視カメラ10から見て監視領域18を背光照明している。
【0031】
赤外線照明器12は、波長820ナノメートル又は波長940ナノメートルの赤外線光を照射するため、マイクロ屈折レンズを備えた複数の赤外線LEDをマトリクス状に配置し、例えば照明角βは60°〜120°の範囲で選択でき、照明可能距離は例えば60〜35メートルを確保可能としている。
【0032】
監視カメラ10は可視光の波長範囲で撮像感度を有すると共に、赤外線照明器12による波長820ナノメートル又は波長940ナノメートルの赤外線光波長を含む波長範囲に撮像感度を有する撮像素子を使用している。
【0033】
監視カメラ10と赤外線照明器12の配置の詳細は、図2(A)の監視領域平面に示すように、対角方向に対向するコーナ上部に監視カメラ10と赤外線照明器12を配置し、また図2(B)の対角線上の立面に示すように、監視カメラ10の撮像光軸10aを斜め下向きで例えば45°方向に設定し、これに対向して配置した赤外線照明器12の照明光軸12aを斜め下向きで例えば45°方向に設定し、撮像光軸10aと照明光軸12aはP点で交差するように配置している。
【0034】
監視カメラ10は水平及び垂直方向で撮像角αをもち、また赤外線照明器12は水平及び垂直方向で照明角βをもち、例えば撮像角α=90°、照明角β=90°とすると、監視領域18を囲む上下、左右、及び前後の各面に対し、照明エリア26と撮像エリア28を形成している。
【0035】
赤外線照明器12は、夜間の就寝などに伴い監視領域18となる部屋の照明を消して暗くなった場合に点灯し、監視カメラ10から見た監視領域(監視空間)18に存在する煙を含む物体を、赤外線光の照射により背光照明している。
【0036】
赤外線照明器12から照射した赤外線光は、監視カメラ10に赤外線光が直接入射しないように、照明エリア26を設定している。
【0037】
また、監視カメラ10で撮像した例えば図3に示す監視領域18の画像30の中に、赤外線光が当っている照明エリアを可能な限り少なくして、赤外線光が当っていない非照明エリアを最大限に確保するため、照明エリア26と撮像エリア28の重複を最小限とするように、監視カメラ10と赤外線照明器12を配置している。この理由は、後述する検出原理の中で説明する。
【0038】
このように赤外線照明器12により監視領域18を背光照明した状態で、監視領域18に置かれたごみ入れ等の火源20の可燃物が何らかの原因で火災が発生する状況となり、火災の初期では図示のように火源20から、ごく微量の煙24が細い筋となって立ち上っている。また監視領域18の壁面には構造や壁紙などにより、縦方向などに直線的な筋があり、図3に示す明るい状態で撮像した画像30には、背景に筋が現れている。
【0039】
監視カメラ10は、監視領域18に煙24が存在した場合に、赤外線照明器12の背光照明による煙24の煙散乱光像を撮像し、監視カメラ10で撮像した画像は伝送路を介して管理人室などに設置した画像処理装置14に伝送され、画像処理によりごみ入れなどの火源20から立ち上がっている微量の煙24を検知して火災を判断し、火災検知信号を火災報知設備16に出力して火災警報を出力する。
【0040】
[検出原理]
(明るい監視領域での検出原理)
本発明により微量の煙を検知する原理を説明すると次のようになる。本発明は、図4(A)に示す火源20から立ち上がる微量の煙24を画像処理により検知するが、この場合、初期の煙24は、図4(B)に示すように、半透明かつ円筒状の物体が、揺らぎつつ火源より上方へ伸びて行く煙モデル24aとして考えられる。
【0041】
この煙モデル24aは、図4(C)の濃度分布に示すように、中心部ほど煙濃度は濃く、周辺では相対的に薄くなるため、監視カメラ10で撮像した画像においては背景に対し煙24の中心が最も透過しない稜線を描くと考えられる。
【0042】
そこで、画像に対しエッジ強調処理を適用して煙の稜線を抽出し、更に、画像を細かい領域に分割した後に、各々の領域に対してハフ変換を行って直線成分を抽出する。このようにして抽出した煙による直線成分は、時間の経過に伴い揺らぎつつ上方へ伸びて行く。これに対し背景に存在する直線成分は、時間が経過しても変化せず、定常的に存在している。このため抽出した直線成分の時系列での変化を捉えれば、煙による特徴的な時系列的変化を捉えることができる。
【0043】
以上の結果を基に、所定周期毎に撮像した画像から抽出した各領域の直線成分の方向と累積頻度の時系列変化を求めてみると、煙による特徴的な時系列変化が得られ、火災の初期で細い筋となって立ち上る微量の煙24の検知が可能となる。
【0044】
(暗い監視領域での背光照明による検出原理)
一方、監視領域の照明が消えた暗い状態で、赤外線照明器12を点灯して監視領域を背光照明した場合、監視カメラ10から見た図4(A)に示す火源20から立ち上がる微量の煙24は、赤外線照明器12から照射した赤外線光を背後から受け、煙粒子に当った赤外線が散乱し、監視カメラ10側に強い分布を持つ散乱光を発生する。
【0045】
このため図4(B)に示すように、半透明かつ円筒状の煙粒子の集合体となる煙モデル24aは、背光照明による散乱光の発生により、暗い背景の中に、煙モデル24aが散乱光を発して明るく浮かび上がる煙散乱光像を生成する。
【0046】
そこで、監視カメラ10で撮像した煙散乱光像の画像に対しエッジ強調処理を適用して煙の稜線を抽出し、更に、画像を細かい領域に分割した後に、各々の領域に対してハフ変換を行って直線成分を抽出し、更に、所定周期毎に撮像した画像から抽出した各領域の直線成分の方向と累積頻度の時系列変化を求めてみると、煙による特徴的な時系列変化が得られ、火災の初期で細い筋となって立ち上る微量の煙24の検知が可能となる。
【0047】
ここで、監視カメラ10で撮像した例えば図3に示す監視領域18の画像30の中に、赤外線光が当っている照明エリアを可能な限り少なくして、赤外線光が当っていない非照明エリアを最大限に確保している。
【0048】
これは、監視カメラ10で撮像した画像の中で、赤外線光があたって明るく映る照明エリアの中に煙の筋が立ち上がると、照明された背景と背光照明による煙散乱光像とのコントラストが低下し、煙の筋が見えにくくなる。これに対し非照明エリアの暗い中に煙の筋が立ち上がると、背景とのコントラストが高いため、背光照明による煙散乱光像が明るく浮き上がり、煙の筋が鮮明に見える。
【0049】
従って、監視カメラ10で撮像した例えば図3に示す監視領域18の画像30の中に、赤外線光が当っている照明エリアを可能な限り少なくして、赤外線光が当っていない非照明エリアを最大限に確保することが望ましい。また必要に応じて撮像した画像の中から非照明領域の画像を切り出して処理するといった手法や、撮像した画像の中に照明領域が映らないように監視カメラ10と赤外線照明器12を配置するといった手法が望ましい。
【0050】
[火災検知装置]
(火災検知装置の機能構成)
図5は本発明による火災検知装置の機能構成の概略を示したブロック図である。図5に示すように、火災検知装置は、監視カメラ10と画像処理装置14で構成され、画像処理装置14は、そのハードウェアとしてCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等で構成され、CPUによるプログラムの実行により実現される機能として、制御部32、稜線抽出手段として機能する稜線抽出部38、火災判断手段として機能する火災判断部40を備え、更に、火災判断部40の機能として、直線成分抽出手段として機能する直線成分抽出部42、時系列変化検出手段として機能する時系列変化検出部44、及び火災検知手段として機能する火災検知部46を設けている。
【0051】
伝送部36は監視カメラ10で撮像した画像データを受信する適宜の伝送インタフェースが使用され、照明駆動部34は赤外線照明器12を点灯駆動する。
【0052】
制御部32は、監視カメラ10、赤外線照明器12及び画像処理装置14に設けた各機能の全体的な制御を行う。
【0053】
制御部32による赤外線照明器12の制御は、タイマに基づく制御、照度センサに基づく制御などを可能とする。制御部32のタイマに基づく制御は、1日24時間につき監視領域が暗くなる所定の時間帯を予め設定し、この時間帯に入ると照明駆動部34に指示して赤外線照明器12を点灯させ、この時間帯が終わると照明駆動部34に指示して赤外線照明器12を消灯させる。
【0054】
また制御部32の照度センサに基づく制御は、照度センサの明るさ検出値が所定値以下となったら照明駆動部34に指示して赤外線照明器12を点灯させ、その後、照度センサの明るさ検出値が所定値を越えたら照明駆動部34に指示して赤外線照明器12を消灯させる。
【0055】
撮像手段として機能する監視カメラ10は、制御部32からの指示を受けて動作し、伝送部36の伝送制御により動画像データとして、例えば毎秒30フレームとなる監視領域の画像データを伝送し、画像処理装置14に設けた図示しないメモリに記憶する。
【0056】
稜線抽出部38は、メモリに記憶したフレーム単位の画像から稜線を抽出して稜線画像を生成する。
【0057】
ここで、稜線抽出部38は、制御部32の指示により赤外線照明器12を点灯させて監視領域を背光照明している場合、メモリに記憶している画像につき、赤外線光が当っている背景領域となる照明エリアを除く画像を切り出す処理を行う。
【0058】
図6(A)は、赤外線照明器12により監視領域を背光照明している場合に得られた画像30であり、画像30には、赤外線光が当っている照明エリア26が含まれ、それ以外の領域は斜線部で示す真っ暗な非照明エリア26aとなっており、その中に、火源20から煙による煙散乱光像24bが立ち上っている。
【0059】
そこで、図6(A)の非照明エリア26aを切り出して図6(B)の切出しエリア30aとし、図6(A)の照明エリア26を除去して図6(B)の切捨てエリア30bとした画像30を生成する。
【0060】
なお、稜線抽出部38は、赤外線照明器12を消灯させている監視領域が明るい場合には、図3に示した画像30を処理対象とする。
【0061】
稜線抽出部38による稜線抽出処理は、例えば画像に対しエッジ強調処理の1つであるゾーベルフィルタ(Sobel Filter)を適用し、例えば図7の画像30に示すように、煙稜線24cを抽出する。なお、稜線抽出部38による稜線抽出処理は、全フレーム画像を対象とせず、処理速度の関係で所定フレーム数を間引きしたフレーム毎に行うようにしても良い。
【0062】
ゾーベルフィルタは、ある注目画素を中心とした上限左右の9つの画素値に対し、水平方向と垂直方向の2つの係数行列による所定の係数を乗算して総和を求めることで、画像中に存在するある領域の境界(エッジ)を検出可能とする微分処理であり、これを適用して、稜線抽出部38は図7に示すように、火源20から上方に立ち上がる煙の画像から煙稜線24cを抽出する。
【0063】
火災判断部40は、稜線抽出部38で抽出した稜線の中から煙による特徴的な煙稜線を検知して火災を判断するものであり、具体的には、直線成分抽出部42、時系列変化検出部44、及び火災検知部46により火災を検知する。
【0064】
直線成分抽出部42は、稜線抽出部38で抽出し稜線の画像30を図7の破線で示すように、複数の領域、例えば64×64画素の領域に分割し、領域毎に例えばハフ変換(Hough変換)を施して稜線の直線成分を抽出する。ハフ変換は画像中の直線線分を抽出する方法として知られており、画像中のn個の点に対し、ρ―θ平面上ではn個の曲線が得られ、この内、m個の曲線が1点で交わっていれば、このm個の点に対応する画像上のm個の点は同一直線上にあることとなり、これにより直線成分を抽出できる。
【0065】
時系列変化検出部44は、直線成分抽出部42によるハフ変換で抽出した直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化を求める。
【0066】
図8は、所定フレーム数を間引いた間引きフレーム処理により図7の稜線を抽出した画像の時間的な変化を示した説明図であり、処理対象とする領域として、火源20の直上の領域A1、その上の領域A2を例にとって示している。
【0067】
図8(A)の時刻にあっては、火源20から煙稜線24cが立ち上がって先端が領域A1にあり、図8(B)の次の時刻では、煙稜線24cが更に立ち上がって領域A1及び領域A2を通過している。
【0068】
図9図8の火源20の直上となる領域A1について間引きフレームの4周期分となる時刻t1〜t4で抽出した直線成分の時系列変化を示している。時刻t1では、領域A1を通過する煙稜線の直線成分は、領域下辺中央を原点とした二次元座標において、上方をθ1=0°とすると発生頻度は2本となり、右斜め上方をθ2とすると発生頻度は2本となり、左斜め上方をθ3とすると発生頻度は1本となる。このような領域A1を通過する煙稜線の直線成分は、立ち上がる煙の揺らぎに応じ時刻t2〜t4に示すように、その方向と発生頻度が変化する。
【0069】
図10図9の領域A1の直線成分の時系列変化を示した説明図であり、直線成分を傾きθと発生頻度の長さを持つベクトルを累積して示している。
【0070】
図10に示すように、時刻t1で
ベクトルB1は(θ1,2)
ベクトルB2は(θ2,2)
ベクトルB2は(θ3,1)
となり、時刻t2〜t4では、その時系列変化に応じて累積的に増加していく。
【0071】
図11図8の火源20の直上となる領域A1の上となる領域A2について、間引きフレームの4周期分となる時刻t1〜t4で抽出した直線成分の時系列変化を示している。
【0072】
領域A2では立ち上がる煙の揺らぎが多くなっており、このため、時刻t1では、領域A2を通過する煙稜線の直線成分は、上方をθ1=0°とすると発生頻度は1本となり、右斜め上方をθ2とすると発生頻度は1本となり、左斜め上方をθ3とすると発生頻度は2本となり、更にθ2より大きい右斜め上方をθ4とすると発生頻度は1本となり、θ3より大きい左斜め上方をθ5とすると発生頻度は1本となる。
【0073】
このように領域A2を通過する煙稜線の直線成分は、立ち上がる煙の揺らぎに応じ時刻t2〜t4に示すように、その方向と発生頻度が変化する。
【0074】
図12図11の領域A2の直線成分の時系列変化を示した説明図であり、直線成分を傾きθと発生頻度の長さを持つベクトルを累積して示している。
【0075】
図12に示すように、時刻t1で
ベクトルB1は(θ1,1)、
ベクトルB2は(θ2,1)
ベクトルB3は(θ3,2)、
ベクトルB4は(θ4,1)、
ベクトルB5は(θ5,1)
となり、時刻t2〜t4では、その時系列変化に応じて累積的に増加していく。
【0076】
火災検知部46は、時系列変化検出部44により検知された各領域の直線成分の時系列変化の中から、煙による特徴的な時系列変化を検知して火災と判断する。例えば、時系列変化検出部44により、図10及び図12の時刻t4に示す直線成分の傾きと発生頻度の累積で与えられる時系列変化が検知された場合、煙による特徴的な時系列変化は、傾きと発生頻度と異なる累積ベクトルが放射状に複数存在する所謂デイジーパターンとなっている。そこで、火災検知部46は、煙による特徴的な時系列変化を示すデイジーパターンを検知して火災を判断する。
【0077】
[監視領域が明るい場合の火災判断]
図13は、赤外線照明器12の背光照明を必要としない監視領域が明るい場合に監視カメラ10で撮像した画像について、図5の稜線抽出部38により抽出された画像30であり、火源20から立ち上る煙稜線24cを抽出し、また背景の床と壁の境目や壁にある筋の稜線を抽出している。
【0078】
このような監視領域が明るい場合の稜線を抽出した画像30に対し、図5の火災判断部40は、稜線抽出部38で抽出した稜線の中から煙による特徴的な煙稜線を検知して火災を判断するものであり、具体的には、直線成分抽出部42、時系列変化検出部44、及び火災検知部46により火災を検知する。
【0079】
直線成分抽出部42は、稜線抽出部38で抽出した稜線の画像30を、図13の破線で示すように、複数の領域、例えば64×64画素の領域に分割し、領域毎に例えばハフ変換(Hough変換)を施して稜線の直線成分を抽出する。
【0080】
時系列変化検出部44は、直線成分抽出部42によるハフ変換で抽出した直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化を求める。
【0081】
火災検知部46は、時系列変化検出部44により検知された各領域の直線成分の時系列変化の中から、煙による特徴的な時系列変化を検知して火災と判断する。火災検知部46による火源20の直上となる領域A1,A2の火災判断は、図9図12に示したと同様であり、傾きと発生頻度と異なる累積ベクトルが放射状に複数存在する所謂デイジーパターンとなっており、火災検知部46は、煙による特徴的な時系列変化を示すデイジーパターンを検知して火災を判断する。
【0082】
一方、背景に稜線が存在する領域A3に対する時系列変化検出部44及び火災検知部46による判断は次のようになる。
【0083】
図14図13の背景となる領域A3について、間引きフレームの4周期分の時刻t1〜t4で抽出した直線成分の時系列変化を示している。領域A3では背景に上下4本の直線成分が定常的に存在しており、このため、時刻t1〜t4の全てで、領域A3に存在する直線成分は、上方をθ1=0°とすると発生頻度は4本となる。
【0084】
図15図14の領域A3の直線成分の時系列変化を示した説明図であり、直線成分を傾きθと発生頻度の長さを持つベクトルを累積して示している。図15に示すように、時刻1でベクトルB1は(θ1,4)となり、時刻t2〜t4では、その時系列変化に応じて一定の発生頻度=4により累積的に増加していく。
【0085】
このように定常的に存在する背景稜線から抽出した直線成分の時系列変化は、傾きが一定で発生頻度も一定となる定常パターンであり、煙による特徴的な時系列変化を示すデイジーパターンから明確に区別することができ、火災判断の対象から除外する。
【0086】
[火災判断動作]
図16図5の画像処理装置による火災検知動作を示したフローチャートである。
【0087】
図16において、画像処理装置14は、ステップS1(以下「ステップ」は省略)で照明が必要か否か判別しており、例えばタイマ設定による所定の時間帯に入ったことを検知した場合、或いは照度センサの明るさ検出値が所定値以下に低下したことを検知した場合、照明が必要と判別し、S2に進んで赤外線照明器12を点灯し、監視領域を赤外線光により背光照明してS5へ進む。
【0088】
一方、S1で照明が必要ないと判別した場合はS3に進み、赤外線照明器12が点灯中であればS4に進んで消灯し、またS3で赤外線照明器12が点灯中でなければS4をスキップしてS5へ進む。
【0089】
S5では、監視カメラ10により動画画像として例えば30フレーム/秒で撮像した監視領域の画像を取得してメモリに記憶し、S6で稜線抽出部38により非照明エリアの画像を切り出した後に、ゾーベルフィルタの適用により切り出した画像から稜線を抽出する。
【0090】
続いてS7で直線成分抽出部42により稜線の画像を複数の領域に分割し、S8で領域毎にハフ変換を施して稜線の直線成分を抽出した後、S9に進んで時系列変化検出部44により、S6で抽出した直線成分の傾きと発生累積頻度による時系列変化を求め、S10で火災検知部46により直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化の中から煙による特徴的な直線成分の傾きと発生累積頻度となる所定の時系列変化、例えばデイジーパターンを検知する火災判断を行い、その結果としてS11で火災を検知した場合はS12で火災検知信号を火災報知設備に出力して火災警報を出力させる。一方、S11で火災を検知しなかった場合は、S1に戻り、同様な処理を繰り返す。
【0091】
[監視カメラと赤外線照明器の他の配置]
図17は監視領域における監視カメラと赤外線照明器の他の配置を示した説明図であり、図2(B)と同様に、図1の監視領域18を対角線上の立面で示している。
【0092】
図17に示すように、本実施形態における赤外線照明器12の配置は、図2(B)と同じであるが、監視カメラ10については、その撮像光軸10aを、対角線方向に相対した赤外線照明器12の直下の下部コーナ部のQ点に向うように設定し、これに対応して撮像角αを小さくしている。
【0093】
これにより照明エリア26と撮像エリア28の重複を低減し、監視カメラ10で撮像した画像の中に占める照明エリアを少なくし、画像の中の暗い領域となる非照明エリアを広くすることができる。
【0094】
図18は監視領域における監視カメラと赤外線照明器の他の配置を示した説明図であり、図2(B)と同様に、図1の監視領域18を対角線上の立面で示している。
【0095】
図18に示すように、本実施形態における赤外線照明器12の配置は、図2(B)と同じであるが、監視カメラ10については、その撮像光軸10aを、対角線方向に相対した赤外線照明器12の直下のコーナ略中央のQ点に向うように設定し、これに対応して撮像角αを小さくしている。
【0096】
これにより照明エリア26と撮像エリア28を完全に分離して重複をなくし、監視カメラ10で撮像した画像の中に照明エリアが入らないようし、画像全体が暗い領域となる非照明エリアとしている。
【0097】
図17又は図18に示すように、照明エリア26と撮像エリア28の重複を低減したり、両者が重複しないようにした場合には、撮像角αを小さくしたことに伴い、監視領域18の撮像対象とする監視空間が狭くなるが、監視空間は監視領域18の上方を覆って配置されるため、下から立ち上る微弱な煙の筋を、背光照明による煙散乱光像として明確に撮像して火災を検知することを可能とする。
【0098】
[光軸が交差しない監視カメラと赤外線照明器の配置]
図19は照明光軸と撮像光軸を交差しないようにする監視カメラと赤外線照明器の配置を示した説明図であり、図19(A)は監視領域の平面を示し、図19(B)は監視領域の側面を示している。
【0099】
図19に示すように、監視カメラ10は監視領域の所定の上部コーナに配置し、水平面では斜め45°方向に撮像光軸10aを設定し、垂直面では下向き斜め45°方向に撮像光軸10aを設定し、床と壁の境目のR点に指向している。
【0100】
赤外線照明器12は、平面で監視カメラ10の対角線方向の上部コーナに配置し、水平面では斜め45°方向に照明光軸12aを設定し、垂直面では下向き斜め45°方向に照明光軸12aを設定し、床と壁の境目のQ点に指向している。
【0101】
更に、監視カメラ10の撮像角αは90°であり、また赤外線照明器12の照明角βも90°としている。
【0102】
図1及び図2の実施形態では、監視カメラ10の撮像光軸10aと赤外線照明器12の照明光軸12aを監視領域内の空間のP点で交差するように配置しているが、図19の実施形態のように、監視カメラ10の撮像光軸10aと赤外線照明器12の照明光軸12aは必ずしも交差する必要はなく、この場合にも、監視カメラ10から見て赤外線照明器12からの赤外線光により監視領域を背光照明しており、監視領域に煙24の筋が立ち上がった場合、これを赤外線光により背光照明して煙散乱光像を生成し、監視カメラ10で撮像した場合に、暗い中に煙散乱光像が明るく浮かび上がった画像となり、この煙散乱光像から煙稜線を抽出し、その直線成分の時系列変化から確実に火災を検知することを可能とする。
【0103】
〔本発明の変形例〕
(監視カメラと赤外線照明器の配置)
上記の実施形態では、監視カメラと赤外線照明器を、監視領域の対角方向に位置するコーナ上部に対向して配置しているが、コーナ部を外れた位置に対向して配置しても良い。
【0104】
また、監視カメラに対し赤外線照明器を対向する位置ではなく、監視カメラの撮像方向に対し赤外線照明器の赤外線照明光が横方向から向うように配置してもよい。このように赤外線照明器からの赤外線光を、監視カメラの撮像方向に対し横方向から照射した場合にも、火源から立ち上る煙の筋に、横方向から赤外線光が当って散乱による煙散乱光像が生成され、対向方向からの照明に対し多少輝度は下がるが、煙稜線の抽出に十分な輝度の煙散乱光像を撮像することができる。
【0105】
(赤外線照明器)
上記の実施形態にあっては、夜間などの監視領域が暗くなっている場合に、赤外線照明器を連続点灯して監視領域を背光照明しているが、所定の監視周期毎に所定時間だけ赤外線照明器を点灯して監視カメラによる撮像を行って火災を検知する処理を繰り返しても良い。これにより赤外線照明器の消費電力を低減可能とする。
【0106】
(画像切り出し)
上記の実施形態では、赤外線照明器で照明した状態で、監視カメラにより撮像した画像について、非照明エリアを切り出して稜線抽出処理を行っているが、非照明エリアの切り出しを行わず、照明エリアと非照明エリアを含む画像を対象に稜線抽出処理を行っても良い。この場合には、照明領域となる背景部分についても稜線が抽出されるが、その後の背景稜線の直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化から背景稜線の定常パターンが検知されて除外されることから、照明領域に煙の筋が立ちあがっても、背景稜線から煙稜線を区別して火災を検知することが可能である。
【0107】
(稜線抽出)
上記の実施形態にあっては、画像にゾーベルフィルタを適用して煙の稜線を抽出しているが、プレヴィットフィルタ(Prewitt Filter)等のエッジ強調処理に用いた適宜のフィルタを適用しても良い。
【0108】
(直線成分抽出)
上記の実施形態にあっては、ハフ変換を適用して煙の稜線を抽出しているが、Line Segment Detector(LSD)等の画像から直線成分を抽出する処理方法を適用しても良い。
【0109】
(画像処理装置)
上記の実施形態にあっては、監視カメラと画像処理装置を分離配置して伝送路により接続しているが、両者を一体化した装置としても良い。
【0110】
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0111】
10:監視カメラ
10a:撮像光軸
12:赤外線照明器
12a:照明光軸
14:画像処理装置
16:火災報知設備
18:監視領域
20:火源
24:煙
24a:煙モデル
24b:煙散乱光像
24c:煙稜線
26:照明エリア
28:撮像エリア
30:画像
32:制御部
34:照明駆動部
36:伝送部
38:稜線抽出部
40:火災判断部
42:直線成分抽出部
44:時系列変化検出部
46:火災検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19