特許第6231350号(P6231350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231350鶏封入体肝炎ウイルス検出用オリゴヌクレオチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231350
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】鶏封入体肝炎ウイルス検出用オリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20171106BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12Q1/68 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-220060(P2013-220060)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-100140(P2014-100140A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-234049(P2012-234049)
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591125371
【氏名又は名称】デンカ生研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】三股 亮大郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】三森 重孝
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 大介
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 Journal of Virological Methods,2012年 8月,vol. 183, issue. 2,page. 147-153
【文献】 Journal of Clinical Microbiology,2009年 2月,vol. 47, no. 2,page. 311-321
【文献】 Avian Pathology,2001年,vol. 30, issue. 6,page. 655-660
【文献】 Journal of Virological Methods,1998年,vol. 73, issue. 2,page. 211-217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア。
【請求項2】
検体から抽出したDNAを鋳型として、請求項に記載のプライマーペアを用いてリアルタイムPCRを行う工程と、増幅産物を測定する工程とを含む、鶏封入体肝炎ウイルスの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏の肝臓肥大や出血性病変を伴う急性感染症の原因ウイルスである鶏封入体肝炎ウイルス(Fowl Adenovirus:FAdV)を検出するためのオリゴヌクレオチド及びこれを用いたFAdVの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FAdVは、鶏の肝臓肥大や出血性病変を伴う急性感染症の原因ウイルスであり、症状を示さずに急性死を引き起こすことが知られている。したがって、養鶏産業においても管理する必要のある重要なウイルスの1つである。
【0003】
また、現在、インフルエンザワクチンは、ワクチン製造用のインフルエンザウイルスを「発育鶏卵」に接種して増殖させ、漿尿液から精製、濃縮したウイルスをエーテルで部分分解し、更にホルマリンで不活化することにより作製される。この場合、発育鶏卵へのウイルスの迷入がしばしば問題となり、FAdVは、迷入リスクが高いウイルスとしても知られている。
したがって、FAdVを正確且つ簡便に検出することは重要である。
【0004】
FAdVには12種類(1,2,3,4,5,6,7,8a,8b,9,10,11)の血清型があることが知られており、このうち限られた血清型を検出する方法はこれまでにも知られている。例えば、Hexon gene及びORF20Aを標的遺伝子領域とし、分子生物学的手法によりFAdVを検出する方法等が報告されている(非特許文献1)。
しかしながら、12種類の血清型の全てを検出可能な分析法の報告は無い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Romanova N., Corredor JC, Nagy E., Detection and quantitation of fowl adenovirus genome by a real-time PCR assay. J Virol. Methods.,159(2009)58-63
【非特許文献2】Ganesh K., Suryanarayana VV, Raghavan R., Detection of fowl adenovirus associated with hydropericardium hepatitis syndrome by a polymerase chain reaction. Vet Res Commun. 26(2002)73-80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、FAdVを特異的且つ高感度で検出することを可能とするオリゴヌクレオチド、及びこれを用いたFAdVの検出方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、Hexon L1、Hexon L1・P1及びHexon Gene Completeの各遺伝子領域から設計した特定のオリゴヌクレチドを用いることにより、12種類の血清型を網羅的に検出できることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の1)〜4)に係るものである。
1)配列番号1に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、又は当該塩基配列に対応する相補的配列からなるプライマーペア。
2)配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、又は当該塩基配列に対応する相補的配列からなるプライマーペア。
3)配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーペア、又は当該塩基配列に対応する相補的配列からなるプライマーペア。
4)検体から抽出したDNAを鋳型として、上記1)〜3)の何れかに記載のプライマーペアを用いてPCRを行う工程と、増幅産物を測定する工程とを含む、鶏封入体肝炎ウイルスの検出方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオリゴヌクレオチドによれば、検体中のFAdVを特異的且つ高感度で検出することができる。特に、スループットが高いReal‐Time PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行うことにより、短時間で分析結果が得られる。したがって、本発明は、市中におけるFAdVの流行状況の把握や、養鶏産業における鶏舎の管理、発育鶏卵へのウイルス迷入の検査等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】各プライマーペアを用いた核酸増幅の結果を示すグラフ。グラフの横軸はサイクル数、縦軸は蛍光強度を示す。
図2】本発明プライマーペアの特異性(交差反応性)を示すグラフ。グラフの横軸はサイクル数、縦軸は蛍光強度を示す。
図3】本発明プライマーペアを用いたFAdV溶液(102〜107TCID50/mL)の分析結果を示すグラフ。グラフの横軸はサイクル数、縦軸は蛍光強度を示す。
図4】本発明プライマーペアを用いたFAdV溶液(10-1〜102TCID50/mL)の分析結果を示すグラフ。グラフの横軸はサイクル数、縦軸は蛍光強度を示す。
図5】本発明プライマーペアを用いた各血清型の分析結果を示すグラフ。グラフの横軸はサイクル数、縦軸は蛍光強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のプライマーペアは、FAdVのHexon L1、Hexon L1・P1及びHexon Gene Completeの各遺伝子領域における保存性の高い領域の塩基配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットである。
表1に、本発明のプライマーペアの一覧とそれを用いてPCRを行った場合の増幅産物の大きさを示す。各プライマーペアは、PCR等の核酸増幅反応においてフォワードプライマー及びこれと組み合わせるリバースプライマーとして使用できる。
【0012】
【表1】
【0013】
本発明のオリゴヌクレオチドは、上記配列番号1〜6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの他、当該各塩基配列に対応する相補的配列からなるオリゴヌクレオチドが包含される。すなわち、配列番号1〜6に示される塩基配列に対応する相補的配列からなるプライマーペアが包含される。
また、配列番号1〜6に示される塩基配列や当該塩基配列に対応する相補的配列において1〜3個、好ましくは2個以下、好ましくは1個の塩基が欠失、置換、付加又は挿入された塩基配列からなり、配列番号1〜6に示される塩基配列又はその相補的配列からなるオリゴヌクレオチドと其々プライマーとして同等の機能を有するオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチドと同等に扱われる。
また、オリゴヌクレオチド中には、修飾ヌクレオチドがあってもよい。
【0014】
本発明のプライマーペアのうち、核酸増幅効率の点から、配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(FAV_141F21)及び配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(FAV_297R21)からなるプライマーペア、又は当該塩基配列に対応する相補的配列からなるプライマーペアが好適である。
【0015】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の化学合成法、例えば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられるDNA自動合成装置(例えば、GEヘルスケア社製 AKTA Oligopilot Plusなど)を利用して容易に製造することができる。
【0016】
本発明の上記各プライマーペアを用い、検体から抽出したDNAを鋳型として核酸増幅反応を行い、その増幅産物を測定することにより、FAdVを検出することができる。尚、本発明において、検出とはFAdVの存在又は存在量を調べることを意味する。
【0017】
FAdVを検出するための検体としては、FAdVを含有する可能性のある対象であれば特に限定されないが、例えば、FAdVに感染していると疑われる鶏から得られた血清、病変部臓器などの生体試料の他、発育鶏卵、鶏、鶏由来の細胞若しくは発育鶏卵を基材として調製したワクチン製造工程液又はワクチン製剤のようなFAdVを含む可能性がある検体なども試料となる。
【0018】
鶏、鶏由来の細胞若しくは発育鶏卵を基材として調製したワクチン製造工程液又はワクチン製剤等からのDNAの抽出は、従来のゲノムDNAの調製の場合と同様の手法により行うことができるが、例えば、被検体の全部又は一部から、必要に応じて、抽出・分離・精製方法により前処理を行ったのち、適宜公知の方法により取得することができる。必要に応じて、ろ過、遠心分離、クロマトグラフィー等の公知の方法による前処理を行ったのち、例えば、「ガラスビーズ等の存在下で撹拌する物理的破砕法」、「CTAB法」、「フェノールクロロホルム法(PC法)」、「磁気ビーズ法」、「シリカカラム法」等の汎用法、あるいはこれらを組み合わせた手法を用いた抽出により得ることができ、また、市販のキットを用いて行うこともできる。
PCRによる高い検出感度を得るためには、高濃度なDNAを取得することが望ましく、一方で、発育鶏卵からの核酸抽出液中にはPCRを阻害する物質が混在するため、これら阻害物質を可能な限り除去した高純度なDNAを取得することが望ましい。この目的のため、例えば、高濃度かつ高純度のDNAが抽出できるQIAGEN社製QIAamp MinElute Virus Kit等を用いることができる。
【0019】
核酸増幅法としては、特に限定されないが、PCR法の原理を利用した公知の方法を挙げることができる。例えば、PCR法、LAMP(Loop-mediated isothermal AMPlification)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法、RCA(Rolling Circle Amplification)法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等を挙げることができる。
【0020】
また、核酸増幅反応後の増幅産物の検出には、増幅産物を特異的に認識することができる公知の手段を用いることができる。例えば、増幅反応の過程で取り込まれるdNTPに、放射性同位体、蛍光物質、発光物質等の標識体を作用させ、この標識体を検出することができる。標識したdNTPを取り込んだ増幅産物を観察する方法としては、上述した標識体を検出するための当技術分野で公知の方法であればいずれの方法でもよい。例えば、標識体として放射性同位体を用いた場合には、放射活性を、例えば液体シンチレーションカウンター、γ−カウンター等により計測することができる。また標識体として蛍光を用いた場合には、その蛍光を蛍光顕微鏡、蛍光プレートリーダー等を用いて検出することができる。
【0021】
本発明においては、核酸増幅法として、PCRの増幅量をリアルタイムでモニターし解析するリアルタタイムPCRを用いるのが迅速性と定量性の点から好ましい。また、リアルタイムPCRとしては、当技術分野で通常用いられる方法、例えばTaqManプローブ法、インターカレーター法及びサイクリングプローブ法等が挙げられる。
【0022】
また、二本鎖DNAに結合することで蛍光を発する試薬(蛍光インターカレーター)をPCR反応系に加えるインターカレーター法を用いる場合は、蛍光インターカレーターとして、例えば、SYBR GreenI、SYBR GreenII、SYBR Gold、オキサゾールイエロー、チアゾールオレンジ、エチジウムブロマイド、ピコグリーン等の公知の試薬の存在下でPCRを行い、標的配列の増幅に伴って増加する蛍光強度を測定すればよい。
【0023】
リアルタタイムPCRは、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化したリアルタイムPCR専用の装置、例えば、ライフテクノロジーズ社製StepOnePlusTMリアルタイムPCRシステムを用いて行うことができる。
【0024】
斯くして、本発明のオリゴヌクレチドを用いれば、Egg Drop Syndrome virus等の同科ウイルスに対して交差反応が無く、特異的に且つ高感度でFAdVを検出することができる(実施例2)。
【実施例】
【0025】
実施例1 プライマーの設計
FAdVのHexon L1、Hexon L1・P1及びHexon Gene Completeの各遺伝子領域を標的とし、それぞれに特異的なプライマーを以下の手順で設計した。
文献情報(Aust Vet J. 2011 May;89(5):184-92、Journal of Clinical Microbiology (2009) 47(2):311-321)より下記表2〜4に示す参照配列を収集し、遺伝子情報処理ソフトウェアを用いたMultiple Alignment解析により血清型間で高度に保存された領域を選択し、前記表1に示すプライマーを設計した。
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
実施例2 プライマーの評価
下記の試験に用いるためのプライマーは、株式会社ジーンネットへ委託して合成した。
【0030】
(1)ウイルス検出の試行
鶏胎児初代腎細胞(以下、CEK細胞)にて調製した鶏封入体肝炎ウイルス溶液(Ote株、血清型:FAdV1、感染力価:6.0×107TCID50/mL)を検体としてQIAamp MinElute Virus Kit(QIAGEN社製)にてウイルスゲノム抽出液を調製した。調製したウイルスゲノム抽出液をDNase/RNaseフリー滅菌水(ライフテクノロジーズ社製)にて10倍希釈したものを鋳型ウイルスゲノム溶液とした。5μLの鋳型ウイルスゲノム溶液、10μLのSsoFast EvaGreen
supermix(Bio−Rad社製)、0.8μLの10μMに調製した各プライマー及び3.4μLのDNase/RNaseフリー滅菌水(ライフテクノロジーズ社製)をPCR反応チューブ(ライフテクノロジーズ社製)に添加して、混合した。調製した反応溶液にて、ライフテクノロジーズ社製StepOnePlusTMリアルタイムPCRシステムを用いた分析を実施した。なお、PCR条件は、98℃2分間のポリメラーゼの活性化、98℃5秒間及び56℃20秒間を40サイクル繰り返すことによる標的配列の増幅反応にて実施し、使用したPrimerの一覧は表5に示す通りである。
表5に示すPrimerペアのうち、FAdV Primer4は非特許文献1に記載されるプライマーペアである。表1に示すプライマーに上記プライマーを加えてプライマーの性能を評価した。
【0031】
【表5】
【0032】
その結果、図1に示すように、実施例1で設計したプライマー(FAdV Primer1、2及び3)は、設計時において用いられた参照配列以外のウイルス株であっても検出可能であることが判り、また、このうちFAdV Primer3は、特に増幅効率の良いプライマーペアであることが判った。
【0033】
(2)交差反応性
CEK細胞にて調製した鶏封入体肝炎ウイルス(FAdV)溶液、産卵低下症候群−1976ウイルス(EDSV)溶液、トリレオウイルス(ARV)溶液、鶏初代腎細胞(CK細胞)破砕上清及びDNase処理したCK細胞破砕上清を検体として、QIAGEN社製QIAamp MinElute Virus Kitにて核酸抽出液を調製した。2μLの各核酸抽出液、10μLのSsoFast EvaGreen supermix(Bio−Rad社製)、0.8μLの10μMに調製したプライマー及び6.4μLのDNase/RNaseフリー滅菌水(ライフテクノロジーズ社製)をPCR反応チューブ(ライフテクノロジーズ社製)に添加して、混合した。調製した反応溶液にて、ライフテクノロジーズ社製StepOnePlusTMリアルタイムPCRシステムを用いた分析を実施した。
なお、PCR条件は、98℃2分間のポリメラーゼの活性化、98℃5秒間及び69℃20秒間を40サイクル繰り返すことによる標的配列の増幅反応にて実施し、プライマーペアは、上記(1)ウイルス検出の試行に示すFAdV Primer3を使用した。
これにより図2に示す結果が得られ、設計したFAdV Primer3の分析では、シグナルの立ち上がりが確認されたのはFAdVに対してのみであり、他のウイルスや鶏のゲノム若しくはゲノム断片に対して交差反応性を示さない。特に、EDSVはFAdVと同じアデノウイルス科であり、近縁種のウイルスに対して交差反応性を示さないことは、設計したプライマーペアを用いた分析法の特異性の高さを示す結果である。
【0034】
(3)感度
CEK細胞にて調製した鶏封入体肝炎ウイルス(FAdV)溶液をEagle’s MEM(和光純薬工業社製)にて10-1〜107TCID50/mLの9濃度に調製し、各濃度のFAdV溶液からQIAGEN社製QIAamp MinElute Virus Kitにて鋳型ウイルスゲノム溶液を調製した。調製した各鋳型ウイルスゲノム溶液を上記(2)交差反応性に示す条件にてリアルタイムPCRによる分析を実施した。
図3に102〜107TCID50/mLのFAdV溶液より調製した各鋳型ウイルスゲノム溶液の分析結果を示し、図4に10-1〜102TCID50/mLのFAdV溶液より調製した各鋳型ウイルスゲノム溶液の分析結果を示す。
これらの結果より、FAdV Primer3は、101TCID50/mL以上の濃度にてウイルスが検出可能であることが示された。したがって、本分析法は高感度な分析法であると考えられる。
【0035】
(4)検出スペクトルの確認
表3の各血清型の標的配列を人工合成した遺伝子(BIOMATIK社製)を1mLのTEバッファーに溶解して測定検体を調製した。調製した各検体を上記(2)交差反応性に示す条件にてリアルタイムPCRによる分析を実施した。
図5に分析結果を示す。FAdV Primer3は、いずれの血清型の配列も検出可能であることが示された。したがって、本分析法は12種類の血清型を網羅的に検出可能であると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]