(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231334
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】薄板基板の研削加工方法およびそれに用いる研削加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20171106BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20171106BHJP
B24B 7/22 20060101ALI20171106BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20171106BHJP
B24D 7/10 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
H01L21/304 621A
H01L21/304 631
H01L21/304 622E
B24D3/00 330G
B24B7/22 Z
B24B55/02 B
B24D7/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-186825(P2013-186825)
(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公開番号】特開2015-56409(P2015-56409A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】398046921
【氏名又は名称】株式会社ナノテム
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100097995
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悦一
(74)【代理人】
【識別番号】100074790
【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 彊
(74)【代理人】
【識別番号】100132953
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 冨有彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 篤
(72)【発明者】
【氏名】高津 雅一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 恭介
(72)【発明者】
【氏名】堀江 和也
(72)【発明者】
【氏名】石崎 幸三
【審査官】
齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−356609(JP,A)
【文献】
特開平03−049868(JP,A)
【文献】
特開2007−015046(JP,A)
【文献】
特開昭63−150162(JP,A)
【文献】
特開平09−057614(JP,A)
【文献】
特開2007−118119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 7/22
B24B 55/02
B24D 3/00
B24D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が反りを有する薄板基板の研削加工方法であって、
該薄板基板の両面から砥石を用いて研削する際に、砥石が有する開気孔を介して該砥石の全面から、冷却液、化学研磨剤を有するスラリー、またはこれらの混合物を薄板基板と砥石との間に供給し、薄板基板の両面に静水圧をかけて反りを有する形状に保持しつつ、前記反りを有する薄板基板の上下の突出部を前記両面からの砥石をもって研削することにより形状補正を行うことを特徴とする、薄板基板の研削加工方法。
【請求項2】
前記砥石は、開気孔率20〜60体積%の多孔体であることを特徴とする請求項1に記載の、薄板基板の研削加工方法。
【請求項3】
前記砥石の研削面の背部から直接、液体や気体を出して研削面に薄板基板が接着することを防ぎ加工後に薄板基板を取り出し易くしたことを特徴とする請求項1または2に記載の、薄板基板の研削加工方法。
【請求項4】
断面形状が反りを有する薄板基板の研削加工装置であって、該薄板基板の両面から砥石を用いて研削する際に、砥石が有する開気孔を介して該砥石の全面から、冷却液、化学研磨剤を有するスラリー、またはこれらの混合物を薄板基板と砥石との間に供給し、薄板基板の両面に静水圧をかけて反りを有する形状に保持しつつ、前記反りを有する薄板基板の上下の突出部を前記両面からの砥石をもって研削することにより形状補正を行うことを特徴とする、薄板基板の研削加工装置。
【請求項5】
前記砥石は、研削砥粒および結合材からなり、研削する面の深さ方向に軸Lを有し平行に配置された多数の柱からなる砥石柱と、該砥石柱と一体に形成される砥石マトリックスとを有し、前記砥石柱と砥石マトリックスはいずれも砥粒と結合材からなり砥石柱の中の砥粒は砥石マトリックスの砥粒より硬度の高いものからなることを特徴とする請求項4に記載の、薄板基板の研削加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板基板の研削加工方法およびそれに用いる研削加工装置に関する。具体的には、シリコン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、サファイアのいずれかからなる10〜2000μmの厚さを有する薄板基板の研削加工方法およびそれに用いる研削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
砥石は硬質の粒子つまり砥粒を結合材で固めて形成される工具である。砥石を用いた加工には、研削加工と研磨加工とがあり、習慣的には荒加工は研削加工と言われ、仕上げ加工は研磨加工と言われている。これらの加工は、砥石を被加工物つまりワークに押し付けた状態のもとで砥石と被加工物とを相対的に移動させることによって被加工物表面つまり被加工面を砥粒により多数の切りくずとして削り取る加工である。
【0003】
砥石を用いた研削加工には、被加工物の円筒形状の外周面を加工する円筒研削加工、被加工物の円筒形状の内周面を加工する内面研削加工、被加工物の平坦面を加工する平面研削工がある。外周面や内周面を加工するための砥石としては、円筒形状の加工面が設けられた砥石が使用される。また、平面を加工するための砥石としては、外周面に加工面が設けられた円筒形の砥石または平坦な端面に加工面が設けられたカップ形、リング形およびディスク形の砥石が使用される。
【0004】
薄板基板の研削加工方法に関しては、従来から種々の提案がなされており、例えば、特開2009−16842号公報(下記特許文献1)には、半導体ウェハが、半導体ウェハと少なくとも1つの研削ツールとの間の接触領域に冷媒を供給しながら、少なくとも1つの研削ツールによって片面又は両面において材料を除去するために処理されるようになっている方法において、冷媒の流量が、少なくとも1つの研削ツールの研削歯の高さに関して選択される半導体ウェハを研削する方法が記載されている。
【0005】
また、特開2011−3902号公報(下記特許文献2)には、半導体ウェハを両面同時に加工する方法であって、前記半導体ウェハは、自由に移動可能に、回転装置により回転される複数のキャリヤの1つにおける切り抜き部に載置されており、それによりサイクロイド軌跡で移動する前記方法によって達成され、該半導体ウェハは、2つの回転するリング状の工作ディスクの間で材料除去的に加工される半導体ウェハの両面同時加工方法において、各工作ディスクは、研磨材料を含む工作層を含み、研磨材料を含まないアルカリ性媒体が、加工の間に供給される半導体ウェハを研削する方法が記載されている。
【0006】
特許文献1及び2に記載された発明は、冷媒を供給しながら両面研削が可能である点で本発明と類似する。しかし、薄板基板の形状補正を可能にする冷媒の供給方法については十分な検討がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−16842号公報
【特許文献2】特開20011−3902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1は、理想的な形状の薄板基板を例示する図である。半導体、IC基板、LED基板等の作製の元になる薄板基板1にはシリコン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、サファイアなどの素材が用いられており、
図1の様な形状に作られている場合が多い。
【0009】
図2は、反りを有する薄板基板の断面形状を例示する図である。多くの場合薄板基板の断面を見るとこれらの素材はその製作過程の熱処理の問題、表面荒さの問題、表意面欠陥の問題などの理由により、
図2の1´のように反りを有する形状になっている。この反りは製造過程における、例えば露光処理、エピタキシアル処理などの障害になるので、
図1に示すように、断面形状に反りがない薄板基板が好ましい。
【0010】
そこで本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、例えば露光処理、エピタキシアル処理などの障害を取り除くため、薄板基板の断面形状を平坦な理想的な形状に補正することができる、薄板基板の研削加工方法およびそれに用いる研削加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述の課題を解決するため、鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは、特許請求の範囲に記載の通りの下記内容である。
【0012】
(1)断面形状が反りを有する薄板基板の研削加工方法であって、該薄板基板の両面から砥石を用いて研削する際に、砥石が有する開気孔を介して該砥石の全面から、冷却液、化学研磨剤を有するスラリー、またはこれらの混合物を薄板基板と砥石との間に供給し、薄板基板の両面に静水圧をかけて反りを有する形状に保持しつつ
、前記反りを有する薄板基板の上下の突出部を前記両面からの砥石をもって研削することにより形状補正を行うことを特徴とする、薄板基板の研削加工方法。
(2)前記砥石は、開気孔率20〜60体積%の多孔体であることを特徴とする(1)に記載の、薄板基板の研削加工方法。
【0013】
(3)前記砥石の研削面の背部から直接、液体や気体を出して研削面に薄板基板が接着することを防ぎ加工後に薄板基板を取り出し易くしたことを特徴とする(1)または(2)に記載の、薄板基板の研削加工方法。
(4)断面形状が反りを有する薄板基板の研削加工装置であって、該薄板基板の両面から砥石を用いて研削する際に、砥石が有する開気孔を介して該砥石の全面から、冷却液、化学研磨剤を有するスラリー、またはこれらの混合物を薄板基板と砥石との間に供給し、薄板基板の両面に静水圧をかけて反りを有する形状に保持しつつ
、前記反りを有する薄板基板の上下の突出部を前記両面からの砥石をもって研削することにより形状補正を行うことを特徴とする、薄板基板の研削加工装置。
(5)前記砥石は
、研削砥粒および結合材からなり、研削する面の深さ方向に軸Lを有し平行に配置された多数の柱からなる砥石柱と、該砥石柱と一体に形成される砥石マトリックスとを有し、前記砥石柱と砥石マトリックスはいずれも砥粒と結合材からなり砥石柱の中の砥粒は砥石マトリックスの砥粒より硬度の高いものからなることを特徴とする(4)に記載の、薄板基板の研削加工装置。
【0014】
<作用>
本発明(1)によれば、板基板の両面から砥石を用いて研削する際に、砥石が有する開気孔を介して該砥石の全面から、冷却液、化学研磨剤を有するスラリー、またはこれらの混合物を薄板基板と砥石との間に供給し、薄板基板の両面に静水圧をかけて反りを有する形状に保持しつつ研削することにより形状補正を行うことができる。 従来の両面研削においては特開2009−16842の明細書に記載されるごとく、冷却液等は一般的に研削ツールの中央から出てきて、遠心力によって研削歯へ搬送される。従って、砥石と基板が接触する部分は普通、冷却媒体が供給しにくくなり、薄板基板は研削中に
図1のような形状になり反りの補正が出来なくなる。一方、本発明に用いる砥石は開気孔を介して冷却媒体を供給できるので、基板の当たっている面と内面での抵抗差を無視出来るほど小さくすることができるので、砥石の全面から冷却媒体を供給することができる。本発明において、開気孔とは、例えば、Porous Materials: Process technology and applications (Materials Technology Series)に記載されているように、水を通す気孔をいう。
【0015】
本発明(2)によれば、砥石は開気孔率20〜60体積%の多孔体であることによって、下記の作用効果を奏する。
・砥石を多孔体にすることにより、水などの冷媒を直接出すことにより砥石と被研削物の研削面の距離のコントロールを可能にする。
・砥石から水などの冷媒を直接出すことにより砥石加工の冷却及び研磨を実施することを可能にする 。
【0016】
本発明(3)によれば、前記砥石の研削面の背部から直接、液体や気体を出すことにより、研削面に被加工物が接着することを防ぎ加工後に被加工物を取り出し易くすることができる。
【0017】
本発明(4)によれば、前記砥石が被加工物の両面に取り付けられていることにより、両面加工が可能であり、(1)に記載の研削加工方法に用いる装置を実現できる。
【0018】
本発明(5)によれば、被加工物を研削する砥粒および結合材からなり、研削する面の深さ方向に軸Lを有し平行に配置された多数の柱からなる砥石柱を有するので、研削面に露出した砥粒が脱落しても、その下層に埋もれていた砥粒が露出することにより、加工速度を維持しつつ、継続して、研削を行うことができる。
【0019】
前記砥石柱と砥石マトリックスはいずれも砥粒と結合材からなり砥石柱の中の砥粒は砥石マトリックスの砥粒より硬度の高いものからなることにより、砥石マトリックスが砥石柱より摩耗が大きく、ヤング率の差によって砥石マトリックスが砥石柱より沈み込むため、常に砥粒柱の砥粒を露出させておくことができ、電子材料等の硬くてもろい被加工物を研削することができる。
【0020】
また、前記砥石を用いることにより、下記の作用効果を奏する研削装置を提供することができる。
・砥石面から真空引きを可能にする。
・水などの冷媒を砥石から出せるような機構を可能にする。
・研削砥石のドレッシングを省略可能とする。
・粗研削、ラッピング研削、仕上げ研磨を同時に実施可能にする。
・両面加工を可能にする。
・砥石の目詰まりを防ぎ連続加工が可能にする。
・研削面に被加工物が接着することを防ぎ加工後に被加工物を取り出し易くする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、例えば露光処理、エピタキシアル処理などの障害を取り除くため、薄板基板の断面形状を平坦な理想的な形状に補正することができる、薄板基板の研削加工方法およびそれに用いる研削加工装置を提供することができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】理想的な形状の薄板基板を例示する図である。
【
図2】反りを有する薄板基板の断面形状を例示する図である。
【
図3】本発明の薄板基板の研削加工方法の実施形態を例示する図である。
【
図4】本発明の薄板基板の研削加工装置の実施形態を例示する平面図である。
【
図5】本発明の薄板基板の研削加工装置の実施形態を例示する断面図である。
【
図6】本発明に用いる砥石の実施形態を例示する平面図および断面図である。
【
図7】本発明に用いる砥石柱の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を
図3〜
図7に基づいて詳細に説明する。
図3は、本発明の薄板基板の研削加工方法の実施形態を例示する図である。
【0024】
前述のように、例えば露光処理、エピタキシアル処理などの障害を取り除くため、
図3の21、22、23の部分を研削加工して取り除く必要がある。多くのこの様な材料は硬く難加工性材料であり、加工速さの向上のためにはダイヤモンドなどの超砥粒を使う必要がある。しかし通常の砥石研削加工法では砥粒に十分な研削力を加えるために砥石の押しつけ加工が必要となり、前述のような
図2の様な基板でも弾性力により、加工中は
図1のようになり、加工後は再び弾性力により
図2のような形に戻る。また、片面ずつ加工すれば加工された面と加工前の面とで表面荒さ、表面欠陥が異なりそれも、反りの原因になり、益々反りが大きくなる場合でさえ有る。
【0025】
これを防ぐため浮遊砥粒で両面を同時に加工する方法が一般的に用いられているが、浮遊砥粒による加工のため加工速さが極端に遅くなる。本発明は基板を静水圧によりほぼ原型のまま保持し、研削砥石で21、22、23の部分の研削を行う加工法であり、研削砥石の加工にもかかわらず、両面加工を可能にし、静水圧による基板保持のため原型の形状を保持したままの加工が可能で在り、21、22、23の部分研削砥石の加工を可能にした。研削砥石による加工のため浮遊砥粒による加工の何十倍(サファイアと窒化アルミニウムで約20倍、シリコンで約10倍)の速さによる加工を可能にした。
【0026】
図4は、本発明の薄板基板の研削加工装置の実施形態を例示する平面図である。
図4に示すように、砥石31の上にキャリア41を置く。キャリアには穴の部分42が存在し、その穴42に被研削材30を入れる。31と同様な砥石がキャリアを挟んで両面に存在する。キャリアには、その外周に歯車の歯43が存在し、砥石の外にある外周の歯44と砥石の内径部の歯45とに接することにより、キャリアが回転する。44、45と砥石の31は独立した別々な部材からなる。これにより被研削材は砥石の上を公転と自転を繰り返して回転する。ここで砥石31は多孔体の砥石であり、水の供給が可能である。
【0027】
図5に
図4の被研削材の設置後の断面図を示す。31は
図4の砥石であるが、31aと31bは各上部砥石と下部砥石である。砥石は多孔体でありこの開気孔を通して水を出し水圧により被研削材30を形状を維持しながら支える。これにより、
図3で説明した21、22、23の部分の研削を可能にする。
【0028】
図6は、本発明の砥石の実施形態を例示する平面図および断面図であり、
図6(a)は平面図、
図6(b)は
図6(a)のA−A断面図である。また、
図7は、本発明に用いる砥石柱の構造を示す模式図である。(a)は焼成前、(b)は焼成後を示しており、焼成後は結合材が溶け砥粒を包み込んで砥粒同士を結合させている。
図6及び
図7において、51は砥石柱、52は砥石マトリックス、53は砥粒、54は結合材、55は開気孔、Lは砥石柱の軸、Dは砥石柱の径、Sは砥石柱の間隔を示す。
【0029】
本発明に用いる砥石は、従来の多孔質砥石でも良いが、特に両面研削用の性能の高い砥石が好ましく、被加工物を研削する砥石であって、前記被加工物を研削する砥粒53および結合材54からなり、研削・研磨する面の深さ方向に軸Lを有し平行に配置された多数の柱からなる砥石柱51と、該砥石柱51と一体に形成される砥石マトリックス52とを有することが好ましい。本発明が対象とする被加工物は、シリコン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、サファイアのいずれかからなる10〜2000μmの厚さを有する薄板基板を云う。
【0030】
本発明に用いる砥石は、被加工物を研削する砥粒53および結合材54からなり、研削する面の深さ方向に軸Lを有し平行に配置された多数の柱からなる砥石柱51を有するので、研削面に露出した砥粒53が脱落しても、その下層に埋もれていた砥粒53が露出することにより、加工速度を維持しつつ、継続して、研削を行うことができる。結合材54はこの
図7に示すように混合されるが、焼成後は結合材54が溶け砥粒53を包むように繋ぎ柱が形成される。なお、砥石柱51の断面形状は、
図7に示すような円柱に限らず、角柱でもよい。
【0031】
また、前記砥石柱の径Dは、前記砥粒53の平均粒径の3〜100倍であり、隣り合う砥石柱51の間隔Sは前記砥石柱1の径Dの10〜1000倍であることが好ましい。砥石柱51の径Dは、前記砥粒3の平均粒径の3〜100倍とすることにより砥石柱1の断面に砥粒が3〜100個並べられ、隣り合う砥石柱51の間隔Sは前記砥石柱1の径Dの10〜1000倍であることにより、従来に比べて、研削・研磨を行う面積比率を小さくすることによって、加工速度の低下を防止することができる。砥石柱1の配置は、
図6に示すような三角形や、四角形、多角形からなる幾何学模様を形成する配置としてもよく、ランダムに配置してもよい。
【0032】
なお、砥粒53はダイヤモンドが使用されており、その平均粒径は0.1〜300μmとなっている。ただし、ダイヤモンドに代えて、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒つまりCBNを使用するようにしても良く、ダイヤモンドとCBNとの混合物を使用するようにしても良く、さらには、炭化ケイ素SiCつまりGC、ムライト(3AL
2O
3-2SiO
2)、または溶融アルミナAL
2O
3つまりWAの単体或いはこれらの混合体を使用するようにしても良い。砥石31を構成する結合材54としては、ビトリファイドボンドが使用されているが、それぞれの結合材54としてはビトリファイドボンド以外に、レジノイドボンド、メタルボンド、電着ボンドなど種々のボンド材を使用することができる。なお、砥粒53の平均粒径とは、砥粒53の断面が円形でない場合には、同じ断面積の円相当径の平均値とする。
【0033】
また、前記砥石柱51と砥石マトリックス52はいずれも砥粒53と結合材54からなり砥石柱51の中の砥粒53は砥石マトリックスの砥粒53より硬度の高いものからなることが好ましい。砥石柱51と砥石マトリックス52はいずれも砥粒53と結合材54からなり砥石柱51の中の砥粒53は砥石マトリックス2の砥粒53より硬度の高いものからなることにより、砥石マトリックス52が砥石柱51より摩耗が大きく、砥石マトリックス52が沈み込み砥石柱51が突き出す。その上、ヤング率の差によって砥石マトリックス52が砥石柱51より沈み込むため、常に砥粒柱の砥粒を露出させておくことができ、電子材料等の硬くてもろい被加工物を研削することができる。
【0034】
また、前記砥石柱51及び砥石マトリックス52は開気孔率20〜60体積%の多孔体であることが好ましい。開気孔率の下限(20%)の限定理由は、これ以下の多孔体では気孔55が主に開気孔ではあるが貫通気孔(砥石の片面からその反対面に通じる気孔で気孔径と砥石の厚さによって変化するが通常使われている砥石の範囲内の厚さで、1から1000ミクロン程度の開気孔径で20%がほぼ限界となる。)が少なくなり、圧力調整のための空気や冷却剤の出入りが難しくなるからであり、開気孔率の上限(60%)の限定理由は、砥粒53と結合材54の混合粉体は多くて60%程度であり、それから焼結しているので必ず60%以下になるのでこれが上限である。砥石柱51及び砥石マトリックス52は開気孔率20〜60体積%の多孔体であることによって、下記の作用効果を奏する。
【0035】
・砥石を多孔体にすることにより、水などの冷媒を直接出すことにより砥石と被研削物の研削面の距離のコントロールや、被加工材の砥石への不必要な接着を無くすることを可能にする。
・砥石から水などの冷媒を直接出すことにより砥石加工の冷却を実施することを可能にする 。
また、冷却液、化学研磨剤を有するスラリー、またはこれらの混合物を前記開気孔55を介して前記被加工物と前記砥石との間に供給すること供給することができる。
【0036】
また、シリコン基板等の被加工物は、どんどん薄くなってきているが片面加工の限界は、加工面と加工されていない面の差が出てきて薄いものは反って使えなくなるからである。それを両面加工することにより、両面が同じように変化するので反りを無くすることができる。
【0037】
しかし、従来の研削装置で両面加工すると水のような冷媒を入れているのでその表面張力で加工後に砥石を離して被加工物を取り出そうとしたときに上下又は左右の砥石に着いたままになってしまう。それをはがすのに一工程増え、そして剥がすのを失敗するとせっかく薄くしたものが壊れたりするという問題があった。
【0038】
そこで、本発明の好ましい実施形態である砥石は、上下又は左右に砥石を置きその間に被加工物を挟み込んだ場合、流体(水などの液体でも空気などの気体でも良い)を砥石から出し被加工物が砥石に接着することを防ぎ、被加工物を取り出し易くし、また、取り出しやすくすることにより、両面加工を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 薄板基板
1´薄板基板(反りを有する)
21 研削箇所
22 研削箇所
23 研削箇所
30 被研削材(薄板基板)
31 砥石
31a上部砥石
31b下部砥石
41キャリア
42 穴
43 歯車の歯
44 外周の歯
45 内径部の歯
51 砥石柱
52 砥石マトリックス
53 砥粒
54 結合材
55 開気孔
L 砥石柱の軸
D 砥石柱の径
S 砥石柱の間隔